(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10048(P2015-10048A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】光学活性含フッ素アミノ酸類の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 227/32 20060101AFI20141216BHJP
C07C 229/20 20060101ALI20141216BHJP
C07D 205/08 20060101ALI20141216BHJP
C07D 223/10 20060101ALI20141216BHJP
C07D 225/02 20060101ALI20141216BHJP
C07D 207/263 20060101ALI20141216BHJP
C07D 211/76 20060101ALI20141216BHJP
C07B 53/00 20060101ALN20141216BHJP
【FI】
C07C227/32
C07C229/20
C07D205/08 J
C07D223/10
C07D225/02
C07D207/263
C07D211/76
C07B53/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-135317(P2013-135317)
(22)【出願日】2013年6月27日
(71)【出願人】
【識別番号】305013910
【氏名又は名称】国立大学法人お茶の水女子大学
(71)【出願人】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】矢島 知子
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 奈奈
(72)【発明者】
【氏名】香川 巧
【テーマコード(参考)】
4C034
4C054
4C069
4H006
【Fターム(参考)】
4C034DE02
4C034EA07
4C054AA02
4C054BB03
4C054CC01
4C054DD04
4C054DD11
4C054DD23
4C054EE01
4C054FF01
4C069AB15
4C069BB02
4C069BB12
4C069BC12
4H006AA02
4H006AC52
4H006AC81
4H006BA93
4H006BA95
4H006BM10
4H006BM71
4H006BT12
4H006BU32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医農薬の合成中間体として有用な光学活性含フッ素アミノ酸類の製造方法の提供。
【解決手段】一般式(4)
(式中、R
1はメチル基、エチル基又は炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜5の整数を示す)または一般式(5)
(式中のR
1及びnは前記に同じ)で表される光学活性含フッ素アミノ酸類を、光学活性トリフルオロメチルtert−ブチルスルフィンイミドへのハロカルボン酸エステル類のラジカル付加反応により得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
で表されるトリフルオロメチル (R)−tert−ブチルスルフィンイミドまたは下記式(2)
【化2】
で表されるトリフルオロメチル (S)−tert−ブチルスルフィンイミドと下記一般式(3)
X−(CH
2)
nCO
2R
1 (3)
(式中、R
1はメチル基、エチル基又は炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜5の整数を示す)
で表されるハロカルボン酸エステル類を、ラジカル開始剤存在下及び/または光照射下、かつ還元剤存在下反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【化3】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
または下記一般式(5)
【化4】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
で表される光学活性含フッ素アミノ酸類の製造方法。
【請求項2】
下記式(1)
【化5】
で表されるトリフルオロメチル (R)−tert−ブチルスルフィンイミドまたは下記式(2)
【化6】
で表されるトリフルオロメチル (S)−tert−ブチルスルフィンイミドと下記一般式(3)
X−(CH
2)
nCO
2R
1 (3)
(式中、R
1はメチル基、エチル基又は炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜5の整数を示す)
で表されるハロカルボン酸エステル類を、ラジカル開始剤存在下及び/または光照射下、かつ還元剤存在下反応させ下記一般式(4)
【化7】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
または下記一般式(5)
【化8】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類を得た後、塩基で処理することを特徴とする、下記一般式(6)
【化9】
(式中のnは前記に同じ)
または、下記一般式(7)
【化10】
(式中のnは前記に同じ)
で表わされる光学活性含フッ素ラクタム類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学活性含フッ素アミノ酸類の製造方法に関する。光学活性含フッ素アミノ酸類は医・農薬の製造中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
本発明の、光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドを用い、光学活性含フッ素アミノ酸類を得る方法としては、塩基存在下、マロン酸エステル類を反応させた後、加水分解、脱炭酸する方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
また、ラセミ体の含フッ素アミノ酸類を光学活性カルボン酸類とのジアステレオマー塩とし再結晶する方法や、光学活性カルボン酸と反応させジアステレオマーのアミドとした後に再結晶により精製し、加水分解する方法が衆知である。
【0004】
さらに、ラセミ体の含フッ素アミノ酸類を、酵素分割により得る方法等も知られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N. Shibata, et. al., Chem. Commun., 2012, 48, 4124-4126。
【非特許文献2】V. A. Soloshonok, et. al., Synlett., 1993, 5, 339-341。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非特許文献1に記載の方法は、高光学純度の含フッ素アミノ酸類を得ることは可能であるがマロン酸エステル類の付加反応時に厳密な非水条件が必要でかつ−78℃と超低温が必要であり、汎用的ではない。
【0007】
一方、従来衆知のジアステレオマー塩を再結晶する方法や、ジアステレオマーのアミドを再結晶する方法は、比較的高価な光学活性カルボン酸類が必要でまた、異性体が50%含まれているため、理論収率は最大50%、実際の多くの場合において10〜30%の低収率に留まるという問題がある。
【0008】
さらに、非特許文献2に記載の方法も異性体が50%含まれているため、理論収率は最大50%と低く、また酵素の基質適用範囲が狭いため、分割したい含フッ素アミノ酸類に対して、最適な酵素をスクリーニングする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドを原料とし、温和な条件下で光学活性含フッ素アミノ酸類を得る方法について鋭意検討した結果、ハロカルボン酸エステル類を、温和な条件下、ラジカル付加反応することにより光学活性含フッ素アミノ酸類が得られることを見出し、さらに、得られた付加物を塩基で処理することのより、容易に分子内環化し、光学活性ラクタム類が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[項1] 下記式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
で表されるトリフルオロメチル (R)−tert−ブチルスルフィンイミドまたは下記式(2)
【0013】
【化2】
【0014】
で表されるトリフルオロメチル (S)−tert−ブチルスルフィンイミドと下記一般式(3)
X−(CH
2)
nCO
2R
1 (3)
(式中、R
1はメチル基、エチル基又は炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜5の整数を示す)
で表されるハロカルボン酸エステル類を、ラジカル開始剤存在下及び/または光照射下、かつ還元剤存在下反応させることを特徴とする下記一般式(4)
【0015】
【化3】
【0016】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
または下記一般式(5)
【0017】
【化4】
【0018】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
で表される光学活性含フッ素アミノ酸類の製造方法。
【0019】
[項2] 下記式(1)
【0020】
【化5】
【0021】
で表されるトリフルオロメチル (R)−tert−ブチルスルフィンイミドまたは下記式(2)
【0022】
【化6】
【0023】
で表されるトリフルオロメチル (S)−tert−ブチルスルフィンイミドと下記一般式(3)
X−(CH
2)
nCO
2R
1 (3)
(式中、R
1はメチル基、エチル基又は炭素数3〜4の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜5の整数を示す)
で表されるハロカルボン酸エステル類を、ラジカル開始剤存在下及び/または光照射下、かつ還元剤存在下反応させ下記一般式(4)
【0024】
【化7】
【0025】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
または下記一般式(5)
【0026】
【化8】
【0027】
(式中のR
1及びnは前記に同じ)
で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類を得た後、塩基で処理することを特徴とする、下記一般式(6)
【0028】
【化9】
【0029】
(式中のnは前記に同じ)
または、下記一般式(7)
【0030】
【化10】
【0031】
(式中のnは前記に同じ)
で表わされる光学活性含フッ素ラクタム類の製造方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、医農薬の豪勢中間体として有用な、高光学純度のトリフルオロメチル基を含有する光学活性含フッ素アミノ酸類及びラクタム類の簡便な製造方法が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一般式(3)で表されるハロカルボン酸エステル類としては、具体的には例えば、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸−n−プロピル、クロロ酢酸−iso−プロピル、クロロ酢酸−n−ブチル、クロロ酢酸−iso−ブチル、クロロ酢酸−tert−ブチル、3−クロロプロピオン酸メチル、3−クロロプロピオン酸エチル、3−クロロプロピオン酸−n−プロピル、3−クロロプロピオン酸−iso−プロピル、3−クロロプロピオン酸−n−ブチル、3−クロロプロピオン酸−iso−ブチル、3−クロロプロピオン酸−tert−ブチル、4−クロロブタン酸メチル、4−クロロブタン酸エチル、4−クロロブタン酸−n−プロピル、4−クロロブタン酸−iso−プロピル、4−クロロブタン酸−n−ブチル、4−クロロブタン酸−iso−ブチル、4−クロロブタン酸−tert−ブチル、5−クロロペンタン酸メチル、5−クロロペンタン酸エチル、5−クロロペンタン酸−n−プロピル、5−クロロペンタン酸−iso−プロピル、5−クロロペンタン酸−n−ブチル、5−クロロペンタン酸−iso−ブチル、5−クロロペンタン酸−tert−ブチル、6−クロロヘキサン酸メチル、6−クロロヘキサン酸エチル、6−クロロヘキサン酸−n−プロピル、6−クロロヘキサン酸−iso−プロピル、6−クロロヘキサン酸−n−ブチル、6−クロロヘキサン酸−iso−ブチル、6−クロロヘキサン酸−tert−ブチル、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル、ブロモ酢酸−n−プロピル、ブロモ酢酸−iso−プロピル、ブロモ酢酸−n−ブチル、ブロモ酢酸−iso−ブチル、ブロモ酢酸−tert−ブチル、3−ブロモプロピオン酸メチル、3−ブロモプロピオン酸エチル、3−ブロモプロピオン酸−n−プロピル、3−ブロモプロピオン酸−iso−プロピル、3−ブロモプロピオン酸−n−ブチル、3−ブロモプロピオン酸−iso−ブチル、3−ブロモプロピオン酸−tert−ブチル、4−ブロモブタン酸メチル、4−ブロモブタン酸エチル、4−ブロモブタン酸−n−プロピル、4−ブロモブタン酸−iso−プロピル、4−ブロモブタン酸−n−ブチル、4−ブロモブタン酸−iso−ブチル、4−ブロモブタン酸−tert−ブチル、5−ブロモペンタン酸メチル、5−ブロモペンタン酸エチル、5−ブロモペンタン酸−n−プロピル、5−ブロモペンタン酸−iso−プロピル、5−ブロモペンタン酸−n−ブチル、5−ブロモペンタン酸−iso−ブチル、5−ブロモペンタン酸−tert−ブチル、6−ブロモヘキサン酸メチル、6−ブロモヘキサン酸エチル、6−ブロモヘキサン酸−n−プロピル、6−ブロモヘキサン酸−iso−プロピル、6−ブロモヘキサン酸−n−ブチル、6−ブロモヘキサン酸−iso−ブチル、6−ブロモヘキサン酸−tert−ブチル、ヨード酢酸メチル、ヨード酢酸エチル、ヨード酢酸−n−プロピル、ヨード酢酸−iso−プロピル、ヨード酢酸−n−ブチル、ヨード酢酸−iso−ブチル、ヨード酢酸−tert−ブチル、3−ヨードプロピオン酸メチル、3−ヨードプロピオン酸エチル、3−ヨードプロピオン酸−n−プロピル、3−ヨードプロピオン酸−iso−プロピル、3−ヨードプロピオン酸−n−ブチル、3−ヨードプロピオン酸−iso−ブチル、3−ヨードプロピオン酸−tert−ブチル、4−ヨードブタン酸メチル、4−ヨードブタン酸エチル、4−ヨードブタン酸−n−プロピル、4−ヨードブタン酸−iso−プロピル、4−ヨードブタン酸−n−ブチル、4−ヨードブタン酸−iso−ブチル、4−ヨードブタン酸−tert−ブチル、5−ヨードペンタン酸メチル、5−ヨードペンタン酸エチル、5−ヨードペンタン酸−n−プロピル、5−ヨードペンタン酸−iso−プロピル、5−ヨードペンタン酸−n−ブチル、5−ヨードペンタン酸−iso−ブチル、5−ヨードペンタン酸−tert−ブチル、6−ヨードヘキサン酸メチル、6−ヨードヘキサン酸エチル、6−ヨードヘキサン酸−n−プロピル、6−ヨードヘキサン酸−iso−プロピル、6−ヨードヘキサン酸−n−ブチル、6−ヨードヘキサン酸−iso−ブチル、6−ヨードヘキサン酸−tert−ブチル等が挙げられる。
【0035】
本発明の一般式(4)で表される光学活性含フッ素アミノ酸類としては、具体的には例えば、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸エチル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−n−プロピル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−iso−プロピル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−n−ブチル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−iso−ブチル、(R)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−tert−ブチル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸メチル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−n−プロピル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−iso−プロピル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−n−ブチル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−iso−ブチル、(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−tert−ブチル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸メチル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸メチル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸エチル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(R)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸メチル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸エチル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(R)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル等が挙げられる。
【0036】
本発明の一般式(5)で表される光学活性含フッ素アミノ酸類としては、具体的には例えば、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸メチル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸エチル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−n−プロピル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−iso−プロピル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−n−ブチル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−iso−ブチル、(S)−3−アミノ−4,4,4−トリフルオロブタン酸−tert−ブチル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸メチル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−n−プロピル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−iso−プロピル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−n−ブチル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−iso−ブチル、(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸−tert−ブチル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸メチル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸メチル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸エチル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(S)−6−アミノ−7,7,7−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸メチル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸エチル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−n−プロピル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−iso−プロピル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−n−ブチル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−iso−ブチル、(S)−7−アミノ−8,8,8−トリフルオロヘキサン酸−tert−ブチル等が挙げられる。
【0037】
本発明の一般式(6)で表わされる光学活性ラクタム類としては、具体的には例えば、(R)−4−トリフルオロメチル−2−アゼチジノン、(R)−5−トリフルオロメチル−2−ピロリジノン、(R)−6−トリフルオロメチル−2−ピペリジノン、(R)−7−トリフルオロメチル−2−オキソヘキサメチレンイミン、(R)−2−アザ−3−トリフルオロメチルシクロオクタノン等が挙げられる。
【0038】
本発明の一般式(7)で表わされる光学活性ラクタム類としては、具体的には例えば、(S)−4−トリフルオロメチル−2−アゼチジノン、(S)−5−トリフルオロメチル−2−ピロリジノン、(S)−6−トリフルオロメチル−2−ピペリジノン、(S)−7−トリフルオロメチル−2−オキソヘキサメチレンイミン、(S)−2−アザ−3−トリフルオロメチルシクロオクタノン等が挙げられる。
【0039】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造に適用可能なラジカル開始剤としては、具体的には例えば、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレノニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレノニトリル)、ジメチル 2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチルニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2−アゾビス(N−シクロヘキサン−2−メチルプロピオンアミド)、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、tert−ブチル クミルオエルオキシド、ジ−tert−ブチル ペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)3−ヘキシン、2,2−ジメトキシ−1、2−ジフェニルエタン−1−オン、トリエチルボラン等が挙げられる。
【0040】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造において使用する一般式(3)で表されるハロカルボン酸類の使用量としては、反応に具する一般式(1)または一般式(2)で表される光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドに対して当モル量以上で、好ましくは1.5〜5.0モル量である。
【0041】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造においてラジカル開始剤を使用する場合の使用量は、反応に具する式(1)または式(2)で表される光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドに対して、0.05〜0.5モル量の範囲である。
【0042】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造に適用可能な光源については、特に規定はなく、昼光で長時間反応を行っても良いし、短時間で反応を完結させるため、高圧水銀灯や紫外線−LED発光素子等を用いても良い。
【0043】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造において、ラジカル剤開始剤及び光源は、各々単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。
【0044】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造に適用可能な還元剤としては、具体的には例えば、トリエチルシラン、トリス(トリメチルシリル)シラン等のシラン化合物、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等の無機還元剤の水溶液を用いても良く、使用量としては、還元剤の種類により異なるが、通常、反応に具する、反応に具する式(1)または式(2)で表される光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドに対して、1.0〜10.0モル量の範囲である。
【0045】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造に適用可能な溶剤としては、反応に不活性なものであれば特に規定はないが、具体的には例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ベンゼン等の芳香族単炭化水素系溶剤、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン等のフルオロハイドロカーボン系溶剤が挙げられ、反応に具する式(1)または式(2)で表される光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンイミドに対して、5〜200重量倍量使用する。
【0046】
本発明の一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類の製造における反応温度及び時間は、ラジカル開始及び光源の種類及び使用の有無により異なるが、通常10〜100℃の温度範囲で、2時間〜20日反応させることにより反応が完結する。
【0047】
本発明の一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類の製造は、一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類を製造の後、不溶物をろ別、濃縮した粗製物を反応に不活性な溶媒中、塩基で処理することのより容易に調製される。
【0048】
本発明の一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類の製造の製造に適用可能な塩基としては、具体的には例えば、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド等が挙げられ、反応に具する一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類に対して、1.0〜10.0モル量使用する。
【0049】
本発明の一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類の製造の製造に適用可能な溶剤としては、反応に不活性なものであれば特に規定はないが、具体的には例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル等のエーテル系溶剤が挙げられ、反応に具する一般式(3)又は一般式(4)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類に対して、5〜50重量倍量使用する。
【0050】
本発明の一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類の製造の反応温度及び時間は、用いる塩基の種類により異なるが、通常、−80〜20℃の温度範囲で、0.1〜16時間で反応は完結する。
【0051】
本発明の一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類の製造後の後処理としては、衆知の方法であれば特に問題なく、例えば反応液を飽和の塩化アンモニム水溶液で中和、抽出、乾燥、濃縮することにより粗製物を得、さらに必要に応じてカラムクラマトグラフィー等により精製することにより、一般式(5)又は一般式(6)で表わされるラクタム類を得る。
【実施例】
【0052】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
実施例1
(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチルの製造
【0054】
【化11】
【0055】
窒素雰囲気下、トリフルオロメチル (S)−tert−ブチルスルフィンイミド(40.2mg,0.2mmol)をCH
2Cl
2(2ml)に溶解した。次いで、3−ヨードプロピオン酸エチル(136.8mg,0.6mmol,3.0eq.)、トリストリメチルシラン(0.20ml,0.6mmol,3.0eq.)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(6.5mg,0.04mmol,0.2eq.)を添加し、室温にて高圧水銀ランプによる光照射を6時間行った。反応終了後、過剰のヘキサンを添加し目的物を析出させ、セライトを用いてろ過、次いでジクロロメタンで溶出させ、得られた溶液を濃縮することにより目的物の(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチルを得た(8.8mg,0.044mmol,収率22%)。生成物の光学純度はベンゾイルアミドへ誘導の後、ダイセル社製ChiralcelAD−H(ヘキサン/2−プロパノール=9/1 v/v)で測定した結果、78%eeであった((S)−体:24.5min,(R)−体:32.6min)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ4.28(1H,m,CF
3C
HNH
2),4.18(2H,q,J=6.8Hz,COOC
H2CH
3),2.75(2H,t,J=7.6Hz,C
H2COOEt),2.34(2H,m,C
H2CH
2COOEt),1.28 (3H,t,J=6.8Hz,COOCH
2C
H3)。
19F−NMR(376 MHz,CDCl
3)δ−73.32(s,CF
3CH)。
MS(m/z):200.05(M+H)。
【0056】
実施例2
(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチルの製造
【0057】
【化12】
【0058】
実施例1の(S)−tert−ブチルスルフィンイミド(40.2mg,0.2mmol)に替えて、(R)−tert−ブチルスルフィンイミド(40.2mg,0.2mmol)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の(R)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチルを得た(11.2mg,0.056mmol,収率28%)。生成物の光学純度はベンゾイルアミドへ誘導の後、ダイセル社製ChiralcelAD−H(ヘキサン/2−プロパノール=9/1 v/v)で測定した結果、88%eeであった。
【0059】
実施例3
(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチルの製造
【0060】
【化13】
【0061】
実施例1の3−ヨードプロピオン酸エチル(136.8mg,0.6mmol,3.0eq.)に替えて4−ヨードブタン酸エチル(145.2mg,0.6mmmol,3.0eq.)を用いた以外、実施例1と同じ操作を行い、目的物の(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチルを得た(18.3mg,0.086mmol,収率43%)。生成物の光学純度はベンゾイルアミドへ誘導の後、ダイセル社製ChiralcelAD−H(ヘキサン/2−プロパノール=9/1 v/v)で測定した結果、96%eeであった
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ4.34(1H,m,CF
3C
HNH
2),4.19(2H,m,COOC
H2CH
3),2.78(2H,m,C
H2COOEt),2.17(1H,m,CF
3CHC
H2),2.05(2H,m,COC
H2),1.92(1H,m,CF
3CHC
H2)。
19F−NMR(376MHz,CDCl
3)δ−73.57(s,CF
3CH)。
【0062】
実施例4
(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチルの製造
【0063】
【化14】
【0064】
実施例3の(S)−tert−ブチルスルフィンイミド(40.2mg,0.2mmol)に替えて、(R)−tert−ブチルスルフィンイミド(40.2mg,0.2mmol)を用いた以外、実施例3と同じ操作を行い、目的物の(R)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチルを得た(18.7mg,0.088mmol,収率44%)。生成物の光学純度はベンゾイルアミドへ誘導の後、ダイセル社製ChiralcelAD−H(ヘキサン/2−プロパノール=9/1 v/v)で測定した結果、94%eeであった。
【0065】
実施例5
(S)−5−トリフルオロメチル−2−ピロリジノンの製造
【0066】
【化15】
【0067】
アルゴン雰囲気下にて、ジイソプロピルアミン(0.15ml,5.0eq.)をテトラヒドロフラン(1 ml)に溶解し、−78℃に冷却した。次いでこれにn−ブチルリチウム(1.60M−ヘキサン溶液、1.95ml,5.0eq.)を添加し、同温度で15分間撹拌を行った後、テトラヒドロフラン(3ml)に溶解した実施例1と同じ方法で調製した(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチル(39.8mg,0.2mmol)を添加し、−78℃で4時間反応を行った。反応終了後、飽和NH
4Clを加えた後、室温に戻し、酢酸エチルで抽出、硫酸ナトリウム上で乾燥、ろ過、濃縮し粗製物を得た。得られた粗製物は、カラムクロマトグラフィ−による精製を行い、目的物の(S)−5−トリフルオロメチル−2−ピロリジノンを得た(19.0mg、0.124mmol,収率62%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3)δ6.34(1H,s,N
H ),4.06(1H,m,CF
3C
HNH),2.45(1H,m,CF
3CHC
H2),2.37 (2H,m,COC
H2),2.25(1H,m,CF
3CHC
H2)。
19F−NMR(376 MHz,CDCl
3)δ−79.28(s,CF
3CH)。
13C−NMR(126MHz,CDCl
3)δ178.42(s,C=O),125.12(q,J=281.2Hz,CF
3),54.90(q,J=32.4Hz ,CF
3CH),28.36(s,CO
CH
2),20.58(s,CF
3CH
CH
2)
【0068】
実施例6
(S)−6−トリフルオロメチル−2−ピペリジノンの製造
【0069】
【化16】
【0070】
実施例5で用いた(S)−4−アミノ−5,5,5−トリフルオロペンタン酸エチル(39.8mg,0.2mmol)に替えて、(S)−5−アミノ−6,6,6−トリフルオロヘキサン酸エチル(42.6mg,0.2mmol)を用いた以外実施例4と同じ操作を行い、目的物の(S)−6−トリフルオロメチル−2−ピペリジノンを得た(20.4mg,0.122mmol,収率61%)。
1H−NMR (400 MHz, CDCl
3)δ3.93(1H,m,CF
3C
HNH),2.42(2H,m,COC
H2CH
2),2.06(2H,m,COCH
2C
H2),1.88(1H,m,CF
3CHC
H2),1.75(1H,m,CF
3CHC
H2)。
19F−NMR(376MHz,CDCl
3)δ−78.55(s,CF
3CH)。
13C−NMR (126 MHz, CDCl
3)δ171.78( s,C=O),124.56(q,J=281.2Hz,CF
3),54.04(q,J=32.3Hz ,CF
3CH),31.21( s,CO
CH
2),21.10(s,CF
3CH
CH
2),18.30(s,CF
3CHCH
CH
2)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の一般式(4)乃至一般式(7)で表わされる光学活性含フッ素アミノ酸類は医農薬の合成中間体として用いられる有用な化合物であり、その製造に本発明の光学活性トリフルオロメチル tert−ブチルスルフィンアミドとハロカルボン酸エステル類のラジカル付加反応が利用可能である。