【解決手段】アノード10は、筒状であり、内部に配置した被めっき物1との間にめっき液が流動する空間を形成し、正電圧が印加される。アノード10は、導電性を有する外筒部11と、この外筒部11の内面に接するように溶接された白金製の板材12Aからなる内筒部12とを備えている。
チタン製の平板材と白金製の平板材とを重ね合わせて溶接したものを前記白金製の平板材が内側になるように筒状に曲げることによって、前記外筒部及び前記内筒部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のアノード。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例の高速めっき装置の第2給電部材の移動方向に沿った断面を示す断面図である。
【
図2】実施例の高速めっき装置の保持部材の移動方向に沿った断面を示す断面図である。
【
図3】実施例のアノードを示し、(A)はチタン製の平板材と白金製の平板材を溶接した状態を示す断面図であり、(B)円筒状に丸めて端面を付き合わせて溶接した状態を示す断面図である。
【
図4】実施例のアノードと第1給電部材を示す断面図である。
【
図5】実施例の高速めっき装置のアノードの上部より上方を拡大した断面図である。
【
図6】実施例の高速めっき装置のアノード下部を支持する下部受部材周りを拡大した断面図である。
【
図7】実施例の高速めっき装置を上方から見た平面図である。
【
図8】実施例の第2給電部材が位置する水平断面図である。
【
図10】実施例の保持部材が位置する水平断面図である。
【
図11】実施例の高速めっき装置の第2給電部材の移動方向に沿った断面であって、被めっき物がアノード内に下降する前を示す断面図である。
【
図12】実施例の高速めっき装置の保持部材の移動方向に沿った断面であって、被めっき物がアノード内に下降する前を示す断面図である。
【
図13】実施例の高速めっき装置の第2給電部材の移動方向に沿った断面であって、被めっき物の下端部が支持棒の上端の凹部に挿入された状態を示す断面図である。
【
図14】実施例の高速めっき装置の第2給電部材の移動方向に沿った断面であって、被めっき物がアノード内に下降した状態を示す断面図である。
【
図15】実施例の第2給電部材の先端部が被めっき物の外周面に接触した状態を示す断面図である。
【
図16】実施例の高速めっき装置の保持部材の移動方向に沿った断面であって、保持部が被めっき物を保持した状態を示す断面図である。
【
図17】保持部が被めっき物を保持した状態を示す水平断面図である。
【
図18】実施例の高速めっき装置のアノードの上部より上方を拡大しており、保持部が被めっき物を保持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアノードを備えた高速めっき装置を具体化した実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<実施例>
実施例の高速めっき装置は、
図1及び
図2に示すように、アノード10、アノード10に接触して正電圧を印加する第1給電部材20、ワークである被めっき物1に接触して負電圧を印加する第2給電部材30、被めっき物1を保持する保持部材41を備えた保持装置40、空気を送り込んで保持部材41が配置された保持室45内を加圧する加圧装置50、めっき液を循環させる循環装置60、及びアノード10と第2給電部材30に通電する電源装置70を備えている。
【0014】
アノード10は、円筒状であり、鉛直方向に延びて配置されている。アノード10は、
図3及び
図4に示すように、チタン製の板材から形成した外筒部11と、白金製の板材から形成した内筒部12とを有している。また、アノード10は、
図1及び
図2に示すように、上下端部の夫々に外嵌したチタン製のリング部材13を有している。
【0015】
このアノード10は次に説明するように製造される。まず、チタン製の平板材11Aに白金製の平板材12Aを重ね合わせ、電気抵抗溶接によって面同士を溶接し、二重構造の板材10Aを製作する(
図3(A)参照)。次に、白金製の平板材12Aが内側になるように丸め、円筒状になるように成形し、端面を付き合わせて溶接する(
図3(B)参照)。そして、アノード10の上下端部の外周面の夫々にリング部材13を溶接して一体化する。
【0016】
このように、導電性を有するチタン製の外筒部11の内面に白金製の板材12Aからなる内筒部12を溶接してアノード10を形成しているため、導電性の外筒部11に白金製の板材12Aからなる内筒部12を強固に密着させることができる。このため、めっき工程中に白金製の板材12Aからなる内筒部12が外筒部11の内面からの剥離することを少なくすることができる。また、内筒部12が白金製の板材12Aから形成されているため、電着した白金の薄膜よりも電気めっきを行うことによる消耗量を少なくすることができる。このように、このアノード10は交換頻度を少なくすることができ、追加加工費を低減することができる。
【0017】
したがって、実施例のアノード10及びそれを備えた高速めっき装置は、長期間、良好にめっきを行うことができる。
【0018】
また、チタン製の平板材11Aに白金製の平板材12Aを重ね合わせて面同士を溶接した後、円筒状になるように丸めて端面を付き合わせて溶接することによって、アノード10を成形したので、チタン製の平板材11Aから形成した外筒部11と、白金製の平板材12Aから形成した外筒部11とからなる円筒状のアノード10を容易に成形することができる。
【0019】
第1給電部材20は、
図1、
図2、及び
図4に示すように、アノード10の上下端部の夫々に外嵌したリング部材13の間に取り付けた第1部材21と第2部材22とから形成されている。第1部材21は銅板であり、第2部材22は第1部材21に比べて薄い銅板から形成されている。第1部材21は、アノード10に沿って上下方向に延びた縦長長方形の平板であり、左右中央部が鉛直方向に一直線上に延びるアノード10の外周面に接触している。第2部材22は、両端部が第1部材21に当接して上下方向に延びた縦長長方形の平板であり、この両端部が複数のボルトによって第1部材21にボルト締めされている。第2部材22は、第1部材21にボルト締めされた状態で、アノード10を覆うように中央部がU字状に前方に膨らんでおり、内面がアノード10の第1部材21から離れた半周面に接触している。第1給電部材20は、第1部材21と第2部材22とを締結しているボルトを緩めることによって、アノード10を取り外し、交換することができる。
【0020】
アノード10は、
図1及び
図2に示すように、上端部を上部受部材80によって支持され、下端部を下部受部材90によって支持されている。上部受部材80は、アノード10を挿通する開口を有した平板状の第1固定部材100上に固定されている。下部受部材90は、後述する支持棒15が挿通する開口を有した平板状の第2固定部材101上に固定されている。第2固定部材101は第1固定部材100の下面から下方に垂下した4つの連結部材102によって第1固定部材100の下方に連結されている。
【0021】
上部受部材80は、外形状が直方体形状であり、
図5に示すように、鉛直上方に開口した上部空間81と、この上部空間81の下端に連続して鉛直下方に開口した下部空間82とを有している。上部受部材80の上部空間81及び下部空間82の夫々の内周面は水平断面形状が同心円形状に形成されている。上部空間81は後述するベース部材85の下部が上方から挿入されている。また、一直線上に配置され、ベース部材85より下方の上部空間81内で先端が対向している第2給電部材30が上部空間81の中心に向かって進退自在に配置されている。上部空間81は、
図2及び
図5に示すように、連続して水平方向に延びて上部受部材80の側面に開口しためっき液の流出口83を有している。めっき液の流出口83はL字状の流出管61が接続されている。
【0022】
上部受部材80の下部空間82は、
図1、
図2、及び
図5に示すように、リング部材13を外嵌したアノード10の上端部が挿入されている。下部空間82の内周面とリング部材13の外周面との間に2個の耐食性を有するOリングR1が介在している。これによって、上部受部材80の下部空間82とアノード10との連結箇所からめっき液が漏洩することを防止している。
【0023】
下部受部材90は、外形状が直方体形状であり、
図6に示すように、鉛直上方に開口した上部空間91と、この上部空間91の下端に連続した下部空間92とを有している。下部受部材90の上部空間91及び下部空間92の夫々の内周面は水平断面形状が同心円形状に形成されている。上部空間91はリング部材13を外嵌したアノード10の下端部が挿入されている。上部空間91の内周面とリング部材13の外周面との間に2個の耐食性を有するOリングR2が介在している。これによって、下部受部材90の上部空間91とアノード10との連結箇所からめっき液が漏洩することを防止している。
【0024】
下部受部材90の下部空間92は、
図1、
図2、及び
図6に示すように、連続して水平方向に延びて下部受部材90の側面に開口しためっき液の流入口93を有している。めっき液の流入口93は流入管62が接続されている。また、下部空間92は、連続して鉛直下方に延びて下部受部材90の下端面に開口した挿通口94を有している。挿通口94、下部受部材90の下部空間92及び上部空間91の夫々の内周面は水平断面形状が同心円形状に形成されている。この挿通口94は円柱形状の支持棒15が昇降自在に挿通している。
【0025】
支持棒15は上端に上方に開口した凹部16を有している。この凹部16は円柱形状の被めっき物1の下端部が挿入される。また、支持棒15は下端部が図示しないエアシリンダのピストンロッドに連結している。このため、このエアシリンダを駆動することによって、アノード10の中心軸上を支持棒15が昇降することができる。挿通口94の内周面と支持棒15との間に2個の耐食性を有するOリングR3及び1個のダストシールS1が介在している。これによって、挿通口94と支持棒15との間からめっき液が漏洩することを防止しつつ、外部からほこりが入り込むことを防止している。
【0026】
図1及び
図8に示すように、上部受部材80の反対側の2側面から上部空間81に向けて一直線上に貫通した2個の貫通孔84の夫々に第2給電部材30が挿入されている。これら第2給電部材30は、前述したように、一直線上に配置され、ベース部材85より下方の上部空間81内で先端が対向している。また、各第2給電部材30は、
図7に示すように、上部受部材80の側面より外側で後端が把持部材130を介してエアシリンダ110のピストンロッド111に連結している。各エアシリンダ110は第1固定部材100の両端部から立ち上がった固定壁103に固定されている。このため、エアシリンダ110を駆動することによって、各第2給電部材30は上部空間81の中心に向かって進退自在である。つまり、各第2給電部材30は、上部空間81の中心に配置された被めっき物1に向かって、前進位置と後退位置との間を進退自在である。各第2給電部材30は前進位置で先端部が円柱形状の被めっき物1の外周面に接触し、後退位置で先端部が被めっき物1の外周面から離れる。また、第2給電部材30の後端部を把持する把持部材130に略U字状に曲がった銅製の給電板71の一端部が連結している。各給電板71の他端部は銅製の連結板72で連結されている。各給電板71は各第2給電部材30の進退に追随するように変形することができる。また、各給電板71は電源75に接続されている。
【0027】
各第2給電部材30は進退方向を軸方向にした円柱形状である。また、
図8に示すように、各第2給電部材30の外周面と各貫通孔84の内周面との間に2個の耐食性を有するOリングR4が介在している。これによって、各第2給電部材30と上部受部材80の上部空間81との間からめっき液が漏洩することなく、各第2給電部材30はスムーズに進退することができる。
【0028】
また、各第2給電部材30は、
図7〜
図9に示すように、上方から見た平面視において、両側より中心が後方に位置したV字状に先端が切欠かれている。これら第2給電部材30は、
図9に示すように、円柱形状である銅製の中心部材31と、中心部材31の周囲を被覆するチタン製の被覆部材32で構成されている。中心部材31の直径は被覆部材32の外径の90%〜50%の間である。ベース部材85より下方の上部空間81内には、めっき液が充満するため、第2給電部材30はめっき液が接液する部位をチタン製の被覆部材32で被覆している。このため、この第2給電部材30はめっき液に対する耐食性が向上している。よって、この第2給電部材30の交換頻度を少なくすることができる。また、この第2給電部材30は、チタンに比べて電気伝導率が高い銅製の中心部材31を備えているため、チタンのみで形成した給電部材に比べ、給電時の発熱量を抑制することができ、めっき液の温度上昇を少なくすることができる。
【0029】
したがって、実施例の第2給電部材30及びそれを備えた高速めっき装置は、長期間、良好にめっきを行うことができる。
【0030】
この第2給電部材30は、次に説明するように製造される。先ず、
図9に示すように、中心部材31が挿入することができる円柱形状の挿入空間を被覆部材32に形成しつつ、その内周面にねじ山を切る。同じねじ径で中心部材31を雄ねじに加工する。そして、中心部材31を被覆部材32の挿入空間にねじ込み、被覆部材32の挿入口でろう付けして第2給電部材30を製造する。第2給電部材30の中心部材31は、後端部が被覆部材32から露出している。この露出した中心部材31は把持部材130を介して電源75からの通電部として利用される。
【0031】
保持装置40は、
図2、
図5、及び
図10に示すように、上部受部材80の上部空間81に上方から下部が挿入されたベース部材85を有している。ベース部材85は、下部の外形状が円柱形状であり、上部の外形状が直方体形状である。上部受部材80も外形状が直方体形状であり、上部受部材80とベース部材85とは、上方から見た平面視において、外周縁を形成する各4辺が平行になるように組み合わされている。上部受部材80の上面とベース部材85の下部の上端から水平方向に拡がった面との間に耐食性を有するOリングR5が介在している。これによって、上部受部材80とベース部材85との間からめっき液が漏洩することを防止している。
【0032】
ベース部材85は、鉛直上方に開口し、下部中央に下方に開口した連通口87を有した収納部86を有している。収納部86及び連通口87の内周面は水平断面形状が同心円形状に形成されている。連通口87は、収納部86の内周面よりも径が小さく、円柱形状の被めっき物1よりも径が僅かに大きく形成されており、被めっき物1が挿通することができる。
【0033】
収納部86は一対の保持部材41を収納している。ベース部材85の収納部86と、ベース部材85の上部開口を塞ぐシールカバー88とによって保持室45が形成されている。シールカバー88は、円盤形状の上面部88Aと、上面部88Aの周縁から下方に延びた側面88B部とを有している。上面部88Aはエアー挿入口89が貫設されている。エアー挿入口89にはエアーチューブ52の一端部が接続されている。エアーチューブ52の他端部はコンプレッサー51に接続されている。このように、加圧装置50はコンプレッサー51とエアーチューブ52とを有している。シールカバー88は、図示しない移動装置によって、ベース部材85の上部開口を塞ぐ位置に移動することができ、その位置で下方に押圧された状態になる。ベース部材85の上面とシールカバー88の側面部の下面と間に1個のOリングR6が介在している。これによって、ベース部材85とシールカバー88との間から空気が漏れることを防止している。
【0034】
各保持部材41は保持部本体42と当接部43とを有している。各保持部本体42は、半円柱形状であり、平面部の軸部に沿った中央が半円柱形状に凹んだ凹部44Aを形成している。この凹部44Aは円柱形状の被めっき物1の外径よりも大きく形成されている。各保持部本体42は平面部44Bが対向するように配置されている。
【0035】
当接部43は、
図10に示すように、上方から見た平面視で長方形状であるスポンジシート46で形成されている。このスポンジシート46は耐薬品性を有した弾性体である。スポンジシート46の長辺部の中央部に半円形状に切欠いた切欠き部が当接部43である。当接部43は、円柱形状の被めっき物1の外径よりも小さい径で形成されており、被めっき物1の外周面に当接する。つまり、当接部43は当接する被めっき物1の側面形状よりも小さい相似形にスポンジシート46を切欠いて形成されている。このため、当接部43は被めっき物1の外周面に隙間なく当接することができる。
【0036】
各保持部本体42は、
図5に示すように、対向する面であって、高さ方向に離れた位置の2か所にスポンジシート46を挟持する水平方向に延びた溝部47A、47Bを形成している。上側の溝部47Aは薄手のスポンジシート46を2枚重ねて挿入して挟持しており、下側の溝部47Bは厚手のスポンジシート46を1枚挿入して挟持している。
【0037】
ベース部材85は、
図10に示すように、第2給電部材30を挿入した上部受部材80の側面に直交する2側面にエアシリンダ120を取り付けている。ベース部材85は、この2側面から収納部86内に貫通し、各エアシリンダ120のピストンロッド121が挿通する挿通孔85Aを有している。この挿通孔85Aの内周面とピストンロッド121の外周面との間に1個のOリングR7が介在している。これによって、挿通孔とピストンロッドとの間から空気が漏れることを防止している。
【0038】
各エアシリンダ120のピストンロッド121は先端部がベース部材85の保持室45内で保持部本体42に連結している。各保持部材41は、保持部本体42の平面部44B及びスポンジシート46の端面同士が離れ、保持部本体42の円弧状の側面の一部分がベース部材85の内周面に当接する後退位置と、スポンジシート46の対向する端面同士が接触し、スポンジシート46の当接部43が被めっき物1の両側から同一外周面上に隙間なく当接して挟持した前進位置との間を進退自在である。
【0039】
図5に示すように、保持部本体42の下面とベース部材85の収納部86の底面との間に耐食性を有するOリングR8が介在している。これによって、保持部本体42とベース部材85との間からめっき液が漏洩することを防止している。
【0040】
循環装置60は、
図1及び
図2に示すように、上部受部材80の側面に開口しためっき液の流出口83に接続したL字状の流出管61と下部受部材90の側面に開口しためっき液の流入口93に接続した流入管62とを有する循環路63と、この循環路63の途中に設けためっき液管理槽64及びポンプ65とを有している。循環装置60は、ポンプ65を駆動すると、めっき液管理槽64内のめっき液を下部受部材90のめっき液の流入口93へ送り、その後、下部受部材90、アノード10、上部受部材80、めっき液の流出口83の順に通過して、めっき液管理槽64に戻る循環路63を巡回させることができる。
【0041】
電源装置70は、
図1に示すように、第1給電部材20を介してアノード10に正電圧を印加し、第2給電部材30を介して被めっき物1の負電圧を印加するように電源75が接続されている。
【0042】
このような構成を有する高速めっき装置のめっき工程を以下に説明する。
【0043】
先ず、高速めっき装置は、
図11及び
図12に示すように、各第2給電部材30及び各保持部材41が後退位置に位置し、支持棒15が上昇した状態で、チャック5に上端部が把持された被めっき物1が下降してくることを待機する。そして、ベース部材85の上部開口から被めっき物1を下降させ、
図13に示すように、被めっき物1の下端部を支持棒15の上端で上方に開口した凹部16に挿入する。
【0044】
さらに、被めっき物1の上端部を把持したチャック5を下降させることによって、支持棒15の下端部に連結している図示しないエアシリンダのピストンロッドが下降し、被めっき物1がめっき位置に下降する。つまり、被めっき物1をアノード10との間にめっき液が流動する空間を形成した状態に配置する。
【0045】
この状態で、第2給電部材30の後端を把持部材130を介して連結しているエアシリンダ110のピストンロッド111が前進する。つまり、第2給電部材30が被めっき物1に向かって前進位置に移動し、
図14及び
図15に示すように、第2給電部材30の先端部が被めっき物1の上部の外周面に接触して、被めっき物1を保持する。この時点では、まだ、各保持部材41は後退位置に位置している。そして、チャック5が被めっき物1の上端部を放して上昇する。
【0046】
次に、各保持部材41の保持部本体42に連結しているエアシリンダ120のピストンロッド121が前進する。つまり、各保持部本体42は、
図16及び
図17に示すように、スポンジシート46の当接部43が被めっき物1の両側から同一外周面上に隙間なく当接して挟持した前進位置に移動する。また、各スポンジシート46の他の部分も対向している端面同士が隙間なく当接し合い、保持部本体42の対向する平面部同士が接触した状態になる。
【0047】
次に、
図1、
図2、及び
図18に示すように、シールカバー88が移動装置によってベース部材85の上部開口を塞ぐ位置に移動し、その位置で下方に押圧された状態になる。そして、コンプレッサー51が駆動し、シールカバー88のエアー挿入口89に空気を送り込み、保持室45内を加圧する。この際、後述するようにめっき液が循環し、被めっき物1とアノード10との間をめっき液が流動している領域(この領域が液槽に相当する)の内圧以上に保持室45内の内圧を維持するように、コンプレッサー51を駆動して保持室45内に空気を送り込む。
【0048】
この状態で、アノード10の軸上に被めっき物1が配置されている。つまり、アノード10の内周面と被めっき物1の外周面とが等間隔に離れており、その空間にめっき液が流動することになる。
【0049】
次に、循環装置60のポンプ65を駆動して、めっき液管理槽64内のめっき液を下部受部材90のめっき液の流入口93へ送り、その後、下部受部材90、アノード10、上部受部材80、めっき液の流出口83の順に通過して、めっき液管理槽64に戻る循環路63を巡回させる。この際、アノード10内で被めっき物1との間にめっき液が流動する。
【0050】
そして、電源装置70から第1給電部材20及び第2給電部材30に通電し、アノード10に正電圧を印加し、被めっき物1に負電圧を印加して、高速めっきを実行する。
【0051】
このように、この高速めっき装置は、高速めっきを実行するに際し、円柱形状の被めっき物1の同一外周面上に隙間なく保持装置40の当接部43が当接し、この当接部43は耐薬品性を有する弾性体であるスポンジシート46で構成されている。さらに、コンプレッサー51が空気を送り込んで保持室45内を加圧するようにしている。このため、スポンジシート46で構成された当接部43は、空気圧で押圧され、被めっき物1の外周面に密接させることができる。また、保持室45内が加圧されることによって、当接部43と被めっき物1との境界部や、当接部43同士の境界部から保持室45側に漏洩しようとするめっき液が空気圧で押し返される。このため、この保持装置40はベース部材85の下方からベース部材85の収納部86内にめっき液が漏洩することを確実に防止することができる。また、この保持装置40は当接部43を弾性体であるスポンジシート46で構成しているため、被めっき物1の外周面形状が変化しても被めっき物1の外周面に当接部43を密接させることができる。このため、この保持装置40は複数種類の被めっき物1に対応することができる。また、この保持装置40は当接部43を構成するスポンジシート46が耐薬品性を有しているため、めっき液による当接部43の劣化を防止し、めっき液の漏洩を長期間防止することができる。
【0052】
したがって、実施例の保持装置40及びそれを備えた高速めっき装置は、複数種類の被めっき物1を保持することができ、めっき液の漏洩を確実に防止することができる。
【0053】
高速めっきを終了すると、この高速めっき装置は、電源装置70から第1給電部材20及び第2給電部材30への通電を停止する。また、循環装置60のポンプ65も停止して、めっき液をアノード10内から排出してめっき液管理槽64内に貯留する。そして、シールカバー88が移動装置によって、ベース部材85の上部開口を塞ぐ位置から退避位置に移動する。すると、各保持部材41が後退位置に移動し、被めっき物1の上端部をチャック5が把持して、第2給電部材30が後退位置に移動する。そして、チャック5が被めっき物1を引上げつつ、支持棒15が被めっき物1を押し上げて、被めっき物1をベース部材85の上部開口から引き出して、めっき工程を終了する。
【0054】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、アノードを円筒形状に形成したが、他の形状の被めっき物をめっきする場合はその形状に合わせた形状に形成するとよい。
(2)実施例では、第2給電部材の中心部材と被覆部材をねじ結合したが、被覆部材の挿入空間の内周面と、中心部材の外周面とをテーパー形状にして、被覆部材の挿入空間に中心部材を圧入してもよい。
(3)実施例では、第2給電部材の被覆部材がめっき液が接液する部位よりも広い範囲で中心部材を被覆していたが、被覆部材は少なくともめっき液が接液する部位を被覆するようにすればよい。
(4)実施例では、スポンジシートの長辺部の中央部を半円形状に切欠いて当接部にしたが、切欠き形状は被めっき物の形状に合わせればよい。また、切欠きが無くてもよい。
(5)実施例では、被めっき物を2つの保持部材によって2方向から挟持するようにしたが、3つ以上の保持部材によって被めっき物の同一外周面上を隙間なく当接部が当接するようにしてもよい。
(6)実施例では、保持部本体にスポンジシートを挟持する水部を高さ方向に離れた位置に2か所設けたが、1か所のみでもよいし、3か所以上設けてもよい。
(7)実施例では、スポンジシートを1枚又は2枚重ねて保持部本体の溝部に挿入して挟持させたが、3枚以上重ねて保持部本体の溝部に挿入して挟持させてもよい。