【解決手段】引き出し1は、物G1を収納する収納凹部11を有する引き出し本体10が樹脂成形品とされ、キャビネット本体90から引き出し方向D1へ引き出し可能である。収納凹部11は、第一の底面31と、該第一の底面31よりも引き出し方向D1側(手前側S1)に設けられ第一の底面31よりも高くされた第二の底面32とを有し、第一の底面31上の空間と第二の底面32上の空間とが繋がった共通の収納空間SP2が形成されている。キャビネット100は、キャビネット本体90に対して引き出し1を引き出し可能に収容する。
  前記収納凹部における前記第一の底面と前記第二の底面との繋がり部は、前記第一の底面から前記第二の底面に向かって斜めに上がっていることを特徴とする請求項1に記載の引き出し。
【発明を実施するための形態】
【0010】
  以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
 
【0011】
(1)本技術の概要:
  まず、
図1〜7を参照して本技術の概要を説明する。
 
【0012】
  引き出し1は、物G1を収納する収納凹部11を有する引き出し本体10が樹脂成形品とされ、キャビネット本体90から引き出し方向D1へ引き出し可能である。前記収納凹部11は、第一の底面31と、該第一の底面31よりも前記引き出し方向D1側(手前側S1)に設けられ前記第一の底面31よりも高くされた第二の底面32とを有し、前記第一の底面31上の空間と前記第二の底面32上の空間とが繋がった共通の収納空間SP2が形成されている。すなわち、引き出し方向D1において第一及び第二の底面31,32上の空間が繋がった共通の収納空間SP2が形成されているので、
図6(a)等に示すように長い物G1を引き出し方向D1に向けて収納空間SP2に収納することができる。第一及び第二の底面31,32上に跨った収納物G1は、第二の底面32よりも低い第一の底面31との間に生じる隙間CL1に指を入れて取り出すことができるので、取り出し易い。
 
【0013】
  前記収納凹部11における前記第一の底面31と前記第二の底面32との繋がり部40は、前記第一の底面31から前記第二の底面32に向かって斜めに上がってもよい。
図6(a)等に示すように短くて引き出し方向D1側(手前側S1)の端部が繋がり部40にかかった収納物G2は、第一の底面31との間に生じる隙間CL1に指を入れて取り出すことができる。従って、本態様は、長さの短い収納物G2を取り出し易くすることができる。
 
【0014】
  前記収納凹部11は、前記第一の底面31よりも側方D4に設けられた第三の底面33を有してもよい。前記収納凹部11における前記第一の底面31と前記第三の底面33との境界部50は、前記引き出し方向D1における途中51から前記引き出し方向D1側(手前側S1)に前記第一の底面31と前記第三の底面33とを仕切る仕切り54が設けられてもよい。前記共通の収納空間SP2は、前記境界部50の途中51から前記引き出し方向D1とは反対方向(収容方向D2)の側(奥側S2)において前記第三の底面33上の空間と繋がってもよい。本態様は、第一の底面31と第三の底面33との境界部50の引き出し方向D1側(手前側S1)が仕切られて反対方向(収容方向D2)側(奥側S2)に第一の底面31上の空間と第三の底面33上の空間とで共通の収納空間SP2があるので、
図7に示すように先端部の大きい物G3を引き出し方向D1側(手前側S1)で整理しながら収納することができる。
  なお、物G1〜G3を総称するときは、「物G1」と示す。
 
【0015】
(2)キャビネットを有するシステムキッチンの説明:
  
図1は、キャビネット本体90に対して引き出し1を引き出し方向D1へ引き出し可能に収容するキッチン用のフロアキャビネット100を設置したシステムキッチンK1の要部の構築例を分解して示している。図中、符号D1は引き出し1の引き出し方向、符号D2は引き出し方向D1とは反対の収容方向、符号D4Lは引き出し方向D1側(手前側S1)から見たときの左方、符号D4Rは手前側S1から見たときの右方、符号D5は上方、符号D6は下方、符号S4Lは左側、符号S4Rは右側、を示している。前述の左方D4L及び右方D4Rを側方D4と総称する。方向D1,D2と方向D4L,D4Rと方向D5,D6は、互いに交わっていればよく、互いに直交していることが好ましいものの、直交しない場合も本発明に含まれる。誤差により厳密な直交からずれることは、直交することに含まれる。分かり易く示すため、各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。
 
【0016】
  システムキッチンK1は、複数の構成要素が集合して形成される。各フロアキャビネット100,101,102は、隣り合うフロアキャビネット同士で対面する側板がねじやナット等などの固定部品で連結されることにより一体化され、上部の開口部にキッチンカウンターK2が載置されて固定される。このカウンターK2には、シンクK3や加熱調理器具K4や食器洗浄機K5が組み込まれている。キャビネット100〜102は各種の基準間口幅があり、各種の基準間口幅のフロアキャビネットが選択されて組み合わされることによりシステムキッチンK1が構築される。
図1に示す引き出し1は、シンクK3や加熱調理器具K4や食器洗浄機K5を除いた例えば30cm程度の幅とされている。
 
【0017】
  キャビネット本体90は、キャビネット100のうち引き出し1を含まない外側の箱をいうものとする。キャビネット本体90は、例えば、一対の側板92,92の間に底板93と背板が架け渡されて引き出し1の収容空間91が形成された箱体で構成することができる。側板92と底板93の少なくとも一方には、引き出し1を引き出し方向D1及び収容方向D2へスライドさせるためのレールが設けられてもよい。例えば、固定部71と可動部72(
図5参照)を有するスライドレール70を用いる場合、固定部71がキャビネット本体90に取り付けられ、可動部72が引き出し本体10に取り付けられる。引き出し本体10の底部12にスライドレール可動部72を固定し、キャビネット本体90の側板92と底板93の少なくとも一方にスライドレール固定部71を固定すると、ユーザーからスライドレール70が見え難く、引き出し1の見た目を向上させることができる。
  キャビネット本体の材質は、特に限定されず、木質素材、熱可塑性樹脂といった樹脂材料、ステンレス等の金属、等とすることができる。
 
【0018】
(3)引き出しの構成:
  
図2は、引き出し1の外観を示している。引き出し1は、物G1を収納する収納凹部11を有する引き出し本体10を備え、キャビネット本体90から引き出し方向D1へ引き出し可能である。引き出し本体10の前部13には、化粧板60及び取っ手61が取り付けられている。ただし、
図2〜4,7では、取っ手61の図示を省略している。
 
【0019】
  図3は、引き出し1の上側を示している。
図4は、
図3のA1−A1の位置であり、引き出し方向D1に沿った中心線C1の位置で引き出し1を切断した垂直断面図である。
図5は、
図3のA2−A2の位置で引き出し1を切断した垂直断面図である。これらの図に示す引き出し本体10は、熱可塑性樹脂といった樹脂材料で一体成形した樹脂成形品とされている。樹脂材料の成形には、射出成形等を用いることができる。
 
【0020】
  図2に示す引き出し本体10は、上部が開口した収納凹部11を一体形成する底部12、前部13、背部14、及び、側部20L,20Rを有している。ここで、側部20L,20Rを側部20と総称する。収納凹部11には、仕切り15,54が形成されている。底部12の外底面12oの左右両側には、
図5に示すようにスライドレール70の可動部72が取り付けられてもよい。成形の都合上、仕切り15,54や側部20等に肉抜部15c,54c,20cが形成されている。
 
【0021】
  収納凹部11は、物G1を収納する収納空間SP1を形成している。
図4等に示す収納凹部11は、比較的低い第一の底面31と、比較的高い第二の底面32とを有している。第一の底面31よりも高い第二の底面32は、第一の底面31よりも手前側S1に配置されている。第一の底面31上の空間と第二の底面32上の空間とは、互いに繋がった共通の収納空間SP2とされている。共通の収納空間SP2は、収納空間SP1全体でもよいし、収納空間SP1の一部でもよい。収納凹部11における両底面31,底面32の繋がり部40は、第一の底面31から第二の底面32に向かって斜めに上がっている。
図4や
図6(a)等に示す繋がり部40は、引き出し方向D1に沿った垂直断面において下に凸の曲線状となる曲面に形成されている。なお、斜めに上がることには、
図6(c)に示すように断面直線状に上がることのみならず、
図6(a)に示すように断面曲線状に上がること等も含まれる。断面曲線状に上がる繋がり部の形状には、下に凸の断面曲線状となる曲面の他、上に凸の断面曲線状となる曲面等も含まれる。
 
【0022】
  図3等に示す収納凹部11は、第一及び第二の底面31,32よりも側方D4に設けられた第三の底面33を有している。第二の底面32と第三の底面33とは、繋がっている。収納凹部11における第一の底面31と第三の底面33との境界部50は、引き出し方向D1における途中51から引き出し方向D1側(手前側S1)の部分52に両底面31,33を仕切る仕切り54が設けられている。一方、境界部50うち引き出し方向D1における途中51から引き出し方向D1とは反対方向(収容方向D2)の側(奥側S2)の部分53には、仕切りが設けられていない。従って、共通の収納空間SP2は、境界部50の途中51から奥側S2において第三の底面33上の空間と繋がっている。
図5等に示す第三の底面33は、第一の底面31よりも高くされ、第二の底面32と同じ高さとされている。従って、境界部50の奥側S2の部分53において両底面31,33が段状に繋がっている。中央側の第一の底面31よりも端側の第三の底面33が高いのは、第三の底面33の下にスライドレール可動部72が設けられているためである。しかしながら、境界部50の奥側S2の部分53で両底面31,33上の空間が繋がっていることにより、例えば
図7に示すように第一の底面31に収まりきらない物G3を両底面31,33にかけて収納することができる。むろん、第三の底面33の下にスライドレールを配置する必要が無ければ、第三の底面33を低くして例えば第一の底面31と同じ高さにしてもよい。
  上述したような第三の底面33は、第一の底面31から左側S4Lにのみ配置されるのみならず、第一の底面31から右側S4Rにのみ配置されてもよいし、第一の底面31の左右両側に配置されてもよい。
 
【0023】
  また、
図3等に示す収納凹部11は、第一の底面31よりも側方D4に設けられた第四の底面34も有している。第四の底面34は、引き出し方向D1に沿った仕切り15で第一の底面31と仕切られ、上述した共通の収納空間SP2から分けられている。
図5等に示す第四の底面34は、下にスライドレール可動部72が設けられるため第一の底面31よりも高くされ、第二の底面32と同じ高さとされている。むろん、第四の底面34の下にスライドレールを配置する必要が無ければ、第四の底面34を低くして例えば第一の底面31と同じ高さにしてもよい。
 
【0024】
  さらに、
図3等に示す収納凹部11は、第一の底面31よりも奥側S2に設けられた比較的低い第五の底面35と、第三の底面33よりも奥側S2に設けられた比較的高い第六の底面36とを有している。両底面35,36は、引き出し本体10の幅方向(符号D4の方向)に沿った仕切り15で第一及び第三の底面31,33と仕切られ、上述した共通の収納空間SP2から分けられている。第五の底面35と第四の底面34とは、引き出し方向D1に沿った仕切り15で仕切られている。
 
【0025】
  図3に示す第一及び第二の底面31,32並びに繋がり部40は、引き出し本体10の幅方向(符号D4の方向)の中央(中心線C1の位置)を通っている。第一及び第二の底面31,32並びに繋がり部40の幅W1は、引き出し本体10全体の幅W0でもよいが、幅W0よりも狭くされてもよい。第一の底面31から側部20Lの外側面までの幅をW2、第一の底面31から側部20Rの外側面までの幅をW3、とすると、W1=W0−W2−W3である。引き出し本体10全体の幅W0に対する幅W1の比W1/W0は、特に限定されないが、例えば、0.2以上0.7以下程度、より狭い範囲として0.3以上0.6以下程度とされる。
図3に示す比W1/W0は、約0.38である。左側S4Lの幅W2の比W2/W0や右側S4Rの幅W3の比W3/W0は、特に限定されないが、例えば、0.15以上0.4以下程度、より狭い範囲として0.2以上0.35以下程度とされる。
図3に示す比W2/W0は約0.24であり、
図3に示す比W3/W0は約0.38である。
 
【0026】
  前後方向(符号D1,D2の方向)において、
図3等に例示するように第一及び第二の底面31,32並びに繋がり部40の手前側S1と奥側S2のいずれか一方に両底面31,32に含まれない底面30が手前側S1と奥側S2のいずれか一方に設けられてもよい。むろん、両底面31,32並びに繋がり部40は、引き出し本体10のほぼ全体にわたって設けられてもよい。
 
【0027】
(4)引き出しの作用及び効果の説明:
  次に、引き出し1の作用及び効果を説明する。
  
図1に示すようにキャビネット本体90に収容されている引き出し1を引き出すと、引き出し本体10が現れ、収納凹部11に対して物G1を出し入れすることができる。ここで、引き出し方向D1において第一及び第二の底面31,32上の空間が繋がった共通の収納空間SP2が形成されているので、
図6(a)の例のように長い物G1(例えば菜箸やお玉等)を引き出し方向D1に向けて収納空間SP2に収納することができる。第一及び第二の底面31,32上に跨った収納物G1は、第二の底面32よりも低い第一の底面31との間に生じる隙間CL1に指を入れて取り出すことができるので、取り出し易い。このような効果は、
図6(b)に示すように略鉛直面とされた繋がり部40で引き出し方向D1において底面31,32が段状に繋がった収納凹部11でも得られる。むろん、
図6(c)に示すように断面直線状の傾斜面とされた繋がり部40で引き出し方向D1において底面31,32が繋がった収納凹部11や、図示していないが上に凸の断面曲線状の曲面とされた繋がり部で引き出し方向D1において底面31,32が繋がった収納凹部等でも、同様の効果が得られる。
 
【0028】
  また、
図6(a)の例のように第一の底面31における引き出し方向D1の長さよりも短くて手前側S1の端部が繋がり部40にかかる収納物G2もある。この繋がり部40は第一の底面31から第二の底面32に向かって斜めに上がっているので、第一の底面31と収納物G2との間に生じる隙間CL1に指を入れることができる。これに対し、
図6(b)に示すように繋がり部40が略鉛直面であると、第一の底面31と収納物G2との間に隙間が生じないことになる。従って、
図6(a)に示すような引き出し1は、手前側S1の端部が繋がり部40にかかる収納物G2を取り出し易い。このような効果は、
図6(c)に示すように断面直線状の傾斜面とされた繋がり部40でも得られる。
  なお、
図6(a)の例のように繋がり部40が下に凸の断面曲線状であると、
図6(c)の例のように繋がり部40が断面直線状である場合と比べて隙間CL1が広がって指を入れ易くなり、収納物G2が取り出し易くなる。
 
【0029】
  さらに、第一の底面31と第三の底面33との境界部50の手前側S1が仕切られて奥側S2に共通の収納空間SP2があるので、
図7に示すように先端部の大きい物G3(例えばお玉やフライ返し等)を両底面31,33上にわたって収納することができる。収納物G3の手前側S1については、第一の底面31上から第二の底面32上にかけて収納することができる。すなわち、底面31,33の境界部50の手前側S1が仕切られて奥側S2に共通の収納空間SP2がある引き出し1は、先端部の大きい物G3を手前側S1で整理しながら収納することができる。
 
【0030】
  なお、引き出されている引き出し1を押すと、キャビネット本体90に引き出し1を収容することができる。
 
【0031】
(5)変形例:
  本発明は、種々の変形例が考えられる。
  例えば、引き出しは、システムキッチン以外の場所に設置される食器棚、洗面化粧台、等に設けられてもよい。
 
【0032】
  むろん、第一の底面31の側方に第三の底面33が無かったり、底面31,32に繋がり部40が第一の底面31から第二の底面32に向かって斜めに上がっていなくても、本技術の基本的な効果が得られる。
 
【0033】
(6)結び:
  以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、収納物を取り出し易い引き出し等の技術を提供することができる。むろん、従属請求項に係る構成要件を有しておらず独立請求項に係る構成要件のみからなる技術等でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
  また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。