である不織布であり、前記固着剤は、針入度(JIS K 2235)が10以下であることを特徴とする。針入度が10以下の固着剤を用いて吸水性樹脂粉末を固着させた場合、吸水性樹脂粉末の膨潤によって吸水性樹脂粉末を被覆する固着剤は容易に破断する。そのため、吸水性樹脂粉末の膨潤が固着剤に阻害されることがなく、吸水性樹脂粉末はその吸収性能を十分に発揮できる。
前記不織布を構成する繊維が、第1成分からなる芯部および第2成分からなる鞘部から構成された偏芯芯鞘型の自発捲縮繊維、または、第1成分および第2成分から構成された並列型の自発捲縮繊維である請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収体。
前記吸水性樹脂粉末の重量平均粒子径が350μm〜500μmであり、粒子径150μm以下の粒子含有率が5質量%以下、粒子径850μm超の粒子含有率が5質量%以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の吸収体は、基材と、基材に固着剤によって固着された吸水性樹脂粉末とを有する。前記基材は、目付けが10g/m
2〜50g/m
2である不織布である。上記目付けを有する不織布は空隙率が大きく、この空隙に吸水性樹脂粉末を取り込むことができる。そのため、吸水性樹脂粉末と基材との接触面積が増大し、固着剤による固着性が向上する。そして、前記固着剤は、針入度(JIS K 2235)が10以下である。針入度が10以下の固着剤はゴム弾性を実質的に有さない。このような固着剤は引き伸ばすと容易に破断する。このような固着剤を用いて吸水性樹脂粉末を固着させた場合、吸水性樹脂粉末が膨潤すると、この膨潤力によって吸水性樹脂粉末を被覆する固着剤は容易に破断する。そのため、吸水性樹脂粉末の膨潤が固着剤に阻害されることがなく、吸水性樹脂粉末はその吸収性能を十分に発揮できる。
【0014】
基材
前記基材の目付けは、10g/m
2以上、好ましくは13g/m
2以上、より好ましくは15g/m
2以上であり、50g/m
2以下、好ましくは35g/m
2以下、より好ましくは25g/m
2以下である。目付けが50g/m
2を超えると風合いがか損なわれ、10g/m
2未満では吸水性樹脂粉末の不織布からの抜け落ちが発生してしまう。
【0015】
本発明の基材に使用される不織布は特に限定されず、透液性不織布および不透液性不織布のいずれも使用できる。透液性不織布としては、例えば、親水性繊維により形成された不織布、疎水性繊維により形成された不織布に親水性処理を施した不織布が挙げられる。不透液性不織布としては、例えば、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布が挙げられる。親水性繊維の材質としては、セルロース、レーヨン、コットン等が用いられる。疎水性繊維の材質としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミドなどが挙げられる。不織布の種類としては、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布が挙げられ、エアスルー不織布、エアレイド不織布が好ましい。
【0016】
前記親水性処理の方法としては、不織布を界面活性剤などの親水化油剤で処理(ディッピング、スプレー、グラビアコート)する方法などが挙げられる。
【0017】
前記不織布を構成する繊維の繊度は、1.0dtex以上が好ましく、より好ましくは1.2dtex以上、さらに好ましくは2.0dtex以上であり、5.0dtex以下が好ましく、より好ましくは4.0dtex以下、さらに好ましくは3.0dtex以下である。1.0dtex以上であれば不織布が適度に空隙を有するようになり、液の透過速度が良好となり、5.0dtex以下であれば不織布の空隙が大きくなりすぎず、吸水性樹脂粉末の脱落が抑制される。
【0018】
前記不織布を構成する繊維は捲縮繊維が好ましく、自発捲縮繊維がより好ましい。捲縮繊維を使用することで、吸水性樹脂粉末が繊維に絡みやすく、吸水性樹脂粉末の固着性が向上する。自発捲縮繊維としては、第1成分からなる芯部および第2成分からなる鞘部から構成された偏芯芯鞘型の自発捲縮繊維;第1成分および第2成分から構成された並列型の自発捲縮繊維;などが挙げられる。第1成分と第2成分との組合わせとしては、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド/ポリウレタン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどが挙げられる。これらの自発捲縮繊維は、第1成分と第2成分とが異なる熱収縮を有しており、熱処理を施すことで熱収縮差により捲縮が発現する。そのため、吸水性樹脂粉末を固着させる際の熱処理によって自発捲縮繊維が捲縮することで、吸水性樹脂粉末が不織布内に取り込まれ、吸水性樹脂粉末の脱落がより低減される。
【0019】
固着剤
前記固着剤の針入度は10以下、好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下である。針入度が10超では固着剤が吸水性樹脂粉末の膨潤により弾性変形しやすくなり、固着剤が破断せず吸水性樹脂粉末の膨潤を阻害してしまう。前記固着剤の針入度は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上である。
【0020】
前記固着剤の溶融温度は、50℃以上が好ましく、より好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、160℃以下が好ましく、より好ましくは155℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。溶融温度が50℃以上であれば吸収体が高温下にさらされた場合でも固着剤の溶融が抑制され、160℃以下であれば比較的低温で固着できるため、吸水性樹脂粉末を基材に固着させる際に基材の劣化を抑制できる。
【0021】
前記固着剤は、針入度が10以下のものであれば、特に限定されない。前記固着剤としては、例えば、天然ワックス、合成ワックスが挙げられる。天然ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどの植物由来のワックス;パラフィンワックス、マイクロスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油由来のワックス;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物由来のワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物由来のワックス;およびこれらの誘導体が挙げられる。合成ワックスとしては、オレフィンワックス、エステルワックス、アミドワックス、変性オレフィンワックス、アクリルオレフィンワックスなどが挙げられる。
【0022】
前記固着剤は、分子中に、エーテル基、エステル基、カルボキシル基、水酸基およびアミド基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する化合物であることが好ましい。分子中に上記の官能基を有することにより、吸水性樹脂粉末との間で水素結合を形成することができ、吸水性樹脂粉末の固着力が向上する。
【0023】
前記固着剤の粘度平均分子量は、500以上が好ましく、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上であり、80000以下が好ましく、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは60000以下である。粘度平均分子量が500以上であれば固着性がより良好となり、80000以下であれば固着剤の機械的強度が高くなりすぎず、吸水性樹脂粉末の膨張力によって容易に破断しやすくなり、吸水性樹脂粉末の吸収性を阻害することをより低減できる。
【0024】
吸水性樹脂粉末
次に、本発明で使用する吸水性樹脂粉末について説明する。本発明で使用する吸水性樹脂粉末は、特に限定されないが、アクリル酸を主構成成分とする(A)架橋重合体であって、そのカルボキシル基の少なくとも一部が中和されているものを使用することが好ましい。前記(A)架橋重合体を構成するアクリル酸成分の含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。アクリル酸成分の含有率が前記範囲内であれば、得られる吸水性樹脂粉末が、所望の吸収性能を発現しやすくなる。
【0025】
(A)架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部を中和する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、架橋重合体のカルボキシ基の少なくとも一部が、ナトリウムイオンで中和されていることが好ましい。なお、架橋重合体のカルボキシ基の中和は、重合して得られる架橋重合体のカルボキシ基を中和するようにしてもよいし、予め、中和された単量体を用いて架橋重合体を形成するようにしてもよい。
【0026】
架橋重合体のカルボキシ基の中和度は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。中和度が低すぎると、得られる吸水性樹脂粉末の吸収性能が低下する場合があるからである。また、中和度の上限は、特に限定されず、カルボキシ基のすべてが中和されていてもよい。なお、中和度は、下記式で求められる。
中和度(モル%)=100×「架橋重合体の中和されているカルボキシ基のモル数」/「架橋重合体が有するカルボキシ基の総モル数(中和、未中和を含む)」
【0027】
前記架橋重合体は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーと、(b)内部架橋剤とを含有する不飽和単量体組成物を重合して得られるものが好ましい。
【0028】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、少なくとも1個の水溶性置換基とエチレン性不飽和基とを有するモノマー等が使用できる。水溶性モノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つモノマーを意味する。また、(a2)加水分解性モノマーとは、50℃の水、必要により触媒(酸又は塩基等)の作用により、加水分解されて、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する。(a2)加水分解性モノマーの加水分解は、架橋重合体の重合中、重合後、および、これらの両方のいずれでもよいが、得られる吸水性樹脂粉末の分子量の観点等から重合後が好ましい。
【0029】
水溶性置換基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、スルホオキシ基、ホスホノ基、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、または、これらの塩、並びに、アンモニウム塩が挙げられ、カルボキシ基の塩(カルボキシレート)、スルホ基の塩(スルホネート)、アンモニウム塩が好ましい。また、塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アンモニウム塩は、第1級〜第3級アミンの塩または第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらの塩のうち、吸収特性の観点から、アルカリ金属塩及びアンモニウム塩が好ましく、アルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。
【0030】
前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数3〜30の不飽和カルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、クロトン酸および桂皮酸などの不飽和モノカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸、マレイン酸塩、フマル酸、シトラコン酸およびイタコン酸などの不飽和ジカルボン酸および/またはその塩;マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステルおよび/またはその塩などが挙げられる。なお、本発明の説明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0031】
スルホ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数2〜30のスルホン酸および/またはその塩が好ましい。スルホ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、および、α−メチルスチレンスルホン酸などの脂肪族又は芳香族ビニルスルホン酸;(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、および、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリロイル含有アルキルスルホン酸;及びアルキル(メタ)アリルスルホコハク酸エステルなどが挙げられる。
【0032】
スルホオキシ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの硫酸エステル;ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステルなどが挙げられる。
【0033】
ホスホノ基および/またはその塩を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸モノエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸ジエステル、および、(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸などが挙げられる。
【0034】
水酸基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アリルアルコール、および、(メタ)プロペニルアルコールなどの炭素数3〜15のモノエチレン性不飽和アルコール;炭素数2〜20のアルキレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリアルキレン(炭素数2〜4)グリコール(重量平均分子量100〜2000)などの2〜6価のポリオールのモノエチレン性不飽和カルボン酸エステル又はモノエチレン性不飽和エーテル等が含まれる。これらの具体例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ−オキシエチレン−オキシプロピレンモノ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられる。
【0035】
カルバモイル基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;N−メチルアクリルアミドなどのN−アルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−又はi−プロピルアクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(アルキルの炭素数1〜8)アクリルアミド;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミド;N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジヒドロキシアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アミドからなる基を有する不飽和モノマーとしては、これらの他に、炭素数5〜10のビニルラクタム(N−ビニルピロリドン等)等も使用できる。
【0036】
アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有エステルおよびモノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有アミドなどが挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有エステルとしては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジ(ヒドロキシアルキル)アミノアルキルエステル及びモルホリノアルキルエステル等が使用でき、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、
ジメチルアミノエチルフマレートおよびジメチルアミノエチルマレート等が挙げられる。モノエチレン性不飽和モノ−又はジ−カルボン酸のアミノ基含有アミドとしては、モノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性エチレン性不飽和モノマーとしては、これらの他に、4−ビニルピリジンおよび2−ビニルピリジンなどのビニルピリジンも使用できる。
【0037】
加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーとしては、特に限定されないが、加水分解により水溶性置換基となる加水分解性置換基を少なくとも1個有するエチレン性不飽和モノマーが好ましい。加水分解性置換基としては、酸無水物を含む基、エステル結合を含む基およびシアノ基などが挙げられる。
【0038】
酸無水物を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、炭素数4〜20の不飽和ジカルボン酸無水物等が用いられ、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。エステル結合を含む基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルなどのモノエチレン性不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル;および、酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリルなどのモノエチレン性不飽和アルコールのエステルが挙げられる。シアノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、および、5−ヘキセンニトリルなどの炭素数3〜6のビニル基含有のニトリル化合物が挙げられる。
【0039】
(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−95759号公報に記載のものを用いることができる。(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーはそれぞれ、単独で、または、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0040】
不飽和単量体組成物は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび(a2)加水分解性モノマーの他に、これらと共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーを用いることができる。共重合可能な(a3)その他のビニルモノマーとしては、疎水性ビニルモノマー等が使用できるが、これらに限定されるわけではない。(a3)その他のビニルモノマーとしては下記の(i)〜(iii)のビニルモノマー等が用いられる。
【0041】
(i)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2〜20の脂肪族エチレンモノマー;
エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセンおよびオクタデセンなどのアルケン;並びに、ブタジエンおよびイソプレンなどのアルカジエン。
(iii)炭素数5〜15の脂環式エチレンモノマー;
ピネン、リモネン及びインデンなどのモノエチレン性不飽和モノマー;並びに、シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネンなどのポリエチレン性ビニル重合性モノマー。
【0042】
(a3)その他のビニルモノマーとしては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0043】
本発明では、アクリル酸を主構成成分とする架橋重合体を得るという観点から、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または加水分解により(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーを生成する(a2)加水分解性モノマーとして、(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーを使用することが好ましい。(A)架橋重合体を形成する不飽和単量体組成物中の(a1)アクリル酸またはアクリル酸塩、あるいは、加水分解によりアクリル酸またはアクリル酸塩を生成する(a2)加水分解性モノマーの含有率は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。
【0044】
(b)内部架橋剤としては、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤、(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、かつ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤、および、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤などを挙げることができる。
【0045】
(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤としては、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレート、炭素数2〜10のポリアリルアミン及び炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられる。これらの具体例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2〜5)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びジグリセリンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
(b2)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも1個有し、かつ、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する内部架橋剤としては、炭素数6〜8のエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物、炭素数4〜8の水酸基を有するエチレン性不飽和化合物及び炭素数4〜8のイソシアナト基を有するエチレン性不飽和化合物などが挙げられる。これらの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びイソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0047】
(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する内部架橋剤としては、多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジン及び多価イソシアネートなどを挙げることができる。多価グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル及びグリセリンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。多価アミン化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミンなどが挙げられる。多価アジリジン化合物としては、日本触媒化学工業社製のケミタイト(登録商標)PZ−33{2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス(3−(1−アジリジニル)プロピネート)}、ケミタイトHZ−22{1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア}およびケミタイトDZ−22{ジフェニルメタン−ビス−4、4’−N、N’−ジエチレンウレア}などが挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。これらの内部架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。
【0048】
(b)内部架橋剤としては、吸収性能(特に吸収量及び吸収速度等)等の観点から、(b1)エチレン性不飽和基を2個以上有する内部架橋剤が好ましく、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルがより好ましく、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタンまたはペンタエリスリトールトリアリルエーテルがさらに好ましく、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが最も好ましい。
【0049】
(b)内部架橋剤としては、さらに、特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報、および、特開2005−95759号公報に記載のものを用いることができる。
【0050】
(A)架橋重合体の重合形態としては、従来から知られている方法等が使用でき、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法が適応できる。また、重合時の重合液の形状として、薄膜状及び噴霧状等であってもよい。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法及び等温重合法などが適用できる。重合方法としては、溶液重合法が好ましく、有機溶媒等を使用する必要がなく生産コスト面で有利なことから、水溶液重合法がより好ましい。
【0051】
重合によって得られる含水ゲル{架橋重合体と水とからなる}は、必要に応じて細断することができる。細断後のゲルの大きさ(最長径)は、50μm〜10cmが好ましく、100μm〜2cmがより好ましく、1mm〜1cmがさらに好ましい。この範囲であると、乾燥工程での乾燥性がさらに良好となる。
【0052】
細断は、公知の方法で行うことができ、例えば、ベックスミル、ラバーチョッパ、ファーマミル、ミンチ機、衝撃式粉砕機およびロール式粉砕機などの従来の細断装置を使用して細断できる。
【0053】
重合に溶媒(有機溶媒、水等)を使用する場合、重合後に溶媒を留去することが好ましい。溶媒に水を含む場合、留去後の水分(質量%)は、架橋重合体の質量(100質量%)に対して、0質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜10質量%、さらに好ましくは2質量%〜9質量%、最も好ましくは3質量%〜8質量%である。水分(質量%)が、前記範囲内であると、吸収性能及び乾燥後の吸水性樹脂粉末の壊れ性がさらに良好となる。
【0054】
なお、有機溶媒の含有率及び水分は、赤外水分測定器{(株)KETT社製JE400等:120±5℃、30分、加熱前の雰囲気湿度50±10%RH、ランプ仕様100V、40W}により加熱したときの加熱前後の測定試料の質量減量から求められる。
【0055】
溶媒(水を含む。)を留去する方法としては、80℃〜230℃の温度の熱風で留去(乾燥)する方法、100℃〜230℃に加熱されたドラムドライヤー等による薄膜乾燥法、(加熱)減圧乾燥法、凍結乾燥法、赤外線による乾燥法、デカンテーション及び濾過等が適用できる。
【0056】
(A)架橋重合体は、乾燥後に粉砕することができる。粉砕方法については、特に限定されず、例えば、ハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、ロール式粉砕機及びシェット気流式粉砕機などの通常の粉砕装置が使用できる。粉砕された(A)架橋重合体は、必要によりふるい分け等により粒度調整できる。
【0057】
必要によりふるい分けした場合の(A)架橋重合体の重量平均粒子径(μm)は、300μm以上が好ましく、より好ましくは350μm以上、さらに好ましくは400μm以上であり、500μm以下が好ましく、より好ましくは480μm以下、さらに好ましくは450μm以下である。(A)架橋重合体の重量平均粒子径(μm)が、前記範囲内であれば、吸収性能がさらに良好となる。
【0058】
なお、重量平均粒子径は、ロータップ試験篩振とう機及び標準ふるい(JIS Z8801−1:2006)を用いて、ペリーズ・ケミカル・エンジニアーズ・ハンドブック第6版(マックグローヒル・ブック・カンバニー、1984、21頁)に記載の方法で測定される。すなわち、JIS標準ふるいを、上から1000μm、850μm、710μm、500μm、425μm、355μm、250μm、150μm、125μm、75μm及び45μm、並びに受け皿の順等に組み合わせる。最上段のふるいに測定粒子の約50gを入れ、ロータップ試験篩振とう機で5分間振とうさせる。各ふるい及び受け皿上の測定粒子の質量を秤量し、その合計を100質量%として各ふるい上の粒子の質量分率を求め、この値を対数確率紙{横軸がふるいの目開き(粒子径)、縦軸が質量分率}にプロットした後、各点を結ぶ線を引き、質量分率が50質量%に対応する粒子径を求め、これを重量平均粒子径とする。
【0059】
また、微粒子の含有量が少ないほど吸収性能が良好となるため、全粒子に占める106μm以下(好ましくは150μm以下)の微粒子の含有量は5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは3質量%以下である。微粒子の含有量は、上記の質量平均粒径を求める際に作成するプロットを用いて求めることができる。さらに、吸水性樹脂粉末の基材に対する固着性の観点から、全粒子に占める850μm超の微粒子の含有量は通常0質量%であるが、750〜850μmの粒子は5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0060】
(A)架橋重合体は、さらに(B)表面改質剤で処理されてもよい。(B)表面改質剤としては、硫酸アルミニウム、カリウム明礬、アンモニウム明礬、ナトリウム明礬、(ポリ)塩化アルミニウム、これらの水和物などの多価金属化合物;ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンなどのポリカチオン化合物;無機微粒子;(B1)フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤;及び、(B2)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤などが挙げられる。
【0061】
前記無機微粒子としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、および、酸化ジルコニウムなどの酸化物、炭化珪素および炭化アルミニウムなどの炭化物、窒化チタンのような窒化物、および、これらの複合体(例えば、ゼオライトおよびタルクなど)などが挙げられる。これらのうち、酸化物が好ましく、さらに好ましくは酸化ケイ素である。無機微粒子の体積平均粒子径は、10nm〜5000nmが好ましく、より好ましくは30nm〜1000nm、さらに好ましくは50nm〜750nm、最も好ましくは90nm〜500nmである。なお、体積平均粒子経は、動的光散乱法により、溶媒中で測定される。具体的には、日機装株式会社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(光源:He−Neレーザー)を用いて、溶媒シクロヘキサン中で、25℃の温度で測定される。
【0062】
(B1)フッ素原子をもつ炭化水素基を含有する表面改質剤としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルケン、パーフルオロアリール、パーフルオロアルキルエーテル、パーフルオロアルキルカルボン酸またはその塩、パーフルオロアルキルアルコール、および、これらの2種以上の混合物等が含まれる。
【0063】
(B2)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤としては、ポリジメチルシロキサン;ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)変性ポリシロキサンなどのポリエーテル変性ポリシロキサン;カルボキシ変性ポリシロキサン;エポキシ変性ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン;アルコキシ変性ポリシロキサン、および、これらの混合物などが挙げられる。
【0064】
(B)表面改質剤としては、吸収特性の観点から、(B2)ポリシロキサン構造をもつ表面改質剤、および、無機微粒子が好ましく、アミノ変性ポリシロキサン、カルボキシ変性ポリシロキサン、および、シリカがより好ましい。
【0065】
(A)架橋重合体を(B)表面改質剤で処理する方法としては、(B)表面改質剤が(A)架橋重合体の表面に存在するように処理する方法であれば、特に限定されない。しかし、(B)表面改質剤は、(A)架橋重合体の含水ゲル又は(A)架橋重合体を重合する前の重合液ではなく、(A)架橋重合体の乾燥体と混合されることが表面の(B)表面改質剤の量をコントロールする観点から好ましい。なお、混合は、均一に行うことが好ましい。
【0066】
吸水性樹脂粉末の形状については特に限定はなく、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられる。これらのうち、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から、不定形破砕状が好ましい。
【0067】
架橋重合体は、必要に応じてさらに表面架橋を行うことができる。表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、(b)内部架橋剤と同じものが使用できる。表面架橋剤としては、吸水性樹脂粉末の吸収性能等の観点から、(b3)(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーの水溶性置換基及び/又は(a2)加水分解性モノマーの加水分解によって生成する水溶性置換基と反応し得る官能基を少なくとも2個以上有する架橋剤が好ましく、より好ましくは多価グリシジル、さらに好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびグリセリンジグリシジルエーテル、最も好ましくはエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0068】
表面架橋する場合、表面架橋剤の含有率(質量%)は、(a1)水溶性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(a2)加水分解性モノマー、(b)内部架橋剤、並びに必要により使用する(a3)その他のビニルモノマーの合計質量(100質量%)に対して、0.001質量%〜7質量%が好ましく、より好ましくは0.002質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.003質量%〜4質量%である。すなわち、この場合、表面架橋剤の含有率(質量%)の上限は、(a1)及び/又は(a2)、(b)並びに(a3)の合計質量に基づいて、7質量%が好ましく、より好ましくは5質量%、さらに好ましくは4質量%であり、同様に、下限は0.001質量%が好ましく、より好ましくは0.002質量%、さらに好ましくは0.003質量%である。表面架橋剤の含有率が、前記範囲内であれば、さらに吸収性能が良好となる。表面架橋は表面架橋剤を含む水溶液を吸水性樹脂粉末に噴霧又は含浸させた後、加熱処理(100〜200℃)する方法等により達成できる。
【0069】
前記吸水性樹脂粉末には、防腐剤、防かび剤、抗菌剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、芳香剤、消臭剤、無機質粉末及び有機質繊維状物などの添加剤を含むことができる。添加剤としては、特開2003−225565号公報、特開2006−131767号公報等に例示されているものを挙げることができる。これらの添加剤を含有させる場合、添加剤の含有率(質量%)は、(A)架橋重合体(100質量%)に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.05質量%〜1質量%、最も好ましくは0.1質量%〜0.5質量%である。
【0070】
前記吸水性樹脂粉末は、吸収倍率が、40g/g以上が好ましく、より好ましくは42g/g以上、さらに好ましくは45g/g以上であり、80g/g以下が好ましい。前記吸収倍率は、吸水性樹脂粉末がどの程度の量を吸水できるかを示す尺度である。前記吸収倍率が40g/g以上であれば、少量の吸水性樹脂粉末により所望とする吸収容量を実現できるため、効率的な吸収体設計ができる。前記吸収倍率が80g/g以下であれば、吸水性樹脂粉末の尿に対する安定性が維持できる。
【0071】
前記吸水性樹脂粉末は、加圧下吸収倍率が、10g/g以上が好ましく、より好ましくは12g/g以上、さらに好ましくは15g/g以上であり、35g/g以下が好ましく、より好ましく33g/g以下、さらに好ましくは30g/g以下である。前記荷重下吸収倍率は、2kPa(20gf/cm
2)の荷重下において、吸水性樹脂粉末がどの程度の量を吸水できるかを示す尺度である。前記荷重下吸収倍率が10g/g以上であれば、少量の吸水性樹脂粉末により所望とする吸収容量を実現できるため、効率的な吸収体設計ができる。前記荷重下吸収倍率が35g/g以下であれば吸水性樹脂粉末の尿に対する安定性が維持できる。
【0072】
前記吸水性樹脂粉末は、ボルテックス法による吸収速度が、10秒以上が好ましく、より好ましくは12秒以上、さらに好ましくは15秒以上であり、75秒以下が好ましく、より好ましくは73秒以下、さらに好ましくは70秒以下である。ボルテックス法による吸収速度は、体液を吸収する時間(秒)を測定することで評価している。そのため、測定時間(秒)が短いほど、吸水性樹脂粉末が体液を吸収する速度が大きい。ボルテックス法による吸収速度が10秒以上であれば吸水性樹脂粉末の尿に対する安定性、特に、加圧下安定性がより良好となる。ボルテックス法による吸収速度75秒以下であれば体液の排泄速度が高く、一度に多量の体液が排泄されたときでも、体液の吸収を十分に行うことができる。
【0073】
前記吸水性樹脂粉末の嵩密度は、0.40g/ml以上が好ましく、より好ましくは0.42g/ml以上、さらに好ましくは0.45g/ml以上であり、0.85g/ml以下が好ましく、より好ましくは0.83g/ml以下、さらに好ましくは0.80g/ml以下である。前記嵩密度は、吸水性樹脂粉末の形状の指標となる。嵩密度が前記範囲内であれば、吸水性樹脂粉末の間に体液の通路としての空隙ができやすくなる。その結果、吸収速度、繰り返し吸収速度が良好になる。
【0074】
吸水性樹脂粉末の吸収倍率、吸収速度、嵩密度は、(A)架橋重合体の組成、表面改質剤の種類、吸水性樹脂粉末の粒度、乾燥条件などを適宜選択することにより調節することができる。
【0075】
吸収体
本発明の吸収体は、基材と、基材に固着剤によって固着された吸水性樹脂粉末とを有する。吸収体中の吸水性樹脂粉末の目付けは、20g/m
2以上が好ましく、より好ましくは60g/m
2以上、さらに好ましくは100g/m
2以上であり、500g/m
2以下が好ましく、より好ましくは400g/m
2以下、さらに好ましくは300g/m
2以下である。目付けが、20g/m
2以上であれば、吸収体の吸収量がより向上する。目付けが、500g/m
2以下であれば、吸収体の風合いがより良好となる。
【0076】
前記吸収体における固着剤の含有量は、前記吸水性樹脂粉末100質量部に対して0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。固着剤の含有量が0.3質量部以上であれば基材に対する吸水性樹脂粉末の固着性が向上し、5.0質量部以下であれば吸水性樹脂粉末の吸収性能を阻害しない。
【0077】
前記吸水体は、前記吸水性樹脂粉末に加えて、吸水性繊維などの吸水性材料を含んでもよい。前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。
【0078】
前記吸収体の構成としては、例えば、1枚のシート状の基材と、この基材の片面に固着された吸水性樹脂粉末とからなる態様;2枚のシート状の基材と、これらの基材の間に固着された吸水性樹脂粉末とからなる態様;などが挙げられる。基材に固着させる吸水性樹脂粉末は、基材の全面にわたって均一に固着させてもよいし、一方向に連続して(または断続的に)伸びる多列の筋状に固着させてもよい。前記吸収体の平面視形状は特に限定されず、長方形、砂時計型、ひょうたん型、羽子板型などが挙げられる。
【0079】
前記吸収体の製造方法は特に限定されないが、例えば、基材上に固着剤を塗布し、その上に吸水性樹脂粉末を散布した後、加熱処理する方法;吸水性樹脂粒子を固着剤で被覆した後、この固着剤で被覆された吸水性樹脂粒子を、基材上に散布し加熱処理する方法;が挙げられる。加熱処理の温度は、固着剤の溶融温度以上160℃以下が好ましい。
【0080】
吸水性樹脂粒子を固着剤で被覆する方法は特に限定されず、吸水性樹脂粉末と固着剤とを混合し、加熱し、混練すればよい。加熱温度は、固着剤の溶融温度以上160℃以下が好ましい。混練後の混合物は、シート状に成形してもよいし、冷却後に粉砕してもよい。前記固着剤で被覆された吸水性樹脂粒子は、粒子表面の少なくとも一部が固着剤で被覆されていればよい。固着剤で被覆された吸水性樹脂粒子からなる粉末において、固着剤の使用量は、吸水性樹脂粉末100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.5質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4.0質量部以下である。
【0081】
吸収性物品
次に、本発明の吸収体の具体的な適用例について説明する。本発明の吸収体を使用し得る吸収性物品としては、例えば、失禁パッド、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品が挙げられる。
【0082】
前記吸収性物品が、失禁パッドまたは生理用ナプキンである場合、例えば、透液性のトップシートと不透液性のバックシートとの間に、吸収体が配置される。失禁パッドや生理用ナプキンの形状としては、略長方形、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。また、必要に応じて、前記透液性のトップシートの幅方向両側に不透液性のサイドシートが設けられていてもよい。サイドシートは、トップシートの幅方向両側の上面に接合され、接合点より幅方向内方のサイドシートは、吸収体の両側縁に沿って一対の立ち上がりフラップを形成する。
【0083】
前記吸収性物品が使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつとしては、例えば、後背部または前腹部の左右に一対の止着部材が設けられ、当該止着部材により着用時にパンツ型に形成する展開型使い捨ておむつ;前腹部と後背部とが接合されることによりウェスト開口部と一対の脚開口部とが形成されたパンツ型使い捨ておむつ;などが挙げられる。
【0084】
吸収性物品が、使い捨ておむつである場合、使い捨ておむつは、例えば、内側シートと外側シートとからなる積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とからなるおむつ本体を形成し、前記股部に、前記吸水体が配置されていてもよい。また、使い捨ておむつは、例えば、トップシートとバックシートとの間に、吸収体が配置された積層体からなり、この積層体が前腹部と後背部とこれらの間に位置する股部とを有していてもよい。なお、前腹部、後背部、股部とは、使い捨ておむつを着用の際に、着用者の腹側に当てる部分を前腹部と称し、着用者の尻側に当てる部分を後背部と称し、前腹部と後背部との間に位置し着用者の股間に当てる部分を股部と称する。前記内側シートは、親水性または撥水性であることが好ましく、前記外側シートは、撥水性であることが好ましい。
【0085】
吸収性物品には、吸収体の両側縁部に沿って、立ち上がりフラップが設けられていることが好ましい。立ち上がりフラップは、例えば、吸収体の上面の幅方向両側縁部に設けられてもよく、吸収体の幅方向両外側に設けられてもよい。立ち上がりフラップを設けることにより、体液の横漏れを防ぐことができる。立ち上がりフラップは、トップシートの幅方向両側に設けられたサイドシートの内方端が立ち上げられて、形成されてもよい。前記立ち上がりフラップおよびサイドシートは、撥水性であることが好ましい。
【0086】
以下、本発明の吸収性物品について、図面を参照しながら説明するが、本発明は図面に示された態様に限定されるものではない。
【0087】
図1は本発明の吸収性物品の一例の平面図(展開図)、
図2は
図1のI−I線の模式的断面図、
図3は
図1のII−II線の模式的断面図である。
図1〜3において、矢印Aは吸収性物品の長さ方向、矢印Bは吸収性物品の幅方向を示し、紙面のC方向の上側が肌面側であり、下側が外面側である。
【0088】
図1には、本発明のパンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)の一例を示した(展開図)。パンツ型使い捨ておむつ1は、長さ方向Aに前腹部2と後背部3とを有し、前腹部2と後背部3との間に股部4を有する。前腹部2は、着用者の腹側に当接し、後背部3は着用者の臀部側に当接する。股部4には、着用者の脚周りに沿うように切欠き5が設けられている。
図1のパンツ型使い捨ておむつ1では、前腹部2の側縁2aと後背部3の側縁3aとを接合して、ウエスト開口部と一対の脚開口部を有するパンツ型使い捨ておむつ1となる。
【0089】
パンツ型使い捨ておむつ1は、外装シート材6の肌面側に吸収性本体20が貼り付けられている。吸収性本体20は股部4の中央より長さ方向Aに沿って延びている。
【0090】
パンツ型使い捨ておむつ1には、外装シート材6の端縁7に沿って、前側ウエスト用弾性部材8と後側ウエスト用弾性部材9が幅方向Bに伸張された状態で取り付けられている。また、切欠き5に沿って、前側脚用弾性部材10と後側脚用弾性部材11とが伸張された状態で取り付けられている。前腹部2と後背部3のそれぞれにおいて、ウエスト用弾性部材と脚用弾性部材との間に、前側胴周り用弾性部材12と後側胴周り用弾性部材13が幅方向Bに伸張された状態で取り付けられている。各弾性部材の収縮によりパンツ型使い捨ておむつ1が着用者にフィットする。
【0091】
図2は、
図1のパンツ型使い捨ておむつのI−I線における断面を模式的に説明する図である。
図2を参照して、パンツ型使い捨ておむつ1の構造について説明する。外装シート材6は、外側シート6aと内側シート6bとで構成され、両シート間に、ウエスト用弾性部材8,9、脚用弾性部材10,11、胴周り用弾性部材12,13が伸張状態で取り付けられている。外側シート6aは内側シート6bよりも長さ方向において長くなっており、端縁7において内面側(肌面側)に折り返されて折返し部14を形成している。
【0092】
外装シート材6の肌面側には、吸収性本体20が取り付けられている。吸収性本体20は、吸収体21と、吸収体21の肌面側に配置された不織布材料からなるトップシート22と、吸収体21の外面側に設けられた不透液性のバックシート23を有する。吸収体21は、吸水性樹脂粉末24と、この吸水性樹脂粉末24を被覆する固着剤25と、吸水性樹脂粉末が固着された基材26、27から構成されている。パンツ型使い捨ておむつ1では、内側シート6bの内面の前腹部2と後背部3において吸収性本体20の長さ方向端部を覆うように前側エンド押さえシート15と後側エンド押さえシート16が設けられている。
【0093】
図3は、
図1のパンツ型使い捨ておむつのII−II線における断面を模式的に説明する図である。
図3に示すように不織布材料からなるトップシート22の幅方向の両側縁部の上部には、不織布材料からなるサイドシート17が接合されている。サイドシート17は、長さ方向に伸張状態で取り付けられた弾性部材18の収縮力によって着用者の肌に向かって起立する立ち上がりフラップを形成し、尿等の横漏れを防ぐバリヤーとしての役割を果たす。
【0094】
本発明の吸収性物品の具体例としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッドなどの人体から排出される体液を吸収するために用いられる吸収性物品を挙げることができる。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0096】
[評価方法]
固着剤の針入度
固着剤の針入度は、JIS K 2235(1991)に基づいて測定した。具体的には、容器(内径55mm、高さ35mm)に固着剤を入れ、固着剤の軟化点よりも90℃以上高くならないように加熱し、固着剤を溶融した。溶融させた固着剤を室温(25℃)で1.5時間放置した。次に、放冷後の固着剤を25℃に設定した恒温槽にいれ、1.5時間放置し、これを測定試料とした。測定には、自動針入度測定装置(第一理科社製、EX−210ED)を使用し、針(ステンレス鋼製、2.5g)、針保持具(47.5g)、おもり(50g)、試験時間5秒とした。
【0097】
固着剤の溶融温度
溶融温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した。
【0098】
嵩密度
JIS K 6219−2(2005)に準じて嵩密度の測定を行う。試料である吸水性樹脂粉末を、質量及び容量既知の円筒容器(直径100mmのステンレス製容器、容量1000ml)の中心部へ該容器の上端から50mm以下の高さから注ぎ込む。このとき、注ぎ込まれた試料が円筒容器の上端よりも上方で三角錐を形成するように、十分な量の試料を円筒容器内に注ぎ込む。そして、へらを用いて円筒容器の上端よりも上方にある余剰の試料を払い落とし、この状態で該容器の質量を測定し、その測定値から容器の質量を差し引くことで、試料の質量を求め、これを容器の容量で除して、目的とする嵩密度を算出する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定する。
【0099】
吸収倍率
吸収倍率の測定は、JIS K 7223(1996)に準拠して行う。目開き63μmのナイロン網(JIS Z8801−1:2000)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製する。測定試料1.00gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れる。試料の入ったナイロン袋を、生理食塩水に浸漬させる。浸漬開始から60分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、試料の質量F1(g)を測定する。また、試料を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量F0(g)を測定する。そして、これら質量F1、F0および試料の質量から、次式に従って、目的とする吸収倍率を算出する。
吸収倍率(g/g)=(F1−F0)/試料の質量
【0100】
加圧下吸収倍率(2kPaの加圧下吸収量)
加圧下吸収倍率は、25±2℃、相対湿度50%±5%の環境で次のようにして測定する。すなわち、目開き63μmのナイロン網(JIS Z 8801−1:2000)を底面に貼った円筒プラスチックチューブ(内径30mm、高さ60mm)内に試料0.10gを秤量した。円筒プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に試料がほぼ均一厚さになるように整え、2kPaの加圧が試料にかかるように外径29.5mm×厚さ22mmの分銅を円筒プラスチックチューブ内に挿入した。なお、円筒プラスチックチューブと分銅の重量はあらかじめ測定しておく。次いで、生理食塩水60mlの入ったシャーレ(直径:120mm)の中に試料及び分銅の入った円筒プラスチックチューブをナイロン網側を下面にして垂直に浸す。この時、シャーレの底面ぎりぎりの深さまで、円筒プラスチックチューブが浸漬するようにする。60分後に試料及び分銅の入った円筒プラスチックチューブを水中から引き上げて質量を計量し、あらかじめ測定しておいた円筒プラスチックチューブと分銅の重量を差し引き、試料が吸収した生理食塩水の重量を算出する。この吸収した生理食塩水の重量を10倍した値を加圧下吸収量(g/g)とした。
【0101】
ボルテックス法による吸水速度
100mLのガラスビーカーに、生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水)50mLとマグネチックスターラーチップ(中央部直径8mm、両端部直径7mm、長さ30mmで、表面がフッ素樹脂コーティングされているもの)を入れ、ビーカーをマグネチックスターラー(アズワン製、「HPS−100」)に載せる。マグネチックスターラーの回転数を600±60rpmに調整し、生理食塩水を撹拌させる。試料2.0gを、撹拌中の食塩水の渦の中心部で液中に投入し、JIS K 7224(1996)に準拠して該吸水性樹脂粉末の吸水速度(秒)を測定する。具体的には、試料である吸水性樹脂粉末のビーカーへの投入が完了した時点でストップウォッチをスタートさせ、スターラーチップが試験液に覆われた時点(渦が消え、液表面が平らになった時点)でストップウォッチを止め、その時間(秒)を吸水速度として記録する。測定は5回行い(n=5)、上下各1点の値を削除し、残る3点の平均値を測定値とした。なお、これらの測定は23±2℃、相対湿度50±5%で行い、測定の前に試料を同環境で24時間以上保存した後に測定する。
【0102】
[固着剤の準備]
固着剤として下記の固着剤1〜5を準備した。
固着剤1:低分子量ポリオレフィンワックス(三井化学社製、ハイワックス1160H、分子中に芳香族基を有する。)
固着剤2:低分子量ポリオレフィンワックス(三井化学社製、ハイワックス4202E、分子中にカルボキシル基を有する。)
固着剤3:低分子量ポリオレフィンワックス(三井化学社製、エクセレックス(登録商標)15341PA、分子中にカルボキシル基を有する。)
固着剤4:低分子量ポリオレフィンワックス(三井化学社製、ハイワックス110P、分子中に官能基を有さない。)
固着剤5:合成ゴム系ホットメルト接着剤(MORESCO社製、モレスコメルトTN−260Z、分子中に芳香族基を有する。)
【0103】
[吸水性樹脂粉末の合成]
<合成例1>
水溶性エチレン性不飽和モノマー(a1−1){アクリル酸、三菱化学株式会社製、純度100%}155質量部(2.15モル部)、内部架橋剤(b1){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ−株式会社製}0.6225質量部(0.0024モル部)及び脱イオン水340.27質量部を撹拌・混合しながら1℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を0.1ppm以下とした後、1質量%過酸化水素水溶液0.31質量部、1質量%アスコルビン酸水溶液1.1625質量部及び0.5質量%の2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]水溶液2.325質量部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が85℃に達した後、85±2℃で約10時間重合することにより含水ゲルを得た。
【0104】
次に、この含水ゲル502.27質量部をミンチ機(ROYAL社製、「12VR−400K」)で細断しながら48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液128.42質量部を添加して混合し、さらにエチレングリコールジグリシジルエーテルの1質量%水溶液3質量部を添加して混合して細断ゲル(2)を得た。さらに細断ゲル(2)を通気型バンド乾燥機{200℃、風速5m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製、「OSTERIZER BLENDER」)にて粉砕した後、目開き150μm及び710μmのふるいを用いて150μm〜710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。
【0105】
この乾燥体粒子100質量部を高速撹拌(細川ミクロン社製、高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの質量比=70/30)の5質量部をスプレー噴霧により加えて混合し、150℃で30分間静置して表面架橋することにより、(A)架橋重合体を得た。この(A)架橋重合体100質量部に対し、(B)表面改質剤としてシリカ(東新化成株式会社製、「アエロジル380」)0.5質量部、及び、カルボキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、「X−22−3701E」)0.02質量部を添加し、85℃で60分撹拌させた。得られた樹脂粉末の重量平均粒子径を400μmに調整して、吸水性樹脂粉末を得た。得られた吸水性樹脂粉末は、嵩密度が0.72g/ml、吸水倍率が60g/g、2kPaの加圧下吸水倍率が35g/g、ボルテックス法による吸水速度が45秒、粒子径150μm以下の粒子の割合が3質量%、粒子径850μm超の粒子の割合が0質量%であった。
【0106】
[吸収体1〜15の作製]
吸収体1〜15
ビーカーに、吸水性樹脂粉末を20g、固着剤1を0.5g投入し、130℃に加熱しながら混練した。その後、混合物を80℃まで冷却し、固着剤1で被覆した吸水性樹脂を得た。表1に示す基材(130mm×130mm)上に、固着剤1で被覆した吸水性樹脂を2g散布した。吸水性樹脂は、不織布に100mm×100mmの面積で均一に散布した。吸水性樹脂を散布した後、140℃のオーブンに入れて熱処理して吸収体を作製した。
【0107】
吸収体1〜15について吸水性樹脂粉末の固着性を評価し、表1に示した。
【0108】
[固着性評価]
吸収体を、吸水性樹脂を散布した面が下となるように篩(開き目:4mm)上に置き、20回ふるいにかけて脱落した吸水性樹脂の質量(脱落した固着剤の質量も含む)を測定した。そして、基材上に散布した固着剤で被覆した吸水性樹脂の質量と脱落した吸水性樹脂の質量を用いて、下記式により固着率を求めた。
固着率(質量%)={(散布した固着剤で被覆した吸水性樹脂の質量)−(脱落した吸水性樹脂の質量)}/(散布した固着剤で被覆した吸水性樹脂の質量)×100
【0109】
【表1】
【0110】
吸収体1〜12は、基材として、目付け15g/m
2〜35g/m
2の不織布を用いた場合である。これらの吸収体1〜12では、吸水性樹脂粉末が不織布の空隙に取り込まれやすいため、吸水性樹脂粉末と不織布を構成する繊維との接触面積が増大し、固着率が高いと考えられる。これらの中でも、不織布を構成する繊維として自発捲縮繊維が使用されている吸収体2および9では、固着率がより高くなっている。
【0111】
吸収体13、14および15では、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ティッシュペーパーの空隙が少なく、吸水性樹脂粉末が不織布の空隙に取り込まれないため、固着率が低い。
【0112】
[吸収体16〜20の作製]
吸収体16
ビーカーに、吸水性樹脂粉末を20g、固着剤1を0.5g投入し、130℃に加熱しながら混練した。その後、混合物を80℃まで冷却し、固着剤1で被覆した吸水性樹脂を得た。第1基材(68mm×150mm)上に、固着剤1で被覆した吸水性樹脂を2g散布した。吸水性樹脂は、第1基材の長手方向に平行となるように複数の筋状(7mm)に散布し、筋の間隔を7mmとした。前記第1基材上に、吸水性樹脂を挟み込むように第2基材(68mm×150mm)を重ね、150℃で熱圧着して吸収体16を作製した。なお、第1基材および第2基材には、前記吸収体4で用いた不織布を使用した。
【0113】
吸収体17、18
固着剤1を固着剤2、3に変更したこと以外は吸収体16と同様にして、吸収体17、18を作製した。
【0114】
吸収体19
第1基材(68mm×150mm)上に、固着剤4を目付け10g/m
2となるように塗布し、この固着剤4の上に吸水性樹脂粉末を2g散布した。吸水性樹脂は、第1基材の長手方向に平行となるように複数の筋状(7mm)に散布し、筋の間隔を7mmとした。第2基材(68mm×150mm)上に、固着剤4を目付け10g/m
2となるように塗布した。前記第1基材上に、吸水性樹脂を挟み込むように、固着剤4を塗布した側を内側にして第2基材を重ね、140℃で熱圧着して吸収体19を作製した。なお、第1基材および第2基材には、前記吸収体4で用いた不織布を使用した。
【0115】
吸収体20
固着剤4を固着剤5に変更したこと以外は吸収体19と同様にして、吸収体20を作製した。
【0116】
吸収体16〜20の吸収量および固着剤の物性の評価結果を表2に示した。
【0117】
[吸収量の評価]
0.9質量%生理食塩水に吸収体を投入し、所定時間放置した後、吸収体を生理食塩水から取り出し、吸収体を網の上に載せて10分間放置した。10分間放置した後、吸収体の質量を測定した。生理食塩水の吸収前後の吸収体の質量から吸収量を算出した。生理食塩水中での放置時間は、10分間、30分間、60分間とした。比較試験として、吸水性樹脂2gをナイロン網の袋に入れたものについても、同様に吸収量を測定した。
【0118】
【表2】
【0119】
表2に示すように、針入度が10以下である固着剤を用いた吸収体16〜18では、吸収時間10分間については比較試験(吸水性樹脂粉末のみ)よりも吸収量が小さかったが、吸収時間30分、60分については比較試験と同等の吸収量となった。この結果より、針入度が10以下の固着剤は、吸水性樹脂粉末の膨潤を阻害することがなく、吸水性樹脂粉末が有する吸収能を最大限に発揮できることがわかる。
【0120】
これに対して、針入度が25、60の固着剤を用いた吸収体19、20では、吸収時間が10、30、60分間のいずれにおいても、比較試験よりも吸収量が小さかった。これは、固着剤により吸水性樹脂粉末の膨潤が阻害され、吸水性樹脂粉末の吸収能が充分に発揮できなかったためと考えられる。