特開2015-10089(P2015-10089A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東洋新薬の特許一覧

<>
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000004
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000005
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000006
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000007
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000008
  • 特開2015010089-発泡性皮膚外用剤 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10089(P2015-10089A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】発泡性皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20141216BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20141216BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   A61K8/365
   A61Q19/00
   A61K8/02
   A61K8/73
   A61K8/67
   A61K8/60
   A61K8/97
   A61K8/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-21569(P2014-21569)
(22)【出願日】2014年2月6日
(62)【分割の表示】特願2013-133421(P2013-133421)の分割
【原出願日】2013年6月26日
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】草場 宣廷
(72)【発明者】
【氏名】古賀 裕章
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC302
4C083AD201
4C083AD351
4C083AD631
4C083AD632
4C083CC02
(57)【要約】
【課題】水溶性有効成分の経皮吸収性を向上した発泡性皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素を発生する皮膚外用剤中に水溶性有効成分を含有し、一剤又は二剤以上の剤から構成される発泡性皮膚外用剤であって、少なくとも、酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一剤からなる発泡性皮膚外用剤であって、前記一剤に酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、増粘剤、及び、水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤。
【請求項2】
互いに分離した二剤以上の剤からなる発泡性皮膚外用剤であって、前記二剤以上の剤のいずれか一つに、酸性物質及び前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有し、前記二剤以上の剤のいずれか一つ以上に増粘剤、及び水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤。
【請求項3】
前記増粘剤がキサンタンガムである、請求項1又は2のいずれかに記載の発泡性皮膚外用剤。
【請求項4】
前記水溶性有効成分が、水溶性ポリフェノール類及び水溶性ビタミン類からなる群より選択される1種以上を含む請求項1〜3のいずれかに記載の発泡性皮膚外用剤。
【請求項5】
さらに、単糖類を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の発泡性皮膚外用剤。
【請求項6】
単糖類がブドウ糖である、請求項5に記載の発泡性皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤において、皮膚老化防止効果や抗酸化効果等の機能が発揮されるためには、有効成分を皮膚に十分に浸透させる必要がある。しかしながら、多くの水溶性有効成分は、いずれも肌に対し高い効果を有しているものの、皮膚吸収性が低いという問題を有する。
【0003】
そのため、これらの有効成分の肌への効果を維持しながら各成分を化粧料等の皮膚外用剤へ配合するために、水溶性の有効成分を油溶性にして皮膚吸収性を向上させる検討がなされている。油溶性にされた有効成分としては、例えばビタミンCパルミテート等(特許文献1)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−510285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記検討は、有効成分ごとに適した方法を採用する必要があり、また、有効成分を変性することを必要とするために、コストの増大を招いていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、簡便に、水溶性有効成分の経皮吸収性を向上した発泡性皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、美白、皮膚老化防止あるいは抗酸化効果等を発揮する各種の水溶性物質を、炭酸気泡を発生する発泡性皮膚外用剤中に含有させることによって、経皮吸収性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、二酸化炭素を発生する皮膚外用剤中に水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤である。
【0009】
本発明の第2の態様は、一剤からなる発泡性皮膚外用剤であって、前記一剤に酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、及び、水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤である。
【0010】
本発明の第3の態様は、互いに分離した二剤以上の剤からなる発泡性皮膚外用剤であって、前記二剤以上の剤のいずれか一つに、酸性物質、及び、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有し、前記二剤以上の剤のいずれか一つ以上に水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤である。
【0011】
本発明の第4の態様は、互いに分離した二剤以上の剤からなる発泡性皮膚外用剤であって、前記二剤以上の剤のいずれか一つに酸性物質を含有し、前記酸性物質を含有する剤とは別の剤に前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有し、前記二剤以上の剤のいずれか一つ以上に水溶性有効成分を含有する発泡性皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便に、水溶性有効成分の経皮吸収性を向上した発泡性皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒト3次元培養皮膚モデルの説明図である。
図2】アッセイプレートの説明図である。
図3】ヒト3次元培養皮膚モデルに被検物質を添加してから30分後の松樹皮抽出物の経皮透過量を示す図である。
図4】ヒト3次元培養皮膚モデルに被検物質を添加してから1時間後の松樹皮抽出物の経皮透過量を示す図である。
図5】ヒト3次元培養皮膚モデルに被検物質を添加してから2時間後の松樹皮抽出物の経皮透過量を示す図である。
図6】ヒトの角質層を用いたリボフラビンの経皮透過量促進効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0015】
本発明の発泡性皮膚外用剤は、二酸化炭素を発生する皮膚外用剤中に水溶性有効成分を含有することを要す。また、皮膚等に塗布した時の炭酸の発泡量を最適な量に調整しやすくするため、該発泡性皮膚外用剤を一剤とし、水不存在下で酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質及び水溶性有効成分を含有し、使用時に水を添加することを要す発泡性皮膚外用剤としてもよいし、該発泡性皮膚外用剤を互いに分離した二剤以上の剤とし、前記二剤以上の剤のいずれか一つに酸性物質及び前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有し、前記二剤以上の剤のいずれか一つ以上に水溶性有効成分を含有し、使用時に前記二剤以上の剤を混合することを要す発泡性皮膚外用剤としてもよく、該発泡性皮膚外用剤を互いに分離した二剤以上の剤とし、前記二剤の以上の剤のいずれか一つに酸性物質を、前記酸性物質を含有する剤とは別の剤に前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有し、前記二剤以上の剤のいずれか一つ以上に水溶性有効成分を含有し、使用時に前記二剤以上の剤を混合することを要す発泡性皮膚外用剤としてもよい。
【0016】
(1)酸性物質
本発明に用いる酸性物質としては、有機酸、無機酸のいずれでもよく、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【0017】
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等の直鎖脂肪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸等が挙げられる。なかでも、安全性、水への溶解性の観点から、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、コハク酸が好ましい。無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸等を使用することができる。
【0018】
本発明の発泡性皮膚外用剤中に含まれる酸性物質の含有量としては、特に制限なく、目的に応じて適宜設定することができる。発泡量の観点で、発泡性皮膚外用剤全体として10質量%以上であることが好ましい。
【0019】
(2)炭酸ガス発生物質
本発明に用いる酸性物質と反応して二酸化炭素を発生する炭酸ガス発生物質は、さまざまなものが特に限定されることなく使用できる。前記炭酸ガス発生物質として、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水酸化マグネシウム等の炭酸水素塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。これらのうちでも、程よい発泡力を実現し経皮吸収性を向上することができる点で、炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムが好ましい。
【0020】
本発明の発泡性皮膚外用剤中に含まれる炭酸ガス発生物質の含有量としては、特に制限なく、目的に応じて適宜設定することができる。発泡量の観点で、発泡性皮膚外用剤全体として13質量%以上であることが好ましい。
【0021】
(3)水溶性有効成分
本発明の水溶性物質は、水溶性で、皮膚外用剤として使用された場合に、美白、皮膚老化防止、あるいは抗酸化効果等の皮膚に対する有用な効果を奏するものであれば、特に限定されることなく、目的に応じ使用することができる。
【0022】
例えば、多糖類、タンパク又はペプチド等、ポリフェノール及びビタミン等の抗酸化剤、ミネラル等が挙げられる。これらは、合成により単独化合物で、又は、天然物からの抽出により得た混合物、あるいはこれを精製して得た単独化合物のかたちで使用することができる。また、その他、通常の化粧品に含有される水溶性成分が幅広く使用できる。
【0023】
上記した成分の中でも、皮膚老化防止効果や抗酸化効果の観点から、特に、ポリフェノール類及びビタミン類等の抗酸化剤を含むことが好ましい。
【0024】
水溶性のポリフェノール類としては、水溶性であれば特に限定なく、例えばフラボノイド類、アントシアニン類等を目的に応じ使用することができる。例えば、フラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール等のフラボノイド系色素や、プロアントシアニジン類や、アントシアニジン類(シアニジン、デルフィニジン、マルビジン等)の配糖体のアントシアニン系色素を挙げることができ、これらのうち1種あるいは2種以上の混合物が使用できる。
【0025】
また、これらのうち、プロアントシアニジンは、各種植物中に存在する縮合又は重合(以下、縮重合という)したタンニンで、フラバン−3−オール又はフラバン−3,4−ジオールを構成単位として縮重合した化合物群であり、高い抗酸化作用を有することで知られる。これらは、酸処理によりシアニジン、デルフィニジン、ペラルゴニジン等のアントシアニジンを生成することから、その名称が与えられている。プロアントシアニジンの中でも、特に重合度が2〜4の縮重合体をオリゴメリック・プロアントシアニジン(oligomeric proanthocyanidin;以下、OPCという)という。
【0026】
本発明に用いられる松樹皮抽出物は、OPCを10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上の割合で含有する抽出物であることが望ましい。
【0027】
プロアントシアニジンは、植物の葉、樹皮、果物の皮もしくは種の部分に集中的に含まれている。プロアントシアニジン、特に上記OPCは、具体的には、松、樫、山桃等の植物の樹皮;ブドウ、ブルーベリー、イチゴ、アボガド、ニセアカシア、コケモモの果実もしくは種子;大麦;小麦;大豆;黒大豆;カカオ;小豆;トチの実の殻;ピーナッツの薄皮;イチョウ葉等に含まれている。上記植物の樹皮、果実もしくは種子の粉砕物、又はこれらの抽出物のような材料を使用することができる。上記プロアントシアニジンを含む植物のうち、OPCを豊富に含む松樹皮が原料として好ましく用いられる。上記抽出物は、さらに、夾雑物を除去したものが好ましい。
【0028】
上記松樹皮抽出物としては、フランス海岸松(Pinus Martima)、カラマツ、クロマツ、アカマツ、ヒメコマツ、ゴヨウマツ、チョウセンマツ、ハイマツ、リュウキュウマツ、ウツクシマツ、ダイオウマツ、シロマツ、カナダのケベック地方のアネダ等のマツ目に属する植物の樹皮の抽出物が好ましく用いられる。中でも、フランス海岸松(Pinus Martima)の樹皮抽出物が好ましく、東洋新薬製の松樹皮抽出物(フラバンジェノール(登録商標))がさらに好ましい。
【0029】
水溶性のビタミン類としては、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキシン)、ビタミンB9(葉酸)等及びこれらの塩や変性物が挙げられる。
【0030】
上記発泡性皮膚外用剤の剤形としては、水溶性有効成分を含有し炭酸ガスを発生させるものであれば、特に限定されることはない。一剤とする場合は、酸性物質及びこれと反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を含有する固体、粉末、又は顆粒剤とし、使用時に水を添加することで炭酸ガスを発生できるものであることが好ましい。二剤以上の剤とする場合は、酸性物質及びこれと反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を別々の剤又は同一剤内に含有し、混合時に炭酸ガスを発生できるものであれば、特に限定されることなく、様々な剤形の組み合わせが採用できる。例えば、上記発泡性皮膚外用剤のうち、いずれか一つ以上を液剤、固体、粉末、顆粒剤、又は、粘性剤とする場合、もしくは、それら異なる剤形を組み合わせる場合等が広く適用可能である。この中でも、発生する炭酸ガスを長期間留めその効果を長時間持続させる観点から、皮膚への塗布時に粘性剤として使用できる発泡性皮膚外用剤が好ましい。
【0031】
<液剤>
本発明の発泡性皮膚外用剤を構成する剤のうち一つ以上を液剤とする場合、該液剤には、酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質のいずれかと、水溶性有効成分が含まれ、これに加えて溶媒及びその他成分を含むこともできる。含有される成分について、以下に説明する。
【0032】
(1)溶媒
本発明の溶媒としては、精製水、エタノール、グリセリン、ジプロピレングリコール1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール等の多価アルコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、植物油剤、生理食塩水等が挙げられる。精製水としては、通常、化粧品、医薬品等に用いられる水であれば、特に制限なく使用することができる。これらのうちいずれか2種以上を混合して使用することも可能である。
(2)その他成分
その他成分としては、消泡剤、pH調整剤、溶解補助剤、乳化剤、懸濁化剤、清涼化剤、香料、ハーブエキス等の各種植物エキス、pH調整剤、保湿剤、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、感触改良剤等が挙げられる。
【0033】
<粘性剤>
本発明の発泡性皮膚外用剤を構成する剤のうち一つ以上を粘性剤とする場合、該粘性剤には、少なくとも酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質のいずれか又は両方と、水溶性有効成分及び増粘剤が含まれ、これに加えて水及びその他成分を含むこともできる。含有される各成分及び粘性剤の製造方法について、以下に説明する。
【0034】
(1)増粘剤
本発明の増粘剤としては、皮膚外用剤に含まれる水分との相互作用の大きい親水性増粘剤であれば、通常の化粧料等で用いられる増粘剤が特に限定なく使用することができる。ただし、粘性剤中に酸性物質を含有する場合には、耐酸性の観点からスルホン化セルロース誘導体を用いることが好ましい。化粧料等で用いられる通常の増粘剤を用いた場合は、酸性物質を含有させた場合に粘度が低下して垂れ落ち、有効成分の経皮吸収が阻害される原因となることがある。
【0035】
(2)水
本発明の水としては、通常、化粧品、医薬品等に用いられる水であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、蒸留水、膜濾過水、イオン交換水、海洋深層水等が挙げられる。これらは、単独で使用することも、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0036】
(3)その他成分
本発明の粘性剤には、目的に応じ、油脂、香料、着色剤、ハーブエキス等の各種植物エキス、アルコール等の有機溶媒、pH調整剤、保湿剤、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤等を含有させることができる。
【0037】
(4)粘性剤の製造方法
粘性剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記酸性物質と前記水とを含む溶液に増粘剤を混合して調製すればよい。粘性剤の態様としては、ジェル状、スラリー状等、特に制限なく設定できるが、使用感の観点から、ジェル状とすることが好ましい。
【0038】
粘性剤の粘度としては、特に制限はなく広い範囲から適宜選択できる。例えば、25℃において、ブルックフィールド型粘度計を用いて、ずり速度5rpmで測定した場合に、800,000mPa・s以下が好ましい。
【0039】
<固体、粉末、顆粒剤>
本発明の発泡性皮膚外用剤を構成する剤のうち一つ以上を固体、粉末、顆粒剤とする場合、該固体、粉末、顆粒剤には、少なくとも酸性物質、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質、水溶性有効成分のいずれか一つ以上が含まれ、これに加えて、顆粒化剤、増粘剤等のその他成分を含むこともできる。固体、粉末、顆粒剤に含有される各成分及び顆粒剤の製造方法について、以下に説明する。
【0040】
顆粒剤が、酸性物質又は前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質と顆粒化剤との混合物を造粒することにより得られる場合、顆粒化剤の含有量としては特に制限はないが、上記顆粒剤中において80質量%未満とすることが好ましい。顆粒化剤が80質量%を超える含有量で存在する場合、発泡性が低くなるため好ましくない。
【0041】
(2)顆粒化剤
顆粒化剤としては、例えば、乳糖、粉糖、澱粉、デキストリン、キシリトール、D−ソルビトール、ブドウ糖、D−マンニトール、果糖、蔗糖、白糖、尿素等の粉体を、特に制限なく、単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
(3)顆粒剤の製造方法
顆粒剤の製造方法は本実施例に限定されることはなく、乾式破砕造粒法や湿式破砕造粒法、流動層造粒法、高速攪拌造粒法、押し出し造粒法等の常法に従い製造できる。
【0043】
例えば、顆粒化剤に低融点化合物を使用する場合は、ビーカー等の容器中で加熱により溶融させた低融点顆粒化剤に、前記酸性物質又は前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を加えて十分攪拌、混合する。必要に応じてこれに適当な添加剤や薬効物質を加えてもよい。これを室温で徐々に冷やしながらさらに攪拌し、固まるまで放置する。ある程度固まってきたら冷蔵庫等で急速に冷却してもよい。
【0044】
また、例えば、フローコーターNFLO−200型流動層造粒機(フロイント産業(株)製)に上記材料を投入し、数分間気流で混合し、これに、水を噴霧することにより造粒してもよい。
【0045】
顆粒化剤に低融点化合物を用いない場合は、ビーカー等の容器中で顆粒化剤を水又はエタノールのような適当な溶媒に溶解又は分散させ、これに前記酸性物質又は前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質を溶解又は分散させて十分混合した後にオーブン等で加熱して溶媒を除去し、乾燥させる。完全に固まったら粉砕し、粒の大きさを揃えるために篩過した後、顆粒とする。
【0046】
顆粒剤の形状としては、例えば、不規則な形状、平面な形状、多面体形状、球状、しずく状、繊維状、円柱状、微粉状等が特に制限なく採用できる。また、顆粒剤の粒径としては、広い範囲のものが、特に制限なく使用できる。特に、取り扱いのしやすさ、粘性剤との混合のしやすさの点から、粒径分布が1,000μm以下程度のものがより好ましい。本発明における上記粒径分布は、通常のレーザー回折/散乱法によって求めることができる。
【0047】
<処方例>
本発明の処方例を以下に示す。
・処方例1
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
炭酸水素ナトリウム 5〜40質量%
キサンタンガム 1〜20質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
ブドウ糖 残量
・処方例2
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
炭酸水素ナトリウム 5〜40質量%
ブドウ糖 残量
B剤(ジェル):キサンタンガム 1〜10質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
水 残量
・処方例3
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
ブドウ糖 残量
B剤(ジェル):炭酸水素ナトリウム 5〜40質量%
キサンタンガム 1〜10質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
水 残量
・処方例4
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
炭酸ナトリウム 5〜40質量%
キサンタンガム 1〜20質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
ブドウ糖 残量
・処方例5
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
炭酸ナトリウム 5〜40質量%
ブドウ糖 残量
B剤(ジェル):キサンタンガム 1〜10質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
水 残量
・処方例6
A剤(粉末): クエン酸 2〜30質量%
ブドウ糖 残量
B剤(ジェル):炭酸ナトリウム 5〜40質量%
キサンタンガム 1〜10質量%
松樹皮抽出物 1〜20質量%
水 残量
【0048】
<皮膚外用剤の使用形態>
本発明の皮膚外用剤の使用方法としては、特に限定することなく採用することができるが、例えば、固体、粉末、又は、顆粒剤のいずれかの形態からなる一剤として供給し、使用時に水を混合して使用する態様、あるいは、液剤、粘性剤、固体、粉末、顆粒剤等のいずれかの形態を組み合わせて二剤以上の剤として供給し、使用時にこれらの剤を混合して使用する態様等がとられる。
【0049】
上記発泡性皮膚外用剤と水、又は、上記発泡性皮膚外用剤を構成する二剤以上の剤を混合した組成物における、酸性物質と、前記酸性物質と反応して炭酸ガスを発生する炭酸ガス発生物質との比率は、それぞれの物質を液剤、粘性剤、固体、粉末、顆粒剤等のいずれに混入するか、酸性物質の種類、溶剤、粘性物質の材質、あるいは、混合物のpHの設定値等によりそれぞれ異なり、必要に応じて適宜設定する。安全性の観点から、好ましくは、上記の組成物中に前記炭酸ガス発生物質が過剰に存在し、前記酸性物質の未反応物の残存量が少なくなるように配合する。混合物中の前記炭酸ガス発生物質に対する前記酸性物質のモル比を1以下となるようにすると、さらに好ましい。
【0050】
発泡性皮膚外用剤のpHは、上記の酸性物質の種類や添加量によりコントロールされる。発泡性皮膚外用剤全体として、3.0〜10.0となるように設定することが、肌の健康上好ましい。
【0051】
本発明の発泡性皮膚外用剤を一剤とし使用時に水を添加する場合、又は、二剤以上の剤とする場合、その混合する方法としては、例えば、スパチュラ、ヘラ、手のひら等を用いて、ガラス、プラスチック等の容器内で混合する方法、手のひら等の皮膚の上で混合する方法等公知のものが使用できる。
【0052】
一剤と水、又は、二剤以上の剤を混合した後は、これを皮膚に塗布し、1分間〜30分間放置して使用するのが好ましい。適切な粘度の発泡性皮膚外用剤は、垂れ落ちず皮膚等にとどまり続けるため、サロン等でなく家庭で用いる場合、たち歩きや、掃除等の簡単な日常動作を行うことができる。また、特に粘度の低いものはコットン等の基材に含浸し、目的とする部位に塗布あるいはそのまま使用して、外用剤が肌と長時間接するようになすのが好ましい。
【0053】
本発明の発泡性皮膚外用剤を保存する方法としては特に制限はないが、保存容器内に密封状態で保存するのが好ましい。使用される保存容器の形状は、剤形や目的に応じて適宜選択でき、カップ状、チューブ状、バッグ状、瓶状、スティック状、ポンプ状、ジャー状等が挙げられる。また、その材質は、例えば、プラスチック、ガラス、アルミニウム、紙、各種ポリマー等を単独あるいは2種以上用いることができ、これらに限定されることなく広く使用できる。
【0054】
容器の具体例としては、特に、液剤、粘性剤の場合は、密閉性、内容物の保存安定性、製造コスト等の点で、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミスティック、アルミバッグ等の保存容器、内面をポリエチレンテレフタレートでラミネートしたアルミフィルム等で蓋をヒートシールしたポリエチレンテレフタレート製の保存容器等が好ましい。固体、粉末、顆粒剤の場合は、これらの他、ジャー容器等も適宜使用できる。
【0055】
<皮膚外用剤の作用及び用途>
本発明は、発明者が水溶性有効成分の経皮吸収性を向上すべく鋭意検討を行った結果、炭酸の気泡を生じる発泡剤存在下に水溶性物質が存在すると、その経皮吸収が促進されることを見出し発明するに至ったものである。水溶性物質の経皮吸収が促進される理由は未だ明らかではないが、以下に挙げるようなものが考えられる。
【0056】
すなわち、皮膚表面で炭酸ガスと水溶性物質とが共存する場合、炭酸ガス(CO)が水に溶けやすいため、水と反応して炭酸(HCO)となり、その一部が解離して水素イオン(+)と炭酸イオン(−)を生じる。そのため、水等の皮膚中の媒体との濃度勾配が生じて、イオンと共に水溶性物質が皮膚に浸透し易くなる。あるいは、分子量の小さいイオンの方(今回は、水素イオン)の浸透が速いため、皮膚の表面と内部で電位勾配が生じ、その電位勾配によるイオンの移動と共に水溶性物質が浸透し易くなることが、その機構として類推される。
【0057】
本発明の発泡性皮膚外用剤は、水溶性物質からなる上記有効成分の皮膚への浸透を促すものであり、有効成分の選択により、美白、肌質改善、そばかす改善、肌の若返り、肌の引き締め、部分痩せ等を目的とした、化粧品、乳液、クリーム、パック剤、ピーリング剤等の化粧品だけでなく、毛髪用、洗浄剤、浴用剤等の医薬部外品、薬品等の医薬品のいずれにも好適に使用することができる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0059】
[ヒト3次元培養皮膚モデルを用いた経皮吸収性促進効果の確認]
ヒト3次元培養皮膚モデルを用いて、水溶性物質の炭酸水による経皮吸収性促進効果の確認を行った。
<水溶性有効成分>
松樹皮抽出物(東洋新薬製)
<ヒト3次元培養皮膚モデル>
ヒト3次元培養皮膚モデル「LabCyte EPI―MODEL 24」(J−TEC製)を用いた。このヒト3次元培養皮膚モデル(以下「培養皮膚」という)は、ヒト正常皮膚細胞を用いて培養し重層化した、ヒト3次元培養表皮であり、形態的にヒト皮膚に類似した構造をしており、基底層・有棘層・顆粒層・角質層を有している。一般に、実験動物やヒトの表皮の代替材料として用いられている。
【0060】
(試薬調製)
・炭酸水素ナトリウム水溶液
炭酸水素ナトリウムを超純水に溶解し、濃度7.5%(W/V)の溶液を作成した。
・クエン酸水溶液
クエン酸を超純水に溶解し、濃度がそれぞれ、0.5、1.5%(W/V)の2種類の溶液を作成した。
・松樹皮抽出物−炭酸水素ナトリウム水溶液
上記炭酸水素ナトリウム水溶液に松樹皮抽出物を溶解し、濃度2%(W/V)の溶液を作成した。
・松樹皮抽出物水溶液の作成
比較例として、超純水に松樹皮抽出物を溶解し、濃度1%(W/V)の溶液を作成した。
【0061】
(炭酸発生方法)
炭酸水素ナトリウム水溶液とクエン酸水溶液を混合することにより、炭酸を発生させた。炭酸水素ナトリウム過多としたため、クエン酸濃度が高くなるにつれ、炭酸の発生量も理論的に多くなる。
【0062】
(松樹皮抽出物検量線作成)
リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline: PBS)に松樹皮抽出物を溶解し、濃度1%(W/V)の溶液を作成した。続いて、これを5倍に段階的に希釈し、0.2〜0.000064%の松樹皮抽出物PBS溶液を作成した。Foline−Denis法により、730nmの吸光度を測定し、松樹皮抽出物の検量線を作成した。
【0063】
〔経皮吸収性評価実験〕
以下に、図1及び図2を用い、経皮吸収性評価手順について説明する。
(培養皮膚の順化工程)
(1)24個のウェル1を備えたアッセイプレート6の各ウェル1にアッセイ培地2を500μLずつ分注した。上記培養皮膚3が入った培養カップ4をアルミ包装より取り出し、アッセイ培地2の入った各ウェル1に、培養カップ4をその底面に気泡が入らないように注意して移した。上記培養皮膚3の入ったアッセイプレート6をCOインキュベーター内で1時間以上前培養した。
(各ウェルの洗浄工程)
(2)順化工程にて発生した可能性のある不要物質を取り除くため、各ウェル1の洗浄作業を行った。具体的には、アッセイプレート6に備えられた24個の各ウェル1の内壁面とその中の培養カップ4の外壁面との間のアッセイ培地2をピペットで取り除き、各ウェル1を500μLのPBS(培養カップ4の8分目程を満たす量)で3回洗浄し、その後、各ウェル1に500μLのPBSを分注した。
(被検物質の評価工程)
(3)比較例として、50μLの上記松樹皮抽出物水溶液を培養カップ4中の培養皮膚3に添加した(n=3)。
(4)実施例として、25μLの上記松樹皮抽出物−炭酸水素ナトリウム水溶液を培養カップ4中の培養皮膚3に添加した後、さらに25μLの0.5、1.5%(W/V)の上記クエン酸水溶液を各培養カップ4に添加した(クエン酸濃度0.5、1.5ごとに、n=3)。そのまま、COインキュベーター内で30分間静置した。
(5)被検物質5の添加から30分後に、各ウェル1のPBSを全量回収し、再び、500μLのPBSを各ウェル1に分注した。そのまま、アッセイプレート6をCOインキュベーター内で静置した。
(6)被検物質5の添加から1時間及び2時間後に、上記(5)と同様の操作を繰り返した。
(7)上記各時間ごと(被検物質5の添加から30分、1時間、2時間後)に採取したPBSを、減圧乾燥機を用いて乾固した後、乾固物を超純水100μLにて再溶解し、Foline―Denis法を用いて、再溶解液中に含まれる総松樹皮抽出物量を求め、平均値を算出した。
【0064】
表1及び図3〜5に、30分、1時間、2時間後の松樹皮抽出物の濃度を示す。炭酸の発泡剤と共に松樹皮抽出物を添加すると、発泡剤を含有しない場合(比較例)に比べて、いずれの時間においても、松樹皮抽出物の経皮透過量が増大していることが実証された。また、クエン酸の濃度は、0.5%より1.5%の方が効果があることが分かった。特に、30分後の1.5%クエン酸水溶液を用いた結果は、コントロール群と比べ有意差が見られた。本発明の発泡性皮膚外用剤の使用方法として、1分間〜30分間放置して使用するのが好ましいことを考えると、実用化の面からも優れた効果が得られたと言える。
【0065】
【表1】
【0066】
[ヒトの角質層を用いた経皮吸収性促進効果の確認]
続いて、培養皮膚だけでなく、ヒトの皮膚を用いた場合においても、上記の検討と同様に、精製水よりも炭酸水を用いた方が、水溶性有効成分の経皮吸収性の向上を図ることができることを示すため、以下の実験を行った。
【0067】
5人の被験者(男性5名 (平均年齢 31.6±5.4 歳))の前腕に、「リボフラビンを溶かした炭酸水」と「リボフラビンを溶かした精製水」を別々に塗布した。
リボフラビン(Riboflavin)はビタミンB2のことであり、水に可溶で水溶液は黄色を示し、ビタミンとしての栄養成分として以外に、着色料(食品添加物)としても利用される。
リボフラビンの浸透量は分光蛍光光度計にて測定可能である。
塗布20分後にテープ・ストリップ法にて角質層8〜10層を採取し、リボフラビンの浸透量を測定し、それぞれ5人のリボフラビン浸透量の平均値を求めた。
【0068】
図6に、テープ・ストリップ1層あたりの「リボフラビンを溶かした炭酸水におけるリボフラビン浸透量の平均値」を、「リボフラビンを溶かした精製水におけるリボフラビン浸透量の平均値」を100%とした場合の相対値表示として示す。炭酸水を用いた場合、角質層中に含まれるリボフラビンは、精製水を用いた場合に比しておよそ1.7倍となり、培養皮膚だけでなくヒトの皮膚に対しても、炭酸により水溶性有効成分の経皮吸収が促進されることが確認できる。
【符号の説明】
【0069】
1 ウェル
2 アッセイ培地
3 培養皮膚
4 培養カップ
5 被験物質
6 アッセイプレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6