【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名:公益社団法人 高分子学会、刊行物名:高分子学会予稿集 62巻1号[2013]、発行日:平成25年5月14日 集会名:第62回高分子学会年次大会、開催日:平成25年5月29日
【課題】他の重合性モノマーとの重合により、機械的特性及び膨潤性に優れた高分子架橋体を形成し得る新規の環状マクロモノマー、この環状マクロモノマーに由来する構造単位を有する高分子架橋体、この高分子架橋体を含む高分子ゲルを提供する。
(一般式(I)中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される。
請求項1又は2に記載の環状マクロモノマーに由来する構造単位と、この環状マクロモノマー以外の重合性モノマーに由来する構造単位とを有することを特徴とする高分子架橋体。
請求項1又は2に記載の環状マクロモノマーと、この環状マクロモノマー以外の重合性モノマーとを重合反応させて、高分子架橋体を得る工程を有することを特徴とする高分子架橋体の製造方法。
請求項1又は2に記載の環状マクロモノマーと、この環状マクロモノマー以外の重合性モノマーとを、可塑剤の存在下で、重合反応させて、高分子ゲルを得る工程を有することを特徴とする高分子ゲルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔環状マクロモノマー〕
本発明の環状マクロモノマーは、下記一般式(I):
【0038】
(一般式(I)中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される。
【0039】
前記環状マクロモノマーは、一般式(I)に示されるように、その内部に重合性の炭素−炭素二重結合を有しているため、重合性モノマーとしての機能を有する。また、この環状マクロモノマーは、その側鎖に、環状構造に形成された官能基(以下、環状高分子鎖という)を有しており、他の重合性モノマーと重合反応させるだけの一段階反応で、機械的特性(柔軟性、伸縮性)及び膨潤性に優れた高分子架橋体を形成することできる。なお、本発明の環状マクロモノマーと他の重合性モノマーとを重合反応させてなる高分子架橋体の機械的特性(柔軟性、伸縮性)及び膨潤性については、後述の〔高分子架橋体〕の項にて、詳述する。
【0040】
以下、一般式(I)に示す環状マクロモノマーの骨格について詳述する。
【0041】
一般式(I)におけるMは、置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、具体例としては、エチレン基(ジメチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、あるいは、これらの基の水素原子の一部をハロゲン原子又は水酸基等で置換した基などを挙げることができる。これらの中でも、内孔形成能及び合成の容易性の観点から、Mは、炭素数2のアルキレン基(即ち、エチレン基)であることがより好ましい。このため、一般式(I)におけるM−O基の具体例としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、あるいは、これらの基の水素原子の一部をハロゲン原子又は水酸基等で置換した基などを挙げることができ、これらの中でもオキシエチレン基がより好ましい。
【0042】
また、一般式(I)におけるM(炭素数2〜4のアルキレン基)は、所望の物性に影響を与えない限り、直鎖状及び分岐状のいずれであってもよいが、製造の容易性の観点からMは直鎖状であることが好ましい。
【0043】
また、一般式(I)におけるnは、括弧内の構造の繰り返し単位数を意味している。このため、一般式(I)において、Mはn+1個存在している。n+1個のMは、所望の物性に影響を与えない限り、同一であっても、異なっていてもよいが、製造の容易性の観点から、同一であることが好ましい。nは、5〜100の整数であり、合成の容易性の点で5〜50の整数であることが好ましく、10〜35の整数であることがより好ましい。nの数値は、環状マクロモノマーの分子量に特に関係する。
【0044】
本発明の環状マクロモノマーの分子量は、通常、数平均分子量Mnで好ましくは500〜50000、より好ましくは500〜10000であり、重量平均分子量Mwで好ましくは600〜60000、より好ましくは600〜12000である。本明細書において、「数平均分子量(Mn)」及び「重量平均分子量(Mw)」は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した、ポリスチレン(PS)換算の数平均分子量及び重量平均分子量を意味する。
【0045】
本発明において、一般式(I)で示される環状マクロモノマーは、下記式(IV):
【0047】
(一般式(IV)中、nは5〜100の整数である)で表される環状マクロモノマー、即ち、N,N’−[エチレンビス(ポリオキシエチレン)]−5−ビニル−イソフタルアミドが好ましい。
【0048】
次いで、上記環状マクロモノマーの製造方法について詳述する。ここでは、環状マクロモノマーの製造方法を、一例を挙げて説明するが、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0049】
上記環状マクロモノマーは、一般式(II):
【0051】
(一般式(II)中、R
1はヒドロキシル基、又は、2−チオキソチアゾリジン−3−イル基である。)で表される化合物と、一般式(III):
【0053】
(一般式(III)中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物とを反応させて一般式(I)で表される化合物(環状マクロモノマー)を得る工程を含む環状マクロモノマーの製造方法によって得ることができる。
【0054】
上記一般式(II)におけるR
1は、ヒドロキシル基、又は、2−チオキソチアゾリジン−3−イル基である。環状マクロモノマーの収率向上の観点から、R
1が、2−チオキソチアゾリジン−3−イル基である一般式(II)で表される化合物、即ち、(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)を使用することが好ましい。
【0055】
また、上記一般式(III)におけるM及びnは、一般式(I)におけるM及びnと同じであるため、説明を省略する。
【0056】
例えば、上記環状マクロモノマーは、以下に示す(1)第1工程〜(9)第9工程を含む環状マクロモノマーの製造方法により製造することができる。
【0057】
(1)第1工程:α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールの製造
第1工程においては、ポリアルキレングリコールと塩化トシルとを反応させて、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールを製造する。例えば、ポリアルキレングリコールを含む反応液に、水酸化ナトリウム等の塩基性物質の存在下、塩化トシルを滴下することによって、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールを得ることができる。
【0058】
第1工程で使用するポリアルキレングリコール及び塩化トシル、並びに、後述する第2工程〜第9工程で使用する原料は、特段の記載がない限り、商業的に入手可能である。第1工程で使用するポリアルキレングリコールは、公知の製造方法に従って製造することができ、公知の方法により、分子量の調整、分子量分布の単分散化を図ることもできる。
【0059】
第1工程で使用するポリアルキレングリコールの分子量は、品質面でばらつきの少ない環状マクロモノマーを容易に製造することができるため、数平均分子量Mnで200〜4500が好ましく、500〜1500がより好ましく、他方、重量平均分子量Mwで250〜5500が好ましく、600〜2000がより好ましい。
【0060】
また、第1工程で使用するポリアルキレングリコールの多分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1に近いことが好ましく、具体的には、それぞれのポリアルキレングリコール内のアルキレングリコールの重合度が、同一又は略同一であることがより好ましい。
【0061】
第1工程において、ポリアルキレングリコールと塩化トシルとの使用割合は、モル比で1:2.0〜8.0であることが好ましく、1:3.0〜8.0であることがより好ましい。塩化トシルの使用量がポリアルキレングリコール1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(即ち、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコール)の収率が低下するおそれがある。一方、塩化トシルの使用量がポリアルキレングリコール1モルに対して8.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0062】
第1工程での反応条件は、原料(即ち、ポリアルキレングリコール、塩化トシル)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、0〜40℃、好ましくは0〜20℃である。反応温度が0℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が40℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜48時間、好ましくは3〜24時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が48時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中、窒素雰囲気下が挙げられる。
【0063】
(2)第2工程:α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールの製造
第2工程においては、第1工程で得たα,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールとフタルイミドカリウムとを反応させて、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールを製造する。例えば、アセトニトリル等の溶媒中、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールとフタルイミドカリウムとを加熱還流させることによって、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールを得ることができる。
【0064】
第2工程において、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコールとフタルイミドカリウムとの使用割合は、モル比で1:2.0〜6.0であることが好ましく、1:3.0〜6.0であることがより好ましい。フタルイミドカリウムの使用量がα,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコール1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(即ち、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコール)の収率が低下するおそれがある。一方、フタルイミドカリウムの使用量がα,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコール1モルに対して6.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0065】
第2工程での反応条件は、原料(即ち、α,ω−ジトシルオキシポリアルキレングリコール、フタルイミドカリウム)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、25〜80℃、好ましくは70〜80℃である。反応温度が25℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が80℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜48時間、好ましくは12〜24時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が48時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中、窒素雰囲気下が挙げられる。
【0066】
(3)第3工程:α,ω−ジアミノポリアルキレングリコールの製造
第3工程においては、第2工程で得たα,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールと、ヒドラジン一水和物とを反応させることによって、一般式(III):
【0068】
(一般式(III)中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物(α,ω−ジアミノポリアルキレングリコール)を製造する。例えば、エタノール等の溶媒中、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールとヒドラジン一水和物とを加熱還流させることによって、α,ω−ジアミノポリアルキレングリコールを得ることができる。
【0069】
第3工程において、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコールとヒドラジン一水和物との使用割合は、モル比で1:5.0〜20であることが好ましく、1:10〜15であることがより好ましい。ヒドラジン一水和物の使用量がα,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコール1モルに対して5.0モル未満である場合、目的化合物(α,ω−ジアミノポリアルキレングリコール)の収率が低下するおそれがある。一方、ヒドラジン一水和物の使用量がα,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコール1モルに対して20モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0070】
第3工程での反応条件は、原料(即ち、α,ω−ジフタルイミドポリアルキレングリコール、ヒドラジン一水和物)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、25〜80℃、好ましくは60〜80℃である。反応温度が25℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が80℃を超える場合、目的化合物の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。反応時間が1時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が5時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中、窒素雰囲気下が挙げられる。
【0071】
(4)第4工程:5−メチルイソフタル酸ジメチルの製造
一般式(V):
【0073】
で表される化合物(5−メチルイソフタル酸)を、メタノールと反応させることによって、一般式(VI):
【0075】
で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)を製造する。例えば、濃硫酸等の強酸の存在下で、一般式(V)で表される化合物とメタノールとを加熱還流させた後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液等で中和することにより、一般式(VI)で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)を得ることができる。
【0076】
第4工程において、一般式(V)で表される化合物とメタノールとの使用割合は、モル比で1:2.0〜5.0であることが好ましく、1:2.5〜3.0であることがより好ましい。メタノールの使用量が、一般式(V)で表される化合物1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(一般式(VI)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、メタノールが一般式(V)で表される化合物1モルに対して5.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0077】
反応条件は、原料(一般式(V)で表される化合物、メタノール等)の種類や量等により適宜設定すればよい。
【0078】
メチルエステル化(一般式(V)で表される化合物とメタノールとを反応させる際)の反応温度は、通常、10〜80℃、好ましくは15〜70℃である。反応温度が10℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が80℃を超える場合、目的化合物(一般式(VI)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜24時間、好ましくは12〜18時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0079】
或いは、第4工程では、上記一般式(V)で表される化合物と、塩化チオニルとを反応させることによって、一般式(V)で表される化合物のカルボキシル基を酸クロリド化し、その後、メタノールと反応させることによって、上記一般式(VI)で表される化合物を製造する。例えば、ベンゼン等の溶媒中、ジメチルホルムアミド等の触媒の存在下で、一般式(V)で表される化合物と塩化チオニルとを加熱還流させた後、過剰量の溶媒及び塩化チオニルを減圧留去する。そして、前記減圧留去後の残留物に、メタノールと、酢酸エチル等の溶媒とを加え、さらに、トリエチルアミン等の塩基性物質を滴下することにより、一般式(VI)で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)を得ることができる。
【0080】
一般式(V)で表される化合物を酸クロリド化後、メタノールと反応させて、一般式(VI)で表される化合物を製造する場合において、一般式(V)で表される化合物と塩化チオニルとの使用割合は、モル比で1:2.0〜5.0であることが好ましく、1:2.5〜3.0であることがより好ましい。塩化チオニルの使用量が、一般式(V)で表される化合物1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(一般式(VI)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、塩化チオニルの使用量が、一般式(V)で表される化合物1モルに対して5.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある
【0081】
一般式(V)で表される化合物を酸クロリド化後、メタノールと反応させて、一般式(VI)で表される化合物を製造する場合における反応条件も、原料(一般式(V)で表される化合物、塩化チオニル、メタノール等)の種類や量等により適宜設定すればよい。
【0082】
上記の酸クロリド化の反応温度は、通常、20〜100℃、好ましくは70〜80℃である。反応温度が20℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃を超える場合、目的化合物(一般式(VI)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜24時間、好ましくは3〜6時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0083】
なお、一般式(V)で表される化合物を酸クロリド化後、メタノールと反応させて、一般式(VI)で表される化合物を製造する場合における一般式(V)で表される化合物とメタノールとの使用割合及び反応条件は、上記した一般式(V)で表される化合物とメタノールとを反応させて一般式(VI)で表される化合物を製造する場合における一般式(V)で表される化合物とメタノールとの使用割合及び反応条件と同様であるため、説明を省略する。
【0084】
(5)第5工程:5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルの製造
第4工程で得た一般式(VI)で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)を、N−ブロモスクシンイミドと反応させることによって、一般式(VII)
【0086】
で表される化合物(5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチル)を製造する。例えば、四塩化炭素等の溶媒中、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンゾイル等のラジカル開始剤の存在下で、第4工程で得た一般式(VI)で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)と、N−ブロモスクシンイミドとを加熱還流させることによって、一般式(VII)で表される化合物(5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルを得ることができる。
【0087】
第5工程において、第4工程で得た一般式(VI)で表される化合物(5−メチルイソフタル酸ジメチル)とN−ブロモスクシンイミドとの使用割合は、モル比で1:1.0〜5.0であることが好ましく、1:1.1〜3.0であることがより好ましい。N−ブロモスクシンイミドの使用量が、一般式(VI)で表される化合物1モルに対して1.0モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、N−ブロモスクシンイミドの使用量が、一般式(VI)で表される化合物1モルに対して5.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0088】
反応条件は、原料の種類(一般式(VI)で表される化合物、N−ブロモスクシンイミド等)や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、20〜100℃、好ましくは70〜80℃である。反応温度が20℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃を超える場合、目的化合物(一般式(VII)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜24時間、好ましくは3〜12時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0089】
(6)第6工程:5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミドの製造
第5工程で得た一般式(VII)で表される化合物(5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチル)を、トリフェニルホスフィンと反応させることによって、一般式(VIII):
【0091】
で表される化合物(5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミド)を製造する。例えば、トルエン等の溶媒中、一般式(VII)で表される化合物と、トリフェニルホスフィンとを加熱還流させることによって、一般式(VIII)で表される化合物(5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミド)を得ることができる。
【0092】
第6工程において、一般式(VII)で表される化合物とトリフェニルホスフィンとの使用割合は、モル比で1:0.8〜2.0であることが好ましく、1:1.0〜1.5であることがより好ましい。トリフェニルホスフィンの使用量が、一般式(VII)で表される化合物1モルに対して0.8モル未満である場合、目的化合物(一般式(VIII)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、トリフェニルホスフィンの使用量が、一般式(VII)で表される化合物1モルに対して2.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0093】
反応条件は、原料(一般式(VII)で表される化合物、トリフェニルホスフィン等)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、20〜150℃、好ましくは100〜110℃である。反応温度が20℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が150℃を超える場合、目的化合物(一般式(VIII)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、2〜24時間、好ましくは10〜18時間である。反応時間が2時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0094】
(7)第7工程:5−ビニルイソフタル酸の製造
第6工程で得た一般式(VIII)で表される化合物(5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミド)を、ホルムアルデヒドと反応させることによって、一般式(IX):
【0096】
で表される化合物(5−ビニルイソフタル酸)を製造する。例えば、一般式(VIII)で表される化合物に、ホルムアルデヒドを加えた後、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液を滴下することによって、一般式(IX)を得ることができる。なお、一般式(IX)で表される化合物は、一般式(II)におけるR
1がヒドロキシル基である化合物である。
【0097】
第7工程において、一般式(VIII)で表される化合物と、ホルムアルデヒドとの使用割合は、モル比で1:50〜200であることが好ましく、1:100〜150であることがより好ましい。ホルムアルデヒドの使用量が一般式(VIII)で表される化合物1モルに対して50モル未満である場合、目的化合物(一般式(IX)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、ホルムアルデヒドが一般式(VIII)で表される化合物1モルに対して200モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0098】
反応条件は、原料の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、0〜40℃、好ましくは15〜25℃である。反応温度が0℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が40℃を超える場合、目的化合物(一般式(IX)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、12〜72時間、好ましくは36〜60時間である。反応時間が12時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が72時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0099】
(8)第8工程:(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)の製造
第7工程で得た一般式(IX)で表される化合物を、塩化チオニルと反応させて、一般式(IX)で表される化合物のカルボキシル基を酸クロリド化し、その後、2−メルカプトチアゾリンと反応させることによって、一般式(X):
【0101】
で表される化合物((5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン))を製造する。例えば、ベンゼン等の溶媒中、ジメチルホルムアミド等の触媒の存在下で、一般式(IX)で表される化合物と塩化チオニルとを加熱還流させた後、過剰量の溶媒及び塩化チオニルを減圧留去する。そして、前記減圧留去後の残留物を、テトラヒドロフラン等の溶媒にさせた後、2−メルカプトチアゾリンを加え、トリエチルアミン等の塩基性物質を滴下することにより、一般式(X)で表される化合物((5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン))を得ることができる。なお、一般式(X)で表される化合物は、一般式(II)におけるR
1が2−チオキソチアゾリジン−3−イル基である化合物である。
【0102】
第8工程において、一般式(IX)で表される化合物と塩化チオニルとの使用割合は、モル比で1:2.0〜5.0であることが好ましく、1:2.5〜3.0であることがより好ましい。塩化チオニルの使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(一般式(X)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、塩化チオニルの使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して5.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある
【0103】
第8工程において、一般式(IX)で表される化合物と2−メルカプトチアゾリンとの使用割合は、モル比で1:2.0〜3.0であることが好ましく、1:2.0〜2.5であることがより好ましい。2−メルカプトチアゾリンの使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物(一般式(X)で表される化合物)の収率が低下するおそれがある。一方、2−メルカプトチアゾリンが一般式(IX)で表される化合物1モルに対して3.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0104】
反応条件は、原料(一般式(IX)で表される化合物、塩化チオニル、2−メルカプトチアゾリン等)の種類や量等により適宜設定すればよい。
【0105】
上記の酸クロリド化の反応温度は、通常、40〜100℃、好ましくは80〜90℃である。反応温度が40℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が100℃を超える場合、目的化合物(一般式(X)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、1〜5時間、好ましくは2〜3時間である。反応時間が1時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が5時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0106】
上記の酸クロリド化後、2−メルカプトチアゾリンを反応させる際の温度は、通常、10〜40℃、好ましくは20〜30℃である。反応温度が10℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が40℃を超える場合、目的化合物(一般式(X)で表される化合物)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、4〜48時間、好ましくは12〜24時間である。反応時間が4時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が48時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0107】
(9)第9工程:環状マクロモノマーの製造
第8工程で得た一般式(X)で表される化合物((5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン))と第3工程で得た一般式(III)で表される化合物(α,ω−ジアミノポリアルキレングリコール)とを反応させることによって、一般式(I):
【0109】
(一般式(I)中、Mは置換又は非置換の炭素数2〜4のアルキレン基であり、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表し、5〜100の整数である。また、n+1個のMは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。)で表される化合物(環状マクロモノマー)を製造する。例えば、ジクロロメタン等の溶媒中で、第8工程で得た一般式(X)で表される化合物((5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン))と、第3工程で得た一般式(III)で表される化合物(α,ω−ジアミノポリアルキレングリコール)とを反応させた後、得られた反応混合物を公知の方法により精製することにより、一般式(I)で表される化合物(環状マクロモノマー)を得ることができる。この反応では、例えば、一般式(X)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物をそれぞれ溶媒に低濃度で希釈(高希釈)し、これらの希釈液を、時間を掛けて滴下して徐々に反応させ、その後撹拌下で反応させることが好ましい。高濃度で前記のような反応を行った場合、副反応として直鎖状のポリマーができることがあり、この場合、一般式(I)の環状マクロモノマーの収率に大きく影響を与えることがある。
【0110】
第9工程において、一般式(X)で表される化合物と、一般式(III)で表される化合物の使用割合は、モル比で1:0.9〜1.1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。一般式(III)で表される化合物の使用量が、一般式(X)で表される化合物1モルに対して0.9モル未満である場合、目的化合物(環状マクロモノマー(一般式(I)で表される化合物))の収率が低下するおそれがある。一方、一般式(III)で表される化合物の使用量が、一般式(X)で表される化合物1モルに対して1.1モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0111】
また、一般式(X)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の希釈に使用する溶媒としては、原料化合物(一般式(X)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物)及び目的化合物(一般式(I)で表される環状マクロモノマー)に悪影響を与えず、留去し易いものであれば特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。希釈倍率は、一般式(X)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計量の500〜1000倍容量程度である。
【0112】
反応条件は、原料(一般式(X)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、0〜40℃、好ましくは15〜25℃である。反応温度が0℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が40℃を超える場合、目的化合物(環状マクロモノマー)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。反応時間が12時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が72時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0113】
以上の通り、環状マクロモノマーは、例えば、上記第1工程〜第9工程を経て、製造することができる。この製造方法によれば、環状マクロモノマーを高収率で製造することができる。
【0114】
或いは、本発明の環状マクロモノマーは、上記第1工程〜第7工程の後、第7工程で得た一般式(IX)で表される化合物(5−ビニルイソフタル酸)と、第3工程で得た一般式(III)で表される化合物(α,ω−ジアミノポリアルキレングリコール)とを、縮合剤の存在下で反応させることによっても、製造することができる。この反応では、例えば、式(IX)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物をそれぞれ溶媒に低濃度で希釈(高希釈)し、これらの希釈液を、時間を掛けて滴下して徐々に反応させ、その後撹拌下で反応させることが好ましい。高濃度で前記のような反応を行った場合、副反応として直鎖状のポリマーができることがあり、この場合、一般式(I)の環状マクロモノマーの収率に大きく影響を与えることがある。
【0115】
一般式(IX)で表される化合物と、第3工程で得た一般式(III)で表される化合物とを反応させて、一般式(I)で表される環状マクロモノマーを製造する場合において、一般式(IX)で表される化合物と、一般式(III)で表される化合物との使用割合は、モル比で1:0.9〜1.1であることが好ましく、1:0.95〜1.05であることがより好ましい。一般式(III)で表される化合物の使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して0.9モル未満である場合、目的化合物(環状マクロモノマー(一般式(I)で表される化合物))の収率が低下する恐れがある。一方、一般式(III)で表される化合物の使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して1.1モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0116】
上記縮合剤としては、特に限定されず、従来アミド化反応に用いられているものを用いることができる。具体的には、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド類;2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等のアリールスルホニルクロリド類;2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルイミダゾリド、2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルトリアゾリド等のアリールスルホンアミド類;アゾジカルボン酸エステル;ハロゲン化有機スルホニル;ジフェニルホスホリルアジド、ジエトキシホスホニルクロリド、ジエトキシホスホニルアジド、無水プロピルホスホン酸、ジフェニルホスホニルクロリド;マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、アルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド等の金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属酸化物;リチウムアミド等のアルカリ金属アミド;炭酸カリウム;塩化亜鉛、三塩化アルミニウム、オキシ塩化リン、テトラメチルアンモニウムクロリド、濃硫酸、五酸化二リン、ポリリン酸、無水酢酸、カルボニルジイミダゾール、p−トルエンスルホニルクロリド、塩基性のイオン交換樹脂等が挙げられる。これらの中でも、合成の容易性の点で4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドが特に好ましい。
【0117】
一般式(IX)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の希釈に使用する溶媒としては、原料化合物(一般式(IX)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物)及び目的化合物(一般式(I)で表される環状マクロモノマー)に悪影響を与えず、留去し易いものであれば特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。希釈倍率は、一般式(IX)で表される化合物及び一般式(III)で表される化合物の合計量の500〜1000倍容量程度である。
【0118】
一般式(IX)で表される化合物と、第3工程で得た一般式(III)で表される化合物とを反応させる際の反応条件は、原料(一般式(IX)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物)の種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、0〜40℃、好ましくは10〜25℃である。反応温度が0℃未満である場合、反応効率が低下するおそれがある。一方、反応温度が40℃を超える場合、目的化合物(一般式(I)で表される環状マクロモノマー)の収率が低下するおそれ、製造コストが高くなるおそれがある。また、反応時間は、通常、12〜72時間、好ましくは24〜48時間である。反応時間が12時間未満である場合、反応が不十分となるおそれがある。一方、反応時間が72時間を超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。さらに、反応圧力は、特に限定されず、例えば大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中、窒素雰囲気下が挙げられる。一般式(IX)で表される化合物と縮合剤との使用割合は、モル比で1:2.0〜4.0であることが好ましく、1:3.0〜3.5であることがより好ましい。縮合剤の使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して2.0モル未満である場合、目的化合物の収率が低下するおそれがある。一方、縮合剤の使用量が、一般式(IX)で表される化合物1モルに対して4.0モルを超える場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0119】
〔高分子架橋体〕
本発明の高分子架橋体は、上記した本発明の環状マクロモノマーに由来する構造単位と、この環状マクロモノマー以外の重合性モノマー(以下、単に重合性モノマーという)に由来する構造単位とを有する。
【0120】
本発明の高分子架橋体に使用される重合性モノマーとしては、重合反応可能な単量体(モノマー)であれば特に制限はないが、例えば、ラジカル重合性を示すものを使用することができる。このような重合性モノマーの具体例としては、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸及びその塩等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを意味し、(メタ)アクリロとは、メタクリロ又はアクリロを意味する。
【0121】
前記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸n−ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1−アダマンチル等の脂環式(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシトリエチレングリコールなどの(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等のアルコキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;モノ(メタ)アクリル酸グリセロール、モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール共重合体等のモノ(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール;(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどの複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン等の4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2,2−ジアルキル−1,3−ジオキソラン、又は、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシルー1,3−ジオキソラン等の4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロアルキル−1,3−ジオキソランのようなジオキソラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。なお、前記ジオキソラン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルの市販品としては、例えば、大阪有機化学工業株式会社製の商品名「MEDOL10」(4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン)の商品、商品名「MIBDOL10」の商品(4−アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン)、商品名「CHDOL10」の商品(4−アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン)、商品名「MMDOL30」の商品(4−メタクリロイルオキシメチル−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン)、商品名「MEDOL30」の商品(4−メタクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン)、商品名「MIBDOL30」の商品(4−メタクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン)、及び、商品名「CHDOL30」の商品(4−メタクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン)等を挙げることができる。上記した(メタ)アクリル酸エステルはそれぞれ、単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
前記(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘプトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−オクトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロイルモルフォリン、ビニルピロリドン;及びこれらの誘導体等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリルアミド誘導体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書中において、(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイル又はアクリロイルを意味する。
【0123】
上記した重合性モノマーの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、及び(メタ)アクリロニトリルは、上記環状マクロモノマーと共重合して、架橋構造を有する重合体(即ち、高分子架橋体)を形成し易い。この理由は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、及び(メタ)アクリロニトリルなどの重合性モノマーは、環状マクロモノマーの環状高分子鎖を容易に通過できる大きさであるため、これら重合性モノマーによって形成される主鎖が環状マクロモノマーに由来する環状高分子鎖に貫通して架橋構造を形成できるためと考えられる。また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、及び(メタ)アクリロニトリルなどの重合性モノマーには、重合反応性に優れ、重合体(即ち、高分子架橋体)の製造をより効率よく行えるという利点も有る。
【0124】
そこで、前記高分子架橋体の構造単位を構成する重合性モノマーは、少なくとも上記環状マクロモノマーの環状高分子鎖を通過できる大きさの重合性モノマーを含んでいることが好ましい。
【0125】
また、前記高分子架橋体の構造単位を構成する重合性モノマーに、スチレンを含めると、当該高分子架橋体に発泡性をもたせることができる。
【0126】
本発明の高分子架橋体は、上記した環状マクロモノマーと、上記した重合性モノマーとを重合反応させて、高分子架橋体を得る工程を有する本発明の製造方法により、製造することができる。前記重合反応は、常法によって行えばよく、通常は、ラジカル重合法によって前記環状マクロモノマーと前記重合性モノマーとを反応させる。例えば、前記重合反応は、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーの混合物に、所望により公知の光重合開始剤を添加して紫外線を照射することにより、あるいは、公知の熱重合開始剤を添加して加熱することにより行うことができる。また、前記重合反応を行うに際しては、必要に応じて、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーに溶媒を添加してもよい。もちろん、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーに溶媒を添加せずに重合を行うこと、いわゆるバルク重合を行うことも可能である。
【0127】
本発明の高分子架橋体の製造方法において、前記重合反応を行う際の環状マクロモノマーと、重合性モノマーとの混合比率は、特に制限されるものではないが、例えば、重合性モノマー1モルに対して環状マクロモノマーを0.001〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.05モル、より好ましくは0.001〜0.03モル混合すると、得られる重合体(高分子架橋体)に架橋構造が形成され易くなる。上記環状マクロモノマーの使用量が、重合性モノマー1モルに対して、0.001モル未満であると、架橋構造がほとんど形成されず、機械的特性(柔軟性、伸縮性)及び膨潤性に優れた高分子架橋体が得られないおそれがあり、一方、0.5モルを超えると、環状マクロモノマーの使用量に見合った効果の向上が見られず、コスト的に不経済となるおそれがある。
【0128】
また、上記光重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられ、より具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア(登録商標)2959、BASFジャパン株式会社(旧チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア(登録商標)1173、BASFジャパン株式会社製)、1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア(登録商標)184、BASFジャパン株式会社製)、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モノフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア(登録商標)907、BASFジャパン株式会社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア(登録商標)369、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルハイドロオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレートなどのアゾ系化合物等が挙げられる。これらの熱重合開始剤はそれぞれ、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
前記重合反応の反応条件は、環状マクロモノマー及び重合性モノマーの種類や量等により適宜設定すればよい。反応温度は、通常、40〜100℃、好ましくは60〜90℃である。反応温度が40℃未満である場合、反応が進行しない恐れがある。一方、反応温度が100℃を超える場合、副反応が生じる恐れがある。また、反応時間は通常、5〜24時間、好ましくは8〜12時間である。反応時間が5時間未満である場合、収率が低下する恐れがある。一方、反応時間が24時間を超える場合、製造コストが高くなる恐れがある。さらに反応圧力は、特に限定されず、大気圧下が挙げられる。また、雰囲気は、特に限定されず、例えば空気中及び窒素雰囲気下が挙げられる。
【0131】
上記のように重合反応を行うことで、上記環状マクロモノマーと、上記重合性モノマーとが共重合した重合体、即ち、本発明の高分子架橋体が得られる。得られる本発明の高分子架橋体の構造は、例えば、直鎖状に、上記環状マクロモノマーと上記重合性モノマーとがランダムに配置され、側鎖に環状マクロモノマーに由来する環状高分子鎖を有する構造となっていると考えられる。
【0132】
具体的には、上記の重合反応の進行によって生長していく主鎖が、上記環状マクロモノマーに由来する環状高分子鎖を貫通し、これにより、架橋構造を有する高分子架橋体が生成され得ると考えられる。このような架橋構造を有する高分子架橋体は、主鎖上を、自由に、環状高分子鎖が移動できる。
【0133】
図1は、上記のように重合体の主鎖1が環状高分子鎖2を貫通することで、架橋構造が形成された高分子架橋体を模式的に表している。
図1に示す構造を有する高分子架橋体では、環状高分子鎖2内をいわゆる糸通し状に主鎖1が貫通することで、3次元ネットワーク構造が形成されている。ここで、架橋構造は、上記のように環状高分子鎖2内に主鎖1を糸通しすることで形成されたものであるので、架橋点の移動が可能である。このため、
図1に示す構造を有する高分子架橋体では、主鎖1(ポリマー鎖セグメント)の運動性が高くなり、非共有結合又は共有結合による架橋構造を有する重合体に比べて、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)及び膨潤性を有し、また、圧縮応力などのような機械的物性にも優れるものとなる。
【0134】
このため、本発明の高分子架橋体は、
図1に示すような、環状マクロモノマーに由来する環状高分子鎖2に、主鎖1が貫通して形成された架橋構造を有することが好ましい。
【0135】
重合体が架橋構造を有しているか否かは、例えば、重合体のゲル分率を測定することで判断することができ、本発明の高分子架橋体のゲル分率は、50%以上であることが好ましい。なお、高分子架橋体のゲル分率の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0136】
また、本発明の高分子架橋体は高い膨潤性を有しており、本発明の高分子架橋体の膨潤率は、600〜3500%であることが好ましい。なお、膨潤率の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0137】
また、本発明の高分子架橋体は、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)を有している。具体的には、本発明の高分子架橋体は、20%圧縮強度が0.05〜2.0MPaで、40%圧縮強度が0.3〜7.0MPaであることが好ましい。なお、本明細書において、「20%圧縮強度」とは、20%圧縮変位時の圧縮強度を意味し、「40%圧縮強度」とは、40%圧縮変位時の圧縮強度を意味する。また、20%圧縮強度及び40%圧縮強度の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0138】
本発明の高分子架橋体は、上記した環状マクロモノマーと、上記した重合性モノマーとを共重合させるだけの簡便な方法(上記した環状マクロモノマーと、上記した重合性モノマーとを共重合させる1段階反応)で製造することができる。また、環状マクロモノマーと、重合性モノマーとの重合反応の進行と共に、糸通しが起こり得る(すなわち、重合反応中に環状高分子鎖内を生長中の主鎖が貫通し得る)ので、本発明の高分子架橋体は、架橋点が自由に移動する移動架橋構造を有し得、これにより、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)及び膨潤性を有し得ると考えられる。
【0139】
〔高分子ゲル〕
本発明の高分子ゲルは、上記した本発明の高分子架橋体と、可塑剤とを含有する。具体的には、本発明の高分子ゲルにおいて、可塑剤は、前記高分子架橋体中に保持されている。
【0140】
本発明の高分子ゲルに使用できる前記可塑剤の具体例としては、水;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル類、エチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合体等の多価アルコール類;ひまし油、大豆油、オリーブ油等の天然油類;オレイン酸、リノレン酸等の脂肪酸類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のその他のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、ソルベッソ等の炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、グリセリルトリアセテート等の酢酸エステル類;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)ブタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、イソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジイソウンデシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類;オレイン酸ブチル等の脂肪族一塩基酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート及びビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペートアジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のグリコールエステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート及び2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル類;メチルアセチルリシノレート等のリシノール酸エステル類;ピロメリット酸エステル類;2塩基酸と2価アルコールを反応させて得られるポリエステル類;ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルポリオール類;グリセリンジアセトモノラウレート等のアセチル化モノグリセライド類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ類;ポリプロピレングリコールやその誘導体等のポリエーテル類;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリイソブテン、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、パラフィン−ナフテン系混合炭化水素、塩素化パラフィン類等が挙げられる。これら可塑剤は、それぞれ、単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
前記可塑剤は、室温で液体であることが取り扱いの点等から好ましいが、用途によっては、室温を超える温度(例えば、50〜200℃)で液体の形態となるものを使用してもよい。
【0142】
本発明の高分子ゲルは、上記した可塑剤のうち、酢酸エステル類、フタル酸エステル類、脂肪族一塩基酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、グリコールエステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、リシノール酸エステル類、ピロメリット酸エステル類、ポリエステル類、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリエステルポリオール類、アセチル化モノグリセライド類等のエステル系可塑剤を含有することがより好ましく、酢酸エステル類、及び脂肪族二塩基酸エステル類からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが特に好ましい。
【0143】
本発明の高分子ゲルは、上記した環状マクロモノマーと、上記した重合性モノマーとを、上記した可塑剤の存在下で、重合反応させて、高分子ゲルを得る工程を有する本発明の製造方法により、製造することができる。前記重合反応は、常法によって行えばよく、通常は、前記可塑剤の存在下で、ラジカル重合法によって前記環状マクロモノマーと前記重合性モノマーとを反応させる。例えば、前記重合反応は、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーと、前記可塑剤との混合物に、所望により公知の光重合開始剤を添加して紫外線を照射することにより、あるいは、公知の熱重合開始剤を添加して加熱することにより行うことができる。また、前記重合反応を行うに際しては、必要に応じて、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーと、前記可塑剤との混合物に溶媒を添加してもよい。もちろん、前記環状マクロモノマー及び前記重合性モノマーと、前記可塑剤との混合物に溶媒を添加せずに重合を行うことも可能である。
【0144】
或いは、本発明の高分子ゲルは、上記した環状マクロモノマーと、上記した重合性モノマーとを重合反応させて、高分子架橋体を得る工程と、前記高分子架橋体を可塑剤に浸漬させて膨潤させることにより、高分子ゲルを得る工程とを有する本発明の製造方法によっても製造することができる。この場合における重合反応は、可塑剤の非存在下で、重合反応を行うこと以外は、上記した重合反応と同様にして行うことができる。また、この場合の重合反応は、溶媒の存在下で行ってもよいし、溶媒の非存在下で行ってもよい。なお、溶媒の存在下で重合反応を行って高分子架橋体を得た場合には、溶媒の留去後に、前記高分子架橋体を前記可塑剤に浸漬させて膨潤させることが好ましい。
【0145】
本発明の高分子ゲルの製造方法において、前記重合反応を行う際の環状マクロモノマーと、重合性モノマーとの混合比率は、特に制限されるものではないが、例えば、重合性モノマー1モルに対して環状マクロモノマーを0.001〜0.5モル、好ましくは0.001〜0.05モル、より好ましくは0.001〜0.03モル混合すると、得られる高分子ゲルに含まれる重合体(高分子架橋体)に架橋構造が形成され易くなる。上記環状マクロモノマーの使用量が、重合性モノマー1モルに対して、0.001モル未満であると、架橋構造がほとんど形成されず、機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性に優れた高分子ゲルが得られないおそれがあり、一方、0.5モルを超えると、環状マクロモノマーの使用量に見合った効果の向上が見られず、コスト的に不経済となるおそれがある。
【0146】
また、本発明の高分子ゲルの製造方法において、環状マクロモノマー及び重合性モノマー(環状マクロモノマー及び重合性モノマーの総量)の使用量と、可塑剤の使用量の比率は、特に制限されるものではないが、例えば、重量比で、90:10〜15:85、より好ましくは、80:20〜20:80であると、環状マクロモノマー及び重合性モノマーの重合体である高分子架橋体を可塑化させてソフト感を付与することができる。
【0147】
また、上記光重合開始剤及び熱重合開始剤としては、特に限定されず、上述の高分子架橋体の製造方法で使用される光重合開始剤と同様のものを使用することができる。また、高分子ゲルの製造方法における重合反応の反応条件は、上記高分子架橋体の製造方法における重合反応の反応条件と同様である。
【0148】
上記のように可塑剤の存在下で上記環状マクロモノマーと上記重合性モノマーとを重合反応させることにより、或いは、可塑剤の非存在下で上記環状マクロモノマーと上記重合性モノマーとを重合反応させて高分子架橋体を得た後、前記高分子架橋体を可塑剤に浸漬させて膨潤させることにより、上記環状マクロモノマーと、上記重合性モノマーとが共重合した重合体、即ち、前記高分子架橋体と、可塑剤とを含有する本発明の高分子ゲルが得られる。得られる本発明の高分子ゲルに含有されている高分子架橋体は、上記した本発明の高分子架橋体と同様の構造を有し、架橋点の移動が可能な
図1に示す構造を有すると考えられる。
図1に示す構造を有する高分子架橋体を含有する高分子ゲルでは、前記高分子架橋体の主鎖1(ポリマー鎖セグメント)の運動性が高くなり、非共有結合又は共有結合による架橋構造を有する重合体を含有する高分子ゲルに比べて、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性を有し、また、圧縮応力などのような機械的物性にも優れるものとなる。
【0149】
高分子ゲルに含有されている重合体が架橋構造を有しているか否かは、例えば、高分子ゲルのゲル分率又は膨潤率を測定することで判断することができる。発明の高分子ゲルのゲル分率は、50%以上であることが好ましい。また、後述する膨潤率の測定において、高分子ゲルが溶解した場合を架橋構造を形成していないものと判断する。なお、本明細書中において、高分子ゲルのゲル分率とは、以下に示す測定方法により得られるゲル分率を意味する。
【0150】
〔高分子ゲルのゲル分率の測定方法〕
試料(重合体)0.5gを秤量し、テトラヒドロフラン(THF)50mLを注加して24時間浸漬させた後、♯200メッシュの金網を使用してろ過し、不溶ゲル樹脂とろ液に分ける。得られた不溶ゲル樹脂を室温で2日間放置し、更に100℃の乾燥機の中で2時間乾燥させる。その後、前記不溶ゲル樹脂をデシケーター中で冷却し、前記不溶ゲル樹脂の重量(不溶ゲル樹脂の乾燥重量)を測定する。そして、ゲル分率を以下の計算式から算出する。なお、以下に示す計算式においてAで表される試料中の高分子架橋体の含有率(%)は、前記高分子ゲルの製造に使用する環状マクロモノマー及び重合性モノマーの使用量(g)と可塑剤の使用量(g)の合計に対する、前記環状マクロモノマー及び重合性モノマーの使用量(g)の比率と実質的に同じである。
【0152】
W
0:THFに溶かす前の乾燥した試料の重量(g)
W
2:不溶ゲル樹脂の乾燥重量(g)
A:試料中の高分子架橋体の含有率(重量%)
【0153】
また、本発明の高分子ゲルは高い膨潤性を有しており、本発明の高分子ゲルの膨潤率は、480〜1300%であることが好ましい。なお、膨潤率の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0154】
また、本発明の高分子ゲルは、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)を有している。具体的には、本発明の高分子ゲルは、20%圧縮強度が0.002MPa〜0.4MPaで、40%圧縮強度が0.008MPa〜2.0MPaであることが好ましい。なお、本明細書において、「20%圧縮強度」とは、20%圧縮変位時の圧縮強度を意味し、「40%圧縮強度」とは、40%圧縮変位時の圧縮強度を意味する。また、20%圧縮強度及び40%圧縮強度の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0155】
また、本発明の高分子ゲルは、耐ブリードアウト性を有している。具体的には、本発明の高分子ゲルは、ブリードアウト量が7%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。なお、ブリードアウト量の測定方法については、後述する実施例の項で説明する。
【0156】
本発明の高分子ゲルは、可塑剤の存在下で、環状マクロモノマーと、重合性モノマーとを共重合させるだけの簡便な方法、或いは、環状マクロモノマーと重合性モノマーを共重合させて得た高分子架橋体を可塑剤に浸漬させるだけの簡便な方法で製造することができる。また、環状マクロモノマーと、重合性モノマーとの重合反応の進行と共に、糸通しが起こり得る(すなわち、重合反応中に環状高分子鎖内を生長中の主鎖が貫通し得る)ので、本発明の高分子ゲルは、当該高分子ゲルに含まれる高分子架橋体の架橋点が自由に移動する移動架橋構造を有し得、これにより、優れた機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性を有し得ると考えられる。
【実施例】
【0157】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0158】
まず、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法について、説明する。
【0159】
[実施例1:環状マクロモノマーの製造]
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造の第1工程〜第9工程で得られる化合物の同定は、以下の機器及び条件で、
1H−NMR及び
13C−NMRの測定、IRの測定、MALDI−TOF MSの測定、分子量の測定、元素分析、及び融点の測定を実施することにより、行った。
【0160】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造の第1工程〜第9工程で得た各化合物について、
1H−NMR及び
13C−NMRを、日本電子株式会社製EX−270型超伝導核磁気共鳴吸収装置を用い、室温(25℃)にて測定した。測定溶媒としては、重クロロホルム(CDCl
3)又は重ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6)を用いた。基準物質としては、テトラメチルシランを用いた。
【0161】
(IR)
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造の第1工程〜第9工程で得た各化合物について、日本分光株式会社製FT/IR4100型フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、赤外吸収(IR)スペクトルを測定した。試料を臭化カリウムとよく混合し、加圧器で直径5mm、厚み0.1〜0.2mm程度の円板型ペレットに成型してから測定した。
【0162】
(MALDI−TOF MS)
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造の第1工程〜第3工程、及び第9工程で得た化合物(環状マクロモノマー)について、島津製作所株式会社製KOMPACT−2型マトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置を用いて、質量分析(MALDI−TOF MS)を行った。本質量分析では、マトリックス及びイオン化助剤として、それぞれ、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸及びヨウ化ナトリウムもしくはトリフルオロ酢酸銀を用いた。具体的には、試料1mgをテトラヒドロフラン(THF)1mLに溶解させて、試料溶液を調製した。また、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸17mgを1mLのTHFに溶解させて、マトリックス溶液を調製した。その後、マトリックス溶液と試料溶液を1:1の比で混合した。試料プレートに、0.1mmol/mLのヨウ化ナトリウムもしくはトリフルオロ酢酸銀溶液0.5Lをスポットし、室温で数分間乾燥させてから、その上に、0.5〜1.0μLの試料/マトリックス混合溶液をスポットし、乾燥空気で溶媒を揮発させてから、上記質量分析装置にて測定した。なお、後述する各化合物のMALDI−TOF MSの測定結果において、nはPEGの重合度を意味する。
【0163】
(分子量)
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造の第1工程〜第3工程、及び第9工程で得た各化合物について、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)測定を行い、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを求めた。
【0164】
具体的には、試料40mgをテトラヒドロフラン(THF)12mLに溶解させ(浸透時間:およそ1時間(完全溶解))、孔径0.45μmの非水系クロマトディスクで濾過して、GPC測定を行った。そのGPC測定により得られた溶出曲線と、予め標準ポリスチレンのGPC測定を行うことにより作成しておいた標準ポリスチレンの検量線とから、試料の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを求めた。前記GPC測定の使用装置及び測定条件は、以下の通りである。
【0165】
使用したGPC装置:日本分光株式会社製「PU−2080ポンプ(登録商標)」、東ソー株式会社製「UV−8020紫外・可視検出器(登録商標)」及び日本分光株式会社製「RI−2031plus示差屈折率検出器(登録商標)」
ガードカラム:東ソー株式会社製「TSKgel(登録商標) H8」(内径7.5mm×7.5cm)×1本
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel(登録商標) G2500H」(内径7.8mm×長さ60cm)及び「TSKgel(登録商標) G3000H」(内径7.8mm×長さ60cm)
カラム温度:25℃
移動相:THF
移動相の流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
試料濃度:0.33重量%
試料の注入量:20μL
測定期間:0〜45min
ランタイム(測定継続時間):45min
サンプリングピッチ:200msec
【0166】
検量線用標準ポリスチレン試料としては、東ソー株式会社製の商品名「TSKgel(登録商標)標準ポリスチレン」の重量平均分子量Mwが590(数平均分子量Mn:520)、1010(数平均分子量Mn:890)、2500(数平均分子量Mn:2380)及び6200(数平均分子量Mn:6080)であるものを用いた。
【0167】
検量線の作成方法は、前記検量線用標準ポリスチレン(重量平均分子量が590、1010、2500及び6200の各標準ポリスチレン)を、それぞれ、2mg、4mg、6mg及び10mg秤量した後、THF30mLに溶解し、得られた溶液を20μL、カラムに注入した。これら標準ポリスチレンの保持時間から較正曲線(三次式)を検量線として作成し、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn測定に用いた。
【0168】
(元素分析)
後述する環状マクロモノマーの製造の第4工程〜第8工程で得た各化合物について、
ヤナコテクニカルサイエンス株式会社のCHNコーダMT−5型を使用して、元素含有量を測定した。1回の測定につき、およそ2.5mgの試料を用いて、測定を最低2回行った。元素含有量は得られた値の平均値として求めた。
【0169】
(融点)
後述する環状マクロモノマーの製造の第4工程〜第8工程で得た各化合物について、株式会社ヤナコ機器開発研究所製のMP−S3型融点測定装置を使用して、融点を測定した。
【0170】
(環状マクロモノマーの製造)
実施例1に係る環状マクロモノマーを、以下の(1)第1工程〜(9)第9工程を実施することにより、製造した。
【0171】
(1)第1工程:α,ω−ジトシルオキシポリエチレングリコールの製造
滴下漏斗及びマグネティックスターラーを備え付けた1000mLナスフラスコに、ポリエチレングリコール(Mw=1000)40.0g(40.0mmol)と、蒸留水20mLと、テトラヒドロフラン(THF)100mLと、水酸化ナトリウム20.0g(500mmol)とを加え、大気雰囲気下、0℃で攪拌した。そこへ滴下漏斗を用いて、THF60mLに溶解させた塩化トシル30.5g(160mmol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間攪拌を続け、反応混合物をジクロロメタンで希釈してから、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた白色固体をシリカゲルカラム(酢酸エチル→ジクロロメタン:メタノール=8:2v/v)で精製し、さらにベンゼンを用いて凍結乾燥を行うことにより、白色固体としてα,ω−ジトシルオキシポリエチレングリコール41.0g(収率89%)を得た。得られたα,ω−ジトシルオキシポリエチレングリコールについての各種測定結果を以下に示す。
【0172】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=7.79(d、J=8.4Hz、4H、CH)、7.35(d、J=7.8Hz、4H、CH)、4.15(t、J=4.7Hz、4H、CH
2)、3.70−3.58(m、88H、CH
2)、2.45(s,6H、CH
3)
【0173】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=144.5(CH)、132.7(CH)、129.5(CH)、127.6(CH)、70.4(CH
2)、70.2(CH
2)、69.0(CH
2)、68.3(CH
2)、21.3(CH
3)
【0174】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=2860(C−H)、1345(C−H)、1105(C−O)
【0175】
(MALDI−TOF MS)
MALDI−TOF MS:m/z=1363(n=22、[M+Na]
+)、1407(n=23、[M+Na]
+)、1451(n=24、[M+Na]
+)
【0176】
(分子量)
重量平均分子量Mw:1810
数平均分子量Mn:1600
重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn:1.13
【0177】
(2)第2工程:α,ω−ジフタルイミドポリエチレングリコールの製造
ジムロート冷却器及びマグネティックスターラーを備え付けた1000mLナスフラスコに、第1工程で得たα,ω−ジトシルオキシポリエチレングリコール40.0g(30.0mmol)と、アセトニトリル400mLと、フタルイミドカリウム22.2g(120mmol)とを加えて12時間、大気雰囲気下、80℃で加熱還流した。反応終了後、ジクロロメタンを加え、蒸留水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた白色油状物質をシリカゲルカラム(酢酸エチル→ジクロロメタン:メタノール=8:2v/v)で精製し、さらにベンゼンを用いて凍結乾燥を行うことにより白色固体としてα,ω−ジフタルイミドポリエチレングリコール35.0g(収率90%)を得た。得られたα,ω−ジフタルイミドポリエチレングリコールについての各種測定結果を以下に示す。
【0178】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=7.9−7.8(m、4H、CH)、7.7−7.6(m、4H、CH)、4.0−3.9(m、4H、CH
2)、3.8−3.7(m、4H、CH
2)、3.6−3.5(m、88H、CH
2)
【0179】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=168.2(C=O)、133.8(CH)、132.1(CH)、123.2(CH)、70.5(CH
2)、70.0(CH
2)、67.8(CH
2)、37.2(CH
2)
【0180】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=2830(C−H)、1704(C=O)、1105(C−O)
【0181】
(MALDI−TOF MS)
MALDI−TOF MS:m/z=1265(n=21、[M+Ag]
+)、1309(n=22、[M+Ag]
+)、1353(n=23、[M+Ag]
+)
【0182】
(分子量)
重量平均分子量Mw:1510
数平均分子量Mn:1200
重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn:1.26
【0183】
(3)第3工程:α,ω−ジアミノポリエチレングリコールの製造
ジムロート冷却器及びマグネティックスターラーを備え付けた1000mLナスフラスコに、第2工程で得たα,ω−ジフタルイミドポリエチレングリコール34.0g(26.0mmol)と、メタノール300mLと、ヒドラジン一水和物13.5g(260mmol)とを加えて3時間、大気雰囲気下、78℃で加熱還流した。反応終了後、析出固体をろ別し、ろ液を濃縮してからジクロロメタンで希釈し、蒸留水で2回洗浄した。続いて、希塩酸を用いて目的物を有機層から水層へ抽出した。最後に、水層に水酸化ナトリウムを加えて塩基性にし、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去することで、白色固体としてα,ω−ジアミノポリエチレングリコール(一般式(III)におけるMが炭素数2のアルキレン基である化合物)17.7g(収率68%)を得た。得られたα,ω−ジアミノポリエチレングリコールについての各種測定結果を以下に示す。
【0184】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=3.7−3.6(m、88H、CH
2)、3.52(t、J=5.3Hz、4H、CH
2)、2.86(t、J=5.3Hz、4H、CH
2)
【0185】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=72.9(CH
2)、70.4(CH
2)、70.1(CH
2)、41.6(CH
2)
【0186】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=2870(C−H)、1480(N−H)、1345(C−N)、1105(C−O)
【0187】
(MALDI−TOF MS)
MALDI−TOF MS:m/z=1049(n=20、[M+Ag]
+)、1093(n=21、[M+Ag]
+)、1137(n=22、[M+Ag]
+)
【0188】
(分子量)
重量平均分子量Mw:1270
数平均分子量Mn:1100
重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn:1.15
【0189】
(4)第4工程:5−メチルイソフタル酸ジメチルの製造
ジムロート冷却器及びマグネティックスターラーを備え付けた500mLナスフラスコに、5−メチルイソフタル酸(一般式(V)で表される化合物)10.0g(0.056mol)と、メタノール120mLと、濃硫酸3mLとを加えて12時間、大気雰囲気下、65℃で加熱還流した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をpHが7〜8になるまで加え、析出してきた固体をろ過し、白色結晶として5−メチルイソフタル酸ジメチル(一般式(VI)で表される化合物)10.8g(収率93%)を得た。得られた5−メチルイソフタル酸ジメチルについての各種測定結果を以下に示す。
【0190】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=8.49(s、1H、CH)、8.05(s、2H、CH)、3.92(s、6H、CH
3)、2.50(s、3H、CH
3)
【0191】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=166.2(C=O)、138.5(CH)、134.2(CH)、130.3(CH)、127.7(CH)、52.0(CH
3)、21.4(CH
3)
【0192】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=2953(C−H)、1726(C=O)、1247(C−O)
【0193】
(元素分析)
元素分析値:C63.67%、H5.69%
C
11H
12O
4としての計算値:C63.45%、H5.81%
【0194】
(融点)
融点:92−93℃
【0195】
(5)第5工程:5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルの製造
ジムロート冷却器及びマグネティックスターラーを備え付けた500mLナスフラスコに、第4工程で得た5−メチルイソフタル酸ジメチル8.0g(38mmol)と、四塩化炭素200mLと、N−ブロモスクシンイミド(NBS)8.2g(46mmol)と、過酸化ベンゾイル(BPO)0.1g(0.4mmol)とを加え、大気雰囲気下、80℃で12時間加熱還流した。反応終了後、浮遊物をろ過し、蒸留水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の順に洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた淡黄色固体をアセトンから再結晶することで、白色結晶として5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチル(一般式(VII)で表される化合物)5.9g(収率54%)を得た。得られた5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチルの各種測定結果を以下に示す。
【0196】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=8.61(s、1H、CH)、8.22(s、2H、CH)、4.54(s、2H、CH
2)、3.96(s、6H、CH
3)
【0197】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=165.4(C=O)、138.7(CH)、134.0(CH)、131.1(CH)、130.3(CH)、52.3(CH
2)、31.3(CH
3)
【0198】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=1724(C=O)、1246(C−O)、692(C−Br)
【0199】
(元素分析)
元素分析値:C45.97%、H3.78%
C
11H
11BrO
4としての計算値:C46.02%、H3.86%
【0200】
(融点)
融点:130−131℃
【0201】
(6)第6工程:5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミドの製造
ジムロート冷却器及びマグネティックスターラーを備え付けた200mLナスフラスコに、第5工程で得た5−ブロモメチルイソフタル酸ジメチル2.0g(6.8mmol)と、トルエン100mLと、トリフェニルホスフィン1.8g(6.8mmol)とを加え、大気雰囲気下、110℃で12時間加熱還流した。反応終了後、析出した固体を吸引ろ過し、デシケーターで乾燥させることで、白色固体として5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミド(一般式(VIII)で表される化合物)を、3.6g(収率97%)得た。得られた5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミドの各種測定結果を以下に示す。
【0202】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=8.51(s、1H、CH)、7.88(s、2H、CH)、7.86−7.62(m、15H、CH)、5.79(d、J=14.5Hz、2H、CH
2)、3.84(s、6H、CH
3)
【0203】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=165.2(C=O)、136.2(CH)、135.1(CH)、134.3(CH)、131.0(CH)、130.3(CH)、130.1(CH)、117.9(CH)、116.6(CH)、52.4(CH
2)、21.4(CH
3)
【0204】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=1720(C=O)、1437(C−P)、1257(C−O)
【0205】
(元素分析)
元素分析値:C63.59%、H4.86%
C
29H
26BrO
4Pとしての計算値:C63.40%、H4.77%
【0206】
(融点)
融点:241−242℃
【0207】
(7)第7工程:5−ビニルイソフタル酸の製造
滴下漏斗及びマグネティックスターラーを備え付けた300mLナスフラスコに、第6工程で得た5−トリフェニルホスホニオメチルイソフタル酸ジメチルブロミド3.0g(5.5mmol)と、37%ホルマリン(ホルムアルデヒド水溶液)54mLとを加えた後、氷浴で冷却しながら、40%水酸化ナトリウム水溶液40mLをゆっくりと滴下し、大気雰囲気下、室温で48時間攪拌した。反応終了後、浮遊物をろ過し、充分に酸性になるまで希塩酸を滴下した。析出した固体を吸引ろ過し、デシケーターで乾燥することで、白色固体として5−ビニルイソフタル酸(一般式(IX)で表される化合物)1.2g(収率77%)を得た。得られた5−ビニルイソフタル酸の各種測定結果を以下に示す。
【0208】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,DMSO−d
6):δ(ppm)=13.29(br、2H、COOH)、8.38(s、1H、CH)、8.24(s、2H、CH)、6.97(dd、J=9.6、1.6Hz、1H、CH)、6.04(dd、J=17.8、2.2Hz、1H、CH
2)、5.45(dd、J=11.3、1.4Hz、1H、CH
2)
【0209】
13C−NMR(67.5MHz,DMSO−d
6):δ(ppm)=166.5(C=O)、138.1(CH)、135.2(CH)、131.7(CH)、130.6(CH)、129.2(CH)、116.6(CH
2)
【0210】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=3200−2400(O−H)、1700(C=O)、1598(C=C)、1280(C−O)
【0211】
(元素分析)
元素分析値:C62.72%、H4.11%
C
10H
8O
4としての計算値:C62.50%、H4.20%
【0212】
(8)第8工程:(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)の製造
還流冷却器を備え付けた200mLナスフラスコに、第7工程で得た5−ビニルイソフタル酸1.0g(5.2mmol)と、ベンゼン60mLと、塩化チオニル1.5g(13mmol)と、ジメチルホルムアミド(DMF)0.5mLとを加え、大気雰囲気下、80℃で3時間加熱還流した。反応終了後、溶媒及び過剰に加えた塩化チオニルを減圧留去した。残留物をテトラヒドロフラン(THF)30mLに溶解させ、2−メルカプトチアゾリン1.2g(10mmol)を加え、トリエチルアミン1.3g(13mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、さらに、大気雰囲気下、室温で12時間攪拌した。その後、蒸留水500mLを加えることで析出した固体を吸引ろ過し、固体を蒸留水で繰り返し洗浄した。デシケーターで乾燥させることで黄色固体として(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)(一般式(X)で表される化合物)1.6g(収率79%)を得た。得られた(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)の各種測定結果を以下に示す。
【0213】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=7.84(s、1H、CH)、7.81(s,2H、CH)、6.78(dd、J=9.6、1.4Hz、1H、CH)、5.85(dd、J=17.5、2.1Hz、1H、CH
2)、5.41(dd、J=11.3、1.6Hz、1H、CH
2)、4.58(t、J=7.3Hz、4H、CH
2)、3.52(t、J=7.2Hz、4H、CH
2)
【0214】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=201.6(C=S)、169.9(C=O)、138.1(CH)、134.7(CH)、134.2(CH)、130.0(CH)、 129.1(CH)、116.7(CH)、56.3(CH
2)、29.6(CH
2)
【0215】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=1686(C=O)、1279(C−O)、1189(C=S)
【0216】
(元素分析)
元素分析値:C48.55%、H3.48%
C
16H
14N
2O
2S
4としての計算値:C48.71%、H3.58%
【0217】
(融点)
融点:75−76℃
【0218】
(9)第9工程:環状マクロモノマーの製造
メカニカルスターラー及びメタロールポンプを装備した3L三口ナスフラスコに、ジクロロメタン1200mLを加えた。激しく攪拌しながら、第3工程で得たα,ω−ジアミノポリエチレングリコール3.0g(3mmol)を溶解させたジクロロメタン溶液400mLと、第8工程で得た(5−ビニル−1,3−フェニレン)ビス((2−チオキソチアゾリジン−3−イル)メタノン)1.2g(3mmol)を溶解させたジクロロメタン溶液400mLを、それぞれ、メタロールポンプを用いて同量、同速度で室温で24時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、室温で24時間攪拌を続けた。その後溶媒を減圧留去し、得られた黄色透明液体を、シリカゲルカラム(酢酸エチル→ジクロロメタン:メタノール=8:2v/v)により精製した。得られた粘性液体を少量のジクロロメタンに溶解させ、そこへ、適量のジエチルエーテルを加えることで高分子量成分を沈殿物として除去した。上澄み液をろ過し、溶媒を減圧留去することで、無色透明粘性液体として環状マクロモノマー(本発明においては、St−c−PEGとも称する)1.30g(収率34%)を得た。なお、得られたSt−c−PEGは、一般式(I)におけるMが炭素数2のアルキレン基である環状マクロモノマーである。得られたSt−c−PEGの各種測定結果を、以下に示す。
【0219】
(
1H−NMR及び
13C−NMR)
1H−NMR(270MH
Z,CDCl
3):δ(ppm)=8.19(s、1H、CH)、8.09(s、2H、CH)、7.48(brs、2H、NH)、6.84(dd,J=9.5、1.3Hz、1H、CH)、5.96(dd、J=17.2、2.0Hz、1H、CH
2)、5.39(dd、J=12.1、1.2Hz、1H、CH
2)、3.69−3.55(m、92H、CH
2)
【0220】
13C−NMR(67.5MHz,CDCl
3):δ(ppm)=166.5(C=O)、138.1(CH)、135.4(CH)、134.7(CH)、128.1(CH)、124.8(CH)、115.8(CH
2)、70.3(CH
2)、69.5(CH
2)、39.9(CH
2)
【0221】
(IR)
IR(KBr,cm
-1):ν=2870(C−H)、1660(C=O)、1108(C−O)
【0222】
(MALDI−TOF MS)
MALDI−TOF MS:m/z=1225(n=22、[M+K]
+)、1269(n=23、[M+K]
+)、1313(n=24、[M+K]
+)
【0223】
(分子量)
重量平均分子量Mw:1320
数平均分子量Mn:1100
重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn:1.20
次いで、実施例2〜4及び比較例1〜4の重合体の製造方法について説明する。
【0224】
[実施例2:重合体(高分子架橋体)の製造]
10mLサンプル管に、架橋剤としての実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.01mmolと、重合性モノマーとしてのアクリル酸n−ブチル(分子量128.2)1mmolと、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.005gとを添加して溶解させて配合液を作製した。そして、配合液を窒素パージした後、窒素雰囲気下で70℃で7時間反応させた後、さらに90℃で3時間反応させて、重合体(高分子架橋体)を得た。
【0225】
[実施例3:重合体(高分子架橋体)の製造]
実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEGの使用量を0.005mmolとした以外は、実施例2と同様にして重合体(高分子架橋体)を得た。
【0226】
[実施例4:重合体(高分子架橋体)の製造]
上記環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEGの使用量を0.01mmolとし、重合性モノマーとしてのアクリル酸n−ブチルの使用量を0.5mmolとし、さらに、重合性モノマーとしてスチレン(分子量104)0.5mmolを使用して配合液を作製した以外は、実施例2と同様にして重合体(高分子架橋体)を得た。
【0227】
[比較例1:重合体の製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEG0.01mmolに代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.01mmolを使用して配合液を作製した以外は、実施例2と同様にして重合体を得た。
【0228】
[比較例2:重合体の製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEG0.005mmolに代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.005mmolを使用して配合液を作製した以外は、実施例3と同様にして重合体を得た。
【0229】
[比較例3:重合体の製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEG0.01mmolに代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.01mmolを使用して配合液を作製した以外は、実施例4と同様にして重合体を得た。
【0230】
[比較例4:重合体の製造]
架橋剤としての実施例1に係る環状マクロモノマーの製造で得たSt−c−PEGを使用せずに配合液を作製した以外は、実施例2と同様にして重合体を得た。
【0231】
実施例2〜4及び比較例1〜4で得られた重合体について、以下に示す方法により、膨潤率、20%圧縮強度、40%圧縮強度、及びゲル分率を測定した。
【0232】
〔膨潤率の測定方法〕
試料(重合体)0.5gを秤量し、テトラヒドロフラン(THF)50mLを注加して24時間浸漬させた後、♯200メッシュの金網を使用してろ過し、不溶ゲル樹脂とろ液に分けた。ろ過直後の不溶ゲル樹脂の重量(即ち、ろ過直後の膨潤した試料の重量)を測定し、膨潤率(%)を以下の計算式から算出した。
【0233】
膨潤率(%)={(W
1−W
0)/W
0}×100
W
0:THFに溶かす前の乾燥した試料の重量(g)
W
1:ろ過直後の膨潤した試料の重量(g)
【0234】
〔20%圧縮強度及び40%圧縮強度の測定方法〕
以下に示す測定条件下、23℃の環境下で、試験片(重合体)を1mm/分の圧縮速度で圧縮し、試験片の厚みが20%変位した時の最大応力(N)及び試験片の厚みが40%変位した時の最大応力(N)をそれぞれ測定した。そして、測定した20%変位時の最大応力(N)を以下に示す圧縮強度の算出式に代入し、20%変位時の圧縮強度(MPa)、即ち、20%圧縮強度(MPa)を求めた。同様に、測定した40%変位時の最大応力(N)を以下に示す圧縮強度の算出式に代入し、40%変位時の圧縮強度(MPa)、即ち、40%圧縮強度(MPa)を求めた。なお、3点の試験片について測定を行い、これらの平均値を圧縮強度(MPa)として採用した。
【0235】
<測定条件>
万能試験機 :テンシロン万能試験機UCT−10T(株式会社オリエンテック製)
データ処理 :UTPS−STD(ソフトブレーン株式会社製)
圧縮治具 :JIS K6767に準拠した圧縮冶具
試験片の大きさ:20Φ、厚み2mm
【0236】
<圧縮強度の算出式>
σ
m= F
m/A
0
σ
m:圧縮強度(MPa)
F
m:測定した最大応力(N)
A
0:圧縮前の試験片の圧縮治具と接する面積(mm
2)
【0237】
〔重合体のゲル分率の測定方法〕
試料(重合体)0.5gを秤量し、テトラヒドロフラン(THF)50mLを注加して24時間浸漬させた後、♯200メッシュの金網を使用してろ過し、不溶ゲル樹脂とろ液に分けた。得られた不溶ゲル樹脂を室温で2日間放置し、更に100℃の乾燥機の中で2時間乾燥させた。その後、前記不溶ゲル樹脂をデシケーター中で冷却し、前記不溶ゲル樹脂の重量(不溶ゲル樹脂の乾燥重量)を測定した。そして、ゲル分率を以下の計算式から算出した。
【0238】
ゲル分率(%)=(W
2/W
0)×100
W
0:THFに溶かす前の乾燥した試料の重量(g)
W
2:不溶ゲル樹脂の乾燥重量(g)
【0239】
以下の表1に、実施例2〜4及び比較例1〜4の重合体の製造における架橋剤及び重合性モノマーの使用量(mmol)、及び熱重合開始剤の使用量(g)、並びに、実施例2〜4及び比較例1〜4の重合体の製造で得られた重合体の膨潤率、20%圧縮強度、40%圧縮強度、及びゲル分率の測定結果を示す。なお、表1中において、「PEG1000」は、比較例1〜4で使用したポリエチレングリコール♯1000ジアクリレートの略称である。
【0240】
【表1】
【0241】
表1に示す結果より、実施例2〜4の重合体(高分子架橋体)は、50%以上のゲル分率を示し、架橋構造を有することが認められた。また、比較例1〜3の重合体も、50%以上のゲル分率を示し、架橋構造を有することが認められた。一方、比較例4の重合体は、0%のゲル分率を示し、架橋構造を有していないことが認められた。
【0242】
また、架橋構造を有する実施例2〜4の重合体の膨潤率は、いずれも、600〜3500%の範囲内にあり(具体的には、699〜2130%であり)、実施例2〜4の重合体は、膨潤性に優れるものであることが認められた。これに対して、架橋構造を有する比較例1〜3の重合体の膨潤率は、474〜586%と低く、実施例2〜4の重合体と比べて、膨潤率に劣るものであった。
【0243】
また、架橋構造を有する実施例2〜4の重合体は、いずれも、0.05〜2.0MPa(具体的には、0.09〜0.39MPa)の20%圧縮強度、0.3〜7.0MPa(具体的には、1.2〜1.6MPa)の40%圧縮強度を示し、機械的特性(柔軟性、伸縮性)に優れるものであることが認められた。これに対して、架橋構造を有する比較例1の重合体は、20%圧縮強度が2.1MPaと高く、また、圧縮強度の測定において、40%変位前に破壊されることから、実施例2〜4の重合体と比べて、機械的特性(柔軟性、伸縮性)に劣るものであると認められた。また、架橋構造を有する比較例2の重合体は、20%圧縮強度が1.6MPaと低いが、圧縮強度の測定において、40%変位前に破壊されることから、実施例2〜4の重合体と比べて、機械的特性(柔軟性、伸縮性)に劣るものであると認められた。さらに、比較例3の重合体は、20%圧縮強度が3.9MPaと高く、また、40%圧縮強度も15MPaと高いことから、実施例2〜4の重合体と比べて、機械的特性(柔軟性、伸縮性)に劣るものであると認められた。
【0244】
次いで、実施例5〜8及び比較例5〜8の高分子ゲルの製造方法について説明する。
【0245】
[実施例5:高分子ゲルの製造]
10mLサンプル管に、架橋剤としての実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法により得られるSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.33g(0.25mmol)と、重合性モノマーとしてのアクリル酸n−ブチル(分子量128.2)3.2g(25mmol)と、可塑剤としてのグリセリルトリアセテート(大八化学工業株式会社製、商品名「トリアセチン」)1.5gと、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.13gとを添加して溶解させて配合液を作製した。そして、配合液を窒素パージした後、窒素雰囲気下で60℃で7時間反応させた後、70℃で7時間、さらに90℃で3時間反応させて、高分子ゲルを得た。
【0246】
[実施例6:高分子ゲルの製造]
上記可塑剤としてのグリセリルトリアセテート(大八化学工業株式会社製、商品名「トリアセチン」)の使用量を2.3gとし、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.15gとした以外は、実施例5と同様にして高分子ゲルを得た。
【0247】
[実施例7:高分子ゲルの製造]
上記可塑剤としてのグリセリルトリアセテート(大八化学工業株式会社製、商品名「トリアセチン」)の使用量を3.5gとし、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.18gとした以外は、実施例5と同様にして高分子ゲルを得た。
【0248】
[実施例8:高分子ゲルの製造]
上記重合性モノマーとしてアクリル酸n−ブチル(分子量128.2)3.2g(25mmol)に代えてアクリル酸テトラヒドロフルフリル(大阪有機化学工業株式会社製、商品名「ビスコート♯150」、分子量156.2)3.9g(25mmol)を使用し、可塑剤としてのグリセリルトリアセテート(大八化学工業株式会社製、商品名「トリアセチン」)の使用量を1.8gとし、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.15gとした以外は、実施例5と同様にして高分子ゲルを得た。
【0249】
[比較例5:高分子ゲルの製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法により得られるSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.33g(0.25mmol)に代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村化学工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.28g(0.25mmol)を使用し、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.12gとしたこと以外は、実施例5と同様にして高分子ゲルを得た。
【0250】
[比較例6:高分子ゲルの製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法により得られるSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.33g(0.25mmol)に代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村化学工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.28g(0.25mmol)を使用し、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.14gとしたこと以外は、実施例6と同様にして高分子ゲルを得た。
【0251】
[比較例7:高分子ゲルの製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法により得られるSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.33g(0.25mmol)に代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村化学工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.28g(0.25mmol)を使用し、熱重合開始剤としての過酸化ベンゾイルの使用量を0.17gとしたこと以外は、実施例7と同様にして高分子ゲルを得た。
【0252】
[比較例8:高分子ゲルの製造]
架橋剤として、実施例1に係る環状マクロモノマーの製造方法により得られるSt−c−PEG(重量平均分子量1320)0.33g(0.25mmol)に代えて、ポリエチレングリコール♯1000ジアクリレート(略称「PEG1000」、新中村化学工業株式会社製、製品名「A−1000」、エチレングリコールの繰り返し単位数n=23、分子量1108)0.28g(0.25mmol)を使用したこと以外は、実施例8と同様にして高分子ゲルを得た。
【0253】
実施例5〜8及び比較例5〜8で得られた高分子ゲルについて、20%圧縮強度、40%圧縮強度、膨潤率(%)、及びブリードアウト量(%)を測定した。実施例5〜8及び比較例5〜8で得られた高分子ゲルの20%圧縮強度及び40%圧縮強度については、試験片として、重合体に代えて、高分子ゲルを使用すること以外は、上記した実施例2〜4及び比較例1〜4の重合体の20%圧縮強度及び40%圧縮強度の測定方法と同様の方法により、測定を行った。また、実施例5〜8及び比較例5〜8で得られた高分子ゲルの膨潤率についても、試料として、重合体に代えて高分子ゲルを使用すること以外は、上記した実施例2〜4及び比較例1〜4の重合体の膨潤率の測定方法と同様の方法により、測定を行った。また、実施例5〜8及び比較例5〜8で得られた高分子ゲルのブリードアウト量(%)については、以下に示す方法により、測定を行った。
【0254】
〔ブリードアウト量の測定方法〕
試料(高分子ゲル)0.5g秤量した後、定性ろ紙(アドバンテック東洋株式会社製、No.5B、サイズ125φmm)を使用して、秤量した試料の表裏面を拭き取り(ろ紙にブリードアウト成分を吸着させ)、その重量を測定した。そして、ブリードアウト量(%)を以下の計算式から算出した。
【0255】
ブリードアウト量(%)=(W
3/W
0)×100
W
0:測定前の試料の重量(g)
W
3:ろ紙に吸着したブリードアウト成分の重量(g)
【0256】
以下の表2に、実施例5〜8及び比較例5〜8の高分子ゲルの製造における架橋剤及び重合性モノマーの使用量(mmol)、熱重合開始剤及び可塑剤の使用量(g)、重合性モノマーと架橋剤の総使用重量(g)と可塑剤の使用重量(g)との重量比、並びに、実施例5〜8及び比較例5〜8の高分子ゲルの製造で得られた高分子ゲルの20%圧縮強度(MPa)、40%圧縮強度(MPa)、膨潤率(%)、及びブリードアウト量(%)の測定結果を示す。なお、表2中において、「PEG1000」は、比較例5〜8で使用したポリエチレングリコール♯1000ジアクリレートの略称である。
【0257】
【表2】
【0258】
表2に示す結果より、架橋剤として環状マクロモノマー(St−c−PEG)を使用して得られる実施例5〜8の高分子ゲルは、いずれも、0.002〜0.4MPa(具体的には0.025〜0.32MPa)の20%圧縮強度、0.008〜2.0MPa(具体的には0.07〜0.92MPa)の40%圧縮強度、480〜1300%(具体的には、502〜665%)の膨潤率、及び7.0%以下(具体的には、2.5%以下)のブリードアウト量を示し、機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性の全てに優れるものであることが認められた。
【0259】
これに対して、架橋剤としてポリエチレングリコール♯1000ジアクリレートを使用して得られる比較例5〜8の高分子ゲルは、機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性のいずれかに劣るものであった。具体的には、比較例5、6、及び8の高分子ゲルは、実施例5〜8の高分子ゲルと比べて、膨潤率が低く、且つ、20%圧縮強度及び40%圧縮強度が高いものであり、比較例5、6、及び8の高分子ゲルは、膨潤性及び機械的特性に劣るものであった。また、比較例7の高分子ゲルは、実施例1の高分子ゲルと同程度の20%圧縮強度及び40%圧縮強度を示し、機械的特性に優れるが、実施例5〜8の高分子ゲルと比べて、膨潤率が低く、膨潤性に劣るものであり、また、ブリードアウト量が多く、耐ブリードアウト性に劣るものであった。
【0260】
なお、実施例5と同一の種類及び量の重合性モノマー、架橋剤、及び熱重合開始剤を溶解させた配合液を実施例5と同様にして重合反応にかけて高分子架橋体を得て、この高分子架橋体を実施例5と同一の種類及び量の可塑剤に浸漬させたところ、実施例5と同様の機械的特性(柔軟性、伸縮性)、膨潤性、及び耐ブリードアウト性を有する高分子ゲルが得られた。