【解決手段】クリーニング装置60は、接触部材65と、取付用磁石64と、を備える。接触部材65は、バックボトムローラ26の外周面に接触して当該外周面を清掃する第1凸部65b及び第2凸部65cを有する。取付用磁石64は、接触部材65を介してバックボトムローラ26に作用する磁力により、接触部材65をバックボトムローラ26に接触させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クリーニング装置では、ドラフトローラの外周面に付着した繊維を除去するためには、スクレーパ部材を強い力でドラフトローラに押し付ける必要がある。しかし、スクレーパ部材とドラフトローラの間に繊維が挟まり込んで巻き付いてしまうと、ドラフトローラの外周面に付着した繊維を除去できないばかりか、当該繊維が増大することがある。
【0008】
特許文献1の構成では、付勢部材の付勢力を増大させると、スクレーパ部材の着脱が困難になる。また、ホルダ部材をベアリングハウスから抜いたりベアリングハウスに差し込んだりする動作は、オペレータにとって手間となる。
【0009】
本発明の目的は、スクレーパ部材をドラフトローラに強い力で押し付けるとともに、スクレーパ部材を容易に着脱可能なクリーニング装置を提供することにある。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、クリーニング装置は、接触部材と、取付用磁石と、を備える。前記接触部材は、ドラフトローラの外周面に接触して当該外周面を清掃する清掃部を有する。前記取付用磁石は、前記接触部材を介して前記ドラフトローラに作用する磁力により、前記接触部材を前記ドラフトローラに接触させる。
【0011】
これにより、磁力を用いることで接触部材を強力にドラフトローラに接触させることができる。更に、磁力を用いる場合、着脱作業を簡単にすることができる。
【0012】
前記のクリーニング装置においては、前記取付用磁石又は当該取付用磁石を覆う磁石ケースに対して前記接触部材が着脱可能であることが好ましい。
【0013】
これにより、巻取条件等に応じて、材質及び形状の異なる接触部材を用いることができるので、汎用性の高いクリーニング装置が実現できる。また、接触部材が破損した場合においても接触部材のみを交換すれば良いのでコストを抑えることができる。
【0014】
前記のクリーニング装置においては、前記取付用磁石は、間隔を置いて複数配置されていることが好ましい。
【0015】
これにより、例えば、接触部材の表面に金属粉等が張り付いた場合であっても、ドラフトローラのうちスライバ又は繊維束が通る部分に傷が付くことを防止できる。
【0016】
前記のクリーニング装置は、オペレータが把持する把持部を備えることが好ましい。前記把持部は、前記接触部材の長手方向において、一側及び他側の端部領域に配置されている。
【0017】
これにより、把持部を2つ備えることで、オペレータがクリーニング装置を容易に取り外すことができる。また、ドラフトローラの軸方向の中央を避けて把持部が配置されているので、繊維束が通るときに把持部が邪魔にならない。
【0018】
前記のクリーニング装置においては、前記接触部材の前記清掃部が平坦な面であることが好ましい。
【0019】
これにより、凸部で清掃を行う構成と比較して、清掃部の摩耗を防止することができる。
【0020】
前記のクリーニング装置においては、前記接触部材の前記清掃部は、外に向けて突出した凸部であり、当該凸部の長手方向と、前記接触部材の長手方向と、が一致しており、互いに平行な少なくとも2つの凸部が形成されていることが好ましい。
【0021】
これにより、凸部を接触させて清掃を行うことで、ドラフトローラに付着した繊維を容易に除去することができる。特に、接触部材の長手方向に平行な凸部を2つ平行に並べて形成することで、接触部材を安定的にドラフトローラに押し付けることができる。
【0022】
前記のクリーニング装置は、前記取付用磁石を収容するとともに、前記接触部材と係合可能な磁石ケースを備えることが好ましい。前記取付用磁石が前記磁石ケース側に取り付けられている。
【0023】
これにより、クリーニング装置をドラフトローラから取り外すときに接触部材(特に清掃部)に力が掛かりにくいので、繰り返し着脱を行った場合における接触部材の変形を防止できる。
【0024】
前記のクリーニング装置においては、前記取付用磁石が有する複数の面のうち、前記接触部材が設けられる面以外の少なくとも一部を覆うヨークを備えることが好ましい。
【0025】
これにより、クリーニング装置をドラフトローラに取り付けるための磁力を強くするとともに、クリーニング装置の周囲に金属粉が付着することを防止できる。
【0026】
前記のクリーニング装置において、前記ヨークは、前記磁石ケースを挟んで前記接触部材の反対側から挿入された取付具によって、当該磁石ケースに取り付けられることが好ましい。前記接触部材はスナップフィットにより前記磁石ケースに取り付けられる。
【0027】
これにより、接触部材の交換が容易になるとともに、接触部材以外の部材を強力に固定することができる。
【0028】
本発明の第2の観点によれば、前記のクリーニング装置と、ドラフトローラ対と、吸引装置と、を備えるドラフト装置が提供される。前記ドラフトローラ対は、前記ドラフトローラ及び当該ドラフトローラに対向する対向ローラから構成される。前記吸引装置は、前記クリーニング装置に除去された繊維を吸引して除去する。
【0029】
これにより、上記の効果を実現可能なドラフト装置が実現できる。
【0030】
前記のドラフト装置は、前記ドラフトローラを回転可能に支持するドラフトローラ支持部を備えることが好ましい。前記クリーニング装置は、前記ドラフトローラの軸方向の外側に突出する突出部を備える。前記ドラフトローラ支持部が、前記突出部と接触することで、前記クリーニング装置が位置決めされる。
【0031】
これにより、クリーニング装置の着脱作業が一層容易となる。また、クリーニング装置の取付位置がズレていた場合でも、ドラフトローラが回転するに伴って、クリーニング装置が正しい位置に移動する。
【0032】
前記のドラフト装置は、前記ドラフトローラ対を少なくとも3組備えることが好ましい。下流側から3組目の前記ドラフトローラ対に、前記クリーニング装置が配置される。
【0033】
これにより、不要な繊維が付着し易いドラフトローラにクリーニング装置を取り付けることで、不要な繊維を有効に除去できる。
【0034】
前記のドラフト装置は、前記クリーニング装置が除去した繊維を貯める繊維貯留空間を有する繊維貯留部を備えることが好ましい。前記クリーニング装置は、前記繊維貯留空間を避けた位置に配置されている。
【0035】
これにより、繊維貯留空間を広く確保することができるので、メンテナンス周期を長くすることができる。
【0036】
本発明の第3の観点によれば、前記のドラフト装置と、紡績装置と、巻取装置と、を備える紡績ユニットが提供される。前記紡績装置は、前記ドラフト装置から送られた繊維束に撚りを与えて紡績糸を生成する。前記巻取装置は、前記紡績糸を巻き取る。
【0037】
これにより、上記の効果を実現可能な紡績ユニットが実現できる。特に紡績ユニットは多数並べて配置されることが多いので、クリーニング装置の着脱が容易という効果をより有効に発揮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。
図1に示す精紡機1は、並設された多数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、原動機ボックス4と、ブロアボックス80と、機台制御装置90と、を備えている。
【0040】
機台制御装置90は、精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって、モニタ91と入力キー92とを備える。オペレータが入力キー92を用いて適宜の操作を行うことにより、特定の紡績ユニット2又は全ての紡績ユニット2の設定及び/又は状態等をモニタ91に表示することができる。
【0041】
図2に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置9と、糸貯留装置14と、巻取装置70と、を備えている。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での繊維束8及び紡績糸10の走行方向における上流及び下流を意味する。各紡績ユニット2は、ドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績して紡績糸10を生成し、この紡績糸10を巻取装置70で巻き取ってパッケージ45を形成する。
【0042】
ドラフト装置7は精紡機1の筐体5の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7は、図略のスライバケースからスライバガイド20を介して供給されるスライバ6を、所定の太さになるまでドラフト(繊維束を引き伸ばすこと)するものである。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。なお、ドラフト装置7の詳細については後述する。
【0043】
紡績装置9は、ドラフト装置7から供給された繊維束8に撚りを加えて、紡績糸10を生成する。本実施形態では、旋回気流を利用して繊維束8に撚りを与える空気式の紡績装置を採用している。具体的には、紡績装置9は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置7から送られた繊維束8を、紡績装置9の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束8の経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束8の繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸10を紡績室から紡績装置9の外部へと案内する。
【0044】
紡績装置9の下流には、糸品質測定器12と、スピニングセンサ13と、が設けられている。紡績装置9で紡出された紡績糸10は、糸品質測定器12及びスピニングセンサ13を通過する。
【0045】
糸品質測定器12は、走行する紡績糸10の太さを、図略の光学式センサによって監視する。糸品質測定器12は、紡績糸10の糸欠陥(紡績糸10の太さなどに異常がある箇所)を検出した場合に、糸欠陥検出信号を図略のユニットコントローラへ送信する。糸品質測定器12は光学式のセンサに限らず、例えば静電容量式のセンサで紡績糸10の太さを監視する構成であっても良い。また、糸品質測定器12は、紡績糸10に含まれる異物を糸欠陥として検出しても良い。
【0046】
スピニングセンサ13は、糸品質測定器12のすぐ下流側に配置されている。スピニングセンサ13は、紡績装置9と糸貯留装置14との間における紡績糸10のテンションを検出することができる。スピニングセンサ13は、この検出したテンションを前記ユニットコントローラへと送信する。ユニットコントローラは、スピニングセンサ13が検出したテンションを監視することにより、弱糸などの異常箇所を検出する。
【0047】
糸品質測定器12及びスピニングセンサ13の下流には、糸貯留装置14が設けられている。糸貯留装置14は、
図2に示すように、糸貯留ローラ15と、当該糸貯留ローラ15を回転駆動するモータ16と、を備えている。
【0048】
糸貯留ローラ15は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留することができる。糸貯留ローラ15の外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で当該糸貯留ローラ15を所定の回転速度で回転させることにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送することができる。また、糸貯留ローラ15の外周面に紡績糸10を一時的に貯留することができるので、糸貯留装置14を一種のバッファとして機能させることができる。これにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取速度(パッケージ45へ巻き取られる紡績糸10の速度)と、が何らかの理由により一致しない不具合(例えば紡績糸10の弛みなど)を解消することができる。
【0049】
糸貯留装置14の下流には、糸ガイド17及び巻取装置70が配置されている。巻取装置70は、支軸73まわりに揺動可能に支持されたクレードルアーム71を備える。このクレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためのボビン48を回転可能に支持することができる。
【0050】
巻取装置70は、巻取ドラム(接触ローラ)72と、トラバース装置75と、を備えている。また、巻取装置70は、図略の巻取ドラム駆動モータを備えている。巻取ドラム72は、巻取ドラム駆動モータの駆動力が伝達されることにより、前記ボビン48又はパッケージ45の外周面に接触した状態で回転する。トラバース装置75は、紡績糸10に係合可能なトラバースガイド76を備えている。トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略のモータによって駆動することで、巻取ドラム72に接触するパッケージ45を回転させ、紡績糸10を綾振りしつつ巻き取る。
【0051】
糸継台車3は、
図1及び
図2に示すように、糸継装置43と、サクションパイプ44及びサクションマウス46を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸切れ又は糸切断が発生すると、レール41上を当該紡績ユニット2まで走行し、停止する。前記サクションパイプ44は、軸を中心に上下方向に回動しながら、紡績装置9から送出される紡績糸10を吸い込みつつ捕捉して糸継装置43へ案内する。サクションマウス46は、軸を中心に上下方向に回動しながら、前記巻取装置70に支持されたパッケージ45から紡績糸10を吸引しつつ捕捉して糸継装置43へ案内する。糸継装置43は、案内された紡績糸10同士の糸継ぎを行う。
【0052】
次に、ドラフト装置7について詳細に説明する。初めにドラフト装置7が備えるドラフトローラについて説明する。
【0053】
図2に示すように、ドラフト装置7は、繊維束8を導入するための筒状のスライバガイド20を備えるとともに、互いに対向するボトムローラ(ドラフトローラ)とトップローラ(対向ローラ)から構成されるドラフトローラ対を備える。ボトムローラは、精紡機1の背面側(下側)に位置しており、トップローラは、精紡機1の正面側(上側)に位置している。本実施形態のドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ対、サードローラ対、ミドルローラ対、フロントローラ対を備えた、いわゆる4線式のドラフト装置として構成されている。従って、サードローラ対は、ドラフト方向の下流側から3組目のドラフトローラ対に該当する。
【0054】
トップローラは、上流側から順に、バックトップローラ21、サードトップローラ22、エプロンベルト23が設けられたミドルトップローラ24、及びフロントトップローラ25となっている。一方、ボトムローラは、上流側から順に、バックボトムローラ26、サードボトムローラ27、エプロンベルト23が設けられたミドルボトムローラ28、及びフロントボトムローラ29となっている。
【0055】
各トップローラ21,22,25は、その外周面がゴム等の弾性部材から構成されているローラである。また各トップローラ21,22,24,25は、図略の軸受等を介して、その軸線を中心に回転可能に支持されている。一方、各ボトムローラ26,27,28,29は金属製のローラであり、その軸線を中心に回転駆動されるように構成されている。
【0056】
ドラフト装置7は、各トップローラ21,22,24,25を、それに対向するボトムローラ26,27,28,29に向かって付勢する付勢手段(図示略)を有している。これにより、トップローラ21,22,24,25の外周面が,ボトムローラ26,27,28,29の外周面にそれぞれ弾性的に接触する。この構成で、ボトムローラ26,27,28,29を回転駆動することにより、これに対向して接触するトップローラ21,22,24,25も従動回転する。
【0057】
ドラフト装置7は、回転するトップローラ21,22,24,25とボトムローラ26,27,28,29の間で繊維束8をニップする(挟み込む)ことにより、当該繊維束8を下流側に向けて搬送する。ドラフト装置7においては、下流側のドラフトローラ対ほど回転速度が速くなるように構成されている。従って、繊維束8は、ドラフトローラ対とドラフトローラ対との間で搬送される間に引き伸ばされ(ドラフトされ)、これに伴い、下流側にいくほど繊維束8の太さが細くなっていく。
【0058】
各ボトムローラ26,27,28,29の回転速度を適宜設定することにより、繊維束8がドラフトされる程度を変更できるので、所望の太さになるようにドラフトした繊維束8を紡績装置9に対して供給することができる。これにより、紡績装置9において、所望の番手(太さ)の紡績糸10を紡績することができる。
【0059】
次に、ドラフトローラ(具体的にはバックボトムローラ26及びサードボトムローラ27)を清掃するための構成について説明する。なお、以下の説明では、ドラフトローラの軸方向を単に軸方向と称することがある。また、
図3及び
図4では、各トップローラの図示を省略する。
【0060】
図3に示すように、バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27の軸方向の両端部には、当該バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27を回転可能に支持するドラフトローラ支持台(ドラフトローラ支持部)31がそれぞれ設けられている。
【0061】
図3及び
図4に示すように、ドラフトローラ支持台31の上面(トップローラ側の面)には、一部が略直角に折り曲げられた板金で構成されるストッパ32が取り付けられている。ストッパ32は、ドラフトローラ支持台31の上面に平行な部分と、当該上面に垂直であって下側に折り曲げられた部分と、を有している。
【0062】
図5に示すように、ミドルボトムローラ28の下方(ミドルトップローラ24の反対側)には、吸引装置33が設けられている。吸引装置33は、吸引口33a及び吸引パイプ33bを備えている。吸引装置33は、図略の負圧源と接続されており、吸引口33aに吸引流を発生させることができる。吸引装置33は、下記のクリーニング装置60が除去した繊維及びドラフト中に落下した繊維等を、この吸引流を用いて吸引する。吸引口33aから吸引された不要な繊維は、吸引パイプ33bを介して外部に排出される。
【0063】
ドラフト装置は、バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27の下方に、繊維貯留部34を備えている。繊維貯留部34は、クリーニング装置60が除去した繊維及びドラフト中に落下した繊維等を一時的に貯留しておく繊維貯留空間を有している。繊維貯留空間に貯留した不要な繊維は吸引装置33によって吸引される。吸引装置33によって吸引されなかった繊維は、ある程度貯まると、オペレータが除去する。
【0064】
バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27には、それぞれクリーニング装置60が取り付けられる。なお、バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27に取り付けられるクリーニング装置60及び取付方法等は同じなので、以下ではサードボトムローラ27に取り付けられるクリーニング装置60について説明する。そのため、
図6及び
図8では、クリーニング装置60がサードボトムローラ27に取り付けられる様子が図示されているが、バックボトムローラ26に対しても同様の構成で取り付けられている。クリーニング装置60は、回転するサードボトムローラ27の外周面に接触することで、外周面に付着した繊維及び/又は油剤を除去することができる。
【0065】
図6に示すように、クリーニング装置60は、磁石ケース61と、内側ヨーク(ヨーク)62と、外側ヨーク(ヨーク)63と、取付用磁石64と、接触部材65と、を備える。クリーニング装置60は、取付用磁石64の磁力によりサードボトムローラ27に取り付けられる。
【0066】
磁石ケース61は、樹脂製であり、取付用磁石64を収容するケースである。磁石ケース61は、一側(サードボトムローラ27が位置する側、接触部材65が配置される側)が開放された箱形状である。また、磁石ケース61は、ベース板61aと、アーム(突出部)61bと、把持部61cと、係合部61dと、を備える。
【0067】
ベース板61aは、箱形状の磁石ケース61の底面を構成する部分である。ベース板61aには、ネジを挿通可能な孔が形成されている。
【0068】
アーム61bは、
図4に示すように、ストッパ32と接触して、クリーニング装置60の位置を決めるための部材である。アーム61bは、磁石ケース61を軸方向の両側に延出した部分である。
【0069】
詳細に説明すると、クリーニング装置60は取付用磁石64によってサードボトムローラ27に張り付き、サードボトムローラ27と一体的に回転しようとする。そして、クリーニング装置60よりも回転方向の下流側にストッパ32を位置させることで、クリーニング装置60の回転を防止することができる。
【0070】
これにより、クリーニング装置60が、サードボトムローラ27の外周面を擦ることになるので、サードボトムローラ27に付着した繊維を除去することができる。また、本実施形態ではアーム61bの片面のみを規制するため、例えばクリーニング装置60をストッパ32よりも回転方向の上流側に配置した場合であっても、クリーニング装置60がサードボトムローラ27とともに回転し、その後、ストッパ32によって回転が防止される。このように、本実施形態のクリーニング装置60は、取付作業が容易である。
【0071】
把持部61cは、サードボトムローラ27に取り付けたクリーニング装置60を取り外す際に、オペレータが把持する部分である(
図4を参照)。把持部61cは、軸方向(接触部材65の長手方向)の一側及び他側の端部領域(端部及びその近傍)にそれぞれ形成されている。それぞれの把持部61cは、磁石ケース61から上側(トップローラ側)に延出した部分である。
【0072】
把持部61cを2つ設けることで、取付用磁石64の磁力を強くした場合であっても、オペレータが容易にクリーニング装置60を取り外すことができる。また、軸方向の中央を挟んで(中央を避けて)把持部61cを設けることで、把持部61cがスライバ6又は繊維束8と接触することを防止できる。
【0073】
内側ヨーク62及び外側ヨーク63は、磁力が作用する方向を変化させることで、より強力にサードボトムローラ27側に磁力を作用させるとともに、他の方向に磁力が作用することを防止する。特に、外側ヨーク63は、磁力の漏れを防ぐとともに、クリーニング装置60が周囲の金属部品に吸着しようとすることを防止する。
図6に示すように、内側ヨーク62は、断面U字状の部材である。内側ヨーク62は、U字状の開放部分がサードボトムローラ27を向くようにして、ベース板61aのサードボトムローラ27側の面に配置されている。一方、外側ヨーク63は、平坦な板状の部材であり、ベース板61aを挟んでサードボトムローラ27の反対側の面に配置されている。このように、内側ヨーク62及び外側ヨーク63は、取付用磁石64が有する複数の面のうち、接触部材65が設けられる面以外の少なくとも一部を覆っている。
【0074】
磁石ケース61及び外側ヨーク63には、互いに対応する位置に、ネジ(取付具)66を挿通可能な孔が形成されている。また、内側ヨーク62には、上記の孔に対応する位置に、当該ネジ66を固定可能なネジ孔が形成されている。この構成により、磁石ケース61を挟んで接触部材65の反対側からネジ66を挿入することで、内側ヨーク62及び外側ヨーク63をまとめて磁石ケース61に固定することができる。なお、ネジ66以外の取付具を用いて固定を行っても良い。
【0075】
取付用磁石64は、
図7(b)に示すように、軸方向の中央を挟んで(間隔を置いて)2つ配置されている。取付用磁石64は、接着剤又は粘着テープ等により、内側ヨーク62(即ち磁石ケース61)に固定されている。取付用磁石64の周囲は接触部材65で覆われており、取付用磁石64は露出していない。従って、取付用磁石64は、接触部材65を介して磁力を作用させる。また、軸方向の中央に取付用磁石64が配置されないため、当該中央に金属粉が付着しない。従って、サードボトムローラ27の中央部分(スライバ6又は繊維束8が接触する部分)に傷が付くことを防止できる。なお、スライバ6又は繊維束8は、必ずしもサードボトムローラ27の中央部分を通るとも限らない。この場合、スライバ6又は繊維束8が通る部分を避けて取付用磁石64を配置することが好ましい。
【0076】
接触部材65は、樹脂製であり、サードボトムローラ27に接触することで、外周面に付着した繊維を除去する部材である。接触部材65は、係合部65aと、第1凸部(清掃部)65b、第2凸部(清掃部)65cと、を備える。
【0077】
接触部材65の係合部65aは、
図6(a)に示すように、樹脂製材料の弾性を利用して、スナップフィットにより磁石ケース61の係合部61dに係合可能である。このように、接触部材65以外の部品をネジ66で強力に固定しつつ、接触部材65をスナップフィットにすることで、接触部材65を容易に交換することができる。従って、巻取条件等に応じて適切な接触部材65を適用することが容易となる。
【0078】
また、接触部材65以外の部品をネジ66で固定し、接触部材65をスナップフィットにした構成は、更に以下の効果を発揮できる。即ち、接触部材65と取付用磁石64とが直接固定されていないので、クリーニング装置60をサードボトムローラ27から取り外すときに、接触部材65(特に係合部65aと係合部61dの接触部)に掛かる力を抑えることができる。そのため、接触部材65の負荷を押さえ、寿命を長くすることができる。
【0079】
第1凸部65b及び第2凸部65cは、
図6(a)に示すように、サードボトムローラ27に近づく方向(接触部材65の外方向)に突出した部分である。また、サードボトムローラ27の回転方向の下流側に位置する第1凸部65bは、
図6(b)に示すように、軸方向の両端部に形成され、軸方向の中央には形成されていない。一方、サードボトムローラ27の回転方向の上流側に位置する第2凸部65cは、軸方向の全体にわたって形成されている。第1凸部65b及び第2凸部65cの長手方向は、軸方向(接触部材の長手方向)と一致している。また、第1凸部65bと第2凸部65cは、平行である。
【0080】
これにより、クリーニング装置60を用いて不要な繊維を除去するときに、第1凸部65bと第2凸部65cの間に除去した繊維が溜まらずに、2つの第1凸部65bの間から不要な繊維が外部に落ちる。これにより、第1凸部65b及び第2凸部65cとサードボトムローラ27の外周面の間に繊維が付着することを防止できるので、メンテナンス周期を長くすることができる。また、軸方向に平行な凸部を2つ備えることで、円筒形のサードボトムローラ27に接触部材65を安定的に押し付けることができる。
【0081】
また、従来のクリーニング装置は、特許文献1に示すようにホルダ部材及びその支持部が必要なので、サイズが大きかった。そのため、従来のクリーニング装置は、繊維貯留空間に配置せざるを得なかった。この点、本実施形態のように磁力を用いて取り付けるクリーニング装置60は、サイズを大幅に抑えることができる。従って、繊維貯留空間を避けた位置にクリーニング装置60を配置することができる。そのため、繊維貯留空間を大きくすることができるので、メンテナンス周期を長くすることができる。なお、
図6(a)に示すように、サードボトムローラ27の軸方向で見たときに、クリーニング装置60の上下方向及び左右方向の大きさは、サードボトムローラ27の直径よりも小さい。
【0082】
以上に説明したように、本実施形態のクリーニング装置60は、接触部材65と、取付用磁石64と、を備える。接触部材65は、サードボトムローラ27の外周面に接触して当該外周面を清掃する第1凸部65b及び第2凸部65cを有する。取付用磁石64は、接触部材65を介してサードボトムローラ27に作用する磁力により、接触部材65をサードボトムローラ27に接触させる。
【0083】
これにより、磁力を用いることで接触部材65を強力にサードボトムローラ27に接触させることができる。更に、磁力を用いる場合、クリーニング装置60の着脱作業を簡単にすることができる。
【0084】
また、本実施形態のクリーニング装置60は、取付用磁石64を収容するとともに、接触部材65と係合可能な磁石ケース61を備える。取付用磁石64が接触部材65側ではなく磁石ケース61側に取り付けられている。
【0085】
これにより、クリーニング装置60をサードボトムローラ27から取り外すときに接触部材65に力が掛かりにくいので、接触部材65の変形を防止できる。
【0086】
また、本実施形態のドラフト装置7は、サードボトムローラ27を回転可能に支持するドラフトローラ支持台31を備える。クリーニング装置60は、サードボトムローラ27の軸方向の外側に突出するアーム61bを備える。ドラフトローラ支持台31(詳細にはストッパ32)が、アーム61b(詳細にはサードボトムローラ27の回転方向の下流側の面)と接触することで、クリーニング装置60が位置決めされる。
【0087】
これにより、クリーニング装置60の着脱作業が一層容易となる。また、クリーニング装置60の取付位置がズレていた場合でも、サードボトムローラ27が回転するに伴って、クリーニング装置60が正しい位置に移動する。
【0088】
次に、
図8を参照して、上記実施形態の変形例を説明する。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0089】
本変形例は、接触部材65の形状が本実施形態と異なる。具体的には、本変形例の接触部材65は、平坦な面である清掃面(清掃部)65dを有する。本変形例の接触部材65は、この清掃面65dをサードボトムローラ27に押し付けることで、外周面に付着した繊維を除去する。
【0090】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0091】
接触部材65の形状は任意であり、例えば、凸部の有無、凸部の個数、凸部の形状等を適宜変更することができる。
【0092】
取付用磁石64の個数、配置は任意であり適宜変更することができる。例えば、取付用磁石64を1つにしても良いし、取付用磁石64を軸方向の中央に配置しても良い。
【0093】
吸引装置33の吸引口33aの位置は、適宜変更することができる。例えば、バックボトムローラ26の下方に配置しても良い。
【0094】
クリーニング装置60を取り付ける位置は、ドラフトローラの周囲のどの位置であっても良い。また、上記では、バックボトムローラ26及びサードボトムローラ27にクリーニング装置60を取り付けたが、サードボトムローラ27の方が不要な繊維が発生し易いので、例えばバックボトムローラ26のクリーニング装置60を省略しても良い。また、上記以外のドラフトローラに取り付けても良い。
【0095】
上記で示したドラフト装置7のドラフトローラ及び対向ローラの配置は一例であり、ドラフトローラと対向ローラの位置関係、又は、ドラフトローラ対の数等を適宜変更しても良い。従って、ドラフトローラが上側に配置され、当該ドラフトローラにクリーニング装置が設けられていても良い。