【実施例】
【0042】
以下、本発明の第1実施例に係る橋梁床版用継手金具10について、図面に基づいて説明する。
【0043】
橋梁床版用継手金具10が用いられる橋梁用コンクリートプレキャスト床版(以下、「橋梁用PCa床版」という)1は、
図1及び
図2に示すように、橋幅方向Wに並置された4本の主桁2上に載置して固定されている。
【0044】
橋梁用PCa床版1は、橋梁床版用継手金具10を介して、橋軸方向Lに多数連結され、橋梁用PCa床版1、1間の目地にグラウト材を充填することで道路を構成する。なお、橋梁用PCa床版1の各種寸法は、例えば、橋軸方向Lの長さが2.5m、橋幅方向Wの幅が11.9m、垂直方向Hの版厚が0.23mである。
【0045】
橋梁床版用継手金具10は、コッター継手であり、
図3に示すように、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの側端部1aに取り付けられるC型継手金具20と、橋梁用PCa床版1、1に取り付けられて対峙する2つのC型継手金具20、20を接続するH型継手金具30と、H型継手金具30をC型継手金具20に対して
図3の紙面垂直方向に固定する固定手段40とを備えている。
【0046】
C型継手金具20は、
図4に示すように、先端側に開口部分20aを有する平面視D字状の被嵌合凹部21と、被嵌合凹部21の基端側で橋軸方向Lと一致するC型継手金具20の長手方向L1に沿って延設されて橋梁用PCa床版1内に埋設される2本のアンカー22とを備えている。
【0047】
C型継手金具20の被嵌合凹部21には、被嵌合凹部21の先端側内面21aに垂直方向Hと一致するC型継手金具20の垂直方向H1の下方に向かって基端側、すなわち、
図4の紙面上向きに傾斜するテーパ状に形成された挿入ガイド部23が設けられている。挿入ガイド部23は、橋幅方向Wと一致するC型継手金具20の幅方向W1で開口部分20aを挟んで両側に夫々設けられている。
【0048】
被嵌合凹部21の内側壁面21bには、後述するせん断キー42を挿入するキー挿入孔24が形成されている。キー挿入孔24は、C型継手金具20の幅方向W1の中央に配設されている。
【0049】
H型継手金具30は、
図5に示すように、平面視D字状に形成されてC型継手金具20の被嵌合凹部21に嵌合される嵌合部31、31と、これら嵌合部31、31に両端を接続されて橋軸方向Lと一致するH型継手金具30の長手方向L2に延びる中間連結部32とを備えている。
中間連結部32は、橋梁用PCa床版1上を車両が走行して生じる垂直方向Hと一致するH型継手金具30の垂直方向H2下向きのせん断力に起因する曲げモーメントを受ける。
【0050】
中間連結部32は、C型継手金具20の開口部分20aを塞ぐように成形されており、中間連結部32は、両端から中央に向かって縮幅して形成されている。
これにより、中央連結部32の中央付近がコンクリートカッターで切断し易く、橋梁用PCa床版1の切離作業を速やかに行うことができ、また、中央連結部32の両端が中央付近に比べて拡幅に形成されていることにより、嵌合部31と中央連結部32との接続部分における応力集中が軽減される。
【0051】
嵌合部31には、挿入ガイド部23に対向し、挿入ガイド部23と係合可能に設けられて、垂直方向Hの下方に向かって長手方向L2の両側に傾斜するテーパ状に形成された被ガイド部33が設けられている。
これにより、嵌合部31が被嵌合凹部21に嵌合される際に、被ガイド部33が挿入ガイド部23に案内されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で所望の位置に位置決めされる。また、挿入ガイド部23と被ガイド部33とがテーパ状に形成されていることにより、嵌合部31が被嵌合凹部21に嵌合されるにしたがって、隣り合う橋梁用PCa床版1、1間に圧縮方向のプレストレスが徐々に導入される。
なお、挿入ガイド部23と被ガイド部33とは、垂直方向Hに沿って延設されても構わない。
【0052】
被ガイド部33は、橋幅方向Wと一致するH型継手金具30の幅方向W2で中間連結部32に対して両側に夫々設けられている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにせん断力が作用する際に、幅方向W2の両側に夫々設けられた挿入ガイド部23が、被ガイド部33を支持してH型継手金具30に作用する引張応力を幅方向で均等に受けるため、H型継手金具30に偏荷重が作用することを回避できる。
【0053】
固定手段40は、
図6に示すように、嵌合部31を垂直方向Hに貫通して形成されたボルト挿入孔31aを通じて、被嵌合凹部21の底面21cに螺着されたボルト41を備えている。また、固定手段40は、キー挿入孔24に一部挿着されて、被嵌合凹部21の内側壁面21bから突出する突出部分42aで嵌合部31を押止するせん断キー42を備えている。
これにより、ボルト41とせん断キー42とが、嵌合部31を被嵌合凹部21内で垂直方向Hに固定して、隣り合う橋梁用PCa床版1、1同士を連結する。さらに、車両の走行等による振動に起因してボルト41の締結力が低下する場合であっても、せん断キー42は、嵌合部31が被嵌合凹部21に対して相対的に動いて位置ズレすることを抑制する。
なお、固定手段40は、H型継手金具30をC型継手金具20に対して固定可能なものであれば良く、ボルト41とせん断キー42とを備えていても、ボルト41とせん断キー42の何れか一方のみを備えていても構わない。
【0054】
せん断キー42は、
図3及び
図6に示すように、キー挿入孔24に挿入された状態で、橋幅方向Wの中央で嵌合部31の上面を押止するようになっている。また、せん断キー42は、せん断キー42の挿入方向、すなわち、
図6の紙面左右両側に向かって厚さが漸次薄いクサビ状に形成されている。
これにより、嵌合部31は、せん断キー42によって中央を押止されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で傾くことが抑制されている。また、せん断キー42がキー挿入孔24から脱落することが抑制されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で垂直方向Hに確実に固定されるため、嵌合部31の被嵌合凹部21内での位置ズレが抑制されている。
【0055】
C型継手金具20の被嵌合凹部21とH型継手金具30の嵌合部31との間には、図示しないグラウト材が充填されている。
これにより、嵌合部31が被嵌合凹部21内で所望の位置に配置された状態で固定させて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で位置ズレすることが抑制される。
【0056】
図7に示すように、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの両端に設けられた2つのC型継手金具20、20は、互いに対向するアンカー22、22同士が2つのカプラー50、50と中間部材51を介して連結されている。カプラー50の一方端50aは、アンカー22の先端に形成されたネジ部分に螺合し、カプラー50の他方端50bは、中間部材51の端部51aを挿入することにより、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの両側に配置されたC型継手金具20のアンカー22同士が連結されている。なお、カプラー50は、中間部材51を介在させることなく、アンカー22、22同士を直接連結しても構わない。
これにより、C型継手金具20、20同士が互いに橋軸方向Lに相対的に移動することが規制されるため、橋梁用PCa床版1の連結部分Cがせん断力を受けてC型継手金具20が引張応力を受ける場合であっても、C型継手金具20が橋軸方向Lに脱落することを抑制できる。
【0057】
次に、本発明の第2実施例に係る橋梁床版用継手金具について、
図8に基づいて説明する。ここで、上述した第1実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、C型継手金具の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0058】
本実施例における橋梁床版用継手金具10のC型継手金具20は、被嵌合凹部21の外周壁面21dの上部に橋幅方向Wに亘って延設された抜け止め突条部25を備えている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにせん断力が作用する場合であっても、抜け止め突条部25が橋梁用PCa床版1に係合するため、C型継手金具20が垂直方向Hに脱落することを抑制できる。
【0059】
次に、本発明の第3実施例に係る橋梁床版用継手金具について、
図9に基づいて説明する。ここで、上述した第1実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、C型継手金具の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0060】
本実施例における橋梁床版用継手金具10のC型継手金具20は、アンカー22の先端から幅方向W及び垂直方向Hに突設された抜け止め翼部26を備えている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cがせん断力を受けて、C型継手金具20が引張応力を受ける場合であっても、抜け止め翼部26が橋梁用PCa床版1に係合するため、C型継手金具20が橋軸方向Lに脱落することを抑制できる。
【0061】
次に、本発明の第4実施例に係る橋梁床版用継手金具について、
図10に基づいて説明する。ここで、上述した第3実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、固定手段の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0062】
本実施例における橋梁床版用継手金具10は、せん断キー42を介して、C型継手金具20とH型継手金具30とを固定している。
これにより、ボルトでH型継手金具30をC型継手金具20に締結することなく、H型継手金具30をC型継手金具20に簡便に取り付けることができる。
【0063】
このようにして、上述した本発明に係る橋梁床版用継手金具10は、H型継手金具30の嵌合部31がC型継手金具20の被嵌合凹部21に嵌合されて、H型継手金具30の中間連結部32が橋軸方向Lに隣り合う橋梁用PCa床版1、1を跨ぐように設けられた状態で、ボルト41及びせん断キー42が嵌合部31を被嵌合凹部21内で垂直方向Hに位置決め固定することにより、橋梁用PCa床版1、1間に圧縮方向のプレストレスが導入されるため、隣り合う橋梁用PCa床版1、1同士を簡便に連結すると共に、地面に敷設される道路用床版と比較してせん断力に起因して曲げや撓みが生じやすい橋梁用PCa床版1であっても、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにおける耐久性や止水性を向上させることができる。
【0064】
さらに、隣り合う橋梁用PCa床版1、1間を跨ぐ中間連結部32を切断するだけで、橋梁用PCa床版1が簡便に切り離されるため、橋梁用PCa床版1の取替に要する時間を短縮することができる。
【0065】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。