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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-101842(P2015-101842A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】橋梁床版用継手金具
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20150508BHJP
【FI】
   E01D19/12
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-241368(P2013-241368)
(22)【出願日】2013年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592179067
【氏名又は名称】株式会社ガイアートT・K
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060575
【弁理士】
【氏名又は名称】林 孝吉
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】正司 明夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 悟司
(72)【発明者】
【氏名】二井谷 教治
(72)【発明者】
【氏名】原 健悟
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】浅見 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】森田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】寺田 倫康
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 輝康
(72)【発明者】
【氏名】篠原 巌
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高松 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】下中村 圭太
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA14
2D059GG55
(57)【要約】      (修正有)
【課題】橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結作業や切離作業を簡便に実現し、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分での荷重に対する目地部の耐久性及び止水性を向上させた橋梁床版用継手金具を提供する。
【解決手段】橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの側端部に取り付けられて、被嵌合凹部21と被嵌合凹部21の基端側に延設されて橋梁用PCa床版1内に埋設されるアンカー22とを有するC型継手金具20と、対峙する2つのC型継手金具20、20の各被嵌合凹部21、21に夫々嵌合される2つの嵌合部31、31と、2つの嵌合部31、31に両端を接続されると共に中央をコンクリートカッターで切断可能な中間連結部32とを有するH型継手金具30と、嵌合部31を被嵌合凹部21内に嵌合した状態で嵌合部31を被嵌合凹部21に対して垂直方向Hに固定する固定手段と、を備える橋梁床版用継手金具10。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋軸方向に隣接する橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を連結する橋梁床版用継手金具であって、
前記コンクリートプレキャスト床版の橋軸方向の側端部に取り付けられて、先端側に開口部分を有する被嵌合凹部と該被嵌合凹部の基端側に延設されて前記コンクリートプレキャスト床版内に埋設されるアンカーとを有するC型継手金具と、
前記隣接するコンクリートプレキャスト床版に夫々取り付けられて対峙する2つの前記C型継手金具の各被嵌合凹部に夫々嵌合される2つの嵌合部と、該2つの嵌合部に両端を接続されると共に中央をコンクリートカッターで切断可能な中間連結部とを有するH型継手金具と、
前記嵌合部を前記被嵌合凹部内に嵌合した状態で、前記嵌合部を前記被嵌合凹部に対して垂直方向に固定する固定手段と、
を備えていることを特徴とする橋梁床版用継手金具。
【請求項2】
前記中間連結部は、両端から中央に向かって縮幅して形成されていることを特徴とする請求項1記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項3】
前記固定手段は、前記嵌合部を前記垂直方向に貫通して形成されたボルト挿入孔を通じて、前記被嵌合凹部の底面に螺着されたボルトを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項4】
前記C型継手金具は、前記被嵌合凹部の先端側内面に形成された挿入ガイド部を備え、
前記H型継手金具は、前記挿入ガイド部に対向して前記嵌合部に形成された被ガイド部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項5】
前記挿入ガイド部及び前記被ガイド部は、前記垂直方向の下方に向かって前記基端側に傾斜するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項4記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項6】
前記挿入ガイド部及び前記被ガイド部は、前記垂直方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項4記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項7】
前記挿入ガイド部は、前記C型継手金具の幅方向で開口部分を挟んで両側に夫々設けられ、
前記被ガイド部は、前記H型継手金具の幅方向で中間連結部に対して両側に夫々設けられていることを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項8】
前記固定手段は、前記被嵌合凹部の内側壁面に形成されたキー挿入孔に一部挿着されて、前記被嵌合凹部の内側壁面から突出する突出部分で前記嵌合部を押止するせん断キーを備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項9】
前記キー挿入孔は、前記C型継手金具の幅方向中央に配設され、
前記せん断キーは、前記H型継手金具の幅方向中央で前記嵌合部を押止していることを特徴とする請求項8記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項10】
前記せん断キーは、該せん断キーの挿入方向に向かって厚さが漸次薄いクサビ状に形成されていることを特徴とする請求項8又は9記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項11】
前記C型継手金具は、前記被嵌合凹部の外周壁面上に幅方向に延設された抜け止め突条部を備えていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項12】
前記C型継手金具は、前記アンカーの先端から幅方向に突設された抜け止め翼部を備えていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項13】
前記各コンクリートプレキャスト床版の橋軸方向両端に設けられた2つの前記C型継手金具は、互いに対向する前記アンカー同士を連結されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【請求項14】
前記C型継手金具と前記H型継手金具との間に、グラウト材が充填されることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項記載の橋梁床版用継手金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の橋軸方向に隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版を連結する橋梁床版用継手金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や渓谷等の上に架設されて道路等を通す橋梁に用いられる橋梁用コンクリートプレキャスト床版は、橋幅方向に並設された複数の主桁上に架け渡されて、橋軸方向に隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士が相互に複数連結される。
【0003】
従来より、橋軸方向に隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を連結する際には、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の接続端部同士を突き合わせることにより形成された継手空間に、橋梁用コンクリートプレキャスト床版内に配筋された上端筋と下端筋の端部が延長されて継手空間内で円弧状に形成された複数のループ鉄筋が配筋され、該ループ鉄筋に橋幅方向に延びるループ内補強鉄筋が締結されて、さらに継手空間内に間詰めコンクリートが打設されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−236258号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したように橋梁用コンクリートプレキャスト床版を連結する場合には、施工現場にて橋幅方向に多数設けられたループ継ぎ手にループ内補強鉄筋を締結し、継手空間内に間詰めコンクリートを打設する必要があり、施工現場での橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結作業が煩雑であるという問題があった。
【0006】
また、車両の通行による経年劣化等によって橋梁用コンクリートプレキャスト床版を定期的に取り替える必要があるところ、連結された橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を切り離す場合には、継手空間を垂直方向に切断して、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の側端部から橋幅方向に突出するループ継手の円弧部分を全て切断しなければならず、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の切離作業に多くの時間と人員を要するという問題があった。
【0007】
さらに、上述したような橋梁用コンクリートプレキャスト床版の継手部分は、ループ継手にループ内補強鉄筋を締結して、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版が相対的に位置ズレしないように固定しているであるため、裏面が主桁で橋幅方向に部分的に支持されている橋梁用コンクリートプレキャスト床版は、地面上に敷設される道路用床版と比較して、荷重に起因して曲げや撓みが生じ易く、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分の耐久性や止水性が低下する虞があるという問題があった。
【0008】
そこで、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結作業や切離作業を簡便に実現し、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分での荷重に対する耐久性や止水性を向上させるために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、請求項1記載の発明は、橋軸方向に隣接する橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を連結する橋梁床版用継手金具であって、前記コンクリートプレキャスト床版の橋軸方向の側端部に取り付けられて、先端側に開口部分を有する被嵌合凹部と該被嵌合凹部の基端側に延設されて前記コンクリートプレキャスト床版内に埋設されるアンカーとを有するC型継手金具と、前記隣接するコンクリートプレキャスト床版に夫々取り付けられて対峙する2つの前記C型継手金具の各被嵌合凹部に夫々嵌合される2つの嵌合部と、該2つの嵌合部に両端を接続されると共に中央をコンクリートカッターで切断可能な中間連結部とを有するH型継手金具と、前記嵌合部を前記被嵌合凹部内に嵌合した状態で、前記嵌合部を前記被嵌合凹部に対して垂直方向に固定する固定手段と、を備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0010】
この構成によれば、H型継手金具の嵌合部がC型継手金具の被嵌合凹部に嵌合されて、H型継手金具の中間連結部が橋軸方向に隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版を跨ぐように設けられた状態で、固定手段が嵌合部を被嵌合凹部内で垂直方向に位置決め固定することにより、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を簡便に連結すると共に、地面に敷設される道路用床版と比較して荷重に起因して曲げや撓みが生じ易い橋梁用床版であっても、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0011】
また、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版間を跨ぐ中間連結部を切断するだけで、橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を切り離せるため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の切離作業を簡便に実現することができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加えて、前記中間連結部は、両端から中央に向かって縮幅して形成されている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0013】
この構成によれば、中間連結部は嵌合部に接続された両端に比べて中央付近が縮幅に形成されていることにより、中央連結部の中央付近が切断し易いため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の切離作業を速やかに行うことができ、また、中央連結部の両端が中央付近に比べて拡幅に形成されていることにより、嵌合部と中央連結部との接続部分における応力集中が軽減されるため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明の構成に加えて、前記固定手段は、前記嵌合部を前記垂直方向に貫通して形成されたボルト挿入孔を通じて、前記被嵌合凹部の底面に螺着されたボルトを備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0015】
この構成によれば、ボルトが嵌合部を被嵌合凹部内で締結して垂直方向に固定するため、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を簡便に連結すると共に、嵌合部が被嵌合凹部内で位置ズレすることを抑制するため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記C型継手金具は、前記被嵌合凹部の先端側内面に形成された挿入ガイド部を備え、前記H型継手金具は、前記挿入ガイド部に対向して前記嵌合部に形成された被ガイド部を備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0017】
この構成によれば、H型継手金具の嵌合部がC型継手金具の被嵌合凹部に嵌合される際に、被ガイド部が挿入ガイド部に案内されて、嵌合部が被嵌合凹部内で所望の位置に位置決めされるため、H型継手金具をC型継手金具に組み付ける際の位置決め作業が軽減され、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を簡便に連結すると共に、曲げが生じてH型継手金具に引張応力が作用する場合であっても、挿入ガイド部が、被ガイド部を支持してH型継手金具に作用する引張応力を受けるため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の構成に加えて、前記挿入ガイド部及び前記被ガイド部は、前記垂直方向の下方に向かって前記基端側に傾斜するテーパ状に形成されている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0019】
この構成によれば、嵌合部の被ガイド部が挿入ガイド部に案内されながら所望の位置に確実に挿入されることにより、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の発明に構成に加えて、前記挿入ガイド部及び前記被ガイド部は、前記垂直方向に沿って延設されている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0021】
この構成によれば、嵌合部の被ガイド部が挿入ガイド部に案内されながら所望の位置に確実に挿入されることにより、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項4乃至6の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記挿入ガイド部は、前記C型継手金具の幅方向で開口部分を挟んで両側に夫々設けられ、前記被ガイド部は、前記H型継手金具の幅方向で中間連結部に対して両側に夫々設けられている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0023】
この構成によれば、曲げが生じてH型継手金具に引張応力が作用する場合であっても、幅方向の両側に夫々設けられた挿入ガイド部が、被ガイド部を支持してH型継手金具に作用する引張応力を幅方向で均等に受けるため、H型継手金具が偏荷重を受けることを回避して、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項1乃至7の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記固定手段は、前記被嵌合凹部の内側壁面に形成されたキー挿入孔に一部挿着されて、前記被嵌合凹部の内側壁面から突出する突出部分で前記嵌合部を押止するせん断キーを備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0025】
この構成によれば、H型継手金具の嵌合部がC型継手金具の被嵌合凹部に嵌合された状態でせん断キーをキー挿入孔に挿着することにより、嵌合部が被嵌合凹部内で垂直方向に固定されるため、H型継手金具をC型継手金具に組み付ける際の位置決め作業が軽減され、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を簡便に連結すると共に、車両の走行等による床版の振動に起因して嵌合部が被嵌合凹部内で位置ズレすることが抑制されるため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明の構成に加えて、前記キー挿入孔は、前記C型継手金具の幅方向中央に配設され、前記せん断キーは、前記H型継手金具の幅方向中央で前記嵌合部を押止している橋梁床版用継手金具を提供する。
【0027】
この構成によれば、せん断キーが嵌合部の中央を押止することにより、車両の走行等による床版の振動に起因する嵌合部の傾きをせん断キーが抑制するため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項8又は9記載の発明の構成に加えて、前記せん断キーは、該せん断キーの挿入方向に向かって厚さが漸次薄いクサビ状に形成されている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0029】
この構成によれば、キー挿入孔内に強固に係着したせん断キーが、嵌合部を被嵌合凹部内で垂直方向に固定するため、車両の走行等による床版の振動に起因して嵌合部が被嵌合凹部内で位置ズレすることを抑制し、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における曲耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至10の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記C型継手金具は、前記被嵌合凹部の外周壁面上に幅方向に延設された抜け止め突条部を備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0031】
この構成によれば、抜け止め突条部が橋梁用コンクリートプレキャスト床版内に埋設されることにより、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分にせん断力が作用する場合であっても、C型継手金具が垂直方向に脱落することを抑制できる。
【0032】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至11の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記C型継手金具は、前記アンカーの先端から幅方向に突設された抜け止め翼部を備えている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0033】
この構成によれば、抜け止め翼部が橋梁用コンクリートプレキャスト床版に埋設されることにより、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分がせん断力を受けてC型継手金具が引張応力を受ける場合であっても、C型継手金具が橋軸方向に脱落することを抑制できる。
【0034】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至12の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記各コンクリートプレキャスト床版の橋軸方向両端に設けられた2つの前記C型継手金具は、互いに対向する前記アンカー同士を連結されている橋梁床版用継手金具を提供する。
【0035】
この構成によれば、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の一方端に配設されたC型継手金具及び他端側に配設されたC型継手金具の各アンカーが、橋梁用コンクリートプレキャスト床版内を横断するように連結されていることにより、C型継手金具同士が互いに橋軸方向へ相対的に移動することを規制するため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分が曲げを受けてC型継手金具が引張応力を受ける場合であっても、C型継手金具が橋軸方向に脱落することを抑制できる。
【0036】
請求項14記載の発明は、請求項1乃至13の何れか1項記載の発明の構成に加えて、前記C型継手金具と前記H型継手金具との間に、グラウト材が充填される橋梁床版用継手金具を提供する。
【0037】
この構成によれば、C型継手金具の被嵌合凹部とH型継手金具の嵌合部との隙間にグラウト材が充填されることにより、嵌合部が被嵌合凹部内で所望の位置に配置した状態で固定されるため、車両の走行等による床版の振動に起因して嵌合部が被嵌合凹部内で位置ズレすることを抑制し、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を長期に亘って向上させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係る橋梁床版用継手金具は、H型継手金具の嵌合部がC型継手金具の被嵌合凹部に嵌合されて、H型継手金具の中間連結部が橋軸方向に隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版を跨ぐように設けられた状態で、固定手段が嵌合部を被嵌合凹部内で垂直方向に位置決め固定することにより、橋梁用コンクリートプレキャスト床版間に圧縮方向のプレストレスが導入されるため、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を簡便に連結すると共に、地面に敷設される道路用床版と比較して曲げに起因する曲げや撓みが生じがちな橋梁用床版であっても、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分における耐久性や止水性を向上させることができる。
【0039】
さらに、隣り合う橋梁用コンクリートプレキャスト床版間を跨ぐ中間連結部を切断するだけで、橋梁用コンクリートプレキャスト床版が簡便に切り離されるため、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の取替に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施例を示す橋梁床版用継手金具を適用した橋梁床版を示す平面図。
図2図1に示す橋梁床版の平面図。
図3】C型継手金具にH型継手金具を組付けた状態を示す平面図。
図4】C型継手金具を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、IVB線断面図、(c)は、正面図。
図5】H型継手金具を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、側面図、(c)は、正面図。
図6図3のVI線断面図。
図7】C型継手金具のアンカーをカプラーを介して接続した状態を示す説明図。
図8】本発明の第2実施例に係る橋梁床版用継手金具を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、VIIIB断面図。
図9】本発明の第3実施例に係る橋梁床版用継手金具を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、IXB断面図。
図10】本発明の第4実施例に係る橋梁床版用継手金具を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、XB断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結や切り離しを簡便に実現し、橋梁用コンクリートプレキャスト床版の連結部分での荷重に起因した破損を抑制するという目的を達成するために、橋軸方向に隣接する橋梁用コンクリートプレキャスト床版同士を連結する橋梁床版用継手金具であって、コンクリートプレキャスト床版の橋軸方向の側端部に取り付けられて、先端側に開口部分を有する被嵌合凹部と被嵌合凹部の基端側に延設されてコンクリートプレキャスト床版内に埋設されるアンカーとを有するC型継手金具と、隣接するコンクリートプレキャスト床版に夫々取り付けられて対峙する2つのC型継手金具の各被嵌合凹部に夫々嵌合される2つの嵌合部と、2つの嵌合部に両端を接続されると共に中央をコンクリートカッターで切断可能な中間連結部とを有するH型継手金具と、嵌合部を被嵌合凹部内に嵌合した状態で、嵌合部を被嵌合凹部に対して垂直方向に固定する固定手段と、を備えていることにより実現した。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の第1実施例に係る橋梁床版用継手金具10について、図面に基づいて説明する。
【0043】
橋梁床版用継手金具10が用いられる橋梁用コンクリートプレキャスト床版(以下、「橋梁用PCa床版」という)1は、図1及び図2に示すように、橋幅方向Wに並置された4本の主桁2上に載置して固定されている。
【0044】
橋梁用PCa床版1は、橋梁床版用継手金具10を介して、橋軸方向Lに多数連結され、橋梁用PCa床版1、1間の目地にグラウト材を充填することで道路を構成する。なお、橋梁用PCa床版1の各種寸法は、例えば、橋軸方向Lの長さが2.5m、橋幅方向Wの幅が11.9m、垂直方向Hの版厚が0.23mである。
【0045】
橋梁床版用継手金具10は、コッター継手であり、図3に示すように、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの側端部1aに取り付けられるC型継手金具20と、橋梁用PCa床版1、1に取り付けられて対峙する2つのC型継手金具20、20を接続するH型継手金具30と、H型継手金具30をC型継手金具20に対して図3の紙面垂直方向に固定する固定手段40とを備えている。
【0046】
C型継手金具20は、図4に示すように、先端側に開口部分20aを有する平面視D字状の被嵌合凹部21と、被嵌合凹部21の基端側で橋軸方向Lと一致するC型継手金具20の長手方向L1に沿って延設されて橋梁用PCa床版1内に埋設される2本のアンカー22とを備えている。
【0047】
C型継手金具20の被嵌合凹部21には、被嵌合凹部21の先端側内面21aに垂直方向Hと一致するC型継手金具20の垂直方向H1の下方に向かって基端側、すなわち、図4の紙面上向きに傾斜するテーパ状に形成された挿入ガイド部23が設けられている。挿入ガイド部23は、橋幅方向Wと一致するC型継手金具20の幅方向W1で開口部分20aを挟んで両側に夫々設けられている。
【0048】
被嵌合凹部21の内側壁面21bには、後述するせん断キー42を挿入するキー挿入孔24が形成されている。キー挿入孔24は、C型継手金具20の幅方向W1の中央に配設されている。
【0049】
H型継手金具30は、図5に示すように、平面視D字状に形成されてC型継手金具20の被嵌合凹部21に嵌合される嵌合部31、31と、これら嵌合部31、31に両端を接続されて橋軸方向Lと一致するH型継手金具30の長手方向L2に延びる中間連結部32とを備えている。
中間連結部32は、橋梁用PCa床版1上を車両が走行して生じる垂直方向Hと一致するH型継手金具30の垂直方向H2下向きのせん断力に起因する曲げモーメントを受ける。
【0050】
中間連結部32は、C型継手金具20の開口部分20aを塞ぐように成形されており、中間連結部32は、両端から中央に向かって縮幅して形成されている。
これにより、中央連結部32の中央付近がコンクリートカッターで切断し易く、橋梁用PCa床版1の切離作業を速やかに行うことができ、また、中央連結部32の両端が中央付近に比べて拡幅に形成されていることにより、嵌合部31と中央連結部32との接続部分における応力集中が軽減される。
【0051】
嵌合部31には、挿入ガイド部23に対向し、挿入ガイド部23と係合可能に設けられて、垂直方向Hの下方に向かって長手方向L2の両側に傾斜するテーパ状に形成された被ガイド部33が設けられている。
これにより、嵌合部31が被嵌合凹部21に嵌合される際に、被ガイド部33が挿入ガイド部23に案内されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で所望の位置に位置決めされる。また、挿入ガイド部23と被ガイド部33とがテーパ状に形成されていることにより、嵌合部31が被嵌合凹部21に嵌合されるにしたがって、隣り合う橋梁用PCa床版1、1間に圧縮方向のプレストレスが徐々に導入される。
なお、挿入ガイド部23と被ガイド部33とは、垂直方向Hに沿って延設されても構わない。
【0052】
被ガイド部33は、橋幅方向Wと一致するH型継手金具30の幅方向W2で中間連結部32に対して両側に夫々設けられている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにせん断力が作用する際に、幅方向W2の両側に夫々設けられた挿入ガイド部23が、被ガイド部33を支持してH型継手金具30に作用する引張応力を幅方向で均等に受けるため、H型継手金具30に偏荷重が作用することを回避できる。
【0053】
固定手段40は、図6に示すように、嵌合部31を垂直方向Hに貫通して形成されたボルト挿入孔31aを通じて、被嵌合凹部21の底面21cに螺着されたボルト41を備えている。また、固定手段40は、キー挿入孔24に一部挿着されて、被嵌合凹部21の内側壁面21bから突出する突出部分42aで嵌合部31を押止するせん断キー42を備えている。
これにより、ボルト41とせん断キー42とが、嵌合部31を被嵌合凹部21内で垂直方向Hに固定して、隣り合う橋梁用PCa床版1、1同士を連結する。さらに、車両の走行等による振動に起因してボルト41の締結力が低下する場合であっても、せん断キー42は、嵌合部31が被嵌合凹部21に対して相対的に動いて位置ズレすることを抑制する。
なお、固定手段40は、H型継手金具30をC型継手金具20に対して固定可能なものであれば良く、ボルト41とせん断キー42とを備えていても、ボルト41とせん断キー42の何れか一方のみを備えていても構わない。
【0054】
せん断キー42は、図3及び図6に示すように、キー挿入孔24に挿入された状態で、橋幅方向Wの中央で嵌合部31の上面を押止するようになっている。また、せん断キー42は、せん断キー42の挿入方向、すなわち、図6の紙面左右両側に向かって厚さが漸次薄いクサビ状に形成されている。
これにより、嵌合部31は、せん断キー42によって中央を押止されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で傾くことが抑制されている。また、せん断キー42がキー挿入孔24から脱落することが抑制されて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で垂直方向Hに確実に固定されるため、嵌合部31の被嵌合凹部21内での位置ズレが抑制されている。
【0055】
C型継手金具20の被嵌合凹部21とH型継手金具30の嵌合部31との間には、図示しないグラウト材が充填されている。
これにより、嵌合部31が被嵌合凹部21内で所望の位置に配置された状態で固定させて、嵌合部31が被嵌合凹部21内で位置ズレすることが抑制される。
【0056】
図7に示すように、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの両端に設けられた2つのC型継手金具20、20は、互いに対向するアンカー22、22同士が2つのカプラー50、50と中間部材51を介して連結されている。カプラー50の一方端50aは、アンカー22の先端に形成されたネジ部分に螺合し、カプラー50の他方端50bは、中間部材51の端部51aを挿入することにより、橋梁用PCa床版1の橋軸方向Lの両側に配置されたC型継手金具20のアンカー22同士が連結されている。なお、カプラー50は、中間部材51を介在させることなく、アンカー22、22同士を直接連結しても構わない。
これにより、C型継手金具20、20同士が互いに橋軸方向Lに相対的に移動することが規制されるため、橋梁用PCa床版1の連結部分Cがせん断力を受けてC型継手金具20が引張応力を受ける場合であっても、C型継手金具20が橋軸方向Lに脱落することを抑制できる。
【0057】
次に、本発明の第2実施例に係る橋梁床版用継手金具について、図8に基づいて説明する。ここで、上述した第1実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、C型継手金具の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0058】
本実施例における橋梁床版用継手金具10のC型継手金具20は、被嵌合凹部21の外周壁面21dの上部に橋幅方向Wに亘って延設された抜け止め突条部25を備えている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにせん断力が作用する場合であっても、抜け止め突条部25が橋梁用PCa床版1に係合するため、C型継手金具20が垂直方向Hに脱落することを抑制できる。
【0059】
次に、本発明の第3実施例に係る橋梁床版用継手金具について、図9に基づいて説明する。ここで、上述した第1実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、C型継手金具の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0060】
本実施例における橋梁床版用継手金具10のC型継手金具20は、アンカー22の先端から幅方向W及び垂直方向Hに突設された抜け止め翼部26を備えている。
これにより、橋梁用PCa床版1の連結部分Cがせん断力を受けて、C型継手金具20が引張応力を受ける場合であっても、抜け止め翼部26が橋梁用PCa床版1に係合するため、C型継手金具20が橋軸方向Lに脱落することを抑制できる。
【0061】
次に、本発明の第4実施例に係る橋梁床版用継手金具について、図10に基づいて説明する。ここで、上述した第3実施例の橋梁床版用継手金具と本実施例の橋梁床版用継手金具とは、固定手段の具体的構成が異なるのみであり、同一の部材については、重複する説明を省略する。
【0062】
本実施例における橋梁床版用継手金具10は、せん断キー42を介して、C型継手金具20とH型継手金具30とを固定している。
これにより、ボルトでH型継手金具30をC型継手金具20に締結することなく、H型継手金具30をC型継手金具20に簡便に取り付けることができる。
【0063】
このようにして、上述した本発明に係る橋梁床版用継手金具10は、H型継手金具30の嵌合部31がC型継手金具20の被嵌合凹部21に嵌合されて、H型継手金具30の中間連結部32が橋軸方向Lに隣り合う橋梁用PCa床版1、1を跨ぐように設けられた状態で、ボルト41及びせん断キー42が嵌合部31を被嵌合凹部21内で垂直方向Hに位置決め固定することにより、橋梁用PCa床版1、1間に圧縮方向のプレストレスが導入されるため、隣り合う橋梁用PCa床版1、1同士を簡便に連結すると共に、地面に敷設される道路用床版と比較してせん断力に起因して曲げや撓みが生じやすい橋梁用PCa床版1であっても、橋梁用PCa床版1の連結部分Cにおける耐久性や止水性を向上させることができる。
【0064】
さらに、隣り合う橋梁用PCa床版1、1間を跨ぐ中間連結部32を切断するだけで、橋梁用PCa床版1が簡便に切り離されるため、橋梁用PCa床版1の取替に要する時間を短縮することができる。
【0065】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0066】
1 ・・・ 橋梁用コンクリートプレキャスト床版(橋梁用PCa床版)
1a・・・ 側端部
10 ・・・ 橋梁床版用継手金具
20 ・・・ C型継手金具
20a・・・開口部分
21 ・・・ 被嵌合凹部
22 ・・・ アンカー
23 ・・・ 挿入ガイド部
24 ・・・ キー挿入孔
25 ・・・ 抜け止め突条部
26 ・・・ 抜け止め翼部
30 ・・・ H型継手金具
31 ・・・ 嵌合部
31a・・・ ボルト挿入孔
32 ・・・ 中間連結部
33 ・・・ 被ガイド部
40 ・・・ 固定手段
41 ・・・ ボルト
42 ・・・ せん断キー
42a・・・ 突出部分
L ・・・ 橋軸方向
W ・・・ 橋幅方向
H ・・・ 垂直方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10