特開2015-101878(P2015-101878A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015101878-汚濁防止膜装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-101878(P2015-101878A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】汚濁防止膜装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 15/06 20060101AFI20150508BHJP
【FI】
   E02B15/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-242764(P2013-242764)
(22)【出願日】2013年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】593066634
【氏名又は名称】海和テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】小坂 康之
【テーマコード(参考)】
2D025
【Fターム(参考)】
2D025BA08
(57)【要約】
【課題】防護膜を設けることなく、浮沈式フロートの沈下時において、浮沈式フロートや汚濁防止膜などの破損を防止する。
【解決手段】複数のフロート要素2aからなり水面に浮かべる浮沈式フロート2と、浮沈式フロート2に垂下される汚濁防止膜4とを備える。フロート要素2aは、空気の出し入れによって浮き沈み可能である。フロート要素2a(浮沈式フロート2)には、浮沈式フロート2の沈下時に浮沈式フロート2を水中浮遊状態に保持する補助フロート7が結合ロープ8を介して設けられている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮かべるフロートと、前記フロートに垂下される汚濁防止膜とを備え、前記フロートが空気の出し入れによって浮き沈み可能な浮沈式フロートである汚濁防止膜装置であって、
前記浮沈式フロートに対し、前記浮沈式フロートの沈下時に前記浮沈式フロートを水中浮遊状態に保持する補助フロートが結合ロープを介して設けられていることを特徴とする汚濁防止膜装置。
【請求項2】
前記浮沈式フロートには、設置ワイヤーを介して、前記浮沈式フロートを定位置に設置するための重錘が設けられている、請求項1記載の汚濁防止膜装置。
【請求項3】
前記結合ロープは、前記浮沈式フロートを沈めたい水深に対応する長さを有する、請求項1または2記載の汚濁防止膜装置。
【請求項4】
前記補助フロートの浮力の合計は、前記浮沈式フロートの沈下時における前記浮沈式フロートおよび汚濁防止膜などの水中沈下物の全体重量よりも大きい、請求項1〜3のいずれかに1つに記載の汚濁防止膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚濁水の流入を阻止したり、あるいは汚染水域の拡大を防止するために用いる汚濁防止膜装置に関するものである。特に、水面に浮かべるフロートと、同フロートに取り付けて水中に垂下する汚濁防止膜とを有し、フロートが、空気の出し入れによって浮き沈み可能な浮沈式になっている汚濁防止膜装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
これまで汚濁防止膜装置に関して様々な形態のものが実用化されており、ダム、湖沼、河川、港湾などにおける貯留水の濁り防止や、河川工事、港湾工事、海洋工事などで生じる汚濁水の拡散防止などの用途に用いられている。
【0003】
一般的に汚濁防止膜装置は水面に浮かべる細長いチューブ状のフロートと、このフロートから垂下して汚染水域とそうでない水域とを隔てる汚濁防止膜とを主な構成要素としている。
【0004】
このような汚濁防止膜装置として、船舶が航行する場合にはその障害とならないように、また、台風などの荒波浪発生時には破損を防止するために、水面下に沈ませることができるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。つまり、中空筒状のフロートを使用し、そのフロート内の空気を抜くことにより、自重又は沈下用の錘の重量によって沈下させるようにしている。
【0005】
そして、浮沈式フロートを水底まで沈下させた場合に、波や潮流によって岩盤などの鋭利な部分と接触し、浮沈式フロートが損傷するのを回避するために、特許文献1に記載の技術では、前記フロートの外面を防護膜で保護するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−302646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、浮沈式フロートの外面を保護する防護膜を設けるので、前記防護膜を、浮沈式フロートの外面全体を覆うようにかつ外れないように取り付ける必要があり、そのような取り付けが面倒である。
【0008】
本発明は、そのような防護膜を設けることなく、浮沈式フロートの沈下時において、浮沈式フロートや汚濁防止膜などの破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、水面に浮かべるフロートと、前記フロートに垂下される汚濁防止膜とを備え、前記フロートが空気の出し入れによって浮き沈み可能な浮沈式フロートである汚濁防止膜装置であって、前記浮沈式フロートに対し、前記浮沈式フロートの沈下時に前記浮沈式フロートを水中浮遊状態に保持する補助フロートが結合ロープを介して設けられていることを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、浮沈式フロートの沈下時には、浮沈式フロートが水中浮遊状態に保持されるので、例えば荒天時などにおいて、荒波によって浮沈式フロートや、それに垂下される汚濁防止膜などが移動して、汚濁防止膜装置の一部が、水底の鋭利な部分に擦れて破損するのが防止される。よって、浮沈式フロートの外面を保護する防護膜を設ける必要がない。
【0011】
請求項2に記載のように、前記浮沈式フロートには、設置ワイヤーを介して、前記浮沈式フロートを定位置に設置するための重錘が設けられていることが望ましい。
【0012】
このようにすれば、水中浮遊状態での浮沈式フロートなどの移動を防止することができる。
【0013】
請求項3に記載のように、前記結合ロープは、前記浮沈式フロートを沈めたい水深に対応する長さを有する構成とすることが望ましい。
【0014】
このようにすれば、設置場所に応じて、浮沈式フロートを沈めたい水深でもって、浮沈式フロートの沈下時に、浮沈式フロートが水中浮遊状態に保持される。
【0015】
請求項4に記載のように、前記補助フロートの浮力の合計は、前記浮沈式フロートの沈下時における前記浮沈式フロートおよび汚濁防止膜などの水中沈下物の全体重量よりも大きいことが望ましい。
【0016】
このようにすれば、補助フロートの浮力によって、浮沈式フロートおよび汚濁防止膜などの水中沈下物が水底まで沈下することなく、確実に水中浮遊状態とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、浮沈式フロートに対し補助フロートを設けることで、浮沈式フロートが水中浮遊状態に保持することができるので、浮沈式フロートを保護する防護膜を設けなくても、荒天時などにおいて、汚濁膜防止装置(浮沈式フロート、汚濁防止膜など)が移動して、汚濁防止膜装置の一部が、水底の鋭利な部分に擦れて破損するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明にかかる浮沈式汚濁防止膜装置の一実施形態を示し、(a)は浮沈式フロートが浮いている場合の要部正面図、(b)は同要部側面図である。
図2】前記浮沈式フロートが浮いている場合の概略側面全体図である。
図3】前記浮沈式フロートが沈んでいる場合の概略側面全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0020】
図1は本発明にかかる浮沈式汚濁防止膜装置の一実施形態を示し、(a)は浮沈式フロートが浮いている場合の要部正面図、(b)は同要部側面図である。
【0021】
本発明に係る汚濁防止膜装置は、ダム・湖沼・河川・港湾などに設置して濁水の流入を阻止したり、河川工事、港湾工事、海洋工事などにおいて汚濁水の拡散防止のために用いられるものであるが、以下の説明においては、一例として、ダムの貯留水の濁りを防止するために用いる場合について説明する。
【0022】
この場合、例えば図1(a)(b)に示すように、汚濁防止膜装置1は、両端を堤体の上流側の右岸と左岸とにそれぞれ固定し、貯留水を上流側と下流側とに仕切った状態で張設されている。
【0023】
汚濁防止膜装置1は、浮沈式フロート2と、この浮沈式フロート2の全長にわたって連結バンド3を介して垂下されている汚濁防止膜4とを備える。また、連結バンド3には、汚濁防止膜4の両側に、設置ワイヤー5を介して浮沈式フロート2を定位置に設置するための重錘6(図2参照)が設けられている。
【0024】
また、連結バンド3には、汚濁防止膜4の両側それぞれであってバンド長手方向において、一定間隔ごとに、複数の補助フロート7が結合ロープ8を介して連結されている。連結バンド3に対する結合ロープ8の連結位置は、図1(a)において、Pで示す。
【0025】
浮沈式フロート2は複数のフロート要素2aが連結されてなり、両端のフロート要素2aの末端が、具体的に図示していないが、陸上のアンカーにロープで連結して係留されている。これら複数のフロート要素2aは、すべて、ゴムでもってチューブ状に形成され、その内部に空気を出し入れできるように構成されている。
【0026】
隣り合うフロート要素2aは、周知のように、各々の端部に設けられている接続部をコネクタで繋ぐことによって連結されている。そして、各々の前記接続部に設けられている通気管どうしを管継ぎ手によって連結し、隣り合うフロート要素2aの内部どうしを連通させるように、フロート要素2a同士の連結部分Aが構成されている。そして、例えば端部に配置されるフロート要素2aに、浮沈式フロート2(フロート要素2a)の給排気の出し入れを制御するバルブ手段(図示せず)が設けられ、前記バルブ手段には陸上に設置したコンプレッサ(図示せず)から延長した給気ホースが接続されている。なお、各前記管継ぎ手には、前記バルブ手段に接続されフロート要素2aの給排気を行う給排気管が設けられ、各フロート要素2aを同時に沈下あるいは浮上させることができるようになっている。
【0027】
一方、補助フロート7は固定式フロートで、浮沈式フロート2の沈下時に浮沈式フロート2を水中浮遊状態に保持するもので、例えばターポリンをチューブ状に縫製して発泡スチロールを内部に収納してなる。そして、補助フロート7の浮力の合計は、浮沈式フロート2の沈下時における浮沈式フロート2および汚濁防止膜4などの水中沈下物の全体重量よりも大きくなるように設定され、それによって水中浮遊状態に保持されるようになっている。
【0028】
結合ロープ8は、フロート要素2a(浮沈式フロート2)を沈めたい水深Dに対応する長さを有し、補助フロート7の浮力によって、浮沈式フロート2の沈下時に浮沈式フロート2が所望の水深となる水中浮遊状態に保持する構成とされている。
【0029】
なお、連結バンド3には、結合ロープ8の連結部分を除き、浮沈式フロート4の沈下を促進するための強制沈下用錘を所定間隔でもって設けるようにすることも可能である。
【0030】
汚濁防止膜4はポリエステル製のシートを横長の長方形状に形成したもので、補強ベルト4aを格子状に縫い付けるとともに、下端の縁部に沿って捲れ上がりを防止するウエイトチェーンWを取り付け、上縁部を連結バンド3の下端に連結して水中に吊下げられた状態になるようにしている。汚濁防止膜4は、フロート要素2aごとに分割可能になっており、その分割部において連結金具と結束紐とによって連結されている。なお、汚濁防止膜4にはウエイトチェーンWと同様に、水流による捲れ上がりを防止するための中間ウエイトを深さ方向中間部の全長にわたって取り付けることもできる。
【0031】
続いて、汚濁防止膜装置1を、貯留水の濁り防止を目的として、ダムに設けた場合の作用について説明する。
【0032】
汚濁防止膜装置1は、通常時は、図2に示すように、浮沈式フロート2の内部に空気が充填され、水面に浮かんだ状態となる。そして、上流河川からの流入水のうち清澄な上層の水のみを堤体側に流通させたり、作業船を通過させたりする場合のほか、荒天時などにおいて、浮沈式フロート2全体(すべてのフロート要素2a)を水中に沈下させることができる。
【0033】
浮沈式フロート2を沈下させるには、前記バルブ手段を制御して、充填されている空気を、給排気管を介して前記バルブ手段から排出する。すると、浮沈式フロート2(各フロート要素2a)は浮力が低下し、浮沈式フロート2自体の重重とウエイトチェーンWを含む汚濁防止膜4の重量によって徐々に沈下する。そして、浮沈式フロート2全部が水面下に沈む。このとき、補助フロート7が、浮沈式フロート2下側の連結バンド3に結合ロープ8を介して連結されていることから、浮沈式フロート2は、最も深く沈下しても、結合ロープ8の長さに対応する深さまでで、その深さを超える沈下は結合ロープ8によって規制される。つまり、補助フロート7がないと、浮沈式フロート2や汚濁防止膜4などは水底まで沈下することになる。
【0034】
また、浮沈式フロート2に対し設置ワイヤー5を介して連結される重錘6によって、水中浮遊状態での浮沈式フロートなどが移動するのが抑制される。
【0035】
このように、浮沈式フロート2(フロート要素2a)は、図3に示すように、所定の深さでの水中浮遊状態になるため、沈下させた状態でフロート位置から上層の水を堤体側に流通させたり、作業船を通過させたりすることが可能となる。
【0036】
また、浮沈式フロート2(フロート要素2a)が水中浮遊状態であれば、例えば荒天時などにおいて、荒波によって浮沈式フロート2や汚濁防止膜4などが移動し、その一部が水底に擦れて破損するというような事態が回避される。よって、特開平9−302646号公報に記載の技術のように、浮沈式フロートの外面を保護する防護膜を設ける必要がない。
【0037】
この沈下した浮沈式フロート4を再び水面に浮上させるには、バルブ手段を制御して給気ホースからの空気を、各フロート要素2a(浮沈式フロート2)に給排気管を介して供給する。この際に給排気管から管継ぎ手に送給された空気は、各フロート要素2aに供給される。このように空気が供給された浮沈式フロート2は浮力が生じるため、再び水面に浮上することになる。このとき、補助フロート7によって、水中浮遊状態にあるので、水底まで沈下している従来の場合よりも、水面に浮上するまでの時間が短くなる。
【0038】
前記実施の形態では、一端が補助フロート7に結合される結合ロープ8の他端を連結バンド3に結合しているが、結合ロープ8の他端を連結バンド3に結合する必要は必ずしもなく、浮沈式フロート2を水中浮遊状態にできるのであれば、浮沈式フロート2自体や汚濁防止膜4などに結合するようにしてもよい。また、汚濁防止膜4の両側それぞれであってバンド長手方向において、一定間隔ごとに、複数の補助フロート7を設けているが、必ずしもその必要はなく、浮沈式フロート2の沈下時において浮沈式フロート2を水中浮遊状態に保持できるのであれば、汚濁防止膜4の片側だけに設けるようにしてもよいし、一定間隔ごとでなくてもよく、また、汚濁防止膜4の各側で異なる間隔となるようにするようにしてもよい。
【0039】
また、前記実施の形態では、貯留水の濁り防止を目的として、ダムに設置した場合について説明しているが、本発明はそれに制限されるものではなく、他の場所に設置される汚濁膜防止装置に対しても本発明を適用できるのはいうまでもない。たとえば、浮沈式フロートが水底まで沈下する汚濁膜防止装置であれば、湖沼・河川・港湾における貯留水の濁り防止や、河川工事、港湾工事、海洋工事などで生じる汚濁水の拡散防止などの用途に対して用いられるものに対しても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 汚濁膜防止装置
2 浮沈式フロート
2a フロート要素
3 連結バンド
4 汚濁防止膜
5 設置ワイヤー
6 重錘
7 補助フロート
8 結合ロープ
図1
図2
図3