(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-101929(P2015-101929A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】防水扉
(51)【国際特許分類】
E06B 5/12 20060101AFI20150508BHJP
E06B 5/01 20060101ALI20150508BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
E06B5/12
E06B5/01
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-245664(P2013-245664)
(22)【出願日】2013年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】502251108
【氏名又は名称】株式会社宇根鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】宇根 利典
(72)【発明者】
【氏名】光見寺 進
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA09
2E139AA10
2E139AB08
2E139AB10
2E139AB14
2E139AB16
2E139AC03
2E139AC06
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】メンテナンスの費用がほとんど掛からず、しかも洪水時に確実に動作する防水扉を提供する。
【解決手段】上方が開口した収納体21と、通常時には倒伏状態で収納体21の蓋となるとともに、洪水時には起立状態で前後方向を止水する扉体22と、一端側23a及び他端側23bにそれぞれ給排水口が設けられ、二つの給排水口のうちいずれか一方からの水の供給により扉体22を倒伏状態から起立状態まで回動させる水圧シリンダー23を備える防水扉30において、内部に水を溜めたタンク31と、圧力を掛けてタンク31の水を水圧シリンダー23に供給するとともにその水をタンク31まで循環させる増圧ポンプ32と、開閉して水圧シリンダー23への給水及び水圧シリンダー23からの排水の方向を切り替える複数のバルブ33A,33B,33C,33Dを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した収納体と、
通常時には倒伏状態で前記収納体の蓋となるとともに、洪水時には起立状態で前後方向を止水する扉体と、
一端側及び他端側にそれぞれ給排水口が設けられ、前記二つの給排水口のうちいずれか一方からの水の供給により前記扉体を倒伏状態から起立状態まで回動させる水圧シリンダーを備える防水扉において、
内部に水を溜めたタンクと、
圧力を掛けて前記タンクの水を前記水圧シリンダーに供給するとともにその水を前記タンクまで循環させる増圧ポンプと、
開閉して前記水圧シリンダーへの給水及び前記水圧シリンダーからの排水の方向を切り替える複数のバルブを備えることを特徴とする防水扉。
【請求項2】
前記複数のバルブは電動バルブであり、前記電動バルブの動力源となるバッテリーをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の防水扉。
【請求項3】
前記増圧ポンプは手動ポンプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水扉。
【請求項4】
前記タンク内の水に不凍液を混合したことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の防水扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の出入口に設置され、洪水時に建物等の内部への浸水を防止する防水扉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部では舗装面積の増加や、地下鉄・地下街等といった地下空間の利用率の増加によって、地表から地下に雨水が浸透し難い構造となってきているので、現在の都市部においては雨水の大部分が下水道に流れ込む。
他方で、地球温暖化等の影響により局所的な集中豪雨(いわゆるゲリラ豪雨)が発生し易くなっている。
地下に雨水が浸透し難いこのような都市において局所的な集中豪雨が発生すると、下水道に流れ込む雨水の量が下水道の計画機能を上回り易いので、下水道から水が溢れ出し、全国各地において毎年のように地下街等の水没や建物の床上・床下浸水といった甚大な被害が発生している。
【0003】
こういった都市型水害の特徴として、集中豪雨はいつどこで発生するか予測し難く、また、急激な降雨により短時間のうちに下水道の計画機能を越えてしまうので、降り始めてから土嚢を積んで浸水に対応する時間はほとんどないという点がある。
【0004】
そこで、集中豪雨による浸水に対応するために、
図4及び
図5に示すような防水扉10が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
図4及び
図5の防水扉10は、収納体11と、扉体12と、シリンダー13を備え、マンション・ビル等の建物の出入口や地下鉄・地下街・地下駐車場等への出入口に設置される。
【0005】
収納体11は、その上端が地表と同じ高さとなるように地面に埋められ、上方が開口している。そして、内部にはシリンダー13等が収納されている。
【0006】
扉体12は、板状体であり、降水量が所定の範囲内である通常時においては
図4に示すように、倒伏状態で収納体11の蓋となっている。
一方、降水量が所定量を越えた洪水時には、
図5に示すように、扉体12が起立状態になって前後方向を止水する。
【0007】
シリンダー13は、ジャッキハンドル式であり、一端側13aが収納体11にヒンジで固定されている。
そして、ピストン13cがシリンダー13内で移動することでロッド13dが伸びて、これに伴い倒伏状態であった扉体12を起立状態にする。
シリンダー13は扉体12の重さや幅に応じて複数設けられてもよく、このように複数のシリンダー13がある場合には、洪水時において複数のシリンダー13が同時に作動してバランスよく扉体12を起立状態にする。
そして、シリンダー13は手動でジャッキハンドルを回すことで作動する。
【0008】
図4及び
図5に記載の防水扉10によると、収納体11が地面に埋められ、通常時には扉体12が倒伏状態で収納体11の蓋となっているので、防水扉10が設置されていることを通行人等に意識させない。
そして、洪水時には扉体12が起立状態となるので、防水扉10が設置された出入口から建物等の内部への浸水を防止できる。
【0009】
しかし、
図4及び
図5に記載の防水扉10は、ジャッキハンドル式のシリンダー13であり、手動操作により扉体12を起立状態とするので、力の無い女性やお年寄りが扉体12を起立状態とするには負荷が大きい。
また、グリースを定期的に交換する必要があるが、そのグリース交換は専門業者に依頼することが多いので、メンテナンスの費用が嵩んでしまう。
【0010】
これらの点を踏まえ、
図6乃至
図8に示すような防水扉20が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この防水扉20は、ジャッキハンドル式のシリンダー13に代えて、水圧シリンダー23により扉体22を回動させる。
【0011】
詳しくは、水圧シリンダー23の一端側23a及び他端側23bにそれぞれ水道管24A,24Bが接続されており、
図7に示すように、ヒンジで収納体21に固定されている一端側23aから水を注入すると、水道水圧によりピストン23cが水圧シリンダー23内で一端側23aから他端側23bに移動してロッド23dが伸びる。これにより、倒伏状態であった扉体22が起立状態になる。
これとは逆に、
図8に示すように、切り替えスイッチ25を切り替えて水圧シリンダー23の他端側23bから水を注入すると、水圧によりピストン23cが水圧シリンダー23内で他端側23bから一端側23aに移動してロッド23dが縮む。これにより、起立状態であった扉体22が倒伏状態になる。
なお、収納体21や扉体22は
図4及び
図5の防水扉10のものと同じである。
【0012】
このような水圧シリンダー23を用いた防水扉20によると、切り替えスイッチ25を切り替えるだけで扉体22が自動的に起立状態となるので、防水扉20を作動させるために労力がほとんど掛からない。
また、水圧シリンダー23は年一回、内部の水を排出する程度のメンテナンスで済むので、専門業者によるメンテナンスは不要になる場合が多く、メンテナンスの費用がほとんど掛からない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−308936号公報
【特許文献2】特開2005−139687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、水圧シリンダー23を用いた防水扉20は、扉体22が重い場合には、水道水圧では圧力が足りず洪水時に扉体22が起立状態にならないという問題点がある。
また、洪水によって断水となってしまった場合に、防水扉20が作動しないという問題点がある。
【0015】
そこで、本発明の目的とするところは、メンテナンスの費用がほとんど掛からず、しかも洪水時に確実に動作する防水扉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の防水扉(30)は、上方が開口した収納体(21)と、通常時には倒伏状態で前記収納体(21)の蓋となるとともに、洪水時には起立状態で前後方向を止水する扉体(22)と、一端側(23a)及び他端側(23b)にそれぞれ給排水口が設けられ、前記二つの給排水口のうちいずれか一方からの水の供給により前記扉体(22)を倒伏状態から起立状態まで回動させる水圧シリンダー(23)を備える防水扉(30)において、内部に水を溜めたタンク(31)と、圧力を掛けて前記タンク(31)の水を前記水圧シリンダー(23)に供給するとともにその水を前記タンク(31)まで循環させる増圧ポンプ(32)と、開閉して前記水圧シリンダー(23)への給水及び前記水圧シリンダー(23)からの排水の方向を切り替える複数のバルブ(33A,33B,33C,33D)を備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に記載の防水扉(30)は、前記複数のバルブ(33A,33B,33C,33D)は電動バルブであり、前記電動バルブ(33A,33B,33C,33D)の動力源となるバッテリーをさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の防水扉(30)は、前記増圧ポンプ(32)は手動ポンプであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の防水扉(30)は、前記タンク(31)内の水に不凍液を混合したことを特徴とする。
【0020】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1に記載の防水扉によれば、水の供給により扉体を倒伏状態から起立状態まで回動させる水圧シリンダーを備えるので、年一回、水圧シリンダー内部の水を排出する程度のメンテナンスで済む。よって、専門業者によるメンテナンスは不要で、メンテナンスの費用がほとんど掛からない。
また、内部に水を溜めたタンクと、圧力を掛けてタンクの水を水圧シリンダーに供給するとともにその水をタンクまで循環させる増圧ポンプを備えるので、扉体が重くても増圧した水で扉体を起立状態とすることができる。また、断水の影響も受けないので、洪水時に防水扉を確実に作動させることができる。
もちろん、水圧シリンダーによって扉体を回動させるので、自動的に又はスイッチ操作一つで扉体を起立状態とすることができる。
また、開閉して水圧シリンダーへの給水及び水圧シリンダーからの排水の方向を切り替える複数のバルブを備えるので、水により扉体を倒伏状態から起立状態と、また起立状態から倒伏状態とすることができる。
【0022】
また、請求項2に記載の防水扉によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、複数のバルブは電動バルブであり、電動バルブの動力源となるバッテリーをさらに備えるので、停電になっても洪水時に防水扉を確実に作動させることができる。
【0023】
また、請求項3に記載の防水扉によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加え、増圧ポンプは手動ポンプであるので、停電時の作動がさらに確実になる。
【0024】
また、請求項4に記載の防水扉によれば、請求項1乃至請求項3に記載の発明の作用効果に加え、タンク内の水に不凍液を混合したので、タンクや水圧シリンダー内の水が冬でも凍結せず、洪水時に確実に作動させることができる。また、凍結に伴う水の体積膨張で水圧シリンダー等が破損することもない。
【0025】
なお、本発明の防水扉のように、内部に水を溜めたタンクと増圧ポンプを備える点は、上述した特許文献1及び2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る防水扉における扉体を起立状態にしたときの配管図である。
【
図2】
図1に示す防水扉における扉体を倒伏状態にするときの配管図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る防水扉における扉体を起立状態にしたときの配管図である。
【
図4】従来例に係る防水扉及び本発明の実施形態に係る防水扉を示す側面図である。
【
図5】
図4に示す防水扉が起立状態となったときの側面図である。
【
図6】他の従来例に係る防水扉及び本発明の実施形態に係る防水扉における扉体を起立状態にしたときの斜視図である。
【
図7】
図6に示す防水扉における扉体を起立状態にしたときの配管図である。
【
図8】
図6に示す防水扉における扉体を倒伏状態にするときの配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1、
図2、及び
図6を参照して、本発明の第一実施形態に係る防水扉30を説明する。
この防水扉30は、主に収納体21と、扉体22と、水圧シリンダー23、タンク3131、増圧ポンプ32、バルブ33を備える。そして、防水扉30は建物や地下街等の出入口に設置され、集中豪雨等により洪水となった場合に建物等の内部への浸水を防止する。
なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0028】
収納体21は、上方が開口した箱状体であり、開口した上端が地表と同じ高さとなるように地面に埋められている。
その内部には水圧シリンダー23等の防水扉30の構成部品が収納されている。
収納体21の左右方向の幅は、防水扉30が設置されている出入口の幅に略等しい。
【0029】
扉体22は、板状体であり、降水量が所定の範囲内である通常時には従来例(
図4)と同様に、扉体22は略水平の倒伏状態で収納体21の蓋となる。
倒伏状態において扉体22は出入口における床の一部であるので、通行人等が扉体22の上を通過する。よって、本実施形態では、扉体22に自動車が上を通過しても変形・破損しないだけの強度を持たせている。
一方、降水量が所定量を越えた洪水時には、
図1に示すように、扉体22は起立状態となって前後方向(
図1における左右方向)を止水する。なお、
図1における扉体22の右側に水が溜まり、扉体22の左側に水が流れ込まないように堰き止める。一方、それとは逆に
図1における左側に水を溜めるように防水扉30を設置する場合もある。
【0030】
水圧シリンダー23は、その一端側23aが収納体21の内部にヒンジによって固定され、そのヒンジを中心に回動自在になっている。また、水圧シリンダー23の他端側23bから伸びるロッド23dの先端は、扉体22の裏側にヒンジによって固定されている。
本実施形態では
図6に示すように、一つの防水扉30について二つの水圧シリンダー23が設けられている。この二つの水圧シリンダー23は同時に作動してバランスよく扉体22を起立状態にする。
そして、水圧シリンダー23の一端側23a及び他端側23bに設けられた給排水口にはそれぞれ軟質チューブ製の水道管24A,24Bが接続されている。この水圧シリンダー23は、水道管24A,24Bを介して供給された水によってロッド23dを伸縮させ、扉体22を倒伏状態から起立状態まで回動させる。
【0031】
ショックアブソーバー26は、例えばガススプリング等の緩衝器であって、一端側26aがヒンジにより収納体21に取付けられるとともに、他端側26bがヒンジにより扉体22の裏側に取付けられている。ショックアブソーバー26は一つの扉体22に対して四本取付けられている。
このショックアブソーバー26によって、扉体22が起立状態になるとき、及び倒伏状態になるときの衝撃を低減させる。なお、起立状態及び倒伏状態の両方の衝撃を低減させることに限らず、例えば倒伏状態になるときの衝撃を低減させることができればよい。
【0032】
支持バー27は、その中央部が折れる中折れ式の支持体であって、複数(ここでは四つ)設けられている。その一端側27aがヒンジにより収納体21に取付けられるとともに、他端側27bがヒンジにより扉体22の裏側に取付けられている。
そして、扉体22が起立状態となったときに、支持バー27が伸びて、扉体22の起立状態を確実に保持できるように水圧シリンダー23を補助する。つまり、支持バー27が伸びた状態において、ロック可能な構造になっている。
【0033】
操作盤28は、タンク31、増圧ポンプ32、電動バルブ33、制御部(図示しない)を備え、家庭用100V電源により電力が供給される。
タンク31は、内部に水が溜められており、その水には不凍液が混合されている。この水の量は水道管24A,24B及び水圧シリンダー23内を満たすには十分の量である。
このタンク31のすぐ下流には、タンク31内の水を吸い上げ加圧した水を水圧シリンダー23へ供給する電動の増圧ポンプ32が配置されている。
【0034】
電動バルブ33は、水の流れる方向が一方向に制限されている逆止弁であり、かつ電力により開閉自在となっている。
また電動バルブ33は、第一弁33A、第二弁33B、第三弁33C、及び第四弁33Dの四つからなり、開閉して水圧シリンダー23への給水及び水圧シリンダー23からの排水の方向を切り替える。
詳しくは、第一弁33Aは増圧ポンプ32と水圧シリンダー23の一端側23aの間に、第二弁33Bは増圧ポンプ32と水圧シリンダー23の他端側23bの間に、第三弁33Cはタンク31と水圧シリンダー23の一端側23aの間に、第四弁33Dはタンク31と水圧シリンダー23の他端側23bの間に、それぞれ配置されている。
また、第一弁33A及び第二弁33Bは開状態のときに、タンク31から水圧シリンダー23へ水を流し得る。一方、第三弁33C及び第四弁33Dは開状態のときに、水圧シリンダー23からタンク31へ水を流し得る。なお、第一弁33Aと第二弁33Bが同時に開状態や閉状態になることはなく、また第三弁33Cと第四弁33Dが同時に開状態や閉状態になることもない。
【0035】
そして、
図1に示すように洪水となって、操作盤28外に設置されている水流センサー34が水を検知したときには、制御部が第一弁33A及び第四弁33Dを開状態とするとともに第二弁33B及び第三弁33Cを閉状態とし、増圧ポンプ32が圧力を掛けてタンク31内の水を水圧シリンダー23にその一端側23aから供給することで、その水は他端側23bから再びタンク31まで循環する。これにより、水圧シリンダー23のピストン23cが一端側23aから他端側23bに移動してロッド23dが伸び、扉体22が起立状態となる。
【0036】
一方、
図2に示すように洪水が収まり、ユーザが操作盤28の「倒すボタン」(図示しない)を押下したとき(水流センサー34が水を検知しなくなったときでもよい)には、制御部が、第一弁33A及び第四弁33Dを閉状態とするとともに第二弁33B及び第三弁33Cを開状態とし、増圧ポンプ32が圧力を掛けてタンク31内の水を水圧シリンダー23にその他端側23bから供給することで、その水は一端側23aから再びタンク31まで循環する。これにより、水圧シリンダー23のピストン23cが他端側23bから一端側23aに移動してロッド23dが縮み、扉体22が倒伏状態となる。
なお、起立や倒伏の各状態へ移行中や起立状態のときには、ブザーと光の点滅により警報する。
【0037】
以上のように構成された防水扉30によれば、水の供給により扉体22を倒伏状態から起立状態まで回動させる水圧シリンダー23を備えるので、年一回、水圧シリンダー23内部の水を排出する程度のメンテナンスで済む。よって、専門業者によるメンテナンスは不要で、メンテナンスの費用がほとんど掛からない。
また、内部に水を溜めたタンク31と、圧力を掛けてタンク31の水を水圧シリンダー23に供給するとともにその水をタンク31まで循環させる増圧ポンプ32を備えるので、扉体22が重くても増圧した水で扉体22を起立状態とすることができる。また、断水の影響も受けないので、洪水時に防水扉を確実に作動させることができる。
【0038】
もちろん、水圧シリンダー23によって扉体を回動させるので、自動的に又はスイッチ操作一つで扉体を起立状態とすることができる。
また、開閉して水圧シリンダー23への給水及び水圧シリンダー23からの排水の方向を切り替える複数のバルブ33を備えるので、水により扉体22を倒伏状態から起立状態と、また起立状態から倒伏状態とすることができる。
【0039】
また、タンク31内の水に不凍液を混合したので、タンク31や水圧シリンダー23内の水が冬でも凍結せず、洪水時に確実に作動させることができる。また、凍結に伴う水の体積膨張で水圧シリンダー23等が破損することもない。
【0040】
(第二実施形態)
次に
図3を参照して、本発明の第二実施形態に係る防水扉30を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
本実施形態の第一実施形態との違いは、タンク31の水を加圧する方法であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。
【0041】
つまり、本実施形態においては、増圧ポンプ32として手動ポンプを採用して、これによりタンク31内の水に圧力を掛けることにある。
よって、停電時にもタンク31内の水に圧力を掛けることができるので、停電しても扉体22を起立状態にできないという事態にはならず、停電時の作動がさらに確実になる。
【0042】
なお、第一及び第二実施形態において、一つの扉体22に対して左右方向に水圧シリンダー23を二つ設けたが、これに限られるものではなく、より多くの水圧シリンダー23を設けてもよい。
【0043】
また、電動バルブ33は家庭用100V電源から電力を取得したが、これに限られるものではなく、操作盤28内に電動バルブ33や電動の増圧ポンプ32の動力源となるバッテリーを備えていてもよい。
また、電動バルブ33は手動で開閉するバルブであってもよい。
【0044】
また、タンク31内の水に不凍液を混合したが、他の物質を混合して凝固点を降下させてもよい。さらには、温暖な地域では凍結防止の措置を採らなくてもよい。
【0045】
また、水流センサー34が水を検知して防水扉が作動開始するとしたが、これに限られるものではなく、ユーザの判断により作動を開始してもよい。
また、電動バルブ33は第一弁33Aから第四弁33Dまでの四つの弁からなるとしたが、これに限られるものではなく、既知の四方向電磁弁のような同様のはたらきをするものであればよい。
【符号の説明】
【0046】
10 防水扉
11 収納体
12 扉体
13 シリンダー
13a 一端側
13b 他端側
13c ピストン
13d ロッド
20 防水扉
21 収納体
22 扉体
23 水圧シリンダー
23a 一端側
23b 他端側
23c ピストン
23d ロッド
24A 水道管
24B 水道管
25 スイッチ
26 ショックアブソーバー
26a 一端側
26b 他端側
27 支持バー
27a 一端側
27b 他端側
28 操作盤
30 防水扉
31 タンク
32 増圧ポンプ
33 バルブ
33A 第一弁
33B 第二弁
33C 第三弁
33D 第四弁
34 水流センサー