(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-102141(P2015-102141A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】免震装置及び免震装置用低摩擦シート
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20150508BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F15/02 L
F16F15/02 K
F16F7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-242490(P2013-242490)
(22)【出願日】2013年11月25日
(71)【出願人】
【識別番号】391038822
【氏名又は名称】ヘルツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】安田 悦郎
(72)【発明者】
【氏名】宮川 麻海
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA04
3J048AC01
3J048BD04
3J048BG04
3J048DA01
3J048EA13
3J066AA26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】上下方向を薄くすることができる免震装置及び免震装置用低摩擦シートを提供する。
【解決手段】免震装置は、基板16と、この基板16の上方に設けられ、対象物22を載置する載置板18と、前基板16と前記載置板18との間に設けられ、少なくとも一面が低摩擦材料で覆われた低摩擦シート20と、を有する。低摩擦シート20は複数設けることでき、また、低摩擦シート20に穴を形成するようにしてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板の上方に設けられ、対象物を載置する載置板と、
前基板と前記載置板との間に設けられ、少なくとも一面が低摩擦材料で覆われた低摩擦シートと、
を有する免震装置。
【請求項2】
前記基板と前記載置板との間の静止摩擦係数が0.1未満である請求項1記載の免震装置。
【請求項3】
前記低摩擦シートには複数の穴が形成されている請求項1又は2記載の免震装置。
【請求項4】
前記低摩擦シートは、複数枚積層されている請求項1乃至3いずれか記載の免震装置。
【請求項5】
前記低摩擦シートは、第一のシートと第二のシートとを有し、第一のシートには第一の穴が形成され、第二のシートには第二の穴が形成され、前記第一の穴と第二の穴はそれぞれ開口面積が異なる請求項4記載の免震装置。
【請求項6】
前記低摩擦シートの間には、樹脂から構成された糸材が複数介在されている請求項4又は5記載の免震装置。
【請求項7】
基板と、該基板の上に設けられ、対象物を載置する載置板との間に挟まれ、少なくとも一面が低摩擦材料で覆われた免震用低摩擦シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置及び免震装置用低摩擦シートに関する。
【背景技術】
【0002】
二次元方向の免震装置としては、例えば特許文献1に示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された免震装置は、基板と載置板との間に、定荷重ばねを二次元方向に複数設けて構成されている。または、コイルばねを定荷重ばねに変えて構成されている。地震等、一定以上の振動が基板に作用すると、載置板が定荷重ばねに抗して基板とは逆方向に移動し、載置板上に載置された対象物が載置板に対して振動するのを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−124751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の免震装置は、基板と載置板との間に定荷重ばね又はコイルばねを介在させる構造となっているので、上下方向の厚さが大きくなり、設置スペースが制限されるという問題があった。
【0006】
本発明は、上下方向を薄くすることができる免震装置及び免震装置用低摩擦シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は免震装置にあり、この免震装置は、基板と、この基板の上方に設けられ、対象物を載置する載置板と、前基板と前記載置板との間に設けられ、少なくとも一面が低摩擦材料で覆われた低摩擦シートと、を有する。基板と載置板との間に低摩擦シートを介在させる構成により免震機能を持たせたので、上下方向を薄くすることができる。
【0008】
好適には、前記基板と前記載置板との間の静止摩擦係数が0.1未満であるようにする。静止摩擦係数が0.1未満とすることにより震度4程度で免震機能を生じさせることができる。
【0009】
好適には、前記低摩擦シートには複数の穴が形成されている。低摩擦シートの穴により接触面積が少なくなると共に、空気層が形成され、より滑りやすくすることができる。
【0010】
好適には、前記低摩擦シートは、複数枚積層されている。複数の低摩擦シート間で滑ることによりさらに摩擦を低減させることができる。
【0011】
好適には、前記低摩擦シートは、第一のシートと第二のシートとを有し、第一のシートには第一の穴が形成され、第二のシートには第二の穴が形成され、前記第一の穴と第二の穴はそれぞれ開口面積が異なるようにする。
【0012】
好適には、前記低摩擦シートの間には、樹脂から構成された糸材が複数介在されているようにする。樹脂から構成された糸材によりさらに摩擦を低減させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、基板と、該基板の上に設けられ、対象物を載置する載置板との間に挟まれ、少なくとも一面が低摩擦材料で覆われた免震用低摩擦シートにある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る免震装置を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る免震装置を示す側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る免震装置に用いられる複数の低摩擦シートを示す平面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る免震装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る免震装置を示す一部断面図である。
【
図6】本発明の他の実施形態に係る免震装置に用いた低摩擦シートと糸材とを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、第一の実施形態に係る免震装置10は、例えば長方形のテーブル12を有する。このテーブル12は、例えば角部付近にゴム等の弾性体から構成された脚部14を有し、この脚部14を介して支持されている。
【0016】
基板16は、例えばステンレス等の金属から構成され、テーブル12上に載置されている。この基板16は、例えば正方形に形成されている。この基板16は、テーブル12に固定してもよい。
【0017】
載置板18は、基板16と同様に例えばステンレス等の金属から構成され、後述する低摩擦シート20を介して基板16上に設けられている。この載置板18上に免震の対象物22が載置される。載置板18は、基板16と略同じ大きさの正方形に形成されている。
【0018】
基板16と載置板18との4隅には、載置板18の移動を制限する移動制限ケーブル24がそれぞれ設けられている。移動制限ケーブル24は、該ケーブル24の一端が基板16に設けられた第一の固定部26に固定され、他端が載置板18に設けられた第二の固定部28に固定されている。この移動制限ケーブル24は、地震等により載置板18が基板16に対して移動する距離を所定値(例えば10cm)に制限するようになっている。それぞれの固定部26,28は、基板16と載置板18の表面よりも内側に設け、孔又は溝を介して外部から挿入されたケーブル24と固定するようにしてもよい。このようにすれば、基板16と載置板18とは同形状にすることができる。また、移動制限ケーブル24の周囲をテープで覆うようにしてもよい。
【0019】
低摩擦シート20は、例えば両面接着シートの剥離シート(セパレータ)を用いることができる。剥離シートの基材は、紙であってもよいし、PET等の樹脂であってもよい。剥離シートの剥離面には、シリコーン系、アルキッド系、フッ素系、ポリエステル系、ホリオレフィン系、ワックス系により処理されていることが好ましい。ワックス系としては、蝋類が含まれる。厚さについては、薄い方が好ましいが、通常、20〜150μm程度である。
【0020】
低摩擦シート20は、基板16と載置板18との間に複数枚介在されることが好ましい。基板16上の低摩擦シート20は、基板16に接着剤を介して固定されている。また、載置板18下の低摩擦シート20は、載置板18に接着剤を介して固定されている。
【0021】
基板16と載置板18との間には、それぞれに固定された低摩擦シート20以外にさらに低摩擦シート20を介在させることが好ましい。ただし、低摩擦シート20の数が4を超えるとあまり効果がない。
【0022】
図3に示すように、低摩擦シート20には、穴30を形成することが効果的である。例えば第一の低摩擦シート20a(基板16に固定された低摩擦シートであってもよいし、間に介在された低摩擦シートであってもよい)には第一の穴30aが左右に規則正しく形成されている。また、第二の低摩擦シート20b(載置板18に固定された低摩擦シートであってもよいし、間に介在された低摩擦シートであってもよい)には第二の穴30bが左右に規則正しく形成されている。第一の穴30aと第二の穴30bとは径が異なっている。例えば第一の穴30aは、直径が4mm〜8mm、第二の穴は、直径が19mm〜35mmである。また、第一の低摩擦シート20aと第二の低摩擦シート20bとの間には、穴が形成されていない第三の低摩擦シート20cが介在されている。このように構成すると、低摩擦シート20間の接触面積が減少するし、穴30が空気層となってそれぞれの間に生じる摩擦を少なくすることができる。
【0023】
次に第二の実施形態について説明する。
図4及び
図5に示すように、第二の実施形態に係る免震装置10は、円形の基板16と、同じく円形であって対象物22が載置される載置板18とを有する。基板16と載置板18との間には、同じく円形の低摩擦シート20が複数枚介在している。
【0024】
基板16の周縁は、上方に凸である突起部32が形成されている。この突起部32に載置板18の周囲が対向するようになっている。地震等により載置板18が基板16に対して移動しようとする場合に、震度が小さい(例えば震度3まで)ときは載置板18(又は載置板18に固定された低摩擦シート)が突起部32に当たって移動を制限する。さらに震度が大きくなる(例えば震度4以上)と、載置板18が突起部32を乗り越えて移動するようになり、載置板18が移動するときのショックを和らげる。突起部32は、基板16側に形成する代わりに載置板18側に形成してもよい。
なお、この第二の実施形態においては、載置板18の移動を制限するのに突起部32を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、摩擦係数が大きい部材で載置板18の周囲を囲んだり、基板16と載置板18との間を、震度が4を超えると破断するテープ等で固定するようにしてもよい。
【0025】
次に第三の実施形態について説明する。
図6に示すように、第三の実施形態に係る免震装置10は、多数の糸材34を有する。この糸材34は、ナイロン、フロロカーボン、ポリエチレン等の樹脂から構成され、例えば釣り糸を予め定められた長さ(例えば10mm〜70mm)に切断したものである。これらの糸材34は、低摩擦シート20の間に挿入される。挿入する数は問わない。また、糸材34の方向は任意で良い。このように、低摩擦シート20間に樹脂製の糸材34を挿入することによりさらに基板と載置板との間の摩擦を低減することができる。
また、免震を必要とする対象物の重さにより、糸材24の本数を増減することで摩擦を一定化することができる。
対象物が例えば1kgの場合は糸材34の数は3本、50kgの場合の糸材34の数は30である。糸材34の本数は荷重分散の効果を持つ。
【実施例】
【0026】
次に実施例について説明する。
実施例1:450mm正方形の基板と同じく450mm正方形の載置板を用意し、基板の上面と載置板の下面には、ヤマト株式会社製0.1mm剥離シート(剥離面には蝋が使用されている)を貼り、剥離シート間を接触させた。剥離シートには穴は形成されていない。
実施例2:実施例1の基板側の剥離シートに直径6mmの穴を50mm間隔で形成した。
実施例3:実施例1の基板側の剥離シートに直径35mm穴を50mm間隔で形成した。
実施例4:直径450mm円形の基板(実施形態2に示した突起部は形成されていない。)と同じく直径450mm円形の載置板を用意し、基板の上面と載置板の下面には、ヤマト株式会社製0.1mm剥離シートを貼り、剥離シート間を接触させた。剥離シートには穴は形成されていない。
実施例5:実施例4の基板側の基板側の剥離シートに直径6mmの穴を50mm間隔で形成し、ヤマト株式会社製0.1mm穴なし剥離シートをその上に載せ、直径35mmの穴を50mm間隔で形成したヤマト株式会社製0.1mm剥離シートをその上に載せ、ヤマト株式会社製0.1mm穴なし剥離シートをその上に載せ、実施例4の剥離シートが下面に貼られた載置板をその上に載せた。
実施例6:実施例4の基板側の剥離シートと載置板側の剥離シートのとの間に、50mmの長さに切ったナイロン製釣り糸8号を20本挿入した。
実施例7:450mm正方形の基板と同じく450mm正方形の載置板を用意し、基板の上面と載置板の下面には、大協技研工業株式会社製0.1mm剥離シート(剥離面には蝋が使用されている)を貼り、剥離シート間を接触させた。剥離シートには穴は形成されていない。
実施例8:実施例7の基板側の剥離シートと載置板側の剥離シートのとの間に、50mmの長さに切ったナイロン製釣り糸8号を20本挿入した。
実施例9:直径450mm円形の基板(実施形態2に示した突起部は形成されていない。)と同じく直径450mm円形の載置板を用意し、基板の上面と載置板の下面には、大協技研工業株式会社製0.1mm剥離シートを貼り、剥離シート間を接触させた。剥離シートには穴は形成されていない。
実施例10:実施例9の基板側の剥離シートと載置板側の剥離シートのとの間に、50mmの長さに切ったナイロン製釣り糸8号を20本挿入した。
【0027】
以上、実施例1〜10に対して載置板が基板に対して動き始める力を測定し、静的摩擦係数、加速度、震度を求めた。測定は、JISK7125に準じて行った。震度は、1991年版理科年表による。震度4については、強弱の規定はないが、加速度が50gal未満を4弱とし、50gal以上を4強とした。
また、減衰率を測定した。減衰率は、基板に任意の周波数(2Hz〜10Hz)範囲の振動をランダムに与え、載置板の最大加速度を測定し、基板の最大加速度に対する載置板の加速度の百分率を持って計算した。
【0028】
以上の結果を表1に示す。
【表1】
【0029】
震度5未満で免震機能を生じさせるためには、実施例1〜6及び実施例9,10にあるように、静的摩擦係数が0.1未満である必要がある。また、実施例6の場合は、震度3から免震機能が生じるが、震度4になって初めて免震機能を生じさせるようにするためには、前述したように、基板の周囲に突起部を設けたり、摩擦係数が大きい部分を形成したり、あるいはテープ等で支持したりする必要がある。
【0030】
以上述べたように、本発明によれば、基板、低摩擦シート、載置板から構成されているので、上下方向に薄い免震装置を提供することができる。また、四角、多角形、円等、任意の平面形状とすることができる。また、低摩擦シートの数、低摩擦シートに形成する穴、糸材の挿入等により免震機能を生じさせる震度を調整することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 免震装置
16 基板
18 載置版
20、20a、20b、20c 低摩擦シート
30、30a、30b 穴
32 突起部
34 糸材