特開2015-10216(P2015-10216A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10216(P2015-10216A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/68 20060101AFI20141216BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20141216BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   C11D1/68
   C11D3/20
   C11D3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-138583(P2013-138583)
(22)【出願日】2013年7月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000106106
【氏名又は名称】サラヤ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】三輪 秀和
(72)【発明者】
【氏名】平田 善彦
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC05
4H003AC13
4H003DA05
4H003DA11
4H003EB08
4H003FA01
4H003FA03
4H003FA04
4H003FA15
(57)【要約】
【課題】建物の外壁や内装、道路、輸送機などの構造物の汚れの除去に用いられる洗浄剤は、環境中に排出した際に影響がないとは言い難く、自然界に長時間残ってしまうという問題があり、ましてや水生生物への影響については言及されていない。
【解決手段】本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の配合により、水生生物への毒性が低く、生分解性に優れた洗浄剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)成分として、ソホロリピッドと、(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、(C)成分として、オキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする洗浄剤組成物に係るものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてソホロリピッドと、
(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、
(C)成分として、オキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする洗浄剤。
【請求項2】
(A)成分1質量部に対する(B)成分の配合量が0.01〜10質量部であり、且つ(A)成分1質量部に対する(C)成分の配合量が0.01〜2質量部である、請求項1記載の洗浄剤。
【請求項3】
(A)成分のソホロリピッドが酸型ソホロリピッドであることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄剤。
【請求項4】
(B)成分の塩基性窒素化合物が、アンモニアもしくはエチレンジアミンである、請求項1〜3のいずれか1項記載の洗浄剤。
【請求項5】
(C)成分が、グルコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸及びリンゴ酸の塩からなる群から選択される、1種または2種以上である、請求項1〜4のいずれか1項記載の洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁や内装、道路、輸送機などの構造物の汚れの効果的な除去に有用であり、水生生物への毒性が低く、生分解性にも優れた洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや道路、ソーラーパネルなどの屋外構造物、自動車、車両、船舶、航空機など輸送機、各種工場やホテル、レストランの設備など、あらゆる環境で利用される構造物にはコンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布したもの等が知られているが、繰り返しの使用あるいは経時的に汚染される。このような構造物に付着する汚れは、水あか、砂ぼこり、炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物、酸化ケイ素、脂質等、各種部品の破片など有機物及び無機物の絡み合った複雑な汚れとなる。その結果、構造物の外観の美観を大きく阻害するのみならず、場合によっては、これらの構造物の腐食劣化を促進し、構造物の寿命を縮めることにもなる。そこで様々な種類の洗浄剤組成物が、これら構造物に付着した汚れを落とす目的で使われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)下記一般式(1)で表される界面活性剤(R1は、炭素数8〜20のアルキル基もしくはアルケニル基を表し、−[AO]−が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダム共重合により誘導されるものであり、且つエチレン基がAO鎖全体の50モル%以上であり、nは、6〜30の数を表す)0.1〜50質量%、
【化1】

(B)塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物(塩基性窒素化合物がアンモニアもしくはエチレンジアミンであり、アルキレンオキシド付加物が下記一般式(2)(POは、−CO−基を表し、EOは、−CO−基を表し、k、p、r及びtはそれぞれ1〜50の数を表し、m、q、s及びwはそれぞれ1〜100の数を表すで表される化合物)0.1〜50質量%、
【化2】


(C)グルコール酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸及びリンゴ酸の塩からなる群から選択される、1種または2種以上を0.1〜20質量%、(D)(C)成分を除くビルダー、を含有してなることを特徴とする外壁洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ソホロリピッドを用いた液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4699727号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特許4548827号公報 特許請求の範囲
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1で(A)成分として用いられている「ブロックポリマー」は、従来から用いられている石油由来の界面活性剤であって、そもそも「ブロックポリマー」自体が生分解性に劣ることはすでによく知られていることであり(Kawai,
F.: The biochemistry of degradation of polyethers. CRC Crit. Rev. Biochem., 6,
273-307 (1987),Naylor, C. G., Castaldi, F. J., and Hayes, B. J.: Biodegradation
of nonionic surfactants containing propylene oxide. J. Am. Oil Chem. Soc., 65,
1669-1676 (1988))、環境中に排出した際に影響がないとは言い難く、自然界に長時間残ってしまうという問題があり、ましてや水生生物への影響については言及されていない。界面活性剤が水生生物に毒性を示すのは、その界面張力低下活性である(M. Oya, et al., JOS, 56,
237-243(2007) )。ブロックポリマー型非イオン界面活性剤は、環境蓄積性が高いので、長期間にわたりその界面張力低下活性を示すことになる。すなわち、生分解性が低い界面活性剤が環境に放出されれば、その環境において長期の水生生物毒性を示すことになる。
【0007】
また、特許文献2ではソホロリピッドを使用しているが、水生生物への影響については言及されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、水生生物への毒性が低く、生分解性に優れた洗浄剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の配合により、これらの条件を全て満たす洗浄剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)成分として、ソホロリピッドと、

(B)成分として、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物と、
(C)成分として、オキシカルボン酸塩を必須成分として含有することを特徴とする洗浄剤組成物に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、水生生物への毒性が低く、生分解性に優れた洗浄剤を提供したことにある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の洗浄剤組成物において、(A)成分は一般式(3)で表されるソホロリピッド(以下SL)、より好ましくは酸型ソホロリピッド(以下酸型SL)である。
【化3】
【0012】
SLは、代表的には、微生物の培養によって得られる。例えば、Candida
bombicola、C .apicola、C .petrophilum、C .bogoriensなどのCandida属酵母に
よって生産される。SLは、これらのCandida属酵母を、高濃度の糖と油性基質を同時に与えて培養すると培地中に多量(100〜150g/L)に蓄積する。こうして得ら
れるSLは、濃度約50質量%の含水物である。
【0013】
SLは、上記微生物の培養液から、遠心分離、デカンテーション、酢酸エチル抽出などの方法で分離され、さらにヘキサンで洗浄することにより、茶褐色、飴状物質と
して得られる。SLは水より比重が大きいため培養終了液を静置すれば下層へ分離し、容易に取り出すことができる。
【0014】
このようにして得られるSLは、ソホロースまたはヒドロキシル基が一部アセチル化されたソホロースとヒドロキシ脂肪酸とからなる基本構造を有し、ヒドロキシ脂肪酸のカルボキシル基が遊離した酸型SLと、このカルボキシル基が分子内ソホロースのヒドロキシル基とエステル結合したラクトン型SLとに大別される複数の分子種の混合物である。
【0015】
本明細書記載の酸型SLは、例えば、微生物によって生産され、分離・精製されたSLのラクトン部分とソホロースのアセチル部分を全て加水分解した構造を有し、やはり複数の構造類似体の混合物である。
【0016】
酸型SLの調製法は特に限定されないが、アルカリ還流による調製法が一般的である。この場合、その後の精製法にもよるが、100%近い純度で酸型SLが得られる。その他、室温下でのアルカリ加水分解によっても得られる。酸型SLは洗浄剤を調製する際に、SLと比較し、粘性が低いため取り扱いが容易となる。また、分子内に温度やpHが高いほど加水分解を受けやすい不安定なエステル結合を持たない。その為、広範なpHや温度域にも品質性能が変化しないため、さまざまな環境で使用される洗浄剤に好適である。
【0017】
本発明の(B)成分は、塩基性窒素化合物のアルキレンオキシド付加物であり、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等のアンモニアのアルキレンオキシド付加物;エチレンジアミン1EO(エチレンオキシド)付加物、エチレンジアミン2EO付加物、エチレンジアミン3EO付加物、エチレンジアミン4EO付加物、エチレンジアミン1PO(プロピレンオキシド)付加物、エチレンジアミン2PO付加物、エチレンジアミン3PO付加物、エチレンジアミン4PO付加物、エチレンジアミンのEO、POブロック共重合体、エチレンジアミンのEO、POランダム共重合体等のエチレンジアミンのアルキレンオキシド付加物;アルキルモノエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン、アルキルモノプロパノールアミン、アルキルジプロパノールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミン等のアルキルアミンのアルキレンオキシド付加物である。このような化合物の中でも、アンモニアやエチレンジアミンの誘導体が好ましい。
【0018】
本発明の(C)成分は、オキシカルボン酸塩であり、例えば、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、アラボ糖酸、イド糖酸、オキシステアリン酸、キシロ糖酸、タルトロン酸、リシノール酸及びリボ糖酸の塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩を挙げることができ、本発明の洗浄剤組成物は、これら(C)成分から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。これらの中でも、乳酸、クエン酸、グルコン酸、酒石酸及びリンゴ酸の塩が好ましく、乳酸、グルコン酸及びクエン酸の塩が更に好ましく、クエン酸塩が最も好ましい。
【0019】
(A)成分、(B)成分、(C)成分の好ましい配合割合は、以下のように規定することができる。(A)成分1質量部に対して(B)成分は0.01〜10質量部である。(A)成分1質量部に対して(B)成分が0.01質量部未満及び10質量部を超える場合は、生分解性が低下し、油汚れに対する洗浄力も悪くなる。
また、(A)成分1質量部に対して(C)成分は0.01〜2質量部である。(C)成分が0.01質量部未満の場合は、水垢汚れに対する洗浄力が悪くなり、2質量部を超えると配合安定性が悪くなる。
【0020】
更に本発明の洗浄剤は、上記(A)〜(C)の必須成分の他に、(E)成分を配合することができる。本発明の(E)成分は、(C)成分を除くビルダーであり、例えば、コハク酸、グルタル酸、マロン酸等のジカルボン酸及びこれらの塩、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン酢酸等のアミノカルボン酸及びこれらの塩、オルトリン酸、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸等のリン酸化合物及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩や、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0021】
更に、ビルダーとしてはアルカリ剤を用いることもでき、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化ナトリウム等の水酸化若しくは酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等の炭酸塩;硼酸カリウム、硼酸ナトリウム等の硼酸塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素マグネシウム等の硫酸塩;ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸カリウム、ゼオライト等の無機アルカリ金属塩;ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩;トリエチルアミン等のアルキル基鎖長が炭素数1〜4までのアルキル置換アミン類が挙げられることができ、本発明の洗浄剤は、これら(E)成分から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
【0022】
上記(E)成分の好ましい配合量は、(A)成分1質量部に対して、0〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、更に好ましくは0.02〜1質量部、最も好ましくは0.05〜1質量部である。上記配合量が5質量部を超えると、水系での配合上、安定性に劣る場合がある。
【0023】
更に、本発明の洗浄剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分と併用することができる。その他の成分としては、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;ベンゼンスルフォン酸塩、トルエンスルフォン酸塩等の低級アルキルスルフォン酸塩等の低温安定化剤;2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、2、5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、DL−α−トコフェノール等の酸化防止剤、香料、色素、防腐剤等を配合することができる。更に、外壁への汚染性がない範囲において、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−オクタンジオール等のアルキレングリコール系溶剤、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル系溶剤、リモネン、ピネン、ジペンテン等のテルペン炭化水素系溶剤等を合わせて配合することができる。
【0024】
また、本発明の洗浄剤のpHは特に限定されないが、ひどい汚れを除去する場合には、アルカリ剤等を使用して、pHを7.0〜14.0の範囲に、好ましくは9.0〜14.0の範囲にすることもできる。
【0025】
本発明の洗浄剤は、従来知られている任意の方法で使用することができ、例えば、本発明の洗浄剤を塗布してブラッシングした後、拭き取ることにより汚れを除去することができる。塗布の方法としては、例えば、布やブラシにしみ込ませてそのまま塗布する方法、ハンドスプレーや機械スプレーにおいてスプレーする方法等が挙げられる。また、ブラッシングする方法としては、例えば、ウエス、布ブラシ、金属ブラシ、樹脂製ブラシ等を使用して、人手あるいは機械によってブラッシングする方法等が挙げられる。なお、拭き取る方法としては、ウエス等で拭き取ればよい。また、自動清掃装置や超音波を使用した洗浄方法でもよく、更に、洗浄後に水ですすぎを行ってもよいし、本発明の洗浄剤の高濃度品を水で希釈して使用してもよい。
【0026】
本発明の洗浄剤は高濃度で使用してもよいが、水で希釈して使用するのが好ましい。水で希釈する場合、(A)成分の濃度が0.001〜80質量%になるように希釈してから使用するのが好ましく、0.001〜50質量%がより好ましく、0.01〜30質量%が最も好ましい。(A)成分の濃度が0.001質量%未満の場合、洗浄力が悪くなる場合があり、80質量%を超えた場合、粘性が高くなり操作性が低くなる。また、上記のように(A)成分を希釈するのと同時に、(B)成分が0.00001〜8質量%になるように希釈するのが好ましく、0.00001〜5質量%がより好ましく、0.0001〜3質量%が最も好ましく、更に、(C)成分を0.00001〜1.6質量%になるように希釈するのが好ましく、0.00001〜1質量%がより好ましく、0.0001〜0.6質量%が最も好ましい。(A)、(B)及び(C)の3つの成分が上記のような濃度範囲にあるとき、本発明の洗浄剤は最も効果的に作用する。
【0027】
本発明の洗浄剤は、コンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布した建造物の外壁、更に、ゴム製品、自動車の車体等の洗浄にも使用することができ、特に、道路脇の建造物やトンネル内部等、自動車の排気ガス等で汚れがひどい外壁、ソーラーパネルなどの洗浄に有用である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の洗浄剤を実施例により更に具体的に説明する。尚、以下の実施例等において「%」および「部」は、特に記載が無い限り質量基準である。
【0029】
<洗浄剤溶液の調製>

本発明の洗浄剤(実施例)および洗浄成分としてAの代わりに従来技術で用いられる洗浄成分として「ブロックポリマー」や合成界面活性剤であるDを配合した洗浄剤(比較例1−比較例8)を調製した後、水で各試験に適した濃度まで希釈した。実施例および比較例1−比較例8の配合を表1に示す。以下の表1に示す配合表に従い、洗浄剤を調製した。
【0030】
<調製原料>
A:酸型SL(SOFORO AD−30、有効30%、サラヤ)
【化4】
【0031】
B:トリエタノールアミン(有効90〜96%、日本触媒)
【0032】
C−1:クエン酸ナトリウム
C−2:グルコン酸ナトリウム
【0033】
下記構造式中のPOは、−CO−を表し、EOは、−CO−を表す。なおD−1及び2は、特許文献1記載の従来技術において用いられている洗浄成分である。
D−1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル(ノニオンA−13PR、有効100%、日油)
【化5】

D−2:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル(NIKKOL PBC−33、有効100%、日光ケミカルズ)
【化6】

D−3:直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(ネオペレックスGS、有効96%、花王)
D−4:アルキル硫酸塩(テイカライトN4135、有効35%、テイカ)
D−5:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(テイカポールNE1230、有効27%、テイカ)
D−6:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(セドランSNP−112、有効100%、三洋化成)
なお、D−3は苛性ソーダで中和してから用いた。
【0034】
【表1】
【0035】
<生分解性試験>
得られた洗浄剤について、OECD 301C修正MITI試験に準拠して生分解度を求めた。なお、生分解度は、以下の式によって求めた。

生分解度(%)=(BOD−B)/TOD × 100

BOD:供試物質のBOD測定値
B:活性汚泥と基礎培養液のみの場合のBOD測定値(ブランク)
TOD:供試物質が完全に酸化された場合に要求される総酸素要求量

結果を表2に示す。実施例は本試験が易生分解性と定める生分解度60%を超えており、生分解性が高いと判断できる。
【0036】
【表2】
【0037】
<水生生物毒性試験>
試験方法は、「「農薬の登録申請に係わる試験成績について」(平成12年11月24日付け12生産第8147号農林水産省農産園芸局長通知)の運用について」(平成13年10月10日付け13生産第3986号農林水産省生産局生産資材課長通知)の、一部改正平成23年4月1日22消安第10016号において出された局長通知別添「農薬の登録申請時に提出される試験成績の作成に係る指針」の、2−7−1−1魚類急性毒性試験、2−7−2−1ミジンコ類急性遊泳阻害試験に則った。
【0038】
1.魚類急性毒性試験
試験には、ヒメダカ Oryzias latipes(National
Institute of Environmental Research (Environmental Research Complex,
Kyungseo-dong, Seo-gu, Incheon, Korea)より入手)を用い、LC50(半数致死濃度)を測定した。試験結果を表3に示す。LC50は濃度が高ければ高いほど、ヒメダカへの毒性が低いことを表している。本発明品は比較例と比較して魚類への毒性が非常に低かった。
【0039】
【表3】
【0040】
2.ミジンコ類急性遊泳阻害試験
試験には、オオミジンコ Daphnia magna(National Institute of
Agricultural Science & Tech. (249, Seodun-dong, Gwonseon-gu, Suwon-si,
Gyeonggi-do, Korea)より入手)を用い、EC50(半数遊泳阻害濃度)を測定した。試験結果を表4に示す。EC50は濃度が高ければ高いほど、ミジンコ類への毒性が低いことを表している。本発明品は比較例と比較してミジンコ類への毒性が非常に低かった。
【0041】
【表4】
【0042】
<洗浄力試験>
人工汚染物(鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ株式会社製 「コスモギヤーSE150」):カーボンブラック(SIGMA−ALDRICH社製
CAS No.1333−86−4)=24:1(重量))を、表5に示した汚染対象物に一定量を均一に塗布し、24時間風乾させたものを汚れテストピースとした。表5のNo.1−7のテストピースを、電子天秤の上に乗せたプラスチック製のバットの中に固定し、テストピース表面を実施例の500倍希釈液または水を含ませた食器洗い用スポンジ(5×5cm)で、電子天秤の表示が概ね1kgとなるようにしながら5回擦った後、水ですすぎ自然乾燥後評価をした。また、洗浄後一週間そのまま放置して、洗浄剤のテストピースに対する腐食性を調べた。
洗浄力は、ハンター白色度と目視で評価した。ハンター白色度は色彩色差計(ミノルタ社製CR−300)を用いて汚染前、洗浄前、洗浄後を計測し、目視については表6の基準で判定した。腐食性は目視にて、ひび割れや錆びなどの有無で判定した。
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】
【0045】
実施例の各テストピースの洗浄剤洗浄後と水道水による洗浄後の様子を表7に示す。金属、ガラスおよび樹脂に関して、実施例は非常に良好な洗浄力を示した。屋外構造物に汎用される広範な材質に対し、実施例は良好な洗浄効果を示し、水だけでは洗浄不可能な屋外環境における汚染物を有効に除去することが示された。また、すべての材質に対し腐食性は確認されなかった。
【0046】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の洗浄剤は、コンクリート、タイル、金属、合成樹脂、岩石、ガラス、あるいはそれらの上に塗料を塗布した建造物の外壁、更に、ゴム製品、自動車の車体等の洗浄に使用することができる。洗浄後自然界に排出した際、長時間残らず、さらに水生生物への影響が少ない。