(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-102548(P2015-102548A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】ねじを有する計時器用バランスばね用スタッドホルダー
(51)【国際特許分類】
G04B 18/02 20060101AFI20150508BHJP
G04B 17/32 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
G04B18/02
G04B17/32
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-230461(P2014-230461)
(22)【出願日】2014年11月13日
(31)【優先権主張番号】13193627.0
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・クルヴォワジエ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・リューフェナハト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ねじを使用するハイエンド向けのスタッドホルダーの構造を提供する。
【解決手段】バランスばね用スタッド1及びスタッドホルダー2を有し、バランスばねを保持するアセンブリ20であって、スタッドホルダー2は、スタッド1を受けるハウジング3と、スタッド1に軸線が垂直なねじ5を有するスタッド1を固定する手段4と、及びエスケープ機構にスタッドホルダー2を固定する手段とを有し、スタッド1は、バランスばねの方向を定める表面を有する。ねじ5は、指標付けされた位置においてスタッド1を保持するように、スタッド1に部分的に進入し、スタッド1は、ねじ5と連係し方向制限用表面7を形成する雌ねじ8を有し、スタッドホルダー2は、ねじ5の通路を与えるボア11と、及びハウジング3とは反対側におけるボア11の入口に設けられ、ねじ5の頭51が当接するための支持表面11とを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バランスばね用スタッド(1)及びスタッドホルダー(2)を有する計時器用バランスばね(21)を保持又は支持するためのアセンブリ(20)であって、
前記スタッドホルダー(2)は、
前記バランスばね用スタッド(1)を受ける第1のハウジング(3)と、
前記バランスばね用スタッド(1)の軸線に垂直な軸線を有する少なくとも1つのねじ(5)を有する、前記バランスばね用スタッド(1)を固定する手段(4)と、及び
エスケープ機構(30)に前記スタッドホルダー(2)を固定する手段(6)とを有し、
前記バランスばね用スタッド(1)は、前記バランスばね(21)を保持又は支持する方向を定める少なくとも1つの方向制限用表面(7)を有し、
前記ねじ(5)は、指標付けされたロック位置において前記バランスばね用スタッド(1)を保持するように、前記バランスばね用スタッド(1)に少なくとも部分的に進入し、
前記バランスばね用スタッド(1)は、前記ねじ(5)と連係する雌ねじ(8)を有し、この雌ねじ(8)は、前記方向制限用表面(7)を形成し、
前記スタッドホルダー(2)は、
前記ねじ(5)のそれぞれの通路を与える第1のボア(11)と、及び
前記スタッド(1)のための前記第1のハウジング(3)とは反対側における前記第1のボア(11)の入口に設けられ、前記ねじ(5)が有するねじ頭(51)が当接するための第1の支持表面(11)とを有する
ことを特徴とするアセンブリ(20)。
【請求項2】
請求項1に記載のアセンブリ(20)を少なくとも1つ有することを特徴とする計時器用エスケープ機構(30)。
【請求項3】
請求項2に記載のエスケープ機構(30)を少なくとも1つ有することを特徴とする計時器用ムーブメント(40)。
【請求項4】
請求項3に記載のムーブメント(40)を少なくとも1つ有し、腕時計である
ことを特徴とする計時器(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランスばね用スタッド及びスタッドホルダーを有し、計時器用バランスばねを保持又は支持するアセンブリであって、前記スタッドホルダーは、前記バランスばね用スタッドを受ける第1のハウジングと、前記バランスばね用スタッドの軸線に垂直な軸線を有するねじを有する前記バランスばね用スタッドを固定する手段と、及びエスケープ機構に前記スタッドホルダーを固定する手段とを有し、前記バランスばね用スタッドは、前記バランスばねを保持又は支持する方向を定める少なくとも1つの方向制限用表面を有し、前記ねじは、指標付けされたロック位置において前記バランスばね用スタッドを保持するように、前記バランスばね用スタッドに少なくとも部分的に進入するものに関する。
【0002】
本発明は、さらに、このようなアセンブリを少なくとも1つ有する計時器用エスケープ機構に関する。
【0003】
本発明は、さらに、このようなエスケープ機構を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメントに関する。
【0004】
本発明は、さらに、このようなムーブメントを少なくとも1つ有する計時器に関する。
【0005】
本発明は、バランスばねを有する計時器用エスケープ機構の分野に関する。
【背景技術】
【0006】
多数の大量生産される種類のものにおいて、バランスばねの外部取り付け点を形成するバランスばね用スタッドは、スタッドホルダーにつかまれ、スタッドホルダーは、平坦で型押しされた部品である。
【0007】
ハイエンド向けの生産においては、バランスばね用スタッドは、機械加工された部品であるスタッドホルダーにねじ込まれる。そして、止めねじがねじの足とねじ山の間ではたらく。ねじ頭はロックされない。ロックによって、頻繁な損傷を引き起こす。これは、ねじ足がバランスばね用スタッドにロックされ、オペレーターがねじを回し続ける際に、経験するねじれ応力に起因する。
【0008】
DAMASKO名義のドイツ実用新案DE 202010024253は、バランスコックに対する放射方向の調整を行うことができるバランスばね用スタッドを記載している。この軸方向のねじ付きスタッドは、円筒状のねじと連係し、このねじの頭は、切断された縦長の溝内を移動する。
【0009】
GLASHUTTE UHRENBETRIEB名義の欧州特許出願EP 2290477A1は、スタッド止めねじを固定する雌ねじを有するスタッドホルダーを記載しており、これは、スタッドの厚みの一部にわたってスタッド内の凹部と連係する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ねじの使用法が改善されるような変更されたバランスばね用スタッドを作ることを提案するものであり、これによって、ねじ頭とねじ山との間の弾性変形によってねじが通常のはたらきができるようになる。したがって、ハイエンド向けのスタッドホルダーの構造をねじを使用して維持しながら損傷のリスクを減らすことが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このために、本発明は、バランスばね用スタッド及びスタッドホルダーを有する計時器用バランスばねを保持又は支持するためのアセンブリであって、
前記スタッドホルダーは、
前記バランスばね用スタッドを受ける第1のハウジングと、
前記バランスばね用スタッドの軸線に垂直な軸線を有する少なくとも1つのねじを有する前記バランスばね用スタッドを固定する手段と、及び
エスケープ機構に前記スタッドホルダーを固定する手段とを有し、
前記バランスばね用スタッドは、前記バランスばねを保持又は支持する方向を定める方向制限用表面を有し、
前記ねじは、指標付けされたロック位置において前記バランスばね用スタッドを保持するように、前記バランスばね用スタッドに少なくとも部分的に進入し、
前記スタッドは、前記ねじと連係する雌ねじを有し、この雌ねじは、前記方向制限用表面を形成し、
前記スタッドホルダーは、
前記ねじのそれぞれの通路を与える第1のボアと、及び
前記スタッドのための前記第1のハウジングとは反対側における前記第1のボアの入口に設けられ、前記ねじが有するねじ頭が当接するための第1の支持表面とを有するものに関する。
【0012】
本発明は、さらに、このようなアセンブリを少なくとも1つ有する計時器用エスケープ機構に関する。
【0013】
本発明は、さらに、このようなエスケープ機構を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメントに関する。
【0014】
本発明は、さらに、この種のムーブメントを少なくとも1つ有し、腕時計である計時器に関する。
【0015】
添付図面を参照して下の詳細な説明を読むことで、本発明の他の特徴及び利点を思い描くことができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、従来のバランスばね保持アセンブリを有するエスケープ機構の概略的な平面図を示し、このバランスばね保持アセンブリは、スタッドホルダーと、スタッドホルダーのボアに収容されるバランスばね用スタッドと、及びスタッドホルダーの雌ねじと螺合しバランスばね用スタッドに支えられるねじとを有する。
【
図2】
図2は、
図1のアセンブリにおけるねじの軸線及びバランススばね用スタッドの軸線を通る平面におけるB−B断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のアセンブリの概略的な分解斜視図を示す。
【
図4】
図4は、本発明に係る第1の実施形態を前記
図1と同様な形態で示す平面図である。この図において、ねじはスタッドホルダーのボアを通り抜けて、バランスばね用スタッドの雌ねじと螺合している。
【
図7】
図7は、本発明に係るアセンブリによって保持されるバランスばねを有するエスケープ機構を備えるムーブメントを有する計時器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、バランスばね用スタッド1及びスタッドホルダー2を有する計時器用バランスばね21を保持又は支持するためのアセンブリ20に関する。
【0018】
このスタッドホルダー2は、
−バランスばね用スタッド1を受ける第1のハウジング3と、
−少なくとも1つのねじ5を有するスタッド1を固定する手段4と、及び
−エスケープ機構30にスタッドホルダー2を固定する手段6と
を有する。
【0019】
バランスばね用スタッド1は、この種のバランスばね21を保持又は支持する方向を定める少なくとも1つの方向制限用表面7を有する。
【0020】
図1は、スタッドホルダー2のボア3に収容されるバランスばね用スタッド1と、及びバランスばね用スタッド1の軸線と直交する軸線を有しスタッドホルダー2の雌ねじ21に螺合しバランスばね用スタッド1の横方向の面に支えられるようなねじ5とを有する従来技術を示す。
【0021】
本発明によると、前記少なくとも1つのねじ5は、バランスばね用スタッド1に少なくとも部分的に進入して、指標付けされたロック位置にバランスばね用スタッド1を保持する。
【0022】
本発明に係る第1の実施形態によれば、
図4〜6に示すように、バランスばね用スタッド1は前記少なくとも1つのねじ5と連係する少なくとも1つの雌ねじ8を有する。この雌ねじ8は方向制限用表面7を形成する。
【0023】
このスタッドホルダー2は、
−少なくとも1つのねじ5の通路を与える第1のボア11と、
−前記少なくとも1つのねじ5が有するねじ頭51が当接するための第1の支持面11であって、この第1の支持面11が、バランスばね用スタッド1のための第1のハウジング3とは反対側に、第1のボア11の入口に配置されているような支持面11と
を有する。
【0024】
ねじ頭51は、スタッドホルダー2の第1の支持面11に当接する。この第1の実施形態では、ねじ5は、そのねじ山の弾性変形によって動作するような伝統的な方法で使用される。バランスばね用スタッド1は、従来技術におけるようにスタッドホルダー2に押しつけられないが、ねじ5によってスタッドホルダー2の方へ付けられる。バランスばね用スタッド1の方向は、ねじ頭51によって与えられる。このねじ頭51は、ねじ5の方向を決め、したがって、バランスばね用スタッド1の雌ねじ8の方向を決める。この雌ねじ8は、バランスばね21を保持するバランスばね用スタッド1の方向制限用表面7を形成する。
【0025】
スタッドホルダー2は、凹部を有することができ、これによって、ねじを緩めることってバランスばねの平坦度を調整することが可能になる。実際に、腕時計の製造業者は、バランスばねが可能な限り平坦であるようにバランスばねを位置合わせすることを常に心がけている。バランスばね用スタッド上の取り付け位置が、例えば、バランススタッフ棒上の取り付け位置よりも低い場合、バランスばねは、傘の形になる傾向がある。この現象を改善するために、腕時計の製造業者は、バランスばね用スタッドのねじを緩めて、2つの取り付け位置が同じ高さになるまでバランスばね用スタッドを上げ、これによって、バランスばねが再び平坦にされる。しかし、この調整は、バランスばね用スタッドがスタッドホルダー内で移動することができる範囲でのみ可能である。
図5の第1の実施形態において、バランスばね用スタッドは下方にのみ動くことができる。この場合、補正のために両方向への補正が可能となるようにねじが開口の中心位置になるように、スタッドの公称的な位置を選ぶ必要がある。円筒状の穴が設けられた場合では、調整が可能ではなく、穴が縦長の変形例においては、高さ方向のこのような調整が可能になる。
【0026】
この第1の実施形態においては、好ましくは、ねじ5を1つのみ有し、バランスばね用スタッド1の雌ねじ8を1つのみ有する。
【0027】
本発明は、さらに、このようなアセンブリ20を少なくとも1つ有する計時器用エスケープ機構30に関する。
【0028】
本発明は、さらに、この種のエスケープ機構30を少なくとも1つ有する計時器用ムーブメント40に関する。
【0029】
本発明は、さらに、このようなムーブメント40を少なくとも1つ有する計時器50に関する。具体的には、この計時器50は、腕時計である。
【0030】
本発明は、以下のような様々な利点を有する。すなわち、
−ねじが、ねじれではなく静止摩擦によって機能する。これによって、ねじを壊すリスクが減る。
−安定な調整が確実になり、ハイエンド向けムーブメントへの搭載が可能になる。
−本発明に係るスタッドホルダーアセンブリによって、従来技術のスタッドホルダーを交換することが可能であり、これによって、既存のムーブメントを改善することが可能になる。
【符号の説明】
【0031】
1 バランスばね用スタッド
2 スタッドホルダー
3 ハウジング
5 ねじ
7 方向制限用表面
8 雌ねじ
11 第1のボア
21 計時器用バランスばね
30 エスケープ機構
40 計時器用ムーブメント
50 計時器
51 ねじ頭