(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-102553(P2015-102553A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】被覆プローブおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20150508BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20150508BHJP
C01B 31/02 20060101ALI20150508BHJP
【FI】
G01R1/067 J
C23C14/06 F
C23C14/06 A
C01B31/02 101F
【審査請求】有
【請求項の数】32
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-236348(P2014-236348)
(22)【出願日】2014年11月21日
(31)【優先権主張番号】102142671
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】▲曽▼ 仕君
(72)【発明者】
【氏名】呉 仁傑
(72)【発明者】
【氏名】楊 秉興
(72)【発明者】
【氏名】蔡 麗端
(72)【発明者】
【氏名】呉 金▲寶▼
【テーマコード(参考)】
2G011
4G146
4K029
【Fターム(参考)】
2G011AA04
2G011AA09
2G011AC13
2G011AC14
2G011AC31
2G011AE03
2G011AE22
2G011AF00
4G146AA07
4G146AA11
4G146AB07
4G146AC19B
4G146AD22
4G146AD26
4G146AD36
4G146CB10
4G146CB17
4G146CB19
4G146CB22
4G146CB35
4K029AA02
4K029AA23
4K029BA34
4K029BA58
4K029BA60
4K029BC02
4K029BC03
4K029CA01
4K029CA05
4K029DB21
4K029GA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた導電性および機械強度を有する被覆プローブを提供する。
【解決手段】被覆プローブ10は、プローブ本体110と、クラッド層120とを含み、プローブ本体は、端部110aを有する。クラッド層はプローブ本体の端部の表面を覆い、クラッド層はカーボンナノ材料層を含み、カーボンナノ材料層は、カーボンナノ材料と結合基(linking group)とを含み、結合基は、アミド結合(amide bond)とメルカプト基(mercapto group)とを含み、カーボンナノ材料は、結合基のメルカプト基を介してプローブ本体の端部に結合される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部を有するプローブ本体と、
前記プローブ本体の前記端部の表面を覆うクラッド層と
を含み、前記クラッド層がカーボンナノ材料層を含み、前記カーボンナノ材料層がカーボンナノ材料を含む被覆プローブ。
【請求項2】
前記プローブ本体の材料が、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む請求項1に記載の被覆プローブ。
【請求項3】
前記金属が、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれる請求項2に記載の被覆プローブ。
【請求項4】
前記カーボンナノ材料層が、
アミド結合およびメルカプト基を含む結合基と、
前記結合基の前記メルカプト基を介して、前記プローブ本体の前記端部に結合された前記カーボンナノ材料と
を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項5】
前記クラッド層が疎水層をさらに含み、
前記カーボンナノ材料層が前記プローブ本体の前記端部と前記疎水層の間に配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項6】
前記疎水層が、‐Si(CHF)nFで表わされるフルオロシラン基を含み、nが整数であり、1≦n≦10である請求項5に記載の被覆プローブ。
【請求項7】
前記クラッド層が反応性架橋物質をさらに含み、前記反応性架橋物質が、前記プローブ本体の前記端部と前記カーボンナノ材料、または、前記カーボンナノ材料の分子同士を架橋結合させるによって、前記反応性架橋物質と前記カーボンナノ材料がネットワーク構造を形成する請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項8】
前記反応性架橋物質が、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンを含む請求項7に記載の被覆プローブ。
【請求項9】
前記反応性架橋物質が、2つ以上の反応性官能基を含む請求項7に記載の被覆プローブ。
【請求項10】
前記反応性官能基が、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH2からなる群より選ばれた請求項9に記載の被覆プローブ。
【請求項11】
前記クラッド層の厚さが50nm〜1μmである請求項1〜10のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項12】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノカプセル、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはダイヤモンドライクカーボンを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項13】
前記カーボンナノカプセルの粒子サイズが、100nm〜10nmである請求項12に記載の被覆プローブ。
【請求項14】
端部を有するプローブ本体を提供し、前記プローブ本体の材料が、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含むことと、
カーボンナノ材料を変性して、前記カーボンナノ材料の表面に‐COOH基を含有させることと、
前記表面に‐COOH基を有する前記カーボンナノ材料とアミノ基を有するチオールを反応させて、前記カーボンナノ材料の前記表面にメルカプト基(‐SH)を含有させることと、
前記表面に‐SH基を有する前記カーボンナノ材料の溶液に前記プローブ本体の前記端部を入れて反応させ、前記プローブ本体の前記端部の表面にカーボンナノ材料層を形成することと
を含む被覆プローブの製造方法。
【請求項15】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノカプセル、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはダイヤモンドライクカーボンを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブ本体の前記端部の前記表面に形成された前記カーボンナノ材料層とフルオロシランポリマーを反応させて、疎水層を形成することをさらに含み、
前記カーボンナノ材料層が前記端部と前記疎水層の間に配置されている請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
端部を有するプローブ本体を提供し、前記プローブ本体の材料が、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含むことと、
前記端部の表面にカーボンナノ材料を堆積させて、前記プローブ本体の前記端部の前記表面にカーボンナノ材料層を形成することと
を含む被覆プローブの製造方法。
【請求項18】
前記カーボンナノ材料が、カーボンナノカプセル、カーボンナノチューブ、グラフェン、またはダイヤモンドライクカーボンを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記端部の前記表面に形成された前記カーボンナノ材料層とフルオロシランポリマーを反応させて、疎水層を形成することをさらに含み、
前記カーボンナノ材料層が前記端部と前記疎水層の間に配置されている請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
端部を有するプローブ本体と、
前記プローブ本体の前記端部の表面を覆うクラッド層と
を含み、前記クラッド層が金属窒化物層を含み、前記金属窒化物層が金属窒化物を含む被覆プローブ。
【請求項21】
前記プローブ本体の材料が、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む請求項20に記載の被覆プローブ。
【請求項22】
前記金属が、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれた請求項21に記載の被覆プローブ。
【請求項23】
前記クラッド層が疎水層をさらに含み、
前記金属窒化物層が前記プローブ本体の前記端部と前記疎水層の間に配置されている請求項20〜22のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項24】
前記疎水層が‐Si(CHF)nFで表わされるフルオロシラン基を含み、nが整数であり、1≦n≦10である請求項23に記載の被覆プローブ。
【請求項25】
前記クラッド層が反応性架橋物質をさらに含み、前記反応性架橋物質が、前記プローブ本体の前記端部と前記金属窒化物、または、前記金属窒化物の分子同士を架橋結合させることによって、前記反応性架橋物質と前記金属窒化物がネットワーク構造を形成する請求項20〜24のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項26】
前記反応性架橋物質が、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンを含む請求項25に記載の被覆プローブ。
【請求項27】
前記反応性架橋物質が、2つ以上の反応性官能基を含む請求項25に記載の被覆プローブ。
【請求項28】
前記反応性官能基が、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH2からなる群より選ばれた請求項27に記載の被覆プローブ。
【請求項29】
前記クラッド層の厚さが、50nm〜1μmである請求項20〜28のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項30】
前記金属窒化物が、TiNまたはCrNを含む請求項20〜29のいずれか1項に記載の被覆プローブ。
【請求項31】
端部を有するプローブ本体を提供し、前記プローブ本体の材料が、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含むことと、
前記端部の表面に金属窒化物を堆積させて、前記プローブ本体の前記端部の前記表面に金属窒化物層を形成することと
を含む被覆プローブの製造方法。
【請求項32】
前記プローブ本体の前記端部の前記表面に形成された前記金属窒化物層とフルオロシランポリマーを反応させて、疎水層を形成することをさらに含み、
前記金属窒化物層が前記端部と前記疎水層の間に配置されている請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆プローブおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体技術の進歩に伴い、電子産業は、タッチパネルやワイヤレスネットワーク等の機能を備えたスマートフォンのような小型軽量で多機能な製品を常に売り出している。多くの機能は、主に、ICチップ(chip)によって演算される。演算と応答にかかる時間によって、消費者の製品使用速度が決まる。生活リズムが加速を続ける現代社会にとって、応答速度は大変重要な要件である。そのため、ICチップが設計、フォトマスク、ウェハ製造、実装、試験等の何百もの半導体プロセスを経た後でも満足できる製品であるかどうかを判断できることが非常に重要である。
【0003】
従来、ウェハ上の素子は、切断されてから実装された。現在のウェハ実装試験技術は、ウェハレベルチップスケールパッケージ(wafer level chip scale package, WLCSP)を開発し、WLCSPでは、まず、半田ボール(solder ball)をウェハ上に直接置いて実装してから、ウェハを複数のICチップに切断する。これら2つの主な違いは、IC試験頻度の制御である。前者は、試験頻度を調節することができるが、後者はできない。この場合、高周波数の素子にとって、IC信号試験中の周波数の増加により生じる抵抗は相対的に高く、それにより、試験の正確度が下がり、試験できないこともあるため、試験の難易度が相対的に高い。また、現在の金属プローブは、試験の過程で半田ボールが付着しやすいため、導電性が下がる。さらに、試験の頻度が高いとプローブのチップが摩耗しやすいため、プローブの使用可能寿命が短くなる。そのため、半導体の実装試験産業のコストを下げるためには、使用可能寿命が長く、且つ試験の信頼度が高いプローブが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた導電性および機械強度を有する被覆プローブを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の被覆プローブは、プローブ本体と、クラッド層とを含む。プローブ本体は端部を有する。クラッド層はプローブ本体の端部の表面を覆い、クラッド層はカーボンナノ材料(carbon nano-material)層を含む。
【0006】
本発明の被覆プローブの製造方法は、以下のステップを含む。端部を有するプローブ本体を提供し、プローブ本体の材料は、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。カーボンナノ材料を変性して、カーボンナノ材料の表面に‐COOH基を含有させる。表面に‐COOH基を有するカーボンナノ材料とチオールを反応させて、カーボンナノ材料の表面にメルカプト基(‐SH)を含有させる。表面に‐SH基を有するカーボンナノ材料の溶液にプローブ本体の端部を入れて反応させ、プローブ本体の端部の表面にカーボンナノ材料層を形成する。
【0007】
本発明の被覆プローブの別の製造方法は、以下のステップを含む。端部を有するプローブ本体を提供し、プローブ本体の材料は、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。蒸着法により、端部の表面にカーボンナノ材料を堆積させて、プローブ本体の端部の表面にカーボンナノ材料層を形成する。
【0008】
本発明の別の被覆プローブは、プローブ本体と、クラッド層とを含む。プローブ本体は端部を有する。クラッド層はプローブ本体の端部の表面を覆う。クラッド層は金属窒化物層を含み、金属窒化物層は金属窒化物を含む。
【0009】
本発明の被覆プローブのさらに別の製造方法は、以下のステップを含む。端部を有するプローブ本体を提供し、プローブ本体の材料は、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。蒸着法により、端部の表面に金属窒化物を堆積させて、プローブ本体の端部の表面に金属窒化物層を形成する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、プローブの端部の表面にクラッド層を形成して、本発明の実施形態の被覆プローブを形成する。クラッド層は、カーボンナノ材料層または金属窒化物層と疎水層で形成された二層構造である。そのため、本発明の実施形態の被覆プローブは、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0011】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利点をより分かり易くするため、図面と併せた幾つかの実施形態を以下に説明する。
【0012】
添付図面は、本発明の原理がさらに理解されるために含まれており、本明細書に組み込まれかつその一部を構成するものである。図面は、本発明の実施形態を例示しており、説明とともに、本発明の原理を説明する役割を果たしている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの概略的側面図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの端部の概略的上面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
【
図4】
図3の点線で示した領域の部分的拡大図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
【
図7】
図6の点線で示した領域の部分的拡大図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
【
図10】
図9の点線で示した領域の部分的拡大図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。
【
図12】本発明の1つの実施形態の被覆プローブと従来のプローブの電流電圧試験のグラフである。
【
図13】本発明の別の実施形態の被覆プローブと従来のプローブの電流電圧試験のグラフである。
【
図14】本発明の更なる実施形態の被覆プローブと従来のプローブの摩耗試験のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明において、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的詳細を示す。しかしながら、これら具体的詳細がなくとも、1つまたはそれ以上の実施形態が実施され得ることは明らかである。別の場合では、図面を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0015】
図1は、本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの概略的側面図である。
図2は、本発明の1つの実施形態に係る被覆されていないプローブの端部の概略的上面図である。
図1および
図2を参照すると、被覆されていないプローブは、プローブ本体110を含み、
図2に示すように、プローブ本体110は、端部110aを有する。プローブ本体110の端部110aは、4つの凸部(protrusion)112、114、116、および118を含み、端部110aは、蓮の形状(lotus-shaped)である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、プローブ本体110の端部110aによりプローブと試験サンプルが接触していればよい。プローブ本体110の材料は、例えば、金属、合金、またはこれらの組み合わせである。さらに詳しく説明すると、金属は、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれる。しかしながら、本発明は、プローブ本体110の材料を限定せず、プローブが導電性であればよい。
【0016】
図3は、本発明の第1実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
図4は、
図3の点線で示した領域Rの部分的拡大図である。
図3および
図4を参照すると、本発明の第1実施形態の被覆プローブ10は、プローブ本体110と、クラッド層120とを含む。プローブ本体110は、端部110aを有する。クラッド120は、プローブ本体110の端部110aの表面を覆う。本実施形態において、
図4に示すように、クラッド層120は、カーボンナノ材料層122と、疎水層124とを含む。クラッド層120の厚さは、例えば、50nm〜1μmまたは50nm〜0.5μmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。カーボンナノ材料層122は、カーボンナノ材料122aと、結合基(linking group)122bとを含む。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ10について詳しく説明する。
【0017】
本実施形態において、カーボンナノ材料層122のカーボンナノ材料122aは、例えば、カーボンナノカプセル(carbon nano-capsule)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube, CNT)、グラフェン(graphene)、ダイヤモンドライクカーボン(diamond like carbon, DLC)、または類似する材料を含む。カーボンナノカプセルの構造は安定的であり、カーボンナノカプセルは溶媒に分散しやすいため、プローブの導電性を上げ、プローブの摩耗度を減らす観点から見ると、カーボンナノカプセルは、カーボンナノ材料122aに適した選択である。カーボンナノカプセルの粒子サイズは、例えば、100nm〜10nmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。本実施形態において、カーボンナノ材料層122は、さらに、結合基122bを含む。結合基122bは、アミド結合(amide bond)と、メルカプト基(mercapto group)とを含み、カーボンナノ材料122aは、結合基122bのメルカプト基を介して、プローブ本体110の端部110aに結合される。言及すべきこととして、
図4において、結合基122bの‐(CH
2)
nにおけるnは整数であり、1≦n≦4である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、カーボンナノ材料122aは、結合基122bを介さずに、端部110aの表面に直接被覆してもよい。本実施形態の被覆プローブ10の端部110aの表面は、カーボンナノ材料層122を有するため、プローブ本体110の端部110aの耐摩耗性を上げ、プローブの導電性を上げることもできる。
【0018】
さらに、本実施形態において、クラッド層120は、疎水層124をさらに含んでもよい。カーボンナノ材料層122は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置されている。さらに具体的に説明すると、疎水層124は、フルオロシラン基(fluorosilane group)を含み、フルオロシラン基は、‐Si(CHF)
nFで表わされる。nは整数であり、1≦n≦10である。言及すべきこととして、被覆プローブ10の端部110aの表面は、疎水層124を有するため、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減することができ、それによって、IC試験の正確度を上げることができる。
【0019】
上述したように、カーボンナノ材料122aは、結合基122bのメルカプト基を介して、プローブ本体110の端部110aに結合される。さらに詳しく説明すると、プローブ本体110の材料が金属の場合、結合基122bは、プローブ本体110の端部110aと硫黄‐金属結合を形成することができる。この結合は結合力が強いため、カーボンナノ材料122aをプローブ本体110の端部110aの表面にしっかりと被覆することができ、それによって、端部110aの表面にカーボンナノ材料層122を形成することができる。さらに、カーボンナノ材料122aは、表面の酸素原子を介して、フルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成するため、フルオロシランポリマーをカーボンナノ材料層122の表面にしっかりと被覆させて、疎水層124を形成することができ、それにより、クラッド層120とカーボンナノ材料層122の二層構造を形成することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、クラッド層120は、単一層であってもよく、つまり、クラッド層120は、カーボンナノ材料層122のみを含む。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ10の端部110aの表面のクラッド層120は、カーボンナノ材料層122と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ10は、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0020】
本実施形態において、クラッド層120は、反応性架橋物質(reactive cross-linking substance)(図示せず)をさらに含んでもよい。反応性架橋物質は、カーボンナノ材料122aとのネットワーク構造を形成することができる。詳しく説明すると、反応性架橋物質は、カーボンナノ材料122aとプローブ本体110の端部110a、または、カーボンナノ材料122aの分子同士を架橋結合させることができる。反応性架橋物質の架橋反応により、カーボンナノ材料層122の機械強度およびカーボンナノ材料層122とプローブ本体110の端部110aの間の接着強度を強めることができ、それによって、被覆プローブ10の使用寿命を増やすことができる。
【0021】
本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタン(1,2-bis(trichlorosilyl) ethane)または1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサン(1,6-bis(trichlorosilyl) hexane)である。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ10の製造方法について詳しく説明する。
【0022】
図5は、本発明の第1実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。言及すべきこととして、本実施形態では、ディップコーティング(dip coating)を例として使用する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。電気メッキまたは類似する方法を使用して被覆プローブを製造してもよい。まず、ステップS502において、端部110aを有するプローブ本体110を提供する。プローブ本体110の材料は、例えば、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。次に、ステップS504において、カーボンナノ材料122aを酸性化(acidification)により変性して、カーボンナノ材料122aの表面に‐COOH基を含有させる。カーボンナノ材料122aは、例えば、カーボンナノカプセル、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンドライクカーボン、または類似する材料を含む。次に、ステップS506において、表面に‐COOH基を有するカーボンナノ材料122aとアミノ基(‐NH
2)を有するチオール(R‐SH)をN,N‐ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide, DMF)に添加し、混合液を60℃で24時間脱水反応させる。反応後、チオールはアミド結合を介してカーボンナノ材料122aに結合して、カーボンナノ材料122aの表面にメルカプト基(‐SH)が露出され、それにより、カーボンナノ材料122aの表面に複数の結合基122bを形成する。言及すべきこととして、結合基122bは、カーボンナノ材料122aの表面と露出したメルカプト基の間の部分(moiety)を指す。そして、ステップS508において、表面に結合基122bを有するカーボンナノ材料122aの溶液にプローブ本体110の端部110aを入れ、結合基122bの露出したメルカプト基(‐SH)とプローブの端部110aの間で約5〜10分間化学吸着させて硫黄‐金属結合を形成し、それにより、プローブ本体110の端部110aの表面にカーボンナノ材料層122を形成する。
【0023】
最後に、本実施形態において、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減するため、ステップS510において、カーボンナノ材料層122の表面に対して疎水化処理をさらに行ってもよい。さらに詳しく説明すると、プローブ本体110の端部110aの表面に形成されたカーボンナノ材料層122を約30分間フルオロシランポリマーと反応させることにより、カーボンナノ材料層122の表面の酸素原子がフルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成し、カーボンナノ材料層122の表面に疎水層124を形成する。カーボンナノ材料層122は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置される。本実施形態において、疎水層124は、カーボンナノ材料層122が形成された後に形成されるが、必要であれば、先にカーボンナノ材料122aの表面に疎水化処理を行ってから、表面に疎水層124を有するカーボンナノ材料122aをプローブ本体110の端部110aと反応させてもよい。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ10の端部110aの表面のクラッド層120は、カーボンナノ材料層122と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ10は、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0024】
上述した
図5のステップS502〜S510の他に、カーボンナノ材料層122の機械強度およびカーボンナノ材料層122とプローブの端部110aの間の接着強度を強めるため、反応性架橋物質(図示せず)を添加して、カーボンナノ材料122aとプローブ本体110の端部110a、または、カーボンナノ材料122aの分子同士を架橋結合させてもよい。本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンである。
【0025】
図6は、本発明の第2実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
図7は、
図6の点線で示した領域Rの部分的拡大図である。本実施形態の被覆プローブ20は、
図2の実施形態の被覆プローブ10に類似しており、主な相違点は、クラッド層220におけるカーボンナノ材料層222の構造である。さらに詳しく説明すると、カーボンナノ材料層122と比較して、カーボンナノ材料層222は、結合基122bを含んでおらず、カーボンナノ材料122aのみによって形成される。以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳しく説明する。まず、
図1および
図2を再度参照すると、本実施形態の被覆されていないプローブは、同様にして、プローブ本体110を含み、
図2に示すように、プローブ本体110は、端部110aを有する。プローブ本体110の端部110aは、4つの凸部112、114、116、および118を有し、端部110aは、蓮の形状である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、プローブ本体110の端部110aが試験サンプルと接触していればよい。プローブ本体110の材料は、例えば、金属、合金、またはこれらの組み合わせである。さらに詳しく説明すると、金属は、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれる。しかしながら、本発明は、プローブ本体110の材料を限定せず、プローブが導電性であればよい。
【0026】
そして、
図6および
図7を参照すると、本発明の第2実施形態の被覆プローブ20は、プローブ本体110と、クラッド層220とを含む。プローブ本体110は端部110aを有する。クラッド層220はプローブ本体110の端部110aを覆う。本実施形態において、
図7に示すように、クラッド層220は、カーボンナノ材料層222と、疎水層124とを含む。クラッド層220の厚さは、例えば、50nm〜1μmまたは50nm〜0.5μmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。言及すべきこととして、本実施形態において、カーボンナノ材料層222は、カーボンナノ材料122aのみを含み、結合基122bを有さない。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ20について詳しく説明する。
【0027】
本実施形態において、カーボンナノ材料層222のカーボンナノ材料122aは、例えば、カーボンナノカプセル、カーボンナノチューブ、グラフェン、ダイヤモンドライクカーボン、または類似する材料を含む。同様にして、カーボンナノカプセルの構造は安定的であり、プローブ本体110の端部110aと強い付着力を有するため、プローブの導電性を上げ、プローブの摩耗度を減らす観点から見ると、カーボンナノカプセルは、カーボンナノ材料122aに適した選択である。カーボンナノカプセルの粒子サイズは、例えば、100nm〜10nmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0028】
言及すべきこととして、被覆プローブ10のカーボンナノ材料122aは、結合基122bを介して、プローブ本体110の端部110aの表面に結合されるが、本実施形態の被覆プローブ20のカーボンナノ材料122aは、蒸着法により、プローブ本体110の端部110aの表面に直接堆積される。本実施形態のカーボンナノ材料122aは、プローブ本体110の端部110aと直接接触しているため、これら二者間は引力が比較的強く、プローブ本体110の端部110aの表面にカーボンナノ材料122aをよりしっかりと被覆させることができる。さらに、本実施形態の被覆プローブ20の表面は、カーボンナノ材料層222を有するため、プローブの耐摩耗性および導電性を上げることができる。
【0029】
同様にして、本実施形態において、クラッド層220は、疎水層124をさらに含んでもよい。カーボンナノ材料層222は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置される。同様にして、クラッド層220の疎水層124は、フルオロシラン基を含み、フルオロシラン基は、‐Si(CHF)
nFで表わされる。nは整数であり、1≦n≦10である。言及すべきこととして、本実施形態の被覆プローブ20の表面は、疎水層124を有するため、半田ボールの付着を低減することができ、それによって、IC試験の正確度を上げることができる。
【0030】
上述したように、カーボンナノ材料122aは、蒸着法により、プローブ本体110の端部110aの表面に直接堆積される。カーボンナノ材料122aがプローブ本体110の端部110aの表面に直接接触するため、プローブ本体110の端部110aの表面にカーボンナノ材料層222を確実に形成することができる。本発明は、蒸着法を限定しないが、蒸着法は、例えば、電子銃蒸着(electron gun evaporation)、スパッタリング(sputtering)、または類似する方法であってもよい。さらに、カーボンナノ材料122aは、表面の酸素原子を介してフルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成するため、フルオロシランポリマーをカーボンナノ材料層222の表面にしっかりと被覆させ、疎水層124を形成することができ、それにより、クラッド層220とカーボンナノ材料層222の二層構造を形成することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、クラッド層220は、単層構造であってもよく、つまり、クラッド層220は、カーボンナノ材料層222のみを含む。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ20の端部110aの表面のクラッド層220は、カーボンナノ材料層222と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ20は、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0031】
同様にして、本実施形態において、クラッド層220は、反応性架橋物質(図示せず)をさらに含んでもよい。反応性架橋物質とカーボンナノ材料122aの間にネットワーク構造を形成する。詳しく説明すると、反応性架橋物質は、カーボンナノ材料122aとプローブ本体110の端部110a、または、カーボンナノ材料122aの分子同士を架橋結合させることができる。反応性架橋物質により、カーボンナノ材料層222の機械強度およびカーボンナノ材料層222とプローブ本体110の端部110aの間の接着強度を強めることができ、それによって、本発明の被覆プローブ20の使用寿命を増やすことができる。
【0032】
本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンである。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ20の製造方法について詳しく説明する。
【0033】
図8は、本発明の第2実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。言及すべきこととして、本実施形態において、蒸着法を例として使用するが、本発明はこれに限定されない。まず、ステップS802において、端部110aを有するプローブ本体110を提供する。プローブ本体110の材料は、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。そして、ステップS804において、蒸着法により、カーボンナノ材料122aをプローブ本体110の端部110aの表面に直接堆積させて、プローブ本体110の端部110aの表面にカーボンナノ材料層222を形成する。蒸着法は、例えば、電子銃蒸着、スパッタリング、または類似する方法である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。さらに、本発明は、蒸着時間も限定しない。必要に応じて、蒸着時間を調節し、堆積したカーボンナノ材料層222の厚さを決定することができる。
【0034】
最後に、本実施形態において、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減するため、ステップS806において、カーボンナノ材料層222の表面に対して疎水化処理をさらに行ってもよい。さらに詳しく説明すると、プローブ本体110の端部110aの表面に形成されたカーボンナノ材料層222を約30分間フルオロシランポリマーと反応させることにより、カーボンナノ材料層222の表面の酸素原子がフルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成し、カーボンナノ材料層222の表面に疎水層124を形成する。カーボンナノ材料層222は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置される。本実施形態において、疎水層124は、カーボンナノ材料層222が形成された後に形成されるが、必要であれば、先にカーボンナノ材料122aの表面に疎水化処理を行ってから、表面に疎水層124を有するカーボンナノ材料122aをプローブ本体110の端部110aと反応させてもよい。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ20の端部110aの表面のクラッド層220は、カーボンナノ材料層222と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ20は、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0035】
同様にして、上述した
図8のステップS802〜S806の他に、カーボンナノ材料層222の機械強度およびカーボンナノ材料層222とプローブの端部110aの間の接着強度を強めるため、反応性架橋物質(図示せず)を添加して、カーボンナノ材料122aとプローブ本体110の端部110a、または、カーボンナノ材料122aの分子同士を架橋結合させてもよい。本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンである。
【0036】
図9は、本発明の第3実施形態に係る被覆プローブの概略的側面図である。
図10は、
図9の点線で示した領域の部分的拡大図である。本実施形態の被覆プローブ30は、
図6の実施形態の被覆プローブ20に類似しており、主な相違点は、クラッド層320の成分である。さらに詳しく説明すると、カーボンナノ材料層222を有するクラッド層220と比較して、クラッド層320は、金属窒化物層322を含む。以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳しく説明する。まず、
図1および
図2を再度参照すると、本実施形態の被覆されていないプローブは、同様にして、プローブ本体110を含み、
図2に示すように、プローブ本体110は端部110aを有する。プローブ本体110の端部110aは、4つの凸部112、114、116、および118を有し、端部110aは蓮の形状である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、プローブ本体110の端部110aが試験サンプルと接触していればよい。プローブ本体110の材料は、例えば、金属、合金、またはこれらの組み合わせである。さらに詳しく説明すると、金属は、Cu、Pd、Ag、Au、Re、およびWからなる群より選ばれる。しかしながら、本発明は、プローブ本体110の材料を限定せず、プローブが導電性であればよい。
【0037】
そして、
図9および
図10を参照すると、本発明の第3実施形態の被覆プローブ30は、プローブ本体110と、クラッド層320とを含む。プローブ本体110は端部110aを有する。クラッド層320はプローブ本体110の端部110aの表面を覆う。本実施形態において、
図10に示すように、クラッド層320は、金属窒化物層322と、疎水層124とを含む。クラッド層320の厚さは、例えば、50nm〜1μmまたは50nm〜0.5μmである。しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ30について詳しく説明する。
【0038】
本実施形態において、金属窒化物層322の金属窒化物322aは、例えば、TiNまたはCrNで構成される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。言及すべきこととして、本実施形態の被覆プローブ30の金属窒化物322aは、蒸着法により、プローブ本体110の端部110aの表面に直接堆積される。本実施形態の金属窒化物322aは、プローブ本体110の端部110aに直接接触しているため、これら二者間は引力が比較的強く、金属窒化物322aをプローブ本体110の端部110aの表面によりしっかりと被覆させることができる。さらに、本実施形態の被覆プローブ30の表面は、金属窒化物層322を有するため、プローブの耐摩耗性および導電性を上げることができる。
【0039】
同様にして、本実施形態において、クラッド層320は、疎水層124をさらに含んでもよい。金属窒化物層322は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置される。同様にして、クラッド層320の疎水層124は、フルオロシラン基を含み、フルオロシラン基は、‐Si(CHF)
nFで表わされる。nは整数であり、1≦n≦10である。言及すべきこととして、本実施形態の被覆プローブ30の表面は、疎水層124を有するため、半田ボールの付着を低減することができ、それによって、IC試験の正確度を上げることができる。
【0040】
上述したように、金属窒化物322aは、蒸着法により、プローブ本体110の端部110aの表面に直接堆積される。金属窒化物322aがプローブ本体110の端部110aの表面に直接接触するため、プローブ本体110の端部110aの表面に金属窒化物層322を確実に形成することができる。本発明は、蒸着法を限定しないが、蒸着法は、例えば、電子銃蒸着、スパッタリング、または類似する方法であってもよい。さらに、金属窒化物322aは、表面の酸素原子を介して、フルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成するため、フルオロシランポリマーを金属窒化物層322の表面にしっかりと被覆させて、疎水層124を形成することができ、それにより、クラッド層320と金属窒化物層322の二層構造を形成することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、クラッド層320は、単層構造であってもよく、つまり、クラッド層320は、金属窒化物層322のみを含む。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ30の端部110aの表面のクラッド層320は、金属窒化物層322と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ30は、優れた耐摩耗性および高導電性を同時に有するだけでなく、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0041】
同様にして、本実施形態において、クラッド層320は、反応性架橋物質(図示せず)をさらに含んでもよい。反応性架橋物質と金属窒化物322aの間にネットワーク構造を形成する。詳しく説明すると、反応性架橋物質は、金属窒化物322aとプローブ本体110の端部110a、または、金属窒化物322aの分子同士を架橋結合させることができる。反応性架橋物質により、金属窒化物層322の機械強度および金属窒化物層322とプローブ本体110の端部110aの間の接着強度を強めることができ、それによって、本発明の被覆プローブ30の使用寿命を増やすことができる。
【0042】
本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンである。以下、図面を参照しながら、本実施形態の被覆プローブ30の製造方法について詳しく説明する。
【0043】
図11は、本発明の第3実施形態に係る被覆プローブの製造方法のフローチャートである。言及すべきこととして、本実施形態において、蒸着法を例として使用するが、本発明はこれに限定されない。まず、ステップS1102において、端部110aを有するプローブ本体110を提供する。プローブ本体110の材料は、金属、合金、またはこれらの組み合わせを含む。そして、ステップS1104において、蒸着法により、プローブ本体110の端部110aの表面に金属窒化物322aを直接堆積させて、プローブ本体110の端部110aの表面に金属窒化物層322を形成する。蒸着法は、例えば、電子銃蒸着、スパッタリング、または類似する方法である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。さらに、本発明は、蒸着時間も限定しない。必要に応じて、蒸着時間を調節し、堆積した金属窒化物層322の厚さを決定することができる。
【0044】
最後に、本実施形態において、プローブ本体110の端部110aへの半田ボールの付着を低減するため、ステップS1106において、金属窒化物層322の表面に対して疎水化処理をさらに行ってもよい。さらに詳しく説明すると、プローブ本体110の端部110aの表面に形成された金属窒化物層322を約30分間フルオロシランポリマーと反応させることにより、金属窒化物層322の表面の酸素原子がフルオロシランポリマーのケイ素原子と‐O‐Si結合を形成し、金属窒化物層322の表面に疎水層124を形成する。金属窒化物層322は、プローブ本体110の端部110aと疎水層124の間に配置される。本実施形態において、疎水層124は、金属窒化物層322が形成された後に形成されるが、必要であれば、先に金属窒化物322aの表面に疎水化処理を行ってから、表面に疎水層124を有する金属窒化物322aをプローブ本体110の端部110aと反応させてもよい。言及すべきこととして、本実施形態において、被覆プローブ30の端部110aの表面のクラッド層320は、金属窒化物層322と疎水層124を含む二層構造であるため、被覆プローブ30は、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0045】
同様にして、上述した
図11のステップS1102〜S1106の他に、金属窒化物層322の機械強度および金属窒化物層322とプローブの端部110aの間の接着強度を強めるため、反応性架橋物質(図示せず)を添加して、金属窒化物322aとプローブ本体110の端部110a、または、金属窒化物322aの分子同士を架橋結合させてもよい。本実施形態において、反応性架橋物質は、2つ以上の反応性官能基を含むことができる。反応性官能基は、例えば、‐OH、‐SH、‐COOH、‐SiH、‐SiOR、および‐NH
2からなる基より選ばれる。さらに詳しく説明すると、反応性架橋物質は、例えば、1,2‐ビス(トリクロロシリル)エタンまたは1,6‐ビス(トリクロロシリル)ヘキサンである。
【0046】
以下、実験例を用いて本発明の特性および効果についてさらに説明する。しかしながら、本発明は、これらの実験例に限定されない。
実験例1
<多層カーボンナノチューブ被覆プローブの製造>
【0047】
本発明の第1実施形態のプローブの製造方法(
図5)に基づいて、本実験例を行う。まず、多層カーボンナノチューブ(multiwall carbon nanotubes, MWCNT)を酸性化により変性した後、酸性化により変性された適量のMWCNTおよび2‐アミノエタンチオール(2-aminoethanethiol)をN,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒中に添加して、混合液を超音波発振子(ultrasonic oscillator)に入れ、混合液を60℃で24時間脱水反応させる。次に、タングステンプローブの端部を混合液に入れて、5分間反応させる。その後、混合液を真空乾燥させ、タングステンプローブの端部表面にカーボンナノ材料層を形成する。最後に、カーボンナノ材料層をさらにフルオロシランポリマーと反応させて、カーボンナノ材料層の表面にフルオロシラン基を有する疎水層をコーティングする。このようにして、プローブへの半田ボールの付着が低減される。
<多層カーボンナノチューブ被覆プローブの電気および寿命分析>
【0048】
プローブの電気分析:ナノプローブ測定システムを使用して、単一プローブの抵抗試験を行う。電気分析に使用した元のプローブは、タングステンプローブである。分析結果は、
図12に示した通りである。
図12は、本発明の1つの実施形態の被覆プローブと従来のプローブの電流電圧試験のグラフである。横軸は、電圧(V)を示し、縦軸は、電流(A)を示す。
図12の結果が示すように、同じ電圧(5×10
-1)において、本発明の実施形態のMWCNT被覆プローブ(曲線A)と元のプローブ(曲線B)の抵抗値は、それぞれ、5.00Ωおよび6.11Ωである。このことからわかるように、プローブの表面にカーボンナノ材料をコーティングすることによって、プローブの導電性が上がる。
【0049】
プローブの寿命分析:連続試験中のプローブ洗浄頻度をプローブ寿命の指標として使用する。分析結果が示すように、本発明の実施形態のMWCNT被覆プローブのプローブ洗浄頻度(1回/5日)は、元のプローブのプローブ洗浄頻度(平均1回/4時間)よりもはるかに優れている。このことからわかるように、プローブの表面にカーボンナノ材料をコーティングし、カーボンナノ材料層に疎水層を形成することによって、半田ボールの付着およびプローブ洗浄頻度が減少する。その結果、IC試験のコストが下がる。
実験例2
<カーボンナノカプセル被覆プローブの製造>
【0050】
本発明の第2実施形態のプローブの製造方法(
図8)に基づいて、本実験例を行う。まず、電子銃蒸着法を用いてプローブの端部表面にカーボンナノカプセルを堆積させる。最後に、カーボンナノ材料層をさらにフルオロシランポリマーと反応させて、カーボンナノ材料層の表面にフルオロシランポリマーを有する疎水層をコーティングする。このようにして、プローブへの半田ボールの付着が低減される。
<カーボンナノカプセル被覆プローブの電気および寿命分析>
【0051】
プローブの電気分析:ナノプローブ測定システムを使用して、単一プローブの抵抗試験を行う。電気分析に使用した元のプローブは、タングステンプローブである。分析結果は、
図13に示した通りである。
図13は、本発明の別の実施形態のプローブと従来のプローブの電流電圧試験のグラフである。横軸は、電圧(V)を示し、縦軸は、電流(A)を示す。
図13の結果が示すように、同じ電圧(5×10
-1)において、本発明の実施形態のナノカプセル被覆プローブ(曲線C)と元のプローブ(曲線D)の抵抗値は、それぞれ、5.05Ωおよび6.11Ωである。このことからわかるように、プローブの表面にカーボンナノ材料をコーティングすることによって、プローブの導電性が上がる。
【0052】
プローブの寿命分析:摩耗率およびプローブ洗浄頻度をプローブ寿命の指標として使用する。分析結果が示すように、15000回の連続試験の後、本発明の実施形態のカーボンナノカプセル被覆プローブの摩耗率(3%)は、元のプローブの摩耗率(30%)よりもはるかに低い。さらに、カーボンナノカプセル被覆プローブのプローブ洗浄頻度は、約1回/12日であり、元のプローブのプローブ洗浄頻度は、約1回/4時間である。このことからわかるように、プローブの表面にカーボンナノ材料をコーティングし、カーボンナノ材料層に疎水層を形成することによって、半田ボールの付着が低減され、プローブ洗浄頻度が減るだけでなく、プローブの針先の摩耗も減少する。その結果、プローブの使用寿命が増加する。
実験例3
<金属窒化物被覆プローブの製造>
【0053】
本発明の第3実施形態のプローブの製造方法(
図11)に基づいて、本実験例を行う。まず、電子銃蒸着法を用いてプローブの端部表面に金属窒化物層を堆積させる。最後に、金属窒化物層をさらにフルオロシランポリマーと反応させて、金属窒化物層の表面にフルオロシランポリマーを有する疎水層をコーティングする。このようにして、プローブへの半田ボールの付着が低減される。
<金属窒化物被覆プローブの寿命分析>
【0054】
プローブの寿命分析:摩耗率をプローブ寿命の指標として使用する。タッチダウン数の機能としてプローブの直径を比較することによって、TiN被覆プローブの摩耗率を評価する。
図14に示すように、1000回の連続タッチダウン試験の後、Tiをコーティングしたプローブの直径は、23μmから23.8μmに増加し、Tiをコーティングしていないプローブの直径は、23μmから30μmに増加した。この結果が示すように、本実施形態の金属窒化物被覆プローブの摩耗率(Tiあり:3.4%)は、元のプローブの摩耗率(Tiなし:30%)よりもはるかに低い。このことからわかるように、プローブの表面に金属窒化物層をコーティングし、金属窒化物層に疎水層を形成することによって、プローブの針先の摩耗率および半田ボールの付着が低減される。その結果、プローブの使用寿命が増加する。
【0055】
以上のように、プローブの端部の表面にクラッド層を形成して、本発明の実施形態の被覆プローブを形成する。クラッド層は、カーボンナノ材料層または金属窒化物層と疎水層で形成された二層構造である。そのため、本発明の実施形態の被覆プローブは、優れた耐摩耗性を有するだけでなく、高導電性も有し、半田ボールの付着を低減することもでき、それによって、IC試験の正確度を上げることもできる。
【0056】
以上のごとく、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
使用寿命が長く、且つ試験信頼度の高い被覆プローブは、半導体実装および試験産業に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10、20、30 被覆プローブ
110 プローブ本体
110a 端部
112、114、116、118 凸部
120、220、320 クラッド層
122、222 カーボンナノ材料層
122a カーボンナノ材料
122b 結合基
124 疎水層
322 金属窒化物層
322a 金属窒化物
【外国語明細書】