【解決手段】軒樋吊り具1は、軒樋2の前耳2dを係止する前耳係止体20と、軒樋2の後耳2bを係止する後耳係止体10と、建築構造物(壁3)へ固定するための固定部14とを備えており、前耳係止体20と後耳係止体10とが結合、分離自在となっている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る軒樋吊り具の分解斜視図である。
図2は、
図1の軒樋吊り具の取付状態を示した縦断面図である。
【0016】
本軒樋吊り具1に支持される軒樋2には、吊り支持されるための被係止部として、軒先側(後方)の後方壁2aの上端に後耳2bが設けられ、前方壁2cの上端に前耳2dが設けられている(
図2参照)。
【0017】
軒樋吊り具1は、
図1および
図2に示すように、軒先の壁3などの建築構造物に固定されて、軒樋2を吊り支持するものであり、軒樋2の後耳2bを係止する後耳係止体10と、前耳2dを係止する前耳係止体20とを分離自在に結合、一体化してなるものである。
【0018】
後耳係止体10は、後耳係止部11と、その前方に配された、前耳係止体20と連結される本体部13と、後耳係止部11の後方に配された、後耳係止体10を軒先の壁などに固定するための固定部14とを備えている。
【0019】
後耳係止部11は、上方に突出形成されており、その裏側の凹所11dには軒樋2の後耳2bを係止する係止片12が取り付けられている。後耳係止部11は、断面視で凹所11dをはさんでハ字形に下方に開口した形状とされており、本体部13とほぼ平行な頂面部11aと、その頂面部11aの前後端より下方に延びた前側壁部11b、後側壁部11cとを有した形状となっている。この頂面部11aの裏側に係止片12がリベット16で固定されている。なお、係止片12については後述する。
【0020】
後耳係止部11の前方には、幅方向の両端部に垂下リブ片13bを有した平板状の本体部13が配され、本体部13には、前耳係止体20と結合するための上下に通じる長手方向に沿った長孔13aが形成されている。
【0021】
また、後耳係止部11の後方には、後耳係止部11の後側壁部11cの下端より下方に延びるように固定部14が配されている。固定部14は、壁3にねじ固定するための複数の固定孔14aが形成された横長の長方形状の板体よりなる。固定部14としては、後耳係止部11より下方に延びた取付片に別体の座板をリベットなどで固着した構成としてもよい。
【0022】
また、この後耳係止体10には、本体部13の後端部から後耳係止部11の頂面部11aの前端部まで1条の補強用のリブ15が形成され、後耳係止部11の後端部から固定部14の高さ方向の中央よりやや下方まで2条の補強用のリブ15が形成されている。
【0023】
係止片12は、ばね性を有した金属薄板を折曲加工してなり、軒樋2の後耳2bを係止する係止部12bと、軒樋2の後耳2bを後方に向けて押圧するようにして後耳2bの外れを防止する押さえ片部12cと、上端部に山形状に配されて頂面部11aに固着される固着部12aとを一体に備えている。これらに囲まれた内方空間が、軒樋の後耳を収容する後耳収容空間12dを構成する。
【0024】
固着部12aは、断面視でハ字形に下方に開いており、凹所11dに嵌合できる、中央にリベット挿通用の挿通孔を有した頂部12aaと、前、後傾斜部12ab、12acとを有している。
【0025】
また、係止部12bは、固着部12aの後傾斜部12acの下端より下方に延びた垂下部12baと、その垂下部12baの下端から前方に向けて折曲延設された耳掛部12bbと、耳掛部12bbの前端より下方に折曲延設された垂片部12bcとを備えている。この垂片部12bcの下端部には後方に傾斜した、後耳の挿入ガイド用のガイド部12bcaが形成されている。
【0026】
押さえ片部12cは、固着部12aの前傾斜部12abの下端より下方に延びた垂下部12caと、その垂下部12caの下端より後方に向けて折曲延設された押圧部12cbとを備えている。この押圧部12cbの先端中央には半円状の切欠き部12cbaが形成されている。なお、この切欠き部12cbaは、係止片12を頂面部11aに固着させる際のリベット16止めするための操作用の凹部である。
【0027】
耳掛部12bbと押圧部12cbの高さ位置はほぼ同じであり、それらの間には、後耳2bが抜け落ちない程度の挿入間隙が形成されている。
【0028】
この係止片12には、固着部12aの頂部12aaの後端部から後傾斜部12ac、垂下部12ba、耳掛部12bbを経由して、垂片部12bcにいたるまで2条の補強用のリブ12f、12fが形成されている。
【0029】
一方、前耳係止体20は、前耳係止部21と、その後方に配され、後耳係止体10と連結される本体部22とを備えている。
【0030】
本体部22は、後耳係止体10の本体部13と同様に平板状とされ、その幅方向の両端に垂下リブ片22bを有している。本体部22には、後耳係止体10と結合するための丸孔22aが形成されている。この本体部22は、幅方向の内寸法(垂下リブ片22b、22b間の空間寸法)が後耳係止体10の本体部13の幅方向の外寸法とほぼ同じかやや大とされ、後耳係止体10の本体部13に被せられるようになっている。つまり、本体部13の2つの垂下リブ片22b、22bは回り止め片を構成する。
【0031】
前耳係止部21は、本体部22の前端より斜め上方に延びるように本体部22と一体に形成されており、その先端にはほぼ真上に向けて突出した係止突片21aが形成されている。また、垂下リブ片22bも本体部22側より連成されている。
【0032】
この前耳係止体20を後耳係止体10に被せ、丸孔22aと長孔13aとの重合孔にボルト4aを通し蝶ナット4bで螺着することで前耳係止体20と後耳係止体10とが結合し、相互に固定される。こうして、両部材が分離自在で、白抜き矢印の方向に両部材がスライド自在な軒樋吊り具1が形成される。
【0033】
このように両部材が連結され、固定部14が壁3に固定された軒樋吊り具1には、
図2に示すように、軒樋2の前耳2dが前耳係止部21の係止突片21aに掛止され、後耳2bが係止片12の係止部12bに掛止されて、軒樋2は吊り支持される。また、軒樋2の前耳2dの下部には後方への凹み段部2eがあり、前耳2dが係止突片21aに係止されることで、軒樋2の前部で係止突片21aを上下より挟み込む形となって、下方からの押圧によっても外れにくくできる。
【0034】
以上のように、この軒樋吊り具1は前耳係止体20と後耳係止体10とが結合、分離自在となって構成であるため、分離してコンパクトに保管、輸送でき、必要なときに組み立てることができる。
【0035】
特に、本実施形態の軒樋吊り具1は、丸孔22aと長孔13aとの重合により、前耳係止体20が後耳係止体10に対して前後方向に進退自在となるように結合される構成であるため、
図2の白抜き矢印に示すように前耳係止体20の位置を相対移動させて、種々の幅寸法の軒樋2に対応させることができる。
【0036】
このように、後耳係止体10および前耳係止体20の本体部13、22同士が結合可能な構造であれば、
図2の2点鎖線で示すような係止突片21aを含む前耳係止部21の高さ位置の異なる前耳係止体20を取り付けてもよく、そのように組み合わせを種々変えることで、前耳2d、後耳2bの高さ関係の異なる種々の軒樋2を取り付けることができる。
【0037】
さらに、前耳2dの係止構造が
図2に示した軒樋2とは異なる軒樋に対応させた前耳係止体20を、
図2に示した後耳係止体10に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
以上に説明した軒樋吊り具1を構成する2部材は、素材をステンレス等の金属材料とすることが望ましいが、プラスチック等の合成樹脂で製したものであってもよい。なお、後耳係止体10は固定部14を前後方向に曲げ可能にするために金属で製することが望ましい。固定部14を曲げ可能とすることで、傾斜のある軒先に取り付けても本体部13を水平に保持することができる。
【0039】
また、後耳係止体10が固定部14を含んで一体化されているので、軒樋吊り具1を構成する主要部材を、後耳係止体10と前耳係止体20の2部材で構成でき、部品点数をより少なくできる。
【0040】
なお、固定部14を後耳係止体10より分離した構成とし、後耳係止体10が固定部14に対し進退自在となるようにしてもよい。そうすることで、軒先から軒樋までの距離を調整することができる。
【0041】
ついで、本発明の他の実施形態に係る軒樋吊り具について、
図3の分解斜視図および
図4の縦断面図を参照しながら説明する。
【0042】
本軒樋吊り具1に支持される軒樋2は、
図4に示すように、
図2のものとは若干形状が異なるが、前耳2dと後耳2bが係止される構造については共通している。
【0043】
軒樋吊り具1は、
図3および
図4に示すように、軒先の壁3などの建築構造物に固定されて、軒樋2を吊り支持するものであり、軒樋2の後耳2bを係止する後耳係止体10と、前耳2dを係止する前耳係止体20とを分離自在に結合、一体化してなるものである。
【0044】
後耳係止体10は、後耳係止部11と、その前方に配された、前耳係止体20と連結される本体部13と、後耳係止部11の後方に配された、後耳係止体10を軒先の壁3などの建築構造物に固定するための固定部14とを備えている。
【0045】
後耳係止部11は、上方に突出形成されており、その裏側には軒樋2の後耳2bを係止する係止片12を取り付けた凹所11dが形成されている。後耳係止部11は、本体部13より上り傾斜してなる前側壁部11bと、頂面部11aとを有した形状となっている。この頂面部11aの裏側に係止片12がリベット16で固定されている。
【0046】
後耳係止部11の前方には、平板状の本体部13が配され、本体部13には、前耳係止体20と結合するための上下に通じる長手方向に沿った長孔13aが形成されている。なお、本体部13はリブを有していないが、
図1の例と同様の垂下リブ片を有した形状であってもよい。
【0047】
また、後耳係止部11の後方には、折曲部11fを介して下方に延びる取付片11gと固定部14が形成されている。固定部14は、壁3にねじ固定するための複数の固定孔14aを有した固定片14bと、固定片14b間の凹溝部14cとよりなり、下方に延びる取付片11gが、固定部14の凹溝部14cに装着されリベット17で固定されている。
【0048】
係止片12は、ばね性を有した金属薄板を折曲加工してなり、軒樋2の後耳2bを係止する係止部12bと、軒樋2の後耳2bを後方に向けて押圧するようにして後耳2bの外れを防止する押さえ片部12cと、上端部に配されて頂面部11aに固着される固着部12aとを一体に備えている。これらに囲まれた内方空間が、軒樋2の後耳2bを収容する後耳収容空間12dを構成する。
【0049】
係止片12を構成する固着部12a、係止部12bおよび押さえ片部12cについては、
図1に示したものと比較すれば、形状としては異なるが、作用的には同様であるため、図面に同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
一方、前耳係止体20は、前耳係止部21と、その後方に配され、後耳係止体10と連結される本体部22とを備えている。
【0051】
本体部22は、後耳係止体10の本体部13と同様に平板状とされ、その幅方向の両端に垂下リブ片22bを有している。本体部22には、後耳係止体10と結合するための丸孔22aが形成されている。この本体部22は、幅方向の内寸法(垂下リブ片22b間の空間寸法)が後耳係止体10の本体部13の幅方向の外寸法とほぼ同じかやや大とされ、後耳係止体10の本体部13に被せられるようになっている。つまり、本体部22の2つの垂下リブ片22bは回り止め片を構成する。
【0052】
前耳係止部21は、後方に向けて下り傾斜した帯状体とされ、その上端にはほぼ真上に向けて突出した係止突片21aを備え、幅方向の両端にはリブ片21cが形成されている。また、前耳係止部21の下端部には後方に凹んで段部21dが形成されている。この前耳係止部21は本体部22とは別体とされ、両部材はリベット止めなどにより結合、固定されている。
【0053】
この前耳係止体20の本体部22を後耳係止体10に被せ、丸孔22aと長孔13aとの重合孔にボルト4aを通し蝶ナット4bで螺着することで前耳係止体20と後耳係止体10とを結合、固定する。そして、両部材が分離自在で、
図2の白抜き矢印の方向にスライド自在な軒樋吊り具1が形成される。
【0054】
こうして両部材が連結され、固定部14が壁3に固定された軒樋吊り具1には、
図4に示すように、軒樋2の前耳2dが前耳係止部21の係止突片21aに掛止され、後耳2bが係止片12の係止部12bに掛止されて、軒樋2が吊り支持される。また、軒樋2の前耳2dの下部には後方への凹み段部2eがあり、前耳2dが係止突片21aに係止されることで、その凹み段部2eが前耳係止部21の段部21dの裏面にあてがわれる形となる。このように軒樋2の前部で係止突片21aを上下より挟み込む形となって、下方からの押圧によっても外れにくくできる。また、前耳係止部21が軒樋2の前方壁2cの内面に沿うように配されるので、軒樋2の前方からの押圧によって軒樋2がずれたり凹んだりすることを防止できる。
【0055】
以上のように、この軒樋吊り具1は前耳係止体20と後耳係止体10とが結合、分離自在となった構成であるため、分離してコンパクトに保管、輸送でき、必要なときに組み立てればよい。
【0056】
また、本実施形態の軒樋吊り具1についても、丸孔22aと長孔13aとの重合により、前耳係止体20が後耳係止体10に対して前後方向に進退自在となるように結合される構成であるため、
図5の白抜き矢印で示すように前耳係止体20の位置を移動させて、種々の幅寸法の軒樋に対応させることができる。
【0057】
また、
図1のものと同様、前耳係止体20、後耳係止体10を種々組み合わせることで、前耳係止部21、後耳係止部11の高さ関係が異なる軒樋吊り具1を構成することができる。
【0058】
以上に説明した2種の軒樋吊り具1を構成する各2部材は、素材をステンレス等の金属材料とすることが望ましいが、プラスチック等の合成樹脂で製したものであってもよい。
【0059】
また、
図5(a)のように、
図1に示した後耳係止体10と、
図3に示した前耳係止体20とを組み合わせて軒樋吊り具1を構成し、あるいは
図5(b)のように、
図1に示した前耳係止体20と、
図3に示した後耳係止体10とを組み合わせて軒樋吊り具1を構成して、それらに合った軒樋を吊り支持できるようにしてもよい。
【0060】
ついで、本発明の他の実施形態に係る軒樋吊り具について、
図6(a)、(b)の各縦断面図を参照しながら説明する。
【0061】
この軒樋吊り具1は、
図1、
図2に示した軒樋吊り具1と比較すると、吊り支持する軒樋2(
図2参照)の形状については同一であり、構成部材である後耳係止体10および前耳係止体20の各耳係止構造についても同一であるが、後耳係止体10と前耳係止体20との結合構造が相異する。
【0062】
すなわち、後耳係止体10の本体部13と前耳係止体20の本体部22との相互に接触するそれぞれの面に凹凸13c、22cが形成されており、それらが凹凸嵌合することで、ボルト4aと蝶ナット4bによる螺着による結合を補完するようになっている。
【0063】
図6(a)、(b)には、前耳係止部21、後耳係止部11間の寸法を異ならせて前耳係止体20と後耳係止体10とが結合した状態を示したが、これらの図に示すように、前耳係止体20と後耳係止体10とは凹凸13c、22c同士が嵌合して固定されるので、横方向のずれや回転ずれを防止することができる。
【0064】
以上に示した3種の実施形態では、後耳係止体10に長孔13a、前耳係止体20に丸孔22aを設けた構成としたが、後耳係止体10に丸孔、前耳係止体20に長孔を設けた構成としてもよい。また、いずれにも丸孔を設けた構成としてもよいし、いずれにも長孔を設けた構成としてもよい。いずれにも長孔を設けた構成では、両方の長孔の内側面の向かい合う凹部間のみにボルト4aを挿通できるような凹凸を設けて、ボルト4aを通すことでずれが発生しないようにすればよい。
【0065】
また、以上に示した実施形態では、後耳係止体10と前耳係止体20との分離自在な結合をボルト4aと蝶ナット4bとの螺着により可能とした構成としたが、他の種々の分離自在とした結合手段を用いたものとしてもよい。たとえば、従来、後耳係止部と前耳係止部が一体成形されてなる吊り具本体を、建築構造物に固定される取付杆に対して進退自在に取り付けするための結合手段である、従来公知の回転ロックレバー(特許4557395号公報)を用いてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る軒樋吊り具の分解斜視図である。
図2は、
図1の軒樋吊り具の取付状態を示した縦断面図である。
【0016】
本軒樋吊り具1に支持される軒樋2には、吊り支持されるための被係止部として、軒先側(後方)の後方壁2aの上端に後耳2bが設けられ、前方壁2cの上端に前耳2dが設けられている(
図2参照)。
【0017】
軒樋吊り具1は、
図1および
図2に示すように、軒先の壁3などの建築構造物に固定されて、軒樋2を吊り支持するものであり、軒樋2の後耳2bを係止する後耳係止体10と、前耳2dを係止する前耳係止体20とを分離自在に結合、一体化してなるものである。
【0018】
後耳係止体10は、後耳係止部11と、その前方に配された、前耳係止体20と連結される本体部13と、後耳係止部11の後方に配された、後耳係止体10を軒先の壁などに固定するための固定部14とを備えている。
【0019】
後耳係止部11は、上方に突出形成されており、その裏側の凹所11dには軒樋2の後耳2bを係止する係止片12が取り付けられている。後耳係止部11は、断面視で凹所11dをはさんでハ字形に下方に開口した形状とされており、本体部13とほぼ平行な頂面部11aと、その頂面部11aの前後端より下方に延びた前側壁部11b、後側壁部11cとを有した形状となっている。この頂面部11aの裏側に係止片12がリベット16で固定されている。なお、係止片12については後述する。
【0020】
後耳係止部11の前方には、幅方向の両端部に垂下リブ片13bを有した平板状の本体部13が配され、本体部13には、前耳係止体20と結合するための上下に通じる長手方向に沿った長孔13aが形成されている。
【0021】
また、後耳係止部11の後方には、後耳係止部11の後側壁部11cの下端より下方に延びるように固定部14が配されている。固定部14は、壁3にねじ固定するための複数の固定孔14aが形成された横長の長方形状の板体よりなる。固定部14としては、後耳係止部11より下方に延びた取付片に別体の座板をリベットなどで固着した構成としてもよい。
【0022】
また、この後耳係止体10には、本体部13の後端部から後耳係止部11の頂面部11aの前端部まで1条の補強用のリブ15が形成され、後耳係止部11の後端部から固定部14の高さ方向の中央よりやや下方まで2条の補強用のリブ15が形成されている。
【0023】
係止片12は、ばね性を有した金属薄板を折曲加工してなり、軒樋2の後耳2bを係止する係止部12bと、軒樋2の後耳2bを後方に向けて押圧するようにして後耳2bの外れを防止する押さえ片部12cと、上端部に山形状に配されて頂面部11aに固着される固着部12aとを一体に備えている。これらに囲まれた内方空間が、軒樋の後耳を収容する後耳収容空間12dを構成する。
【0024】
固着部12aは、断面視でハ字形に下方に開いており、凹所11dに嵌合できる、中央にリベット挿通用の挿通孔を有した頂部12aaと、前、後傾斜部12ab、12acとを有している。
【0025】
また、係止部12bは、固着部12aの後傾斜部12acの下端より下方に延びた垂下部12baと、その垂下部12baの下端から前方に向けて折曲延設された耳掛部12bbと、耳掛部12bbの前端より下方に折曲延設された垂片部12bcとを備えている。この垂片部12bcの下端部には後方に傾斜した、後耳の挿入ガイド用のガイド部12bcaが形成されている。
【0026】
押さえ片部12cは、固着部12aの前傾斜部12abの下端より下方に延びた垂下部12caと、その垂下部12caの下端より後方に向けて折曲延設された押圧部12cbとを備えている。この押圧部12cbの先端中央には半円状の切欠き部12cbaが形成されている。なお、この切欠き部12cbaは、係止片12を頂面部11aに固着させる際のリベット16止めするための操作用の凹部である。
【0027】
耳掛部12bbと押圧部12cbの高さ位置はほぼ同じであり、それらの間には、後耳2bが抜け落ちない程度の挿入間隙が形成されている。
【0028】
この係止片12には、固着部12aの頂部12aaの後端部から後傾斜部12ac、垂下部12ba、耳掛部12bbを経由して、垂片部12bcにいたるまで2条の補強用のリブ12f、12fが形成されている。
【0029】
一方、前耳係止体20は、前耳係止部21と、その後方に配され、後耳係止体10と連結される本体部22とを備えている。
【0030】
本体部22は、後耳係止体10の本体部13と同様に平板状とされ、その幅方向の両端に垂下リブ片22bを有している。本体部22には、後耳係止体10と結合するための丸孔22aが形成されている。この本体部22は、幅方向の内寸法(垂下リブ片22b、22b間の空間寸法)が後耳係止体10の本体部13の幅方向の外寸法とほぼ同じかやや大とされ、後耳係止体10の本体部13に被せられるようになっている。つまり、本体部13の2つの垂下リブ片22b、22bは回り止め片を
構成し、相互の回転ずれを防止する。
【0031】
前耳係止部21は、本体部22の前端より斜め上方に延びるように本体部22と一体に形成されており、その先端にはほぼ真上に向けて突出した係止突片21aが形成されている。また、垂下リブ片22bも本体部22側より連成されている。
【0032】
この前耳係止体20を後耳係止体10に被せ、丸孔22aと長孔13aとの重合孔にボルト4aを通し蝶ナット4bで螺着することで前耳係止体20と後耳係止体10とが結合し、相互に固定される。こうして、両部材が分離自在で、白抜き矢印の方向に両部材がスライド自在な軒樋吊り具1が形成される。
【0033】
このように両部材が連結され、固定部14が壁3に固定された軒樋吊り具1には、
図2に示すように、軒樋2の前耳2dが前耳係止部21の係止突片21aに掛止され、後耳2bが係止片12の係止部12bに掛止されて、軒樋2は吊り支持される。また、軒樋2の前耳2dの下部には後方への凹み段部2eがあり、前耳2dが係止突片21aに係止されることで、軒樋2の前部で係止突片21aを上下より挟み込む形となって、下方からの押圧によっても外れにくくできる。
【0034】
以上のように、この軒樋吊り具1は前耳係止体20と後耳係止体10とが結合、分離自在となって構成であるため、分離してコンパクトに保管、輸送でき、必要なときに組み立てることができる。
【0035】
特に、本実施形態の軒樋吊り具1は、丸孔22aと長孔13aとの重合により、前耳係止体20が後耳係止体10に対して前後方向に進退自在となるように結合される構成であるため、
図2の白抜き矢印に示すように前耳係止体20の位置を相対移動させて、種々の幅寸法の軒樋2に対応させることができる。
【0036】
このように、後耳係止体10および前耳係止体20の本体部13、22同士が結合可能な構造であれば、
図2の2点鎖線で示すような係止突片21aを含む前耳係止部21の高さ位置の異なる前耳係止体20を取り付けてもよく、そのように組み合わせを種々変えることで、前耳2d、後耳2bの高さ関係の異なる種々の軒樋2を取り付けることができる。
【0037】
さらに、前耳2dの係止構造が
図2に示した軒樋2とは異なる軒樋に対応させた前耳係止体20を、
図2に示した後耳係止体10に取り付けるようにしてもよい。
【0038】
以上に説明した軒樋吊り具1を構成する2部材は、素材をステンレス等の金属材料とすることが望ましいが、プラスチック等の合成樹脂で製したものであってもよい。なお、後耳係止体10は固定部14を前後方向に曲げ可能にするために金属で製することが望ましい。固定部14を曲げ可能とすることで、傾斜のある軒先に取り付けても本体部13を水平に保持することができる。
【0039】
また、後耳係止体10が固定部14を含んで一体化されているので、軒樋吊り具1を構成する主要部材を、後耳係止体10と前耳係止体20の2部材で構成でき、部品点数をより少なくできる。
【0040】
なお、固定部14を後耳係止体10より分離した構成とし、後耳係止体10が固定部14に対し進退自在となるようにしてもよい。そうすることで、軒先から軒樋までの距離を調整することができる。
【0041】
ついで、本発明の他の実施形態に係る軒樋吊り具について、
図3の分解斜視図および
図4の縦断面図を参照しながら説明する。
【0042】
本軒樋吊り具1に支持される軒樋2は、
図4に示すように、
図2のものとは若干形状が異なるが、前耳2dと後耳2bが係止される構造については共通している。
【0043】
軒樋吊り具1は、
図3および
図4に示すように、軒先の壁3などの建築構造物に固定されて、軒樋2を吊り支持するものであり、軒樋2の後耳2bを係止する後耳係止体10と、前耳2dを係止する前耳係止体20とを分離自在に結合、一体化してなるものである。
【0044】
後耳係止体10は、後耳係止部11と、その前方に配された、前耳係止体20と連結される本体部13と、後耳係止部11の後方に配された、後耳係止体10を軒先の壁3などの建築構造物に固定するための固定部14とを備えている。
【0045】
後耳係止部11は、上方に突出形成されており、その裏側には軒樋2の後耳2bを係止する係止片12を取り付けた凹所11dが形成されている。後耳係止部11は、本体部13より上り傾斜してなる前側壁部11bと、頂面部11aとを有した形状となっている。この頂面部11aの裏側に係止片12がリベット16で固定されている。
【0046】
後耳係止部11の前方には、平板状の本体部13が配され、本体部13には、前耳係止体20と結合するための上下に通じる長手方向に沿った長孔13aが形成されている。なお、本体部13はリブを有していないが、
図1の例と同様の垂下リブ片を有した形状であってもよい。
【0047】
また、後耳係止部11の後方には、折曲部11fを介して下方に延びる取付片11gと固定部14が形成されている。固定部14は、壁3にねじ固定するための複数の固定孔14aを有した固定片14bと、固定片14b間の凹溝部14cとよりなり、下方に延びる取付片11gが、固定部14の凹溝部14cに装着されリベット17で固定されている。
【0048】
係止片12は、ばね性を有した金属薄板を折曲加工してなり、軒樋2の後耳2bを係止する係止部12bと、軒樋2の後耳2bを後方に向けて押圧するようにして後耳2bの外れを防止する押さえ片部12cと、上端部に配されて頂面部11aに固着される固着部12aとを一体に備えている。これらに囲まれた内方空間が、軒樋2の後耳2bを収容する後耳収容空間12dを構成する。
【0049】
係止片12を構成する固着部12a、係止部12bおよび押さえ片部12cについては、
図1に示したものと比較すれば、形状としては異なるが、作用的には同様であるため、図面に同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0050】
一方、前耳係止体20は、前耳係止部21と、その後方に配され、後耳係止体10と連結される本体部22とを備えている。
【0051】
本体部22は、後耳係止体10の本体部13と同様に平板状とされ、その幅方向の両端に垂下リブ片22bを有している。本体部22には、後耳係止体10と結合するための丸孔22aが形成されている。この本体部22は、幅方向の内寸法(垂下リブ片22b間の空間寸法)が後耳係止体10の本体部13の幅方向の外寸法とほぼ同じかやや大とされ、後耳係止体10の本体部13に被せられるようになっている。つまり、本体部22の2つの垂下リブ片22bは回り止め片を
構成し、相互の回転ずれを防止する。
【0052】
前耳係止部21は、後方に向けて下り傾斜した帯状体とされ、その上端にはほぼ真上に向けて突出した係止突片21aを備え、幅方向の両端にはリブ片21cが形成されている。また、前耳係止部21の下端部には後方に凹んで段部21dが形成されている。この前耳係止部21は本体部22とは別体とされ、両部材はリベット止めなどにより結合、固定されている。
【0053】
この前耳係止体20の本体部22を後耳係止体10に被せ、丸孔22aと長孔13aとの重合孔にボルト4aを通し蝶ナット4bで螺着することで前耳係止体20と後耳係止体10とを結合、固定する。そして、両部材が分離自在で、
図2の白抜き矢印の方向にスライド自在な軒樋吊り具1が形成される。
【0054】
こうして両部材が連結され、固定部14が壁3に固定された軒樋吊り具1には、
図4に示すように、軒樋2の前耳2dが前耳係止部21の係止突片21aに掛止され、後耳2bが係止片12の係止部12bに掛止されて、軒樋2が吊り支持される。また、軒樋2の前耳2dの下部には後方への凹み段部2eがあり、前耳2dが係止突片21aに係止されることで、その凹み段部2eが前耳係止部21の段部21dの裏面にあてがわれる形となる。このように軒樋2の前部で係止突片21aを上下より挟み込む形となって、下方からの押圧によっても外れにくくできる。また、前耳係止部21が軒樋2の前方壁2cの内面に沿うように配されるので、軒樋2の前方からの押圧によって軒樋2がずれたり凹んだりすることを防止できる。
【0055】
以上のように、この軒樋吊り具1は前耳係止体20と後耳係止体10とが結合、分離自在となった構成であるため、分離してコンパクトに保管、輸送でき、必要なときに組み立てればよい。
【0056】
また、本実施形態の軒樋吊り具1についても、丸孔22aと長孔13aとの重合により、前耳係止体20が後耳係止体10に対して前後方向に進退自在となるように結合される構成であるため、
図5の白抜き矢印で示すように前耳係止体20の位置を移動させて、種々の幅寸法の軒樋に対応させることができる。
【0057】
また、
図1のものと同様、前耳係止体20、後耳係止体10を種々組み合わせることで、前耳係止部21、後耳係止部11の高さ関係が異なる軒樋吊り具1を構成することができる。
【0058】
以上に説明した2種の軒樋吊り具1を構成する各2部材は、素材をステンレス等の金属材料とすることが望ましいが、プラスチック等の合成樹脂で製したものであってもよい。
【0059】
また、
図5(a)のように、
図1に示した後耳係止体10と、
図3に示した前耳係止体20とを組み合わせて軒樋吊り具1を構成し、あるいは
図5(b)のように、
図1に示した前耳係止体20と、
図3に示した後耳係止体10とを組み合わせて軒樋吊り具1を構成して、それらに合った軒樋を吊り支持できるようにしてもよい。
【0060】
ついで、本発明の他の実施形態に係る軒樋吊り具について、
図6(a)、(b)の各縦断面図を参照しながら説明する。
【0061】
この軒樋吊り具1は、
図1、
図2に示した軒樋吊り具1と比較すると、吊り支持する軒樋2(
図2参照)の形状については同一であり、構成部材である後耳係止体10および前耳係止体20の各耳係止構造についても同一であるが、後耳係止体10と前耳係止体20との結合構造が相異する。
【0062】
すなわち、後耳係止体10の本体部13と前耳係止体20の本体部22との相互に接触するそれぞれの面
に長手方向に連続する凹凸13c、22cが形成されており、それらが凹凸嵌合することで、ボルト4aと蝶ナット4bによる螺着による結合を補完するようになっている。
【0063】
図6(a)、(b)には、前耳係止部21、後耳係止部11間の寸法を異ならせて前耳係止体20と後耳係止体10とが結合した状態を示したが、これらの図に示すように、前耳係止体20と後耳係止体10とは凹凸13c、22c同士が嵌合して固定されるので、横方向のずれや回転ずれを防止することができる。
【0064】
以上に示した3種の実施形態では、後耳係止体10に長孔13a、前耳係止体20に丸孔22aを設けた構成としたが、後耳係止体10に丸孔、前耳係止体20に長孔を設けた構成としてもよい。また、いずれにも丸孔を設けた構成としてもよいし、いずれにも長孔を設けた構成としてもよい。いずれにも長孔を設けた構成では、両方の長孔の内側面の向かい合う凹部間のみにボルト4aを挿通できるような凹凸を設けて、ボルト4aを通すことでずれが発生しないようにすればよい。
【0065】
また、以上に示した実施形態では、後耳係止体10と前耳係止体20との分離自在な結合をボルト4aと蝶ナット4bとの螺着により可能とした構成としたが、他の種々の分離自在とした結合手段を用いたものとしてもよい。たとえば、従来、後耳係止部と前耳係止部が一体成形されてなる吊り具本体を、建築構造物に固定される取付杆に対して進退自在に取り付けするための結合手段である、従来公知の回転ロックレバー(特許4557395号公報)を用いてもよい。