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特開2015-103357電気コネクタ、および、回路基板の嵌合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-103357(P2015-103357A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】電気コネクタ、および、回路基板の嵌合方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20150508BHJP
【FI】
   H01R12/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-242307(P2013-242307)
(22)【出願日】2013年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 誠司
【テーマコード(参考)】
5E123
【Fターム(参考)】
5E123AA21
5E123AB20
5E123AB34
5E123AC23
5E123BA07
5E123BB12
5E123CB31
5E123CB38
5E123CB44
5E123CD01
5E123CD05
5E123DA02
5E123DB09
5E123DB23
5E123EA02
5E123EC29
(57)【要約】
【課題】 簡略化されたコネクタ構造を有し、回路基板を挿入または抜きぬく際に、端子から回路基板に加わる荷重を低減できる電気コネクタを提供する。
【解決手段】 本発明のコネクタ1は、回路基板50が挿入される挿入室20が形成されるハウジング10と、ハウジング10に保持され、挿入される回路基板50のおもて面50aおよびうら面50bに電気的に接続される接点部31a,31bを各々が備える一対の端子30a,30bが所定方向に複数配列される端子群と、一対の端子30a,30b間に挿入された状態で操作されることにより、一対の端子30a,30bの接点部31a,31b同士の間隔Gを拡げる第1治具40と、を備え、第1治具40は、ハウジング10に形成された第1窓を介して挿抜可能であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板が挿入される挿入室が形成されるハウジングと、
前記ハウジングに保持され、挿入される前記回路基板のおもて面およびうら面に電気的に接続される接点部を各々が備える一対の端子が所定方向に複数配列される端子群と、
一対の前記端子間に挿入された状態で操作されることにより、一対の前記端子の前記接点部同士の間隔を拡げる開閉体と、を備え、
前記開閉体は、前記ハウジングに形成された第1窓を介して挿抜可能である、
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記開閉体は、挿入された位置から前記接点部に向けて直線的に移動する、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、
前記開閉体を前記移動の向きに押す押動体を挿抜する第2窓を備える、
請求項2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、
拡げられた前記間隔に、前記回路基板を導くガイドを備える、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気コネクタへの前記回路基板を嵌合する方法であって、
前記第1窓を介して、前記開閉体を一対の前記端子間に挿入するステップ(a)と、
前記開閉体を操作することで、前記接点部同士の間隔を拡げるステップ(b)と、
拡げられた前記接点部の間に。前記回路基板を挿入するステップ(c)と、
前記回路基板を挿入した後に、前記第1窓を介して、前記開閉体を前記ハウジングの外部に抜き取るステップ(d)と、
前記回路基板を嵌合完了の位置まで移動するステップ(e)と、を備える、
ことを特徴とする回路基板の嵌合方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の前記端子の全てに対して前記開閉体を挿入し、
前記ステップ(b)において、全ての前記接点部の間隔を同時に拡げ、
前記ステップ(c)において、拡げられた全ての前記接点部の間に、前記回路基板を挿入する、
請求項5に記載の回路基板の嵌合方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の前記端子の一部に対して前記開閉体を挿入し、
前記ステップ(b)において、一部の前記接点部の間隔を同時に拡げ、
前記ステップ(c)において、拡げられた一部の前記接点部の間に、前記回路基板を挿入する、
請求項5に記載の回路基板の嵌合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、典型的にはカードエッジコネクタに適用される電気コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カードエッジコネクタは、自動車の電子部品を接続するために使用されている。カードエッジコネクタは、回路基板そのものがオス端子の役割を担い、その回路基板の端部をカードエッジコネクタに挿入することにより、回路基板の端部表面に設けられた複数の電極と、カードエッジコネクタ側の端子の接点部とが接触して電気的な導通が図られる。
カードエッジコネクタでは、端子のばね力により、接点部が電極に安定的に接触するようになっている。そのため、回路基板をカードエッジコネクタに挿入する際や引き抜く際に、回路基板のエッジや電極形成面に端子の接点部が接触し、端子表面のメッキ層が剥がれるなど端子が損傷したり、変形したりするおそれがあり、電気的な接続信頼性が低下する恐れがある。
【0003】
これらの課題に対して、特許文献1は、電気的な接続信頼性を向上できるカードエッジコネクタを提案している。特許文献1のカードエッジコネクタは、回路基板の挿入又は引き抜きにともなって回動部材を動作させることで、端子の接点部を回路基板から遠ざけるので、従来に比べて、挿入の際に端子から回路基板に加わる荷重を低減でき、端子の接点部の損傷や変形を抑制することができる。その結果として、特許文献1は電気的な接続信頼性を向上できるとしている。なお、回動は、正逆の両方向に回転されることを意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−64532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカードエッジコネクタは、回動部材をコネクタの内部に備えつけられているため、回路基板を挿入または引き抜いた状態で、回動部材はコネクタの内部に残る。
そのため、特許文献1のカードエッジコネクタを自動車の電子部品として使用した場合、以下の課題が挙げられる。
カードエッジコネクタは、自動車の至るところに使用されるため、一つ一つの回動部材の重量は大きくないが、多数設けられるとその分の重量が加算される。そうすると、自動車の燃費が悪くなるため、できるだけ軽量化されたカードエッジコネクタが望まれる。
また、カードエッジコネクタの内部に回動部材を設けると、その分のスペースを必要とするため、小型化の妨げとなるし、製作の観点からも複雑な構造設計を要する場合がある。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、簡略化された構造を有し、回路基板を挿抜する際に、端子から回路基板に加わる嵌合の荷重を低減できる電気コネクタを提供することを目的とする。
また、本発明はそのような電気コネクタに回路基板を挿入する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の電気コネクタは、回路基板が挿入される挿入室が形成されるハウジングと、ハウジングに保持され、挿入される回路基板のおもて面およびうら面に電気的に接続される接点部を各々が備える一対の端子が所定方向に複数配列される端子群と、一対の端子間に挿入された状態で操作されることにより、一対の端子の接点部同士の間隔を拡げる開閉体と、を備え、開閉体は、ハウジングに形成された第1窓を介して挿抜可能であることを特徴とする。
第1窓を設けることにより、端子の接点部同士の間隔を拡げる開閉体を挿抜できるため、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままのコネクタと比べると、軽量化できる。
また、第1窓を設けるだけで、開閉体の挿抜を可能とするため、既存のコネクタに適用する場合でも設計変更を最小限に抑えることができる。したがって、本発明のコネクタは簡略化した構造を有する。
【0007】
本発明の電気コネクタの開閉体は、挿入された位置から接点部に向けて直線的に移動することが好ましい。
開閉体を直線的に移動させることで、開閉体の回転により端子を開閉させる場合と比べ、操作性がよい。
【0008】
本発明の開閉体が直線的に移動する電気コネクタのハウジングは、開閉体を移動の向きに押す押動体を挿抜する第2窓を備えることが好ましい。
第2窓を介して押動体を挿入することができ、押動体を用いて開閉体を移動の向きに力を加えることができる。
【0009】
本発明の電気コネクタのハウジングは、拡げられた間隔に、回路基板を導くガイドを備えることが好ましい。
回路基板をガイドに沿って、挿入することにより、端子の接点部と接することなく挿入できる。そのため、回路基板は、端子から荷重を受けることなく挿入できる。
【0010】
本発明の回路基板の嵌合方法は、上記の電気コネクタへの回路基板を嵌合する方法であって、第1窓を介して、開閉体を一対の端子間に挿入するステップ(a)と、開閉体を操作することで、接点部同士の間隔を拡げるステップ(b)と、拡げられた接点部の間に、回路基板を挿入するステップ(c)と、回路基板を挿入した後に、第1窓を介して、開閉体をハウジングの外部に抜き取るステップ(d)と、回路基板を嵌合完了の位置まで移動するステップ(e)と、を備えることを特徴とする。
回路基板を端子に嵌合させる場合、挿入初期が最も大きな力を要する。本発明はハウジングに第1窓を設け、第1窓から開閉体を挿入し、端子間に挿入された状態で開閉体により接点部を開いておくので、挿入初期において、回路基板を端子の接点部と干渉せずに挿入できる。挿入初期に、端子の接点部に回路基板が突き当たらないので、接点部の特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制できる。また、回路基板は端子から荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
【0011】
本発明の回路基板の嵌合方法は、ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の端子の全てに対して開閉体を挿入し、ステップ(b)において、全ての接点部の間隔を同時に拡げ、ステップ(c)において、拡げられた全ての接点部の間に、回路基板を挿入することができる。
開閉体を挿入し、移動させることで、全ての接点部の間隔を同時に拡げるため、一度の操作で接点部の間隔を拡げることができる。
【0012】
本発明の回路基板の嵌合方法は、ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の端子の一部に対して前記開閉体を挿入し、ステップ(b)において、一部の接点部の間隔を同時に拡げ、ステップ(c)において、拡げられた一部の接点部の間に、回路基板を挿入することもできる。
端子の極数が多いコネクタの場合、一部の接点部の間隔を同時に拡げることにより、開閉体に作用する力を小さくすることができる。そうすると、大きな力を要しなくても、端子接点部の間隔を拡げることができるため、作業性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端子の接点部の間隔を拡げる開閉体を自在に挿抜できる第1窓を、コネクタのハウジングに設けるため、構造が簡略化されたコネクタにおいて、端子から回路基板に加わる荷重を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態におけるカードエッジコネクタを示す斜視図である。
図2】本実施の形態におけるカードエッジコネクタを示す上面図である。
図3】(a)はカードエッジコネクタの正面図、(b)IIIb−IIIb断面図である。
図4】回路基板の嵌合ステップを示すコネクタの断面図である。
図5】回路基板の嵌合ステップを示すコネクタの断面図である。
図6】第1の方法における治具の動作を示す図である
図7】第2の方法における治具の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
初めに、図1図3を参照して、本実施形態に係るカードエッジコネクタ1を説明する。
カードエッジコネクタ1(以下、単にコネクタ1と呼ぶ)は、図1に示すように、複数の端子30と、相手コネクタと相互に嵌合され、端子30を保持するハウジング10と、を備えている。
【0016】
[ハウジング10]
絶縁性樹脂を射出成形することにより成形されるハウジング10は、複数の端子30を保持する保持壁12と、保持壁12を境にして設けられる前方フード13と後方フード15とを備えている。
前方フード13は、その内側に回路基板50を受け入れる第1挿入室20a,第2挿入室20bが形成されている。なお、2つの第1挿入室20aと第2挿入室20bを総称するときは単に挿入室20という。
また、後方フード15は、幅方向に2つ並んでおり、2つが一体となって相手側コネクタ(図示しない)の嵌合部分を受容室16に受け入れて嵌合される(図2参照)。
なお、コネクタ1において、図1のx方向、y方向及びz方向を、各々、幅方向、前後方向、高さ方向と定義する。また、y方向については回路基板50が挿入される側を前、その逆側を後と定義し、z方向については図面の上・下に従う。
【0017】
[挿入室20]
挿入室20は、図3に示すように、側壁21a、側壁21b、上壁22、下壁23および奥壁17により区画されており、また、仕切壁18により第1挿入室20aと第2挿入室20bにより仕切られている。
側壁21a,21bには、それぞれ案内溝(ガイド)29a,29bが前後方向に形成されている。案内溝29a,29bは、それらの幅方向の中心と、挿入孔24,25の中心が一致するように形成され、それぞれ挿入孔24、25に連通している。回路基板50は、案内溝29a,29bと後述する案内溝(ガイド)18a,18bを介して、第1挿入室20aおよび第2挿入室20bの内部に、それぞれ挿入される。
奥壁17には、受容室16と挿入室20を貫通し、端子30が保持される保持孔19が複数形成されている。
【0018】
側壁21a,側壁21b及び仕切壁18には、それぞれを貫通し、後述する第1治具(開閉体)40が抜き差しされる挿入孔24,25,26が形成されている。挿入孔24,25,26は、寸法及び形状が一致するとともに、側壁21a,側壁21b及び仕切壁18の同じ位置(x方向、y方向及びz方向について)に形成されている。
挿入孔24は、挿入された第1治具40が前後方向に進退可能な寸法に形成されており、後方に位置する始点24aと、前方に位置する終点24bを備えている。なお、挿入孔25,26にも、挿入孔24と同じ位置に始点25a,26aと終点25b,26bを備えている。
挿入孔24,25,26は、始点24a,25aに第1治具40を突き当てて挿入すれば、第1治具40が端子30と干渉しないように、形成されている。
始点24a,25aの側で挿入した第1治具40を終点24b,25bに向けて直線的に移動(前進)させると、第1治具40は一対の端子30a,30bの間に押し込まれ、それ以前には接していた両方の接点部31a,31bは離れる。
仕切壁18の側面には、挿入孔26に連通する案内溝18a,18bが形成されている。案内溝18a,18bの幅方向の中心は、挿入孔26の中心と一致するように形成されている。
【0019】
次に、上壁22には、表裏を貫通し、挿入室20と前方フード13を連通する挿入孔27が形成されている。挿入孔27は、仕切壁18を挟んだ両側にそれぞれ1つずつ形成されている。なお、第1挿入室20a側に形成されている方を挿入孔27a、第2挿入室20b側に形成されている方を挿入孔27bとする。
また、下壁23にも同様に挿入孔28(28a,28b)が、挿入孔27a,27bに対向する位置に形成されている。
挿入孔27,28は、後述する第2治具45が前後方向に進退できる寸法に形成されている。また、挿入孔27,28は、図3(b)に示すように、挿入孔24〜26の前後方向の長さより、後方に第2治具45が挿入される分だけ長く形成されている(図3(b))。
【0020】
[端子30]
端子30は、回路基板50のおもて面50a側とうら面50b側に配置される端子30a,30bの対からなり、各々の接点部31a,31bで回路基板50のおもて面50aとうら面50bを挟み込むことで、回路基板50の導電パターン(図示を省略)と電気的に接続される。接点部31a,31b同士は、回路基板50が未挿入の状態で、接触している。
挿入室20に配置されている端子30a,30bの部分は、先端に向けて幅が狭くなるように形成されている。なお、端子30a,30bは、導電性及び弾性が優れる金属材料、例えば銅合金により形成される。
それぞれの端子30a,30bは、保持孔19に圧入されることで、保持壁12を介してハウジング10に保持される。また、端子30a,30bは、前端側が挿入室20の内部に配置され、回路基板50との接続に供される一方、後端側は受容室16に配置され、相手側コネクタとの接続に供される。
【0021】
複数の端子30(端子30a,30bの対)は、幅方向に配列されている。極数を増やすために、隣接する端子30同士を幅方向に半ピッチだけずらすとともに、上下方向に位置をずらして2段に設けている。なお、この配列による回路基板50の挟持を実現するために、端子30a,30bの形状を異ならせるとともに、隣接する端子30は、回路基板50を境にして、端子30a,30bの配置が反転されている。
端子30a,30bは、それぞれ、保持壁12に保持される平坦な間隔の広い部分から、接点部31a,31bに向けて間隔が狭くなる傾斜面32a,32bを備えている。詳しくは後述するが、第1治具40が前方に移動しながら傾斜面32a,32bに突き当たることで、接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができる。なお、この間隔Gが設けられた状態を「開」、接点部31a,31bが接触する状態を「閉」とする。
【0022】
上記のように配列されている一対の端子30a,30bの間には、接点部31a,31bを除いて空間が形成されており、かつ、この空間は挿入孔24,25,26と幅方向に連なっている。本実施形態は、もともと設けられているこの空間に第1治具40を挿入するとともに、前後方向に移動させて、端子30の開閉を行う。そのため、新たにスペースを確保しなくても、第1治具40を挿入できる。
【0023】
[第1治具(開閉体)40]
第1治具40は、端子30a,30bの接点部31a,31bを開閉するために、挿入孔24,25,26に挿入して使用される。
第1治具40は、横断面が矩形の棒状の部材であり、第1治具40は、接点部31a,31bに間隔が開いた状態(以下、開状態)で、接点部31間に形成される隙間の間隔Gが回路基板50の厚さTよりも大きくなるよう設定する。
また、第1治具40の一つの側面には、軸方向に連なる支持溝41が形成されている。支持溝41は、挿入される回路基板50の端部52を受け入れる。そのため、支持溝41の幅は、回路基板50の厚さTよりも広く設定されている。
第1治具40は、長さがハウジング10の幅よりも長く設定されている。ただし、後述する第1の方法ではこの全長が使用されるが、第2の方法では部分的に使用される。
第1治具40は、金属からなることが好ましいが、端子30a,30bを開閉できる強度を有した部材であれば構わない。
なお、第1治具40は、接点部31a,31bの間に、回路基板50が通過できる隙間を形成できればよいため、支持溝41が設けられていなくても構わない。
【0024】
[回路基板50の嵌合方法]
次に、第1治具40を用いて端子30a,30bの間に回路基板50を嵌合させる方法を説明する。
第1治具40を用いてコネクタ1に回路基板50を挿入する際に、全ての端子30a,30bを同時に開閉させる方法(第1の方法)と、挿入室20a,20b毎に端子30a,30bを開閉させる方法(第2の方法)の2通りの嵌合方法がある。以下、それぞれの方法について順に説明する。
【0025】
[第1の方法]
まず、全ての端子30a,30bを同時に開閉させ回路基板50を嵌合させる方法について、図4図6を参照して、説明する。
図6(a)に示すように、第1治具40がハウジング10を幅方向に貫通するように、第1治具40を挿入孔24から挿入孔25まで挿入する。この際、第1治具40は、図4(b)に示すように、支持溝41が前方に向くように挿入する。
第1治具40は、挿入孔24〜26の始点24a〜26aに接するように挿入される。この初期状態から、図6(b)に示すように、ハウジング10の外側から、第1治具40の両端に、前方に向けて力を加え、第1治具40を終点24bに向けて直線的に移動させる。そうすると、図4(c)に示すように、第1治具40は、前方に移動しながら傾斜面32a,32bに突き当ることで、接点部31a,31b同士は離れ、その間隔Gは次第に拡げられる。
第1治具40を挿入孔24の終点24b付近まで移動させると、間隔Gは、回路基板50の厚さTよりも大きくなる。
【0026】
第1治具40を終点24b付近で維持したままで、回路基板50を前方から挿入する。回路基板50は、図5(a)に示すように、端部52が支持溝41に嵌るように挿入する。間隔Gは回路基板50の厚さTより大きい。しかも、回路基板50は、案内溝18a,18bに案内されるので、間隔Gの中央を移動し、接点部31a,31bと接することなく挿入される。したがって、回路基板50は、端子30a,30bから荷重をほとんど受けることなく挿入される。
回路基板50の端部52が支持溝41に嵌ったら、第1治具40のみを始点24aに向けて移動させ、初期状態に復帰させる。こうして第1治具40が傾斜面32a,32bの間から抜け出ると、端子30a,30bは弾性復帰し、図5(b)に示すように、接点部31a,31bは回路基板50をおもて面50aとうら面50bから挟み込む。なお、開閉作業が済んだ第1治具40は、幅方向に引っ張り、ハウジング10の外部に抜き取る。
その後、回路基板50を奥壁17に突き当るまで、つまり嵌合完了の位置まで押しこむとで、端子30a,30bは回路基板50と電気的に接続される(図5(c))。この過程で、接点部31a,31bは、回路基板50と摺動する。
【0027】
[効果]
以下、第1の方法における効果を説明する。
回路基板50を端子30a,30bに嵌合させる場合、端子30a,30bの先端に挿入するとき(挿入初期)が最も大きな力を要する。第1の方法は、第1治具40を用いて接点部31a,31bを開いておくので、回路基板50は、端子30a,30bと干渉せずに所定位置まで挿入できる。そのため、最も大きな力を要する挿入初期に、端子30a,30bに回路基板50が突き当たらないので、端子30の接点部31a,31bの特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制でき、電気的な接続信頼性を向上させることができる。また、回路基板50は端子30a,30bから荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
また、回路基板50は、第1挿入室20aは案内溝18a,29aを介して、第2挿入室20bは案内溝18b,29bを介して、接点部31a,31bの間に挿入されるため、回路基板50は接点部31a,31bに接することなく挿入される。そのため、端子30の損傷や変形が生じるのを回避できる。
【0028】
本実施形態で使用した第1治具40は、開閉作業が済んだら、ハウジング10の外部に引き抜かれる。したがって、本実施形態に係るコネクタ1は、第1治具40の分だけ、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままにする特許文献1のコネクタに比べて、軽量化できる。
また、第1治具40が残らないので、エンジンの振動や自動車の走行に基づいて、第1治具40が異音の振動源になることはない。
さらに、本実施形態に係るコネクタ1は、第1挿入室20aおよび第2挿入室20bの側壁21a,21bに挿入孔24,25を形成するだけで、上記の効果を享受できるため、既存のコネクタに適用する場合でも設計変更を最小限に抑えることができる。
さらに、第1の方法は、全ての接点部31a,31bの間隔Gを同時に拡げるため、一度の操作で接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができる。
【0029】
[第2の方法]
第2の方法は、挿入室20ごとに端子30a,30bの間隔を拡げ、回路基板を嵌合する。
第1治具40を挿入孔24又は挿入孔25から挿入する長さが異なる点、および第1治具40を前後に直線的に移動させる際に挿入孔27,28を介して第2治具45を使用する点で、第1の方法と相違する。以下、第1の方法との相違点を中心に、第1挿入室20a、第2挿入室20bの順に第2の方法を適用した例を説明する。
【0030】
第2治具45は、棒状の部材であり、ハウジング10を高さ方向に貫通できる長さに設定されている。
第1治具40は、図7(a)に示すように、挿入孔24から挿入孔26まで挿入される。
そして、ハウジング10を高さ方向に貫通するように第2治具45を挿入孔27bから挿入孔28bまで挿入する。第2治具45は、後方から第1治具40に押し当てる(図4(b)点線)。
この状態で、ハウジング10の外側から、第2治具45の両端に、前方に向けて力を加えるとともに、ハウジング10の外側に突出している第1治具40に力を加え、第1治具40を終点24bに向けて直線的に移動させる(図7(a))。そうすると、接点部31a,31b同士は離れ、その間隔Gは拡げられ、第1治具40が終点24b付近まで達すると、間隔Gは、回路基板50の厚さTよりも大きくなる(図4(c)点線)。
第1治具40を維持した状態で、回路基板50の端部52が支持溝41に嵌るまで、回路基板50を前方から挿入する(図5(a)点線)。そして、第2治具45を高さ方向に引っ張り、ハウジング10の外部に抜き取った後、第1治具40のみを始点24aに向けて移動させ、初期状態に復帰させる。そうすると、接点部31a,31bは回路基板50をおもて面50aとうら面50bから挟み込む。第1治具40をハウジング10の外部に抜き取った後、回路基板50を奥壁17に突き当たるまで押しこむと、端子30a,30bは回路基板50と電気的に接続される。
【0031】
次に、第2挿入室20bの端子30a,30bに回路基板50を嵌合させる。第1治具40を挿入孔25から挿入孔26まで挿入する。それから、ハウジング10を高さ方向に貫通するように第2治具45を挿入孔27bから挿入孔28bまで挿入する。そして、第1挿入室20aにおいて嵌合させた手順と同様に行うことで、回路基板50を嵌合させる。
第2治具45は、後方から第1治具40に押し当て、図7(b)に示すように、ハウジング10の外側から、第2治具45の両端に、前方に向けて力を加えるとともに、第1治具40に力を加え、第1治具40を終点24bに向けて移動させる(図7(b))。そうすると、接点部31a,31b同士の間隔Gは拡げられ、回路基板50の厚さTよりも大きくなる。回路基板50を前方から挿入し、第2治具45をハウジング10の外部に抜き取った後、第2治具45で第1治具40のみを始点24aに向けて移動させる。第1治具40をハウジング10の外部に抜き取った後、回路基板50を奥壁17に突き当たるまで押しこむと、端子30a,30bは回路基板50と電気的に接続される。
【0032】
[効果]
第2の方法は、挿入室20ごとに端子30a,30bを開閉できる。端子30の極数が多いコネクタに第1の方法により、接点部31a,31bを開閉させると、端子30から第1治具40に作用する力が大きくなり、第1治具40を移動させるために大きな力を要する。そうすると、作業性が低下するおそれがある。
一方、第2の方法で、挿入室20ごとに、第1治具40で端子30a,30bを開閉させれば、全端子30を同時に開閉させる場合に比べ、第1治具40に作用する力を小さくすることができる。そうすると、大きな力を要しなくても、端子30a,30bの開閉をできるため、作業性の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係るコネクタ1は、挿入孔24,25を形成するのに加え、上壁22と下壁23に挿入孔27,28を形成するだけで済むため、既存のコネクタに適用する場合でも設計変更を最小限に抑えることができる。
また、第1治具40および第2治具45は、開閉作業が済んだら、ハウジング10の外部に引き抜かれるため、第1治具40および第2治具45の分だけ、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままにする特許文献1のコネクタに比べて、軽量化できる。
さらに、第1治具40および第2治具45が残らないので、エンジンの振動や自動車の走行に基づいて、第1治具40が異音の振動源になることはない。
【0033】
また、第2の方法は、第1の方法で得られる、以下の効果を享受できる。
回路基板50は、端子30a,30bと干渉せずに所定位置まで挿入できるため、端子30の接点部31a,31bの特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制でき、電気的な接続信頼性を向上させることができる。
また、回路基板50は端子30a,30bから荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
【0034】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明において、第1治具40は接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができればよい。そのため、第1治具40は、横断面形状が楕円形の部材を用いて、長径方向を前後方向と平行な状態で傾斜面32a,32bまで移動させてから90度回転させることで、傾斜面32a,32bに突き当て、接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができる。
ただし、第1治具40を直線的に移動させて、接点部31a,31bの開状態を維持する方が、第1治具40を回転させて開状態を維持する場合に比べて、操作に手間がかからない。また、第2の方法において、第2治具45を回転させるとなると、第2治具45(棒状の部材)にさらに第1治具40を回転させる機構を設けなければいけなくなる。したがって、本実施形態で述べた第1治具40を直線的に移動させる場合の方が、第1治具40の回転により端子を開閉させる場合と比べ、操作性がよい。
また、第1治具40は、傾斜面32a,32bを案内しやすくするために、第1治具40の傾斜面32a,32bと接する面をテーパ面とすることもできる。
さらに、第1治具40および第2治具45は、棒状の部材であればよく、専用の部材を別途用意しなくても、一般作業工程で使用される棒状の工具で代用することができる。
【0035】
本発明の端子30a,30bは傾斜面32a,32bが形成していなくても、第1治具40で接点部31a,31bが開閉される形状であればよい。
また、隣接する端子30同士の配列は、本実施形態で述べた配列に限定されず、端子30同士が一列に配列されているコネクタでも本発明の効果を享受できる。
また、接点部31a,31b同士が接している端子30a,30bを備えるコネクタ1について説明したが、接点部31a,31b同士が接していない端子30a,30bにも適用できる。接点部31a,31b間に形成される間隔Gは、回路基板50の厚さTより大きくなくてもよい。接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができれば、端子30a,30bから回路基板50に加わる荷重を低減できるためである。
【0036】
本実施形態では、接点部31a,31bを開閉させる、2つの方法をそれぞれ説明したが、第1の方法においても、第2治具45を使用して、回路基板50を挿入してもよい。この場合、第2治具45によっても第1治具40に力を加えることができるため、第1治具40に加える力を分散させることができる。
なお、第2の方法において、第2治具45によって第1治具40を前後方向に移動させる力を加えることができれば、第2治具45の両端から力を加えなくてもよい。そのため、その場合、挿入孔27,28はいずれか一方に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0037】
1 カードエッジコネクタ(コネクタ)
10 ハウジング
12 保持壁
13 前方フード
15 後方フード
16 受容室
17 奥壁
18 仕切壁
18a,18b 案内溝(ガイド)
19 保持孔
20 挿入室
20a,20b 挿入室
21a,21b 側壁
22 上壁
23 下壁
24,25 挿入孔(第1窓)
24a,25a 始点
24b,25b 終点
27,28 挿入孔(第2窓)
27a,27b 挿入孔
28a,28b 挿入孔
29a,29b 案内溝(ガイド)
30 端子
30a,30b 端子
31 接点部
31a,31b 接点部
32a,32b 傾斜面
40 第1治具(開閉体)
41 支持溝
45 第2治具(押動体)
50 回路基板
50a おもて面
50b うら面
52 端部
G 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7