【解決手段】 本発明のコネクタ1は、回路基板50が挿入される挿入室20が形成されるハウジング10と、ハウジング10に保持され、挿入される回路基板50のおもて面50aおよびうら面50bに電気的に接続される接点部31a,31bを各々が備える一対の端子30a,30bが所定方向に複数配列される端子群と、を備え、一対の端子30a,30bの間の挟持位置において挟持されることで、接点部31a,31b同士の間隔Gを拡げる開閉体40と、を備え、開閉体40は、ハウジング10に形成された挿入孔27,28を介して挿抜可能であることを特徴とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のカードエッジコネクタは、回動部材をコネクタの内部に備えつけられているため、回路基板を挿入または引き抜いた状態で、回動部材はコネクタの内部に残る。
そのため、特許文献1のカードエッジコネクタを自動車の電子部品として使用した場合、以下の課題が挙げられる。
カードエッジコネクタは、自動車の至るところに使用されるため、一つ一つの回動部材の重量は大きくないが、多数設けられるとその分の重量が加算される。そうすると、自動車の燃費が悪くなるため、できるだけ軽量化されたカードエッジコネクタが望まれる。
また、カードエッジコネクタの内部に回動部材を設けると、その分のスペースを必要とするため、小型化の妨げとなるし、製作の観点からも複雑な構造設計を要する場合がある。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、簡略化された構造を有し、回路基板を挿抜する際に、端子から回路基板に加わる嵌合の荷重を低減できる電気コネクタを提供することを目的とする。
また、本発明はそのような電気コネクタに回路基板を挿入する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の電気コネクタは、回路基板が挿入される挿入室が形成されるハウジングと、ハウジングに保持され、挿入される回路基板のおもて面およびうら面に電気的に接続される接点部を各々が備える一対の端子が所定方向に複数配列される端子群と、を備え、一対の端子の間の挟持位置において挟持されることで、接点部同士の間隔を拡げる開閉体と、を備え、開閉体は、ハウジングに形成された第1窓を介して挿抜可能であることを特徴とする。
第1窓を設けることにより、端子の接点部同士の間隔を拡げる開閉体を挿抜できるため、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままのコネクタと比べると、軽量化できる。
また、第1窓を設けるだけで、開閉体の挿抜を可能とするため、既存のコネクタに適用する場合でも設計変更を最小限に抑えることができる。そのため、本発明のコネクタは簡略化した構造を有する。
【0007】
本発明の電気コネクタの開閉体は、挿入される回路基板により押されることで、一対の端子における挟持位置から抜け出すことが好ましい。
回路基板により押されることで、開閉体が挟持位置から抜け出させることで、開閉体を挟持位置から移動させる作業を、回路基板の挿入と同時に行うことができる。
【0008】
本発明の電気コネクタのハウジングは、拡げられた間隔に、回路基板を導くガイドを備えることが好ましい。
ガイドに沿って、回路基板を挿入することにより、回路基板を端子の接点部と接することなく挿入できる。そのため、回路基板は、端子から荷重を受けることなく挿入できる。
【0009】
また、本発明の回路基板の嵌合方法は、上記いずれかの電気コネクタに回路基板を嵌合する方法であって、第1窓を介して、開閉体を一対の端子間に挿入するステップ(a)と、開閉体を挟持位置に移動させることで、接点部同士の間隔を拡げるステップ(b)と、拡げられた接点部の間に、回路基板を挿入するステップ(c)と、回路基板を挿入した後に、第1窓を介して、開閉体をハウジングの外部に抜き取るステップ(d)と、回路基板を嵌合完了の位置まで移動するステップ(e)と、を備えることを特徴とする。
回路基板を端子に嵌合させる場合、挿入初期が最も大きな力を要する。本発明はハウジングに第1窓を介して開閉体を挿入し、開閉体を挟持位置まで移動させ、挟持させた状態で接点部を開いておくので、挿入初期において、回路基板を端子の接点部と干渉せずに挿入できる。そのため、挿入初期に、端子の接点部に回路基板が突き当たらないので、接点部の特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制できる。また、回路基板は端子から荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
また、開閉体を挟持させた状態で接点を開いておくことができるため、開閉体に力を加え続けなくとも、回路基板を挿入することができる。
【0010】
本発明の回路基板の嵌合方法は、ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の端子の全てに対して開閉体を挿入し、ステップ(b)において、全ての接点部の間隔を同時に拡げ、ステップ(c)において、拡げられた全ての接点部の間に、回路基板を挿入することが好ましい。
開閉体により、全ての接点部の間隔を同時に拡げるため、一度の操作で接点部の間隔を拡げることができる。
【0011】
また、本発明の回路基板の嵌合方法は、ステップ(a)において、所定方向に配列される一対の端子の一部に対して開閉体を挿入し、ステップ(b)において、一部の接点部の間隔を同時に拡げ、ステップ(c)において、拡げられた一部の接点部の間に、回路基板を挿入することが好ましい。
端子の極数が多いコネクタの場合、一部の接点部の間隔を同時に拡げることにより、開閉体に作用する力を小さくすることができる。そうすると、大きな力を要しなくても、端子接点部の間隔を拡げることができるため、作業性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子の接点部の間隔を拡げる開閉体を自在に挿抜できる第1窓を、コネクタのハウジングに設けるため、構造が簡略化されたコネクタにおいて、端子から回路基板に加わる荷重を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
初めに、
図1〜
図3を参照して、本実施形態のカードエッジコネクタ1を説明する。
カードエッジコネクタ1(以下、単にコネクタ1と呼ぶ)は、
図1に示すように、複数の端子30と、相手コネクタと相互に嵌合され、端子30を保持するハウジング10と、を備えている。
【0015】
[ハウジング10]
絶縁性樹脂を射出成形することで成形されるハウジング10は、複数の端子30を保持する保持壁12と、保持壁12を境にして設けられる前方フード13と後方フード15とを備えている。
前方フード13は、その内側に回路基板50を受け入れる第1挿入室20a,第2挿入室20bが形成されている。なお、2つの第1挿入室20aと第2挿入室20bを総称するときは単に挿入室20という。
また、後方フード15は、幅方向に2つ並んでおり、2つが一体となって相手側コネクタ(図示しない)の嵌合部分を受容室16に受け入れて嵌合される。
なお、コネクタ1において、
図1のx方向、y方向及びz方向を、各々、幅方向、前後方向、高さ方向と定義する。また、y方向については回路基板50が挿入される側を前、その逆側を後と定義し、z方向については図面の上・下に従う。
【0016】
[挿入室20]
挿入室20は、
図3に示すように、側壁21a、側壁21b、上壁22、下壁23および奥壁17により区画されており、また、仕切壁18により第1挿入室20aと第2挿入室20bにより仕切られている。
側壁21a,21bには、それぞれ案内溝29a,29bが前後方向に形成されている。案内溝29a,29bは、それらの幅方向の中心と、挿入孔24,25の中心が一致するように形成され、それぞれ挿入孔24、25に連通している。回路基板50は、案内溝29a,29bと後述する案内溝18a,18bを介して、第1挿入室20aおよび第2挿入室20bの内部に、それぞれ挿入される。
奥壁17には、受容室16と挿入室20を貫通し、端子30が保持される保持孔19が複数形成されている。
また、奥壁17には、板状の位置決め部材17aが幅方向に形成されている。位置決め部材17aは、回路基板50が嵌合される高さに、奥壁17から前方に突出するように形成されている。また、位置決め部材17aは、後述する第2治具45と干渉しない幅で形成されている。
回路基板50を位置決め部材17aに突き当たるまで挿入することで、接点部31a,31bを、接続したい回路基板50の配線パターン上に合わせることができる。
【0017】
側壁21a,側壁21b及び仕切壁18には、それぞれを貫通し、後述する第1治具(開閉体)40が抜き差しされる挿入孔24,25,26が形成されている。挿入孔24,25,26は、寸法及び形状が一致するとともに、側壁21a,側壁21b及び仕切壁18の同じ位置(x方向、y方向及びz方向について)に形成されている。
挿入孔24は、挿入された第1治具40が前後方向に進退可能な寸法に形成されており、後方に位置する始点24aと、前方に位置する終点24bを備えている。なお、挿入孔25,26にも、挿入孔24と同じ位置に始点25a,26aと終点25b,26bを備えている。
挿入孔24,25,26は、始点24a,25aに第1治具40を突き当てて挿入すれば、第1治具40が端子30と干渉しないように、形成されている。
始点24a,25aの側で挿入した第1治具40を終点24b,25bに向けて移動(前進)させると、第1治具40は一対の端子30a,30bの間に押し込まれ、それ以前には接していた接点部31a,31b同士は離れる。
また、仕切壁18の側面には、挿入孔26に連通する案内溝18a,18bが形成されている。案内溝18a,18bの幅方向の中心は、挿入孔26の中心と一致するように形成されている。
【0018】
次に、上壁22には、表裏を貫通し、挿入室20と前方フード13を連通する挿入孔27が形成されている。挿入孔27は、仕切壁18を挟んだ両側にそれぞれ1つずつ形成されている。なお、第1挿入室20a側に形成されている方を挿入孔27a、第2挿入室20b側に形成されている方を挿入孔27bとする。
また、下壁23にも同様に挿入孔28(28a,28b)が、挿入孔27a,27bに対向する位置に形成されている。
挿入孔27,28は、後述する第2治具45が前後方向に進退できる寸法に形成されている。また、挿入孔27,28は、挿入孔24〜26の前後方向の長さより、後方に第2治具45が挿入される分だけ長く形成されている(
図3(b))。
【0019】
[端子30]
端子30は、回路基板50のおもて面50a側とうら面50b側に配置される端子30a,30bの対からなり、各々の接点部31a,31bで回路基板50のおもて面50aとうら面50bを挟み込むことで、回路基板50の導電パターン(図示を省略)と電気的に接続される。接点部31a,31b同士は、回路基板50が未挿入の状態で、接触している。
端子30a,30bは、それぞれ、保持壁12に保持される平坦な間隔の広い部分から、接点部31a,31bに向けて間隔が狭くなる傾斜部32a,32bおよび第1治具40を保持する挟持部33a,33bを備えている。
傾斜部32a,32bは、第1治具40が突き当たることで、接点部31a,31bの間隔Gを拡げる。
挟持部33a,33bは、間隔G’を空けて、互いに平行となるように形成されている。端子30a,30bは、この間隔G’が第1治具40の径より小さくなるよう配置されている。そのため、第1治具40が挟持部33a,33bの間(以下、挟持位置とよぶことがある)に移動すると、第1治具40は挟持部33a,33bを押し拡げるため、間隔Gは拡下られる。第1治具40が挟持位置に移動すると、挟持部33a,33bは第1治具40を高さ方向から挟み込み、第1治具40の移動を規制する。そのため、第1治具40は、挟持位置で端子30a,30bに保持される。
なお、端子30a,30bは、導電性及び弾性が優れる金属材料、例えば銅合金により形成される。
それぞれの端子30a,30bは、保持孔19に圧入されることで、保持壁12を介してハウジング10に保持される。また、端子30a,30bは、前端側が挿入室20の内部に配置され、回路基板50との接続に供される一方、後端側は受容室16に配置され、相手側コネクタとの接続に供される。
【0020】
複数の端子30(端子30a,30bの対)は、幅方向に配列されている。極数を増やすために、隣接する端子30同士を幅方向に半ピッチだけずらすとともに、上下方向に位置をずらして2段に設けている。なお、この配列による回路基板50の挟持を実現するために、
隣接する端子同士は形状を異ならせて設けられている。
なお、この間隔Gが設けられた状態を「開」、接点部31a,31bが接触する状態を「閉」とする。
【0021】
上記のように配列されている一対の端子30a,30bの間には、接点部31a,31bを除いて空間が形成されており、かつ、この空間は挿入孔24,25,26と幅方向に連なっている。本実施形態は、もともと設けられているこの空間に第1治具40を挿入するとともに、前後方向に移動させて、端子30a,30bの開閉を行うことができるため、新たにスペースを確保しなくても、第1治具40を挿入したり、引き抜いたりできる。
【0022】
[第1治具(開閉体)40]
第1治具40は、端子30a,30bの接点部31a,31bを開閉するために、挿入孔24,25,26に挿入して使用される。
第1治具40は、円柱状の部材であり、その径は挟持部33a,33bの間隔G’より大きく、かつ、挟持部33a,33bの間に保持された状態で、接点部31a,31bの間に形成される隙間の間隔Gが回路基板50の厚さTよりも大きくなるよう設定する。
第1治具40は、第1の方法を用いる場合、長さがハウジング10の幅よりも長いものを使用する。一方、第2の方法を用いる場合、第1治具40の長さは各挿入室20の幅よりも長いものを用いる。また、第2の方法では、第1の方法で使用する第1治具40の一部を使用することもできる。
また、第1治具40は、金属からなることが好ましいが、端子30a,30bの開状態を維持できる強度を有していれば構わない。
なお、第1治具40は、挟持部33a,33bに保持され、接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができれば、円柱状に限定されない。
【0023】
次に、第1治具40を挟持部33a,33bの間に保持させた状態で、回路基板50を嵌合させる方法を説明する。
全ての挟持部33a,33bの間に同時に第1治具40を保持させる方法(第1の方法)と、挿入室20a,20bごとに挟持部33a,33bの間に第1治具40を保持させる方法(第2の方法)の2通りの方法がある。以下、それぞれの方法について順に説明する。
【0024】
[第1の方法]
第1の方法は、全ての接点部31a,31bの間隔Gを同時に拡げるため、一度の操作で接点部31a,31bの間隔Gを拡げることができる。
まず、第1治具40を、全ての挟持部33a,33bに同時に保持させ、回路基板50を嵌合させる方法について、
図4〜
図7を参照して、説明する。
図6(a)に示すように、第1治具40がハウジング10を幅方向に貫通するように、第1治具40を挿入孔24から挿入孔25まで挿入する。この際、第1治具40は、
図4(a)に示すように、位置決め部材17aに接している。
第1治具40は、挿入孔24〜26の始点24a〜26aに接するように挿入される(以下、初期状態とよぶ)。初期状態から、
図6(b)に示すように、ハウジング10の外側から、第1治具40の両端に、前方に向けて力を加え、第1治具40を終点24bに向けて移動させる。
そうすると、第1治具40が、前方に移動しながら傾斜部32a,32bに突き当ることで、接点部31a,31b同士は離れ、その間隔Gは次第に拡げられる。
さらに、第1治具40を終点24bに向けて移動させると、
図4(b)に示すように、第1治具40は、挟持部33a,33bの間に移動する。挟持部33a,33bの間隔G’は、第1治具40の径より小さく設定されているため、第1治具40は挟持部33a,33bを押し拡げる。そうすると、それに連動して接点部31a,31bの間隔Gが拡げられる。
そして、第1治具40は、挟持部33a,33bに上下から挟まれることで、挟持部33a,33bの間に保持される。第1治具40は、挟持部33a,33bに保持されると、移動が規制される(以下、保持状態とよぶ場合がある)。そのため、第1治具40に前方に向けて力を加えなくても、第1治具40は保持状態を維持する。
保持状態において、接点部31a,31bの間隔Gは、回路基板50の厚さTよりも大きくなる。
【0025】
保持状態が維持されたまま、
図4(c)に示すように、回路基板50を前方から挿入する。
保持状態において、接点部31a,31bの間隔Gは回路基板50の厚さTより大きく、しかも、回路基板50は、案内溝18a,18bに案内されるので、間隔Gの中央を移動し、接点部31a,31bと接することなく挿入される。
したがって、回路基板50は、端子30a,30bから荷重をほとんど受けることなく挿入される。
回路基板50の端部52が第1治具40に接する位置まで挿入されたら、回路基板50で第1治具40を始点24aの方向に押し込み、初期状態の位置まで復帰させる。こうして第1治具40が挟持部33a,33bの間から抜け出ると、端子30a,30bは弾性復帰し、
図5(a)に示すように、接点部31a,31bは回路基板50をおもて面50aとうら面50bから挟み込む。
このように、第1治具40を回路基板50で押しながら、挟持位置から抜け出させることで、第1治具40を移動させる作業を、回路基板50の挿入と同時に行うことができる。
第1治具40は、幅方向に引っ張り、ハウジング10の外部に抜き取る(
図5(b))。
そして、
図5(c)に示すように、回路基板50を位置決め部材17aに突き当る、つまり嵌合完了の位置まで押しこむとで、端子30a,30bは回路基板50と電気的に接続される。この過程で、接点部31a,31bは、回路基板50と摺動する。
【0026】
[効果]
以下、第1の方法の効果を説明する。
第1の方法は、第1治具40を挟持部33a,33bの間に保持し、接点部31a,31bを開状態とする。そうすると、回路基板50を挿入する際、ハウジング10の外部から第1治具40を抑える必要がないため、作業性を向上させることができる。
また、本実施形態では、第1治具40を挟持位置に移動させ、接点部31a,31bを開閉するステップと、回路基板50を挿入するステップを、一連の流れで行うように説明したが、それぞれのステップを分業して行うこともできる。例えば、コネクタ1を作製する際に端子30a,30bを保持状態としておき、実際に回路基板50をコネクタ1に接続したい時に、回路基板50の嵌合作業を行う。そのため、異なる場所で、各々の作業を行うことができる。
【0027】
回路基板50を端子30a,30bに嵌合させる場合、端子30a,30bの先端に挿入するとき(挿入初期)が最も大きな力を要する。
第1治具40を挟持位置に保持することで、接点部31a,31bを開状態とするため、回路基板50は、端子30a,30bと干渉せずに所定位置まで挿入できる。そうすると、挿入初期に、端子30a,30bに回路基板50が突き当たらないので、端子30の接点部31a,31bの特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制でき、電気的な接続信頼性を向上させることができる。また、回路基板50は端子30a,30bから荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
さらに、回路基板50は、第1挿入室20aは案内溝18a,29aを介して、第2挿入室20bは案内溝18b,29bを介して、接点部31a,31bの間に挿入されるため、回路基板50は接点部31a,31bに接することなく挿入される。そのため、端子30の損傷や変形が生じるのを回避できる。
【0028】
また、使用した第1治具40は、開閉作業が済んだら、ハウジング10の外部に引き抜かれる。したがって、本実施形態のコネクタ1は、第1治具40の分だけ、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままにする特許文献1のコネクタに比べて、軽量化できる。
また、第1治具40はハウジング10の内部に残らないので、エンジンの振動や自動車の走行に基づいて、第1治具40が異音の振動源になることはない。
さらに、本実施形態に係るコネクタ1は、第1挿入室20a,第2挿入室20bおよび仕切壁18に挿入孔24〜26を形成し、端子30の形状を変更するだけで、上記の効果を享受できるため、既存のコネクタに適用する場合でも大きな設計変更を要しない。
【0029】
[第2の方法]
第2の方法は、挿入室20ごとに接点部31a,31bを開閉させ、回路基板50を嵌合させる。
第1治具40を前方に移動させる際に第2治具45を使用する点で、第1の方法と相違する。以下、第1の方法との相違点を中心に、第1挿入室20a、第2挿入室20bの順に第2の方法を適用した例を説明する。
【0030】
第2治具45は、棒状の部材であり、ハウジング10を高さ方向に貫通できる長さに設定されている。
第1治具40は、
図7(a)に示すように、挿入孔24から挿入孔26まで挿入される。
そして、ハウジング10を高さ方向に貫通するように第2治具45を挿入孔27bから挿入孔28bまで挿入する。第2治具45は、に示すように、後方から第1治具40に押し当てる(
図4(a)点線)。この状態で、ハウジング10の外側から、第2治具45の両端に、前方に向けて力を加えるとともに、ハウジング10の外側に突出している第1治具40に力を加え、
図7(b)に示すように、第1治具40を終点24sに向けて移動させる。そうすると、接点部31a,31b同士は離れ、その間隔Gは拡げられる。そして、第1治具40が挟持位置まで達すると、間隔Gは、回路基板50の厚さTよりも大きくなり、第1治具40は挟持部33a,33bの間に保持される(
図4(b)点線)。第1治具40が保持されたら、第2治具45を高さ方向に引っ張り、ハウジング10の外部に引き抜く。
【0031】
次に、第2挿入室20bの接点部31a,31bの間隔Gを拡げる。第1治具40を挿入孔25から挿入孔26まで挿入する。それから、第2治具45を挿入孔27bから挿入孔28bまで挿入する。第2治具45を第1治具40に押し当て、ハウジング10の外側から、第2治具45に、前方に向けて力を加えるとともに、第1治具40に力を加え、第1治具40を終点24bに向けて移動させる(
図7(b))。そうすると、第1治具40は挟持部33a,33bの間に保持され、接点部31a,31b同士の間隔Gは拡げられ、回路基板50の厚さTよりも大きくなる。第1治具40が保持されたら、第2治具45をハウジング10の外部に引き抜く。
【0032】
以上説明した工程により、第1挿入室20aおよび第2挿入室20bの端子30a,30bの接点部31a,31bの間隔Gは拡がったまま維持される。
この状態から、回路基板50を各挿入室20の端子30a,30bの間に挿入し、回路基板50を位置決め部材17aに突き当たるまで押しこむと、端子30a,30bは回路基板50と電気的に接続される。
【0033】
[効果]
第2の方法は、挿入室20ごとに端子30a,30bを開閉することができる。端子30の極数が多いコネクタに第1の方法で接点部31,31を開閉させると、端子30から第1治具40に作用する力が大きくなり、第1治具40を移動させるために大きな力を要する。そうすると、作業性が低下するおそれがある。
一方、第2の方法で、挿入室20ごとに、第1治具40を挟持部33a,33bの間に保持することで、接点部31a,31bを開閉することができれば、全端子30を同時に開閉させる場合に比べ、各第1治具40に作用する力を小さくすることができる。そうすると、大きな力を要さなくても、第1治具40を挟持部33a,33bの間に保持することができるため、作業性の低下を抑制できる。
また、本実施形態に係るコネクタ1は、上壁22と下壁23に挿入孔27,28を形成するだけで済むため、既存のコネクタに適用する場合でも設計変更を最小限に抑えることができる。
また、第1治具40および第2治具45は、開閉作業が済んだら、ハウジング10の外部に引き抜かれるため、第1治具40および第2治具45の分だけ、端子を開閉させる部材をハウジングに取り付けたままにする特許文献1のコネクタに比べて、軽量化できる。
さらに、第1治具40および第2治具45が残らないので、エンジンの振動や自動車の走行に基づいて、第1治具40が異音の振動源になることはない。
【0034】
また、第2の方法は、第1の方法で得られる、以下の効果を享受できる。
回路基板50は、端子30a,30bと干渉せずに所定位置まで挿入できるため、端子30の接点部31a,31bの特に先端に損傷や変形が生じるのを抑制でき、電気的な接続信頼性を向上させることができる。
また、回路基板50は端子30a,30bから荷重を受けることなく挿入できるため、大きな力を要せずとも挿入できる。
【0035】
以上、本実施形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本発明において、挟持部33a,33bは、第1治具40を保持できればよいため、本実施形態で説明した形状に限定されるものではない。例えば、挟持部33a,33bの形状を、第1治具40の形状に合わせて作製することができる。
また、本実施形態では、接点部31a,31b同士が接している端子30a,30bについて述べたが、接点部31a,31b同士が接していない端子30a,30bにも適用できる。
さらに、接点部31a,31bの間に形成される間隔Gは、回路基板50の厚さTより大きくなくても、接点部31a,31bを拡げられれば、端子30a,30bから回路基板50に加わる荷重を低減できる。
【0036】
本実施形態の第1治具40は、傾斜部32a,32bを案内しやすくするために、第1治具40の傾斜部32a,32bと接する面をテーパ面とすることもできる。
さらに、第1治具40および第2治具45は、棒状の部材であればよく、専用の部材を別途用意しなくても、一般作業工程で使用される棒状の工具で代用することができる。
【0037】
本実施形態では、接点部31a,31bを開閉させる、2つの方法をそれぞれ説明したが、第1の方法においても、第2治具45を使用して、回路基板50を挿入してもよい。この場合、第2治具45によっても第1治具40に力を加えることができるため、第1治具40に加える力を分散させることができる。
なお、第2の方法において、第2治具45によって第1治具40を前方に移動させる力を加えることができれば、第2治具45の両端から力を加えなくてもよい。そのためその場合、挿入孔27,28はいずれか一方に形成されていればよい。