特開2015-10370(P2015-10370A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2015010370-橋梁架設工法及び橋梁架設用治具 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10370(P2015-10370A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】橋梁架設工法及び橋梁架設用治具
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20141216BHJP
【FI】
   E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-135704(P2013-135704)
(22)【出願日】2013年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 陽二
(72)【発明者】
【氏名】花井 正博
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA05
2D059AA07
2D059CC05
2D059DD02
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】桁の架設時間を短縮させる橋梁架設工法及び橋梁架設用治具を提供すること。
【解決手段】 長手方向端部に取り付けられたセッティングビーム21を介して、架設桁11を既設桁12に支持させる仮受けを行うものであり、架設桁11には、長手方向端部に一対のセッティングビーム21A21Bを幅方向に所定間隔をあけて取り付け、既設桁12には、その長手方向端部に、一対のセッティングビームの間隔を底辺部の幅とし、底辺部221aの左右両側に斜辺部221bを有する略台形または略三角形のビーム誘導ガイド22を取り付け、架設桁11を下降させる際、一対のセッティングビーム21A,21Bの一方がビーム誘導ガイド22の斜辺部221bを滑り、仮受け状態では、一対のセッティングビーム21A,21Bをビーム誘導ガイド22の底辺部221aを挟んだ状態にして位置決めするようにした橋梁架設工法。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り下げ状態の架設桁を下降させ、長手方向端部に取り付けられたセッティングビームを介して、前記架設桁を既設桁に支持させる仮受けを行い、その後、前記架設桁と前記既設桁とを添接板によって連結させる橋梁架設工法において、
前記架設桁には、長手方向端部に一対のセッティングビームを幅方向に所定間隔をあけて取り付け、前記既設桁には、その長手方向端部に、前記一対のセッティングビームの間隔を底辺部の幅とし、前記底辺部の左右両側に斜辺部を有する略台形または略三角形のビーム誘導ガイドを取り付け、
前記架設桁を下降させる際、前記一対のセッティングビームの一方が前記ビーム誘導ガイドの斜辺部を滑り、前記仮受け状態では、前記一対のセッティングビームを前記ビーム誘導ガイドの底辺部を挟んだ状態にして位置決めするようにしたことを特徴とする橋梁架設工法。
【請求項2】
吊り下げ状態の架設桁を下降させ既設桁に支持させる仮受けに使用する橋梁架設用治具において、
前記架設桁に対し、その幅方向に所定間隔をあけて、当該架設桁の長手方向端部に取り付けられる一対のセッティングビームと、前記既設桁に対し、長手方向端部に取り付けられるものであり、前記一対のセッティングビームの間隔を底辺部の幅とし、前記底辺部の左右両側に斜辺部を有する略台形または略三角形のビーム誘導ガイドとの組み合わせからなることを特徴とする橋梁架設用治具。
【請求項3】
請求項2に記載の橋梁架設用治具において、
前記セッティングビームは、垂直部材、及び桁端部より外側に張り出してなる水平部材であるウェブに対し、上部に上フランジと下部に段形状のしたフランジが接合されたI形断面であり、上下に幅の狭い部分に縦リブが接合されたものであり、
前記ビーム誘導ガイドは、台形又は三角形をしたある程度厚みのあるガイド板と、その底辺部に固定された短冊状の固定板とが接合されたものであることを特徴とする橋梁架設用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設桁に対して架設桁を仮受けさせるに際して、架設桁の端部を容易に誘導させて位置決めできるようにした、橋梁架設工法及び当該工法に使用する橋梁架設用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の架設工事に関しては、下記特許文献1などにその一例が記載されている。図5は、臨港幹線道路の建設現場を示したものである。架設桁101がフローティングクレーン110の吊りワイヤ115によって吊り下げられ、既設桁102に対して仮受けが行われている。架設桁101は吊られたまま移動し、橋脚105に設置されている既設桁102に対して、架設桁101端部の位置を調整しながら仮受けが行われる。すなわち、架設桁101には、長手方向の両端部に、セッティングビーム120が突き出すようにして取り付けられている。そのため、吊り下げた状態の架設桁101が下降すると、既設桁102の端部上面にセッティングビーム120が引っ掛けられ、仮受け状態がつくられる。そして、仮受け支持された架設桁101は、既設桁102に対して添接板によって連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−209574号公報
【特許文献2】実開昭60−115914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記架設工法によれば、架設桁101の自重を預けた仮受け状態で連結作業ができる。そのため、セッティングビーム120の使用は、道路や線路上空を横切る架設など、短い作業時間が求められる作業現場では特に有効である。しかし、図5に示した水面上の橋梁の他、道路や線路上などに架け渡される橋梁は、一般に長尺な架設桁が多い。そのため、架設作業は風の影響を受けやすく、既設桁などに対する位置合わせが困難な場合が多い。そこで、セッティングビームを使用することで、ある程度の時間短縮は可能になるものの、更に位置合わせなどに要する時間の短縮が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、桁の架設時間を短縮させる橋梁架設工法及び橋梁架設用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る橋梁架設工法は、吊り下げ状態の架設桁を下降させ、長手方向端部に取り付けられたセッティングビームを介して、前記架設桁を既設桁に支持させる仮受けを行い、その後、前記架設桁と前記既設桁とを添接板によって連結させるものであり、前記架設桁には、長手方向端部に一対のセッティングビームを幅方向に所定間隔をあけて取り付け、前記既設桁には、その長手方向端部に、前記一対のセッティングビームの間隔を底辺部の幅とし、前記底辺部の左右両側に斜辺部を有する略台形または略三角形のビーム誘導ガイドを取り付け、前記架設桁を下降させる際、前記一対のセッティングビームの一方が前記ビーム誘導ガイドの斜辺部を滑り、前記仮受け状態では、前記一対のセッティングビームを前記ビーム誘導ガイドの底辺部を挟んだ状態にして位置決めするようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る橋梁架設用治具は、吊り下げ状態の架設桁を下降させ既設桁に支持させる仮受けに使用するものであり、前記架設桁に対し、その幅方向に所定間隔をあけて、当該架設桁の長手方向端部に取り付けられる一対のセッティングビームと、前記既設桁に対し、長手方向端部に取り付けられるものであり、前記一対のセッティングビームの間隔を底辺部の幅とし、前記底辺部の左右両側に斜辺部を有する略台形または略三角形のビーム誘導ガイドとの組み合わせからなることを特徴とする。
また、本発明に係る橋梁架設用治具は、前記セッティングビームが、垂直部材、及び桁端部より外側に張り出してなる水平部材であるウェブに対し、上部に上フランジと下部に段形状の下フランジが接合されたI形断面であり、上下に幅の狭い部分に縦リブが接合されたものであり、前記ビーム誘導ガイドは、台形又は三角形をしたある程度厚みのあるガイド板と、その底辺部に固定された短冊状の固定板とが接合されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既設桁に対する架設桁の位置合わせにおいて、作業員による特別な調整が必要なく、セッティングビームがビーム誘導ガイドによって案内されることで行われる。そのため、風の影響を受けやすい状況であったとしても、時間をかけることなく橋梁の架設作業を行うことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】大型クレーンによる架設桁の吊下げ状態を示した図である。
図2】橋梁架設用治具の実施形態を示した斜視図である。
図3】既設桁に対する架設桁の位置合わせを段階的に示したものである。
図4】添接板による桁同士の連結状態を示した図である。
図5】臨港幹線道路の建設現場を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る橋梁架設工法及び橋梁架設用治具について、その実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、大型クレーンによる架設桁の吊下げ状態を示した図である。移動式の大型クレーン1によって架設桁11が吊下げられ、橋脚15に既に設置されている既設桁12に対し、その架設桁11が連結される。例えば、大型クレーン1は、3000t級のクローラクレーンであり、クローラを備えた走行部2の上に旋回可能な上部旋回体3が設けられている。上部旋回体3からはブーム4が伸び、先端のシーブを介して、ウインチから送り出されたワイヤロープに架設桁11が吊り下げられる。
【0011】
図示する架設現場では、地上を鉄道用の線路8が通り、その上空を横切るように道路橋が架け渡される。図示する例では、線路8付近の橋脚15の他に複数の橋脚が所定箇所に建設されており、鋼箱桁である主桁が各橋脚15間に掛け渡される。主桁は、橋脚15に対して先に設置されたものが既設桁12となり、そうした既設桁12に対して架設桁11が連結される。本実施形態の橋梁架設工法は、こうした既設桁12に対する架設桁11の架け渡し及び連結についての方法であり、橋梁架設用治具はその工法において使用されるものである。
【0012】
架設桁11には長手方向の両端部に一対のセッティングビーム21A,21B(以下、まとめて示す場合は「セッティングビーム21」とする)が取り付けられ、それを受けるようにして既設桁12にビーム誘導ガイド22が取り付けられている。このセッティングビーム21とビーム誘導ガイド22によって、本実施形態の橋梁架設用治具が構成されている。ここで、図2は、橋梁架設用治具を示した斜視図である。具体的には、架設桁11の長手方向端部に取り付けられたセッティングビーム21と、既設桁12の長手方向端部に取り付けられたビーム誘導ガイド22を示している。
【0013】
架設桁11には、図示しないセッティングビーム取付金具が、工場で予め溶接により取り付けられている。同様に、既設桁12には、図示しないビーム誘導ガイド取付金具が、工場で予め溶接により取り付けられている。
セッティングビーム21は作業現場で、架設桁11のセッティングビーム取付金具に対してボルトで取り付けられる。同様に、ビーム誘導ガイド22は作業現場で、ビーム誘導ガイド取付金具に対してボルトで取り付けられる。
セッティングビーム21は、架設桁11の長手方向の両端部上面に、ビーム誘導ガイド22は、対応する既設桁12の長手方向の端部上面に、それぞれ取り付けられる。一対のセッティングビーム21A,21Bは、架設桁11の幅方向の中央線L1(図3(a)参照)を基準にして対称的に設置されている。そして、セッティングビーム21A,21Bは、架設桁11の幅方向に所定の間隔があけられているが、本実施形態では架設桁11の幅いっぱいの寸法で取り付けられている。なお、この幅間隔は任意に設定することができる。
【0014】
セッティングビーム21A,21Bは、図示するように、横方向から見てL字形に形成されている。すなわち、垂直部材、及び桁端部より外側に張り出してなる水平部材であるウェブ211に対し、その上下部分に平板の上フランジ212と段形状の下フランジ213が接合され、I形断面になっている。そして、上下に幅の狭い部分が、架設桁11上面より高い位置で、架設桁11の端部から長手方向に突き出している。この突き出した部分が、既設桁12側へと引っ掛けられるため、そこには上下フランジ212,213を繋ぐ縦リブ214がウェブ211を含めて接合されている。
【0015】
一方、ビーム誘導ガイド22は、台形形状をしたガイド板221と固定板222とによって形成されている。ここで、ガイド板221は、所定の厚さを有する厚板で構成されている。所定の厚さは、ガイド板にかかる力に耐え得るように定められる。また、ガイド板221としては、H形鋼材や溝形鋼材を組み合わせて溶接したものでも良い。
そうしたガイド板221の底辺部221aの長さは、架設桁11に固定されたセッティングビーム21A,21Bの間隔とほぼ同じになるように設計されている。そして、台形形状のビーム誘導ガイド22は、既設桁12の幅方向の中央線L2(図3(a)参照)を基準にして左右対称になるように取り付けられている。
【0016】
続いて、本実施形態の橋梁架設工法では、次のようにして架設桁11の架け渡し及び連結が行われる。そこでは先ず、前述したセッティングビーム21及びビーム誘導ガイド22からなる橋梁架設用治具が取り付けられる。架設桁11に対してセッティングビーム21がボルト締結され、既設桁12にはビーム誘導ガイド22がボルト締結される。セッティングビーム21A,21Bの取り付け位置は、ガイド板221の大きさによって予め決められており、例えば前述したように、架設桁11の幅方向端部に揃えて固定される。ビーム誘導ガイド22は、その中央位置が既設桁12の幅方向中央位置に揃えられる。
【0017】
セッティングビーム21を備えた架設桁11は、図1に示すように、大型クレーン1のワイヤロープによって吊り下げられ、架設位置まで持ち上げられる。その後、架設桁11が所定位置で徐々に降ろされ、図3に示すようにして、既設桁12に対する架設桁11の仮受けが行われる。図3は、既設桁12に対する架設桁11の位置合わせ(仕口合わせ)を段階的に示したものであり、図2の右側(既設桁12側)から見た図である。
【0018】
図1に示すように吊り下げられた架設桁11は、既設桁12とは干渉しないように下降し、架設桁11と両側の既設桁12との間で仕口合わせが行われる。従来は長尺な架設桁11が風の影響を受けやすく、両端について行う仕口合わせが困難であった。しかし、本実施形態では、両端から突き出したセッティングビーム21が、既設桁12のビーム誘導ガイド22に当たり、仕口合わせが誘導される。例えば架設桁11と既設桁12が、図3(a)に示すように、各々の中央線L1,L2が幅方向にずれている場合には、図3(b)に示すように、下降するセッティングビーム21のうち一方のセッティングビーム21Aがガイド板221の斜辺部221bに当たる。
【0019】
更に、架設桁11が下降すると、セッティングビーム21Aがガイド板221の斜辺部221bを滑り、矢印M方向に移動することになる。そのため、特に架設桁11の長手方向端部が、横方向にずれながら下降する。そして、図3(c)に示すように、セッティングビーム21Aが固定板222の上に重ねられて仮受け状態となる。セッティングビーム21の高さは、この仮受け状態の時に、仕口の高さ方向の位置合わせが完了するように設定されている。
このとき、架設桁11の中央線L1が既設桁12の中央線L2と重なり、仕口合わせも完了する。その後、図4に示すように、架設桁11及び既設桁12は、添接板によって連結される。
【0020】
すなわち、架設桁11及び既設桁12は、各々の上フランジ51同士及び下フランジ52同士、さらにウェブ53同士が、それぞれ添接板25によって連結される。上下フランジ51,52やウェブ53、そして添接板25には貫通孔が形成され、その貫通孔を通したボルトとナットにより固定される。こうして図1に示す線路8上空で、架設桁11が既設桁12に連結される。その後、架設桁11からセッティングビーム21が、既設桁12からはビーム誘導ガイド22がそれぞれ取り外される。
【0021】
このように、本実施形態の橋梁架設工法及び橋梁架設用治具によれば、既設桁12に対する架設桁11の仕口合わせが、作業員による特別な調整を必要とせず、セッティングビーム21がビーム誘導ガイド22によって案内されることで行われる。そのため、風の影響を受けやすい状況などであったとしても、時間をかけることなく橋梁架設作業を行うことが出来るようになる。
【0022】
また、架設桁11には、幅方向に一対のセッティングビーム21A,21Bが取り付けられ、既設桁12は、台形形状をしたビーム誘導ガイド22が左右両側に斜辺部221bを有しているため、架設桁11が左右どちらにずれたとしても、正確な仕口合わせが行われる。そして、こうした橋梁架設用治具により、橋梁架設作業が単純化され、作業の安全性も高められる。しかも、セッティングビーム21及びビーム誘導ガイド22からなる橋梁架設用治具は簡単な構成であり、低コストで前記効果を実現することができる。
【0023】
以上、本発明に係る橋梁架設工法及び橋梁架設用治具について実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態のセッティングビーム21は、ガイド板221の斜辺部221bに対して下フランジ213の角部が当たっているが、斜辺部221bの角度に合わせて形成した面を当てて摺動するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、ガイド板221を台形にしたが、三角形であってもよい。そして、台形や三角形の斜辺は厳密に直線である必要はない。
また、前記実施形態では直線状の架設桁11を示して説明したが、架設桁が曲線及び傾斜する場合にも対応できる。
【符号の説明】
【0024】
1 大型クレーン
8 線路
11 架設桁
12 既設桁
21(21A,21B) セッティングビーム
22 ビーム誘導ガイド
25 添接板
図1
図2
図3
図4
図5