【実施例】
【0016】
図1には、既設管を更生する更生管の組立単位部材となる更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同形状の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された同形状の端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。セグメント1は、本実施例では、円周を複数等分する所定角度、例えば4等分する90度の円弧状に湾曲した形状となっている。
【0017】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板と同様な形状の複数、この実施例では4個の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0018】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するボルトとして構成された連結部材を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向にその位置を一致させて等間隔に複数形成され、側板102、103の周方向端部には、セグメント1を周方向に連結する作業に利用するための開口部102b、103bが形成される。また、端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルトなどの連結部材を通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。
【0019】
内部板106の下部には、セグメント1を管長方向に連結する連結部材を通すための円形の挿通穴106aが側板102、103の挿通穴102a、103aの周方向の位置と一致させて形成される。また、内部板107には、連結部材が挿入できる複数の切り欠き107aが、側板102、103、内部板106の挿通穴102a、103a、106aの周方向の位置と一致させて形成されている。
【0020】
内面板101、側板102、103、端板104、105、内部板106、107は、いずれも透明、半透明あるいは不透明な同じ材質のプラスチックでできており、公知の成形技術を用いて一体に成形される。
【0021】
セグメント1の周方向の連結は、一方のセグメント1の端板105と他方のセグメント1の端板104が当接するように保持し、セグメント1の側板102、103の開口部102b、103bからボルトを挿通穴104a、105aに挿通してナットと螺合させ、ボルトとナットにより両端板104、105を締め付けることにより行われる。
【0022】
セグメント1を順次周方向に一周分連結させると、
図2に示すようなリング状の閉じた所定の短い長さの短管体10(以下、管ユニットという)を組み立てることができる。管ユニット10は、円管を管長方向Xに垂直に所定幅Dで輪切りに切断したときに得られる形状となっており、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。セグメント1は、この管ユニット10を、径方向Rに沿った切断面で周方向Cに複数個に分割(図示では4等分割)したときに得られる部材に相当する。
【0023】
なお、
図2では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107などの補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0024】
このような管ユニット10のセグメント1は、
図3に示したように、公知技術(例えば特開2011−12803に記載)を用いて、他の管ユニット10のセグメント1と連結され、管長方向に延ばされる。管長方向の連結には、両側板102、103の穴102a、103aを通過する長いナット12を内部板106に当接させ、ボルト13を内部板106の反対側からナット12にねじ込み、ナット12をセグメント1に固定する。両セグメント1を突き合わせた状態で、連結部材11を、一方のセグメント1の側板102の穴102a、内部板106の穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、連結部材11のネジ部11aをそのナット14のつば14aが最左端の内部板106に圧接するまで他方のセグメント1に固定されているナット12にねじ込んで両セグメント1を締め付け連結する。
【0025】
以下、このようなセグメント1を用いて既設管を更生する流れを説明する。
【0026】
既設管が下水管の場合、既設管内には下水が流れており、この下水が更生しようとする既設管に流れ込むと、作業者は下水内で更生作業を行うことになるので、作業効率が落ちる。そのために、
図4に示したように、上流側マンホール20の上流側に堰23を築き、この堰に仮排水管24を取り付け既設管22内の水を排水しながら更生管50を組み立てる。
【0027】
仮排水管24は下流側マンホール21を通過して更に下流の既設管22に延びており、堰23に取り付けたシャッタ(不図示)を開放すると、下水25は仮排水管24を介して下流の既設管22に排水されるので、マンホール20、21内及びその間の既設管22内には、下水は侵入せず、ドライ化して更生作業を行うことができる。
【0028】
セグメント1は下流側のマンホール21から搬入され、
図2に示したように管ユニット10に組み立てられ、
図3に示した方法で管長方向に連結される。しかし、既設管22の底部には仮排水管24が敷設されているので、セグメント1を周方向に連結して閉じたリング状の管ユニット10に組み立てると、仮排水管24を管ユニット10内に通す必要がある。そこで、本実施例では、一部セグメント1を残してセグメント1を周方向に連結し該一部セグメント1分の隙間のある部分管ユニット10’を組み立て、仮排水管24を隙間から部分管ユニット10’内に入れてから残りの一部セグメント1を周方向に連結して閉じた管ユニット10に組み立てる。
【0029】
部分管ユニット10’の隙間から仮排水管24を部分管ユニット10’内に入れるには、仮排水管24を既設管22の底部から持ち上げる必要がある。本実施例では、この持ち上げに台車40を用いる。
【0030】
図5は台車40の構成を示す図で、台車40には、基台41の両側に設けた支持板42に軸受板43を介して回転自在に取り付けられた4個の車輪44が設けられる。基台41上には、軸受板45を介して仮排水管24を載せることができる2つのローラー46が回転自在に取り付けられ、支持板42には、台車40を移動させるために、作業者がつかむハンドル47が取り付けられる。
【0031】
台車40は、それを既設管22ないし既設管22を更生する更生管50(管ユニット10)の底部上に配置して作業者がハンドル47を引くと、該底部と車輪44との摩擦により車輪44が回転し台車40を既設管22ないし更生管50の底部上で移動できるようになっている。また、ローラー46上に仮排水管24を載置してハンドル47を引くと、仮排水管24とローラー46との摩擦接触によりローラー46が回転して台車40を仮排水管24に対して相対的に移動させることができる。
【0032】
なお、本実施例においては、ハンドル47は、仮排水管24をローラー46上に保持するためのガイドローラーとしての機能も有している。
【0033】
以下、上述したセグメント1、台車40などを用いて既設管22を更生する流れを説明する。
【0034】
セグメント1は、
図4に示したように、下流側マンホール21から順次搬入されて管ユニット10として組み立てられ、組み立てられた管ユニット10は上流側のマンホール20側に順次設置されて管長方向に連結される。
【0035】
図6には、既に2つの管ユニット10が連結され、連結された管ユニット10内に台車40が搬入され、仮排水管24が台車40のローラー46上に乗っている状態が図示されている。また、この状態が
図7、
図8にも拡大されて図示されている。
【0036】
続いて、3つのセグメント1が周方向に連結され、1セグメント分の隙間のある部分管ユニット10’が組み立てられる。
図2に図示したように閉じたリング状の管ユニット10に対して一部セグメント1を残してセグメント1が周方向に連結され該一部セグメント分の隙間のある管ユニットを部分管ユニット10’という。
【0037】
部分管ユニット10’は、
図6の左上に図示されたように、管長方向に連結されている最左端の管ユニット10側に運搬される。連結された管ユニット10内には、ローラー46上に仮排水管24を乗せた台車40が配置されているので、仮排水管24は最左端の管ユニット10の位置において既設管22の底部から隙間S1を隔てて持ち上げられた状態になる。そこで、部分管ユニット10’の隙間を既設管22の底部に向け、仮排水管24が該隙間を通過するように、部分管ユニット10’を下降させる。
【0038】
続いて、
図6の左下に示したように、部分管ユニット10’を、隙間S1をくぐらせ部分管ユニット10’の隙間が既設管22の上部にくるまで回転させる。
【0039】
続いて、
図6の右上に示したように、部分管ユニット10’をその上部が管ユニット10から離間するように作業者の手前に傾斜させ、離間により発生した隙間S2を利用して残りの一部セグメント1を部分管ユニット10’に連結し、閉じたリング状の管ユニット10を組み立てる。このようにして組み立てられた管ユニット10は、
図6の右下に図示されているように、既に施工済みの管ユニット10と、
図3に図示した方法で管長方向に連結される。
【0040】
このようにして管ユニット10の管長方向の連結が終了すると、台車40が最左端の管ユニット10まで移動され、
図6の左上に示したように、再び該最左端の管ユニット10の位置において隙間S1が発生するので、同様な工程で部分管ユニット10’を順次閉じた管ユニット10に組み立て管長方向に連結することができる。
【0041】
なお、最初あるいは2番の管ユニット10の組み立てには、
図6に示したように、台車40を管ユニット10内に搬入できないので、
図9に図示したように、台車40を直接既設管22の底部上に配置し、作業者が仮排水管24を持ち上げてローラー46上に乗せて作業を行う。ここで、仮排水管24が重たくて作業者による持ち上げが困難な場合には、堰23に取り付けたシャッタ(不図示)を一瞬閉じて仮排水管24を軽くしてもよい。
【0042】
仮排水管24と既設管22の底部には、隙間S2と同様な隙間S3が発生するので、
図6に示したように、組み立てた部分管ユニット10’を、隙間S3をくぐらせて回転させたあと、残りの一部セグメント1を部分管ユニット10’に連結し、閉じたリング状の管ユニット10を組み立てることができる。
【0043】
最初の管ユニット10を組み立てたあと、台車40を下流側マンホール21側に移動させて同様な流れで2番目の管ユニット10を組み立て管長方向に連結すると、
図6に示したように、台車40を管ユニット10内に搬入できるので、順次管ユニット10を連結して、
図4に示したように、既設管22内に更生管50を構築することができる。
【0044】
この他、例えば上流側マンホール20の底部に更生管50の底部と同じ高さの床を設けて、この床の上に台車40を配置した後、最初の管ユニット10の組み立てを開始することもできる。
【0045】
台車40は、
図6のように施工済みの管ユニット10内に搬入するのではなく、
図10に示したように、管ユニット10を管長方向に連結するごとに台車40を既設管22の底部上で移動させ、管ユニット10の組み立て連結を行って更生管50を構築するようにしてもよい。
【0046】
あるいは、
図11に示したように、施工済みの管ユニット10内と、既設管22の底部上に台車40をそれぞれ配置し、管ユニット10を管長方向に連結するごとに2台の台車40を移動させて、管ユニット10の組み立て連結を行い更生管50を構築するようにしてもよい。このように施工済みの管ユニット10内と、既設管22の底部上に台車40を配置する場合には、隙間S2、S3より大きな隙間S4が既設管22の底部と仮排水管24間に形成されるので、作業能率を向上させることができる。
【0047】
いずれの方法でも、台車40は既設管22ないし更生管50の底部上を管長方向に自由に移動させることができ、また仮排水管24と摩擦接触するローラー46は台車40の移動に応じて自在に回転するので、台車40を管長方向に移動させても、仮配水管24が管長方向に位置ずれすることがない。従って、更生作業を効率的に行うことができる。
【0048】
マンホール20、21間にわたって更生管50が構築されると、既設管22と更生管50間の隙間にグラウト材などの充填材が注入される。充填材が固化すると、既設管22、充填材、更生管50からなる強度ある複合管が構築される。複合管が構築された後、堰23、仮排水管24などが除去される。
【0049】
上述した実施例では、既設管底部に仮排水管が敷設される場合の更生を例示したが、本発明は、光ケーブルなどの通信ケーブルが底部に敷設されている通信管など、敷設物が管長方向に延伸して底部に設置されている既設管の更生にも適用することができる。
【0050】
また、敷設物は1本に限らず、2本以上複数本あっても、本発明を使用して既設管22内に更生管50を構築することができる。
【0051】
また、セグメントは、管ユニットを4等分した形状であったが、5等分、6等分あるいはそれ以上に細かくした複数等分のセグメントを用いることができる。その場合、いくつのセグメントを残して部分管ユニットを組み立てるかは、既設管の内径と敷設物の外径に関係するが、可能な限り少なくするのが組み立て作業上好ましい。