【実施例1】
【0023】
本発明の具体的な実施例1について
図1〜9に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、昇降の際に使用する昇降用具1である。
【0025】
尚、本実施例では、
図1に図示したように電車Tの出入り口T1に設置しているが、使用場所はこれに限られるものではない。
【0026】
具体的には、本実施例に係る昇降用具1は、縦材2aに足掛け横材2bを設けて成る複数(3つ)の足掛け構成体2を分離可能に連結した構成である。尚、連結する足掛け構成体2の数は使用場所や目的に応じて適宜変更し得るものである。
【0027】
この各足掛け構成体2は、
図2に図示したように適宜な可撓性を有する合成樹脂製の部材で形成されており、左右一対の筒状の縦材2a間に上下一対の筒状の足掛け横材2bを設けた構成であり、内部に流体を充填することで収縮状態から膨張状態となる中空体であり、内部に流体を充填して膨張状態とした際、浮き袋(浮き輪)として使用し得るように、その大きさ(人の胴部が入る程度の縦材2a同士の間隔及び足掛け横材2b同士の間隔)や空気の充填容量などが適宜設定されている。
【0028】
また、上下の足掛け横材2b夫々には逆止弁付き開口部5が設けられている。
【0029】
この逆止弁付き開口部5は、
図2,3,5に図示したように足掛け横材2b夫々の外側面所定位置に筒状開口部5aを設け、この筒状開口部5aの内側開口縁部に可撓性板から成る逆止弁5bを設けた構成であり、この逆止弁5bは外側から圧力を加えることで内側に可動して開放状態となるように構成されている。
【0030】
従って、筒状開口部5aに口を付けて空気を吹き込んで充填することで逆止弁5bは内側に可動して開放状態となり、よって、内部に空気が充填されることで足掛け構成体2は収縮状態から膨張状態となる。また、この空気の充填を停止すると逆止弁5b自体の復帰力と内圧により逆止弁5bは外側に可動して閉塞状態となる。
【0031】
また、逆止弁5bは、後述する管部材3を筒状開口部5aに挿入することによっても内側に可動して開放状態となる。
【0032】
管部材3は、
図2,3,5,6に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で形成されたものであり、この管部材3の左右端部には筒状開口部5aに差し込みし得る挿し込み筒状部3aが設けられている。
【0033】
従って、互いに連結することで隣接状態となる足掛け構成体2の筒状開口部5aに管部材3の左右の差し込み筒状部3aを差し込むことで、一の足掛け構成体2と他の足掛け構成体2とは管部材3を介して連通状態となり、一の足掛け構成体2に充填された流体は管部材3を介して他の足掛け構成体2に充填され膨張状態となる。
【0034】
尚、本実施例では、足掛け構成体2の内部に充填する流体として消火器Fから噴射される消火剤が混入した加圧流体を採用しているが、これに限られるものではない。
【0035】
また、足掛け構成体2の端部には他の足掛け構成体2の端部と着脱自在に連結するための連結部7が設けられている。
【0036】
この連結部7は、
図2,3,7に図示したように縦材2aの端部(突出片)に設けられる複数の孔部7aと、この各孔部7aに貫挿係止する係止杆7bとで構成されており、一の足掛け構成体2の端部と他の足掛け構成体2の端部とを重合することで重合させた孔部7a同士間に係止杆7bを貫挿係止することで両者を連結するように構成されている。
【0037】
また、本実施例では、
図7に図示したように孔部7aに貫挿係止させた係止杆7bの外側に配され該係止杆7bの抜けを抑制する面状体7cが設けられており、この面状体7cは、縦材2aの端部に対して面ファスナー8を介して連結される。
【0038】
図8は連結部7の別例であり、隣接する足掛け構成体2の縦材2aの端部同士を重合状態とし、この重合部位の表裏面に面状体9を配し、この各面状体9を各縦材2aの端部に面ファスナー10を介して連結する構造である。尚、連結部7は前述したタイプ以外の構造でも良い。
【0039】
また、本実施例では、上下端部の両方に連結部7を設けたタイプの足掛け構成体2と、上下端部のいずれか一方に連結部7を設け、他方に足掛け構成体2を吊り下げ保持する吊下体11(ロープ)を連結する連結構造部6を設けたタイプの足掛け構成体2の2種類を使用している。
【0040】
この連結構造部6は、縦材2aの端部に孔部6aを設けて構成されており、吊下体11の下端部を抜け止め状態に係止して連結する。尚、連結構造部6は前述した構成に限らないのは勿論である。
【0041】
また、本実施例は、昇降用具1の背面部には滑り落下用のシート材4が設けられている。
【0042】
具体的には、このシート材4は
図2〜4に図示したように適宜な合成樹脂製であり、面ファスナー12を介して各足掛け構成体2の背面に着脱自在に設けられている。
【0043】
従って、昇降用具1を裏返して斜設することで滑り台(シューター)として使用することができる。
【0044】
また、シート材4には、足掛け横材2bに掛けた足のつま先を挿入し得るつま先挿入孔4aが設けられている。
【0045】
従って、各足掛け構成体2の背面にシート材4があっても昇降に支障を来すことはない。
【0046】
以上の構成から成る本実施例に係る昇降用具1の使用方法について説明する。
【0047】
不使用時にはコンパクトな収縮状態とし、使用時には足掛け構成体2の内部に流体を充填することで収縮状態から膨張状態とする。
【0048】
具体的には、
図2に図示したように消火器Fを最上段となる足掛け構成体2の逆止弁付き開口部5に接続して流体を噴射すると、流体は最上段の足掛け構成体2に充填されて膨張状態となり、更に、最上段の足掛け構成体2に充填された流体は管部材3を介して中段の足掛け構成体2に充填されて膨張状態となり、更に、中段の足掛け構成体2に充填された流体は管部材3を介して最下段の足掛け構成体2に充填されて膨張状態となる。全ての足掛け構成体2が膨張状態となった時点で管部材3を外しても逆止弁5bにより流体が漏れることはない。
【0049】
続いて、この膨出状態とした昇降用具1の連結構造部6に連結した吊下体11を、例えば電車Tの出入り口T1の手摺りに係止して該昇降用具1を設置し、足掛け構成体2の足掛け横材2bに足を掛けて昇降する。また、状況に応じて昇降用具1を裏返した状態で斜設して滑り台としても使用できる。
【0050】
また、例えば水害事故に遭遇した場合には、この昇降用具1は昇降するためだけでなく、足掛け構成体2同士を分離して浮き袋として使用することができる。
【0051】
本実施例は上述のように構成したから、不使用時には収縮状態として極めてコンパクトな状態とすることができ、一方、使用時には内部に流体を充填して膨張状態とするだけで使用可能となり、しかも、簡易構造故にコスト安にして量産性に秀れ、そして更に、昇降に使用するだけでなく、浮き袋(浮き輪)としても使用することができ、例えば万一の水害事故にも対応できて非常に有用である。
【0052】
また、本実施例は、足掛け構成体2は、適宜な可撓性を有する合成樹脂製の部材で構成されているから、収縮状態と膨張状態とが簡易且つ確実に得られることになり、しかも、コスト安にして量産性に秀れることになる。
【0053】
また、本実施例は、互いに連結することで隣接状態となる足掛け構成体2同士間に管部材3が設けられ、一の足掛け構成体2に充填された流体は管部材3を介して他の足掛け構成体2に充填されるように構成されているから、簡易に膨張状態とすることができる。
【0054】
また、本実施例は、昇降用具1の背面部には滑り落下用のシート材4が設けられているから、滑り台としての使用も可能となるなど多機能で便利である。
【0055】
また、本実施例は、シート材4には、足掛け横材2bに掛けた足のつま先を挿入し得るつま先挿入孔4aが設けられているから、各足掛け構成体2の背面にシート材4があっても昇降に支障を来すことはない。
【0056】
また、本実施例は、足掛け構成体2には、該足掛け構成体2を吊り下げ保持する吊下体11を連結し得る連結構造部6が設けられているから、昇降用具1を所望の位置に簡易且つ確実に設置することができる。
【0057】
つまり、本実施例は、例えば地震が起きて電車Tが緊急停止した場合、電車Tの出入り口T1に設定して昇降することができ、しかも、そこへ津波で電車Tの周囲が水浸しとなった場合、昇降用具1そのものを浮き袋とした使用したり、或いは、足掛け構成体2を分離して夫々を浮き袋として使用したりなど、緊急用具として使用することができる。