(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-103834(P2015-103834A)
(43)【公開日】2015年6月4日
(54)【発明の名称】近距離無線通信に使用するアンテナおよび携帯式電子機器
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/06 20060101AFI20150508BHJP
【FI】
H01Q7/06
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-240781(P2013-240781)
(22)【出願日】2013年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(74)【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(74)【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
(72)【発明者】
【氏名】堀越 秀人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(57)【要約】
【課題】携帯式電子機器のタッチ操作を容易にするNFCアンテナを提供する。
【解決手段】NFCアンテナ200は、絶縁基板201、203と、同一平面に存在するアンテナ面201a、203aに形成した表面パターン207aと裏面パターン207bのアンテナ・コイル207を含む。絶縁基板は間に挟んだ磁性体シート205とともにL字型に成形し、アンテナ・コイルも同様にL字型に配置する。NFCアンテナをスマートフォンのコーナーに配置すると、タッチ・コーナーAの位置にコイル開口201が向く。タッチ・コーナーを利用したタッチ操作により短時間でNFCを開始することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯式電子機器の筐体に収納して近距離無線通信に使用するアンテナであって、
同一平面上でアンテナ面が所定の角度で屈曲した屈曲部を備える絶縁基板と、
前記アンテナ面に所定の角度で屈曲するように形成したコイル・パターンを含み前記絶縁基板の側面に鎖交磁束の出入り口を備えるループ状のアンテナ・コイルと
を有するアンテナ。
【請求項2】
前記所定の角度が90度である請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
鎖交磁束が通過する前記アンテナ・コイルのコイル開口を前記絶縁基板の側面に備える請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記コイル・パターンが、前記絶縁基板の表側のアンテナ面に形成した表面パターンと、前記絶縁基板の裏側のアンテナ面に形成し前記表面パターンと端部で接続した裏面パターンを含む請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項5】
前記絶縁基板が磁性体シートを間に挟んだ第1の絶縁基板と第2の絶縁基板を含み、前記表面パターンを前記第1の絶縁基板に形成し前記裏面パターンを前記第2の絶縁基板に形成した請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
鎖交磁束が通過する前記アンテナ・コイルのコイル開口を前記絶縁基板のアンテナ面に備える請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記絶縁基板の側面から前記コイル開口に鎖交磁束を誘導する磁性体シートを設けた請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記コイル・パターンが前記コイル開口を中心に対向する内側パターンと外側パターンを含み、
前記磁性体シートを、前記コイル開口を貫通し投影が前記内側パターンと前記外側パターンに重なるように配置した請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
近距離無線通信に使用するアンテナであって、
同一平面上でアンテナ面を細長いL字型に形成した絶縁基板と、
前記絶縁基板の側面に細長い鎖交磁束の出入り口を備え前記アンテナ面にL字型に形成したコイル・パターンを含むアンテナ・コイルと
を有するアンテナ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載のアンテナを搭載した携帯式電子機器。
【請求項11】
近距離無線通信が可能な携帯式電子機器であって、
側面と表面と背面とを含み前記側面のコーナーにタッチ操作をするためのタッチ・コーナーを定義した筐体と、
同一平面上でアンテナ面が前記側面のコーナーに適合する所定の角度で屈曲した屈曲部を備える絶縁基板と、前記アンテナ面に所定の角度で屈曲するように形成し前記絶縁基板の側面に鎖交磁束の出入り口を備えるループ状のコイル・パターンとを含み前記鎖交磁束の出入り口が前記筐体の側面を向くように配置したアンテナと、
前記アンテナに対する高周波信号の送受を制御するための半導体チップと
を有する携帯式電子機器。
【請求項12】
前記タッチ・コーナーの近辺にタッチ操作の衝撃を吸収する緩衝領域を形成した請求項11に記載の携帯式電子機器。
【請求項13】
前記アンテナ面を前記筐体の表面に平行に配置した請求項11または請求項12に記載の携帯式電子機器。
【請求項14】
前記筐体の背面を金属材料で形成した請求項11から請求項13のいずれかに記載の携帯式電子機器。
【請求項15】
鎖交磁束が通過する前記アンテナ・コイルのコイル開口を前記筐体の側面に向けて配置した請求項11から請求項14のいずれかに記載の携帯式電子機器。
【請求項16】
鎖交磁束が通過する前記アンテナ・コイルのコイル開口を前記筐体の表面に向けて配置し、筐体の側面から前記コイル開口に鎖交磁束を誘導する磁性体シートを設けた請求項11から請求項14のいずれかに記載の携帯式電子機器。
【請求項17】
前記携帯式電子機器がスマートフォンまたはタブレット端末である請求項11から請求項16のいずれかに記載の携帯式電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信(NFC)をするためのアンテナに関し、さらには携帯式電子機器によるタッチ操作を容易にするアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードまたは非接触ICタグなどを使った無線通信技術としてRFID(Radio Frequency Identification:無線固体識別)が知られている。NFC(Near Field Communication)は、非接触ICカードを利用する点でRFIDと概念的に類似するが、RFIDには数メートル程度の通信が可能なものもある一方でNFCはアンテナ同士を2センチメートルから4センチメートル程度以下まで接近させて通信を行い、かつ用途が異なることもあってRFIDとは別に、NFCフォーラムという標準化団体が技術仕様を策定しISO/IEC14443、ISO/IEC18092として規定した。
【0003】
近年のスマートフォンやタブレット端末には、NFCモジュールを搭載するものが登場するようになってきた。NFCには、リーダ・ライタが電源をもたない非接触ICカードや非接触ICタグと通信を行う受動通信と、電源を備えた2つの機器が交互にイニシエータとターゲットになって通信する能動通信が定義されている。NFC規格は、非接触ICカードの役割を代替するカード・エミュレーション機能、NFCタグを読み取るためのリーダ・ライタ機能、およびNFCデバイス同士で通信する機器間通信(P2P)機能の3つの機能を規定する。
【0004】
リーダ・ライタ機能では、Felica(登録商標)、Mifare(登録商標)などのタイプ1からタイプ4までの4種類の非接触ICカードを読み取ることができるようになっている。NFCでは一方の機器のNFCアンテナを他方の機器のNFCアンテナに通信可能な距離まで接近させる必要があるが、電源のない非接触ICカードにアクセスしてデータの読み書きをすることができ、両者を接近させるだけで通信の開始と終了ができるため、片手で保持できるスマートフォンやタブレット端末ではスマートポスターや電子決済などのさまざまな分野で利用されている。
【0005】
特許文献1は、ループ・コイルが形成された基板とループ・コイルの中を貫通する磁性体シートで形成されたRFID用のアンテナを開示する。同文献は、アンテナのコイル面がPDAの筐体のパネル部の内側に配置することを記載している。特許文献2も類似する構造のRFID用のアンテナを開示する。同文献は、アンテナ・コイルが形成されたアンテナ基板を、携帯電話機の筐体の面における複数の外周辺に設けることを記載している。
【0006】
特許文献3は、無線端末に搭載するRFID用のアンテナを開示する。同文献は、無線端末の筐体の通信主面に平行な金属体にコイル軸が平行になるようにループ状アンテナを設けることを記載している。また、コイル面を折り曲げてL字状にしたアンテナについても記載している。特許文献4は、無線端末に搭載するRFID用のアンテナを開示する。同文献は、アンテナの導体部分をL字状に折り曲げることで、リーダ/ライタ側のアンテナに対する無線端末側のアンテナの角度が変わっても良好な特性が得られることを記載している。特許文献5は、携帯電子機器に搭載するRFID用のアンテナを開示する。同文献は、L字型の磁性体コアにコイルを巻いたアンテナを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3975918号公報
【特許文献2】特開2011−229133号公報
【特許文献3】特開2012−134605号公報
【特許文献4】特許第4978756号公報
【特許文献5】特開平10−242742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
スマートフォンやタブレット端末などの携帯式電子機器と、改札口のリーダ/ライタ、コンピュータまたはプリンターなどの静止する電子機器との間でNFCを行う場合は、手に持った携帯式電子機器を静止する電子機器のアンテナに近づける操作を行う。以下においては、NFCのために手に保持する一方の機器を他方の機器に接近させてアンテナ同士に電磁結合させる操作をタッチ操作ということにする。これまで、携帯式電子機器では、操作面となる携帯式電子機器の表面またはそれに対向する背面を相手側のアンテナに近づけてタッチ操作をしていた。
【0009】
図7は、従来のスマートフォン1でタッチ操作をするときの様子を示している。スマートフォン1におけるNFCアンテナ3の位置がわかりにくいため、ユーザはタッチ操作をするために、筐体の側面を持って表面または背面を相手側のアンテナがある面に対して接近させながら移動させてNFCを開始できる位置を探索する必要がある。したがって、NFCを開始するまでの探索に時間を費やす場合があり、この傾向は面積の大きいタブレット端末ではより顕著である。また、表面または背面を相手側のアンテナに接近させるためには、スマートフォン1の筐体の表面まで指が廻らないように側面だけを挟んで持つ必要があり筐体の保持がし難いため落下の危険性も伴う。
【0010】
また電子機器の筐体の背面にアルミニウムやマグネシウムなどの金属材料を使用する場合は、渦電流が磁束の通過を妨げるため背面をタッチ面にすることができない。特許文献2のように複数のアンテナを設ける方法であっても、ユーザが携帯電話機における正確なアンテナの位置がわからないためNFCをするための位置探索に時間がかかる。さらに、NFCモジュールからアンテナまでの配線が増えるため実装密度を向上することの障害になる。
【0011】
特許文献4の方法では、無線端末の筐体の表面または背面と側面が形成するコーナーを接近させてNFCを行うことができるが、側面の全体に渡ってアンテナを設けない限りユーザは正確なアンテナの位置がわからないためNFCを開始するまでの位置探索に時間がかかる。また、アンテナ面を折り曲げているため、筐体の薄型化を図ることができない。
【0012】
そこで本発明の目的は、NFCを短時間で開始できるアンテナを提供することにある。さらに本発明の目的は、携帯式電子機器のタッチ操作を容易にするアンテナを提供することにある。さらに本発明の目的は、携帯式電子機器の薄型化および高密度化を可能にするアンテナを提供することにある。さらに本発明の目的は、そのようなアンテナを実装する携帯式電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は携帯式電子機器の筐体に収納して近距離無線通信に使用するアンテナを提供する。絶縁基板のアンテナ面は、同一平面上で所定の角度で屈曲した屈曲部を備える。ループ状のアンテナ・コイルは、アンテナ面に所定の角度で屈曲するように形成したコイル・パターンを含み絶縁基板の屈曲部を含む側面に鎖交磁束の出入り口を備える。屈曲する絶縁基板は、平坦な単一の絶縁基板を加工したり2種類の絶縁基板を結合したりして成形することができる。
【0014】
アンテナは絶縁基板の側面に鎖交磁束の出入り口を有するため、携帯式電子機器の筐体の側面に出入り口が向くように端に配置できる。したがって、携帯式電子機器の筐体を薄くしたり高密度実装をしたりするのに適している。絶縁基板の所定の角度は携帯式電子機器の内側の側面に合わせることができるが、90度にすれば筐体が直方体状の多くの携帯式電子機器に適合させることができる。なお、絶縁基板およびアンテナの屈曲部は直線的に折れ曲がるようにしてもよいし、曲線的に折れ曲がるようにしてもよい。
【0015】
鎖交磁束が通過するアンテナ・コイルのコイル開口は、絶縁基板の側面に形成することができる。このとき、コイル・パターンは絶縁基板の表面に形成した表面パターンと、絶縁基板の裏面に形成し表面パターンと端部で接続した裏面パターンを含んで構成することができる。裏面パターンを利用することで所定のアンテナ面の面積に対してアンテナ・コイルの巻数を増加させることができる。さらにこのとき絶縁基板が磁性体シートを間に挟んだ第1の絶縁基板と第2の絶縁基板を含み、表面パターンを第1の絶縁基板に形成し裏面パターンを第2の絶縁基板に形成することができる。
【0016】
鎖交磁束が通過するアンテナ・コイルのコイル開口を絶縁基板のアンテナ面に形成することができる。このとき、絶縁基板の側面からコイル開口に鎖交磁束を誘導する磁性体シートを設けることができる。コイル・パターンがコイル開口を中心に対向する内側パターンと外側パターンを含む場合に、磁性体シートはコイル開口を貫通し投影が内側パターンと外側パターンに重なるように配置することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、近距離無線通信をすることが可能な携帯式電子機器を提供する。筐体は側面と表面と背面とを含み、側面のコーナーにタッチ操作をするためのタッチ・コーナーを定義する。アンテナは、同一平面上でアンテナ面が側面のコーナーに適合する所定の角度で屈曲している絶縁基板と、アンテナ面に所定の角度で屈曲するように形成し絶縁基板の側面に鎖交磁束の出入り口を備えるループ状のコイル・パターンとを含み、鎖交磁束の出入り口が筐体の側面に向くように配置する。
【0018】
筐体の構造から位置を容易に認識できるタッチ・コーナーが鎖交磁束の出入り口になるため、タッチ・コーナーを相手方のアンテナに接近させることにより短時間でNFCを開始することができる。また、タッチ・コーナーを相手方のアンテナに向ける場合は、携帯式電子機器の保持が容易になる。タッチ・コーナーの近辺には、タッチ操作の衝撃を吸収する緩衝領域を形成することができる。アンテナ面を筐体の表面に平行に配置すれば、筐体の厚さ方向でアンテナが使用するスペースを少なくすることができる。筐体の側面が磁束の出入り口になるため筐体の背面を金属材料で形成することができる。携帯式電子機器はスマートフォンまたはタブレット端末とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、NFCを短時間で開始できるアンテナを提供することができた。さらに本発明により、携帯式電子機器のタッチ操作を容易にするアンテナを提供することができた。さらに本発明により、携帯式電子機器の薄型化および高密度化を可能にするアンテナを提供することができた。さらに本発明により、そのようなアンテナを実装する携帯式電子機器を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】NFC装置を搭載するノートPC10の外形を説明するための図である。
【
図2】スマートフォン100の外形を説明するための図である。
【
図3】NFCアンテナ200の構造を説明するための図である。
【
図4】スマートフォン100にNFCアンテナ200を実装した状態を説明するための図である。
【
図5】NFCアンテナ200を実装するスマートフォン100をタッチパッド19に接近させてタッチ操作をするときの様子を説明するための図である。
【
図6】他のNFCアンテナ300の構造を説明するための図である。
【
図7】従来のスマートフォンでタッチ操作をするときの様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、NFC装置を搭載するノートPC10の外形を説明するための図である。
図1(A)に示すようにノートPC10は、LCD13を搭載するディスプレイ筐体11と、表面にキーボード17やタッチパッド19を搭載し、内部にシステム・デバイスを実装する回路基板を収納するシステム筐体15が開閉できるように結合されている。タッチパッド19の下部には、ループ・コイルで形成されたNFCアンテナ21を配置する。システム筐体15が収納する回路基板はNFCアンテナ21に接続したNFCモジュール23を実装する。
【0022】
図1(B)は、NFCアンテナ21がタッチパッド19の表面に形成する磁界の様子を示している。NFCアンテナ21に高周波電流が流れると、アンテナ開口22を通過する交番磁界が形成され、周囲の空間に透磁率に応じた交番磁束が流れる。これとは逆に、外部の交番磁束がコイル開口22を通過してNFCアンテナ21と鎖交すると、NFCアンテナ21に高周波電圧が誘起してインピーダンスに応じた高周波電流が流れる。
【0023】
図2は、ノートPC10とNFCをすることが可能なスマートフォン100の外形を説明するための図である。
図2(A)、(B)、(C)、(D)はそれぞれ平面図、底面図、背面図、左側面図である。スマートフォン100は、表面103、背面105、外側の側面101a〜101dで外形を画定する。側面101aと側面101bが連絡する矢印Aで示すコーナーは、スマートフォン100がタッチ操作をする中心的な部位に相当し、以後これをタッチ・コーナーAということにする。タッチ・コーナーAの内側には、後に説明するようにスマートフォン100のNFCアンテナ200(
図3)を配置する。
【0024】
表面103はガラス板で形成し、背面105および側面101a〜101dは合成樹脂で形成することができる。ただし、背面105および側面101a〜101dのなかでタッチ・コーナーAの近辺でNFCアンテナ200を取り付ける領域を除いた領域は、マグネシウムまたはあるアルミニウムなどの金属材料で形成することができる。タッチ・コーナーAおよびその近辺の側面101a、101bには、タッチパネル19にタッチ操作をしたときの衝撃を吸収するためにゴムやスプリングなどの弾力部材で形成した、緩衝突起107a〜107cを設けている。
【0025】
図3は、スマートフォン100に実装するNFCアンテナ200の構造を説明するための図である。
図3(A)は平面図で、
図3(B)、(C)はそれぞれ
図3(A)のX−X矢視、Y−Y矢視で切断した断面図である。NFCアンテナ200は、表側の絶縁基板201と裏側の絶縁基板203の表面に形成したアンテナ・コイル207を含んでいる。絶縁基板201、203はガラスエポキシ基板やコンポジット基板などのリジッド基板、またはポリイミド・フィルムやポリエステル・フィルムなどのフレキシブル基板のいずれでもよい。パターンの形成方法は特に限定する必要はなく、絶縁基板201、203の全面に貼り付けた銅箔をエッチングしたり、レジストを形成した絶縁基板201、203に銅メッキしたりするなどのさまざまな方法を採用することができる。
【0026】
絶縁基板201と絶縁基板203の間にはフェライト粉末や金属粉末などの強磁性材料で形成した磁性体シート205を挟み込んでいる。アンテナ・コイル207は、表面パターン207aと裏面パターン207bを含む。絶縁基板201には表面パターン207aを形成し、絶縁基板203には裏面パターン207bを形成している。表面パターン207aと裏面パターン207bは、全体が1本の連続した導線となってループ・コイルを形成するように端部において内部をメッキしたスルーホール(ビア・ホール)209a、209bで電気的に接続している。
【0027】
以後、表面パターン207aおよび裏面パターン207bを形成する絶縁基板203、203の表面をアンテナ面201a、203aという。
図3では表面パターン207aと裏面パターン207bは投影が平面的にシフトした位置に配置しているが、両方のパターンを平面的に重なり合う位置に形成すれば、所定のアンテナ面の面積におけるアンテナ・コイル207の巻数を一層増加させることができる。
【0028】
絶縁基板201、203および磁性体シート205は、アンテナ面201a、203aをそれぞれ同一平面上に維持しながら矢印Aで示す部分で直角に折れ曲がるようにL字状に形成している。表面パターン207a、裏面パターン207bもそれに沿ってL字状に形成している。絶縁基板201、203および磁性体シート205の断面が形成する外側の長辺202a、202b、内側の長辺206a、206bおよび短辺204a、204bは、NFCアンテナ200の平面的な形状を画定する。なお、NFCアンテナ200は、スマートフォン100に装着したときにタッチ・コーナーAでタッチできるようにするために、外側の長辺202a、202bがL字状に屈曲し、それに沿ってアンテナ・コイル207がL字状に屈曲していることが重要であり、内側の長辺206a、206bは必ずしもL字状にする必要はない。
【0029】
アンテナ・コイル207の両端は、絶縁基板203に実装した共振回路211に接続している。共振回路211は、抵抗、コンデンサ、およびリアクトルで構成され、アンテナ・コイル207を一例として13.56MHzの高周波電流に共振させる。共振回路211は、スマートフォン100の回路基板に実装するNFCモジュール155(
図4)に接続する。
【0030】
NFCアンテナ200は、矢印A、B、Cで示す絶縁基板201、203および磁性体シート205の側面方向に鎖交磁束の出入り口を備える。鎖交磁束の出入り口はアンテナ・コイル207のコイル開口251に相当する。コイル開口251は、アンテナ・コイル207を鎖交する交番磁束の通路で、絶縁基板201、203および磁性体シート205の断面に相当する。矢印Aの方向は、NFCアンテナ200をスマートフォン100に実装したときに
図2のタッチ・コーナーAの位置に整合する。
【0031】
ノートPC10のNFCアンテナ21が放射した交番磁界がコイル開口251を通過してアンテナ・コイル207と鎖交すると誘起電圧が発生する。コイル開口251に充填した磁性体シート205は、NFCアンテナ21が放射した交番磁界による磁束密度を増加して誘起電圧を上昇させる。反対に、NFCアンテナ200に高周波電流を流したときにアンテナ・コイル207が交番磁界を放射してNFCアンテナ21に誘起電圧を発生させる。表面パターン207aと、裏面パターン207bの長辺202a側と長辺202b側における長さを同一にすれば、細長いコイル開口251の長さ方向の中心が矢印Aの位置に整合するためタッチ操作の際に、外部磁束を効果的に検出できる。
【0032】
図4は、スマートフォン100にNFCアンテナ200を実装した状態を説明するための図である。
図4(A)はガラス板159および化粧パネル161を取り除いた状態の平面図で、
図4(B)は部分的な断面図である。内側の側面102a〜102dで平面的な内部領域が画定される筐体の内部には、電池157、回路基板153、LCD151、NFCアンテナ200およびガラス板159が実装されている。ガラス板159の表面がスマートフォン100の表面103に相当する。回路基板153には、NFCモジュール155の他に、CPU、システム・メモリ、I/Oモジュール、カメラ・モジュールなどのさまざまな電子回路が実装されている。
【0033】
NFCモジュール155は、送信時にシステムから受け取ったデータを符号化し、符号化したデータで13.56MHzといったような高い周波数の搬送波を変調し、変調した信号を増幅してからNFCアンテナ200に高周波電流を流すための半導体チップである。NFCモジュール155は受信時にタッチ操作により発生したNFCアンテナ200の誘起電圧による電流を増幅してから復調し、復調したデータを復号してシステムに送る。スマートフォン100は、リーダ/ライタおよびICカードのいずれとしてでもNFCを行うことができる。
【0034】
NFCアンテナ200は、ガラス板159の下に配置した化粧パネル161の下面に両面テープまたは接着剤などで貼り付けて装着することができる。NFCアンテナ200と回路基板153の間には、磁界による回路基板153へのノイズの混入を防ぐためアルミニウム・シート163を配置している。NFCアンテナ200は、長辺202a、202b(
図3)が、側面102a、102bに接触してまたはわずかに離れて沿うように配置している。
【0035】
コイル開口251は、スマートフォン100の筐体の側面を向いているため、筐体の背面は金属材料で形成することができる。このときNFCアンテナ200は、アンテナ面201a、203aが筐体の表面103に平行になるように配置することができる。アンテナ面201a、203aを表面103に平行に配置することで、筐体の上下方向に多くのスペースを費やさないようにしながらNFCアンテナ200を実装することができる。さらに、NFCアンテナ200は筐体の端部に配置できるため、筐体の内部におけるデバイスの実装密度を向上させることができる。
【0036】
図5は、NFCアンテナ200を実装するスマートフォン100をタッチパッド19に接近させてタッチ操作をするときの様子を説明するための図である。ユーザは、スマートフォン100の筐体の背面105を掌に密着させ、かつ指が表面103にかかるように廻して確実に保持しながら、タッチ・コーナーAをタッチパッド19に接近させることができる。
【0037】
鎖交磁束の出入り口に対応するコイル開口251は、筐体の特徴的な位置であるタッチ・コーナーに存在するため、ユーザはその位置を容易に認識することができる。タッチ・コーナーAは、コイル開口251の中心に位置するため、タッチ・コーナーAを接近させることで効率よく磁束を鎖交させることができる。タッチ・コーナーAをタッチパッド19の中心近辺に近づけると、NFCアンテナ21が放射した交番磁界がアンテナ・コイル207に所定値以上の誘起電圧を誘起してNFCが可能になる。
【0038】
図6は、スマートフォン100にNFCアンテナ200と同様に配置することができる他のNFCアンテナ300の構造を説明する図である。
図6(A)は平面図で、
図6(B)、(C)はそれぞれ
図6(A)のX−X矢視、Y−Y矢視で切断した断面図である。NFCアンテ300は、絶縁基板301の表面であるアンテナ面301aにアンテナ・コイル307を形成している。絶縁基板301の材質およびアンテナ・コイル307の形成方法は、NFCアンテナ200と同様にすることができる。
【0039】
アンテナ・コイル307は、全体が1本の連続した導線となってループ・コイルを形成するようにアンテナ面301a上に形成している。絶縁基板301のアンテナ面301aと反対側の面を裏面301bという。絶縁基板301は、アンテナ面301aを同一平面上に維持しながら矢印Aで示す部分で直角に折れ曲がるようにL字状に形成している。アンテナ・コイル307もそれに沿ってL字状に形成している。絶縁基板301の断面で形成される外側の長辺302a、302b、内側の長辺303a、303b、および短辺304a、304bは、NFCアンテナ300の平面的な形状を画定する。
【0040】
NFCアンテナ300は、アンテナ・コイル307のコイル開口353を磁性体シート305が貫通している。磁性体シート305は、コイル開口351を挟んで対向し、外側の長辺302a、302b側に位置する外側パターン307bと内側の長辺303a、303b側に位置する内側パターン307aを含む。NFCアンテナ300をスマートフォン100に実装するときに内側パターン307aは筐体の内部の方向に配置し、外側パターン307bは筐体の側面102a、102bの方向に配置する。
【0041】
磁性体シート305は、その投影がコイル・パターン307a、307bに重なり、かつ、コイル・パターン307aの上からコイル・パターン307bの下に位置する絶縁基板301の裏面301bに延びている。アンテナ・コイル307の両端は、絶縁基板301の裏面301bに実装した共振回路311に接続している。矢印Aの方向は、NFCアンテナ300をスマートフォン100に実装したときに
図2のタッチ・コーナーAの位置に整合する。
【0042】
NFCアンテナ300の近辺に存在する交番磁界は、磁性体シート305の中に強い交番磁束を生じさせる。コイル開口353を貫通する磁性体シート305を通過した交番磁束は、アンテナ・コイル307と鎖交して誘導電圧を誘起する。反対に、NFCアンテナ300に高周波電流を流したときにアンテナ・コイル307が交番磁界を放射してNFCアンテナ21に誘導電圧を誘起する。NFCアンテナ200、300は、スマートフォンやタブレット端末などの携帯式電子機器に限らず他の固定式の電子機器に搭載することもできる。また、絶縁基板およびコイル・パターンが屈曲する角度は、電子機器の筐体のコーナーの角度に整合させることができる。また絶縁基板の屈曲部は、直線的に屈曲するだけでなく曲線的に屈曲するものでもよい。
【0043】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0044】
10 ノートPC
21、200、300 NFCアンテナ
100 スマートフォン
103 表面
105 背面
101a〜101d 外側の側面
102a〜102d 内側の側面
107a、107b、107c 緩衝突起
201、203 絶縁基板
201a、201b アンテナ面
202a、202b 外側の長辺
204a、204b 短辺
206a、206b 内側の長辺
205 磁性体シート
207 アンテナ・コイル
207a 表面パターン
207b 裏面パターン
251 鎖交磁束の出入り口(コイル開口)
300 NFCアンテナ
301 絶縁基板
301a アンテナ面
301b 裏面
302a、302b 外側の長辺
303a、303b 内側の長辺
304a、304b 短辺
305 磁性体シート
307 アンテナ・コイル
307a 内側パターン
307b 外側パターン
351 鎖交磁束の出入り口
353 コイル開口
A タッチ・コーナー