【解決手段】 本発明は、論理セルに対する複数のスイッチ部を備えた半導体集積回路であって、各スイッチ部は、電源線に設けられた電源スイッチと、入力端子に入力される、該電源スイッチを導通状態又は非導通状態のいずれかに切り替え制御するための電源制御信号を、イネーブル端子に入力される第1のラッチ制御信号に従ってラッチし、出力端子から出力する第1のラッチ部と、入力端子に入力される該第1のラッチ部によりラッチされた電源制御信号を、イネーブル端子に入力される第2のラッチ制御信号に従ってラッチし、出力端子から出力する第2のラッチ部と、を備える半導体集積回路である。複数のスイッチ部における第1のスイッチ部の第2のラッチ部から出力された電源制御信号は、第2のスイッチ部の第1のラッチ部の入力端子に入力される。
前記第1のスイッチ部の前記少なくとも1つの第1のラッチ部の前記出力端子から出力された前記電源制御信号は、前記少なくとも1つの第2のラッチ部の前記入力端子に入力される前に論理否定されるように構成され、
前記第1のスイッチ部の前記少なくとも1つの第2のラッチ部の前記出力端子から出力された前記電源制御信号は、前記第2のスイッチ部の前記少なくとも1つの第1のラッチ部の前記入力端子に入力される前に論理否定されるように構成される、
請求項1又は2記載の半導体集積回路。
前記複数のスイッチ部のそれぞれを制御することは、前記試験対象となる一のスイッチ部が順番に切り替わるように、前記第1のラッチ制御信号及び前記第2のラッチ制御信号のそれぞれの値を制御することを含む、請求項8記載の試験方法。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造プロセス微細化の進展により、リーク電流による半導体集積回路への影響が以前にも増して大きくなっている。リーク電流を削減する手法として、半導体集積回路を複数の領域に分割するとともに、該分割領域のそれぞれに電源スイッチを設け、該電源スイッチを制御することによって、使用しない分割領域に対する電源供給を遮断する方法が知られている。
【0003】
例えば、MTCMOS(Multi-Threshold CMOS)技術では、特定の機能を果たす回路ブロックごとに、その電源線に高い閾値電圧のトランジスタスイッチを設けておき、未使用状態の回路ブロックに対しては、該トランジスタスイッチをオフ状態にして、リーク電流経路を遮断することにより、消費電力の浪費を防止する。
【0004】
下記特許文献1は、未使用の回路セルへの電源供給を遮断することにより消費電力の削減を図る半導体集積回路を開示する。具体的には、特許文献1は、複数の回路セルと、電源線群と、該電源線群に接続される電源スイッチセルと、該電源スイッチセルに接続され、所定の該回路セルに電源を供給する分岐線群とを有する半導体集積回路を開示する。該電源スイッチセルは、該分岐線群の少なくとも1つの分岐線に接続されている第1の配線と、該電源線群の少なくとも1つの電源線に、該分岐線群に含まれる第2の分岐線を介して接続されている第2の配線と、該第1の配線と該第2の配線との間に接続され、入力される制御信号に応じてオンまたはオフするスイッチ回路とを含んでいる。
【0005】
このようなスイッチ回路を用いた半導体集積回路では、スイッチ回路のオン/オフ動作に従って回路内にラッシュカレントが発生し、回路内の各素子に大きなストレスを与え、これらを破壊するおそれがある。かかる事情から、下記特許文献2は、分散型ヘッダスイッチでの過度電流を低減する技術を開示する。具体的には、特許文献2は、回路を電源に接続するための、線形接続された各コンビネーションスイッチを含む分散型ヘッダスイッチにおいて、該コンビネーションスイッチのヘッダスイッチを順次にオンする前に、該コンビネーションスイッチのプレチャージスイッチを順次にオンすることにより、電圧レベルを目標電圧レベルに徐々に近づけていくことで、過度電流を抑制する技術を開示する。
【0006】
特許文献2に開示される技術では、回路のレイアウト設計工程において個々のスイッチに対する制御信号の伝搬時間をシミュレーションし、その結果に従って、スイッチの選択、配置及び配線が決定される。しかしながら、シミュレーション結果と製品の実測値との間には誤差が生ずることが少なくなく、製造後に設計変更が必要となる場合がある。
【0007】
このため、下記特許文献3では、半導体集積回路の製造後であっても、電源スイッチの特性を変更できるようにしている。具体的には、特許文献3は、複数の電源線間の接続を切り換える複数の電源スイッチを有する半導体集積回路であって、該複数の電源スイッチの少なくとも1つは、該複数の電源線間に接続されたトランジスタと、設定値を保持する設定値保持部と、該設定値に基づいて、該トランジスタの接続状態を切り換える接続制御信号を、複数の制御信号の中から選択する選択部とを有するようにした、半導体集積回路を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、半導体集積回路内の分割された領域のそれぞれには、該領域が必要とする電力を十分に供給できるだけの数からなる、該領域と電源線との接続を制御するスイッチが並列に接続される。即ち、半導体集積回路の消費電力は、製造時のプロセス仕上がり、動作時の電源電圧、動作時の温度、入出力するデータの内容等で変動するため、必要なスイッチの数は、該半導体集積回路の最大電力を想定して決定される。また、典型的には、それぞれの領域のスイッチには1つの電源から共通の電源線を介して電力が供給され、それぞれの領域は、相互に独立した電源ネットワークを構成する。
【0010】
このような半導体集積回路において、ある領域の特定のスイッチが縮退故障、即ち、常時非導通状態となるか、常時導通状態となる故障になると、該スイッチは領域内への電力の供給を阻害することになる。従って、仮に、ある領域に1つのスイッチのみが設けられている場合に、該スイッチが縮退故障すれば、該領域には電力が供給されず、回路は動作できないため、該縮退故障を容易に検出することができる。しかしながら、上述したように、半導体集積回路内のそれぞれの領域には複数のスイッチが並列に設けられている場合には、該特定のスイッチの縮退故障を検出することは困難である。
【0011】
また、半導体集積回路におけるスイッチの数は、想定最大電力に従って決定されるため、該特定のスイッチの縮退故障は、該領域の通常動作に影響を及ぼさない場合がある。従って、該領域が動作するか否かによって該特定のスイッチの縮退故障を検出するためには、半導体集積回路を想定最大電力の状況下に置いて試験を実施する必要があるが、従前の半導体集積回路に対してはこのような試験は一般的に困難であった。
【0012】
さらに、半導体集積回路内のそれぞれの領域は電源を共通にしているため、特定の領域に対してスイッチをオン(導通)状態にすることで発生するラッシュカレントは、既に導通状態にある他の領域に対して電圧降下等の悪影響を及ぼす可能性がある。上述の特許文献3は、ラッシュカレントを防止し、さらに、製造後であってもスイッチの特性を変更することができるようにした技術を開示するが、スイッチの特性変更のための種々の回路(例えば、マルチプレクサやリセット回路等)が必要となり、回路規模が増大してしまうという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、半導体集積回路を構成する領域のそれぞれに並列的に設けられた複数のスイッチのそれぞれに対する非導通状態への縮退故障を容易に検出することができる半導体集積装置を提案することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、上述のような縮退故障を検出可能な半導体集積回路であって、回路規模を抑制しつつ、ラッシュカレントの発生を効果的に防止することができる半導体集積回路を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的特徴乃至は発明特定事項を含んで構成される。
【0016】
即ち、ある観点に従う本発明は、論理セルに対する電力の供給/遮断のための複数のスイッチ部を備えた半導体集積回路であって、前記複数のスイッチ部のそれぞれは、前記論理セルに対する電源線に設けられた少なくとも1つの電源スイッチと、入力端子、出力端子及びイネーブル端子を有し、該入力端子に入力される、前記少なくとも1つの電源スイッチを導通状態又は非導通状態のいずれかに切り替え制御するための電源制御信号を、該イネーブル端子に入力される第1のラッチ制御信号に従ってラッチし、該出力端子から出力する少なくとも1つの第1のラッチ部と、入力端子、出力端子及びイネーブル端子を有し、該入力端子に入力される前記少なくとも1つの第1のラッチ部によりラッチされた前記電源制御信号を、該イネーブル端子に入力される第2のラッチ制御信号に従ってラッチし、該出力端子から出力する少なくとも1つの第2のラッチ部と、を備え、前記複数のスイッチ部における第1のスイッチ部の少なくとも1つの第2のラッチ部の出力端子から出力された電源制御信号は、前記複数のスイッチ部における第2のスイッチ部の少なくとも1つの第1のラッチ部の入力端子に入力される、半導体集積回路である。
【0017】
前記半導体集積回路は、前記電源線に電気的に接続されたテスト線をさらに含み得る。
【0018】
また、前記第1のスイッチ部の前記少なくとも1つの第1のラッチ部の前記出力端子から出力された前記電源制御信号は、前記少なくとも1つの第2のラッチ部の前記入力端子に入力される前に論理否定されるように構成され、前記第1のスイッチ部の前記少なくとも1つの第2のラッチ部の前記出力端子から出力された前記電源制御信号は、前記第2のスイッチ部の前記少なくとも1つの第1のラッチ部の前記入力端子に入力される前に論理否定されるように構成され得る。
【0019】
さらに、前記複数のスイッチ部のそれぞれは、前記電源線の2つのノードを基点に並列的に接続された2以上の前記電源スイッチを含み得る。そして、前記2以上の電源スイッチのそれぞれに対応する前記第1のラッチ部の前記入力端子に前記電源制御信号が入力され、前記2以上の電源スイッチのそれぞれに対応する前記第2のラッチ部の前記出力端子から前記電源制御信号が出力され得る。
【0020】
さらにまた、前記2以上の電源スイッチのそれぞれは、互いに異なる許容電流量が規定され得る。
【0021】
また、別の観点に従う本発明は、複数の論理セルに対応して複数の分割領域がそれぞれ形成された半導体集積回路であって、前記複数の分割領域のうちの一の分割領域における論理セルに対する電源線の2つノードを基点に電気的に並列に接続された複数のスイッチ部を備え、前記複数のスイッチ部のそれぞれは、入力端子、出力端子及びイネーブル端子を有する少なくとも第1のラッチ部と、前記少なくとも1つの第1のラッチ部の前記出力端子に接続され、前記電源線の前記2つのノード間の導通状態を切り替える少なくとも1つの電源スイッチと、入力端子、出力端子及びイネーブル端子を有し、該入力端子が前記第1のラッチ部の前記出力端子に接続された少なくとも1つの第2のラッチ部と、を備え、前記少なくとも1つの第1のラッチ部は、該入力端子に入力される電源制御信号を、該イネーブル端子に入力される第1のラッチ制御信号に従ってラッチし、該出力端子から出力し、前記少なくとも1つの第2のラッチ部は、該入力端子に入力される前記第1のラッチ部から出力される電源制御信号を、該イネーブル端子に入力される第2のラッチ制御信号に従ってラッチし、該出力端子から出力し、前記少なくとも1つの第2のラッチ部の前記出力端子から出力された電源制御信号は、並列に接続された前記複数のスイッチ部における他のスイッチ部の前記少なくとも1つの第1のラッチ部の入力端子に入力される、半導体集積回路である。
【0022】
さらに、別の観点に従う本発明は、前記半導体集積回路におけるラッシュカレントの抑制方法であって、前記第1のラッチ制御信号及び前記第2のラッチ制御信号に従って、前記複数のスイッチ部のそれぞれが順番に導通状態となるように、前記複数のスイッチ部のそれぞれを制御することを含む、ラッシュカレントの抑制方法である。
【0023】
さらにまた、別の観点に従う本発明は、前記半導体集積回路における前記複数のスイッチ部に対する試験方法であって、前記第1のラッチ制御信号及び前記第2のラッチ制御信号に従って、特定の時点において、前記複数のスイッチ部のうち、試験対象となる一のスイッチ部のみが導通状態となるように、前記複数のスイッチ部のそれぞれを制御することと、前記導通状態となった前記一のスイッチ部の前記テスト線の電位を測定することと、前記測定された電位が所定のレベルにあるか否かを判定することと、該判定の結果、前記測定された電位が前記所定のレベルにないと判定される場合に、前記一のスイッチ部が故障であると判定することと、を含む試験方法である。
【0024】
ここで、前記複数のスイッチ部のそれぞれを制御することは、前記試験対象となる一のスイッチ部が順番に切り替わるように、前記第1のラッチ制御信号及び前記第2のラッチ制御信号のそれぞれの値を制御することを含み得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、半導体集積回路を構成する領域のそれぞれに並列的に設けられた複数のスイッチのそれぞれに対する非導通状態への縮退故障を容易に検出することができるようになる。
【0026】
また、本発明よれば、半導体集積回路の回路規模を抑制しつつ、ラッシュカレントの発生を効果的に防止することができるようになる。
【0027】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体集積回路におけるスイッチ部の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。同図に示すように、本実施形態の半導体集積回路1におけるスイッチ部10は、例えば、電源スイッチ12と、ラッチ部14及び16とを含んで構成される。スイッチ部10は、典型的には、半導体集積回路の電源線TVDDとVVDDとの間に設けられ、電源制御信号NSLEEPによる制御の下、オン(導通状態)/オフ(非導通状態)を切り替えて、電源線VVDDに接続された論理セル(
図3参照)に対する電力の供給/遮断を行う回路である。
【0031】
電源スイッチ12は、例えば、P型MOSFETを含んで構成される。即ち、電源スイッチ12のドレインは電源線TVDDに接続され、ソースは電源線VVDDに接続される。また、電源スイッチ12のゲートは、後述するラッチ部14のデータ出力端子QNに接続される。なお、本例では、電源スイッチ12は、P型MOSFETにより構成されているが、これに限られるものでなく、N型MOSFETであっても良いし、或いは、バイポーラトランジスタ等であっても良い。
【0032】
ラッチ部14及び16は、例えば、D型ラッチ回路である。ラッチ部14は、電源スイッチ12のオン(導通状態)/オフ(非導通状態)を切り替えるためのものである。従って、ラッチ部14は、データ入力端子Dにより入力制御信号NSLEEPINを受けて、イネーブル端子Eを介して受けるラッチ制御信号G1に従って、データ出力端子QNから電源制御信号NSLEEPを出力する。入力制御信号NSLEEPINは電源スイッチ12のオン/オフを切り替えるための信号である。また、ラッチ制御信号G1は、電源スイッチ12に対する電源制御信号NSLEEPの伝搬を制御するための信号である。これにより、ラッチ部14は、例えば、ラッチ制御信号G1の立ち上がりエッジのタイミングで、データ入力端子Dに入力された入力制御信号NSLEEPINの値をデータ出力端子QNから出力する。
【0033】
一方、ラッチ部16は、ラッチ部14から出力される電源制御信号NSLEEPを、出力信号NSLEEPOUTとしてスイッチ部10の外部へ出力するためのものである。従って、ラッチ部16は、データ入力端子Dにより電源制御信号NSLEEPを受けて、イネーブル端子Eを介して受けるラッチ制御信号G2に従って、データ出力端子QNから出力信号NSLEEPOUTを出力する。ラッチ制御信号G2は、出力信号NSLEEPOUTの伝搬を制御するための信号である。これにより、ラッチ部16は、例えば、ラッチ制御信号G2の立ち上がりエッジのタイミングで、データ入力端子Dに入力された電源制御信号NSLEEPの値をデータ出力端子QNから出力する。
【0034】
電源スイッチ12のソースに接続された電源線VVDD上のノードには、テスト入力信号TESTINを受け、テスト出力信号TESTOUTを出力するためのテスト線WTESTが接続される。テスト線WTESTは、各種評価試験において電源線VVDDの例えば電位や電流などの電気的特性を、外部から観測するために用いられる。
【0035】
なお、図示されていないが、ラッチ部14及び16は、リセット端子を有していても良い。例えば、後述するような半導体集積回路に対する試験において、ラッチ部14及び16は、各リセット端子に入力されるリセット信号に従って、その状態をリセットする。
【0036】
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体集積回路におけるスイッチ部の接続構成の一例を示す図である。同図に示すように、本実施形態のスイッチ部10が、電源線TVDD及びVVDDのそれぞれノードを基点として並列的に複数個接続されている。本例では、スイッチ部10(1)〜(7)が示されている。各スイッチ部10には、ラッチ制御信号G1及びG2がそれぞれ入力される。また、スイッチ部10(1)は、電源制御信号NSLEEP(0)及びテスト信号TEST(0)が入力され、電源制御信号NSLEEP(2)及びテスト信号TEST(2)を出力する。スイッチ部10(2)は、電源制御信号NSLEEP(2)及びテスト信号TEST(2)が入力され、電源制御信号NSLEEP(4)及びテスト信号TEST(4)を出力する。このように、各スイッチ部10(n)は、電源制御信号NSLEEP(2n-2)及びテスト信号TEST(2n-2)が入力され、電源制御信号NSLEEP(2n)及びテスト信号TEST(2n)を出力する。
【0037】
なお、同図のように、本実施形態のスイッチ部10を複数用いた構成を採用した場合、ラッシュカレントが半導体集積回路1に影響を与えるおそれがある。この場合、後述するように、本実施形態のスイッチ部10の動作を制御することにより、そのようなラッシュカレントの発生を効果的に抑制することができる(
図6乃至
図8参照)。
【0038】
次に、並列に接続された複数のスイッチ部10に対する故障診断の方法について、
図3及び
図4を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る半導体集積回路の一部の構成を示すブロックダイアグラムである。具体的には、同図は、半導体集積回路1の分割された領域(機能ブロック)におけるある論理セル20に対して電力を供給する電源線TVDDとVVDDとの間に並列的に設けられた3つのスイッチ部10(1)〜10(3)を示している。論理セル20は、例えば、A/D変換回路やPLL回路やメモリセルなどである。また、論理セル20は、論理セル制御線LCNTを介して、図示しない制御回路により制御され得る。
【0039】
また、
図4は、かかるスイッチ部10(1)〜10(3)に対して供給される各種の制御信号のタイミングチャートである。
図4に示すような各種の制御信号が
図3に示す半導体集積回路1に入力された場合、出力される各信号の状態は以下のように遷移し、特定のスイッチ部10(即ち、本例ではスイッチ部10(2))のみがオンとなる。
【0040】
図4において、ラッチ制御信号G1及びG2は、例えば接地線GNDの電位を“L”、電源線TVDDの電位を“H”とした交番信号である。そして、ラッチ制御信号G1の一つ目の立ち上がりエッジによって、スイッチ部10(1)のラッチ部14(1)は、“L”となっている電源制御信号NSLEEP(0)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(1)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(1)は、不定電位から“H”へと変化し、電源スイッチ12(1)を非導通状態へと遷移させる。
【0041】
また、ラッチ制御信号G2の一つ目の立ち上がりエッジによって、スイッチ部10(1)のラッチ部16(1)は、電源制御信号NSLEEP(1)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部16(1)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(2)は、不定電位から“L”へと変化する。
【0042】
次に、ラッチ制御信号G1の二つ目の立ち上がりエッジによって、ラッチ部14(1)は、“H”となっている電源制御信号NSLEEP(0)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(1)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(1)は、“H”から“L”へと変化し、電源スイッチ12(1)を導通状態へと遷移させる。
【0043】
また、ラッチ部14(2)は、ラッチ制御信号NSLEEP(2)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(2)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(3)は、不定電位から“H”へと変化し、電源スイッチ12(2)を非導通状態へと遷移させる。
【0044】
さらに、ラッチ制御信号G2の二つ目の立ち上がりエッジによって、ラッチ部16(1)は、電源制御信号NSLEEP(1)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部16(1)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(2)は、“L”から“H”へと変化する。
【0045】
また、ラッチ部16(2)は、電源制御信号NSLEEP(3)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部16(2)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(4)は、不定電位から“L”へと変化する。
【0046】
そして、ラッチ制御信号G1の三つ目の立ち上がりエッジによって、ラッチ部14(1)は、“L”となっている電源制御信号NSLEEP(0)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(1)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(1)は、“L”から“H”へと変化し、電源スイッチ12(1)を非導通状態へと遷移させる。
【0047】
また、ラッチ部14(2)は、電源制御信号NSLEEP(2)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(2)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(3)は、“H”から“L”へと変化し、電源スイッチ12(2)を導通状態へと遷移させる。
【0048】
ラッチ部14(3)は、電源制御信号NSLEEP(4)をデータ入力端子Dより取り込む。この場合、ラッチ部14(3)のデータ出力端子QNから論理否定を介して出力される電源制御信号NSLEEP(5)は、不定電位から“H”へと変化し、電源スイッチ12(3)を非導通状態へと遷移させる。
【0049】
このようにして、最終的に、スイッチ部10(1)はオフ、スイッチ部10(2)はオン、スイッチ部10(3)はオフとなる。このように、各種の制御信号を操作することによって、各スイッチ部10を任意の状態になるように制御することができる。
【0050】
次に、半導体集積回路における複数のスイッチ部10に対する故障検出のための試験を、
図5及び
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、半導体集積回路における複数のスイッチ部に対する故障検出の試験を説明するための図である。また、
図6は、本発明の一実施形態に係る半導体集積装置における複数のスイッチ部に対する故障検出の試験方法を説明するためのフローチャートである。試験は、例えば、個別化されたダイとしての半導体集積回路1に対して実施されても良いし、個別化される前のウェハに対して実施されても良い。
【0051】
これらの図を参照して、複数のスイッチ部10を含む半導体集積回路1は、まず、例えば、試験装置500の台座に載置され、プローブP1を介して制御部510及び測定部520に接続される(S601)。次に、制御部510は、入出力部530より受け取った入力信号に基づいて、試験対象とすべき一のスイッチ部10をオンに、他のスイッチ部10をオフになるように制御する(S602)。かかる状態で、測定部520は、テスト線WTESTの電位を測定し、該測定した値を制御部510に出力する(S603)。
【0052】
制御部510は、測定値が所望の電位レベルにあるか否かを判定し(S604)、該測定値が所望の電位レベルにあると判定した場合には(S604のYes)、該スイッチ部10は故障でないと判定する(S605)。一方、制御部510は、該測定値が所望の電位レベルにないと判定した場合には(S604のNo)、該スイッチ部10は故障であると判定する(S606)。つまり、仮に、試験対象であるスイッチ部10に何らかの故障があり、該試験対象のスイッチ部10が非導通状態である場合、試験対象となっていない他のスイッチ部10と合わせて、全てのスイッチ部10が非導通状態となる。この時、電源線VVDDは論理セル20に接続されているため、電源線VVDDの電位は、漏れ電流により最終的には接地線GNDの電位まで低下する。また、テスト線WTESTは、電源線VVDDに接続されているため、テスト線WTESTの電位の測定時に、テスト線WTESTの電位が電源線TVDDの電位と比較して十分に低ければ、試験対象のスイッチ部10が何らかの故障を有していると判断することができる。
【0053】
そして、制御部510は、半導体集積回路1における複数のスイッチ部10の全てについてかかる導通試験を行ったか否かを判定し(S607)、まだ試験対象としてないスイッチ部10がある場合には(S607のNo)、S602のステップに戻り、上記処理を行う。このようにして、制御部510は、ラッチ制御信号G1及びG2の値を制御して、試験対象となる一のスイッチ部10が順番にオンとなるように切り替え、そのテスト線WTESTを介して電位を測定することにより、故障したスイッチ部10があるか否かの検出を行う。
【0054】
ところで、
図2に示したように、電源線TVDDとVVDDとの間に多数のスイッチ部10を並列的に設けた場合、動作時に発生するラッシュカレントにより半導体集積回路1に影響を与えるおそれがある。しかしながら、本実施形態のスイッチ部10を用いた構成では、並列に設けられたスイッチ部10のそれぞれを容易に駆動制御することが可能であるため、ラッシュカレントを効果的に抑制することができるようになる。以下では、
図2に示したような多数のスイッチ部10を含む半導体集積回路1におけるラッシュカレントの抑制方法について説明する。
【0055】
図7乃至9は、本発明の一実施形態に係るスイッチ部を含む半導体集積回路におけるラッシュカレントの抑制方法を説明するための図であって、具体的には、複数のスイッチ部10に対する各種制御信号のタイミングチャートを示している。
【0056】
まず、
図7に示す例では、電源制御信号NSLEEPは“H”、即ち、その電位は電源線VDDの電位に固定され、また、ラッチ制御信号G1とラッチ制御信号G2とは、それぞれの立ち上がりエッジが第1の時間間隔ごとに交互に現れるように制御される。このような制御により、ラッチ制御信号G1及びG2が交互に“L”から“H”へと立ち上がるタイミングごとに、電源制御信号NSLEEPが次段のスイッチ部10に伝搬し、各スイッチ部10が順にオフからオンへと切り替わることになる。従って、各スイッチ部10が同時にオンになることがなく、ラッシュカレントを抑制することができる。
【0057】
次に、
図8に示す例では、ラッチ制御信号G1とラッチ制御信号G2とは、それぞれの立ち上がりエッジが、上記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔ごとに交互に現れるように制御される。つまり、
図7に示した例と比較して、本例では、電源制御信号NSLEEPが各スイッチ部10に伝搬する速度を遅くして、各スイッチ部10を順次オンに切り替わるタイミングを遅くしている。これにより、より効果的にラッシュカレントの抑制することができる。
【0058】
また、
図9に示す例では、ラッチ制御信号G1及びG2は、“H”になるように制御される。こうすることで、電源制御信号NSLEEPが下流のスイッチ部10へと高速に伝搬し、各スイッチ部10は順次にオフからオンに切り替わることになる。この制御方法は、電源制御信号NSLEEPが各スイッチ部10に伝搬していくのに最も時間を要すことなく行うことができる。
【0059】
このように、本実施形態の複数のスイッチ部10に対して各種の制御信号を与えることにより、各スイッチ部10を順次にオンに切り替えることができ、従って、スイッチ部10の一斉駆動を回避できるため、ラッシュカレントを効果的に抑制することができるようになる。
【0060】
なお、上記の例では、複数のスイッチ部10は、その全てが順次にオン動作するように制御されたが、これに限られるものでなく、例えば、その一部のみを対象にして順次にオン動作するようにされても良い。
【0061】
ラッシュカレントの発生を効果的に抑制するため、ラッシュカレントの評価試験により、複数のスイッチ部10の最適な制御タイミングを決定しても良い。即ち、ラッシュカレントの評価試験の結果を用いて、例えば、半導体集積回路内の分割領域(機能ブロック)ごとに、各スイッチ部10のオン動作のタイミングを調整することにより、ラッシュカレントを抑制しつつも、各スイッチ部10のオフからオンへの遷移速度を損なわないようにすることができる。また、半導体集積回路1チップ毎に、各スイッチ部10の最適な制御タイミングを設定する事で、製造ばらつきによる半導体集積回路1チップ毎の、ラッシュカレントのばらつきを収束させることができるようになる。
【0062】
ラッシュカレントの評価を行うための試験は、
図10に示すような試験装置を用いて、例えば、以下の手順で実施される。即ち、
図10は、本発明の一実施形態に係るスイッチ部を含む半導体集積回路におけるラッシュカレントの評価試験を説明するための図である。なお、同図から明らかなように、該評価試験は、
図5に示した構成に試験装置900を追加することで実施することができる。
【0063】
同図を参照して、複数のスイッチ部10を含む半導体集積回路1は、プローブP1を介して制御部510及び測定部520に接続される。また、第2の試験装置900は、例えば、プローブP2を介して試験装置900の測定部920に接続される。ここで、制御部510は、制御信号LCNTを用いて、論理セル20を所望の状態に設定しても良い。次に、制御部510は、入出力部530より受け渡された入力信号に基づいて、スイッチS1をオフに切り替えた後、各スイッチ部10を順々にオフからオンに切り替えていく。その結果、電源制御信号NSLEEPの電位は“H”に固定され、ラッチ制御信号G1及びG2は交互に“H”となるサイクルを繰り返す。従って、各スイッチ部10は、電源制御信号NSLEEPによってオフからオンに切り替わる。電源制御信号NSLEEPが各スイッチ部10を介している構成上、全てのスイッチ部10が同時にオンになることはなく、ラッシュカレントの発生は抑制される。かかる状態で、測定部は電源線TVDDの電流を測定することで、ラッシュカレントを評価することができる。
【0064】
複数のスイッチ部10の最適な制御タイミングの設定は、試験装置900を用いた試験によって得られた、ラッシュカレントの評価結果を基準に行われる。ここでは、
図7又は
図8に示した制御信号を用いるものとする。試験によって得られたラッシュカレントの評価結果が、ラッシュカレントの発生が少ない結果である場合、ラッチ制御信号G1の“L”から“H”への立ち上がりから、第2のラッチ制御信号G2の“L”から“H”への立ち上がりまでの時間間隔が試験時より短くなるように、ラッチ制御信号G1及びG2のパターンを調整する。また、試験によって得られたラッシュカレントの評価結果が、ラッシュカレントの発生が許容できる量以上に多い結果である場合、ラッチ制御信号G1の“L”から“H”への立ち上がりから、ラッチ制御信号G2の“L”から“H”への立ち上がりまでの時間間隔が十分に長くなるように、ラッチ制御信号G1及びG2のパターンを調整する。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、第1の試験装置500によって、制御部510が、ラッチ制御信号G1及びG2を制御して、所望の電源スイッチ12のゲートに電源制御信号NSLEEPの電位を入力し、特定のスイッチ部10のみ導通状態になるように設定する。その状態で、電源線VVDDに接続されているテスト線WTESTの電位を測定部520で測定することによって、導通状態に設定された特定のスイッチ部10の常時オフ状態となった縮退故障を、直接的に観測できることができるようになる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ラッチ制御信号G1及びG2が、スイッチ部10内のラッチ部14及びラッチ部16を交互に入出力導通状態にし、電源制御信号NSLEEPを、ラッチ制御信号G1の電位を接地線GNDから電源線TVDDへの立ち上がりに応じて、各スイッチ部10に伝搬させる。すると、各スイッチ部10が、電源制御信号NSLEEPの伝搬に応じて、一つずつ順にオフからオンに切り替わり、それによってラッシュカレントの効果を抑制することができるようになる。
【0067】
図11は、本発明の他の実施形態に係る半導体集積回路におけるスイッチ部の接続構成の他の例を示す図である。同図に示す接続構成は、
図2に示したものと比較して、本発明のスイッチ部10のいくつかが、従来のスイッチ30(即ち、電源スイッチ12に相当する。)に変更されているという点で相違する。即ち、本実施形態では、半導体集積回路1のある分割領域において並列的に設けられるスイッチ群のうちのいくつかがスイッチ部10に置き換えられる。本実施形態の接続形態によれば、必要な箇所のみに本実施形態のスイッチ部10を適用することで、半導体集積回路1の回路規模の増大を抑えつつ、ラッシュカレントの発生を抑制することができる。
【0068】
図12は、本発明の他の実施形態に係る半導体集積回路におけるスイッチ部の構成の一例を示すブロックダイアグラムである。即ち、本実施形態のスイッチ部40は、上述したスイッチ部10に対応する機能構成を複数系統含むように構成される。なお、同図では、2系統の機能構成を含むスイッチ部40が示されている。
【0069】
即ち、同図に示すように、電源スイッチ12A及び12Bのそれぞれは、例えば、P型MOSFETを含んで構成される。本例では、電源スイッチ12Aは、電源スイッチ12Bと比較して、ソース−ドレイン間に流すことができる許容電流量が少ないスイッチが選択されている。上記実施形態と同様に、電源スイッチ12A及び12Bのドレインは、電源線TVDDに接続され、ソースは電源線VVDDに接続される。電源スイッチ12A及び電源スイッチ12Bのゲートは、ラッチ部14A及び14Bのデータ出力端子QNにそれぞれ接続される。
【0070】
スイッチ部40の各構成要素及びその動作は上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、電源スイッチ12A及び12Bをオフからオンへと遷移させるタイミングが、相互に異なるタイミングで制御されることにより、ラッシュカレントをより効果的に抑制することができる。また、ラッチ部14A及び14Bは、いずれも同じラッチ制御信号G1によって制御される。従って、電源スイッチ12A及び12Bをオフからオンへと遷移させるタイミングは、回路のレイアウト設計工程において、配線の配置や電源スイッチの選択によって、決定することができる。或いは、入力制御信号NSLEEPIN_A及びNSLEEPIN_Bによって、制御することもできる。上記実施形態と同様に、本実施形態のスイッチ部40は、電源線TVDDとVVDDとを基点として並列的に設けることができる。また、同図に示した例では、スイッチ部40は、2系統のスイッチ機能で構成されているが、これに限られるものでなく、任意の系統数のスイッチ機能で構成されて良い。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、スイッチ部40に複数系統のスイッチ部10を含んでいるので、それらをきめ細かく制御することで、ラッシュカレントの発生をより効果的に抑制することができるようになる。
【0073】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0074】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0075】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。