【解決手段】主電流に応じたセンス電流を出力可能な電流センス付きのスイッチング素子21と、スイッチング素子21のオンオフ制御を行うためのゲートドライバ回路9と、スイッチング素子21より得られたセンス電流をセンス電圧Vsに変換して出力する電流検出回路3と、電流検出回路3より得られたセンス電圧Vs(Vs0)から所定の周波数成分を減衰させフィルタ通過センス電圧Vs1として出力する帯域除去フィルタ回路4と、フィルタ通過センス電圧Vs1が予め定められた閾値よりも大きい場合に過電流検出信号So1を出力する過電流検出回路6とを備え、ゲートドライバ回路9が、過電流検出信号So1に基づいて間接的にスイッチング素子21のオンオフ制御を行うように構成した。
前記帯域除去フィルタ回路により減衰される信号の周波数が、前記スイッチング素子を含む回路全体の共振周波数と略一致するように設定していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
前記過電流検出回路と前記ゲートドライバ回路との間に遅延回路が設けられており、当該遅延回路によって、前記過電流検出回路からの過電流検出信号が所定時間ゲートドライバ回路に到達しないように構成していることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の半導体装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1記載の半導体装置では、より高速なスイッチング制御を行おうとした場合、スイッチング素子を含む回路全体がもつ寄生容量や配線インダクタンス等に基づく電気的な共振周波数に起因して、ターンオンやターンオフ直後で生ずるノイズが大きくなり、センス電圧が閾値を超えて過電流状態にあると判断されることで、本来不要であるスイッチング素子の過電流保護が誤作動することが考えられる。
【0007】
特許文献1記載の半導体装置においても、センス電圧よりノイズ成分を除去するためにローパスフィルタが設けられているが、共振周波数でのノイズ成分を抑えようとした場合には、遮断周波数を比較的下げなければ適切なフィルタ効果を得ることは不能である。しかしながら、遮断周波数を下げると高速に過電流検出を行うことが困難になり、過電流状態でのスイッチング素子の保護性能が損なわれることになる。
【0008】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、具体的には、高速でのオンオフ切替を可能とするとともに、ノイズによる影響を抑制しながら、スイッチング素子の過電流保護を適切に行うことのできる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の半導体装置は、主電流に応じたセンス電流を出力可能な電流センス付きのスイッチング素子と、当該スイッチング素子のオンオフ制御を行うためのゲートドライバ回路と、前記スイッチング素子より得られたセンス電流をセンス電圧に変換して出力する電流検出回路と、前記電流検出回路より得られたセンス電圧から所定の周波数成分を減衰させフィルタ通過センス電圧として出力する帯域除去フィルタ回路と、前記帯域除去フィルタ回路より得られるフィルタ通過センス電圧が予め定められた閾値よりも大きい場合に過電流検出信号を出力する過電流検出回路とを備えており、前記ゲートドライバ回路が、前記過電流検出回路より得られる過電流検出信号に基づいて前記スイッチング素子のオンオフ制御を行うように構成したことを特徴とする。
【0011】
このように構成すると、主電流に対応するセンス電流を電流検出回路によって変換してセンス電圧を生じさせ、このセンス電圧に基づくフィルタ通過センス電圧が閾値よりも大きい場合に過電流検出回路より過電流検出信号を出力させて、ゲートドライバ回路が上記過電流検出信号に基づきスイッチング素子のオンオフ制御を行うことで、過電流時のスイッチング素子の保護を図ることが可能となる。さらには、過電流検出回路が、帯域除去フィルタ回路によってセンス電圧より特定の周波数成分が減衰されたフィルタ通過センス電圧を用いて過電流の検出を行うようにしていることから、特定周波数成分のノイズ成分を除去して、過電流の誤検出を防ぐことも可能となっている。また、フィルタ回路として帯域除去フィルタを用いていることから、ノイズ以外の周波数成分の信号は減衰することがないようにでき、瞬時の電流変化に対応する高速化を実現することも可能となる。
【0012】
また、スイッチング素子を含む回路全体が備える電気的な共振周波数に基づくセンス電流の変動を過電流保護の対象より除外して、より効率的にスイッチング素子の制御を行うことを可能とするためには、前記帯域除去フィルタ回路により減衰される信号の周波数が、前記スイッチング素子を含む回路全体の共振周波数と略一致するように設定することが好適である。なお、ここでいう略一致とは、双方の周波数が完全に一致することも含むものである。
【0013】
さらには、上記帯域除去フィルタを簡単に構成するためには、前記帯域除去フィルタ回路が、LCLフィルタ回路であるように構成することが好適である。
【0014】
LCLフィルタ回路を用いることなく、帯域除去フィルタを簡単に構成するためには、前記帯域除去フィルタ回路が、オペアンプを利用したフィルタ回路であるように構成しても良い。
【0015】
また、ゲートドライバ回路よりスイッチング素子に与えられる信号の立ち上がりや立ち下がりに応じてセンス電流にノイズが生じた場合であっても、こうしたノイズによる過電流検出の誤動作を防止するためには、前記過電流検出回路と前記ゲートドライバ回路との間に遅延回路が設けられており、当該遅延回路によって、前記過電流検出回路からの過電流検出信号が所定時間ゲートドライバ回路に到達しないように構成することが好適である。
【0016】
さらに、上記の発明をより好適に利用して、大容量で高速性能に優れたものとするためには、前記スイッチング素子が、SiC半導体素子であるように構成することが好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明によれば、高速でのオンオフ切替を可能とするとともに、ノイズによる影響を抑制しながら、スイッチング素子の過電流保護を適切に行うことのできる半導体装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、この半導体装置1は、主電流の制御を行うための半導体素子2と、この半導体素子2をオンオフ制御するためのゲート信号Sgを出力するゲートドライバ回路9と、ゲート信号Sgの出力経路の途中に設けられたゲート抵抗7と、半導体素子2より得られる主電流に対応したセンス電流をセンス電圧Vsに変換する電流検出回路3と、電流検出回路3からの得られるセンス電圧Vsの出力先に順次接続されたフィルタ回路4と、過電流制限回路5と、過電流検出回路6と、オフ信号出力回路93と、遅延回路92とから構成されており、遅延回路92を通じて出力されるオフ信号Szがゲートドライバ回路9に入力されるようになっている。
【0021】
半導体素子2は、SiC製トランジスタからなるスイッチング素子21と、そのエミッタコレクタ間に接続されたダイオード22とより構成されている。また、スイッチング素子21は、主電流の約1/10000程度のセンス電流を出力するセンス端子21aを備えている。
【0022】
電流検出回路3は、抵抗31とコンデンサ32とを並列に接続した構成からなり、センス端子21aより入力されるセンス電流を電圧に変換して、センス電圧Vsとして出力することが可能となっている。センス電圧Vsは、主電流の大きさにほぼ比例するものであるため、このセンス電圧Vsの大きさを把握することによって、主電流が過大になった過電流状態であるか否かを把握することが可能である。
【0023】
フィルタ回路4は、2つのコイル41,42と、コンデンサ43とをT字形に配置した構成となっており、所謂LCLフィルタ回路を構成している。そして、このフィルタ回路4は、後述するように帯域除去フィルタ(バンドストップフィルタ)として機能することで、センス電圧Vs0(Vs)より特定周波数近傍の信号成分を減衰させてノイズを除去し、フィルタ通過センス電圧Vs1(Vs)として出力することができるようになっている。
【0024】
過電流制限回路5は、フィルタ通過センス電圧Vs1が入力される抵抗51と、この抵抗51を通じてベースに入力がなされるトランジスタ54と、このトランジスタ54のエミッタとベース間に設けられたコンデンサ53と、コレクタとベース間に設けられたコンデンサ52と、トランジスタ54のコレクタに、ゲートドライバ9よりスイッチング素子21へのゲート信号Sgの出力経路に接続する抵抗56と、ダイオード55とから構成されている。この過電流制限回路5は、センス電圧Vsが回路上定められる所定電圧である閾値よりも高い場合、すなわち過電流が生じたと判断される場合に、ゲート信号Sgの出力経路より電流を引き込み、ゲート信号Sgの電流値を低減することでスイッチング素子21を流れる主電流の抑制を行うことが可能となっている。ここで、上記の閾値とは、スイッチング素子21に流すことの許容される電流最大値を基に、所定の安全率を加味して、若干これよりも低い値になるように設定している。
【0025】
過電流検出回路6は、コンパレータとして機能するオペアンプ61と、オペアンプ61の−(マイナス)側に接続される直流電源62と、オペアンプ61の出力側に接続されるツェナーダイオード63とから構成されており、オペアンプ61の+(プラス)側に上述したフィルタ通過センス電圧Vs1が入力されるようにしている。このように構成することで、直流電源62により得られる電圧と比較して、フィルタ通過センス電圧Vs1が大きい場合に、すなわち、過電流状態と判断される場合には、過電流検出信号So1が出力されるようになっている。すなわち、この直流電源62により得られる電圧も、上述した過電流制限回路5と同様に閾値として機能するものであり、スイッチング素子21に流すことの許容される電流最大値を基に、所定の安全率を加味して、若干これよりも低い値になるように設定している。過電流検出信号So1はハイレベルの電圧信号So1として出力されており、通常状態にはこれに代わりローレベルの電圧信号So0が出力されるようになっている。
【0026】
オフ信号出力回路93は、過電流検出回路6より過電流検出信号So1が入力された場合に、オフ信号Szを出力する。
【0027】
オフ信号Szは、遅延回路92を通過してゲートドライバ回路91に届くようにしてあり、こうすることで、オフ信号Szは所定時間(マスク時間)Tmの間マスクされて、ゲートドライバ回路9には届かない。これは、後述するように、スイッチング素子21のターンオン・ターンオフに伴う誤作動を防止するためであり、オフ信号Szが出力されてからマスク時間が経過した後であっても、継続的にオフ信号Szが出力されている場合にのみこのオフ信号Szがゲートドライバ回路9に到達するようになっている。
【0028】
ゲートドライバ回路9は、通常、スイッチング素子21のオンオフ制御を行うためにゲート信号Sgを出力しており、このゲート信号Sgはゲート抵抗7を通じてスイッチング素子21のベースに与えられるようになっている。また、上述した遅延回路92を通じてオフ信号Szの入力がなされることにより、これを基にしたオンオフ制御を行うようにしている。具体的には、オフ信号Szの入力がなされた場合に、内蔵されたゲート電流制限回路91を用いることで、ソフトシャットダウンしてサージ電圧を抑制しながら、スイッチング素子21をオフ状態にする。
【0029】
ここで、上述したフィルタ回路4及び遅延回路92の作用について具体的に説明を行う。
【0030】
図3(a)は、スイッチング素子21(
図1参照)にゲート信号Sgとして与えるゲート電圧と、センス端子21a(
図1参照)より得られるセンス電流との関係を模式的に示したものである。なお、この図では、主電圧を印加していない場合を示しており、ゲート電圧の変化に伴う主電流の変化は生じない。本来、センス電流は主電流に比例するものであることから、主電流の出力が無い限りセンス電流の出力もないはずであるが、ゲート電圧を図中で示すような矩形状の電圧信号として与えた場合、この立ち上がり時には、電流値が急激に増加して急激に減少する単一の三角波状の変化を示す。同様に、ゲート電圧の立ち下がり時には急激に負側に流れ、急激に元に戻る逆三角波状の変化を生ずる。そのため、センス電流を基に過電流を検出しようとした場合、この三角波状(逆三角波状)のノイズ成分の影響を受けて、過電流保護に誤動作が生ずる可能性がある。こうした三角波状のノイズ発生時間t1は、回路の構成や素子の種類、又は、ゲート電圧の立ち上がりや立ち下がり速度(勾配)によっても変化するが、例えば、0.2〜0.3μsec程度のものとなる。
【0031】
図3(b)は、主電圧を印加した状態における、ゲート電圧の変化に伴う主電流の変化と、センス電流の変化を模式的に示したものである。この図において、上述したような、ゲート電圧の立ち上がりと立ち下がりに伴ってセンス電流に表れる三角波状のノイズは考慮していない。ゲート電圧の立ち上がりにおいて、本来であれば、主電流は急激に増加して、ゲート電圧がオフになるまでの間、一定の電流値になるはずであるが、主電流が増加した直後において回路内の共振周波数による波状のノイズが現れ、徐々に減衰していく。さらに、ゲート電圧の立ち下がりとともに、主電流はゼロになるがその直後において回路内の共振周波数による波状のノイズが現れ、徐々に減衰していく。こうした回路内の共振周波数とは、スイッチング素子21(
図1参照)そのものが持つものも含め、これらのスイッチング素子が接続された回路全体が含む電気的な共振周波数であって、所謂寄生容量や出力インピーダンスによる特定周波数となっている。この特定周波数は、回路の構成や、素子の種類、配線の長さ等によっても異なるが、例えば、10〜30MHz程度になる。また、ノイズの大きさは、ゲート電圧の立ち上がりや立ち下がり時間にも影響を受ける。さらに、主電流に生ずるノイズと同様、センス電流においてもこの特定周波数でのノイズが生じ、これと同じようにセンス電圧も変化する。そのため、本来、こうした共振周波数成分の電流変化を過電流として捉えることは不要であるにも関わらず、センス電圧(センス電流)を基に過電流を検出しようとした場合、この共振周波数でのノイズ成分の影響を受けて、過電流保護に誤動作が生ずる可能性がある。
【0032】
上記のような、スイッチングに伴う三角波状のノイズ、及び、特定周波数でのノイズは、ゲート電圧の立ち上がり速度を緩やかにすることで減少する可能性がある。これは、
図1に示したゲート抵抗7の抵抗値を大きくすることによって実現することができる。しかしながら、このような手段を採ることはスイッチング素子21の動作速度を一定以上に上げることができなくなるために好ましくない。
【0033】
そこで、本実施形態における半導体装置1では、フィルタ回路4及び遅延回路92を用いることで、上記のノイズがセンス電圧に生じた場合でも、過電流保護に係る制御に誤動作が生じないようにしている。
【0034】
まず、フィルタ回路4は、特定周波数でのセンス電圧(センス電流)のノイズ成分による影響を回避するためのものである。一般に、このようなノイズによる影響を避けるために、RC回路により構成されるローパスフィルタ(RCフィルタ)を使用することが多い。
図4は、このようなRCフィルタの出力特性を模式的に示したものであり、入力される信号の周波数を横軸とし、その入力信号に対する出力信号の割合をゲインとして縦軸に表している。RCフィルタでは、抵抗とコンデンサ容量によって決定されるカットオフ周波数fc以下の周波数成分の信号が入力された場合には、ほぼそのまま通過して出力されるが、カットオフ周波数fc以上の信号は減衰させ、カットオフ周波数fcよりも十分に大きな周波数成分であればほぼ遮断されて出力されない。このようなRCフィルタを使用して上記特定周波数でのノイズを回避しようとした場合、この特定周波数よりも十分に小さい値にカットオフ周波数fcを設定する必要がある。その場合、ノイズとは異なる、本来のスイッチングの動作によるセンス電圧の立ち上がりや立ち下がりによる反応も小さくなってしまい、過電流保護としての性能が低下してしまうことになる。
【0035】
そこで、本実施形態においては、
図1に示すように、フィルタ回路4を、上述したように、2つのコイル41,42と、コンデンサ43とをT字形に配置したLCLフィルタ回路として、帯域除去フィルタ(バンドストップフィルタ)として機能するようにしている。
図2は、このフィルタ回路4の特性を模式的に示すものであり、
図4と同様、入力される信号の周波数を横軸とし、その入力信号に対する出力信号の割合をゲインとして縦軸に表している。フィルタ回路4は、帯域除去周波数fsにおいてもっとも出力ゲインが低くなり、これより小さくなるに従って、あるいは、大きくなるに従って出力ゲインが徐々に大きくなるようにしており、帯域除去周波数fs近傍の周波数成分の信号を小さくすることが可能となっている。本実施形態における半導体装置1では、上述したように回路内の共振周波数が10〜30MHz程度に表れるものとなっていることから、中間値である20MHzが帯域除去周波数fsに一致するように、
図1で示すコイル41,42のインダクタンス値と、コンデンサ43の容量値を設定している。なお、帯域除去周波数fsを共振周波数と完全に一致させなくとも、共振周波数でセンス電圧に生ずるノイズが十分に減衰できる程度に両者を近い値にする、すなわち略一致させることでも足りる。
【0036】
こうすることで、入力されるセンス電圧Vs0より適切に特定周波数におけるノイズを除去し、フィルタ通過センス電圧Vs1として出力することが可能となっている。また、この際、帯域除去周波数fsの近傍の周波数の信号のみを減衰し、これよりも十分に高い周波数の信号は減衰することがないことから、本来のスイッチングの動作によるセンス電圧の立ち上がりや立ち下がりによる反応を小さくすることがなく、過電流保護としての性能を低下させることがない。
【0037】
また、遅延回路92は、上述したスイッチングに伴ってセンス電圧(センス電流)に生ずる三角波状のノイズ成分による影響を回避するためのものである。遅延回路92は、オフ信号出力回路93より入力されるオフ信号Szが入力されてから、所定のマスク時間Tmの間マスクを行ってオフ信号Szを出力せず、マスク時間Tmの経過後にもオフ信号Szが入力されている場合にオフ信号Szを出力するようにしたものである。マスク時間Tmは、三角波状のノイズ成分が表れるノイズ発生時間t1の3倍程度とすることが好適であり、本実施形態では0.8μsecに設定してある。このように遅延回路92を設けることにより、過電流保護の誤動作を生じさせること無く、安定してオンオフ制御を行わせることが可能となっている。また、遅延回路によるマスク時間Tmも、三角波状のノイズ発生時間に対応するものに過ぎないため、ほとんど高速性能を犠牲にすることもない。
【0038】
以下、このような半導体装置1を用いた場合の作用について説明を行う。
【0039】
まず、ゲートドライバ回路9からは、半導体素子2を構成するスイッチング素子21をオンオフ制御するためのゲート信号Sgが出力され、ゲート抵抗7を経てスイッチング素子21に入力される。
【0040】
スイッチング素子21は、主電流に比例したセンス電流をセンス端子21aより出力し、これらのセンス電流は、電流検出回路3によって、センス電圧Vs(Vs0)に変換される。さらに、センス電圧Vs0は、フィルタ回路4を通過することで、共振周波数である特定周波数近傍の成分を減衰されたフィルタ通過センス電圧Vs1として出力される。そのため、このような回路の共振に基づくノイズに起因する誤作動を生じさせることがない。
【0041】
過電流制限回路5は、このフィルタ通過センス電圧Vs1によって、過電流状態にある場合には、ゲート信号Sgとしてスイッチング素子21に与えられるゲート電流を抑制して、過電流状態を是正することができるようになっている。
【0042】
これとともに、過電流検出回路6でも、過電流状態にある場合には過電流検出信号So1を出力する。そして、過電流検出回路6から過電流検出信号So1が入力された場合には、これに基づいてオフ信号出力回路93よりオフ信号Szが出力される。そして、オフ信号Szは所定のマスク時間Tmの間マスクされて、これが経過した後まで継続してオフ信号Szが出力されている場合にのみ、ゲートドライバ回路9に到達する。そのため、ゲート電圧の立ち上がりや立ち下がりに起因してセンス電流に生ずる三角波状のノイズの影響を回避して、誤動作の発生を抑制することが可能となっている。
【0043】
ゲートドライバ回路9は、オフ信号Szの入力により、ゲート信号Sgを通じてスイッチング素子21のオンオフ制御を停止させる。すなわち、過電流状態にあると判断され得る場合には、過電流制限回路5による主電流の抑制についで、スイッチング素子21のオンオフ制御の停止がなされることによって、主電流の通電が停止されることで、より高い安全性能を備えるものとなっている。さらに、ゲート電流制限回路91によりゲート電流を徐々に下げるソフトシャットダウンを行うことができるため、サージ電圧の発生も抑制することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態における半導体装置1は、主電流に応じたセンス電流を出力可能な電流センス付きのスイッチング素子21と、このスイッチング素子21のオンオフ制御を行うためのゲートドライバ回路9と、スイッチング素子21より得られたセンス電流をセンス電圧Vsに変換して出力する電流検出回路3と、電流検出回路3より得られたセンス電圧Vs(Vs0)から所定の周波数成分を減衰させフィルタ通過センス電圧Vs1として出力する帯域除去フィルタ回路4と、帯域除去フィルタ回路4より得られるフィルタ通過センス電圧Vs1が予め定められた閾値よりも大きい場合に過電流検出信号So1を出力する過電流検出回路6とを備えており、ゲートドライバ回路9が、過電流検出回路6より得られる過電流検出信号So1に基づいて間接的にスイッチング素子21のオンオフ制御を行うように構成したものである。
【0045】
このように構成しているため、主電流に対応するセンス電流を電流検出回路3によって変換してセンス電圧Vsを生じさせ、このセンス電圧Vs(Vs0)に基づくフィルタ通過センス電圧Vs1が閾値よりも大きい場合に過電流検出回路6より過電流検出信号So1を出力させて、過電流検出信号So1に基づいてゲートドライバ回路9がスイッチング素子21のオンオフ制御を行うことで、過電流時のスイッチング素子21の保護を図ることが可能となる。さらには、過電流検出回路6が、帯域除去フィルタ回路4によってセンス電圧Vs0より特定の周波数成分が減衰されたフィルタ通過センス電圧Vs1を用いて過電流の検出を行うようにしていることから、特定周波数成分のノイズ成分を除去して、過電流の誤検出を防ぐことも可能となっている。また、フィルタ回路として帯域除去フィルタ4を用いていることから、ノイズ以外の周波数成分の信号は減衰することがないようにでき、ゲート信号Sgの立ち上がりや立ち下がりの速度を大きくすることによる瞬時の電流変化に対応でき、一層の高速化を実現することも可能となっている。
【0046】
また、帯域除去フィルタ回路4により減衰される信号の周波数fsが、スイッチング素子21を含む回路全体の共振周波数と略一致するように設定していることから、スイッチング素子21を含む回路全体が備える電気的な共振周波数に基づくセンス電流の変動を過電流保護の対象より除外して、より効率的にスイッチング素子21の制御を行うことが可能となっている。
【0047】
さらに、帯域除去フィルタ回路4が、LCLフィルタ回路であるように構成していることから、帯域除去フィルタを簡単に構成することができ、より簡単且つ安価な回路構成とすることができる。
【0048】
そして、過電流検出回路6とゲートドライバ回路9との間に遅延回路92が設けられており、この遅延回路92によって、過電流検出回路6からの過電流検出信号So1が形を変えたオフ信号Szが所定時間ゲートドライバ回路に到達しないように構成していることから、ゲートドライバ回路9よりスイッチング素子21に与えるオンオフ信号の立ち上がりや立ち下がりに応じ、センス電流にノイズが生じた場合であっても、こうしたノイズによる過電流検出の誤動作を防止することが可能となっている。
【0049】
加えて、スイッチング素子21が、SiC半導体素子であるように構成していることから、SiC半導体素子の特徴である高効率、大容量、高速性能を生かして、より上記の効果を高めて利用することが可能となっている。そのため、高い変換効率や、高速性能や、大容量を備えるとともに、小型化を実現することも可能となっている。
【0050】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、帯域除去フィルタ回路4をLCLフィルタ回路として構成していたが、こうした構成に代えて、前記帯域除去フィルタ回路4が、オペアンプを利用したフィルタ回路であるように構成することもでき、このようにした場合でも上記と同様の効果を得ることが可能である。
【0052】
また、上述の実施形態では、単独のスイッチング素子21のオンオフ制御を行う回路構成としていたが、複数のスイッチング素子21を備えこれらのオンオフ制御を行わせるような回路に適用することも可能である。
【0053】
また、上述した実施形態では、過電流検出信号So1をハイレベルの電圧信号として、通常状態ではローレベルの電圧So0が得られるようにしていたが、両者の区別を行うことができる限り、ハイとローのレベルを反対にしたり、正負の電圧を反転させたりしても良く、これらの信号の大きさを適宜変更して構成することが可能である。
【0054】
さらに、上述の実施形態では、スイッチング素子21としてSiC半導体素子を用いていたが、電流センス付き半導体素子であれば、SiやGaN等のSiC以外の材料系からなるものであっても、上記に準じた効果を得ることができる。
【0055】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。