(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10402(P2015-10402A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】遊間用止水材および道路橋伸縮装置
(51)【国際特許分類】
E01C 11/02 20060101AFI20141216BHJP
E01D 19/06 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
E01C11/02 A
E01D19/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-137200(P2013-137200)
(22)【出願日】2013年6月28日
(11)【特許番号】特許第5362929号(P5362929)
(45)【特許公報発行日】2013年12月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393024603
【氏名又は名称】旭化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 翼
(72)【発明者】
【氏名】宮城 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】小坂 晃
(72)【発明者】
【氏名】山内 寛
(72)【発明者】
【氏名】片島 大志
(72)【発明者】
【氏名】木原 竜一
【テーマコード(参考)】
2D051
2D059
【Fターム(参考)】
2D051FA12
2D051FA17
2D059GG45
(57)【要約】
【課題】接続作業が簡単で、接続部分が十分な耐久性を有する遊間用止水材を得る。
【解決手段】道路橋の幅方向に分割された遊間用止水材20は接続構造を備える。遊間用止水材20は止水材本体21とスポンジ層23を備え、止水材本体21の端面にスポンジ層23が接着される。スポンジ層23は、止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を発揮し、圧縮性と伸張率がともに高い。よって、遊間用止水材20は、2つのスポンジ層23を相互に密着させるだけで止水材本体21を接続することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、
前記遊間に沿って延びるとともに前記遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する止水材本体と、
前記止水材本体の端面に接着され、前記止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備えることを特徴とする遊間用止水材。
【請求項2】
前記スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、前記複数の気泡が亀裂により連通することを特徴とする請求項1に記載の遊間用止水材。
【請求項3】
道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、
前記遊間に沿って延びるとともに前記遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、
前記第1の止水材本体の端面に接着され、前記第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備え、
前記第2の止水材本体と前記スポンジ層が相互に密着することを特徴とする遊間用止水材。
【請求項4】
前記スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、前記複数の気泡が亀裂により連通することを特徴とする請求項3に記載の遊間用止水材。
【請求項5】
道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、
前記遊間に沿って延びるとともに前記遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、
前記第1の止水材本体の端面に接着され、前記第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第1のスポンジ層を含む第1の接続部材と、
前記第2の止水材本体の端面に接着され、前記第2の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第2のスポンジ層を含む第2の接続部材とを備え、
前記第1のスポンジ層と前記第2のスポンジ層が相互に密着することを特徴とする遊間用止水材。
【請求項6】
前記第1および第2のスポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、前記複数の気泡が亀裂により連通することを特徴とする請求項5に記載の遊間用止水材。
【請求項7】
前記第1および第2の止水材本体は異なる材質の止水材であることを特徴とする請求項4または請求項6に記載の遊間用止水材。
【請求項8】
前記第1および第2の止水材本体のうちいずれか一方が、伸縮フォーム層と、前記伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する止水層とを備えることを特徴とする請求項7に記載の遊間用止水材。
【請求項9】
前記第1および第2の止水材本体が、第1および第2の伸縮フォーム層と、前記第1および第2の伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する第1および第2の止水層とを備えることを特徴とする請求項4または請求項6に記載の遊間用止水材。
【請求項10】
前記接続部材が、前記スポンジ層に積層された第3の伸縮フォーム層をさらに備えることを特徴とする請求項2または請求項4に記載の遊間用止水材。
【請求項11】
前記第1または第2の接続部材が、前記第1または第2のスポンジ層に積層された第3または第4の伸縮フォーム層をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の遊間用止水材。
【請求項12】
道路橋の継目部に設けられる道路橋伸縮装置であって、
前記道路橋の桁遊間に沿って延びるフェースプレートと、
前記フェースプレートの下方に設けられ、前記道路橋伸縮装置の遊間に沿って延びるとともに前記遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する止水材本体と、
前記止水材本体の端面に接着され、前記止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備え、
前記スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、前記複数の気泡が亀裂により連通することを特徴とする道路橋伸縮装置。
【請求項13】
道路橋の継目部に設けられる道路橋伸縮装置であって、
前記道路橋の桁遊間に沿って延びるフェースプレートと、
前記フェースプレートの下方に設けられ、前記道路橋伸縮装置の遊間に沿って延びるとともに前記遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、
前記第1の止水材本体の端面に接着され、前記第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第1のスポンジ層を含む第1の接続部材と、
前記第2の止水材本体の端面に接着され、前記第2の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第2のスポンジ層を含む第2の接続部材とを備え、
前記第1のスポンジ層と前記第2のスポンジ層が相互に密着し、
前記第1および第2のスポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、前記複数の気泡が亀裂により連通することを特徴とする道路橋伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路の道路橋等に設けられ、橋桁の伸縮を吸収するために設けられる遊間用止水材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋は、設置場所の温度変化によって橋桁の長さが伸縮し、この伸縮を吸収するために道路橋には、その幅方向に延びる桁遊間が形成される。桁遊間において、路面には、道路橋伸縮装置が設けられ、道路橋伸縮装置には、橋桁の伸縮に伴う遊間の変位に追従しつつ雨水等の落下を防止する遊間用止水材が設けられる。
【0003】
遊間用止水材は、遊間の長手方向に連続して延びる一体物であるが、製造、運搬等の理由により、分割された状態で工事現場に運び込まれ、接続作業が行われる。遊間用止水材は、遊間に沿って延びる伸縮フォーム層と、この伸縮フォーム層の上面を被覆して接着される止水シート等から成り、工事現場における接続作業として、従来、突き合わせて配置された止水シートの端部に沿って、止水機能を有するシートが貼り付けられる、所謂パッチ貼り工法が知られている。しかしこのような接続作業は非常に困難であって熟練を要し、作業効率が低い。
【0004】
また特許文献1に開示されているように、突き合わされた2つのシート状弾性体の間に反応硬化性のある弾性体を流し込んで充填し、この弾性体が硬化することによりシート状弾性体を一体的に連結する工法が提案されている。
【0005】
しかし特許文献1の接続方法では、弾性体を撹拌したり、養生することが必要であり、面倒である。また硬化した弾性体は体積変化が非常に小さいため、橋桁の伸縮によって厚さが大きく変化し、接着面に作用する引張り力のために耐久性が不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−129406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、接続作業が簡単で、接続部分が十分な耐久性を有する遊間用止水材を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遊間用止水材は、道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、遊間に沿って延びるとともに遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する止水材本体と、止水材本体の端面に接着され、止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備えることを特徴としている。
【0009】
好ましくは、スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、複数の気泡が亀裂により連通する。
【0010】
また本発明に係る遊間用止水材は、道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、遊間に沿って延びるとともに遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、第1の止水材本体の端面に接着され、第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備え、第2の止水材本体とスポンジ層が相互に密着することを特徴としている。
【0011】
好ましくは、スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、複数の気泡が亀裂により連通する。
【0012】
また本発明に係る遊間用止水材は、道路橋伸縮装置の遊間内に設けられる遊間用止水材であって、遊間に沿って延びるとともに遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、第1の止水材本体の端面に接着され、第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第1のスポンジ層を含む第1の接続部材と、第2の止水材本体の端面に接着され、第2の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第2のスポンジ層を含む第2の接続部材とを備え、第1のスポンジ層と第2のスポンジ層が相互に密着することを特徴としている。
【0013】
好ましくは、第1および第2のスポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、複数の気泡が亀裂により連通する。
【0014】
好ましくは、第1および第2の止水材本体は異なる材質の止水材である。
【0015】
また、好ましくは、第1および第2の止水材本体のうちいずれか一方が、伸縮フォーム層と、伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する止水層とを備える。
【0016】
また、好ましくは、第1および第2の止水材本体が、第1および第2の伸縮フォーム層と、第1および第2の伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する第1および第2の止水層とを備える。
【0017】
また、好ましくは、接続部材が、スポンジ層に積層された第3の伸縮フォーム層をさらに備える。
【0018】
また、好ましくは、第1または第2の接続部材が、第1または第2のスポンジ層に積層された第3または第4の伸縮フォーム層をさらに備える。
【0019】
本発明に係る道路橋伸縮装置は、道路橋の継目部に設けられる道路橋伸縮装置であって、道路橋の桁遊間に沿って延びるフェースプレートと、フェースプレートの下方に設けられ、道路伸縮装置の遊間に沿って延びるとともに遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する止水材本体と、止水材本体の端面に接着され、止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有するスポンジ層を含む接続部材とを備え、スポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、複数の気泡が亀裂により連通することを特徴としている。
【0020】
本発明に係る道路橋伸縮装置は、道路橋の継目部に設けられる道路橋伸縮装置であって、道路橋の桁遊間に沿って延びるフェースプレートと、フェースプレートの下方に設けられ、道路橋伸縮装置の遊間に沿って延びるとともに遊間の変位に追随可能であり、止水機能を有する第1および第2の止水材本体と、第1の止水材本体の端面に接着され、第1の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第1のスポンジ層を含む第1の接続部材と、第2の止水材本体の端面に接着され、第2の止水材本体より低圧縮応力で、かつ、全体として止水機能を有する第2のスポンジ層を含む第2の接続部材とを備え、第1のスポンジ層と第2のスポンジ層が相互に密着し、第1および第2のスポンジ層が基材中に分散した複数の気泡を有し、複数の気泡が亀裂により連通することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接続作業が簡単で、接続部分が十分な耐久性を有する遊間用止水材、およびこの遊間用止水材を用いた道路橋伸縮装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1および第2の実施形態である遊間用止水材を備えた道路橋継目部の概略的な構造を示す斜視図である。
【
図2】2つの止水材本体が接続される前の状態を示す側面図である。
【
図3】2つの止水材本体が接続された状態を示す側面図である。
【
図5】第2の実施形態である2つの伸縮フォーム層が接続される前の状態を示す側面図である。
【
図6】2つの伸縮フォーム層が接続された状態を示す側面図である。
【
図7】2つの伸縮フォーム層が、高さ方向に位置がずれて接続された状態を示す側面図である。
【
図8】1つのスポンジ層により2つの止水材本体が接続される場合を示す側面図である。
【
図9】遊間用止水材の修理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態である遊間用止水材の構成を説明する。
図1に示されるように、道路橋伸縮装置において、道路橋の橋軸Xに交差する方向に延びる桁遊間には、橋桁の伸縮を吸収するために遊間に沿って延びるフェースプレート10と遊間用止水材20が設けられる。遊間用止水材20はフェースプレート10の下方であってウェブプレート30、30間の遊間内に設けられ、雨水を止水するとともに遊間の拡縮動作に追従して伸縮する。
図1では、フェースプレート10は2つのフィンガー形状の板が突き合わされたものであり、一方のフィンガー形状の板の凸部が他方の板の凹部に入り込む。
【0024】
遊間用止水材20は弾性ゴムタイプと伸縮フォームタイプの2種類に大きく分けられる。弾性ゴムタイプは、分割された状態で工事現場に運び込まれる場合、反応硬化性のある弾性体を工場で硬化させることにより成形される。
【0025】
図2に示されるように、道路橋の幅方向に分割された遊間用止水材20は接続構造を備える。遊間用止水材20は止水材本体21とスポンジ層(接続部材)23を備え、
図2では、1つの止水材本体21の端面に1つのスポンジ層23が接着される。すなわち第1の止水材本体の端面に第1のスポンジ層が接着され、第2の止水材本体の端面に第2のスポンジ層が接着される。止水材本体21は弾性ゴムタイプであり、20℃における50%圧縮応力が例えば7.0×10
2(N/cm
2)(=70(kPa))である。スポンジ層23は止水材本体21の幅方向(
図2において紙面に垂直な方向)に延びる直方体である。
【0026】
スポンジ層23の遊間の長手方向(
図2において左右方向)の厚さは約30mmであり、スポンジ層23はフェースプレート10の端面よりも突出し、その突出量D1は例えば15〜20mmである。換言すれば、フェースプレート10はスポンジ層23の上面の中央付近まで延びる。スポンジ層23は道路橋の橋軸の方向および遊間の長手方向の両方に伸縮性を有する。スポンジ層23は遊間の変位量にかかわらず全体として止水機能を発揮する。すなわちスポンジ層23自体は圧縮性と伸張率がともに高いにもかかわらず止水性能を有する。
【0027】
図3は2つの止水材本体21が接続された状態を示す。2つの止水材本体21は、これらの上面に設けられたフェースプレート10が当接するか、ほとんど当接するまでスポンジ層23を圧縮させて変位される。2つのスポンジ層23はこの状態で互いに密着する。すなわち第1のスポンジ層と第2のスポンジ層が相互に密着する。
【0028】
スポンジ層23は、例えば旭化工株式会社製のAF−0080を利用することができる。その特性は表1に示す通りである。スポンジ層23の50%圧縮応力は止水材本体21よりも3桁程度低い。50%圧縮U字止水試験を行ったが24時間漏水は見られなかった。スポンジ連泡率30〜45%のゴムスポンジに対してクラッシャー加工を施すことにより65〜75%に定めた。
【表1】
【0029】
図4に示されるように、スポンジ層23は、ゴムの基材31と、基材31中に分散した複数の気泡35とを有し、複数の気泡35が亀裂33により連通する。スポンジ層23の原材料は、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDMゴム)やエチレンプロピレンゴム(EPMゴム)等の疎水性の合成ゴムが好ましい。このように基材31に設けられた亀裂33が弁体として機能するため、気体の通過が容易でありながら水の通過が防止され、低い応力で変形が可能となる。これにより、スポンジ層23は、遊間の変位量にかかわらず止水性を保つことができ、スポンジ層23だけで止水性能を有する。
【0030】
なお、従来の連続気泡のスポンジは気泡間で水が容易に通過するため、止水性が低い。また、従来の独立気泡のスポンジは気泡間で気体が通過しないため、変形に高い応力が必要であり、遊間の変位に対して追従性が低い。さらに気泡内の空気が抜け、体積が収縮する問題がある。また、従来の半連続気泡のスポンジは連続気泡と独立気泡が混在するスポンジであるため、独立気泡のスポンジと同様、空気抜けの問題がある。さらに一定以上圧縮された状態で止水性を発揮するため、変形量に起因する止水性の限界がある。
【0031】
以上のように本実施形態は、道路橋伸縮装置の継目部に形成される遊間内に隣接して配置される2つの止水材本体21の各端部に、スポンジ層23を設けたものであり、スポンジ層23は遊間の変位量にかかわらず止水性を発揮する。
【0032】
止水材本体21は遊間の幅に応じて変形し、その前面は波形に変形する。しかしスポンジ層23は圧縮性が高く、伸張率も大きい柔軟な材料から成形されているので、止水材本体21の前面の変形を吸収する。すなわち止水材本体21の前面に生じる複雑な歪みはスポンジ層23によって吸収され、止水材本体21とスポンジ層23の間、および隣接する2つのスポンジ層23間に隙間が生じることが防止される。
【0033】
例えば
図3に示されるように遊間の変位量にかかわらず、圧縮されたスポンジ層23によって雨水は遮断され、遊間用止水材20(
図1参照)から下方へ漏れることはない。
【0034】
このように本実施形態の遊間用止水材は、2つのスポンジ層23を相互に密着させるだけで止水材本体21を接続することができる。また、従来技術のように2つの止水材本体21の間に反応硬化性のある弾性体を流し込んで充填するものではないので、工事現場における作業が非常に簡単で、作業者の技能によるばらつきを防止することが可能である。また、スポンジ層23が止水材本体21の端面の全体を覆うので、接続の際の位置精度が低くても止水性が確保される。また、複数の気泡35が亀裂33により連通するスポンジを利用するので、スポンジ層23の圧縮応力が止水材本体21よりも低く、遊間の変位に対してスポンジが体積変化して追従でき、接続部分周辺の接着面に作用する引張り力が低い。また既に遊間に配置された止水材本体は、遊間の変位に応じてその接続断面が任意の形状を有するが、この任意の形状に対してもスポンジ層23が体積変化して追従することができる。また表1に示されるようにスポンジ層23の伸縮性が大きいので、この遊間用止水材の接続部分は十分な耐久性を有する。
【0035】
図5は第2の実施形態である伸縮フォームタイプの遊間用止水材の構成を示している。なお、
図2のフィンガージョンイト10は省略されている。第1の実施形態と異なる構成を説明すると、遊間用止水材40は、スポンジ層23以外に、伸縮フォーム層43と、その上面を被覆して接着され、止水機能を有する止水層(止水材本体)45とさらにその上面に積層して接着される防塵フォーム47から構成され、第1の実施形態のように止水材本体21とスポンジ層23のみの構成ではない。
【0036】
図5では、1つの伸縮フォーム層の端面および止水層の端部に1つのスポンジ層23が接着される。すなわち第1および第2の止水材本体が、第1および第2の伸縮フォーム層と、第1および第2の伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する第1および第2の止水層とを備える。伸縮フォーム層43、止水層45および防塵フォーム47から成る伸縮フォーム複合体の20℃における50%圧縮応力は例えば7.49×10(N/cm
2)(=7.49(kPa))であり、スポンジ層23よりも1桁程度高い。
【0037】
止水層45と防塵フォーム47は水平方向に延びてスポンジ層23の端面近くまで達している。すなわちスポンジ層23は止水層45と防塵フォーム47よりも、例えば5〜20mmくらい突出している。したがって第1の実施形態と同様、
図6に示すように、2つの伸縮フォーム層43の接続作業において、2つのスポンジ層23が大きく圧縮されて相互に密着し、この状態において2つの止水層45は相互に近接する。
【0038】
図7に示すように、遊間用止水材40の接続作業において、2つの伸縮フォーム層43、43が、その厚さ方向(
図7において上下方向)に位置が多少ずれる場合がある。このような場合であっても、第2の実施形態では止水層45がスポンジ層23に密着されるため、止水機能が確保される。
【0039】
このように本実施形態では、スポンジ層23は橋軸の方向および遊間の長手方向の両方に伸縮性を有するので、止水層45が複雑な3次元的な波形に変形することが防止され、隣接する2つの止水層45間に大きな隙間が生じることはなく、スポンジ層23によって雨水の漏水が防止される。また冬期のように遊間の幅が拡大するとき伸縮フォーム層43の幅も増大するが、伸縮フォーム層43の体積が増大するので、弾性ゴムタイプのように接着面(金属部分との境界面)の縁部において相対的に大きな剥離力が生じることを防止することができる。
【0040】
また第1の実施形態と同様に、本実施形態の遊間用止水材は、工事現場における接続作業が簡単で、作業者の技能によるばらつきを防止することが可能である。また、スポンジ層23が伸縮フォーム層43の端面の全体を覆うので、接続の際の位置精度が低くても止水性が確保される。また、遊間の変位に対してスポンジが体積変化して追従でき、接続部分周辺の接着面に作用する引張り力が低い。また既に遊間に配置された止水材本体の接続断面における任意の形状に対してスポンジ層23が体積変化して追従できる。また、接続部分が十分な耐久性を有する。
【0041】
なお、第1および第2の実施形態では、接続される止水材本体等の両方にスポンジ層が接着されたが、止水材本体等の片方にのみスポンジ層が接着されてもよい。すなわち第1の止水材本体の端面にスポンジ層が接着され、第2の止水材本体とスポンジ層が相互に密着することにより接続してもよい。この場合、
図8に示すように、スポンジ層23が接着されない方の止水材本体21がフェースプレート10の端面より突出することによりスポンジ層が大きく圧縮されるようにしてもよい。
【0042】
また、第1および第2の実施形態では、接続される遊間用止水材が同じ種類のものであるが、異なる種類のものでもよい。すなわち接続される第1および第2の止水材本体は異なる材質の止水材でもよい。例えば一方が弾性ゴムタイプであり、他方が伸縮フォームタイプであってもよい。すなわち第1および第2の止水材本体のうちいずれか一方が、伸縮フォーム層と、伸縮フォーム層の上面を被覆し、止水機能を有する止水層とを備えてもよい。これにより異なる材質の遊間用止水材の接続が可能となる。
【0043】
また、第1および第2の実施形態では、スポンジ層は1つの層から成るが、2層から構成されてもよい。例えば一方の層には第1および第2の実施形態と同じ材料を利用し、他方の層にはこれよりも安価なウレタンフォーム等を利用してもよい。すなわち接続部材がスポンジ層に積層された第3の伸縮フォーム層をさらに備えてもよい。また第1または第2の接続部材が、第1または第2のスポンジ層に積層された第3または第4の伸縮フォーム層をさらに備えてもよい。この場合、止水性を確保するために、スポンジ層は必ず止水材本体または止水層に接着される。
【0044】
また、第1および第2の実施形態では、2つのスポンジ層が相互に密着することにより遊間用止水材が接続されるが、2つのスポンジ層の間が接着剤により接着されてもよい。
【0045】
また、弾性ゴムタイプと伸縮フォームタイプの2種類のタイプに共通して、遊間用止水材の一部のみ破損したときに遊間用止水材の全部を取り替えるのではなく、破損した部分のみを取り替えることができれば経済的に好ましい。
図9に示すように、ステップS1で止水材本体21の一部が破損した場合には、ステップS2で破損部分が除去される。ステップS3、S4では、除去された部分に例えば伸縮フォームタイプの遊間用止水材を接続する。このように、例えば数m程度の遊間用止水材を接続することができるため、従来、遊間用止水材の一部が破損した場合でも遊間における長手方向の全てを交換していたのを、破損した部分のみを交換することが可能となる。
【0046】
また、第1および第2の実施形態では、伸縮装置の遊間はウェブプレート間を意味したが、本発明の伸縮装置の遊間は桁遊間も含む。また、本発明の遊間は、橋梁において構造上生じる目地部も含む。また、遊間には、遊間用止水材が設けられるウェブプレート間の距離を表す製品遊間、桁端から桁端までの距離を表す桁遊間等が存在するが、本明細書において単に遊間と記載した場合の遊間は、原則として製品遊間を意味するが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0047】
20、40 遊間用止水材
21 止水材本体
23 スポンジ層
30 ウェブプレート
31 基材
33 亀裂
35 気泡
43 伸縮フォーム層
45 止水層