【実施例1】
【0016】
本発明の転写シールを医療用に適用した一実施例について、
図1(a)、
図2及び
図3(a)、(b)を参照して説明する。本実施例の医療用の転写シートAは、テープ状で(
図1(a)参照)、台紙10、透明保護層20、インク層30、接着層40、保護紙50及び透明保護層20とインク層30との間の反射層60を重ね合わせた6層構造(
図2参照)で構成されている。
【0017】
台紙10の一方の面である表面には、
図1(a)、
図3(a)に示すように、例えば5mmごとに目盛り11を付けた直線状の位置決め用マーク12が台紙10の長辺方向に沿って例えばスクリーン印刷により設けられている。この位置決め用マーク12は、被転写箇所である患者の皮膚の放射線の照射箇所に医療用の転写シートAを貼り付ける際の目印となるが、それだけではなく該位置決め用マーク12に付した目盛り11を使い、この目盛り11を基準に位置を調整して正確に位置決めすることを可能にする。換言すると、目盛り11がない場合には位置決め用マーク12のみを頼りに大体の目安で皮膚への貼り付け位置を決めなければならないが、目盛り11が付してあることにより該目盛り11を基準に位置を調整して医療用の転写シートAを患者の皮膚上に正確に位置決めすることが可能となる。なお、
図1(a)では、
図3(a)に示すように目盛り11に数字(0から8)を付しておらず、数字を省略した状態で目盛り11を図示しているが、目盛り11には数字が付される。本実施例では、目盛り11に数字を付した場合を示したが、目盛り11の数字は必要に応じて付されるものであって、必要がない場合、目盛り11には数字が付されない。
【0018】
台紙10は、吸水性に優れた吸水紙(特殊吸水性紙)からなり、その他方の面である裏面に例えばでんぷんのりからなる水溶性のり層13(
図2参照)が設けられている。台紙10の裏面にはこの水溶性のり層13を介して透明保護層20(
図2参照)が重ね合わせて設けられている。水溶性のり層13を設けたのは、透明保護層20の一方の面である表面を台紙10の裏面に対して剥離可能に接着するためである。台紙10に水分が含まれていない状態(不使用時、保管時など)では、透明保護層20は台紙10の裏面に接着された状態に維持されているが、使用時に台紙10に水分を含ませると、この水分の一部が水溶性のり層13に達して該水溶性のり層13を溶解し、透明保護層20から台紙10を剥がすことが可能となる。本実施例では使用時に台紙10を透明保護層20から剥離できるようにするため、台紙10を吸水紙から形成し、その裏面にでんぷんのりからなる水溶性のり層13を設けた場合を示したが、これに限定されるものではない。
【0019】
透明保護層20は、皮膚表面の凹凸形状になじむように伸縮可能で、ひび割れが発生するおそれのない柔軟な合成樹脂等を、例えばスクリーン印刷により台紙10の裏面の水溶性のり層13上に塗布して形成される。
【0020】
透明保護層20の他方の面である裏面には、
図1(a)、
図2に示すように、部位特定マーク31(
図3(b)参照)を形成するインク層30が設けられる。このインク層30は、台紙10表面の位置決めマーク12の真下(真上)位置にある透明保護層20の裏面の箇所に例えばスクリーン印刷により形成される。インク層30によって形成される部位特定マーク31は、位置決めマーク12の形状と異ならせており、本実施例では位置決め用マーク12から目盛り11の部分を除いた形状にしてある。
【0021】
部位特定マーク31を、位置決めマーク12から目盛り11の部分を除いて位置決めマーク12の形状と異ならせたのは、位置決めマーク12では必要不可欠な目盛り11が部位特定マーク31では不要で、むしろ放射線照射の部位を特定するためには邪魔になるからである。
【0022】
台紙11表面の位置決めマーク12は医療用の転写シートAを例えば患者の皮膚上の放射線が照射される位置に位置決めし、その結果、部位特定マーク31が例えば患者の皮膚上の放射線の照射部位を特定するものの、位置決めマーク12と部位特定マーク31は、前者が位置決め、後者が部位特定とその機能を異にしている。形状を異ならせることでそれぞれの機能を十分発揮させることが可能となる。なお、
図3(b)では、部位特定マーク31を、直線により形成し、直接放射線の照射部位(位置)を特定する場合を示しているが、これに限定されるものではなく、例えば部位特定マーク31を、放射線の照射エリアと放射線を照射しない非照射エリアとを区別するように照射エリアを囲む線で形成するようにしてもよい。
【0023】
インク層30の透明保護層20側と反対の面側である、インク層30の裏面には接着層40(
図2参照)が設けられる。この接着層40は、インク層30を被転写箇所である例えば患者の皮膚に接着するもので、例えばスクリーン印刷によりインク層30の裏面に塗布して設けられる。
【0024】
接着層40のインク層30側と反対の面側である、接着層40の裏面には保護紙50(
図1(a)、
図2参照)が剥離可能な状態で重ね合わされている。この保護紙50は、接着層40をカバーして不要な箇所に接着しないように保護するものである。保護紙50の接着層40の裏面に接する一方の面である表面に例えばシリコン系化合物を塗布して剥離性を付与し、保護紙50を接着層40に対して剥離可能にしている。
【0025】
透明保護層20とインク層30との間には
図2に示すように例えば雲母粉体などの光輝性粉体を含む高輝度の反射層60が設けられている。この反射層60は、インク層30のレーザー光線に対する反射率を高め、同時にインク層30の保護の強化の役割も果たし結果的に長期間にわたり効果を持続させる事が出来るものである。例えば、患者の皮膚の照射部位に放射線を照射する前に、照射部位を特定する部位特定マーク31にレーザー光線を当てて放射線照射装置から発せられる放射線の照射位置を計測(確認)するが、この際、反射層60がレーザー光線の部位特定マーク31などからの反射率を高める。この結果、放射線の照射位置を精度良く計測でき、部位特定マーク31を目印に正確に放射線を照射することが可能となる。なお、本実施例では光輝性粉体として雲母粉体を含む高輝度の反射層60を設けた場合を示したが、レーザー光線に対する反射率の高いものであれば、これに限定されるものではなく、光輝性粉体として例えば特殊アルミ粉などを含む高輝度の反射層60でもよい。
【0026】
次に、本実施例の医療用の転写シールAの使用方法について説明する。例えば、患者の皮膚に放射線を照射する場合、まず放射線を照射する箇所(医療用の転写シールAを貼り付ける箇所)の脂分を石鹸などで洗い落とし、アルコールなどで清拭しておく。保護紙50を剥がして接着層40の裏面を露呈させ、次いで台紙10の表面に設けた位置決め用マーク12を目印にしつつ且つ目盛り11を基準に位置を調整して医療用の転写シールAを放射線照射箇所に位置決めする。これを具体的に説明すると、例えば、患者の胴体を横切る線が伸びる方向をY方向、これと直交する方向をX方向とした場合、医療用の転写シールAを、目盛り11を基準にX方向又はY方向に位置を調整して放射線照射箇所に位置決めする。次いで、接着層40の裏面を放射線照射箇所の患者の皮膚に押しあてて該接着層40を介して台紙10、透明保護層20及びインク層30などを貼り付ける。貼り付ける際にはあまり強く押し当てて医療用の転写シールA(部位特定マーク31)の表面にしわが生じないように注意する。次いで、台紙10の表面を、水分を含ませたスポンジやタオルなどを使って湿らせる。これにより台紙10の裏面の水溶性のり層13が溶けて台紙10が剥がれやすくなる。この後、台紙10を剥がすと、接着層40により透明保護層20、インク層30などが患者の皮膚の放射線照射部位に転写される。転写後は透明保護層20の表面に残っている水溶性のり層13を十分に拭き取り、インク層30により形成される、透明保護層20で覆われた部位特定マーク31にひび割れが生じないようにする。
【0027】
上述したように位置決め用マーク12を目印にしつつ且つ目盛り11を基準に位置を調整して医療用の転写シールAを放射線照射箇所に位置決めすることが出来るので、部位特定マーク31を、放射線照射箇所を特定する位置に正確に転写することが可能となる。
【0028】
部位特定マーク31を放射線照射箇所に転写した後、レーザー光線をこの部位特定マーク31に当てて放射線照射装置から発せられる放射線の照射位置を計測(確認)する。この際、透明保護層20とインク層30との間に配置した光輝性粉体を含む高輝度の反射層60がレーザー光線の反射率を高めることから、放射線の照射位置を精度良く計測でき、この結果、部位特定マークを目印(標的)にして正確に放射線を照射することが可能となる。
【0029】
次に、上記医療用の転写シールAの変形例について、
図1(b)、
図3(c)、(d)を参照して説明する。
【0030】
本変形例の医療用の転写シールBは、
図1(b)に示すように、全体形状がテープ状ではなく正方形状である。これにあわせて台紙10aは正方形状で、その表面に設けられる位置決めマーク12aは、
図1(b)、
図3(c)に示すように、直線状ではなく十字状である。また、インク層30によって形成される部位特定マーク31aは、
図3(d)に示すように、中心の黒丸部分と該黒丸部分に向かって伸び且つ互いに直交する4本の矢印部分から形成されている。これらの点を除いて医療用の転写シールBは、医療用の転写シールAと同一であり、
図2に示すように6層構造で構成されている。
【0031】
位置決めマーク12aに付される目盛り11aは、十字状の位置決めマーク12aに沿い所定の間隔、例えば5mmごとに設けられる。医療用の転写シールBを例えば患者の皮膚の放射線照射箇所に位置決めする際には、位置決めマーク12aが十字状で、目盛り11aが位置決めマーク12aに沿って付されていることから、例えば患者の胴体を横切る線が伸びる方向をY方向、これと直交する方向をX方向とした場合、目盛り11aを基準にして医療用転写シールBをX方向及びY方向に位置を調整して医療用の転写シールBを放射線照射箇所に正確に位置決めすることが出来る。なお、
図1(b)では、
図3(b)に示すように目盛り11aに数字(1,2)を付しておらず、数字を省略した状態で目盛り11aを図示しているが、目盛り11aには数字が付される。
【0032】
部位特定マーク31aは、上述したように、中心の黒丸部分と該黒丸部分に向かって伸びる且つ互いに直交する4本の矢印部分から形成されており、放射線照射部位を正確に特定することが可能である。例えば、黒丸部分が放射線照射部位の中心である場合、単に十字状で形成した場合に比してより明瞭に放射線照射部位を特定することが可能である。
【0033】
図4(a)、(b)は
図1(a)、
図3(a)、(b)に示す医療用の転写シールAの位置決めマーク12、目盛り11及び部位特定マーク31の変形例を示している。
【0034】
本変形例の位置決めマーク12bは、
図4(a)に示すように、台紙10表面の長辺方向一端から他端にかけて設けられている。すなわち、台紙10表面の長辺方向一端部と他端部に空白部分を生じることなく位置決めマーク12bを設けている。この位置決めマーク12bに設けられる本変形例の目盛り11bは、長さを示すしるしである長さ目盛り部11b1と、この長さ目盛り部11b上に適宜間隔をあけて設けた角度を示すしるしである角度目盛り部11b2とからなる。本変形例の部位特定マーク31bは、
図4(b)に示すように、位置決め目盛り12bから長さ目盛り部11b1と角度目盛り部11b2とを除いた直線形状である。
【0035】
本変形例によれば、医療用の転写シールAの位置決めに際し、例えば患者の胴体を横切る線が伸びる方向をY方向、これと直交する方向をX方向とした場合、長さ目盛り部11b1を基準にして医療用転写シールAをX方向又はY方向に位置を調整しつつ、角度目盛り部11b2を基準(中心)に医療用の転写シールAの向きを調整することができ、医療用の転写シールAを放射線照射箇所により正確に位置決めすることが出来る。
【0036】
図4(c)、(d)は、
図1(b)、
図3(c)、(d)に示す医療用転写シールBの位置決めマーク12a、目盛り11a及び部位特定マーク31aの変形例を示している。
【0037】
本変形例の位置決めマーク12cは、
図4(c)に示すように、十字状で、台紙10aの各縁部まで伸びている。この位置決めマーク12cに設けられる本変形例の目盛り11cは、長さを示すしるしである長さ目盛り部11c1と、位置決めマーク11の中心(十字状の線の交点)に放射線状に設けた角度を示すしるしである角度目盛り部11c2とからなる。本変形例の部位特定マーク31cは、
図3(d)に示す部位特定マーク31aと同様に中心の黒丸部分と該黒丸部分に向かって伸び且つ互いに直交する4本の矢印部分から形成されており、4本の矢印部分の後端(矢の部分と反対側の部分)が台紙10aの各縁部まで伸びている。なお、台紙10aの表面には位置決めマーク12cの中心(十字状の線の交点)部分を中心にして同心状に正方形状の枠線14が長さ目盛り部11c1を基準にして(長さ目盛り部11c1を通るようにして)複数設けられている。
【0038】
本変形例によれば、医療用の転写シールBの位置決めに際し、例えば患者の胴体を横切る線が伸びる方向をY方向、これと直交する方向をX方向とした場合、長さ目盛り部11c1を基準にして医療用の転写シールAをX方向及びY方向に位置を調整しつつ、角度目盛り部11c2を基準(中心)にして医療用の転写シールBの向きを調整することができ、医療用の転写シールBを放射線照射箇所により正確に位置決めすることが出来る。
【0039】
本発明の転写シールは、医療用以外の用途にも位置決めを目的として工業製品などに使用することが出来る。また、
図1(a)、
図2、
図3(a)、(b)に示す実施例の医療用の転写シールA、
図1(b)、
図3(c)、(d)に示す変形例の医療用の転写シールBに限定されるものではない。例えば、台紙10、10aの裏面に透明保護層20を剥離可能に設けるのに、台紙10を吸水紙から形成し、その裏面にでんぷんのりからなる水溶性のり層13を設けた場合を示したが、水溶性のり層13の代わりに感圧性接着層を設けてもよい。この場合、台紙10を吸水紙から形成しなくても済む。
【0040】
また、本発明の転写シールに設けられる位置決めマーク、目盛り及び部位特定マークの形状は、
図1(a)、
図2、
図3(a)、(b)に示す実施例の医療用の転写シールAの位置決めマーク12、目盛り11、部位特定マーク31、
図1(b)、
図3(c)、(d)に示す変形例の医療用の転写シールBの位置決マーク12a、目盛り11a、31a、部位特定マーク31a、
図4(a)、(b)に示す位置決めマーク12b、目盛り11b、部位特定マーク31b、
図4(c)、(d)に示す位置決めマーク12c、目盛り11c、部位特定マーク31cの形状に限定されるものではなく、被転写箇所に合わせた最適な形状に形成される。