【解決手段】液透過性のトップシートと、不液透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体を備え、長手方向に前方部と、中間部と、後方部とを有する吸収性物品であって、前方部は、頂上部と谷間部が交互に形成されるように連なる奇数個の山型を前位端に備え、中間部は、前方部より狭い幅を有し、後方部は、中央部より広く、前方部より狭い幅を有し、少なくとも1本のエンボスが施される仮想線が谷間部から前方部、中間部及び後方部を経由して別の谷間部にかけて略U字状に延在する吸収性物品である。
前記前方部の長手方向の長さ(La)と前記中間部の長手方向の長さ(Lb)と前記後方部の長手方向の長さ(Lc)の比(La/Lb/Lc)が4/3/3ないし5/3/2であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、略長方形状かつ平面状の吸収性物品は、特に男性用の場合、排尿位置が変化しやすく、局所へのフィット感が得られにくいため、尿失禁が生じた際に、横漏れが生じやすい、という問題があった。
【0006】
また、ドーム形状の吸収性物品は、その立体形状ゆえ、平面状の吸収性物品と比較して嵩張り、持ち運びに不便である、という問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、局所へのフィット性が良好で、持ち運びにかさ張らない吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本願発明に係る1つの態様は、
液透過性のトップシートと、
不液透過性のバックシートと、
トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を備え、
長手方向に前方部と、中間部と、後方部とを有する吸収性物品であって、
前方部は、頂上部と谷間部が交互に形成されるように連なる奇数個の山型を前位端に備え、
中間部は、前方部より狭い幅を有し、
後方部は、中間部より広く、前方部より狭い幅を有し、
少なくとも1本のエンボスが施される仮想線が谷間部から前方部、中間部及び後方部を経由して別の谷間部にかけて略U字状に延在する吸収性物品を提供する。
【0009】
(2)上記(1)に記載の吸収性物品において、
エンボスは、少なくとも後方部において、連続するエンボスであってもよい。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)に記載の吸収性物品において、
さらに、幅方向に横断する幅エンボスが前方部と中間部の境界又はその近傍に形成されるものであってもよい。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の吸収性物品において、
前方部の長手方向の長さ(La)と中間部の長手方向の長さ(Lb)と後方部の長手方向の長さ(Lc)の比(La/Lb/Lc)が4/3/3ないし5/3/2であってもよい。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の吸収性物品において、
4mm以下の厚さを有するものであってもよい。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性物品において、
前方部は、3個または5個の山型を備え、
中央に備える山型が中央以外に備える山型より広い幅方向の長さを有するものであってもよい。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性物品において、
前方部は、5個の山型を備え、
略U字状のエンボスは、2本形成されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、局所へのフィット性が良好で、持ち運びにかさ張らない吸収性物品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の吸収性物品の好ましい実施の形態(以下、「実施形態」という。)を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。なお、実施形態の説明は、全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、本発明の用語のうち、「長手方向」とは
図1(a)の上下方向(吸収性物品の長辺に沿った方向)を、「幅方向」とは左右方向(長手方向と直交する方向)をそれぞれ意味する。
【0018】
図1(a)は、山型が3個の吸収性物品の概略構成図であり、
図1(b)は、山型が5個の吸収性物品を示す概略構成図である。また、
図2は、
図1(a)に示す吸収性物品における、X−X断面図である。
図2に示すとおり、吸収性物品1は、肌と接触する側から順に、液透過性のトップシート11、吸収体13、液不透過性のバックシート12とを含む構成となっている。また、吸収性物品1は、液拡散性シート18及び粘着部20を備えることができる。トップシート11及びバックシート12は、吸収体13を上下に挟み込む形で積層し、その周囲が一部あるいは全周に渡ってホットメルト接着剤(図示せず)により固定されている。
【0019】
図1(b)に示すように、吸収性物品1の長手方向の長さLは、横漏れ防止とフィット感とのバランスの観点から、250mm以上400mm以下が好ましく、300mm以上400mm以下がより好ましい。また、吸収性物品1の厚さを4mm以下とすることにより、使用者が装着したときに発生する違和感を減少させることができる。
【0020】
吸収性物品1は、前方部A、中間部B、後方部Cを有しており、前方部A、中間部B及び後方部Cの側縁は、内側に凹状となるような曲線でつながっている。ここで、前方部Aとは、吸収性物品1を着用する際、使用者の腹側であって、中間部Bより前方に位置する部位を意味する。後方部Cとは、吸収性物品1を着用する際、使用者の背側であって、中間部Bより後方に位置する部位を意味する。
【0021】
図3は、本発明に係る吸収性物品の下着への装着図である。前方部Aは下着の前部の内面に折り曲がるように取り付けるものであり、中間部Bは、使用者の股部に位置している。後方部Cは、股部の後方に位置している。
【0022】
前方部Aの長手方向の長さ(La)と中間部Bの長手方向の長さ(Lb)と後方部Cの長手方向の長さ(Lc)の比(La/Lb/Lc)は、フィット性と漏れ防止の観点から、4/3/3ないし5/3/2が好ましい。
【0023】
前方部Aの幅方向の長さWaは、カバーできる範囲を広げ、上記に示す立体形状への形成性を向上する観点から、最大幅で100mm以上300mm以下が好ましく、150mm以上240mm以下がより好ましい。また、中間部Bの幅方向の長さWbは、前方部Aの幅方向の長さWaより狭い幅を有しており、下着への装着性の観点から、最小幅で30mm以上100mm以下が好ましく、50mm以上80mm以下がより好ましい。さらに、後方部Cの幅方向の長さWcは、中央部Bの幅方向の長さWbより広く、前方部Aの幅方向の長さWaより狭い幅を有しており、使用者の大腿部後方から臀部へのフィット性の観点から、最大幅で70mm以上120mm以下が好ましく、60mm以上100mm以下がより好ましい。
【0024】
そして、前方部Aの最大幅(Wa)と中間部Bの最小幅(Wb)と後方部Cの最大幅(Wc)の比(Wa/Wb/Wc)は、横漏れ防止及び局所から臀部へのフィット性の観点から、(10〜30)/(3〜10)/(7〜12)が好ましい。
【0025】
前方部Aには、頂上部14と谷間部15が交互に形成されるように連なる奇数個の山型16を前位端に備えている。そして、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、少なくとも1本のエンボスが施される仮想線171が、谷間部15から前方部A、中間部B及び後方部Cを経由して別の谷間部15にかけて略U字状に延在する。略U字状のエンボス17は、前方部A、中間部B及び後方部Cを経由すれば、前方部Aの領域の内、端点がどこであってもよく、例えば、
図1(a)に示すように、吸収性物品1をエンボス加工する際、トップシート11と吸収体13との間の引きつりや千切れを防止する観点から、吸収体13の前端部を端点としてもよい。また、
図1(b)に示すように、トップシート11と吸収体13との間の貼り合わせを強化する観点から、谷間部15を端点としてもよい。ここで、略U字状のエンボス17の形状とは、U字またはこれに類似する形状であることをいい、例えば、C字状のように円弧状に曲面で折り返す形状や、V字状のように直線的に折り返す形状も含まれる。略U字状のエンボス17は、前方部Aから後方部Cへと体液を誘導しながら、吸収体13への拡散を効率よく行うことができる。
【0026】
図4(a)は、山型16が3個の吸収性物品1の立体形成態様を示す斜視図、
図4(b)は、山型16が5個の吸収性物品1の立体形成態様を示す斜視図、
図4(c)は、山型が3個の吸収性物品の別の立体形成態様を示す斜視図、
図4(d)は、山型が5個の吸収性物品の別の立体形成態様を示す斜視図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、略U字状のエンボス17により、吸収性物品1を折り曲げて立体形状が取りやすくなり、また、装着した際に、その立体形状を記憶させやすくすることができる。そして、この立体形状を取ることで、吸収性物品1は、横漏れを防止することができる。一方、
図4(c)及び
図4(d)に示すように、略U字状のエンボス17に沿って、吸収性物品1をより深く折り曲げることで、前方部Aをカップ形状に折り曲げることができ、漏れを防ぐこととなる。特に、男性の局所に対して、包み込む形状となるので、吸収性物品1は男性用に使用することが好ましい。また、吸収性物品1は、前方部Aに谷間部15を少なくとも2か所設けることで、屈曲時の資材(トップシート11、吸収体13、バックシート12)の重複がなくなって、立体形成がしやすくなり、装着した際の違和感が軽減されてフィット性が向上する。
【0027】
例えば、
図1(a)に示すように、山型が3個の場合、頂上部14が3個、谷間部15が2個であり、略U字状のエンボス17を1本形成することができる。また、
図1(b)に示すように、山型が5個の場合、頂上部14は5個、谷間部15が4個であり、略U字状のエンボス17を1本あるいは2本形成することができる。略U字状のエンボス17を2本形成することにより、前方部Aの立体形成性及び体液拡散性を向上することができる。また、山型16が5個以上の場合、略U字状のエンボス17を備えていない谷間部15付近に、長手方向に沿って、立体形成をサポートする一対のサポートエンボスを備えてもよい。
【0028】
図1(b)に示すように、前方部Aを立体形状へと形成する際に、折り目となることで局所を包み込みやすくさせる観点から、幅方向に横断する幅エンボス17wを前方部Aと中間部Bの境界又はその近傍に形成することができる。また、幅エンボス17wは、下着に装着する位置の目安となることで、吸収性物品1の装着位置のずれを防止し、吸収性物品1の吸収性能を効果的に発揮させることができる。吸収性物品1を個包装する際に、折り目を形成する観点から、幅方向に横断する幅エンボス17wを中間部Bと後方部Cとの境界又はその近傍に形成することもできる(図示せず。)。
【0029】
エンボス17の形状は、ドット状や破線状といったエンボスの間隔があいているものや、格子状のハッチングを含む連続するもの等、特に限定されない。背側への漏れを防止する観点から、少なくとも後方部Cにおいて、連続するエンボスであってもよい。
【0030】
前方部Aが3個または5個の山型16を備える場合、幅方向の中央に備える山型16が幅方向の中央以外に備える山型16より広い幅方向の長さを有するように形成することができる。ここで、山型16の幅方向の長さW16は、
図1(b)に示すように、幅方向両端の山型16では、山型16を形成する変曲点及び谷間部15から長手方向に垂直線を伸ばし、幅方向と平行に引いた両点間の距離を示すものであり、幅方向両端以外の山型16では、山型16を形成する谷間部15、15から長手方向に垂直線を伸ばし、幅方向と平行に引いた両点間の距離を示すものである。中央に備える山型16が中央以外に備える山型16より広い幅を有することにより、幅方向の中央に備える山型16が局所をしっかりと固定し、幅方向の中央以外に備える山型16が局所を包み込むこととなる。前方部Aが3個の山型16を備える場合、中央以外に備える山型16と中央に備える山型16と中央以外に備える山型16の最大幅の比は、横漏れ防止の観点から、2:6:2ないし3:4:3が好ましい。
【0031】
本発明の吸収性物品1としては、特に制限はないが、例えば、使い捨て紙オムツ、生理用ナプキン、パンテイライナー、軽失禁パッド、ライナー等をあげることができる。
【0032】
本実施形態のトップシート11は、尿等の排せつ物が吸収体13へと浸透するような液透過性を備えていればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、あるいは、これらを積層した複合シートといった材料を基材として形成される。また、吸収性物品1を装着した際、前方部A付近の吸収体13が重力に対して傾いて配置されているため、体液がトップシート11の表面を走ってしまい、吸収体13に吸収されず、漏れが生じてしまうことがある。したがって、トップシート11は、ドライ性と漏れ防止の観点から、基材に多数の開孔を有する、いわゆるメッシュシートを用いることが好ましい。
【0033】
さらに、肌への刺激を低減させるために、トップシート11に、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させることも好ましい。さらに、強度および加工性の点から、トップシート11の坪量は、10g/m
2以上50g/m
2以下、さらに15g/m
2以上30g/m
2以下であることが好ましい。
【0034】
本実施形態のバックシート12は、吸収体13が保持している体液が滲みだしたり下着に漏れたりしないような液不透過性を備えたものであればよく、不織布、樹脂フィルム、あるいはこれらを積層した複合シートといった材料を基材として形成される。かかる不織布は、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンドやメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料があげられる。また、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等があげられる。強度および加工性の点から、バックシート12の坪量は、15g/m
2以上40g/m
2以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート12は透湿性を持たせることが好ましい。透湿性を備えさせるために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合することや、バックシート12にエンボス加工を施すこと等があげられる。フィラーとしては、炭酸カルシウムをあげることができ、その加工方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0035】
図5は、吸収性物品の背面図である。吸収性物品1は、吸収性物品1を下着に貼り付けて装着する際に、ズレ止めの観点から、バックシート12の非肌当接面の領域に、粘着部20を備えることができる。粘着部20の形状としては、略長方形や円形、楕円形等、特に制限なく選択することができる。例えば、
図5に示すように、前方部Aが立体形状となりやすくする観点から、幅方向の中央部の範囲に収まる形状であってもよい。粘着部20を形成する粘着剤は、特に制限なく公知の材料を用いることができる。さらに、吸収性物品1を個包装する場合、粘着部20を保護する剥離紙を設けることもできる。
【0036】
本実施形態の吸収体13は、吸収性の観点から、基材と高吸収性樹脂(SAP)を材料とすることが好ましい。基材は、吸液性、導液性、さらにSAPに対する固着性を備えるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、親水性シートをあげることができる。また、かかるフラッフパルプとしては、木材パルプ及び合成繊維等を綿状に解繊したもの、親水性シートとしては、ティシュ、吸収紙、親水性不織布をあげることができる。
【0037】
吸収体13は、上記の材料を用いて、単層あるいは複層のシート状で構成される。吸収量確保の観点から、木材フラッフパルプのような、フラッフパルプのウェブの親水性繊維マトリックスをSAPと混合して形成したもの、あるいは、親水性シートにSAPを塗布したSAPシートが好ましい。また、SAPの漏洩防止や吸収体13の形状を安定させる観点から、吸収体13をティシュのような親水性のキャリアシートに包むことが好ましい。基材とSAPとの吸収速度、保水性、液戻り性におけるバランスの観点から、吸収体13におけるSAPの坪量は150g/m
2以上500g/m
2以下が好ましい。
【0038】
吸収体13の形状としては、特に制限はなく、例えば、吸収性物品1の外形に沿ったものや、矩形状、砂時計状、I字状等をあげることができる。
【0039】
吸収体13には、該吸収体13の長手方向中央部に沿って、長手方向に延びる圧搾溝(図示せず)が形成されていることが好ましい。この圧搾溝により、吸収性物品1は長手方向に折り曲げやすくなり、装着時に局所へのフィット感を向上することができる。さらに、吸収体13の表面にエンボス加工を施すと、尿等の排せつ物の拡散をコントロールすると共に、使用者の体型に応じて吸収体13が容易に変形するので好ましい。
【0040】
吸収体13の上面への体液の拡散を促進させるために、トップシート11と吸収体13との間に、液拡散性シート18を設けることができる。かかる液拡散性シート18としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布があげられる。液拡散性シート18の厚さは、0.1mm以上が好ましく、その坪量は15g/m
2以上が好ましい。厚さが0.1mm未満、あるいは、坪量が15g/m
2未満であると、吸収体13の上面全体への液体の拡散が十分に行われないので好ましくない。また、液拡散性シート18の形状は、特に制限はないが、体液がくまなく吸収体13に拡散するように、吸収体13の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0041】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。