(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-104782(P2015-104782A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】工具マガジン装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20150512BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20150512BHJP
【FI】
B23Q3/155 D
B23Q17/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-248380(P2013-248380)
(22)【出願日】2013年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 忠
(72)【発明者】
【氏名】大畑 健一
【テーマコード(参考)】
3C002
3C029
【Fターム(参考)】
3C002AA05
3C002DD04
3C002FF09
3C002HH01
3C002HH06
3C002KK01
3C002LL12
3C029EE13
3C029EE14
3C029EE20
(57)【要約】
【課題】工具マガジン装置内で工具撮像手段の撮像範囲を超える外径または長さの工具を計測すること。
【解決手段】複数の工具を収納する工具マガジン装置は、工具Tを撮像するカメラ34と照明装置36と、カメラ34により得られた、計測対象の工具Tの画像に基づいて該工具Tの外形寸法を計測する計測手段と、計測結果に応じて工具Tの撮像位置を調整する工具撮像位置調整手段と、を具備する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具収納部を有したラックを備え、内部に複数の工具を収納する工具マガジン装置において、
工具を撮像する工具撮像手段と、
前記工具撮像手段により得られた、計測対象の工具の画像に基づいて該工具の外形寸法を計測する計測手段と、
前記工具の計測結果に応じて前記工具の撮像位置を調整する工具撮像位置調整手段と、
を具備することを特徴とした工具マガジン装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、カメラと、該カメラに対して対設された照明装置とを含み、
前記工具撮像位置調整手段は、計測対象である工具を前記カメラと照明装置との間に配置し、前記カメラによって計測対象である工具の陰影を撮像するようにした請求項1に記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記工具撮像位置調整手段は、前記ラックと工具交換装置との間で工具を搬送する工具搬送装置である請求項1または2に記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
計測対象工具の直径が前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記撮像位置調整手段は、前記計測対象工具を前記照明装置に接近する方向に移動させて新たな撮像位置に位置決めする請求項2または3に記載の工具マガジン装置。
【請求項5】
計測対象工具の長さが前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記撮像位置調整手段は、前記計測対象工具の先端が前記撮像範囲に入るように、前記計測対象工具をその中心軸線に沿って移動させて新たな撮像位置に位置決めする請求項2〜4の何れか1項に記載の工具マガジン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像式の工具寸法計測手段を有した工具マガジンに関する。
【背景技術】
【0002】
工具マガジンは、一般に、工作機械に隣接して配置され、多数の工具を収納している。工具交換装置によって工具マガジンに収納されている工具を工作機械へ供給し、また工作機械から工具マガジンへ工具を受取る。複雑な加工を1つのマシニングセンタで行うために、異なる工具径、工具長の工具を高効率で収納可能にした工具マガジンが開発されている。
【0003】
特許文献1には、工具マガジンに装着された工具の像を撮影するための撮影装置と、工具の画像情報を処理するための画像処理部と、工具マガジンに装着される各工具についてのマスタデータを登録したマスタデータ登録部と、画像データとマスタデータとを照合するための照合認識部とを備え、加工に必要な工具についてマスタデータと撮影された工具の画像データとを照合認識部にて照合することにより撮影された工具を認識するようにした工具の自動照合認識装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、入力手段から入力した保持部に装着される工具の径が少なくとも隣の保持部を空きにしないと保持部に工具を装着できない大きさである場合に、該隣の保持部には工具を装着すべきではない旨を報知するようにした工作機械が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−134638号公報
【特許文献2】特開平11−42533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明では、工具マガジン内の工具について、これから加工を行う際に使用のために工具マガジン内の保持部に収納されている工具から選択された工具を撮影して、それをマスタデータと照合して、使用工具がプログラムに記載された工具と確かに一致していることを確認するようにしているが、工具全体を撮像しているため装置が大型化する。また、工具の直径と長さを計測しようとする場合は、撮像範囲が広い分、高画素、高解像度の撮像装置が必要となり、コスト高となる。
【0007】
特許文献2の発明では、収納しようとしている工具の情報をオペレーターが入力手段を通じて入力しており、実際に工具の寸法を測定しているのではないので、オペレーターの入力過誤によって、例えば直径の大きな工具や、長い工具を工具マガジン内で他の既に収納されている工具や、工具マガジン内のラックに衝触させてしまい、工具を収納できなくなるだけではなく、これから収納しようとしている工具や収納済工具を脱落または損傷させたり、或いは、工具マガジンを損傷させたりする問題が生じる。
【0008】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、工具撮像手段の撮像範囲を超える外径または長さを有した工具を計測することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によれば、複数の工具収納部を有したラックを備え、内部に複数の工具を収納する工具マガジン装置において、工具を撮像する工具撮像手段と、前記工具撮像手段により得られた、計測対象の工具の画像に基づいて該工具の外形寸法を計測する計測手段と、前記工具の計測結果に応じて前記工具の撮像位置を調整する工具撮像位置調整手段とを具備する工具マガジン装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工具位置調整手段によって工具の計測結果に応じて前記工具の撮像位置を調整するようにしたので、計測対象工具の外形寸法が大きく、計測対象工具を所定の撮像位置に位置決めしたときに撮像範囲を超えてしまっても、計測対象工具の撮像位置を調整することによって、大型の撮像装置を用いなくとも、大径または長尺の工具を撮像、計測可能となり、もって構成がコンパクトな工具マガジンを得ることができる。
【0011】
また、本発明によれば、上記の計測結果を利用して、工具とラックとの干渉、或いは、工具マガジン内で隣り合わせに配置される工具間の干渉を確実に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による工具マガジン装置の略示正面図である。
【
図2】
図1の工具マガジン装置のラックと工具搬送位置とを示す略示側面図である。
【
図3】
図1の工具マガジン装置のラックと工具搬送位置とを示す略示斜視図である。
【
図4】
図1の工具差替えステーションを示す略示正面図である。
【
図5】
図1の工具マガジン装置のラックと工具搬送位置と共に示す工具差替えステーションの略示側面図である。
【
図6】工具差替えステーションへの工具の返却操作を示すフローチャートである。
【
図7】工具差替えステーションにおける工具の撮像、計測プロセスを示すフローチャートである。
【
図8A】工具撮像位置への位置決めプロセスを示す工具差替えステーションの略示正面図である。
【
図8B】工具撮像位置への位置決めプロセスを示す工具差替えステーションの略示側面図である。
【
図9A】
図8Aと同様の工具差替えステーションの略示正面図であり、工具撮像位置に位置決めされた工具の外径が撮像範囲を超えている状態を示す図である。
【
図9B】
図8Aと同様の工具差替えステーションの略示正面図であり、工具の外径が撮像範囲を超えている場合に該工具を再位置決めする状態を示す図である。
【
図10A】
図8Bと同様の工具差替えステーションの略示側面図であり、工具撮像位置に位置決めされた工具の長さが撮像範囲を超えている様子を示す図である。
【
図10B】
図8Bと同様の工具差替えステーションの略示側面図であり、工具の長さが撮像範囲を超えている場合に該工具を再位置決めする様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1〜
図4を参照して、本発明の好ましい実施形態による工具マガジンを説明する。
図1〜
図4において、工具マガジン10は工作機械(図示せず)に隣接、配置され、工具交換装置100によって、加工に必要な工具を工作機械へ供給し、また、工作機械で使用した工具を受け取り収納する。なお、本明細書では、中心軸線に沿って延びる棒状のシャンクと、該シャンクの一端に結合されたカッター部と、前記シャンクに装着される工具ホルダを含めて工具Tと称している。工具ホルダは、工作機械の主軸先端部に形成された工具装着穴に嵌合されるテーパー部THと、工具交換装置100に係合する周溝Vとを有している。
【0014】
工具マガジン10は、カバー12内に収納された上ラック14と、下ラック20、カバー12の1つの側面に隣接させて上下ラック14、20の間に配設された工具差替えステーション30、上下ラック14、20と工具交換装置100との間で工具を搬送する工具搬送装置50を具備している。本実施形態では、上下ラック14、20は、カバー12内で共通する鉛直平面内に配設された平板状の部材より成る。なお、本明細書では、上下ラック14、20が形成する鉛直平面をXY平面とし、水平方向にX軸、鉛直方向にY軸、XY平面に対して垂直な水平方向にZ軸を定義する。工具Tの中心軸線がZ軸と平行となるように工具Tは上下ラック14、20に収納され、収納された工具Tの工具ホルダ側を工具マガジン10の後方と定義する。
【0015】
本実施形態において、上下ラック14、20は、工具TをZ軸方向に通過させ該工具Tの周溝Vに係合して保持する複数の開口部より成る工具受容孔16、22が形成されている。工具受容孔16、22は、マトリックス状、
図1の例では6行10列のマトリックス状に配列されている。更に、上下ラック14、20の上縁部には、Z軸方向に配向した工具Tの周溝Vに係合し該工具Tを保持する上方に開口した切欠きより成る工具受容凹部18、24が形成されている。工具受容孔16、22および工具受容凹部18、24の各々は、工具マガジン10の工具収納部を形成している。
【0016】
工具受容孔16、22には、そこを挿通可能な直径を有した比較的小径の工具Tが保持される。一方、工具受容凹部18、24を上方に開口した切欠きにより形成することによって、工具受容凹部18、24には、最上段の工具受容孔16、22に保持されている工具Tと干渉しない限度で比較的大径の工具Tが収納可能となる。工具受容凹部18、24は、該工具マガジン10に収納される最大径の工具Tを保持可能とする間隔をおいてX軸方向に配置されている。或いは、隣の工具Tとの干渉を防止するため、1つおきに工具Tを工具受容凹部18、24に装着するようにしてもよい。また、上ラック14とカバー12の天板との間の空間、および、上ラック14と下ラック20との間の空間は、最大径の工具TをZ軸方向に移動可能とするY軸方向の寸法を有していることは言うまでもない。
【0017】
工具上下ラック14、20と工具交換装置100との間で工具を搬送する工具搬送装置50は、工具Tを係脱可能に把持するキャリッジ52と、X軸方向に延設された上レール54および下レール56、及び上下レール54、56に沿ってX軸方向に往復動可能に設けられた移動支柱58とを具備しており、キャリッジ52は、該移動支柱58に沿ってY軸方向に往復動可能に取付けられている。上下レール54、56内に、例えばボールねじ(図示せず)を延設させ、移動支柱58の上下端部に該ボールねじと係合するナット(図示せず)を取付け、上下レール54、56の前記ボールねじを同期して回転させることによって、移動支柱58を、上下レール54、56に沿ってX軸方向に往復動可能とすることができる。
【0018】
キャリッジ52は、Z軸方向に延設された板状の部材より成りY軸方向に往復動可能に移動支柱58に取付けられたベース部60を具備している。該ベース部60の上面には、Z軸方向に延設されたボールねじ62、及び該ボールねじ62を回転駆動するモータ64が取付けられており、ベース部60の下面には、Z軸方向に延設された第1の案内レール66が固定されている。第1の案内レール66には、該第1の案内レール66に沿って往復動可能に第1のスライダ68が取付けられており、該第1のスライダ68にはボールねじ62に係合するナット70が取付けられている。また、第1のスライダ68には第2の案内レール72が固定されており、該第2の案内レール72は該第1のスライダ68と共にZ軸方向に往復動可能となっている。第2の案内レール72には、第1のスライダ68の移動に伴い該第2の案内レール72に沿って往復動可能に第2のスライダ74が取付けられており、該第2のスライダ74には腕76が固定されている。腕76の先端に、工具Tの工具ホルダに嵌合するテーパ穴を有し、工具Tを係脱可能に把持する工具把持手段78が固定されている。本実施の形態では、工具搬送装置50のX、Y、Z軸方向の移動及び工具把持の動作は、工作機械のNC装置(図示せず)により制御される。
【0019】
図4、5を参照すると、工具差替えステーション30には、工具Tを載置するための支持台32と、工具Tを撮像するためのカメラ34、および、カメラ34による撮像のために工具Tへ向けて投光する照明装置36より成る撮像手段とが設けられている。またカバー12の一側面にはドア12aが設けられており、オペレーターが工具差替えステーション30内にアクセス可能となっている。
【0020】
以下、本実施形態の作用を説明する。
先ず、
図6を参照すると、オペレーターがドア12aを開閉して支持台32上に工具Tを載置し、工具マガジン10の操作盤(図示せず)から、該工具Tについて、工具マガジン10内への返却操作を行う(ステップS100)。これによって、工具マガジン10の制御装置は、
図7のステップS10〜ステップS24から成る工具Tの位置決め、撮像、計測操作を開始する(ステップS200)。次いで、上下ラック14、20において、該工具Tを収納すべき工具受容孔16、22または工具受容凹部18、24に隣接する工具受容孔16、22または工具受容凹部18、24に既に保持されている或いは保持する予定である工具Tのデータと比較し、該工具Tと計測された工具Tとが干渉するか否かの干渉チェックが行われる(ステップS300)。このように、計測対象たる工具(計測対象工具と称する)は、オペレーターによって新たに工具差替えステーション30に配置された工具である。
【0021】
ステップS300における干渉チェックの結果、干渉しないと判定されると(ステップS400でYesの場合)、該工具Tは工具マガジン10の所定の工具受容孔16、22または工具受容凹部18、24に装着、保持される(ステップS500)。ステップS300における干渉チェックの結果、干渉すると判定されると(ステップS400でNoの場合)、該工具Tの返却操作は中断され、工具Tが支持台32に載置されると共に、オペレーターに対して干渉が生じる旨のアナウンスまたは警告がなされる(ステップS600)。
【0022】
次に、
図7を参照して、
図6のステップS200における工具Tの位置決め、撮像、計測プロセスを説明する。撮像プロセスが開始されると(ステップS10)、オペレーターによって支持台32上に載置された計測対象工具Tは、
図5に示すように、その工具ホルダのテーパー部THにおいて工具撮像位置調整手段としての工具搬送装置50の工具把持手段78によって把持され、次いで、該工具搬送装置50によって撮像位置へ位置決めされる(ステップS12)。このように、撮像位置は、
図8A、8Bに示すように、支持台32からY軸方向に上動させた位置である。
【0023】
次に、撮像位置に位置決めされた計測対象工具Tへ向けて照明装置36から投光され、カメラ34は、照明装置36からの光によって生じる計測対象工具Tの陰影(シルエット)を撮像する(ステップS14)。工具マガジン10の制御装置は、カメラ34からの撮像データに対して例えば二値化するなどの処理を行い、計測対象工具Tの外形、特にその長さおよび直径を計測する。このように、陰影によって工具Tを撮像することによって、カメラ34として高価なカメラや複雑な画像処理を行わなくとも、計測対象工具Tの輪郭を明瞭に撮像可能となる。
【0024】
計測結果から、計測対象工具Tの直径方向の最外縁部分の輪郭が撮像範囲を超えているか否かが判定される(ステップS16)。計測対象工具Tの直径方向の最外縁部分の輪郭が撮像範囲を超えているか否かの判定は、例えば、二値化した撮像データにおいて、Z軸に対して垂直な方向に各画素の値を順次チェックしたときに、全ての画素の値が0または1である場合に、該計測対象工具Tの直径方向の最外縁部分の輪郭が撮像範囲を超えていると判定することができる。ステップS16における判定の結果、計測対象工具Tが大径工具であって、その寸法が、
図9Aに示すように、直径方向に撮像範囲を超えていると判定される場合(ステップS16でYesの場合)、該計測対象工具Tは工具搬送装置50によって、該計測対象工具Tが計測可能な撮像位置に再位置決めされる(ステップS18)。この再位置決は、二値化した撮像データにおいてZ軸に垂直な方向に0と1を含む画素が発現するまで、つまり計測対象工具Tの最外縁が現れるまで、
図9Bに示すように、工具搬送装置50をY軸方向に下動させる、つまり計測対象工具Tを照明装置36へ接近させることによって行うことができる(ステップS14〜ステップS18)。計測対象工具Tの外形が撮像データ上に出現したときの工具搬送装置50のY軸の座標値と、計測対象工具Tを撮像した画像の二値化データにおいてZ軸に垂直な方向に見たときに画素の値が0から1へ変化する画素の位置とから、工具Tの直径を演算で求めることができる。この演算は、工具マガジン10の制御装置内で行うことができる。或いは、外形寸法が正確に予め分かっているキャリブレーション工具を用いて、予め撮像、計測を行って、計測結果を工具搬送装置50の座標値と共に工具マガジン10の制御装置内に格納しておいてもよい。工具搬送装置50の座標値と画素の位置とから計測対象工具Tの直径を演算するため、工具Tの直径方向の全体像を撮像範囲に入れる必要はなく、計測対象工具Tの直径方向片側の最外縁部分の輪郭が撮像範囲に入ればよい。
【0025】
ステップS16で計測対象工具Tの直径方向の最外縁部分の輪郭が撮像範囲を超えていないと判定されると(ステップS16でNoの場合)、ステップS20において、計測対象工具Tの長さ方向の先端の輪郭が撮像範囲を超えているか否かが判定される。計測対象工具Tの長さ方向の先端の輪郭が撮像範囲を超えているか否かの判定は、計測対象工具Tの直径方向の最外縁部分の輪郭が撮像範囲を超えているか否かの判定の場合と同様に、例えば、二値化した撮像データにおいてZ軸方向に各画素の値を順次チェックしたときに、全ての画素の値が0または1である場合に、該計測対象工具Tの長さ方向の先端の輪郭が撮像範囲を超えていると判定することができる。計測対象工具Tの長さ方向の先端の輪郭が、
図10Aに示すように、撮像範囲を超えていると判定される場合(ステップS20でYesの場合)、該計測対象工具Tは工具搬送装置50によって、該計測対象工具Tが計測可能な撮像位置に再位置決めされる(ステップS22)。この再位置決めは、二値化した撮像データにおいてZ軸方向に0と1を含む画素が出現するまで、つまり、計測対象工具Tの先端がカメラ34の視野内に入るまで、
図10Bに示すように、工具搬送装置50をZ軸方向に後退させることによって行うことができる(ステップS14〜ステップS22)。計測対象工具Tの先端が撮像データ上に出現したときの工具搬送装置50のZ軸の座標値から計測対象工具Tの長さを求めることができる。この演算は、工具マガジン10の制御装置内で行うことができる。直径の場合と同様に、工具搬送装置50の座標値と画素の位置とから計測対象工具Tの長さを演算するため、工具Tの長さ方向の全体像を撮像範囲に入れる必要はなく、計測対象工具Tの長さ方向の先端の輪郭が撮像範囲に入ればよい。
【0026】
既述したように、工具位置調整手段としての工具搬送装置50によって、計測対象工具Tをカメラ34と照明装置36との間に位置決めし、計測対象工具Tの外形を撮像することによって、計測対象工具Tの寸法を計測することができる。こうした工具の計測は、工具差替えステーション30において行われ、計測対象工具Tの外形寸法の計測結果に基づいて、加工プログラムで指定された工具収納部、つまり工具受容孔16、22または工具受容凹部18、24に当該工具が収納可能であるか否かが判定される。従って、特許文献1、2のようにオペレーターが間違った工具を収納してしまう事態を未然に防ぐことができる。
【0027】
また、計測対象工具Tの外形寸法が大きく、計測対象工具Tを所定の撮像位置に位置決めしたときに撮像範囲を超えてしまっても、上述したように計測対象工具Tを再位置決めすることによって、大型の撮像装置を用いなくとも、大径または長尺の工具を撮像、計測可能となる。
【0028】
こうして、工具マガジン10内に収納されている全ての工具は、その直径と長さが計測されデータが工具マガジン10の制御装置に格納されているので、例えば、工具マガジン10内のある工具が加工に使用されるとき、工作機械上で当該工具の長さ等を精密に計測する際に、該工具と精密測定測装置とを干渉させないようにして、該工具を精密測定装置へ向けて早送りで接近させることが可能となり、工具の精密測定、特に長さの測定時間を短縮可能となる。
【0029】
計測された外形寸法を、例えば工作機械に設けられている工具とワークとの衝突防止装置に送出することによって、衝突防止装置のモデル生成に用いることができる。更に、計測された工具の外形を工具管理装置の工具データと共に画面表示することによって、オペレーターは容易に工具の管理作業を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
10 工具マガジン
14 上ラック
16 工具受容孔
18 工具受容凹部
20 下ラック
22 工具受容孔
24 工具受容凹部
30 工具差替えステーション
32 支持台
34 カメラ
36 照明装置
50 工具搬送装置
78 工具把持手段
100 工具交換装置
【手続補正書】
【提出日】2014年11月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によれば、複数の工具収納部を有したラックを備え、内部に複数の工具を収納する工具マガジン装置において、工具を撮像する工具撮像手段と、前記工具撮像手段により得られた、計測対象の工具の画像
と外形寸法が既知のキャリブレーション工具を予め撮像した画像とに基づいて該工具の外形寸法を計測する計測手段と、前記工具の
外形寸法が前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記工具の撮像位置を調整する工具撮像位置調整手段とを具備する工具マガジン装置が提供される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工具収納部を有したラックを備え、内部に複数の工具を収納する工具マガジン装置において、
工具を撮像する工具撮像手段と、
前記工具撮像手段により得られた、計測対象の工具の画像と外形寸法が既知のキャリブレーション工具を予め撮像した画像とに基づいて該工具の外形寸法を計測する計測手段と、
前記工具の外形寸法が前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記工具の撮像位置を調整する工具撮像位置調整手段と、
を具備することを特徴とした工具マガジン装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、カメラと、該カメラに対して対設された照明装置とを含み、
前記工具撮像位置調整手段は、計測対象である工具を前記カメラと照明装置との間に配置し、計測対象である工具の前記照明装置からの光によって生じる陰影を前記カメラで撮像するようにした請求項1に記載の工具マガジン装置。
【請求項3】
前記工具撮像位置調整手段は、前記ラックと工具交換装置との間で工具を搬送する工具搬送装置である請求項1または2に記載の工具マガジン装置。
【請求項4】
計測対象工具の直径が前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記撮像位置調整手段は、前記計測対象工具の外形が前記撮像範囲に入るように、前記計測対象工具をその径方向に移動させて新たな撮像位置に位置決めする請求項2または3に記載の工具マガジン装置。
【請求項5】
計測対象工具の長さが前記工具撮像手段の撮像範囲を超える場合に、前記撮像位置調整手段は、前記計測対象工具の先端が前記撮像範囲に入るように、前記計測対象工具をその中心軸線に沿って移動させて新たな撮像位置に位置決めする請求項2〜4の何れか1項に記載の工具マガジン装置。