【解決手段】ロータリーバルブ17は、外周面に吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bが仕切り壁17Cで仕切られて周回して形成されており、ケース体4内に各シリンダ室9A〜9Dと吸込用バルブ17A並びに吐出用バルブ17Bとの連通路29を共通化して備えている。
前記吸込用バルブと前記吐出用バルブは、幅広溝部と幅狭溝部が交互に周回して形成されており、前記ケース体に形成され前記各シリンダ室と連通する連通路に連なる連通孔は、前記仕切り壁で仕切られた前記吸込用バルブ及び吐出用バルブを含む溝幅の中心線上であって前記幅広溝部に臨むように周方向で等間隔に形成されている請求項1記載の流体回転機。
前記ロータリーバルブの回転により、前記連通孔が前記吸込用バルブと前記吐出用バルブの前記幅広溝部に臨んでいずれかの前記シリンダ室と前記連通路を通じて連通する状態と前記連通孔が前記仕切り壁により塞がれた状態とが繰り返される請求項2記載の流体回転機。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の第12図に示す流体回転機においては、両頭ピストンが摺動する4つのシリンダの各々に対してそれぞれ吸込口,吐出口があり吸気バルブ及び排気バルブが存在する。このため各吸込口及び吐出口に接続する管路(チューブ)を引き回す配管構造が煩雑になり、設置スペースも必要になる。
【0005】
また、特許文献2の
図19に示すバルブ構造によれば、ケース本体に流路を形成し、一方側にロータリーバルブを設けて流体の吸込及び吐出が行われる外部接続管路を減らしているが、各シリンダ室間の連通路が吸込み側と吐出側に各々必要であり、ピストンによる流体の圧縮吐出動作に寄与しないデッドスペース比率が大きい。
ロータリーバルブが入出力軸(シャフト)と別体で構成されている場合、組間違いによる動作不良が発生するおそれがある。
また、シャフトを中心とした回転体の回転バランスを取るため、吸込み側及び吐出側のバルブにおいて肉盗みを設ける必要があり、バランス計算や形状が煩雑になる。
【0006】
本発明の目的は、流体の圧縮吐出動作に寄与しない流路のデッドスペース比率を低減し、部品点数を減らして組立性を向上させた流体回転機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は次の構成を有する。
シャフトの軸心に対して偏心して組み付けられ、当該シャフトを中心に半径rの第一仮想クランクアームを介して回転可能に組み付けられた第一クランク軸と、前記第一クランク軸の軸心に対して偏心した複数の第二仮想クランク軸を軸心とする筒体が連続して形成された偏心カムと、前記偏心カムに互いに交差したまま組み付けられ、前記第一クランク軸を中心とする半径rの第二仮想クランクアームの回りを相対的に回転可能に組み付けられた複数のピストン組と、前記第一クランク軸の両端部に各々組み付けられ、前記シャフトを中心とする回転部品間の回転バランスをとる第一,第二バランスウェイトと、前記シャフトを回転可能に軸支し、当該シャフトを中心に回転する前記第一クランク軸及び前記第一,第二バランスウェイト、並びに前記第一クランク軸に組み付けられた前記偏心カムを回転可能に収容するケース体と、前記ケース体内に前記シャフトの一端側に自在継手を介して一体的に組み付けられ、各シリンダ室に対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えを行なうロータリーバルブと、前記第一クランク軸に組み付けられた前記偏心カムが回転することで、前記偏心カムに交差して組み付けられた前記複数のピストン組が相対的に回転しながら内サイクロイドの軌跡に沿って直線往復運動が行われる流体回転機であって、前記ロータリーバルブは、外周面に前記吸込用バルブと前記吐出用バルブが仕切り壁で仕切られて周回して形成されており、前記ケース体内に前記各シリンダ室と前記吸込用バルブ並びに前記吐出用バルブとの連通路を共通化して備えていることを特徴とする。
【0008】
上記流体回転機を用いれば、シャフトの一端側に自在継手を介してロータリーバルブが一体的に組み付けられ、各シリンダ室に対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えを行なうので、部品点数が削減され、組立性も向上する。
特に、ロータリーバルブは、吸込用バルブと吐出用バルブを、仕切り壁で仕切られて周回して形成されており、ケース体内に各シリンダ室と吸込用バルブ及び吐出用バルブとの連通路を共通化して備えているので、流体の圧縮吐出動作に寄与しない流路のデッドスペース比率を低減し、ポンプ性能を向上させることができる。
また、ロータリーバルブに吸込用バルブと吐出用バルブを併設することで、バルブ径(D)とバルブ高さ(L)の比(D/L)が小さくなるので、一般論としてロータリーバルブはロックし難くなりシャフトと共に円滑に回転させることができる。
【0009】
また、前記吸込用バルブと前記吐出用バルブは、幅広溝部と幅狭溝部が交互に周回して形成されており、前記ケース体に形成され前記各シリンダ室と連通する連通路に連なる連通孔は、前記仕切り壁で仕切られた前記吸込用バルブ及び吐出用バルブを含む溝幅の中心線上であって前記幅広溝部に臨むように周方向で等間隔に形成されていることが好ましい。
これにより、一カ所に設けられたロータリーバルブの回転によって、吸込用溝及び吐出用溝の幅広溝部と各シリンダ室へ連通する連通孔が連通したり仕切り壁により遮断されたりすることを繰り返しながら、流体の吸込、圧縮、吐出動作の切替えがスムーズに行うことができる。また、各シリンダ室と吸込用バルブ及び吐出用バルブとを連通する連通路を共用し、さらに吸込用バルブと吐出用バルブとの間を連通路を通じて互いに連通させることで、ケース体における連通路の占める容積を減らしてデッドスペース比率を低減することができる。
【0010】
前記吸込溝の幅狭溝部には、圧力バランスを維持するための溝幅を拡大する逃げ溝が形成されていることが好ましい。
これにより、ロータリーバルブの吐出側バルブ及び吸込側バルブは高圧流体の偏在による圧力バランスの偏りを逃げ溝により逃がすことで、ロータリーバルブに作用する径方向に対する摺動ロスを低減することができる。
なお、逃げ溝は、仕切り壁の軸方向の中心に対して点対称となる幅狭溝部に形成されていてもよい。これにより、ロータリーバルブの回転方向が時計回り方向と反時計回り方向とで反対方向に回転することで吸込用バルブと吐出用バルブが入れ替わっても、圧力バランスを保って回転させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る流体回転機を用いれば、流体の圧縮吐出動作に寄与しない流路のデッドスペース比率を低減し、部品点数を減らして組立性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための一実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。先ず、
図1乃至
図8を参照して一例として圧縮性の流体に用いられる流体回転機、例えば流体モータについて説明する。
【0014】
図1(A)〜(D)において、第一ケース体1、第二ケース体2及び第三ケース体3とで構成されるケース体4にシャフト5(入出力軸)が回転可能に軸支されている。第一ケース体1と第二ケース体2とは、ボルト6により四隅をねじ嵌合させて一体に組み付けられている(
図1(C)参照)。また、第二ケース体2には、吸込用配管2aと吐出用配管2bが接続されている。また、第二ケース体2の端部には、第三ケース体3が嵌めこまれてボルト7により一体に組み付けられている(
図1(D)参照)。第一ケース体1及び第二ケース体2の4側面には、シリンダヘッド8及びシリンダ9がボルト10により一体に組み付けられている。
【0015】
図2(A)〜(D)に示すように、ケース体4内には分割されたシャフト5a,5bが回転可能に各々軸支されている。このシャフト5a,5bを中心に回転する第一クランク軸11、第一,第二バランスウェイト12a,12b、並びに第一クランク軸11に組み付けられた偏心カム13(
図3参照)、偏心カム13に交差して相対的に回転可能に組み付けられた第一両頭ピストン組14及び第二両頭ピストン15(
図2(A)(B)(C)参照)、シャフト11の一端に自在継手16(
図2(D)参照)を介して組み付けられ各シリンダ室に対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えを行なうロータリーバルブ17(
図2(A)参照)などが回転可能に収納されている。以下に、具体的な構成について説明する。
【0016】
図3において、一方のシャフト5aは、第一ケース体1に設けられた軸受18aに回転可能に軸支され、他方のシャフト5bは第二ケース体2に設けられた軸受18bによって回転可能に軸支されている。第一クランク軸11は、シャフト5a,5bの軸心に対して偏心して連結される。
【0017】
本実施形態では、シャフト5aの一端(Dカット部)は、第一バランスウェイト12aと一体に組み付けられている。また、第一クランク軸11の一端は、第一バランスウェイト12aと一体に組み付けられている。第一バランスウェイト12aに嵌め込まれたシャフト5aと第一クランク軸11の一端は、これらに直交するボルト19aを第一バランスウェイト12aにねじ嵌合することによって一体に組み付けられている。
【0018】
また、シャフト5bの一端(Dカット部)は、第二バランスウェイト12bと一体に組み付けられている。また、第一クランク軸11の他端は、第二バランスウェイト12bと一体に組み付けられている。第二バランスウェイト12bに嵌め込まれたシャフト5bと第一クランク軸11の他端は、これらに直交するボルト19bを第二バランスウェイト12bにねじ嵌合することによって一体に組み付けられている。
【0019】
図3において、第一,第二バランスウェイト12a,12bは、シャフト5a,5bを中心として組み付けられる第一クランク軸11及び偏心カム13を含む回転部品間の回転バランスを取るために設けられている。このように、第一,第二バランスウェイト12a,12bにシャフト5a,5b及び第一クランク軸11が一体に組み付けられていると、シャフト5a,5bと第一クランク軸11を結ぶ第1仮想クランクアームの長さを例えば第一,第二バランスウェイト12a,12bの回転半径rにより調整して、シャフト5a,5bを中心として第一クランク軸11を軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる。
【0020】
図3に示すように、第一,第二両頭ピストン組14,15が互いに十字状に交差して第一クランク軸11を中心に回転する偏心カム13に組み付けられている(
図2(B)参照)。具体的には、偏心カム13は、回転中心となる第一クランク軸11が挿通する筒孔の軸心方向両側に偏心した筒体13a,13bが各々連続して形成されている。筒孔内には複数の内側軸受20を介して第一クランク軸11が嵌め込まれており、偏心カム13の回転中心となっている。また、互いに偏心して設けられた筒体13a,13bの軸心は、第一クランク軸11の軸心に対して互いに偏心しており、第二仮想クランク軸と一致するようになっている。
【0021】
図3に示すように、筒体13a,13bの外周側には外側軸受21が各々組み付けられている。複数の内側軸受20は第1のクランク軸11を回転可能に支持している。また、第一,第二両頭ピストン14,15は筒体13a,13bに組み付けられた外側軸受21を介して第二仮想クランク軸と軸直角方向に十字状に交差して嵌め込まれ、筒体13a,13bの回転に対して相対的に回転可能に支持されている。
【0022】
これにより、第一クランク軸11と第二仮想クランク軸を結ぶ第2仮想クランクアームの長さを筒体13a,13bの回転半径rにより調整して、第一クランク軸11を中心として偏心カム13、第一両頭ピストン組14、第二両頭ピストン組15を含む回転体を軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる。
【0023】
また、
図3において、第一,第二両頭ピストン組14,15の長手方向両端部に設けられたピストンヘッド部14a,15aにはリング状のシールカップ14b,15b、シールカップ押さえ部材14c,15cが各々ボルト22(
図2(A)(B)参照)により組み付けられている。シールカップ14b,15bは、オイルフリーのシール材(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂材等)が用いられる。シールカップ14b,15b(図示せず)の外周縁部にはピストン摺動方向に沿って起立部が起立形成されている。流体回転機においては、起立部はピストンヘッド部14a,15aの摺動方向外側に向けて組み付けられる。第一,第二両頭ピストン組14,15は、シールカップ14b,15bによって、シリンダ9の内壁面とのシール性を保ちながら摺動するようになっている。尚、シールカップ14b,15bは、他の回転部品に比べて回転質量が無視できるほど軽量であるため、第一,第二バランスウェイト12a,12bによるバランス取りに影響を与えない。
【0024】
また、
図3において、第一,第二両頭ピストン組14,15は、ピストン本体14d,15d(
図2(A)(B)参照)には、長手方向に沿って両側に長孔14e,15e(
図2(B)参照)が各々設けられている。この長孔14e,15e内には第一ケース体1及び第二ケース体2に立設されたガイド軸23が挿入されている(第二両頭ピストン15側は省略)。このガイド軸23に組み付けられたガイド軸受23aによって、第一,第二両頭ピストン組14,15(ピストン本体14d,15d)が往復動するのをガイドされるようになっている。このガイド軸受23aによって、シリンダ9内を直線往復運動する第一,第二両頭ピストン組14,15のピストンヘッド部14a,15aがシリンダ摺動面から受ける反力をガイド軸受23aで受け止めて軽減するため、ピストンヘッド部14a,15aとシリンダ9との摺動抵抗を減らして摩擦損失、特に駆動源の消費電力を低減することができる。
【0025】
シャフト5bには、自在継手16を介してロータリーバルブ17が一体に組み付けられる。シャフト5bには、鍔部5cが設けられており、軸受18bを軸方向に位置決めしている。鍔部5cにはワッシャー24を介してロータリーバルブ17、カップリング25、フランジ部26が順次重ね合わせられる。シャフト5bの他端は、ロータリーバルブ17、カップリング25の中心孔を挿通してフランジ部26のDカット孔26aに嵌め込まれている。このフランジ部26に環状のワッシャー27を介してナット28をねじ嵌合させることによって、シャフト5bに対してロータリーバルブ17が一体に組み付けられる。
【0026】
図8において、自在継手16は、ロータリーバルブ17とカップリング25とフランジ部26により構成される。即ち、ロータリーバルブ17の対向する一対のハブ17aには、長手方向に嵌合孔17bが各々設けられている(
図4(D)(E)参照)。また、カップリング25のハブ17aと重なり合う一対のハブ25a1には、嵌合孔17bに嵌め合わされる嵌合突起25b1が各々突設されている。
また、カップリング25のフランジ部26と重なり合うハブ25a1と90°位相が異なるハブ25a2には、嵌合突起25b2が各々突設されている。フランジ部26のハブ25a2と重なり合う部位には嵌合用切欠き部26bが設けられている。嵌合用切欠き部26bには、嵌合突起25b2が嵌め合わされる。
このように、ロータリーバルブ17とカップリング25とカップリング25とフランジ部26とが、90°直交する位置で互いに凹凸嵌合して一体に組み付けられることで、ロータリーバルブ17が傾斜することなくシャフト5bに対して同軸状に組み付けられる。
【0027】
ロータリーバルブ17は、上述したようにシャフト5bに組み付けられる環状の回転体であり、4か所あるシリンダ室9A〜9D(
図7参照)に対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えを行なう。
図4(A)に示すように、ロータリーバルブ17の外周面には、吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bが、仕切り壁17Cを介して一体に形成されている。
【0028】
詳しくは、ロータリーバルブ17の外周面には周方向に吸込用バルブ17A(吸込用溝)と吐出用バルブ17B(吐出用溝)が仕切り壁17Cに仕切られたまま周回して形成されている。吸込用バルブ17Aは幅広溝部17A1と幅狭溝部17A2が周方向に180度の範囲で交互に形成されている。また、吐出バルブ17Bは幅広溝部17B1と幅狭溝部17B2が周方向に180度の範囲で交互に形成されている。幅広溝部17A1と幅狭溝部17B2、幅広溝部17B1と幅狭溝部17A2が仕切り壁17Cを介して隣接して形成されている(
図4(A)(B)(C)(F)参照)。また、幅広溝部17A1と幅狭溝部17A2、幅広溝部17B1と幅狭溝部17B2の境界を仕切る仕切り壁17Cには、吸込用バルブ17A及び吐出用バルブ17Bを流れる流体に渦流が発生し難くするため、例えば曲面部17D(或いはテーパー面)が形成されていることが好ましい(
図4(A)(F)参照)。
【0029】
図3において、ロータリーバルブ17が収容される第三ケース体3、第三ケース体3が組み付けられる第二ケース体2、第二ケース体2に組み付けられるシリンダ9、シリンダ9を閉止するシリンダヘッド8には、シリンダ室9A〜9Dと連通する連通路29が4か所に各々形成されている。第二ケース体2には、連通路29の一部を形成する管状シール材30が各々嵌め込まれている。この管状シール材30の両側にはOリング31が嵌め込まれており、第三ケース体3と第二ケース体2の隙間、第二ケース体2とシリンダ9との隙間が各々シールされている。また、シリンダ9の開口を覆うようにシリンダヘッド8にもOリング32が嵌め込まれており、シリンダ9とシリンダヘッド8との間の隙間がシールされている。各シリンダ室9A〜9Dへの連通路29に連なる連通孔(29A〜29D;
図5参照)は、ロータリーバルブ17の外周面に形成された仕切り壁17Cを含む吸込用バルブ17A及び吐出用バルブ17Bの溝幅の中心線M上に周方向で等間隔(例えば90°間隔)に形成されている(
図5,
図6参照)。
【0030】
吸込用バルブ17A(幅広溝部17A1)及び吐出用バルブ17B(幅広溝部17B1)の対向位置には、第三ケース体3の外周面に周方向に90°ごとに形成された連通孔29A〜29D(
図5、
図6参照)が臨むように形成されている。連通孔29A〜29Dは連通路29を通じてシリンダ室9A〜9Dへ連通する。また、吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bとの流体の連絡は、幅広溝部17A1と幅広溝部17B1に臨む連通孔29A〜29Dを通じて行われる。この結果、吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bとの連絡は、ロータリーバルブ17の回転位置によって幅広溝部17A1と幅広溝部17B1に臨む連通孔29A〜29Dを通じて共通の連通路29を通じて行われる。よって、一カ所に設けられたロータリーバルブ17の回転によって、吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1と吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1が各シリンダ室9A〜9Dへ連通する連通孔29A〜29Dと連通したり仕切り壁17Cにより遮断されたりすることを繰り返しながら、流体の吸込、圧縮、吐出動作の切替えを行うことができる。また、各シリンダ室9A〜9Dと吸込用バルブ17A及び吐出用バルブ17Bとの間を連絡する連通路29を共用し、吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bとの間の流体の移動も連通路29を用いて幅広溝部17A1と幅広溝部17B1を互いに連通させることで、ケース体4における連通路29の占める容積を減らして流体の圧縮吐出動作に寄与しない流路のデッドスペース比率を低減することができる。
【0031】
また、
図4(A)(C)(F)に示すように、吸込用バルブ17Aは高圧流体で満たされていることから、吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1側に高圧流体が偏在し、これによりロータリーバルブ17には圧力バランスの偏りに起因する径方向に向かう応力が作用する。
このため、吸込用バルブ17Aの幅狭溝部17A2が設けられた吸込用溝を拡大するように逃げ溝17A3が設けられている。この逃げ溝17A3により高圧流体の偏在による圧力バランスの偏りの影響を緩和することで、ロータリーバルブ17に作用する径方向に対する摺動ロスを低減することができる。
【0032】
ここでロータリーバルブ17の開閉動作について、
図5及び
図6に示すバルブの展開図と第一両頭ピストン組14及び第二両頭ピストン組15の動作状態図を参照しながら説明する。
図5及び
図6はロータリーバルブ17が原点位置から反時計回り方向に45°ずつ一回転するまでの流体の流れを第一両頭ピストン組14及び第二両頭ピストン組15の移動状態とともに模式的に表したものである。図中、破線丸孔は、連通孔29A〜29Dの位置を示すものとする。
【0033】
図5において、ロータリーバルブ17が0°(即ち原点位置)にあるとき、連通孔29B,29Dが仕切り壁17Cに遮断され、連通孔29Aが吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨み、連通孔29Cが吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置にある。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(上端)にありシリンダ室9Dより流体の吐出動作を完了し、シリンダ室9Bに流体の吸込動作を完了する。また、第二両頭ピストン組15は、シリンダ室9Aにおいて流体を吐出動作継続中の状態であり、シリンダ室9Cにおいて流体を吸込み動作継続中の状態にある。
【0034】
ロータリーバルブ17が反時計回り方向に45°まで回転すると、連通孔29A,29Bは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨み、連通孔29C,29Dは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は、移動端(上端)から反対方向へ移動し始め、シリンダ室9Dへ流体の吸込みを開始し、シリンダ室9Bは流体を圧縮しながら吸込用バルブ17Aから吐出用バルブ17Bへ送り出すとともに吐出動作を開始する。また、第二両頭ピストン組15は移動端(左端)近傍まで移動して、シリンダ室9Aは流体の吐出動作完了前であり、シリンダ室9Cが流体の吸込み動作完了前である。
【0035】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に90°まで回転すると、連通孔29A、29Cは仕切り壁17Cに対向するため遮断され、連通孔29Bは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨み、連通孔29Dは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は、移動端(上端)からさらに反対方向へ移動し、シリンダ室9Dは流体の吸込み動作継続中の状態であり、シリンダ室9Bは流体の吐出動作継続中の状態にある。また、第二両頭ピストン組15は、移動端(左端)に到達し、シリンダ室9Aは流体の吐出動作を完了し、シリンダ室9Cは流体の吸込み動作を完了した状態にある。
【0036】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に135°まで回転すると、連通孔29A,29Dは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動し、連通孔29B,29Cは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨む位置まで移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(下端)近傍まで移動し、シリンダ室9Dは流体の吸込動作完了前であり、シリンダ室9Bは流体の吐出動作完了前である。また、第二両頭ピストン組15は、移動端(左端)から反対方向へ移動を開始し、シリンダ室9Aに流体の吸込み動作を開始し、シリンダ室9Cは流体の吐出動作を開始する。
【0037】
図6において、ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に180°まで回転すると、連通孔29B,29Dは仕切り壁17Cに対向するため遮断され、連通孔29Aは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動し、連通孔29Cは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨む位置まで移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(下端)に到達し、シリンダ室9Dへの流体の吸込動作完了し、シリンダ室9Bから流体の吐出動作を完了する。また、第二両頭ピストン組15は、シリンダ室9Aに流体の吸込み動作継続中の状態にあり、シリンダ室9Cは流体の吐出動作継続中の状態にある。
【0038】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に225°まで回転すると、連通孔29A,29Bは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動し、連通孔29C,29Dは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨む位置まで移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(下端)から反対方向へ移動を開始し、シリンダ室9Dは流体の吐出動作を開始する。また、シリンダ室9Bは、流体の吸込み動作を開始する。また、第二両頭ピストン組15は、シリンダ室9Aに流体の吸込み動作完了前の状態であり、シリンダ室9Cは流体の吐出動作完了前の状態である。
【0039】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に270°まで回転すると、連通孔29A,29Cは仕切り壁17Cに対向するため遮断され、連通孔29Bは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動し、連通孔29Dは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨む位置まで移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(上端)に向かって移動中であり、シリンダ室9Dは流体の吐出動作継続中の状態にあり、シリンダ室9Bは流体の吸込動作継続中の状態にある。また、第二両頭ピストン組15は、移動端(右端)に到達し、シリンダ室9Aは流体の吸込み動作を完了し、シリンダ室9Cは流体の吐出動作完了を完了した状態にある。
【0040】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に315°まで回転すると、連通孔29A,29Dは吐出用バルブ17Bの幅広溝部17B1に臨む位置まで移動し、連通孔29B,29Cは吸込用バルブ17Aの幅広溝部17A1に臨む位置に移動する。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(上端)近傍まで移動し、シリンダ室9Dは流体の吐出動作完了前の状態にあり、シリンダ室9Bは流体の吸込動作完了前の状態にある。また、第二両頭ピストン組15は、移動端(右端)から反対方向に移動を開始し、シリンダ室9Aは流体の吐出動作を開始した状態となり、シリンダ室9Cは、流体の吸込み動作を開始する。
【0041】
ロータリーバルブ17が更に45°回転して反時計回り方向に360°まで回転すると、
図5に示す0°位置と同様の状態となる。
このとき、第一両頭ピストン組14は移動端(上端)まで移動し、シリンダ室9Dは流体の吐出動作を完了し、シリンダ室9Bは流体の吸込動作を完了した状態にある。また、第二両頭ピストン組15は、移動端(右端)から反対方向へ移動中であり、シリンダ室9Aは流体の吐出動作継続中であり、シリンダ室9Cは、流体の吸込み動作継続中である。
【0042】
以上のように、ロータリーバルブ17が1回転する間に、各シリンダ室9A〜9Dにおいて流体の吸込、圧縮、吐出動作が繰り返し行われる。
【0043】
次に、流体回転機の組立構成の一例について
図7を参照して説明する。
図7において、先ずケース体4に収納される回転体を組み立てる。偏心カム13の筒体13a,13b内に内側軸受20、外側軸受21を組み付け、偏心カム13の中心孔に内側軸受20を介して第一クランク軸11を組み付ける。また外側軸受21を介して第一,第二両頭ピストン組14,15を、十字状に交差するように嵌め込む。また、第一クランク軸11の両端に第一,第二バランスウェイト12a,12b、シャフト5a,5bを第一,第二バランスウェイト12a,12bに一体に組み付ける(
図3参照)。
【0044】
次に、上述した回転体を第一ケース体1及び第二ケース体2に収容する。このとき、予め、第一ケース体1及び第二ケース体2にはガイド軸受23aが同軸に組み付けられたガイド軸23を組み付けておく。回転体は、シャフト5aが第一ケース体1の軸受18aにシャフト5bが第二ケース体2の軸受18bに回転可能に支持される。
また、第一,第二両頭ピストン組14,15のピストン本体14d,15dに設けられた長孔14e,15eにガイド軸23を挿入して、孔壁面にガイド軸受23aを当接するように嵌め込む(
図3参照)。第一ケース体1は第二ケース体2に対して4隅に設けられたボルト6をねじ嵌合させて一体に組み付けられる。
【0045】
また、第一ケース体1及び第二ケース体2の四方の側面には、シリンダ9、シリンダヘッド8が各々組み付けられる。このとき、第二ケース体2の各側面に穿孔された連通孔2cには、両端にOリング31が嵌め込まれた管状シール材30が嵌め込まれ、シリンダ9にとの間で挟み込まれて組み付けられる。また、シリンダ9とシリンダヘッド8との間にはOリング32が挟み込まれて組み付けられる。シリンダヘッド8とシリンダ9は、例えば6カ所でボルト10によって第一ケース体1及び第二ケース体2の側面に一体に組み付けられる。なお、吸込用配管2a、吐出用配管2bは、第二ケース体2のコーナー部においてシールリング2d及び接続管2eを介して組み付けられる。
【0046】
また、
図8に示すように、第二ケース体2より突設されるシャフト5bの鍔部5cにワッシャー24、ロータリーバルブ17を重ね合わせる。またロータリーバルブ17にカップリング25を嵌合孔17bに嵌合突起25b1を嵌め合わせて重ね合わせ、カップリング25にフランジ部26を嵌合突起25b2が嵌合用切欠き部26bに嵌め合うように重ね合わせ、シャフト5bの端部をフランジ部26のDカット孔26aに嵌め込む。このフランジ部26に環状のワッシャー27を重ね合わせてシャフト5b端部にナット28をねじ嵌合することによりシャフト5bにロータリーバルブ17が自在継手16を介して一体に組み付けられる(
図3照)。
【0047】
最後に第三ケース体3を第二ケース体2に嵌め込んで、ボルト7によりねじ嵌合することで、ケース体4内に回転体が収納された流体回転機が組み立てられる。このとき、ロータリーバルブ17に形成された吸込用バルブ17A,吐出用バルブ17Bと連通孔29A〜29Dは幅広溝部17A1,17B1に臨むように対向可能に配置され、各シリンダ室9A〜9Dと共通の連通路29を介して連通可能に組み付けられる(
図3参照)。
【0048】
上述した実施例では、ロータリーバルブ17が一方向(例えば反時計回り方向)に回転する場合について説明したが、
図9(A)〜(G)に示すように、吸込側バルブ17A及び吐出側バルブ17Bの仕切り壁17Cの軸方向の中心に対して点対称となる幅狭溝部17A2,17B2に逃げ溝17A3,17B3が形成されていてもよい。これにより、ロータリーバルブ17の回転方向が正逆反対方向に回転して吸込用溝と吐出用溝が入れ替わったとしても、バルブ17A,17Bの高圧流体の偏在による圧力バランスの偏りを逃げ溝17A3,17B3により逃がして圧力バランスを保って回転させることができる。
【0049】
上述のように組み立てられた流体回転機は、第一,第二両頭ピストン組14,15の第二仮想クランク軸(図示せず)を中心とした第1の回転バランス、第一クランク軸11を中心とする第二の回転バランス及び回転体のシャフト5a,5bを中心とする第三の回転バランスが第一,第二バランスウェイト12a,12bによりバランス取りされて組み立てられている。
【0050】
シャフト5a,5bを中心とする半径rの第一クランク軸11の回転運動と、第一クランク軸11を中心とする半径rの偏心カム13の回転運動により、第一,第二両頭ピストン組14,15が相対的に回転しながらシャフト5a,5bを中心とする第二仮想クランク軸の半径2rの転がり円の径方向(内サイクロイドの軌跡)に沿って直線往復運動を行なう。このとき、シャフト5bと同軸状に一体に組み付けられているロータリーバルブ17によって、各シリンダ室9A〜9Dに対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えが行なわれる。
【0051】
上記流体回転機を用いれば、シャフト5bの一端側に自在継手16を介してロータリーバルブ17が一体的に組み付けられ、各シリンダ室9A〜9Dに対する流体の吸込動作と吐出動作の切り換えを行なうので、部品点数が削減され、組立性も向上する。
特に、ロータリーバルブ17は、吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bを、仕切り壁17Cを介して一体に形成されており、各シリンダ室9A〜9Dと吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bとの連通路29を共通化して備えているので、流体の圧縮吐出動作に寄与しない流路のデッドスペース比率を低減し、ポンプ性能を向上させることができる。
また、ロータリーバルブ17のうち吐出側バルブ17Bに対して吸込側バルブ17Aの高圧流体の偏在による圧力バランスの偏りを逃げ溝17A3により逃がすことで、ロータリーバルブ17に作用する応力ひずみの影響を低減することができる。
また、ロータリーバルブ17に吸込用バルブ17Aと吐出用バルブ17Bを併設することで、バルブ径(D)とバルブ高さ(L)の比(D/L)が小さくなるので、一般論としてロータリーバルブ17はロックし難くなりシャフト5bと共に円滑に回転させることができる。
【0052】
上述した実施例は、4ヘッドのシリンダを備えた流体回転機について説明したが、2ヘッドないしは6ヘッド以上のシリンダを備えた流体回転機であってもよい。
また、流体回転機の一例として気送ポンプを例示して説明したが、これらに限定されるものではなく、液送ポンプ、真空ポンプ、気送コンプレッサー、多段圧縮機、流体モータ等、他の装置に適用することも可能である。