【解決手段】テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主成分とするポリアミド10T(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を混合した樹脂組成物からなり、(A)と(B)の質量比率が[(A)/(B)]=70/30〜95/5であって、融点が300℃以上であることを特徴とするポリアミド10T延伸フィルム。
テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主成分とするポリアミド10T(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を混合した樹脂組成物からなり、(A)と(B)の質量比率が[(A)/(B)]=70/30〜95/5であって、融点が300℃以上であることを特徴とするポリアミド10T延伸フィルム。
結晶性ポリアミド(B)が、テレフタル酸と炭素数9の脂肪族ジアミンを主成分とするポリアミド9Tであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド10T延伸フィルム。
JIS K7133に従って、250℃で5分間熱処理をした際のフィルムの収縮率が、2.0%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミド10T延伸フィルム。
未延伸フィルムを延伸して請求項1〜3いずれかに記載のポリアミド10T延伸フィルムを製造する方法において、前記未延伸フィルムとして、示差走査型熱量計を用いて測定される、[昇温結晶化温度(Tcc)−ガラス転移温度(Tg)]が20℃以上のものを用いることを特徴とするポリアミド10T延伸フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリアミド10T延伸フィルムは、ポリアミド10T(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を混合した樹脂組成物から構成される。
【0012】
本発明に用いるポリアミド10T(A)は、テレフタル酸と1,10−デカンジアミンとを主成分とするものである。本発明において、「テレフタル酸と1,10−デカンジアミンを主成分とする」とは、(A)のジカルボン酸成分、ジアミン成分において、それぞれ、テレフタル酸、1,10−デカンジアミンを60モル%以上含むものとする。
【0013】
テレフタル酸は、ジカルボン酸成分において、70モル%以上含有することが好ましく、85モル%含有することが、耐熱性の観点からより好ましい。
【0014】
ジカルボン酸成分には、テレフタル酸以外の他のジカルボン酸を含んでいてもよい。他のジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸以外のジカルボン酸の含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0015】
1,10−デカンジアミンは、ジアミン成分において、70モル%以上含有することが好ましく、85モル%含有することが、耐熱性の観点からより好ましい。
【0016】
ジアミン成分には、1,10−ドデカンジアミン以外の他のジアミンを含んでいてもよい。他のジアミンとしては、例えば、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の脂肪族ジカルボン酸や、シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンや、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。1,10−ドデカンジアミン以外の他のジアミンの含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0017】
本発明に用いるポリアミド10T(A)においては、分子量の調整を目的に、モノカルボン酸を含んでいてもよい。モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、4−エチル安息香酸、4−へキシル安息香酸、4−ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等の芳香族モノカルボン酸、酢酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、4−エチルシクロヘキサンカルボン酸、4−へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−ラウリルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸の含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましい。
【0018】
本発明に用いるポリアミド10T(A)においては、必要に応じて、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のω−アミノカルボン酸を含んでいてもよい。
【0019】
ポリアミド10T(A)の相対粘度は、フィルムとした場合の引張強度の観点から、2.0〜4.0とすることが好ましく、2.3〜3.5とすることがより好ましい。
【0020】
ポリアミド10T(A)は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、ジカルボン酸成分と、ジアミン成分とから反応物を得る工程(i)と、得られた反応物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0021】
工程(i)としては、例えば、ジカルボン酸粉末を予めジアミンの融点以上、かつジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度のジカルボン酸粉末に、ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンの反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、反応物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0022】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応物を、最終的に生成するポリアミド10Tの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミド10Tを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180〜270℃、反応時間0.5〜10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0023】
工程(i)および工程(ii)の反応装置としては、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。工程(i)と工程(ii)を同じ装置で実施してもよいし、異なる装置で実施してもよい。
【0024】
ポリアミド10T(A)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、原料モノマーの総モル数に対し、2モル%以下で用いることが好ましい。
【0025】
ポリアミド10T(A)は、例えば、ユニチカ社から、XecoT(商品名)として入手することができる。
【0026】
本発明に用いる結晶性ポリアミド(B)は、ポリアミド10T(A)以外の結晶性のポリアミドであればよい。本発明において、「結晶性」とは、後述する融解熱量(以下、「ΔH」と略称する場合がある。)が、20J/g以上のものとする。結晶性ポリアミド(B)としては、例えば、テレフタル酸と炭素数12の脂肪族ジアミンとを主成分とするポリアミド12Tや、テレフタル酸と炭素数9の脂肪族ジアミンとを主成分とするポリアミド9Tや、テレフタル酸と炭素数8の脂肪族ジアミンとを主成分とするポリアミド8Tや、テレフタル酸と炭素数6の脂肪族ジアミンとを主成分とするポリアミド6Tや、アジピン酸とメタキシレンジアミンとを主成分とするMXD6が挙げられるが、中でも、耐熱性や(A)との相溶性の観点から、ポリアミド9Tが好ましい。
【0027】
ポリアミド9Tにおいて、テレフタル酸は、ジカルボン酸成分中、70モル%以上含有することが好ましく、85モル%含有することがより好ましく、炭素数9の脂肪族ジアミンは、ジアミン成分中、70モル%以上含有することが好ましく、85モル%含有することがより好ましい。炭素数9の脂肪族ジアミンは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。なお、併用する場合、脂肪族ジアミンの含有量は、それらの合計とする。
【0028】
炭素数が9の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,9−ノナンジアミンの直鎖状ジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の分岐鎖状ジアミンが挙げられる。
【0029】
ポリアミド9Tには、上述したポリアミド10Tの共重合成分と同様に、テレフタル酸以外の他の芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸や、炭素数9の脂肪族ジアミン以外の他の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンや、モノカルボン酸や、ラクタム類、ω−アミノカルボン酸を含んでいてもよい。
【0030】
ポリアミド9Tは、例えば、クラレ社から、ジェネスタ(商品名)として入手することができる。
【0031】
本発明に用いる結晶性ポリアミド(B)の相対粘度は、ポリアミド10T(A)との相溶性の観点から、(A)の相対粘度±1.0以内であることが好ましい。(B)の相対粘度が、前記範囲外の場合、フィルムを生産することが困難となる場合がある。
【0032】
本発明において、ポリアミド10T(A)と結晶性ポリアミド(B)の質量比率[(A)/(B)]は、70/30〜95/5とすることが必要であり、70/30〜90/10とすることが好ましい。(A)と(B)の合計に対する(A)の割合が5質量%未満の場合、連続延伸性が低下するので好ましくない。一方、(A)の割合が30質量%を超える場合、得られるフィルムの耐熱性が低下したり、引張強度等の機械的特性が低下したりするので好ましくない。
【0033】
なお、ポリアミド10T(A)と結晶性ポリアミド(B)を混合した樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、顔料・染料等の着色剤、着色防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマーが挙げられる。
【0034】
本発明のポリアミド10T延伸フィルムは、未延伸フィルムを延伸することにより得られる。延伸は、未延伸フィルムの成膜後に、連続しておこなってもよいし、また、一旦巻き取った未延伸フィルムを巻き出しておこなってもよい。
【0035】
未延伸フィルムの製造方法は、特に限定されず、ポリアミドをフィルム化する公知の方法を適用することができる。例えば、ポリアミド10Tと各種の添加剤を押出機で溶融混練し、フィルターで濾過し、Tダイを用いてフィルム状に押出し、その後、冷却ロールやスチールベルト等の移動冷却体に接触させて冷却する方法が挙げられる。押出温度は、ポリアミド10Tの融点以上350℃以下であることが好ましい。押出温度が350℃を超えると、ポリアミドの分解や熱劣化が促進される場合がある。
【0036】
本発明の製造方法においては、未延伸フィルムとして、示差走査型熱量計を用いて測定される、ガラス転移温度(Tg)と昇温結晶化温度(Tcc)の差(以下、「Tcc−Tg」と略称する。)が、20℃以上のものを用いることが好ましい。前記特性の未延伸フィルムを用いることにより、延伸時の結晶化が抑制され、連続延伸性をより向上させることができる。
【0037】
未延伸フィルムの延伸方法は、一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸いずれであってもよいが、同時二軸延伸が好ましい。具体的には、ロール式一軸延伸法、テンター式逐次二軸延伸法、テンター式同時二軸延伸法、チューブラー延伸法等の公知の延伸方法が挙げられる。延伸倍率は、使用用途によって異なるが、ロール式一軸延伸法の場合、1.5〜5倍であることが好ましく、1.8〜3.5倍であることがより好ましい。テンター式二軸延伸法の場合、巻取方向(MD)は1.5〜10倍、巻取方向と直角の方向(TD)は1.5〜5倍であることが好ましい。チューブラー延伸法の場合、MDは1.5〜4倍、TDは1.5〜4倍であることが好ましい。延伸温度は、Tg以上であることが好ましく、Tgを超え(Tg+50℃)以下であることが好ましい。熱固定温度は、200℃〜(Tm−5℃)であることが好ましく、240℃〜(Tm−10℃)であることがより好ましい。例えば、後述する熱収縮率を2.0%以下とするには、熱固定温度を275℃以上とすることが好ましく、280℃以上とすることがより好ましい。なお、ここで、Tgは、フィルムのガラス転移温度を示し、Tmは、フィルムの融点を示す。熱固定時には、フィルムを把持したまま必要に応じて1〜10%の弛緩処理をおこなうことが好ましく、3〜7%の弛緩処理をおこなうことがより好ましい。弛緩処理を行うことにより、熱収縮率を低減することができる。
【0038】
本発明のポリアミド10T延伸フィルムのTmは、300℃以上であることが必要であり、305℃以上とすることが好ましい。Tmが300℃未満の場合には、熱収縮率を2%以下にできるほど熱固定温度を高くすることができないので好ましくない。また、前記フィルムのΔHは、40J/g以上であることが好ましく、40〜80J/gであることがより好ましい。前記ΔHを40J/g以上とすることにより、耐熱性や機械的特性をより向上させることができる。なお、本発明の延伸フィルムは、ポリアミド10T(A)と、結晶性ポリアミド(B)2種の樹脂を混合したものを溶融混練した樹脂組成物を用いているため、部分的なアミド交換反応により、複数の融点のピークを有する場合がある。この場合、延伸フィルムのTmは、最もΔHが大きなピークを指す。主ピークとは異なるピーク(サブピーク)は、300℃未満に存在してもよいが、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましく、すべて300℃以上にあることがさらに好ましい。また、サブピークの△Hは、主ピークの△Hに対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。サブピークの温度が主ピークの温度よりも低かったり、サブピークの△Hが主ピークのΔHに対して20%を超えたりする場合には、熱固定時にフィルムの平坦性が悪化し始める温度が低くなり、熱固定温度を十分に上げることができない場合がある。
【0039】
本発明のポリアミド10T延伸フィルムは、MD、TDの250℃での熱収縮率を、いずれも2%以下とすることができ、より好ましくは1%以下とすることができる。ポリアミドフィルムの製造においては、一般に、同じ延伸倍率の場合、延伸による配向度を小さくし、熱固定温度を高くし、熱固定時の弛緩率を高くした方が、熱収縮率を小さくすることができる。しかしながら、ポリアミド10Tのホモポリマーは、延伸時の結晶化速度が速く、結晶化度も高いため、延伸フィルムの配向度が非常に高い。そのため、285℃で熱固定しても十分に配向を緩和することができず、熱収縮率を2%以下とすることができない。しかしながら、本発明のポリアミド10T延伸フィルムは、結晶性ポリアミドを特定量混合していることより、延伸による配向度を小さくすることができるため、275℃以上で熱固定温度することにより熱収縮率を2%以下とすることができる。なお、延伸倍率を低くしても、熱収縮率を下げることができるが、その場合、延伸フィルムの平坦性が低下する場合がある。
【0040】
本発明のポリアミド10T延伸フィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、低熱収縮性を有するため、医薬品包装材料、レトルト食品等の食品包装材料、半導体パッケージ用等の電子部品包装材料、モーター、トランス、ケーブル等のための電気絶縁材料、コンデンサ用途等の誘電体材料、カセットテープ、デジタルデータストレージ向けデータ保存用磁気テープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料、太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、表示機器等の保護板、LED実装基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブル等の電子基板材料、フレキシブルプリント配線用カバーレイフィルム、耐熱マスキング用テープ、工業用工程テープ等の耐熱粘着テープ、耐熱バーコードラベル、耐熱リフレクター、各種離型フィルム耐熱粘着ベースフィルム、写真フィルム、成形用材料、農業用材料、医療用材料、土木、建築用材料、濾過膜用途、家庭用途、産業資材用のフィルムとして、好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0042】
1.評価方法
実施例および比較例に用いた評価方法は、以下のとおりである。
(1)ポリアミドの相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
(2)熱特性(Tcc、Tg、Tm、ΔH)
パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−7を用い、昇温速度20℃/分で25℃から350℃まで昇温した。得られたDSCチャートにおいて、ガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値をガラス転移温度(Tg)、Tgの次に現れる発熱ピークを昇温結晶化温度(Tcc)、吸熱ピークのうち最も大きなピークのトップを融点(Tm)、そのピーク面積から換算される熱量を試料の質量で除した値を融解熱量(ΔH)とした。
【0043】
(3)フィルムの引張強度
250℃の熱風乾燥機中に5分間静置した前後のフィルムのMDおよびTDについて、JIS K7127に従って測定した。サンプルの大きさは10mm×150mm、チャック間の初期距離は100mm、引張速度は500mm/分とした。
実用上、MD、TDいずれも、200MPa以上であることが好ましい。
(4)フィルムの熱収縮率
JIS K7133に従って、250℃で5分間熱処理をした際のフィルムの収縮率を、MDおよびTDについて、それぞれ測定した。
実用上、MD、TDいずれも、絶対値が2%以下であることが好ましい。
【0044】
(5)フィルムの厚み
厚み計(HEIDENHAIN社製、「MT12B」)を用い、フィルムの厚みを測定した。
(6)連続延伸性
実施例、比較例の延伸工程において、30mの未延伸フィルムを、3.3×3.0倍に同時二軸延伸した場合の切断状況を以下の基準で判断した。
◎:切断が発生しなかった。
○:切断しなかった部分が長さ方向(MD)の80%以上であって、切断は延伸先頭部でのみ発生した。
△:切断しなかった部分が長さ方向(MD)の80%以上であって、切断は延伸先頭部以外でも発生した。
×:切断しなかった部分が長さ方向(MD)の80%未満であった。
【0045】
2.原料
実施例および比較例に用いた原料は、以下のとおりである。
(1)ポリアミド10T
・ポリアミド10T(A−1)
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)470質量部と、モノカルボン酸として分子量284のステアリン酸(STA)32質量部と、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(SHP)0.093質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10−デカンジアミン(DDA)498質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。
その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間固相重合し、ポリアミド10Tを得た。
【0046】
・ポリアミド10T(A−2)〜ポリアミド10T(A−5)
樹脂組成を表1のように変更する以外は、ポリアミド10T(A−1)と同様の操作をおこなって、ポリアミド10Tを製造した。
【0047】
・結晶性ポリアミド(B−1)
樹脂組成を表1のように変更する以外は、ポリアミド10T(A−1)と同様の操作をおこなって、ポリアミド9Tを製造した。
【0048】
(A)と(B)のポリアミドの共重合組成とその特性値を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1
ポリアミド10T(A−1)と結晶性ポリアミド(B−1)を、それぞれ、加熱乾燥し、水分率を200ppm以下とした。
(A−1)と(B−1)を、[(A−1)/(B−1)]=95/5(質量比)になるようにドライブレンドし、シリンダーが330℃の一軸押出機(スクリュー径50mm)で溶融し、330℃にしたTダイより溶融ポリマーをフィルム状に押出し、フィルム状の溶融物とした。該溶融物を50℃に設定した冷却ロール上に静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルム(平均厚み:150μm)を得た。
得られた未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、テンター方式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。予熱温度は120℃、延伸温度は125℃、MDの延伸歪み速度は2400%/分、TDの延伸歪み速度は2760%/分、MDの延伸倍率は3.0倍、TDの延伸倍率は3.3倍であった。延伸に引き続いて、二軸延伸機の同じテンター内で285℃にて熱固定をおこない、TDに6%のリラックス処理を施し、平均厚み15μmの延伸フィルムを得た。
なお、熱固定温度は延伸フィルムに、平坦性の悪化や弛みの発生しない上限の温度を選択した。
【0051】
実施例2〜6、比較例1〜3、参考例1
未延伸フィルムの樹脂組成、延伸条件を変更する以外は、実施例1と同様に、延伸フィルムを得た。
【0052】
実施例、比較例の未延伸フィルムの組成およびその特性値、延伸フィルムの延伸条件およびその特性値を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜6のポリアミド10T延伸フィルムは、いずれも連続延伸性に優れ、かつ、融点は300℃以上を有し、引張強度も高かった。また、熱収縮率の絶対値はTD、MDともに2.0%以下であった。
【0055】
比較例1、3のポリアミド10T延伸フィルムは、結晶性ポリアミドを併用しなかったため、連続延伸性が不良であった。また、熱収縮率が大きかった。
比較例2のポリアミド延伸フィルムは、結晶性ポリアミドの質量比率が、本発明で規定する範囲よりも高かったため、融点が低かった。その結果、熱固定温度を上げることができず、熱収縮率が高かった。なお、延伸フィルムは、フィルムの平坦性の悪化や弛みは認められなかったが、引張強度が低かった。
【0056】
参考例1のフィルムは、ポリアミド9T延伸フィルムの例である。熱固定温度は、フィルムの平坦性の悪化や弛みの発生しない上限の温度を選択したが、実施例2〜6のポリアミド10Tフィルムほど、熱収縮率を低くすることができなかった。