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特開2015-105871回転角度検出センサ、及び内燃機関のスロットル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-105871(P2015-105871A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】回転角度検出センサ、及び内燃機関のスロットル装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/30 20060101AFI20150512BHJP
   G01D 5/16 20060101ALI20150512BHJP
【FI】
   G01B7/30 G
   G01D5/16 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-247897(P2013-247897)
(22)【出願日】2013年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】小田 験三
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA35
2F063BA06
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC04
2F063DD02
2F063EC05
2F063EC06
2F077CC02
2F077DD18
2F077EE07
(57)【要約】
【課題】 低コスト化を実現できる回転角度検出センサを提供する。
【解決手段】 回転角度検出センサは、互いに噛み合う一対のねじ要素を備え、いずれか一方のねじ要素が外力を受けて回転すると、いずれか一方のねじ要素が変位する変位機構と、その変位に基づいて、特性変化が生じるセンサ素子とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、一対のねじ要素とセンサ素子を主たる構成要素とするので、低コスト化できる回転角度検出センサが提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛み合う一対のねじ要素を備え、いずれか一方の前記ねじ要素が外力を受けて回転すると、いずれか一方の前記ねじ要素が軸方向に変位する変位機構と、
前記変位に基づいて、特性変化が生じるセンサ素子と、
を備えることを特徴とする回転角度検出センサ。
【請求項2】
前記センサ素子が、ひずみゲージである、
請求項1に記載の回転角度検出センサ。
【請求項3】
互いに噛み合う一対のねじ要素は、
雄ねじが形成される雄要素と雌ねじが形成される雌要素からなり、
前記雄ねじ要素が外力を受けて回転することで、前記雄要素が軸方向に変位する、
請求項1又は請求項2に記載の回転角度検出センサ。
【請求項4】
内燃機関において混合気の供給量を制御するスロットルバルブと、
前記スロットルバルブの開度を回転角度として検出する回転角度検出センサと、を備え、
前記回転角度検出センサは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転角度検出センサであることを特徴とする内燃機関のスロットル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度検出センサに関し、特に種々の部材の回転角度を検出するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転角度を検出するのに種々のセンサが使用されている。例えば、ホールセンサは、磁電変換素子が設けられたセンサチップの表面に対して水平な磁場を永久磁石により印加し、永久磁石の回転軸回りの絶対角度を検出する(例えば、特許文献1)。また、レゾルバ(resolvers)は、ステータ及びロータを有し、ステータに対するロータの回転位置によってステータとロータとの間の相互インダクタンスが変化することを利用して、ステータに対するロータの回転角度に応じた検出信号を出力する(例えば、特許文献2)。その他に、MRセンサ、光学式エンコーダ、ポテンショメータ(potentiometer)なども知られている。
【0003】
回転角度を検出する用途は多枝に亘り、検出精度、信頼性及びコストなどの要素を考慮して、用途に適したセンサが選択される。例えば、自動車(四輪)及び自動二輪車の駆動源である内燃機関に用いられる電子制御燃料噴射装置(Fuel Injection System:フューエルインジェクションシステム(FIシステム))において、スロットルバルブ(Throttle Valve)の回転角度を検出するセンサには、主にホールセンサ、ポテンショメータが適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−2835号公報
【特許文献2】特開2010−239693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FIシステムは、高精度な空燃比の制御が可能であることから触媒との相乗効果による排ガス浄化効果と相まって、自動車及び大型二輪車への導入が先行し、その後、原動機付き自転車も含む小型の二輪車についても、FIシステムの適用が進んでいる。しかし、小型二輪車は自動車、大・中型二輪車に比べ車両価格が低いため、環境への有効性を考慮したとしても、FIシステムのコストを下げる必要がある。特に、原動機付き自転車を適用対象とすると、低コスト化の要求は大きい。
FIシステムの構成要素であるスロットルバルブの回転角度を検出するセンサについて言うと、ホールセンサ及びポテンショメータは、MRセンサ及び光学式エンコーダに比べると低コストではあるが、小型二輪車を想定すると、さらなる低コスト化が要求される。
本発明は、このような背景に基づいてなされたもので、低コスト化を実現できる回転角度検出センサを提供することを目的とする。
また、本発明はそのような回転角度検出センサを備える内燃機関用スロットル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明の回転角度検出センサは、互いに噛み合う一対のねじ要素を備え、いずれか一方のねじ要素が外力を受けて回転すると、いずれか一方のねじ要素が軸方向に変位する変位機構と、変位に基づいて、特性変化が生じるセンサ素子と、を備えることを特徴とする。
一対のねじ要素のいずれか一方のねじ要素が回転すると、いずれか一方のねじ要素が変位するため、その変位に基づいてセンサ素子に特性変化を生じさせることができる。したがって、特性変化は、ねじ要素の回転角度に対応して変動するので、その特性変化を検出すれば、ねじ要素の回転角度を特定することができる。
【0007】
また、本発明の回転角度検出センサのセンサ素子にひずみゲージを用いることができる。
センサ素子にひずみゲージを用いることで、回転によるねじ要素の変位をひずみの変動として捉えることが可能となる。さらに、ひずみゲージは安価であるため、センサ素子に用いることで、回転角度検出センサを低コストで作製できる。
【0008】
さらに、本発明の回転角度検出センサにおいて、互いに噛み合う一対のねじ要素は、雄ねじが形成される雄要素と雌ねじが形成される雌要素からなり、雄要素が外力を受けて回転することで、雄要素が軸方向に変位することが好ましい。
雄要素を回転させる構成とすることで、回転運動する検出対象の出力軸と雄要素の軸とを一致させて接続するだけで、検出対象の回転を雄要素に伝達できる。
【0009】
本発明では、上記した回転角度検出センサを備える内燃機関用スロットル装置をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対のねじ要素とセンサ素子を主たる構成要素とするので、回転角度検出センサを低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における回転角度検出センサを示す図である。
図2図1の回転角度検出センサの動作を示す図である。
図3】回転角度検出センサの電圧の変化に関する相関データを示すグラフである。
図4図1の回転角度検出センサをFIシステムのスロットルバルブの開度の検出に適用する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る回転角度検出センサ1は、図1に示すように、雌ねじ18が形成されている固定子10と、雄ねじ21が形成されている可動子20と、可動子20の軸方向の変位に基づいて特性変化が生じるセンサ素子31を有する検出部30と、を備える。一対のねじ要素をなしている固定子10と可動子20は、互いに噛み合うことでねじ機構を構成する。このねじ機構は、固定子10の方が、回転しないように拘束されている。
【0013】
[固定子10]
固定子10は、検出部11と、案内部16と、を備える。なお、以下では、検出部11が設けられる側を上と定義して説明を進める。
検出部11は、シェル12により外部と隔離された検出室13を備えている。検出室13には、支柱14が建てられており、その上端には保持板15の一端が固定されている。保持板15は、後述する作用端23が押し付けられると、無理なく撓むことができる弾性を備えている。
案内部16は、軸方向に貫通するねじ孔17が形成されている。そして、ねじ孔17の内周面には、雌ねじ18が形成されている。この雌ねじ18は、可動子20に設けられる雄ねじ21と噛み合う。
【0014】
[可動子20]
可動子20は、固定子10の雌ねじ18と噛み合う雄ねじ21が軸方向の所定範囲に形成された部材であり、一端には半球状の作用端23を、また、他方端にはレバー25を、一体的に備えている。
作用端23は、可動子20が外力を受けて軸方向に変位すると、保持板15に押し付けられることで、保持板15を上向きに撓ませる。レバー25は、可動子20を変位させる際に操作される。可動子20は、レバー25が右回りに回転(以下、正転ということがある)すると軸方向の上向きに変位し、反対に、レバー25が左回りに回転すると軸方向の下向きに変位する。
【0015】
可動子20は、可動子20の雄ねじ21が固定子10の雌ねじ18に噛み合うようにねじ孔17に挿入される。レバー25を操作して可動子20を回転させると、固定子10の動きが拘束されているので、可動子20は固定子10に案内されながら軸方向に変位する。
このように、本実施形態に係る回転角度検出センサ1は、固定子10と可動子20から変位機構を構成する。
【0016】
[検出部30]
検出部30は、固定子10の保持板15に設けられるセンサ素子31と、センサ素子の特性変化を検出する検出器33を備える。センサ素子31は、固定子10の外部に配置されている検出器33に電気的に接続されている。
センサ素子31は、保持板15のおもて面15aに固定されており、保持板15が撓むと、その撓みに応じてひずみが生じる。本実施形態において、センサ素子31はひずみゲージを用いる。
ひずみゲージとしては、例えば、薄い電気絶縁体と、この電気絶縁体の上にエッチングにより形成され、連続して蛇行する金属抵抗体とを備える箔ひずみゲージを用いることができる。この金属抵抗体はひずみが生じると電気抵抗値が変化するので、金属抵抗体に電流を流しつつ電圧を検出していれば、その変化から金属抵抗体にひずみが生じたか否かを検出することができる。ひずみゲージは、箔ひずみゲージの他、線ひずみゲージや半導体ひずみゲージなどを用いることができる。
なお、センサ素子31を設ける位置は特に限定されないが、可動子20の変位に基づく保持板15の撓みが大きくなる領域に設けることが、高い検出感度を得る上で好ましい。
【0017】
検出器33は、センサ素子31に電流を流すとともに、センサ素子31の電圧Vを検出する。
また、検出器33は、電圧Vに対応する回転角度θに関する相関データを保持している。相関データは、回転角度検出センサ1を用い、レバー25を所定角度、例えば0度、1度、2度…というように1度ずつ回転させる度に、各回転角度θに対応する電圧Vを測定することで得ることができる。図3に回転角度θと電圧Vが比例関係にある例を示す。ただし、これはあくまで一例にすぎない。
検出器33は、検出された電圧Vを相関データに照合することで、レバー25(可動子20)の回転角度θを特定する。
【0018】
以上のように構成された回転角度検出センサ1の動作について、図1および図2を参照して説明する。
図1に示すように、可動子20の作用端23が、保持板15に負荷を与えることなくそのうら面15bに接する状態を回転角度θが0度として設定されている。ただし、この設定は一例であり、保持板15に負荷が与えられた状態の回転角度θを0度として設定することもできる。
そして、レバー25を正転させると、可動子20は軸方向の上向きに変位する。そうすると、図2(a)に示すように、作用端23が保持板15を押し上げ、センサ素子31にはひずみが生じる。センサ素子31にひずみが生じると、金属抵抗体の電気抵抗値が変化するので、検出器33は変化した電気抵抗値に対応する電圧Vaを検出する。
レバー25をさらに正転させると、図2(b)に示すように、可動子20は軸方向の上向きに変位するので保持板15には大きく撓む。検出器33はさらに変化した電気抵抗値に対応する電圧Vb(Vb>Va)を検出する。
検出器33は、検出された電圧Va,Vbを相関データと照合することにより、レバー25の回転角度θa,θbを特定することができる。
【0019】
[用途例]
本実施形態の回転角度検出センサ1の用途の一つとして、FIシステムの構成要素であるスロットルバルブの回転角度を検出するのに用いることができる。
図4に、概略の構成を示す。このスロットルバルブ40はバタフライバルブ(butterfly valve)からなり、弁軸41を90度回転させることで、図示を省略する弁箱に設けられる流路を弁体43が開閉する。弁軸41は電動アクチュエータ45に接続されており、電動アクチュエータ45はECU(Engine Control Unit)35から与えられる制御信号により弁軸41を介して弁体43を開閉動作させる。ECU35は、弁体43の開度を制御することで、図示を省略するインジェクタ(Engine Control Unit)から噴射された燃料を含む最適な量の混合気をエンジンのシリンダ内に供給する。弁体43を制御する前提として、ECU35は弁体43の開度を継続して認識する必要がある。回転角度検出センサ1は、この弁体43の開度を検出するのに用いられる。ECU35は、図1に示す検出器33の機能を兼ね備える。
【0020】
回転角度検出センサ1において、可動子20は、可動子20の軸と弁軸41が一致するように接続されている。そのため、弁軸41が電動アクチュエータ45により駆動されると、弁軸41に追従して可動子20が回転する。可動子20が回転すると、作用端23が昇降するのに伴ってセンサ素子31から検出される電圧Vが変化するので、ECU35は電圧Vに基づいて、レバー25の回転角度θ、つまり弁体43の開度を検出することができる。ECU35は、検出した弁体43の開度を参照しながら、電動アクチュエータ45に制御信号を送る。
【0021】
以上、本実施の形態について説明したが、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
本実施形態に係る回転角度検出センサ1は、雄ねじ21が形成されている可動子20が外力を受けて回転すると、可動子20が軸方向に変位する変位機構について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、雄ねじが形成されている部材(以下、雄要素と呼ぶ)を回転させつつ、雌ねじが形成されている部材(以下、雌要素と呼ぶ)を軸方向に変位させることができる。この場合、雄ねじは軸方向への変位が拘束される。また、雌要素を回転させつつ、雄要素を軸方向に変位させることができるし、雌要素を回転させつつ、雌要素を軸方向に変位させることもできる。つまり、本発明の変位機構は、軸方向への変位を拘束する要素を選択することにより、いずれか一方のねじ要素が回転すると、いずれか一方のねじ要素が変位するものとすることができる。
もっとも、これらの変位機構の中でも、実施形態で述べた雄要素を回転させる変位機構が好ましい。本実施形態における検出対象は回転運動するが、この回転運動に伴って回転する出力軸と雄要素の軸とを一致させて接続するだけで、検出対象の回転を雄要素に伝達できる。これに対して、雌要素を回転させる場合には、雌要素の外径が出力軸よりも相当に大きい場合には、出力軸の回転を雌要素に伝達するための他の機械的要素(例えば歯車)が必要になることもある。
【0022】
また、本実施形態では、センサ素子31としてひずみゲージを例に説明したが、ねじ要素の変位に基づいて特性が変化する他の素子、例えば、受けた圧力に対応する電圧を出力する圧電素子をセンサ素子に用いることもできる。
【0023】
また、本実施形態は、固定子10に、シェル12により隔離された検出室13を設け、その中にセンサ素子31を含む検出のための主要素を収容している。しかし、本発明は、隔離された検出室13を設けることを必須とするものでなく、検出のための主要素が露出していても回転角度を検出することができる。もっとも、隔離された検出室13の中に収容することにより、当該主要素を保護することができる。
【0024】
さらに、本実施形態は、支柱14に固定した保持板15にセンサ素子31を設けているが、ねじ要素の変位に基づいてセンサ素子の特性が変化する限り、本発明のセンサ素子を設ける部位は限定されない。例えば、固定子10のシェル12にセンサ素子31を固定し、可動子20の作用端23がシェル12に押し付けられるようにしても、センサ素子の特性を変化させることができる。ただし、本実施形態のように、検出室13の中にシェル12とは独立する支柱14を建て、センサ素子31を設ける保持板15を支柱14に固定する構造にすれば、仮にシェル12に外力が作用したとしても、センサ素子31による検出結果は外力の影響をほとんど受けることがない。
【符号の説明】
【0025】
1 回転角度検出センサ
10 固定体
11 検出部
12 シェル
13 検出室
14 支柱
15 保持板
15a おもて面
15b うら面
16 案内部
17 ねじ孔
18 雌ネジ
20 可動子
21 雄ねじ
23 作用端
25 レバー
30 検出部
31 センサ素子
33 検出器
35 ECU
40 スロットルバルブ
41 弁軸
43 弁体
45 電動アクチュエータ
θ 回転角度
V 電圧
図1
図2
図3
図4