【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ディーゼル機関で使用するC重油は、前記に述べたように適正な粘度と適正な性状とするには加熱装置する必要がある。C重油を加熱するには、蒸気エコノマイザー、排ガス熱媒油ボイラを使用した省エネ化システムはあるが、小型船舶では非常に狭くて省エネ化を犠牲にしてもC重油を加熱するために多くの機器や配管が減少する省スペース化を考えた加熱に必要な電力量をディーゼル機関駆動の発電機容量で賄っている電気ヒータ加熱方式が主流となっている。
【0014】
図2で説明した船舶の例では、ディーゼル発電機で航海中消費電力量130kW.hで運転されている状況下、25%にあたる33kW.hがC重油加熱に費やしている。世界的に環境問題が重要課題としている時代に、時代に逆行するシステムでは良い方式として認められない。蒸気エコノマイザー、排ガス熱媒油ボイラを使用したシステムのように、多くの機器が増えるものでは、省エネ化システムを採用するには、貨物積載場所を犠牲にしなければならない状態では経済的にも成立しない。そこで、省エネ、省スペースを保ちながらC重油の加熱に対応できる燃料油加熱供給システムが課題である。
【0015】
図3グラフに示すように1個の燃料油加熱器で加熱が可能か検討したグラフで、縦軸は燃料油加熱温度▲1▼に示し、横軸には加熱過程▲2▼に示し、
ディーゼル機関出口温度▲6▼に示すように115℃と仮定して、清浄機加熱器▲3▼を10.kW、常用タンク加熱器▲4▼を4kW、澄タンク加熱器▲5▼を7kWと電力量を横軸として、加熱燃料油を設定温度の清浄機加熱器設定温度95℃▲7▼、常用タンク加熱器設定温度90℃▲8▼及び澄タンク加熱器設定温度65℃▲8▼を各設定温度が可能とする通過点を満足する降下線を描くと最終温度は72℃となる。
【0016】
それぞれ熱量が満足する流量を計算すると、
H=21kW/h×3600=75600
H=Qf×((t2−t1)×sg×sh)
Qf:流量(m3/h)
t2:燃料油加熱器出口温度(℃)(115.0℃)
t1:燃料油加熱器入口温度(℃)(72℃)
sg:比重(kg/m3)(980kg/m3)
sh:比熱(kJ/kg.K)(1.884)
Qf=H/(t2−t1)×sg×sh
=75600/(115−72)×980×1.884=75600/79392
=0.952m3/h
【0017】
検証してみると
清浄機加熱器では
H=0.952×980×1.884×(115−95)=35154kJ/h
kW=9.8kW・h≒10kW
常用タンク加熱器では
H=0.952×980×1.884×(95−87)=14062kJ/h
kW=3.9kW/h≒4kW
澄タンク加熱器では
H=0.952×980×1.884×(87−72)=26365kJ/h
kW=7.3kW≒7kwの熱量が確保できる。
C重油を115℃で952L/hを確保出来れば1個の加熱器で賄うことが可能である。
【0018】
省スペース、省エネの観点から考案されたものが、特許文献7案件があるが、燃料油加熱器の熱源は、電気式加熱器、蒸気式加熱器、熱媒油加熱器であっても、必要とするC重油の加熱温度と加熱量が処理できる容量とした1個の燃料油加熱器でもって加熱したC重油は、高い加熱温度を必要とする機器から順に混合、または、通過し、低い温度で良い機器を末端とする配管で、C重油を加熱処理する燃料油加熱供給システムである。
【0019】
更に上記燃料油加熱供給システムと排ガス熱媒油ボイラを組み合わせることでシンプルなシステム且つ省エネ、省スペースな燃料油加熱供給システムが可能となる。
【0020】
1個の燃料油加熱器でもって加熱したC重油は、高い加熱温度を必要とする機器から順に混合、または、通過し、低い温度で良い機器を末端とする従来実施例として燃料油加熱供給システムの系統図を
図4に示す。
【0021】
図4に示すように、C重油は、燃料油供給ポンプ29より管30を通り燃料油加熱器31に供給され、最適粘度となる温度まで加熱し、管32を経由してディーゼル機関25に供給され、燃料消費された後の余剰油は管26を通りエアセパレータ27に供給され、該エアセパレータ27から管28を通り該燃料油供給ポンプ29還流される密閉回路と、もう一方の回路は該管26の途中から分岐した管33を通り流量調整弁36を通過し燃料油混合器37に供給するC重油と、燃料油澄タンク34から管35を通り該燃料油混合器37に供給されるC重油と混合し、管39の途中に温度センサ38を設け、該温度センサ38の温度を検知して燃料油コントローラ40により該温度センサ38を通過するC重油の温度を設定温度に成るように該流量調整弁36で流量を調整し、清浄機供給ポンプ41で吸引され、管42を通り清浄処理量が燃料油清浄機43に供給され、該燃料油清浄機43の出口に装備された弁44により清浄処理量が調整され、余剰C重油は管45を通り該燃料油澄タンク34に還流され、清浄処理されたC重油は管46を通り該燃料油常用タンク47に供給される。
【0022】
該燃料油常用タンク47に供給されたC重油は、該ディーゼル機関25で消費した燃料油量と流量調整弁36を通過したC重油量との合計量が管48を通り管28の該密閉回路に供給され、清浄処理量から管48から出るC重油量を差し引いた量のC重油はオバーフロ管49を経由して該燃料油澄タンク34へ流れ込む、該燃料油常用タンク47の設定温度のC重油が該燃料油澄タンク34のC重油と混合して温度が上昇する。
【0023】
該燃料油澄タンク34に装備した澄タンク加熱器(電気ヒータ4kW)28と、温水加熱器51により該燃料油澄タンク34内のC重油を設定温度まで加熱され、高温冷却水は、該ディーゼル機関25からの管50を通り、該燃料油澄タンク内に装備した温水加熱器51を通過し管52を通り温水は温水主管53に供給される。
【0024】
説明した燃料油加熱供給システムの系統図の流量と温度について計測値は表1に示し、温度計番号は
図4に示した場所での通過時の温度で、C重油流量はポンプの工場テスト値を基にして計算値である。
【表1】
【0025】
燃料油加熱器31の加熱熱量Hは、
H=Qf×((t2−t1)×sg×sh)
Qf:流量(m3/h)(1.10m3/h)
t2:燃料油加熱器出口温度(℃)(128.8℃)
t1:燃料油加熱器入口温度(℃)(101.4℃)
sg:比重(kg/m3)(0.980kt/m3)
sh:比熱(kJ/kg.K)(1.884)
H=1.1×980×1.884×(128.8−101.4)=55648kJ/h
kW換算 W=55648/3600/0.85=18.19kW/h
【0026】
燃料油澄タンク34の加熱必要量はC重油貯蔵タンクから補給される200L/h、35℃のC重油を設定温度60℃まで加熱する熱量Hは、
H=0.2×980×1.884×(60.00−35)=9232kJ/h
オバーフロ管60からの流量11L/hの熱量 H0は、
H0=0.011×980×1.884×(90−60)=609kJ/h
温水加熱器64の能力は300kcal/hは0.35kWで温水加熱器の熱量は、H1
H1=0.35×3600=1260kJ/h
澄タンク加熱器28の必要熱量H2は、
H2=9232−609−1260=7363kJ/h
kW換算 W=7363/3600/0.85=2.40kW/hの電気を使用している。
【0027】
燃料油加熱供給システムでの総電力量はTkW=18.19+2.40=20.59kW/hとなる。
従来33kW比20.59/33=0.62であり、従来33kWの電力消費と比べると約38%の省エネ効果となっている。
【0028】
図6で示すシステムではC重油を加熱するC重油(熱媒体)は、該管37を通過するC重油の熱量が
図2の清浄機加熱器6、常用タンク加熱器15、澄タンク加熱器の合計熱量に相当する。
【0029】
C重油(熱媒体)は
図6で示すシステムで説明するとディーゼル機関25から管26を通り、管33と(エアセパレータ27は省く)燃料油供給ポンプ29へと分岐し、管33へ流れる量の熱量が加熱に必要な熱量でC重油澄タンク34からのC重油と、管33を流れるC重油と混合して清浄機適正粘度となる温度まで混合して設定温度となる。
【0030】
管33を流れる流量は清浄機供給ポンプ41の容量をQ0とするとQ0は一定であり、管33の流量Q1、温度t1と、C重油澄タンク34からの流量Q2、温度t2及び清浄機設定温度t0とすると、
流量調整弁を流れる流量Q2とC重油澄タンクから供給量Q1は式2で計算できる。
【0031】
C重油(熱媒体)は、管36を流れる流量Q2は、清浄機供給ポンプ41、燃料油清浄機43、管46、C重油常用タンク47、管48を通り、燃料油供給ポンプ29から燃料油加熱器31で加熱され、管32を通りディーゼル機関25に供給、通過して管26から管33に至る循環する回路を循環している。
【0032】
次に表1に示した燃料油澄タンク34出口のC重油温度が54.5〜63.0℃までの温度変化が大きく
図5グラフに示すように同じパターンで繰り返されていることは、C重油貯蔵タンク(図なし)からの冷たいC重油がC重油澄タンク34に補給された影響と考えられる。
【0033】
C重油澄タンク34内のC重油が60〜65℃付近では粘度が高く内部でC重油の対流が少なく温度変動が発生したと考えられ、加熱能力は平均58.75℃ではなく54.5℃から95℃まで加熱する能力が必要となる。その影響は、電力量に換算すると2.5kWの変動幅となる変動幅が無くなれば、更に平均値で制御できれば電力量で約1kW/h省エネが可能で、加熱能力の問題だけでなく、C重油の清浄品質まで影響が考えられる。
【0034】
また、表1で示した温度計k1からk2に至る管で温度低下9.7℃差が生じ、燃料油加熱器31からディーゼル機関25を経由して流量調整弁36に至る間を流れるC重油の温度低下はヒートロスで、その熱量Hとすると、
流量はk2を流れる流量404L/h
温度差は9.7℃とすると
H=0.404×980×1.884×9.7=7235(kJ/h)
kW換算 W=7235/3600/0.85=2.36(kW/h)ヒートロスが生じている。
【0035】
また、特許文献7参照物件では小型船舶では出入港時にはディーゼル機関の燃料油A重油を使用しているが、燃料油加熱器の熱源を1個としたことで、燃料油清浄作業をする為にA重油使用時は清浄機加熱器として電気ヒータが必要である。
【0036】
ディーゼル機関の排熱を利用した燃料油加熱供給システムは、小型船舶では出入港時にはA重油運転を行い平常航海運転時にはC重油運転を行うのが一般であって、A重油運転時はC重油澄タンク、C重油常用タンクの設定温度までの加熱とC重油の清浄作業の準備を行っている。しかし、従来の特許文献7案件では、1個の燃料油加熱器で燃料油を加熱する場合、C重油澄タンク、C重油常用タンクの設定温度までの加熱とC重油の清浄作業は電気加熱器が必要となる。
【0037】
本発明は、このように従来の特許文献7の構成で有していた問題点を解決しようとするものであり、前記のしたように省エネ、操作性に改善点があり、これらの改善することで更に省エネ、操作性の向上を目指したディーゼル機関に供給するC重油を加熱する燃料油加熱供給システムとすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この発明は上記目的を達成するために、ディーゼル機関に供給するC重油は、燃料油供給ポンプにてディーゼル機関に供給し、燃料消費した後の余剰C重油は該ディーゼル機関からエアセパレータに供給し、該エアセパレータと燃料油加熱器の間にC重油常用タンクからC重油を補給し、合流したC重油は該燃料油加熱器に供給し、最適粘度に成る温度まで加熱して該燃料油供給ポンプに供給循環する密閉回路と燃料油供給系統とする。
【0039】
もう一方の回路は燃料油加熱器の下流で分岐し供給するC重油(熱媒体)と、C重油澄タンクから供給されるC重油との間で混合して清浄適温として、清浄機供給ポンプからC重油は分岐し、一方は清浄処理量を燃料油清浄機に供給し、燃料油清浄機で清浄したC重油はC重油常用タンクへ供給され、もう一方は、清浄機供給ポンプ容量から清浄処理量を差し引いた余剰C重油は該C重油澄タンクに戻し、該C重油常用タンクでオーバフローしたC重油は該C重油澄タンクに供給される回路とする燃料油清浄系統とする
【0040】
燃料油供給系統と燃料油清浄系統で構成し、タンクの加熱は、C重油常用タンクの設定温度はC重油の通過による成行温度とし、C重油澄タンクの設定温度は清浄機供給ポンプの容量から清浄処理量を差引いた量を燃料消費量の0.7倍以上をC重油澄タンクに供給し、混合加熱することを特徴とする。
【0041】
また、第2の課題解決手段は燃料油清浄系統におけるC重油澄タンク出口にディーゼル機関から排出される高温冷却水を使用する温水熱交換器を該C重油澄タンクの外部に設け、C重油澄タンク出口から出るC重油を高温冷却水との間で熱交換し、C重油を一定の安定した温度とすることを特徴とする。
【0042】
また、第3の課題解決手段は、燃料油供給系統の該エアセパレータ出口からのC重油と該C重油常用タンク出口から補給するC重油が合流する上流に三方弁を設け、該三方弁の1方から該燃料油供給ポンプ入口に至る間にバイパス管を設け、該ディーゼル機関でC重油を使用中は該三方弁により該エアセパレータ出口から燃料油加熱器側に流れ、バイバス管の流れは停止し、該燃料油供給系統になり、該ディーゼル機関でA重油を使用中には該三方弁は、燃料油加熱器への流れは停止し、該エアセパレータ出口からバイバス管を通るように切替、A重油は該燃料油供給ポンプに流れ、該該燃料油供給ポンプ上流にA重油常用タンクからA重油を補給し、燃料油清浄系統は独立した回路として作動可能としたことを特徴とする。
【0043】
この燃料油加熱供給システムでは、従来は燃料油加熱器で加熱し、ディーゼル機関に供給し、該ディーゼル機関の下流で分岐し供給するC重油(熱媒体)として使用していたが、前記で改善点として示したように、燃料油加熱器出口温度から熱媒体と使用するC重油温度が該ディーゼル機関を通過する間に温度低下が例では128.8℃から119.1℃と低下しているこれは単なるヒートロスで損失である。
【0044】
このヒートロスをなくするために燃料油加熱器の下流直ぐの位置から熱媒体としてC重油を使用する事で119℃で使用していた温度が125℃で使用可能となりその効果は電力量にして2.36kWの改善が図れる、更に、従来の熱媒体として使用していたC重油は燃料油加熱器から該ディーゼル機関を経由して清浄機供給ポンプから燃料油清浄機、C重油常用タンクから燃料油供給ポンプを経由して燃料油加熱器までの間を循環していたことになり、400L/hのC重油量が多く循環することで管径が大きくなり、その放熱量も大きい、本発明では燃料油加熱器から清浄機供給ポンプから燃料油清浄機、C重油常用タンクから燃料油加熱器までの間を循環する経路も短くなり、C重油常用タンクではヒートロスがタンクの加熱に作用する事になり実質ヒートロスも削減が出来るという効果がある。
【0045】
図6は従来の熱媒体としてのC重油の流れを示し、
図7は本発明の熱媒体としてのC重油の流れを示している。(太線が熱媒体として流れる経路を示す)
燃料油加熱器31の加熱熱量Hは、
H=Qf×((t2−t1)×sg×sh)
Qf:流量(m3/h)(0.89m3/h)
t2:燃料油加熱器出口温度(℃)(128.8℃)
t1:燃料油加熱器入口温度(℃)( 95.0℃)
sg:比重(kg/m3)(0.980kt/m3)
sh:比熱(kJ/kg.K)(1.884)
H=0.89×980×1.884×(128.0−95)=54226
kW換算 kW=54226/3600/0.85=17.72kW
削減福は従来は20.59kWで本発明では17.72kWで14%の削減で、従来の33Kw電気ヒータシステムと比較すると54%である。
【0046】
また、燃料油清浄系統におけるC重油澄タンク出口から出るC重油の温度は実例で示したように変動が大きく、温度制御が困難で、燃料油清浄機に安定した温度で供給できないことは清浄の品質にも及ぶものであり、ディーゼル機関から排出される高温冷却水は70℃〜75℃程度で使用可能で温水熱交換器をC重油を使用しても75℃以上にも高くならない、逆にC温度が低いと加熱効果は高くなり温度上昇が見込める事で高温冷却水を使用してC重油澄タンク出口から出るC重油をほぼ一定の温度にコントロール出来る高温冷却水との間で熱交換し、例題で示したようにC重油を一定の安定した温度とする事でほぼ1kW/hの省エネ効果と清浄の品質を上げる効果がある。
【0047】
また、従来は燃料油加熱器は燃料油供給ポンプの下流に設置していたがバイパス回路を生成するにはC重油加熱器を燃料油供給ポンプの上流に設置することで、バイパス回路が設ける事が可能となり、燃料油供給系統を密閉回路としたことで可能となり、該ディーゼル機関でA重油を使用中には該三方弁により該エアセパレータ出口からのA重油はバイバス管を通り該燃料油供給ポンプに供給され、該該燃料油供給ポンプ上流にA重油常用タンクからA重油の補給し、その間は該三方から燃料油加熱器間の流れは停止し、燃料油清浄系統は独立してC重油常用タンクから燃料油加熱器で加熱したC重油は、C重油常用タンクからのC重油と混合し清浄機供給ポンプにより燃料油清浄機に供給し燃料油清浄系統は作動可能とすることでA重油運転中に清浄機加熱器、常用タンク加熱器、澄タンク加熱器、常用タンク加熱器の設備も必要なく、しかもその間電気ヒータを使用するとその間電力が必要となり、設備の減少と省エネ効果がある。
【0048】
ディーゼル機関で使用するC重油を加熱する燃料油加熱供給システムでは、出入港時のA重油使用時においても、C重油清浄作業が可能となり、ディーゼル機関から出る高温冷却水を利用して温水加熱器でC重油澄タンクから出るC重油を加熱することでほぼ一定の温度に保つことが出来ることで、システム温度管理が安定した管理が可能でとなり、1個の燃料油加熱器でシステム全体の温度管理が可能となる共に加熱器、付属機器が減少する、従来ではスペースがなく排ガス熱媒油ボイラが使用出来ないこともあり、省スペースとなることで排ガス熱媒油ボイラの併用も可能となる。