【解決手段】電気化学デバイス100は、ケース10と、リッド12と、金属封止材11と、蓄電素子13と、隔壁部20とを具備する。ケース10は、絶縁性材料で構成され、凹部10aを有する。リッド12は、導電性材料で構成され、凹部10aを閉塞する。金属封止材11は、ケース10とリッド12の間に設けられ、環状の形状を有する。蓄電素子13は、リッド12に電気的に接続された負極電極シート13bと、凹部10aの底面10fに設けられ電解液を挟んで負極電極シート13bと対向する正極電極シート13aとを有し、凹部10aに収容されている。隔壁部20は、絶縁性材料で構成され、金属封止材11と蓄電素子13との間に設けられている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電気化学デバイスは、ケースと、リッドと、金属封止材と、蓄電素子と、隔壁部とを具備する。
上記ケースは、絶縁性材料で構成され、凹部を有する。
上記リッドは、導電性材料で構成され、上記凹部を閉塞する。
上記金属封止材は、上記ケースと上記リッドの間に設けられ、環状の形状を有する。
上記蓄電素子は、上記リッドに電気的に接続された第1の電極と、上記凹部の底面に設けられ電解液を挟んで上記第1の電極と対向する第2の電極とを有し、上記凹部に収容されている。
上記隔壁部は、絶縁性材料で構成され、上記金属封止材と上記蓄電素子との間に設けられている。
【0010】
この構成によれば、金属封止材への電解液の到達が隔壁部によって妨げられ、金属封止材の腐食を防ぐことが可能となる。
また、この構成によれば、金属封止材とリッドの接合面に電解液が浸入することを防ぐことができるため、密着性の高い封口をすることが可能となる。
さらに、この構成によれば、ケースを低背化した場合であっても、金属封止材と第2の電極との接触を隔壁部によって避けることができるため、金属封止材の厚みを確保しつつケース内での短絡を防止することが可能となる。
【0011】
上記ケースは、上記金属封止材が配置される第1の面をさらに有し、上記隔壁部は上記第1の面から上記リッド側へ突出するように上記ケースと一体的に形成されてもよい。
この構成によれば、隔壁部はケースの切削あるいは研削等により形成される突出部とすることができるため、上記電気化学デバイスの部品点数が減少し、製造コストの低減が可能となる。
【0012】
上記隔壁部は、上記金属封止材の内周に沿って上記蓄電素子の周囲に環状に形成されてもよい。
この構成によれば、金属封止材と電解液との接触を、隔壁部によってより確実に避けることができるため、金属封止材の腐食をより効果的に防ぐことが可能となる。
また、この構成によれば、金属封止材とリッドの接触面に電解液が浸入することをより効果的に防ぐことができるため、より密着性の高い封口をすることが可能となる。
さらに、この構成によれば、ケースを低背化した場合であっても、金属封止材と第2の電極との接触を、隔壁部によってより確実に避けることができるため、ケース内での短絡をより効果的に防止することが可能となる。
【0013】
上記ケースは、上記第1の面とは反対側の第2の面をさらに有し、上記電気化学デバイスは、上記第2の面に形成され上記金属封止材と電気的に接続される第1の外部電極端子と、上記第2の面に形成され上記第2の電極と電気的に接続される第2の外部電極端子とをさらに具備してもよい。
【0014】
上記蓄電素子は、上記第1の電極と上記第2の電極との間に配置され上記電解液を保持するセパレータをさらに有する。これにより、上記両電極間の距離を維持することができ、上記両電極の接触による短絡を防止することが可能となる。また、上記両電極間の距離を小さくできるので、内部抵抗を低減することができる。
【0015】
上記金属封止材は、上記ケースと同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成されてもよい。これにより、溶接時の熱がケースへ伝わった場合であっても、材料の熱膨張係数の違いによる金属封止材とケースとの界面の剥離や破壊を防ぐことが可能となる。
【0016】
上記リッドは、上記金属封止材と同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成されてもよい。これにより、材料の熱膨張係数の違いによる金属封止材とリッドとの界面の剥離や破壊を防ぐことが可能となる。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
[電気化学デバイス100の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電気化学デバイス100を示す斜視図であり、
図2は電気化学デバイス100のA−A線(
図1)に沿う断面図である。なお各図において、X,Y及びZの各軸は相互に直交する3軸方向を示しており、このうちZ軸方向はデバイスの厚み方向に対応する。
【0019】
これらの図に示すように、電気化学デバイス100は、ケース10、金属封止材11、リッド12、蓄電素子13、正極接着層14、正極配線15、正極端子16(第2の外部電極端子)、負極接着層17、負極配線18及び負極端子19(第1の外部電極端子)を有する。
【0020】
図2に示すように、電気化学デバイス100においては、ケース10とリッド12が金属封止材11を介して接合されている。ケース10、金属封止材11及びリッド12によって閉塞された凹部10aには、蓄電素子13及び電解液が封入されている。正極配線15は蓄電素子13の正極と正極端子16を電気的に接続し、負極配線18は蓄電素子13の負極と負極端子19を電気的に接続している。
【0021】
ケース10は、絶縁性材料で構成され、一方の面に凹部10aを有する。凹部10aはリッド12により閉塞される。ケース10は、壁部10bと底部10cとを有する。ケース10は、壁部10bと底部10cとにより凹部10aを構成するように凹状に形成されるものとすることができ、例えば
図2に示すような直方体形状や、円柱状形状等、他の形状とすることも可能である。本実施形態では、壁部10bは矩形環状であり、底部10cは矩形状となっている。
【0022】
壁部10bは、凹部10aの側壁を構成し、底部10cの外縁に沿って矩形環状に設けられている。壁部10bは、凹部10aの側面と、金属封止材11が配置される面(第1の面10d)と、第1の面10dからリッド12側へ突出するように形成された隔壁部20とを含む。この隔壁部20については後述する。
【0023】
底部10cは、凹部10aの底を構成する矩形板状の部分であり、正極配線15用のビア10eが設けられている。底部10cは、凹部10aの底面にあたる面である底面10fと、底面10f及び第1の面10dとは反対側の面(第2の面10g)とを含む。第2の面10gには、正極端子16及び負極端子19が設けられている。
【0024】
ケース10は、特に限定されないが、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics:高温焼成セラミックス)やLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics:低温焼成セラミックス)からなるものとすることができる。HTCCプロセスやLTCCプロセスにおいては、ケース10の内部に正極配線16等を配設することが可能であるため、製造効率に優れる。
また、ケース10は、積層構造であってもよく、単一の部材であってもよい。
【0025】
金属封止材11は、ケース10とリッド12との間に配置され、ケース10とリッド12を接合して凹部10aを封止すると共に、負極端子19からケース10の外周に沿って形成された負極配線18とリッド12とを電気的に接続する。金属封止材11は、図示しないろう材(金−銅合金等)による接着(ろう付け)によって第1の面10dに接合されている。
【0026】
金属封止材11は、レーザー溶接によってリッド12と接合面11aで接合されている。金属封止材11に対するリッド12の接合には、シーム溶接等の直接接合法を利用できる他、導電性接合材を介した間接接合法を利用することができる。
【0027】
金属封止材11は環状であり、そのZ軸方向の全高(厚み)は例えば0.1mm〜0.2mmの大きさに設定される。金属封止材11の厚みがこれよりも薄くなると、溶接時の熱がケース10に伝導し、金属封止材11とケース10との界面の剥離や破壊を生じるおそれがある。
【0028】
金属封止材11は、上述の範囲の厚みを有する連続した環状であれば、その形状は特に限定されず、本実施形態では第1の面10d上に矩形環状に形成されている。
【0029】
金属封止材11を構成する材料は、典型的には任意の導電性材料からなるものとすることができ、例えばコバール(鉄−ニッケル−コバルト合金)からなるものとすることができる。電解腐食を防止するため、コバール等の母材がニッケル、白金、銀、金あるいはパラジウム等の耐腐食性の高い金属からなる被膜によって被覆されたクラッド材とすることも可能である。
【0030】
本実施形態においては、金属封止材11は、ケース10と同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成される。本明細書において、ケース10と同等の熱膨張係数を有する材料とは、ケース10と熱膨張係数が同一か、あるいは近似している材料をいう。例えば、ケース10の材料として熱膨張係数6.5×10
−6/K〜8.0×10
−6/Kのセラミックスを用いる場合、金属封止材11の材料としては熱膨張係数4.8×10
−6/K〜6.2×10
−6/Kのコバール等が用いられる。
【0031】
リッド12は、金属封止材11を介してケース10と接合され、凹部10aを閉塞する。リッド12は、金属封止材11と同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成される。リッド12を構成する材料は上記の材料に限らず、金属封止材11の材料と同様の材料を用いることができる。
【0032】
リッド12は、凹部10aの内部に蓄電素子13が配置された後に、金属封止材11を介してケース10に接合され、凹部10aを閉塞する。
【0033】
蓄電素子13は、凹部10aに収容され、電荷を蓄積し(蓄電)あるいは放出(放電)する。
図2に示すように蓄電素子13は、正極電極シート13a(第2の電極)、負極電極シート13b(第1の電極)及びセパレートシート13c(セパレータ)を有し、正極電極シート13a及び負極電極シート13bによってセパレートシート13cが挟まれた構成となっている。
【0034】
正極電極シート13aは、活物質を含むシートである。活物質は電解質イオン(例えばBF
4−)をその表面に吸着させ、電気二重層を形成させる物質であり、例えば活性炭やPAS(Polyacenic Semiconductor:ポリアセン系有機半導体)であるものとすることができる。正極電極シート13aは、上記活物質、導電助剤(例えばケッチェンブラック)及びバインダ(例えば、PTFE(polytetrafluoroethylene))の混合物を圧延してシート状に形成し、それを裁断したものとすることができる。
【0035】
負極電極シート13bは、正極電極シート13aと同様に活物質を含むシートであり、活物質、導電助剤及びバインダの混合物を圧延してシート状に形成し、それを裁断したものとすることができる。負極電極シート13bは正極電極シート13aと同一の材料からなるものとすることもでき、異なる材料からなるものとすることもできる。
【0036】
セパレートシート13cは、電極同士を電気的に絶縁するシートである。セパレートシート13cは、ガラス繊維、セルロース繊維、プラスチック繊維等からなる多孔質シートであるものとすることができる。
【0037】
蓄電素子13と共に凹部10aに収容される電解液は、任意に選択することが可能であり、例えば、BF
4−(四フッ化ホウ酸イオン)、PF
6−(六フッ化リン酸イオン)、(CF
3SO
2)
2N
−(TFSAイオン)等のアニオンを含むものとすることができる。具体的には、5−アゾニアスピロ[4.4]ノナン−BF
4やエチルメチルイミダゾリウムノナン−BF
4の溶液等を用いることができる。
【0038】
正極接着層14は、正極電極シート13aをケース10に接着すると共に、正極電極シート13aと正極配線15を電気的に接続する。正極接着層14は、導電性接着材が硬化したものであり、導電性接着材は、導電性粒子を含有する合成樹脂であるものとすることができる。導電性粒子は例えば、炭素粒子(カーボンブラック)や黒鉛粒子(グラファイト粒子)等であり、合成樹脂はフェノール樹脂あるいはエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂であるものとすることができる。
【0039】
正極配線15は、正極接着層14を介して蓄電素子13の正極電極シート13a(正極)と正極端子16とを電気的に接続する。具体的には、正極配線15は、正極端子16から蓄電素子13の直下までケース10の内部を通過し、ビア10eを経由して正極接着層14に接触し、正極接着層14を介して蓄電素子13に電気的に接続されるものとすることができる。正極配線15と正極接着層14との間には、正極配線15を保護するため、アルミニウム等の弁金属でコーティングを行ってもよい。なお、ビア10eがケース10を貫通して形成されている場合等には、正極配線15はビア10eのみを経由する構造とすることも可能である。正極配線15は、任意の導電性材料からなるものとすることができる。
【0040】
正極端子16は、蓄電素子13の正極と正極配線15によって接続され、外部、例えば実装基板との接続に用いられる。正極端子16は、任意の導電性材料からなるものとすることができ、
図2に示すように、ケース10の側面から下面側に向けて形成されるものとすることができる。
【0041】
負極接着層17は、負極電極シート13bをリッド12に接着すると共に、負極電極シート13bとリッド12を電気的に接続する。負極接着層17は、導電性接着材が硬化したものであり、導電性接着材は正極接着層14のものと同様に、導電性粒子を含有する合成樹脂であるものとすることができる。なお負極接着層17と正極接着層14は、同種の導電性接着材からなるものとすることもでき、他種の導電性接着材からなるものとすることもできる。
【0042】
負極配線18は、負極接着層17を介して蓄電素子13の負極電極シート13b(負極)と負極端子19とを電気的に接続する。具体的には、負極配線18は、負極端子19からケース10の外周に沿って形成され、金属封止材11に接続されるものとすることができる。負極配線18は、導電性を有する金属封止材11、リッド12及び負極接着層17を介して負極電極シート13bに電気的に接続される。負極配線18は、任意の導電性材料からなるものとすることができる。
【0043】
負極端子19は、蓄電素子13の負極と負極配線16によって接続され、外部、例えば実装基板との接続に用いられる。負極端子17は、任意の導電性材料からなるものとすることができ、
図2に示すように、ケース11の側面から下面側に向けて形成されるものとすることができる。
【0044】
[隔壁部の構造について]
上述のように、壁部10bには隔壁部20が設けられている。隔壁部20は、壁部10bと一体的に形成されており、金属封止材11の内周に沿って、蓄電素子13の周囲に形成された連続した形状(環状)となっている。隔壁部20は、金属封止材11と蓄電素子13との間を隔て、金属封止材11への電解液の浸入を防ぐ効果を有する。
【0045】
隔壁部20は、リッド12と対向する対向面20aを有する。ここで、第2の面10gから接合面11aまでの高さをH1とすると、第2の面10gから対向面20aまでの高さ(H2)は、高さH1=高さH2となるように構成されている。
【0046】
対向面20aは、リッド12に近接するほど電解液の浸入防止効果が高まる。典型的には、対向面20aは接合面11aと同一の高さであるが、安定した接合作業性を確保するため対向面20aを接合面11aより若干低くしてもよい(
図3を参照)。あるいは、リッド12の形状やその周縁部の形態等によって隔壁部20の高さを最適化してもよい。
【0047】
ただし、高さH2は、第2の面10gから第1の面10dまでの高さ(H3)と同じ高さになると、金属封止材11への電解液の浸入を防止することができなくなる。そのため、高さH2は高さH3よりも大きい値に設定される。
【0048】
隔壁部20は、金属封止材11と対向する外周面20bを有し、外周面20bと金属封止材11の内周面11bとは、相互に接触していてもよく、接触していなくてもよい。例えば、外周面20bと内周面11bとが相互に接触している場合は、金属封止材11及び隔壁部20の間への電解液の浸入を防止することができる。一方、外周面20bと内周面11bとが接触していない場合は、金属封止材11の組み付け性を向上させることができ、また、封口溶接時の熱膨張による隔壁部20の破壊を防止することができる。
【0049】
隔壁部20の形成方法は特に限られないが、例えば、壁部10bに金属封止材11を配置するためのスペースを切削あるいは研削等により環状に形成することで、金属封止材11と蓄電素子13との間に設けられた突出部として形成することができる。本実施形態では、
図2に示すように隔壁部20の断面形状が矩形となるように外形加工されるが、これ限られず、あらゆる断面形状を採用し得る。
【0050】
隔壁部20の幅(
図2及び
図3において、隔壁部20のX軸方向の長さ)は、当該隔壁部20が金属封止材11と蓄電素子13との間に設けられていれば、特に限られない。隔壁部20は、例えば、金属封止材11の内周に沿って第1の面10dからリッド12側へ突出するように形成された薄板形状とすることもできる。この場合も、上述のように、外周面20bと内周面11bとは相互に接触していてもよく、接触していなくてもよい。
【0051】
より確実に金属封止材11への電解液の浸入を防ぐために、対向面20aとリッド12との間には、さらに絶縁性のシール部材を設けることもできる。
【0052】
[第1の実施形態の作用]
以上のように本実施形態によれば、金属封止材11と蓄電素子13との間に設けられた隔壁部20によって、金属封止材11への電解液の到達が妨げられ、当該金属封止材11の腐食を防ぐことが可能となる。これにより、デバイスに隔壁部20が無い場合と比べて、長期にわたる高い信頼性が得られる。
【0053】
また、本実施形態によれば、隔壁部20によって金属封止材11と蓄電素子13との間に間隔が設けられているため、金属封止材11とリッド12の封口時に、接合面11aに電解液が浸入することを防ぎ、密着性の高い封口をすることができる。
【0054】
特に本実施形態によれば、隔壁部20が環状に形成されており、金属封止材11への電解液の到達をより確実に妨げることができるため、上述の各作用効果を高めることができる。
【0055】
本実施形態に係る蓄電素子13は、セパレートシート13cを有しているため、正極電極シート13aと負極電極シート13bとの両電極間の距離を維持することができ、当該両電極の接触による短絡を防止することが可能となる。また、当該両電極間の距離を小さくできるので、内部抵抗を低減することができる。従って、デバイスの薄型・小型化にも対応することが可能となる。
【0056】
本実施形態では、金属封止材11の材料は、ケース10と同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成されているため、溶接時の熱がケース10へ伝わった場合であっても、材料の熱膨張係数の違いによる金属封止材11とケース10との界面の剥離や破壊を防ぐことが可能となる。
【0057】
また、リッド12の材料は、金属封止材11と同等の熱膨張係数を有するクラッド材で構成されているため、材料の熱膨張係数の違いによる金属封止材11とリッド12との界面の剥離や破壊を防ぐことが可能となる。
【0058】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係る電気化学デバイス200の断面図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の第1の実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0059】
本実施形態に係る電気化学デバイス200は、第1の実施形態に係る電気化学デバイス100を厚み方向に低背化(薄型化)した構造となっている。具体的には、ケース210の壁部210bと蓄電素子213の構成が第1の実施形態と異なる。
【0060】
ここで、電気化学デバイス200の低背化に際して、金属封止材11の厚みは、第1の実施形態と同じ厚みに設定されている。これは上述のように、溶接時の溶接面の剥離や破壊を防ぐためである。そのため、本実施形態では壁部210bの厚みを小さくすることで電気化学デバイス200の低背化を行っている。
【0061】
ケース210は、一方の面に凹部210aを有する。凹部210aはリッド12により閉塞される。ケース210は、壁部210bと底部10cとを有する。ケース210は、壁部210bと底部10cとにより凹部210aを構成するように凹状に形成されるものとすることができ、例えば
図4に示すような直方体形状や、円柱状形状等、他の形状とすることも可能である。本実施形態では、壁部210bは矩形環状であり、底部10cは矩形状となっている。
【0062】
壁部210bは、凹部210aの側壁を構成し、底部10cの外縁に沿って矩形環状に設けられている。壁部210bは、凹部210aの側面と、金属封止材11が配置される面(第1の面210d)と、第1の面210dからリッド12側へ突出するように形成された隔壁部220とを含む。
【0063】
隔壁部220は、壁部210bと一体的に形成されており、金属封止材11の内周に沿って、蓄電素子213の周囲に形成された連続した形状(環状)となっている。
【0064】
隔壁部220は、リッドと対向する対向面220aを有する。ここで、第2の面10gから接合面11aまでの高さをD1、第2の面10gから対向面220aまでの高さをD2、第2の面10gから第1の面210dまでの高さをD3とすると、高さD1、D2及びD3の間の大小関係は、それぞれ第1の実施形態に係る電気化学デバイス100の高さH1、H2及びH3の間の大小関係と同様の設定にすることができる。
【0065】
壁部210bの厚み、すなわち高さD2及びD3は、それぞれ第1の実施形態に係る電気化学デバイス100の高さH2及びH3よりも小さい値に設定される。これによって、金属封止材11の厚みを維持しつつ、デバイスを低背化することができる。
【0066】
蓄電素子213(正極電極シート213a、負極電極シート213b、及びセパレートシート213c)は、ケースの低背化に伴い、第1の実施形態に係る蓄電素子13(正極電極シート13a、負極電極シート13b、及びセパレートシート13c)よりも薄化している。正極電極シート213aは、セパレートシート213cと接触する接触面213dを有し、当該接触面213dは、第2の面10gから接触面213dまでの高さD4を有する。蓄電素子213の厚みは、ケースの厚みに応じて適宜設定することができる。
【0067】
本実施形態では、デバイスの低背化に伴い金属封止材11と正極電極シート213aとの距離は近づいており、高さD4>D3となっている。ここで、金属封止材11と正極電極シート213aとの間に隔壁部220が無い場合、両者が接触する恐れがある。本実施形態では、高さD2>D4となるように隔壁部220が形成されているため、金属封止材11と正極電極シート213aとの接触を避けることができ、隔壁部220が無い場合と比べて短絡を効果的に防止することが可能となる。
【0068】
上記の構成によっても、第1の実施形態に係る電気化学デバイス100と同様の効果を得ることができる。
さらに本実施形態によれば、金属封止材11の厚みを確保しつつ、金属封止材11と正極電極シート213aとの短絡を起こすことなく、ケース210を低背化することが可能となる。
【0069】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0070】
[変形例]
以下、本発明の第1の実施形態に係る電気化学デバイス100の変形例について説明する。変形例において、実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。なお、以下の変形例は電気化学デバイス100を例に挙げて説明するが、第2の実施形態に係る電気化学デバイス200にも適用可能である。
【0071】
図5は、第1の実施形態の変形例に係る電気化学デバイス110の断面図である。電気化学デバイス110において、隔壁部21は金属封止材11と蓄電素子13との間、かつ、リッド12と壁部10bとの間に配置された矩形環状の部材となっている。他の構成は、電気化学デバイス100と同様の構成となっている。
【0072】
隔壁部21の幅は、当該隔壁部21が金属封止材11と蓄電素子13との間に配置されていれば、特に限られない。隔壁部21は、例えば、金属封止材11の内周に沿って配置された薄板とすることもできる。この場合、隔壁部21の外周面21bと、内周面11bとは相互に接触していてもよく、接触していなくてもよい。隔壁部21は、典型的には連続した矩形環状の部材が用いられるが、複数の板状部材を組み合わせて用いることもできる。
【0073】
隔壁部21は、リッド12と対向する対向面21aを有する。第2の面10gから対向面21aまでの高さをH2とすると、本変形例の高さH1、H2及びH3の間の大小関係は、それぞれ電気化学デバイス100の高さH1、H2及びH3の間の大小関係と同様の設定にすることができる。
【0074】
図6は、第1の実施形態の変形例に係る電気化学デバイス120の断面図である。電気化学デバイス120において、隔壁部22は金属封止材11と蓄電素子13との間、かつ、リッド12と底面10fとの間に配置された矩形環状の部材となっている。他の構成は電気化学デバイス100と同様の構成となっている。
【0075】
隔壁部22の幅は、当該隔壁部22が金属封止材11と蓄電素子13との間に配置されていれば、特に限られない。隔壁部22は、例えば、金属封止材11の内周に沿って配置された薄板とすることもできる。この場合、隔壁部22の外周面22bと内周面11bとは相互に接触していてもよく、接触していなくてもよい。隔壁部22は、典型的には連続した矩形環状の部材が用いられるが、複数の板状部材を組み合わせて用いることもできる。
【0076】
隔壁部22は、リッド12と対向する対向面22aを有する。第2の面10gから対向面22aまでの高さをH2とすると、本変形例の高さH1、H2及びH3の間の大小関係は、それぞれ電気化学デバイス100の高さH1、H2及びH3の間の大小関係と同様の設定にすることができる。
【0077】
いずれの変形例においても隔壁部の材料はケース10と同様の材料からなるものとすることもでき、他の絶縁性材料からなるものとすることもできる。各変形例における隔壁部の形状は、断面形状が矩形状となるものに限られず、あらゆる形状を採用し得る。
【0078】
より確実に金属封止材11への電解液の浸入を防ぐために、各変形例における隔壁部とリッド12との間あるいはケース10との間には、さらに絶縁性のシール部材を設けることもできる。
【0079】
以上のいずれの変形例の構成によっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0080】
また、以上の各実施形態では、蓄電素子はセパレータを有するが、各実施形態の構成はセパレータを有しない電気化学デバイスにも適用可能である。
【0081】
以上の各実施形態では、隔壁部のリッドとの対向面を平面としたが、これに限らずあらゆる面形状とすることができる。
【0082】
また、第2の実施形態では、壁部210bと蓄電素子213の厚みを小さくすることでデバイスの低背化を行っているが、これに限らず、他の部材の厚みを小さくすることもできる。例えば、リッド12の厚みを小さくしてもよい。この場合でも、金属封止材11がある程度の厚みを有するので、溶接時の金属封止材11とケース210との界面の剥離や破壊を防ぎつつデバイスの低背化を行うことができる。あるいは、底部10cの厚みを小さくすることもでき、正極接着層14及び負極接着層17の厚みを小さくすることもできる。