(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-106712(P2015-106712A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及びこの製造方法で得られる太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0216 20140101AFI20150512BHJP
C03C 17/32 20060101ALI20150512BHJP
【FI】
H01L31/04 240
C03C17/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-229554(P2014-229554)
(22)【出願日】2014年11月12日
(31)【優先権主張番号】201310624466.4
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513235681
【氏名又は名称】群▲マイ▼通訊股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】簡 浩文
【テーマコード(参考)】
4G059
5F151
【Fターム(参考)】
4G059AA08
4G059AC04
4G059FA09
4G059FA29
4G059FB05
5F151JA03
5F151JA25
(57)【要約】
【課題】任意の太陽光入射角度において、太陽電池パネルの太陽光に対する平均吸収率を高めることができる太陽電池の製造方法及び当該製造方法で得られる太陽電池を提供すること。
【解決手段】本発明に係る太陽電池の製造方法は、太陽光が太陽電池パネルを垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面を受光面として含む太陽電池パネルを提供する工程と、屈折率が1.05〜2.5である複屈折性材料、接着剤及び有機溶剤を含む光学コーティング液を調製する工程と、太陽電池パネルの受光面に光学コーティング液を塗布して、受光面に光学コーティング液膜を形成する工程と、光学コーティング液膜を固化させて、受光面に光学膜を形成する工程と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光が太陽電池パネルを垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面を受光面として含む太陽電池パネルを提供する工程と、
屈折率が1.05〜2.5である複屈折性材料、接着剤及び有機溶剤を含む光学コーティング液を調製する工程と、
前記太陽電池パネルの前記受光面に前記光学コーティング液を塗布して、前記受光面に光学コーティング液膜を形成する工程と、
前記光学コーティング液膜を固化して、前記受光面に光学膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記太陽電池パネルは、シリコン基半導体電池パネル、テルル化カドミウム(CdTe)薄膜電池パネル、銅インジウムガリウムセレン(CIGS)薄膜電池パネル、III−V族化合物半導体電池パネル及び有機材料電池パネルの中の何れか1種であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記複屈折性材料の前記光学コーティング液における質量濃度は、0.1%〜33%であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記複屈折性材料は、液晶分子、液晶ポリマー、石英、方解石及びルビーの中の何れか1種であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記光学コーティング液膜の厚さは、5nm〜800μmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
受光面を有する太陽電池パネルと、前記受光面を被覆している光学膜と、を備える太陽電池であって、
前記受光面は、太陽光が太陽電池パネルを垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面であり、
前記光学膜は、相対屈折率が1.05〜2.5である複屈折性材料及び接着剤を含むことを特徴とする太陽電池。
【請求項7】
前記受光面は、滑らかな表面、エッチングによって形成された粗面及び周期的な三次元構造を有する表面の中の何れか1種の表面であることを特徴とする請求項6に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルは、太陽エネルギーを直接に電気エネルギーに変換できる部材である。しかし、一般的な太陽電池パネルは、太陽電池パネルに照射される太陽エネルギーを吸収して電気エネルギーに変換する割合が約15%しかない。つまり、殆どの太陽エネルギーは、太陽電池パネルにより外へ反射されてしまう。
【0003】
従って、表面エッチング技術によって、太陽電池パネルの表面に多くのピラミッド構造又は多くの逆ピラミッド構造を形成することで、太陽電池パネルの反射効果を弱めることができるが、単結晶シリコンの太陽電池パネルのみでしか、完全なピラミッド構造を形成することができない。また、上記のピラミッド構造を有する表面又は逆ピラミッド構造を有する表面は、入射光が垂直に入射した場合にのみ、太陽電池パネルの光反射率を有効に低下させることができる。しかし周知のように、太陽光は常に垂直入射を維持することはできないため、太陽光の入射角度が変わると、太陽電池パネルの反射率もこの入射角度に伴って次第に増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点に鑑みて、本発明は、任意の太陽光入射角度において、太陽電池パネルの太陽光に対する平均吸収率を高めることができる太陽電池の製造方法及び当該製造方法で得られる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池の製造方法は、太陽光が太陽電池パネルを垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面を受光面として含む太陽電池パネルを提供する工程と、屈折率が1.05〜2.5である複屈折性材料、接着剤及び有機溶剤を含む光学コーティング液を調製する工程と、太陽電池パネルの受光面に光学コーティング液を塗布して、受光面に光学コーティング液膜を形成する工程と、光学コーティング液膜を固化して、受光面に光学膜を形成する工程と、を備える。
【0006】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池は、受光面を有する太陽電池パネルと、前記受光面を被覆している光学膜と、を備える。受光面は、太陽光が太陽電池パネルを垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面であり、光学膜は、相対屈折率が1.05〜2.5である複屈折性材料及び接着剤を含む。
【発明の効果】
【0007】
従来の技術と異なり、本発明の太陽電池の製造方法は、高い屈折率の複屈折性材料を含有する光学コーティング液を完成品の太陽電池パネルの受光面に塗布して、太陽電池パネルの受光面に光学膜を形成して、光学膜の中の複屈折性材料(例えば、整列する液晶分子)の導光機能を利用することで光入射方向を変えることができ、太陽電池パネルに垂直に入射しない太陽光であっても、光学膜を通過させた後では、受光面に垂直に通過させることができる。これによって、より多くの太陽光が受光面に入り且つ太陽電池パネルにより吸収されるため、太陽光の反射率を低下させることができる。故に、太陽光が非垂直角度で受光面に入射する場合の太陽電池の光吸収率は効果的に高められ、太陽電池の平均光吸収率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る太陽電池の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る太陽電池の光学膜の動作原理を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る太陽電池と光学膜が形成されていない太陽電池との異なる光入射角度における光吸収率を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る太陽電池と光学膜が形成されていない太陽電池との異なる光入射角度における光吸収率を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る太陽電池と光学膜が形成されていない太陽電池との異なる光入射角度における光吸収率を示す図である。
【
図6】本発明の太陽電池が光学膜が形成されていない太陽電池に対して、異なる光入射角度における光吸収率の効率アップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示された本発明の実施形態に係る太陽電池100の製造方法は、以下の工程を備える。
【0010】
第一工程において、太陽電池パネル10の完成品を提供する。太陽電池パネル10は、既存の何れか1種の太陽電池パネルである。例として、シリコン基半導体電池パネル、CdTe(テルル化カドミウム)薄膜電池パネル、銅インジウムガリウムセレン(CIGS)薄膜電池パネル、III−V族化合物半導体電池パネル及び有機材料電池パネル等が挙げられる。また、シリコン基半導体電池パネルは、単結晶シリコン電池、ポリシリコン電池及びアモルファスシリコン薄膜電池等であることができる。また、太陽電池パネル10は、受光面101を備える。この受光面101は、太陽光が太陽電池パネル10を垂直に照射する時に、太陽光と最も早く接触する表面である。受光面101は、滑らかな平面或いはエッチングによって形成された粗面である。又は周期的な三次元構造を有する表面である。前記の三次元構造は、ピラミッド構造或いは半球形構造であることができる。
【0011】
第二工程において、光学コーティング液を調製する。前記光学コーティング液は、複屈折性材料22(
図2を参照)、接着剤及び有機溶剤を含む。複屈折性材料22の相対屈折率は1.05〜2.5である。また、複屈折性材料22は、液晶分子、石英、方解石及びルビーであるが、これらに限定されるものではない。液晶分子は、液晶ポリマーであることができる。複屈折性材料22が石英、方解石及びルビー等の材料である場合、石英、方解石及びルビーは、液晶に類似した形状(即ち、楕円形又は球状)を有する。また、上記の石英、方解石及びルビーの粒径は、1μmより小さい。複屈折性材料22の前記光学コーティング液質量比は材料によって異なるが、その質量濃度は、0.1%〜33%である。複屈折性材料22が液晶分子である場合、当該液晶分子の前記光学コーティング液における質量濃度は0.1%〜5%である。前記接着剤は、UV硬化接着剤又は熱硬化接着剤である。前記有機溶剤は、透明であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate,PGMEA)である。
【0012】
第三工程において、太陽電池パネル10の受光面101に前記光学コーティング液を塗布して、受光面101に光学コーティング液膜を形成する。光学コーティング液を受光面101に塗布する方法は、ディップコート法、スピンコート法(spin coating)、スプレー法であることができるが、これらの方法に限定されるものではない。前記光学コーティング液膜の厚さは、5nm〜800μmである。同じ種類の複屈折性材料に対して、前記光学コーティング液膜の厚さは、複屈折性材料の光学コーティング液における質量濃度%の増加に伴って薄くなる。
【0013】
第四工程において、光学コーティング液膜を固化して、受光面101の上面に光学膜20を形成する。固化の方式は、光学コーティング液中の接着剤のタイプによって決まる。例えば、接着剤がUV硬化接着剤である場合、紫外光照射の方法によって光学コーティング液膜を固化するが、固化の過程において、窒素の保護下で行なわれるのが好ましい。光学コーティング液膜の厚さは、1nm〜500μmである。また、形成された光学膜20は、複屈折性材料22及び透明な接着剤により構成される。前記有機溶剤は、上記の固化の過程において揮発して除去される。
【0014】
上記の太陽電池100の製造方法において、太陽電池パネル10の受光面101に対して前記光学コーティング液を塗布する前に、前記受光面101を清潔にしておくことが好ましい。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る太陽電池100は、太陽電池パネル10及び太陽電池パネル10の受光面101を被覆している光学膜20を備える。
【0016】
光学膜20は、より高い屈折率(1.05〜2.5)の複屈折性材料22を含有するため、当該複屈折性材料22(例えば、整列した液晶分子)の導光機能を利用して、光入射方向を変えることができ、太陽電池パネル10に垂直に入射しない太陽光であっても、光学膜20を通過させた後では、受光面101に垂直に通過させることができる(
図2を参照)。これによって、より多くの太陽光が受光面101に入り且つ太陽電池パネル10により吸収されるため、太陽光の反射率を低下させることができる。故に、太陽光が非垂直角度で受光面101に入射する場合の太陽電池の光吸収率は効果的に高められ、太陽電池の平均光吸収率は向上する。
【0017】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明の太陽電池の製造方法について説明する。
【0018】
[実施例1]
(a)III−V族化合物の太陽電池パネルの完成品を用意して、当該太陽電池パネルの受光面を清潔にする。
【0019】
(b)液晶ポリマー、UV硬化接着剤及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)により形成された光学コーティング液を調製する。液晶ポリマーの光学コーティング液における質量濃度(%)は1%である。
【0020】
(c)スピン法を介して、III−V族化合物の太陽電池パネル10の受光面に対して、調製して得られた光学コーティング液を塗布して、前記受光面に光学コーティング液膜を形成する。具体的には、500rpmの回転速度でIII−V族化合物の太陽電池パネル10を10秒間回転させて、光学コーティング液によって前記受光面を完全に被覆させる。その後、3000rmpの回転速度でIII−V族化合物の太陽電池パネル10を30秒間回転させて、光学コーティング液膜の厚さを均一にする。
【0021】
(d)光学コーティング液膜を固化させる。この固化の工程は、プリベーク及び硬化との2つのステップを含む。プリベークステップにおいて、光学コーティング液膜がコーティングされたIII−V族化合物の太陽電池パネル10を100℃の温度下で80秒間焼いて、余分な接着剤(PGMEA)を揮発させる。硬化ステップにおいて、窒素の保護下で、波長が365nmで、パワーが8Wの紫外光を用いて、プリベークを経たIII−V族化合物の太陽電池パネル10を3分間照射して、光学コーティング液膜を所望の光学膜に硬化させる。
【0022】
[テスト結果]
以下、上記の実施例で得た光学膜20を有するIII−V族化合物の太陽電池パネル10と前記光学膜20が形成されていないIII−V族化合物の太陽電池パネル10との光吸収率を、受光面101に対する太陽光の入射角度がそれぞれ垂直入射角度(90°)、15°及び30°の場合でそれぞれ測定した。ここで、垂直入射角度(90°)、15°及び30°とは、太陽光の入射方向と受光面101との夾角である。
【0023】
図3〜
図5から分かるように、本発明の光学膜20を有するIII−V族化合物の太陽電池パネル10は、光学膜20が形成されていないIII−V族化合物の太陽電池パネル10に比べて、垂直入射角度(90°)又は15°及び30°の傾斜入射角度において、その光吸収率は大幅に向上した。具体的には、垂直入射の場合、光吸収率は12.84%から13.71%まで増加した。15°傾斜入射の場合、光吸収率は11.03%から10.26%まで増加した。30°傾斜入射の場合、光吸収率は10.26%から11.98%まで増加した。
【0024】
図6は、本発明の光学膜20を有する太陽電池100が光学膜20が形成されていない太陽電池100に対して、異なる光入射角度における光吸収率の効率アップを示す図である。効率アップ=(光学膜が形成された後の光吸収率―初期効率)/初期効率である。ここで、初期効率とは、光学膜20が形成されない場合の光吸収率である。
図6から分かるように、光学膜20が形成されている太陽電池100の傾斜入射時における光吸収率は、著しく向上している。具体的には、垂直入射の場合には6.78%向上し、15°傾斜入射の場合には17.41%向上し、30°傾斜入射の場合に16.76%向上している。
【符号の説明】
【0025】
10 太陽電池パネル
100 太陽電池
101 受光面
20 光学膜
22 複屈折性材料