特開2015-106723(P2015-106723A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-106723エンファシス付加装置及びエンファシス付加方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-106723(P2015-106723A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】エンファシス付加装置及びエンファシス付加方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/04 20060101AFI20150512BHJP
【FI】
   H04B3/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-246267(P2013-246267)
(22)【出願日】2013年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】大日向 哲郎
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046EE59
(57)【要約】
【課題】使用される通信規格に応じた最適なエンファシス波形を試験用信号に付加する。
【解決手段】試験対象物に入力するデジタルの試験用信号にエンファシスをかけるためのエンファシス付加装置1は、使用される通信規格に応じた設定値を入力する操作部2と、使用される通信規格に応じてプリエンファシスモードとディエンファシスモードとを切り替える切替部4と、切替部4により切り替えられたモードにおいて、操作部2から入力された設定値に基づき、使用される通信規格の基準となる振幅電圧値に対して増減される振幅量を算出する設定値算出部7と、設定値算出部7が算出した振幅量に基づくエンファシス波形を生成して試験用信号に付加するエンファシス波形付加部8とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象物に入力するデジタルの試験用信号にエンファシスをかけるためのエンファシス付加装置(1)において、
使用される通信規格に応じた設定値を入力する操作部(2)と、
前記使用される通信規格に応じてプリエンファシスモードとディエンファシスモードとを切り替える切替部(4)と、
前記切替部により切り替えられたモードにおいて、前記操作部から入力された設定値に基づき、前記使用される通信規格の基準となる振幅電圧値に対して増減される振幅量を算出する設定値算出部(7)と、
前記設定値算出部が算出した振幅量に基づくエンファシス波形を生成して前記試験用信号に付加するエンファシス波形付加部(8)とを備えたことを特徴とするエンファシス付加装置。
【請求項2】
試験対象物に入力するデジタルの試験用信号にエンファシスをかけるためのエンファシス付加方法において、
使用される通信規格に応じた設定値を入力するステップと、
前記使用される通信規格に応じてプリエンファシスモードとディエンファシスモードとを切り替えるステップと、
前記切り替えられたモードにおいて、前記使用される通信規格の基準となる振幅電圧値に対して増減される振幅量を算出するステップと、
前記算出した振幅量に基づくエンファシス波形を生成して前記試験用信号に付加するステップとを含むことを特徴とするエンファシス付加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象物(DUT:device under test )に入力される元信号の試験用信号に対し、使用されるコンピュータバス・相互接続規格に応じたエンファシスを付加するエンファシス付加装置及びエンファシス付加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送信側で送信する信号の特定の周波数成分を強調することにより、伝送路で減衰しやすい周波数を補償して伝送路で起こる信号の減衰を最小限に抑え、受信側で受信する信号の品質を改善する伝送技術としてエンファシスが従来より知られている。
【0003】
このエンファシスには、エンファシスを加えていないデータ信号のアイ振幅に対し、xdBの分だけ強調するプリエンファシスの考え方と、xdBの分だけ小さくするディエンファシスの考え方の2つの考え方とがある。
【0004】
これらプリエンファシスの考え方とディエンファシスの考え方は、装置内部や装置と試験対象物との間のコンピュータバス・相互接続規格(通信規格)に応じて何れか一方又は両方の考え方が採用されることになる。具体的には、Infiniband等ではプリエンファシスの考え方が採用され、PCI Express(登録商標),SATA,USB等ではディエンファシスの考え方が採用される。また、Xilinx社のVirtex(登録商標)では、InfinibandやPCI Express(登録商標)を含む多種の規格に対応しており、プリエンファシスとディエンファシスの両方の考え方が採用される。
【0005】
ところで、プリエンファシスの考え方を採用した装置としては、下記特許文献1に開示されるエンファシス付加装置が知られている。このエンファシス付加装置では、横軸を時間、縦軸を変調量としてプリエンファシス波形イメージを表示画面上に表示させ、このプリエンファシス波形イメージにおいてビットを強調させることが可能な箇所のタップにカーソルを配置し、このカーソルの移動に応じて可変される振幅量に基づいて表示画面上のプリエンファシス波形イメージと同一のエンファシス波形を生成して元信号に付加している。尚、特に文献を示してはいないが、ディエンファシスの考え方を採用した装置も周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−060630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のエンファシス付加装置では、上述した特許文献1のプリエンファシスの考え方、又はディエンファシスの考え方の何れか一方を採用した装置が一般的であった。
【0008】
このため、プリエンファシスの考え方を採用したエンファシス付加装置において、ディエンファシス波形の設定を行った場合、ユーザが操作入力した値に基づいてプリエンファシスの考え方のまま振幅量を算出するため、誤った振幅量でプリエンファシス波形が生成されてしまい、試験対象物の正確な試験を行うことができないという問題があった。しかも、誤って高振幅に設定されたエンファシス波形が出力されると、耐電圧が低い被測定デバイスを試験対象物とした場合には、デバイス自身が破損する恐れもあった。このため、正しい設定を行うためには、ユーザがディエンファシスの考え方に基づいて操作入力する値を計算し直す必要があり、この面倒な計算作業がユーザの負担になっていた。
【0009】
また、ディエンファシスの考え方を採用したエンファシス付加装置において、プリエンファシス波形の設定を行う場合でも、上述した同様の問題が生じる。
【0010】
このため、1台のエンファシス付加装置において、プリエンファシスとディエンファシスの両方の考え方を取り込み、通信規格に応じてプリエンファシス波形やディエンファシス波形の設定を切り替える機能を備えた装置の提供が望まれていた。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、使用される通信規格に応じた最適なエンファシス波形を試験用信号に付加して出力することができるエンファシス付加装置及びエンファシス付加方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載されたエンファシス付加装置は、試験対象物に入力するデジタルの試験用信号にエンファシスをかけるためのエンファシス付加装置1において、
使用される通信規格に応じた設定値を入力する操作部2と、
前記使用される通信規格に応じてプリエンファシスモードとディエンファシスモードとを切り替える切替部4と、
前記切替部により切り替えられたモードにおいて、前記操作部から入力された設定値に基づき、前記使用される通信規格の基準となる振幅電圧値に対して増減される振幅量を算出する設定値算出部7と、
前記設定値算出部が算出した振幅量に基づくエンファシス波形を生成して前記試験用信号に付加するエンファシス波形付加部8とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載されたエンファシス付加方法は、試験対象物に入力するデジタルの試験用信号にエンファシスをかけるためのエンファシス付加方法において、
使用される通信規格に応じた設定値を入力するステップと、
前記使用される通信規格に応じてプリエンファシスモードとディエンファシスモードとを切り替えるステップと、
前記切り替えられたモードにおいて、前記使用される通信規格の基準となる振幅電圧値に対して増減される振幅量を算出するステップと、
前記算出した振幅量に基づくエンファシス波形を生成して前記試験用信号に付加するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザによる切替部の切替操作のみにより、通信規格に応じてプリエンファシスモード又はディエンファシスモードに切り替え、プリエンファシス波形の設定やディエンファシス波形の設定を適宜行うことができる。これにより、試験対象物の通信規格に応じた最適なエンファシス波形を試験用信号に付加して出力することができ、試験対象物の各種試験を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るエンファシス付加装置のブロック構成図である。
図2】(a)プリエンファシスモードにおけるプリエンファシス波形イメージと主要な設定項目の表示例を示す図である。 (b)ディエンファシスモードにおけるディエンファシス波形イメージと主要な設定項目の表示例を示す図である。
図3】本発明に係るエンファシス付加装置のエンファシス波形付加部の具体的な回路構成の一例を示す図である。
図4】Infiniband Architecture Spcification Volume2から抜粋したTable 48 Tx FIR Filter Coefficatin and Amplitudesの一覧を示す図である。
図5図4における各Preset毎のPostとPreのdB値及び振幅電圧値を示す図である。
図6】PCI Express(登録商標) Base Specification Revision3.0から抜粋したTable 4−16:Tx Preset Ratios and Corresponding Coefficient Valuesの一覧を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面(図1図6)を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本発明に係るエンファシス付加装置及びエンファシス付加方法は、例えばインターコネクト系の規格に準拠した測定系を構築する際に採用され、試験対象物(DUT)に入力される試験用信号(元信号)に対し、使用される通信規格に応じたエンファシス波形(プリエンファシス波形又はディエンファシス波形)を付加するものである。
【0018】
尚、本発明における通信規格とは、例えばInfiniband,PCI Express(登録商標),SATA,USB等のように、装置内部や装置と試験対象物との間に使用されるコンピュータバス・相互接続規格を意味するものである。
【0019】
・エンファシス付加装置の全体構成
図1に示すように、エンファシス付加装置1は、予め決められた所定パターンの試験用信号(元信号)に対し、通信規格に最適なエンファシス波形(プリエンファシス波形又はディエンファシス波形)を付加するため、操作部2、情報記憶部3、切替部4、表示部5、表示制御部6、設定値算出部7、エンファシス波形付加部8を備えて概略構成されている。
【0020】
操作部2は、例えばユーザが操作するソフトキーやスイッチ等で構成される。操作部2は、例えばBER(Bit Error Rate)試験やジッタトレランス試験などの各種試験を行うための試験用信号に対してエンファシス波形を付加して出力する際に必要な各種情報の入力操作や各種設定を行っている。特に、本例では、通信規格に最適なエンファシス波形を設定するにあたって、操作部2の操作及び切替部4の切替により、プリエンファシスモード又はディエンファシスモードの切替選択操作、切替選択されたモードにおけるテキストボックス9の数値入力エリアへのパラメータの数値入力などを行っている。
【0021】
ここで、プリエンファシスモードとは、操作部2から入力されるアイ振幅(Eye Amplitude:振幅電圧値)、カーソル1(Cursor1)、カーソル2(Cursor2)の各値と情報記憶部3の情報に基づき、設定値算出部7がプリエンファシスの考え方により複数のカーソル(カーソル1、カーソル2)の振幅量を計算により算出するモードである。
【0022】
また、ディエンファシスモードとは、操作部2から入力されるアイ振幅、カーソル1、カーソル2の各値と情報記憶部3の情報に基づき、設定値算出部7がディエンファシスの考え方により複数のカーソル(カーソル1、カーソル2)の振幅量を計算により算出するモードである。
【0023】
尚、表示部5の設定画面上に表示される図2(a)のプリエンファシス波形イメージや図2(b)のディエンファシス波形イメージにおいて、振幅量の増減によりビットを強調させることができる箇所をタップと称し、この各箇所のタップにカーソル(Cursor1、Cursor2)が配置される。
【0024】
情報記憶部3は、元信号となる試験用信号に対し、プリエンファシス波形又はディエンファシス波形を付加して出力するために必要な各種情報を記憶している。この各種情報としては、予め決められた通信規格毎の複数種類の基準波形パターン(2post−cursor、1pre−cursor,3post−cursor,1post−cursor、1pre−cursor,2post−cursor,1post−cursor等)の波形情報(波形形状を特定する各パラメータ値)、表示部4の表示画面の1ドット当たりの振幅量や1ドット当たりの時間などがある。
【0025】
切替部4は、図2(a),(b)に示すように、例えば表示部5の設定画面上に表示される「Pre−Emphasis」、「De−Emphasis」のソフトキーからなるモード切替キーで構成される。切替部4は、押動操作する都度、設定画面をプリエンファシスモードからディエンファシスモード、又はディエンファシスモードからプリエンファシスモードに切り替える。尚、切替部4は、表示部5の設定画面上に表示されるソフトキーに限らず、操作部2の一部や装置本体や別途設けられる機械的なスイッチやボタンなどで構成することもできる。
【0026】
表示部5は、例えば液晶表示器で構成され、操作部2の操作に基づく表示制御部6の制御により、各種設定画面の表示を行っている。この表示部5に設定画面(図2(a),(b)参照)が表示された状態では、切替部4にて切替選択されたプリエンファシスモード又はディエンファシスモードにより通信規格に応じた設定が行われる。
【0027】
表示制御部6は、操作部2の入力操作、切替部4の切替操作、情報記憶部3の各種情報に基づいて表示部5の表示を制御している。
【0028】
尚、図1の例では、操作部2、表示部5、表示制御部6を機能分けして別々のブロックで示したが、これらをコンピュータグラフィックスとマウスなどのポインティングデバイスを用いた直感的な操作により各種の操作・設定が行える機能を有するGUI(graphical user interface)で構成することもできる。
【0029】
設定値算出部7は、切替部4の切替操作によりプリエンファシスモード又はディエンファシスモードが選択されると、操作部2の操作により図2(a),(b)の設定画面上におけるテキストボックス9の各設定項目(EA,C1,C2)の数値入力エリアに数値入力される通信規格に応じたアイ振幅、カーソル1、カーソル2の各数値情報と、情報記憶部3の各種情報とに基づき、アイ振幅に対する振幅量を計算により算出している。そして、設定値算出部7は、エンファシス波形付加部8が表示画面上のプリエンファシス波形イメージ又はディエンファシス波形イメージと同一のエンファシス波形を試験用信号に付加するように、計算により算出された振幅量を、後述する切替回路13の各セレクタP1,P2,P3,P4に対応して振幅電圧(VEE1,VEE2,VEE3,VEE4)に振り分け、この振り分けた振幅電圧(VEE1,VEE2,VEE3,VEE4)を設定値として出力している。
【0030】
エンファシス波形付加部8は、設定値算出部7から出力される設定値に基づき、プリエンファシスモードで設定されたプリエンファシス波形イメージ又はディエンファシスモードで設定されたディエンファシス波形イメージと同じエンファシス波形を試験用信号(エンファシス付加前の元信号)に付加して出力している。
【0031】
さらに説明すると、エンファシス波形付加部8は、特開2012−60630号公報と同様に、図3の制御回路11、データ保持回路12、切替回路13、増幅回路14、加算回路15を備えた周知の回路によって構成することができる。
【0032】
制御回路11は、D/Aコンバータを含む回路であり、設定値算出部7からの設定値(振幅電圧:VEE1,VEE2,VEE3,VEE4)を、増幅回路14の後述する各増幅器14a,14b,14c,14dを個別に制御するためのアナログ値からなる制御信号(4つの制御電圧)に変換して出力している。
【0033】
データ保持回路12は、C(クロック)端子の立ち上がりのエッジでD端子の入力の値がQ出力として保持される4つのD型フリップフロップ回路(以下、D−FFと略称する)12a,12b,12c,12dを直列接続して構成される。データ保持回路12は、初段のD−FF12aのD端子にエンファシス波形を付加する前の元信号(試験用信号),12c,12dが入力され、位相が1ビットずれとなるデータ信号に分岐して各D−FF12a,12b,12c,12dのQ端子から出力している。
【0034】
切替回路13は、データ保持回路12の4つのD−FF12a,12b,12c,12dのQ端子と1対1に対応して接続される4つのセレクタP1,P2,P3,P4で構成される。切替回路13の各セレクタP1,P2,P3,P4は、切替信号の入力により、極性が「POS(ポジティブ)」又は「NEG(ネガティブ)」の何れかの状態に予め設定されている。
【0035】
増幅回路14は、切替回路13の4つのセレクタP1,P2,P3,P4の出力と1対1に対応して接続される4つの増幅器14a,14b,14c,14dで構成される。これら4つの増幅器14a,14b,14c,14dは、制御回路11からの制御信号(制御電圧)によって個別に電圧が制御される。
【0036】
加算回路15は、増幅回路14の4つの増幅器14a,14b,14c,14dの出力を加算し、元信号である試験用信号にエンファシス波形を付加した信号(差動データ信号)を出力している。
【0037】
尚、エンファシス波形付加部8は、情報記憶部3の各種情報、設定値算出部7で算出された設定値に基づき、切替部4にて切替選択されたモード(プリエンファシスモード又はディエンファシスモード)におけるエンファシス波形イメージと同じエンファシス波形を試験用信号に付加できる構成であれば、図3の回路構成に限定されるものではない。
【0038】
次に、上記のように構成されるエンファシス付加装置1の動作について、プリエンファシスモードとディエンファシスモードに場合分けして説明する。
【0039】
・プリエンファシスモード
プリエンファシスモードの一例として、Infiniband Architecture Specification Volume2から抜粋した図4のTable 48 Tx FIR Filter Coefficatin and AmplitudesのPreset:3におけるプリエンファシス波形を設定する場合を例にとって説明する。
【0040】
まず、図2(a)の「Pre−Emphasis」と記されたモード切替キーからなる切替部5を押動操作し、プリエンファシスモードに切替設定する。
【0041】
次に、設定値算出部7は、プリエンファシスモードに切替設定されると、図4の太枠で囲まれたPreset:3のPostcursor ratioの値「1.27」とPrecursor ratioの値「1.07」をdB換算し、図5の太枠で囲まれたPreset:3のTxPostの値「2.08」とTxPreの値「0.68」を算出する。
【0042】
次に、アイ振幅の値EA:「0.40」、dB換算したTxPostの値「2.08」をカーソル1の値:C1、TxPreの値「0.68」をカーソル2の値:C2として、操作部2の操作により図2(a)の該当するテキストボックス9の数値入力エリアにそれぞれ数値入力する。
【0043】
次に、設定値算出部7は、テキストボックス9に入力された各数値EA:0.40,C1:2.08,C2:0.68を用い、アイ振幅の値EA:0.40を加味したカーソル1のdB値:αとカーソル2のdB値:βを下記式(1)、(3)の計算式によりそれぞれ算出する。
【0044】
次に、設定値算出部7は、式(1)、(3)の計算式から得たカーソル1のdB値:αとカーソル2のdB値:βを用い、下記式(2)、(4)の計算式によりカーソル1のVp−p値:α’とカーソル2のVp−p値:β’をそれぞれ算出する。
【0045】
20*LOG10(EA)+C1=α…式(1)
【0046】
10^((α)/20)=α’…式(2)
【0047】
20*LOG10(EA)+C2=β…式(3)
【0048】
10^((β)/20)=β’…式(4)
【0049】
そして、エンファシス波形付加部8は、アイ振幅の値EA:0.40Vと、上述した計算式により算出したカーソル1のVp−p値:α’=508mVとカーソル2のVp−p値:β’=432(図5の太枠で囲まれたPreset:3のPostとPreの振幅電圧)に基づいて設定されるプリエンファシス波形イメージと同じプリエンファシス波形を試験用信号に付加して出力する。
【0050】
・ディエンファシスモード
ディエンファシスモードの一例として、PCI Express(登録商標) Base Specification Revision3.0から抜粋した図6のTable 4−16:Tx Preset Ratios and Corresponding Coefficient ValuesのPreset number:P7におけるディエンファシス波形を設定する場合を例にとって説明する。
【0051】
まず、図2(a)の「De−Emphasis」と記されたモード切替キーからなる切替部5を押動操作し、ディエンファシスモードに切替設定する。
【0052】
次に、ディエンファシスモードに切替設定された状態で、アイ振幅の値EA:「0.80」、図6の太枠で囲まれたPresetnumber:P7のPostの値「−6」をカーソル1の値:C1、Preの値「3.5」をカーソル2の値:C2として、操作部2の操作により図2(b)の該当するテキストボックス9の数値入力エリアにそれぞれ数値入力する。
【0053】
次に、設定値算出部7は、テキストボックス9に入力された各数値EA:0.80,C1:−6,C2:3.5を用いてカーソル1のdB値:αとカーソル2のdB値:βを下記式(5)、(6)の計算式によりそれぞれ電圧比に変換する。
【0054】
次に、設定値算出部7は、式(5)、(6)の計算式から得たカーソル1のdB値:αとカーソル2のdB値:βを用い、ディエンファシス波形イメージの各部振幅電圧Va,Vb,Vcの値を下記式(7)、(8)、(9)の計算式によりそれぞれ算出する。
【0055】
10^((C1)/20)=α…式(5)
【0056】
10^((C2)/20)=β…式(6)
【0057】
Va=(EA)/(1−α+α*β)…式(7)
【0058】
Vb=(EA*β)/(1−α+α*β)…式(8)
【0059】
Vc=(EA*α*β)/(1−α+α*β)…式(9)
【0060】
尚、ディエンファシスの考え方では、(1)カーソル1=0[dB]、カーソル2>0[dB]の場合は、Vc=EA、(2)カーソル1<0[dB]、カーソル2=0[dB]の場合は、Va=EA、(3)カーソル1<0[dB]、カーソル2>0[dB]の場合は、Va<EA、Vc<EAとなる。
【0061】
そして、エンファシス波形付加部8は、アイ振幅の値EA:0.80Vと、上述した計算式により算出したカーソル1の振幅電圧Va:0.641とカーソル2の振幅電圧Vc:0.480に基づいて設定されるディエンファシス波形イメージと同じディエンファシス波形を試験用信号に付加して出力する。
【0062】
このように、本例のエンファシス付加装置及び方法では、プリエンファシス波形の設定とディエンファシス波形の設定とを、試験対象物の試験中であってもユーザの手動操作による切替部4の切替操作のみで通信規格に応じてプリエンファシスモード又はディエンファシスモードに適宜モードを切り替えることができる。これにより、試験対象物の通信規格に応じた最適なエンファシス波形を試験用信号に付加して出力することができ、例えば信頼性の高いBER試験やジッタトレランス試験などの各種試験を効率的に行うことができる。また、例えばXilinx社のVirtex(登録商標)のように、InfinibandやPCI Express(登録商標)を含む多種の規格に対応し、試験中でも動的に規格を変更する機能を有する試験にも対応することができる。
【0063】
以上、本発明に係るエンファシス付加装置及びエンファシス付加方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
1 エンファシス付加装置
2 操作部
3 情報記憶部
4 切替部
5 表示部
6 表示制御部
7 設定値算出部
8 エンファシス波形付加部
9 テキストボックス
11 制御回路
12 データ保持回路
13 切替回路
14 増幅回路
15 加算回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6