【解決手段】 本発明は、出力線に接続された少なくとも1つの電力増幅器を備えるデジタル制御電力増幅器であって、前記少なくとも一つのスイッチ部は、前記出力線にスイッチング電流を供給するための第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのオン/オフ動作を制御する駆動回路と、を備える電力増幅器である。前記ドライバ回路は、前記出力線を流れる前記スイッチング電流の少なくとも一部に基づいて前記第1のトランジスタを駆動する、デジタル制御電力増幅器である。
一対の差動入力端子及び出力端子を有し、該一対の差動入力端子の一方が所定の基準電位に接続され、他方が前記少なくとも1つの電力増幅器の前記第2のトランジスタのソースに接続され、該出力端子が前記少なくとも1つの電力増幅器の前記第2のトランジスタのゲートに接続されるオペアンプをさらに備える、
請求項6記載のデジタル制御電力増幅器。
【背景技術】
【0002】
RF通信可能なモバイル通信端末装置の送信モジュールに用いられるデジタル制御増幅器(パワーアンプ)は、デジタルの入力信号に基づいて増幅出力されるパルス信号の電流値を多段の薄膜スイッチングトランジスタ素子に対するオン/オフの切り替え制御により離散的に制御することができる回路である。このように制御されたパルス電流は、所定のフィルタ回路により正弦波信号に変換され、アンテナを介して送信される。
【0003】
例えば、下記特許文献1は、ワイヤレス通信デバイス用の駆動増幅器を開示する。具体的には、特許文献1は、入力信号電圧を複数の入力信号電流に変換するための複数の電圧−電流トランスデューサと、カスコード段と、を備える装置を開示する。カスコード段は、増幅器利得制御を実現するように電圧−電流トランスデューサに結合され、薄ゲート酸化膜トランジスタと厚ゲート酸化膜トランジスタとを備える。
【0004】
また、下記特許文献2は、無線インターフェースを備えた情報処理装置用の高周波電力増幅装置を開示する。具体的には、特許文献2は、高周波の入力信号を増幅する電力増幅器と、電力増幅器とこれに電源電圧を供給する電源部との間に設けられ、電源部からの電源電圧を制御する制御回路とを含む高周波増幅装置を開示する。ここで、制御回路は、電力増幅器への入力信号から得られる信号を電力増幅器に応じて定まる歪特性に基づいて補正することにより制御信号を生成し、生成した制御信号により電源電圧を制御することにより供給電源電圧を生成し、生成した供給電源電圧を電力増幅器に供給するように構成される。これにより、高周波増幅装置は、エネルギー効率の優れた歪みの少ない高周波電力の増幅を実現している。
【0005】
また、下記非特許文献1は、ワイヤレス通信デバイス用の高周波電力増幅装置に関し、入力信号電圧を複数の入力信号電流に変換するための複数のトランジスタと、カスコード段とを備える装置を開示する(同文献
図4参照)。図示されるように、カスコード段は、増幅器利得制御を実現するように該トランジスタに結合され、厚ゲート酸化膜トランジスタによって構成される。
【0006】
ところで、RF通信に用いられる変調方式として、ポーラ変調(Polar Modulation)方式が知られている。ポーラ変調方式は、アンテナから送信すべきRF信号のポーラ(即ち、位相および振幅)の歪みを補償する変調方式である。一般に、デジタル制御電力増幅器は、ポーラ変調方式に適した回路構成となるため、ポーラ変調方式を用いたモバイル通信端末装置の送信モジュールへの利用が進んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、電子デバイスは、低消費電力であることが求められるが、特に、モバイル通信端末装置は、その性格上、搭載されたバッテリによる駆動時間ができる限り長くなるよう、一層の低消費電力化が求められる。このような電子デバイスの低消費電力化の実現のためには、典型的には、内部のICチップに使用されるパワーアンプの出力変換効率ηを改善することが極めて有効である。
【0009】
パワーアンプの出力変換効率ηは、パワーアンプに関わる全ての消費電力と出力電力との比であり、該パワーアンプに関わる全電流に起因する。出力変換効率ηを改善するため、とりわけ、薄膜スイッチングトランジスタ素子を流れるスイッチング電流の電流量を削減するいくつかのアプローチが検討されている。
【0010】
例えば、薄膜スイッチングトランジスタ素子のサイズや配線幅のダウンサイジングはスイッチング電流の削減に有効であるが、かかる物理的なダウンサイジングには製造プロセス上の制約があり、容易なことではない。また、スイッチング駆動電圧を低く設定することもスイッチング電流の削減に同じく有効であるが、このためには出力電流を制御するためのレギュレータ及びキャパシタを含む追加的な回路が必要となる。従って、該追加回路による電力消費も考慮しなければならず、また、該回路に対するレイアウト領域も必要となる。加えて、薄膜スイッチングトランジスタ素子の切り替え速度は非常に高速であるため、レギュレータ回路がRF信号帯域の高周波に追随できないという懸念がある。
【0011】
また、上述した特許文献1は、RF駆動増幅器送信機における利得制御の直線性を改善しようとするものであるが、駆動増幅器自体のスイッチング電流の削減を考慮するものではなかった。具体的には、特許文献1の駆動増幅器において、スイッチに供給される電流は、従前通り、駆動回路の電源から供給されるものであった。
【0012】
さらに、上述した特許文献2は、エネルギー効率の優れた歪みの少ない高周波電力の増幅を実現しようとするものである。しかしながら、そもそも特許文献2は、最も良いエネルギー効率を得られるようにシミュレーション又は実測により電力増幅器における入出力関係から供給電源電圧を求めておき、該電力増幅器の出力パワーに応じて供給電源電圧を切り替えることで、エネルギー効率を改善するものであり、スイッチング電流の削減を考慮するものでなかった。
【0013】
また、上述した非特許文献1は、高周波電力増幅器における利得制御の直線性を改善しようとするものであるが、電力増幅器自体のスイッチング電流の削減を考慮するものではなかった。非特許文献1の電力増幅器においては、スイッチに供給される電流は、従前通り、高周波電力増幅器の電源から供給されていた。
【0014】
また、デジタル制御電力増幅器が、出力信号線に電流短形信号を出力する度に、そこに電流高調波が発生する。電流高調波は、出力信号の周波数の整数倍の周波数に、高調波信号を発生させる。従来、このような高調波信号を減衰させるために、例えば、次数の大きなバタワースフィルタ等が必要となり、送信モジュールの部品コスト増大の原因となっている。
【0015】
さらに、近年では、無線通信端末装置へのデジタル制御電力増幅器の利用が進んでいることから、かかるデジタル制御電力増幅器の低消費電力化が強く望まれている。
【0016】
そこで、本発明は、低い消費電力で動作し、かつ、高い出力変換効率ηを有する、デジタル制御電力増幅器を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、デジタル制御電力増幅器が出力信号として電流短形信号を出力する際に発生する電流高調波の発生を抑制し、高調波抑制に関わるコストを低く抑えたデジタル制御電力増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的特徴乃至は発明特定事項を含んで構成される。
【0019】
即ち、ある観点に従う本発明は、出力線に接続された少なくとも1つの電力増幅器(スイッチ部)を備えるデジタル制御電力増幅器であって、前記少なくとも一つの電力増幅器は、前記出力線にスイッチング電流を供給するための第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのオン/オフ動作を制御する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記出力線を流れる前記スイッチング電流の少なくとも一部に基づいて前記第1のトランジスタを駆動する、デジタル制御電力増幅器である。
【0020】
かかるデジタル制御電力増幅器によれば、スイッチング電流の少なくとも一部を第1のトランジスタのオン/オフ動作の駆動に用いているので、消費電流の削減を行うことができるようになる。
【0021】
ここで、前記第1のトランジスタは薄膜トランジスタであっても良いし、また、厚膜トランジスタであっても良い。
【0022】
また、前記駆動回路は、前記第1のトランジスタのゲートに接続されるインバータ回路を備え得る。前記インバータ回路は、前記スイッチング電流の少なくとも一部に基づいて動作して、前記第1のトランジスタのゲートにスイッチ制御信号を供給するように構成される。
【0023】
また、前記インバータ回路は、前記第1のトランジスタのドレインとソースとの間の電位差によって動作するように構成される。なお、第1のトランジスタが厚膜トランジスタである場合、前記インバータ回路は厚膜トランジスタであり得る。
【0024】
さらに、前記少なくとも1つの電力増幅器は、前記第1のトランジスタにカスコード接続された第2のトランジスタを含み得る。
【0025】
ここで、前記第2のトランジスタは厚膜トランジスタであり得る。
【0026】
さらにまた、前記デジタル制御電力増幅器は、一対の差動入力端子及び出力端子を有し、該一対の差動入力端子の一方が所定の基準電位に接続され、他方が前記少なくとも1つの電力増幅器の前記第2のトランジスタのソースに接続され、該出力端子が前記少なくとも1つの電力増幅器の前記第2のトランジスタのゲートに接続されるオペアンプをさらに備えても良い。
【0027】
また、前記少なくとも1つの電力増幅器は、前記第1のトランジスタにカスコード接続された第3のトランジスタを含み得る。
【0028】
また、前記第1のトランジスタと前記インバータ回路との間に設けられた少なくとも1つの遅延回路をさらに含み得る。
【0029】
また、前記デジタル制御電力増幅器は、前記出力線のノードに並列的に接続された複数の前記電力増幅器を含むように構成される。
【0030】
また、別の観点に従う本発明は、上記のように構成されたデジタル制御電力増幅器を含む送信モジュールを備えた無線通信装置である。
【0031】
さらに、別の観点に従う本発明は、所定の電位の参照電圧信号及び電流制御電圧信号を生成し出力するバイアス回路と、前記バイアス回路から出力される前記参照電圧信号を所定の利得に従って増幅するオペアンプと、前記オペアンプに接続されるとともに、出力線のノードに並列的に接続され、前記オペアンプから出力される増幅された前記参照電圧信号及び前記バイアス回路から出力される前記電流制御電圧信号に基づいて、スイッチング電流を前記出力線に出力する複数の電力増幅器と、を備え、前記複数の電力増幅器のそれぞれは、スイッチ制御信号によってオン/オフ動作を行うトランジスタと、前記トランジスタのオン/オフ動作を制御するためのスイッチ制御信号を出力する駆動回路と、を備え、前記駆動回路は、前記出力線を流れる前記スイッチング電流の少なくとも一部に基づいて前記スイッチ制御信号を生成し、前記トランジスタを駆動する、デジタル制御電力増幅器である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、デジタル制御電力増幅器は、低い消費電力で動作し、かつ、高い出力変換効率ηを有することができるようになる。
【0033】
また、本発明によれば、デジタル制御電力増幅器が出力信号として電流短形信号を出力する際に発生する高調波の発生を抑制し、高調波抑制コストを抑えることができるようになる。
【0034】
本発明の他の技術的特徴、目的、及び作用効果乃至は利点は、添付した図面を参照して説明される以下の実施形態により明らかにされる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器を含む無線通信装置の構成の一例を説明するためのブロックダイアグラムである。同図に示すように、無線通信装置1は、例えば、制御回路10と、送信モジュール20と、送受分波器30と、アンテナ40と、受信モジュール50と、電源装置60とを含んで構成される。
【0038】
制御回路10は、例えばデータプロセッサ及びメモリ(図示せず)を含んで構成され、送信モジュール20及び受信モジュール50を統括的に制御して、無線通信を実現する回路である。即ち、制御回路10は、送信すべきデジタル信号に基づいて信号生成を行い、これを送信モジュール20に出力するとともに、受信信号を受信モジュール50から受け取る。また、制御回路10は、送信時、送信モジュール20の電力増幅率を制御するための振幅変調信号SAMPと、周波数・位相の変調を制御するための周波数・位相変調信号SFRQPHZとを、送信モジュール20に出力する。
【0039】
送信モジュール20は、例えば、振幅変調器22と、周波数・位相変調器24と、デジタル制御電力増幅器26と、信号変換器28とを含んで構成される。送信モジュール20は、制御回路10から入力される送信すべきデジタル信号、振幅変調信号SAMP及び周波数・位相変調信号SFRQPHZに基づいて、アナログの正弦波信号を生成し、送受分波器30に出力する。送信モジュール20で生成されたアナログの正弦波信号は、無線信号として、アンテナ40を介して送信される。
【0040】
より具体的には、送信モジュール20では、デジタル制御電力増幅器26が、制御回路10から周波数・位相変調器24を介して入力される周波数位相制御信号DINに対して、同じく制御回路10から振幅変調器22を介して入力される振幅制御信号SELに従って、その電流を調整し、出力端子TX_OUTを介して該調整したデジタルの電流短形信号を出力する。つまり、デジタル制御電力増幅器26は、典型的には、出力すべき信号電流量をデジタル的に制御する機能を有する。本実施形態のデジタル制御電力増幅器26は、後述するように、出力線を介して出力すべき信号電流量をデジタル的に制御するために必要な電力の少なくとも一部を、該出力線から供給することで、低消費電力での動作を可能としている(
図2乃至
図4参照)。デジタル制御電力増幅器26により増幅された信号は、信号変換器28に入力される。
【0041】
振幅変調器22は、制御回路10から入力される、送信すべきデジタル信号及び振幅変調信号SAMPに基づいて、振幅制御信号SELを生成し、デジタル制御電力増幅器26に出力する。
【0042】
周波数・位相変調器24は、制御回路10から入力される、送信すべきデジタル信号及び周波数・位相変調信号SFRQPHZに基づいて、周波数・位相制御信号DINを生成し、デジタル制御電力増幅器26に出力する。
【0043】
信号変換器28は、例えばローパスフィルタ等のフィルタ回路である。信号変換器28は、デジタル制御電力増幅器26から入力される送信すべきデジタルの電流矩形信号を所望のアナログの正弦波信号に変換する。
【0044】
送受分波器30は、例えばデュプレクサ乃至はダイプレクサであり、送信モジュール20から出力される送信信号とアンテナ40を介して受信した受信信号とを、電気的に分離する。即ち、送受分波器30は、送受信信号を正しくルーティングし、送信信号が受信モジュールに入り込むことを防止する。なお、代替例として、送受分波器30は、例えば送受切替器に置き換えられても良い。
【0045】
アンテナ40は、送信モジュール20から送受分波器30を介して受け取った送信信号を無線信号として発信するとともに、無線信号として受け取った受信信号を、送受分波器30を介して受信モジュール50に出力する。
【0046】
受信モジュール50は、例えば、信号増幅器52と、周波数変換器54と、中間周波増幅器56と、復調器58とを含んで構成される。受信モジュール50は、アンテナ40により受信した受信信号を増幅し、該受信信号に対して、ノイズを除去した後、デジタル信号に変換し、制御回路10に該デジタル信号を出力する。
【0047】
信号増幅器52は、例えば低雑音増幅器であり、アンテナ40を介して送受分波器30より入力される受信用信号を増幅し、受信信号の不要な周波数成分を除去し、周波数変換器54に出力する。
【0048】
周波数変換器54は、例えば混合器であり、信号増幅器52から入力される受信信号の周波数を、一定の低い周波数に変換し、中間周波増幅器56へ出力する。
【0049】
中間周波増幅器56は、周波数変換器54から入力される受信信号を、復調可能なまでに増幅し、受信信号の不要な周波数成分を除去し、復調器58へ出力する。
【0050】
復調器58は、中間周波増幅器56から入力される受信信号を、正弦波からデジタル信号に変換し、制御回路10へ出力する。
【0051】
電源装置60は、送信モジュール20や受信モジュール50、あるいは制御回路10といった無線通信装置1内の電子回路要素に必要な電力を供給する。
【0052】
図2は、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器の構成の一例を示す概略回路図である。同図に示すように、本実施形態のデジタル制御電力増幅器26は、例えば、バイアス回路261と、オペアンプ262と、多段構成の複数の電力増幅器263と、キャパシタ264及び265とを含んで構成される。デジタル制御電力増幅器26は、典型的には、振幅制御信号SELによる制御の下、出力線TX_OUTに供給される電流量を調整する回路である。つまり、出力線TX_OUTに接続されたアンテナ40(
図1参照)に供給される電流量は、デジタル制御電力増幅器26によって制御される。
【0053】
バイアス回路261は、オペアンプ262及び複数の電力増幅器263に、必要な電圧を供給する回路である。即ち、バイアス回路261は、所定の電位を持つ基準入力電圧信号VREF及び電流制御電圧信号VBを生成する。基準入力電圧信号VREFは、オペアンプ262の非反転入力端子+に入力され、電流制御電圧信号VBは、電力増幅器263のVB端子に入力される。
【0054】
オペアンプ262は、バイアス回路261と例えば一段目の電力増幅器263(1)との間に設けられ、バイアス回路261より出力される基準入力電圧信号VREFの電位を所定の利得に従って増幅する差動増幅器である。オペアンプ262は、かかる増幅機能を、後述する電力増幅器263(1)に含まれるトランジスタTR1(
図4参照)との負帰還回路を構成することで実現する。即ち、オペアンプ262は、非反転入力端子+で基準入力電圧信号VREFを、反転入力端子−で帰還入力信号OPFEDを受け取り、出力端子Yより出力信号VCASを出力する。
【0055】
複数の電力増幅器263のそれぞれは、典型的には、電源線VDDと、接地線GNDの間に設けられる。複数の電力増幅器263は、振幅制御信号SELの制御の下、出力線TX_OUTのオン(導通状態)/オフ(非導通状態)を切り替えて、出力線TX_OUTの電流量をデジタル的に制御する回路である。本例では、複数の電力増幅器263のそれぞれは、出力線TX_OUTに接続されたアンテナ40に対する電流の供給/遮断を行う。本実施形態の複数の電力増幅器263は、出力線TX_OUTのスイッチングを行う電源スイッチドライバINV(
図4参照)の動作に必要な電力を、電源線VDDからではなく出力線TX_OUTから供給する電流回生機能を有し、低消費電力で動作する機能を有する。
【0056】
キャパシタ264及び265は、バイパスコンデンサとして用いられる、例えば、セラミックコンデンサ、或いは容量セルである。キャパシタ264は、オペアンプ262の出力線VCASと接地線GNDとの間に設けられ、キャパシタ265は、電流制御電圧信号VBと接地線GNDとの間に設けられる。キャパシタ264及び265は、これらに接続されている信号線を介する信号に含まれるノイズ成分の除去と、電位の急峻な変動の緩和とを行う。
【0057】
図3、
図4A及び
図4Bは、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器における電力増幅器の構成の一例を示す概略回路図であって、特に、
図3は、
図2に示したデジタル制御電力増幅器26における電力増幅器263の構成を詳細に示す。また、
図4Aは
図3に示した第1の電力増幅器の概略回路図を示しており、
図4Bは
図3に示した第2乃至第Nの電力増幅器の概略回路図を示している。
【0058】
図4Aを参照して、電力増幅器263(1)は、トランジスタTR1と、トランジスタTR2と、トランジスタTR3と、選択回路MUXと、電源スイッチドライバINVとを含んで構成される。
【0059】
トランジスタTR1は、電源スイッチとして機能し、例えば薄膜N型MOSFETを含んで構成される。即ち、トランジスタTR1のドレインD1はトランジスタTR2のソースS2に接続され、ソースS1はトランジスタTR3のドレインD3に接続される。また、トランジスタTR1のゲートG1は、後述する電源スイッチドライバINVの出力端子に接続される。これによって、トランジスタTR1は、出力線TX_OUTへの電流供給のオン/オフを切り替える。なお、本例では、トランジスタTR1は、薄膜N型MOSFETにより構成されているが、これに限られるものでなく、例えば、薄膜P型MOSFETであっても良いし、或いは、厚膜トランジスタ等であっても良い。
【0060】
トランジスタTR2は、例えば厚膜N型MOSFETを含んで構成される。トランジスタTR2のドレインD2は出力線TX_OUTに接続され、ソースS2はトランジスタTR1のドレインD1及びオペアンプ262(
図2参照)の反転入力端子−に接続され、ゲートG2は電源線VCASに接続される。これによって、トランジスタTR2は、オペアンプ262(
図2参照)と負帰還を構成し、基準入力電圧信号VREF(
図2参照)の電位を増幅し、出力線TX_OUTに出力する。また、トランジスタTR2は、オペアンプ262(
図2参照)と負帰還回路を構成することで、カスコード回路としての機能を有する。トランジスタTR2とオペアンプ262とで構成されるカスコード回路は、トランジスタTR2のソースD2の電位を一定範囲の値に保つことにより、トランジスタTR1のドレインD1とソースS1の間、及びトランジスタTR2のドレインD2とソースS2の間に印加される電圧の変化によって生じるチャネル長変調効果による、出力電流の変調効果を抑制する。これにより、デジタル制御電力増幅器26の出力電圧は、振幅制御信号SELにより、比例的に制御されることになる。なお、本例では、トランジスタTR2は、厚膜N型MOSFETにより構成されているが、これに限られるものでなく、例えば、厚膜P型MOSFET等であっても良い。
【0061】
トランジスタTR3は、例えば薄膜N型MOSFETを含んで構成される。即ち、トランジスタTR3のドレインD3はトランジスタTR1のソースS1に接続され、ソースS3は接地線GNDに接続される。また、トランジスタTR3のゲートG3は、バイアス回路261(
図2参照)の電流制御電圧信号VBが入力される。これによって、トランジスタTR3は、ドレインD3に接続される出力線TX_OUTに流れる電流を制御する。なお、本例では、トランジスタTR3は、薄膜N型MOSFETにより構成されているが、これに限られるものでなく、例えば、薄膜P型MOSFETであっても良いし、或いは、厚膜トランジスタ等であっても良い。
【0062】
選択回路MUXは、例えばマルチプレクサであり、トランジスタTR1のオン/オフを切り替える。選択回路MUXの電源端子には、電源線VDDが接続され、接地端子には接地線GNDが接続される。従って、選択回路MUXは、データ入力端子A1及びA0を介して周波数位相制御信号DIN及び接地信号GNDをそれぞれ受け、選択端子SLを介して受ける振幅制御信号SELに従って、周波数位相制御信号DIN又は接地信号GNDを選択し、論理否定を介して出力端子Yより出力する。
【0063】
振幅制御信号SELの電位が電源線VDD、即ち“H”の場合、選択回路MUXは、データ入力端子A1に入力される周波数位相制御信号DINを入力信号として選択する。この場合、選択回路MUXは、周波数位相制御信号DINに論理否定を介させて、出力信号として出力する。即ち、周波数位相制御信号DINの電位が“H”の場合、選択回路MUXは、出力端子Yより“L”を出力し、周波数位相制御信号DINの電位が接地線GNDの電位、即ち“L”の場合、出力端子Yより“H”を出力する。
【0064】
これに対して、振幅制御信号SELの電位が“L”の場合、選択回路MUXは、データ入力端子A0に入力される接地信号GNDを入力信号として選択する。この場合、選択回路MUXは、接地信号GNDに論理否定を介させて、出力信号として出力するため、出力信号の電位は常に“H”となる。
【0065】
電源スイッチドライバINVは、例えばインバータ回路である。電源スイッチドライバINVは、選択回路MUXとトランジスタTR1との間に設けられる。電源スイッチドライバINVは、入力端子で選択回路MUXより送信されるスイッチ制御入力信号SWINを受け、出力端子からスイッチ制御信号SWOUTを出力し、トランジスタTR1のオン/オフを切り替える。また、電源スイッチドライバINVにおいて、電源端子はトランジスタTR1のドレインD1に接続され、接地端子はトランジスタTR1のソースS1に接続される。即ち、本実施形態では、電源スイッチドライバINVは、自身の動作に必要な電力を、自身が駆動するトランジスタTR1の出力線TX_OUTから得ることができるように構成されている。
【0066】
このように、電源スイッチドライバINVの出力端子は、トランジスタTR1のゲートG1に接続されているため、トランジスタTR1は、自身を駆動するための電力を電源線VDDからではなく、出力線TX_OUTから得る。従って、トランジスタTR1における電源線VDDから供給されるスイッチング電流は削減される。
【0067】
また、トランジスタTR1のスイッチング電流が出力電流に加わるため、出力線TX_OUTに流れる出力電流は増加することになる。
【0068】
上述したように、出力変換効率ηは、デジタル制御電力増幅器26の全消費電力と出力電力との比である。従来のデジタル制御電力増幅器は、電源スイッチドライバINVの動作に必要な電力を電源線VDDから供給されるように構成される。これに対して、本実施形態は、電源スイッチドライバINVの動作に必要な電力を出力線TX_OUTから供給されるように構成される。従って、本実施形態によれば、デジタル制御電力増幅器26における消費電力の削減と出力線TX_OUTに流れる出力電流の増加とを実現することで、出力変換効率ηの改善を実現する。また、本実施形態によれば、トランジスタTR1に薄膜トランジスタを使用することが可能であるため、出力線TX_OUTに流れる電流量を制御するトランジスタTR1の高速スイッチング動作を可能とする。
【0069】
図4Bに示す電力増幅器263(2)〜(n)は、
図4Aに示した電力増幅器263(1)の構成から、帰還入力信号OPFEDを伝送する出力線を取り除くことにより得られる。電力増幅器263(2)〜(n)におけるトランジスタTR2のドレインD2は、出力線TX_OUTに接続され、ソースS2はトランジスタTR1のドレインD1に接続され、ゲートG2は電源線VCASに接続される。即ち、電力増幅器263(2)〜(n)におけるトランジスタTR2は、オペアンプ262と負帰還回路とを構成していない。トランジスタTR2は、電力増幅器263(1)におけるトランジスタTR2とオペアンプ262とで構成される負帰還回路が生成するオペアンプ262の出力信号VCASをゲートG2で受けることで、トランジスタTR2のソースD2の電位を一定範囲の値に保ち、トランジスタTR1のドレインD1とソースS1の間、及びトランジスタTR2のドレインD2とソースS2の間に印加される電圧の変化によって生じるチャネル長変調効果による、出力電流の変調効果を抑制する。
【0070】
電力増幅器263(2)〜(n)におけるトランジスタTR1及びTR3、選択回路MUX、並びに電源スイッチドライバINVの機能及び構成に関しては、電力増幅器263(1)における該回路素子と同じであるため、説明を省略する。
【0071】
図5は、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器26における出力電圧と消費電流との関係を数値計算シミュレーションにより示した図である。図中、比較のため、従来構成のデジタル制御電力増幅器における出力電圧と消費電流との関係も示している(点線)。同図に示すように、トランジスタTR1を駆動する電力をトランジスタTR1の出力線TX_OUTから供給するように構成したデジタル制御電力増幅器26における全消費電流は、従来の構成を使用したデジタル制御電力増幅器における全消費電流よりも削減される。
【0072】
本実施形態の電力増幅器263は、
図3等に示した構成に限られず、種々変形が可能である。
図6Aは、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器における電力増幅器263の概略回路構成の他の例を示す図である。即ち、本変形例は、上記実施形態の構成からトランジスタTR2(即ち、厚膜N型MOSFET)が取り除かれた構成を示している。また、上記実施形態のトランジスタTR1及びTR3はそれぞれ、例えば厚膜トランジスタのトランジスタTR1A及びTR3Aとして構成されている。
【0073】
即ち、本変形例でも同様に、電源スイッチドライバINVは、自身の動作に必要な電力を、自身が駆動するトランジスタTR1Aの出力線TX_OUTから得ることができるように、構成されている。
【0074】
また、本変形例のデジタル制御電力増幅器26では、電力増幅器263のトランジスタTR2は取り除かれているため、オペアンプ262及びキャパシタ264は取り除かれるか、或いは電気的に分離されるように構成されることになる。
【0075】
図6Bは、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器における電力増幅器263の概略回路構成のさらなる他の例を示す図である。即ち、本変形例は、上記実施形態の構成からトランジスタTR2が取り除かれ、また、トランジスタTR1及びTR3の配置が入れ替えられた構成を示している。また、上記実施形態のトランジスタTR1及びTR3はそれぞれ、例えば厚膜トランジスタのトランジスタTR1B及びTR3Bとして構成されている。
【0076】
即ち、本変形例でも同様に、電源スイッチドライバINVは、自身の動作に必要な電力を、自身が駆動するトランジスタTR1Bの出力線TX_OUTから得ることができるように、構成されている。
【0077】
また、本変形例のデジタル制御電力増幅器26では、電力増幅器263のトランジスタTR2が省略されているため、オペアンプ262及びキャパシタ264もまた取り除かれる、或いは電気的に分離されるように構成されることになる。
【0078】
図6A及び
図6Bで示した電力増幅器263の構成において、出力線TX_OUTに接続されている全てのトランジスタは厚膜トランジスタであるが、薄膜トランジスタを使用できない場合においても、同様に、上述した全消費電力の削減及び出力変換効率ηの向上を達成することができる。
【0079】
図7は、本発明の実施形態に係るデジタル制御電力増幅器26における電力増幅器263の概略回路構成の他の例を示す図である。即ち、本実施形態においては、上記実施形態のトランジスタTR1が、出力線TX_OUTに対して並列的に複数個接続されるように構成される。また、本実施形態においては、電源スイッチドライバINVの出力信号は、複数のトランジスタTR1のそれぞれのゲートG1に対して、例えば信号遅延器2631を介することによって、段階的に遅れて到達する。
【0080】
より具体的には、電源スイッチドライバINVは、例えばインバータ回路である。電源スイッチドライバINVは、選択回路MUXとトランジスタTR1(1)との間に設けられる。電源スイッチドライバINVは、入力端子で選択回路MUXより送信されるスイッチ制御入力信号SWINを受け、出力端子からスイッチ制御信号SWOUT(1)を、トランジスタTR1(1)のゲート及び信号遅延器2631(1)に対して出力する。
【0081】
信号遅延器2631は、例えば信号配線やバッファ回路であり、自身に入力された信号を所定の時間が経過した後に出力する機能を有する。信号遅延器2631(1)は、電源スイッチドライバINVより出力されるスイッチ制御信号SWOUT(1)を受け、所定の時間が経過した後、トランジスタTR1(2)及び信号遅延器2631(2)に対して出力する。信号遅延器2631(2)は、信号遅延器2631(1)より出力されるスイッチ制御信号SWOUT(2)を受け、所定の時間が経過した後、トランジスタTR1(3)及び信号遅延器2631(3)に対して出力する。このように、本実施形態において、信号遅延器(n)は、信号遅延器(n-1)の出力信号を受け、所定の時間が経過した後、トランジスタTR1(n+1)及び信号遅延器(n+1)に出力するように構成される。
【0082】
トランジスタTR1は、電源スイッチとして機能し、例えば薄膜N型MOSFETを含んで構成される。即ち、トランジスタTR1のドレインD1はトランジスタTR2のソースS2に接続され、ソースS1はトランジスタTR3のドレインD3に接続される。また、トランジスタTR1(1)のゲートG1(1)は、スイッチ駆動回路INVの出力端子に接続される。トランジスタTR1(2)のゲートG1(2)は、信号遅延器2631(1)の出力端子に接続され、トランジスタTR1(3)のゲートG1(3)は、信号遅延器2631(2)の出力端子に接続される。このように、本実施形態において、トランジスタTR1(n)は、ドレインD1(n)はトランジスタTR2のソースS2に接続され、ソースS1(n)はトランジスタTR3のドレインD3に接続され、ゲートG1(n)は信号遅延器(n-1)の出力端子に接続される。なお、本例では、トランジスタTR1は、薄膜N型MOSFETにより構成されているが、これに限られるものでなく、例えば、薄膜P型MOSFETであっても良いし、或いは、厚膜トランジスタ等であっても良い。
【0083】
トランジスタTR2、トランジスタTR3、及び選択回路MUXの機能及び構成に関しては、上記実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0084】
本実施形態は、デジタル制御電力増幅器26が出力信号として電流短形信号を出力する度に発生する出力線TX_OUTにおける電流高調波を抑制する機能を有する。即ち、本実施形態においては、電源スイッチドライバINVから出力される信号が、幾つかの信号遅延器2631(1)〜(n-1)を介して、複数のトランジスタTR1(1)〜(n)のそれぞれのゲートG1(1)〜(n)に段階的に遅れて到達することで、複数のトランジスタTR1(1)〜(n)は、それぞれ信号遅延器2631が有する遅延量の時間分ずつ遅れたタイミングで駆動する。
【0085】
これにより、出力線TX_OUTから見た場合の、複数のトランジスタTR1(1)〜(n)の相互コンダクタンスの合計値は段階的に変化し、出力線TX_OUTに流れる出力電流の急峻な変化は緩和される。従って、出力線TX_OUTに流れる電流の急峻な変化が緩和されるため、出力線TX_OUTに注入されるパルス状電流高調波の発生は抑制される。
【0086】
図8は、本発明の一実施形態に係るデジタル制御電力増幅器における、出力電流と経過時間との関係を数値計算シミュレーションにより示した図である。同図に示すように、出力線TX_OUTに対して、トランジスタTR1を並列的に複数個接続し、それぞれのトランジスタTR1(1)〜(n)を段階的に駆動させることで、デジタル制御電力増幅器26が出力線TX_OUTに、出力信号として電流短形信号を出力する際に発生する電流高調波の発生は、抑制されることがわかる。
【0087】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0088】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0089】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。