【解決手段】短絡保護回路14は、出力トランジスタ11(トランジスタM10)のソース・ドレイン間に直列接続されたトランジスタM11及び抵抗R11と、出力トランジスタ11のソース・ゲート間に接続されてトランジスタM11と共にカレントミラーを形成するトランジスタM12と、を有する。
前記出力トランジスタと同期して前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの電流経路を導通/遮断する第3トランジスタをさらに有することを特徴とする請求項1に記載の短絡保護回路。
前記ドライバ回路は、前記出力トランジスタのゲートまたはベースとオン電圧の印加端との間に挿入された第2抵抗を含むことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
前記出力トランジスタと前記第1〜第3トランジスタは、いずれもPチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタまたはpnp型バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の半導体装置。
前記出力トランジスタと前記第1〜第3トランジスタは、いずれもNチャネル型MOS電界効果トランジスタまたはnpn型バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、電子機器の第1実施形態を示す図である。第1実施形態の電子機器Xは、イネーブル信号ENを生成する制御装置1(例えばマイコン)と、イネーブル信号ENの入力を受け付ける半導体装置10と、半導体装置10に接続される負荷2と、を有する。
【0020】
半導体装置10は、電源電圧(ここでは入力電圧Vin)の印加端と負荷2との間を導通/遮断するハイサイドロードスイッチICであり、出力トランジスタ11と、ゲートドライバ12と、レベルシフタ13と、短絡保護回路14と、を集積化して成る。
【0021】
また、半導体装置10は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T11〜T14を有する。半導体装置10の外部において、外部端子(入力ピン)T11は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。外部端子(出力ピン)T12は、負荷2に接続されている。外部端子(グラウンドピン)T13は、接地端GNDに接続されている。外部端子(イネーブルピン)T14は、制御装置1に接続されている。
【0022】
出力トランジスタ11は、外部端子T11と外部端子T12との間に接続されたPチャネル型MOS電界効果トランジスタM10であり、出力電流Ioutの流れる電流経路を導通/遮断する。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM10のソースは、外部端子T11に接続されている。トランジスタM10のドレインは、外部端子T12に接続されている。トランジスタM10のゲートは、ゲートドライバ12の出力端(ゲート電圧V12の印加端)に接続されている。トランジスタM10は、ゲート電圧V12がローレベルであるときにオンし、ゲート電圧V12がハイレベルであるときにオフする。
【0023】
ゲートドライバ12は、イネーブル電圧V11(レベルシフト済みのイネーブル信号ENに相当)応じてゲート電圧V12(出力トランジスタ11の制御信号に相当)を生成する回路ブロックであり、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM14と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM15と、抵抗R12と、を含む。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM14のソースは、外部端子T11に接続されている。トランジスタM14のドレインと抵抗R12の第1端は、いずれもトランジスタM10のゲートに接続されている。抵抗R12の第2端は、トランジスタM15のドレインに接続されている。トランジスタM15のソースは、外部端子T13に接続されている。トランジスタM14及びM15のゲートは、いずれもレベルシフタ13の出力端(イネーブル電圧V11の印加端)に接続されている。
【0024】
イネーブル電圧V11がハイレベルであるときには、トランジスタM14がオフして、トランジスタM15がオンするので、ゲート電圧V12はローレベルとなる。一方、イネーブル電圧V11がローレベルであるときには、トランジスタM14がオンして、トランジスタM15がオフするので、ゲート電圧V12はハイレベルとなる。すなわち、ゲートドライバ12は、イネーブル電圧V11を論理反転させてゲート電圧V12を生成するインバータとして機能する。
【0025】
なお、抵抗R12は、出力トランジスタ11のゲートとオン電圧(ここでは接地電圧GND)の印加端との間に挿入されており、ゲート電圧V12をローレベルに引き下げる際(すなわちトランジスタM10をオンさせる際)のスルーレート調整素子として機能するだけでなく、短絡保護回路14の一部(短絡電流設定素子)としても機能する。この点については後ほど詳述する。
【0026】
レベルシフタ13は、外部端子T11と外部端子T13との間に接続されており、第1振幅(例えば0V−3.3V)のイネーブル信号ENを第2振幅(例えば0V−5V)のイネーブル電圧V11に変換する。
【0027】
短絡保護回路14は、外部端子T12の地絡(接地端GNDまたはそれに準ずる低電位端への短絡、図中の破線を参照)が発生したときに、出力トランジスタ11を過電流から保護するための回路ブロックであり、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM11及びM12と、抵抗R11と、を含む。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM11及びM12のソースは、いずれも外部端子T11に接続されている。トランジスタM11及びM12のゲートは、いずれもトランジスタM11のドレインに接続されている。トランジスタM11のドレインは、抵抗R11の第1端に接続されている。抵抗R11の第2端は、外部端子T12に接続されている。トランジスタM12のドレインは、トランジスタM10のゲートに接続されている。
【0028】
このように、短絡保護回路14は、出力トランジスタ11(トランジスタM10)のソース・ドレイン間に直列接続されたトランジスタM11及び抵抗R11と、出力トランジスタ11のソース・ゲート間に接続されてトランジスタM11と共にカレントミラーを形成するトランジスタM12と、を含む。以下、短絡保護回路14による短絡保護動作について詳細に説明する。
【0029】
イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに立ち上げられると、イネーブル電圧V11がハイレベルとなり、ゲート電圧V12がローレベルとなる。その結果、出力トランジスタ11がオンとなるので、外部端子T11と外部端子T12との間が導通される。従って、外部端子T12に地絡が生じていなければ、外部端子T12に印加される出力電圧Voutは、ほぼ入力電圧Vinと一致する。このとき、トランジスタM11及びM12のゲート・ソース間電圧(=Vin−Vout)はほぼ0Vとなるので、トランジスタM11及びM12はオフとなり、短絡保護回路14には電流が流れない。従って、通常動作時における短絡保護回路14の消費電流は0μAである。
【0030】
出力トランジスタ11に大電流が流れたり外部端子T12に地絡が生じたりして、出力電圧Voutが低下し、トランジスタM11のゲート・ソース間電圧(=Vin−Vout)がトランジスタM11のオンスレッショルド電圧Vth11よりも高くなると、トランジスタM11にドレイン電流I11が流れ始める。なお、ドレイン電流I11の電流値は、トランジスタM11のゲート・ソース間電圧(=Vin−Vout)、トランジスタM11のオンスレッショルド電圧Vth11、及び、抵抗R11の抵抗値で決定される。なお、短絡保護動作時の消費電流を抑制するためには、検出精度に支障のない範囲内でドレイン電流I11を小さく設定しておくことが望ましい。
【0031】
また、トランジスタM11とトランジスタM12は、カレントミラーを形成しているので、トランジスタM11にドレイン電流I11が流れ始めると、これに応じたミラー電流I12がトランジスタM12に流れ始める。このミラー電流I12は、抵抗R12を介して流れるので、出力トランジスタ11のゲート電圧V12は、接地電圧GNDよりもミラー電流I12に応じた電圧値(=I12×R12)だけ高くなる。その結果、出力トランジスタ11の導通度が低下するので、出力電流Ioutを抑制することが可能となる。
【0032】
次に、短絡電流値(出力電流Ioutの上限値Ilimit)の設定手法について詳細な説明を行う。外部端子T12の地絡時にはVout=0Vとなるので、次の(1)式が成立する。なお、(1)式において、Vgs10はトランジスタM10のゲート・ソース間電圧であり、Vgs11はトランジスタM11のゲート・ソース間電圧である。また、(1)式が成立するための前提として、トランジスタM15のソース・ドレイン間電圧Vdsは無視できるものとする。
【0034】
ここで、R11×I11=R12×I12となるように、トランジスタM11及びM12のミラー比や、抵抗R11及びR12の抵抗値を設定すると、Vgs11=Vgs10という関係が成立する。
【0035】
この場合、トランジスタM10に流れる出力電流IoutとトランジスタM11に流れるドレイン電流I11は、各々のチャネルサイズ(W/L)に比例するので、次の(2)式が成立する。なお、(2)式において、L10及びW10はトランジスタM10のゲート長及びゲート幅であり、L11及びW11はトランジスタM11のゲート長及びゲート幅である。
【0037】
また、ドレイン電流I11は、次の(3)式で表される。なお、(3)式中のVth11は、トランジスタM11のオンスレッショルド電圧である。
【0039】
従って、トランジスタM10のチャネルサイズ(ゲート長L10及びゲート幅W10)を任意に決定した後、トランジスタM11のチャネルサイズ(ゲート長L11やゲート幅W11)や抵抗R11の抵抗値を調整することにより、短絡電流値(出力電流Ioutの上限値Ilimit)を所望の目標値に合わせ込むことが可能となる。
【0040】
ただし、外部端子T12の地絡先が接地電圧GND以外(例えば低電圧VL)である場合には、先の(1)式が成立しなくなる。従って、外部端子T12が接地電圧GND以外の低電位端に短絡する恐れがある場合には、入力電圧Vinと低電圧VLとの関係を考慮に入れて短絡電流値を設定することが望ましい。
【0041】
第1実施形態の短絡保護回路14であれば、トランジスタM11のオンスレッショルド電圧Vth11を利用して、トランジスタM10のソース・ドレイン間電圧(≒Vin−Vout)を監視することにより、最小限の素子追加で短絡保護動作を実現することが可能となる。また、先にも述べたように、第1実施形態の短絡保護回路14であれば、通常動作時の消費電流を0μAに抑えることも可能となる。従って、超小型・低消費電力のハイサイドロードスイッチICにも短絡保護機能を組み込むことができるようになるので、短絡保護機能を持たない既存製品に対して明確な優位性を示すことが可能となる。
【0042】
図2は、第1実施形態における短絡保護動作の一例を示すV/I特性図である。短絡保護回路14は、図中の実線で示したV/I特性(いわゆるフの字特性)を実現するように出力トランジスタ11の導通度を制御する必要がある。このようなV/I特性を実現するためには、出力電流Ioutが流れるトランジスタM10と、短絡検出用のドレイン電流I11が流れるトランジスタM11との相対精度(ペア性)を高めることが重要となる。
【0043】
しかしながら、トランジスタM10とトランジスタM11とは、そのサイズ比が非常に大きい(例えば10万:1)ので、先のV/I特性は製造バラツキによる影響を受けやすい。仮に、図中の破線で示したように、出力電圧Voutが0Vであるときに出力電流Ioutを全く流せなくなるほどゲート電圧V12を引き上げてしまうと、イネーブル信号ENをハイレベルに立ち上げてもトランジスタM10をオンさせることができなくなるので、起動不良の原因となる(
図3の破線を参照)。
【0044】
従って、第1実施形態の短絡保護回路14を用いて、
図2の実線で示した所望のV/I特性を得るためには、レーザトリミングなどによって短絡保護回路14の素子定数(トランジスタM11のオンスレッショルド電圧Vth11や抵抗R11の抵抗値など)を微調整することが望ましい。
【0045】
<第2実施形態>
図4は、電子機器の第2実施形態を示す図である。第2実施形態の電子機器Xは、先の第1実施形態と基本的に同様の構成であり、短絡保護回路14の構成要素としてPチャネル型MOS電界効果トランジスタM13を追加した点に特徴を有する。そこで、第1実施形態と同様の構成要素については、
図1と同一符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0046】
トランジスタM13は、出力トランジスタ11(トランジスタM10)と同期してトランジスタM11及びM12の電流経路を導通/遮断する。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM13のソースは、外部端子T11に接続されている。トランジスタM13のドレインは、トランジスタM11及びM12のソースに接続されている。トランジスタM13のゲートは、トランジスタM10のゲートに接続されている。
【0047】
このように、トランジスタM11及びM12のソースと外部端子T11との間に挿入されたトランジスタM13は、トランジスタM10とゲートを共有している。そのため、出力電圧Voutが低いときに短絡保護回路14がドレイン電流I12を流してゲート電圧V12を引き上げると、トランジスタM10の導通度が下がるだけでなく、トランジスタM13の導通度も低下する。その結果、短絡保護回路14への電流供給が制限されてドレイン電流I12が小さくなるので、出力電流Ioutを全く流せなくなるほどゲート電圧V12を引き上げてしまうことがなくなる。
【0048】
従って、第2実施形態の短絡保護回路14であれば、素子定数の微調整を要することなく所望のV/I特性を実現して、起動不良(トランジスタM10の完全オフ)を解消することが可能となる(
図2及び
図3の実線を参照)。
【0049】
<第3実施形態>
図5は、電子機器の第3実施形態を示す図である。第3実施形態の電子機器Xは、先の第1実施形態や第2実施形態と同様、イネーブル信号ENを生成する制御装置1(例えばマイコン)と、イネーブル信号ENの入力を受け付ける半導体装置20と、半導体装置20に接続される負荷2と、を有する。
【0050】
半導体装置20は、負荷2と接地端GNDとの間を導通/遮断するローサイドロードスイッチICであり、出力トランジスタ21と、ゲートドライバ22と、レベルシフタ23と、短絡保護回路24と、を集積化して成る。
【0051】
また、半導体装置20は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T21〜T24を有する。半導体装置20の外部において、外部端子(グラウンドピン)T21は、接地端GNDに接続されている。外部端子(出力ピン)T22は、負荷2に接続されている。外部端子(入力ピン)T23は、電源電圧(ここでは入力電圧Vin)の印加端に接続されている。外部端子(イネーブルピン)T24は、制御装置1に接続されている。
【0052】
出力トランジスタ21は、外部端子T21と外部端子T22との間に接続されたNチャネル型MOS電界効果トランジスタM20であり、出力電流Ioutの流れる電流経路を導通/遮断する。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM20のソースは、外部端子T21に接続されている。トランジスタM20のドレインは、外部端子T22に接続されている。トランジスタM20のゲートは、ゲートドライバ22の出力端(ゲート電圧V22の印加端)に接続されている。トランジスタM20は、ゲート電圧V22がハイレベルであるときにオンし、ゲート電圧V22がローレベルであるときにオフする。
【0053】
ゲートドライバ22は、イネーブル電圧V21(レベルシフト済みのイネーブル信号ENに相当)応じてゲート電圧V22(出力トランジスタ21の制御信号に相当)を生成する回路ブロックであり、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM24と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM25と、抵抗R22と、を含む。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM24のソースは、外部端子T21に接続されている。トランジスタM24のドレインと抵抗R22の第1端は、いずれもトランジスタM20のゲートに接続されている。抵抗R22の第2端は、トランジスタM25のドレインに接続されている。トランジスタM25のソースは、外部端子T23に接続されている。トランジスタM24及びM25のゲートは、いずれもレベルシフタ23の反転出力端(イネーブル電圧V21の印加端)に接続されている。
【0054】
イネーブル電圧V21がローレベルであるときには、トランジスタM24がオフして、トランジスタM25がオンするので、ゲート電圧V22はハイレベルとなる。一方、イネーブル電圧V21がハイレベルであるときには、トランジスタM24がオンして、トランジスタM25がオフするので、ゲート電圧V22はローレベルとなる。すなわち、ゲートドライバ22は、イネーブル電圧V21を論理反転させてゲート電圧V22を生成するインバータとして機能する。
【0055】
なお、抵抗R22は、出力トランジスタ21のゲートとオン電圧(ここでは入力電圧Vin)の印加端との間に挿入されており、ゲート電圧V22をハイレベルに引き上げる際(すなわちトランジスタM20をオンさせる際)のスルーレート調整素子として機能するだけでなく、短絡保護回路24の一部(短絡電流設定素子)としても機能する。この点については後ほど詳述する。
【0056】
レベルシフタ23は、外部端子T21と外部端子T23との間に接続されており、第1振幅(例えば0V−3.3V)のイネーブル信号ENを第2振幅(例えば0V−5V)のイネーブル電圧V21に変換する。なお、レベルシフタ23の出力端は反転形式とされており、イネーブル信号ENの論理レベルを反転させたイネーブル電圧V21を出力する。
【0057】
短絡保護回路24は、外部端子T22の天絡(入力電圧Vinの印加端またはそれに準ずる高電位端への短絡、図中の破線を参照)が発生したときに、出力トランジスタ21を過電流から保護するための回路ブロックであり、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM21及びM22と、抵抗R21と、を含む。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM21及びM22のソースは、いずれも外部端子T21に接続されている。トランジスタM21及びM22のゲートは、いずれもトランジスタM21のドレインに接続されている。トランジスタM21のドレインは、抵抗R21の第1端に接続されている。抵抗R21の第2端は、外部端子T22に接続されている。トランジスタM22のドレインは、トランジスタM20のゲートに接続されている。
【0058】
このように、短絡保護回路24は、出力トランジスタ21(トランジスタM20)のソース・ドレイン間に直列接続されたトランジスタM21及び抵抗R21と、出力トランジスタ21のソース・ゲート間に接続されてトランジスタM21と共にカレントミラーを形成するトランジスタM22と、を含む。以下、短絡保護回路24による短絡保護動作について詳細に説明する。
【0059】
イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに立ち上げられると、イネーブル電圧V21がローレベルとなり、ゲート電圧V22がハイレベルとなる。その結果、出力トランジスタ21がオンとなるので、外部端子T21と外部端子T22との間が導通される。従って、外部端子T22に天絡が生じていなければ、外部端子T22に印加される出力電圧Voutは、ほぼ接地電圧GNDと一致する。このとき、トランジスタM21及びM22のゲート・ソース間電圧(=Vout−GND)はほぼ0Vとなるので、トランジスタM21及びM22はオフとなり、短絡保護回路24には電流が流れない。従って、通常動作時における短絡保護回路24の消費電流は0μAである。
【0060】
出力トランジスタ21に大電流が流れたり外部端子T22に天絡が生じたりして、出力電圧Voutが上昇し、トランジスタM21のゲート・ソース間電圧(=Vout−GND)がトランジスタM21のオンスレッショルド電圧Vth21よりも高くなると、トランジスタM21にドレイン電流I21が流れ始める。なお、ドレイン電流I21の電流値は、トランジスタM21のゲート・ソース間電圧(=Vout−GND)、トランジスタM21のオンスレッショルド電圧Vth21、及び、抵抗R21の抵抗値で決定される。なお、短絡保護動作時の消費電流を抑制するためには、検出精度に支障のない範囲内でドレイン電流I21を小さく設定しておくことが望ましい。
【0061】
また、トランジスタM21とトランジスタM22は、カレントミラーを形成しているので、トランジスタM21にドレイン電流I21が流れ始めると、これに応じたミラー電流I22がトランジスタM22に流れ始める。このミラー電流I22は、抵抗R22を介して流れるので、出力トランジスタ21のゲート電圧V22は、入力電圧Vinよりもミラー電流I22に応じた電圧値(=I22×R22)だけ低くなる。その結果、出力トランジスタ21の導通度が低下するので、出力電流Ioutを抑制することが可能となる。
【0062】
次に、短絡電流値(出力電流Ioutの上限値Ilimit)の設定手法について詳細な説明を行う。外部端子T22の天絡時(入力電圧Vinの印加端への短絡時)には、Vout=Vinとなるので、次の(4)式が成立する。なお、(4)式において、Vgs20はトランジスタM20のゲート・ソース間電圧であり、Vgs21はトランジスタM21のゲート・ソース間電圧である。また、(4)式が成立するための前提として、トランジスタM25のソース・ドレイン間電圧Vdsは無視できるものとする。
【0064】
ここで、R21×I21=R22×I22となるように、トランジスタM21及びM22のミラー比や、抵抗R21及びR22の抵抗値を設定すると、Vgs21=Vgs20という関係が成立する。
【0065】
この場合、トランジスタM20に流れる出力電流IoutとトランジスタM21に流れるドレイン電流I21は、各々のチャネルサイズ(W/L)に比例するので、次の(5)式が成立する。なお、(5)式において、L20及びW20はトランジスタM20のゲート長及びゲート幅であり、L21及びW21はトランジスタM21のゲート長及びゲート幅である。
【0067】
また、ドレイン電流I21は、次の(6)式で表される。なお、(6)式中のVth21は、トランジスタM21のオンスレッショルド電圧である。
【0069】
従って、トランジスタM20のチャネルサイズ(ゲート長L20及びゲート幅W20)を任意に決定した後、トランジスタM21のチャネルサイズ(ゲート長L21やゲート幅W21)や抵抗R21の抵抗値を調整することにより、短絡電流値(出力電流Ioutの上限値Ilimit)を所望の目標値に合わせ込むことが可能となる。
【0070】
ただし、外部端子T22の天絡先が入力電圧Vin以外(例えば高電圧VH)である場合には、先の(4)式が成立しなくなる。従って、外部端子T22が入力電圧Vin以外の高電位端に短絡する恐れがある場合には、入力電圧Vinと高電圧VHとの関係を考慮に入れて短絡電流値を設定することが望ましい。
【0071】
第3実施形態の短絡保護回路24であれば、トランジスタM21のオンスレッショルド電圧Vth21を利用して、トランジスタM20のソース・ドレイン間電圧(≒Vout−GND)を監視することにより、最小限の素子追加で短絡保護動作を実現することが可能となる。また、先にも述べたように、第3実施形態の短絡保護回路24であれば、通常動作時の消費電流を0μAに抑えることも可能となる。従って、超小型・低消費電力のローサイドロードスイッチICにも短絡保護機能を組み込むことができるようになるので、短絡保護機能を持たない既存製品に対して明確な優位性を示すことが可能となる。
【0072】
図6は、第3実施形態における短絡保護動作の一例を示すV/I特性図である。短絡保護回路24は、図中の実線で示したV/I特性(いわゆる逆フの字特性)を実現するように出力トランジスタ21の導通度を制御する必要がある。このようなV/I特性を実現するためには、出力電流Ioutが流れるトランジスタM20と短絡検出用のドレイン電流I21が流れるトランジスタM21との相対精度(ペア性)を高めることが重要となる。
【0073】
しかしながら、トランジスタM20とトランジスタM21とは、そのサイズ比が非常に大きい(例えば10万:1)ので、先のV/I特性は製造バラツキによる影響を受けやすい。仮に、図中の破線で示したように、出力電圧Voutが入力電圧Vinと等しいときに出力電流Ioutを全く流せなくなるほどゲート電圧V22を引き下げてしまうと、イネーブル信号ENをハイレベルに立ち上げてもトランジスタM20をオンさせることができなくなるので、起動不良の原因となる(
図7の破線を参照)。
【0074】
従って、第3実施形態の短絡保護回路24を用いて、
図6の実線で示した所望のV/I特性を得るためには、レーザトリミングなどによって短絡保護回路24の素子定数(トランジスタM21のオンスレッショルド電圧Vth21や抵抗R21の抵抗値など)を微調整することが望ましい。
【0075】
<第4実施形態>
図8は、電子機器の第4実施形態を示す図である。第4実施形態の電子機器Xは、先の第3実施形態と基本的に同様の構成であり、短絡保護回路24の構成要素としてNチャネル型MOS電界効果トランジスタM23を追加した点に特徴を有する。そこで、第3実施形態と同様の構成要素については、
図5と同一符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第4実施形態の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0076】
トランジスタM23は、出力トランジスタ21(トランジスタM20)と同期してトランジスタM21及びM22の電流経路を導通/遮断する。接続関係について具体的に述べる。トランジスタM23のソースは、外部端子T21に接続されている。トランジスタM23のドレインは、トランジスタM21及びM22のソースに接続されている。トランジスタM23のゲートは、トランジスタM20のゲートに接続されている。
【0077】
このように、トランジスタM21及びM22のソースと外部端子T21との間に挿入されたトランジスタM23は、トランジスタM20とゲートを共有している。そのため、出力電圧Voutが高いときに短絡保護回路24がドレイン電流I22を流してゲート電圧V22を引き下げると、トランジスタM20の導通度が下がるだけでなく、トランジスタM23の導通度も低下する。その結果、短絡保護回路24への電流供給が制限されてドレイン電流I22が小さくなるので、出力電流Ioutを全く流せなくなるほどゲート電圧V22を引き下げてしまうことがなくなる。
【0078】
従って、第4実施形態の短絡保護回路24であれば、素子定数の微調整を要することなく所望のV/I特性を実現して、起動不良(トランジスタM20の完全オフ)を解消することが可能となる(
図6及び
図7の実線を参照)。
【0079】
<ゲートドライバ>
図9は、ゲートドライバ12の一変形例を示す回路図である。なお、以下で説明する変形例については、ゲートドライバ22にも適用し得るが、説明の便宜上、ここではゲートドライバ12のみを例に挙げて説明する。
【0080】
(A)欄に示したゲートドライバ12は、
図1ないし
図4の抵抗R12を省略した構成とされている。このように、オン時のスルーレートを調整する必要がない場合には、抵抗R12を省略しても構わない。ただし、当該構成を採用した場合には、ドレイン電流I12によるゲート電圧V12の変化量が小さくなる点に留意が必要である。
【0081】
(B)欄に示したゲートドライバ12は、
図1ないし
図4の抵抗R12に加えて、トランジスタM14のドレインとゲート電圧V11の印加端との間に、抵抗R13を別途挿入した構成とされている。このような構成とすることにより、オン時のスルーレートだけでなくオフ時のスルーレートを調整することが可能となる。
【0082】
(C)欄に示したゲートドライバ12は、
図1ないし
図4の抵抗R12に代えて、トランジスタM14及びM15の接続ノードとゲート電圧V11の印加端との間に、抵抗R14を挿入した構成とされている。このような構成とすることにより、単一の抵抗R14を用いてオン時のスルーレートとオフ時のスルーレートを共に調整することが可能となる。
【0083】
(D)欄に示したゲートドライバ12は、
図1ないし
図4のトランジスタM14及びM15に代えて、電流源CS1及びCS2を用いた構成とされている。電流源CS1は、インバータINVで生成される反転イネーブル信号ENBに応じてソース電流を生成する。一方、電流源CS2は、イネーブル信号ENに応じてシンク電流を生成する。ゲート電圧V11は、ソース電流とシンク電流との差分に応じて変動する。
【0084】
このように、ゲートドライバ12については、短絡保護回路14の動作に支障を生じない範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【0085】
<電子機器の具体例>
図10及び
図11は、それぞれ、スマートフォンX1及びデジタルスチルカメラX2の外観図である。スマートフォンX1及びデジタルスチルカメラX2は、いずれも電子機器Xの一具体例である。電子機器Xの他の具体例としては、タブレット型情報端末、ノート型パソコン、デジタル家電、及び、携帯電話などを挙げることができる。
【0086】
例えば、スマートフォンX1及びデジタルスチルカメラX2の電源スイッチとして、先のロードスイッチIC10及び20を用いることにより、機器の小型化や省電力化を阻害することなく出力短絡時の信頼性を高めることが可能となる。
【0087】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記した実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタをnpn型バイポーラトランジスタに置き換えたり、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタをpnp型バイポーラトランジスタに置き換えたりすることは任意である。なお、MOS電界効果トランジスタをバイポーラトランジスタに置き換える場合には、先の説明におけるゲート、ソース、及び、ドレインをそれぞれベース、エミッタ、及び、コレクタに読み替えればよい。
【0088】
また、上記実施形態では、出力トランジスタ、ドライバ回路、及び、短絡保護回路を一組だけ有するローサイドロードスイッチICないしはハイサイドロードスイッチICを例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば、出力トランジスタ、ドライバ回路、及び、短絡保護回路を複数組有するパワーマネジメントICにも本発明を好適に適用することが可能である。
【0089】
このように、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。