(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-107053(P2015-107053A)
(43)【公開日】2015年6月8日
(54)【発明の名称】超音波モータおよび同超音波モータを駆動するための方法
(51)【国際特許分類】
H02N 2/00 20060101AFI20150512BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20150512BHJP
【FI】
H02N2/00 C
H01L41/09
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-242018(P2014-242018)
(22)【出願日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】10 2013 224 569.6
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウラディミール ビシュネウスキー
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ ビシュネウスキー
【テーマコード(参考)】
5H680
【Fターム(参考)】
5H680BB02
5H680BB15
5H680CC04
5H680CC06
5H680DD02
5H680DD15
5H680DD27
5H680DD65
5H680DD66
5H680DD73
5H680DD88
5H680DD92
5H680DD98
5H680EE12
5H680FF32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2つの被駆動構成体を相互に独立して移動させうる超音波モータを提供する。
【解決手段】圧電材料からなるアクチュエータ1の一方の端面に第1角距離を持って位置する第1構成要素に摩擦接触する摩擦構成体の第1群が配置される。アクチュエータ1の他方の端面に第2角距離隔を持って位置し、第2駆動する構成要素と摩擦接触する摩擦構成体の第2群が配置される。アクチュエータ1の内側周面上に基準電極17が、外周面上には励起電極19が配置され、励起電極19は基準電極17と、両電極との間に配置される圧電材料と超音波定在波の発振器をなす。発振器には超音波定在波を発生させるため、電圧が印加される。第1群の摩擦構成体が第2群の摩擦構成体に対して第3の角距離を持って配置され、第3角距離は第1及び第2角距離より小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料からなる、中空円筒または環状の超音波アクチュエータを備える超音波モータであって、該超音波アクチュエータの一方の平面状端部面に、各々1つの第1の角距離の間隔を持って位置し、また駆動するべき第1の構成要素と摩擦接触しているところの、摩擦構成要素の第1の群が配置されていて、ならびに該超音波アクチュエータの他方の平面状端部面に、各々1つの第2の角距離の間隔を持って位置し、また第2の駆動するべき構成要素と摩擦接触しているところの、摩擦構成要素の第2群が配置されていて、ならびに、該超音波アクチュエータの内側周面上に基準電極が配置され、かつ該超音波アクチュエータの外側周面上に励起電極が配置されていて、各々の該励起電極は、該基準電極と、両電極の間に配置されている圧電材料と共に超音波定在波の発振器を形成し、該発振器には、該超音波アクチュエータ内に超音波定在波を発生させるために、電圧を印加することが可能な、超音波モータにおいて、第1群の摩擦構成要素が第2群の摩擦構成要素に対して第3の角距離分のずれを持って配置され、この場合第3の角距離は第1の角距離より小さく、また第2の角距離より小さいことを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記第1の角距離が前記第2の角距離に対応することを特徴とする、請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記第3の角距離が、前記第1の角距離の4分の1、または前記第2の角距離の4分の1に対応することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記発振器が、それぞれ励起電極と基準電極の交互の、複数の層を備え、この場合に発振器の2つの隣接する電極層の間に1つの圧電性材料の層が配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記第1の被駆動構成要素のみでなく前記第2の被駆動構成要素も回転運動に至らせることが可能であり、また前記第1の被駆動構成要素と前記第2の被駆動構成要素の重心がそれぞれの回転軸と一致することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波モータ。
【請求項6】
縦方向および横方向の振動成分を持つ前記第1の超音波定在波を、前記超音波アクチュエータ内で励振するために前記発振器の前記電極に1つの電圧を印加し、ここで第1の超音波定在波は、前記第2群の摩擦構成要素が前記第2の被駆動構成要素を運動させることなく、前記第1群の摩擦構成要素のみが前記第1の被駆動構成要素を運動させるように形成され、または、縦方向および横方向の振動成分を持つ前記第2の超音波定在波を、前記超音波アクチュエータ内で励振するために前記発振器の前記電極に1つの電圧を印加し、ここで前記第2の超音波定在波は、前記第1群の摩擦構成要素が前記第1の被駆動構成要素を運動させることなく、前記第2群の摩擦構成要素のみが前記第2の被駆動構成要素を運動させるように形成され、その結果、前記第1の被駆動構成要素と前記第2の被駆動構成要素を独立して駆動することを可能にすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波モータを駆動するための方法。
【請求項7】
前記第1の超音波定在波と前記第2の超音波定在波が同一であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の超音波定在波と前記第2の超音波定在波との間に、波長の4分の1の位相のずれがあることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1乃至5に記載の超音波モータに関し、また請求項6乃至8に記載の同超音波モータを駆動するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、少なくとも1つの平面状端部面上に1つの摩擦層または複数の摩擦構成要素が配置されていて、摩擦構成要素が回転式に駆動される構成要素(ロータ)と摩擦接触している、圧電性中空円筒状アクチュエータを備える超音波モータが周知である。この文献の
図16によれば、アクチュエータの両方の平面状端部面に摩擦構成要素を配置することができるという。この超音波モータを駆動するための方法では、アクチュエータを電気的に励振することによって、関連を持った接線・軸方向振動モード状態にアクチュエータを置き、この際に、相応する振動が1つの摩擦層ないしは複数の摩擦層または摩擦構成要素に伝達され、その結果最終的に1つのロータないしは複数のロータが駆動される。
【0003】
特許文献1において公知である超音波モータの場合は、2つのロータが、アクチュエータの、対向して位置する端部面上の摩擦層ないしは摩擦構成要素と、摩擦接触するが、この場合は2つのロータを同期に駆動することのみが可能である。これに対して、超音波アクチュエータの、対向して位置する端部面上に配置されている両方のロータを、独立して駆動することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7218031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これゆえに本発明の課題は、前述の従来技術をもとにして、唯一の中空円筒状超音波アクチュエータで、2つの被駆動構成要素を相互に独立して移動させることを可能にする、超音波モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの課題は、請求項1に記載の超音波モータによって解決され、これに続く従属項は少なくとも目的に沿った実施例および発展例を含む。
それによれば、中空円筒または環状の超音波アクチュエータを備える超音波モータは、圧電性の材料を出発点とし、超音波アクチュエータの一方の平面状端部面に、各々1つの円周方向における第1の角距離を持って位置し、また駆動するべき第1の構成要素と摩擦接触しているところの、摩擦構成要素の第1の群が配置されていて、ならびに超音波アクチュエータの他方の平面状端部面に、各々1つの円周方向における第2の角距離の間隔を持って位置し、また第2の駆動するべき構成要素と摩擦接触しているところの、摩擦構成要素の第2群が配置されている。さらに、その超音波アクチュエータの内側周面上に基準電極が配置され、かつ超音波アクチュエータの外側周面上に励起電極が配置されていて、各々の励起電極は、基準電極と、両電極の間に配置されている圧電性材料と共に、超音波定在波の発振器を形成し、この発振器には、超音波アクチュエータ内に超音波定在波を発生させるために、電圧を印加することができる。この場合、本発明の本質は、第1群の摩擦構成要素は第2群の摩擦構成要素に対して円周方向における第3の角距離分のずれを持って配置され、この場合第3の角距離は第1の角距離より小さく、また第2の角距離より小さいことである。
【0007】
この超音波アクチュエータは、放射方向に、中空円筒の放射方向の外側周面と内側周面との間の間隔で決まる所定の壁厚を、また軸方向に、高さhを持つ、中空円筒の幾何学的形状を持つ。この中空円筒は、外側周面および内側周面が弯曲面である一方で、中空円筒をその高さHに関して軸方向に限定する、2つの平面状の面も備える。これらは、基本的に相互に平行に伸延する、中空円筒の平面状の端部面である。
【0008】
この2つの各々の端部面上に複数の摩擦構成要素が周方向に相互に間隔を持って配置されていて、それぞれ隣接した摩擦構成要素は超音波アクチュエータの円周に沿って1つの角度(角距離)を挟んで、相互に離れている。しかしながら、摩擦構成要素が配置されている円周に関してのその位置(円周上位置)は、第1群の摩擦構成要素と第2群の摩擦構成要素では異なる。言い換えれば、第2群の摩擦構成要素は第1群の摩擦構成要素とは円周上位置が異なり、その結果これらの間に角度のずれが存在する。ずれに対応する角距離は、この場合第1群の摩擦構成要素と第2群の摩擦構成要素が相互に間隔を置いている角距離よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
超音波アクチュエータの両端部面上での摩擦構成要素のこの特殊な配置は、超音波アクチュエータ内に励振されるまたは作成される超音波定在波を適して形成することによって、第2の被駆動構成要素が静止している間に、第1の被駆動構成要素のみを運動させること、ないしは第1の被駆動構成要素が静止している間に、第2の被駆動構成要素のみを運動させるということを可能にする。ここでは、超音波定在波の位相を適してずらすことで、そのつど被駆動構成要素の駆動方向を変更することも可能である。この被駆動構成要素の運動は1つの方向へと同様に、これと対向した方向へも可能である。
【0010】
第1の角距離が第2の角距離に対応することは有利である。
同じく、第3の角距離が、第1の角距離の4分の1または第2の角距離の4分の1に対応することは有利である。
【0011】
さらに、発振器が、励起電極と基準電極の交互の、複数の層を備え、この場合に発振器の2つの隣接する電極層の間に1つの圧電性材料の層が配置されていることは、有利であり、これによって発振器の制御が僅かな電圧で可能になる。
【0012】
これに加えて第1の被駆動構成要素のみでなく第2の被駆動構成要素も回転運動に至らせることが可能であり、また第1の被駆動構成要素と第2の被駆動構成要素の重心がそれぞれの回転軸と一致することは有利である。こうして両方の被駆動構成要素の回転運動を特に容易に実現することができる。この場合、第1の被駆動構成要素の回転軸が、第2の被駆動構成要素の回転軸と一致することは有利である。
【0013】
加えて本発明は、前述の実施形態ないしは発展形態の1つの超音波モータを駆動するための方法であって、この方法は、縦方向および横方向の振動成分を持つ第1の超音波定在波を、超音波アクチュエータ内で励振するために発振器の電極に1つの電圧を印加し、ここで第1の超音波定在波は、第2群の摩擦構成要素が第2の被駆動構成要素を運動させることなく、第1群の摩擦構成要素のみが第1の被駆動構成要素を運動させるように形成され、内でまたは、縦方向および横方向の振動成分を持つ第2の超音波定在波を、超音波アクチュエータ内で励振するために発振器の電極に1つの電圧を印加し、ここで第2の超音波定在波は、第1群の摩擦構成要素が第1の被駆動構成要素を運動させることなく、第2群の摩擦構成要素のみが第2の被駆動構成要素を運動させるように形成され、内でその結果、第1の被駆動構成要素と第2の被駆動構成要素を独立して駆動することを可能にすることを特徴とする。
【0014】
ここでは、第1の超音波定在波と第2の超音波定在波が同一であることは有利である。このことは超音波アクチュエータの電気的制御を特に簡単にする。
さらに、第1の超音波定在波と第2の超音波定在波との間に、波長の4分の1の位相のずれがあることが有利である。これによって第1の被駆動構成要素と第2の被駆動構成要素を、特に効果的に、独立して駆動することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による超音波モータの、電気的励起装置を伴わない分解図。
【
図2】表示23:
図1による超音波アクチュエータの側面図;表示24:表示23による超音波アクチュエータの下面図;表示25:表示23による超音波アクチュエータの上面の上面図。
【
図3】本発明による超音波アクチュエータの、電気的励起装置との電気的接続に関するブロック回路図。
【
図4】表示31〜34:励起電極を電気的励起装置(電気的励起装置は図示されていない)と接続するための変形例。
【
図5】表示36:非励振状態にある、モデル化された超音波アクチュエータ;表示35および37:表示36による超音波アクチュエータの、定在波形成のために励振された状態においての、算出された最大変形。
【
図6】本発明による超音波モータの、超音波アクチュエータの摩擦構成要素の点の運動を明確にするための、
図4の表示31の部分拡大図。
【
図7】本発明による超音波モータの1つの実施形態。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明による超音波モータの分解図を示している。この超音波モータは、圧電性中空円筒または環3として形成されている、超音波変形定在波(akustische Deformations−Stehwelle)のための、閉じられた共振装置2を持つ、超音波アクチュエータ1を含む。アクチュエータ1の圧電性中空円筒3の端部面4上には、3個の摩擦構成要素5を持つところの第1群が配置されている。圧電性中空円筒3の、対抗する他方の端部面6上には、3個の摩擦構成要素5を持つところの第2群が配置されている。
【0017】
この第1群の摩擦構成要素5上にはバネ8の助けを借りて、ロータ10として実施されているところの第1の被駆動構成要素9が、第1の被駆動構成要素9に配置されている摩擦層11で、圧着されている。この場合、この被駆動構成要素9は1つの歯車46であって、さらに歯車47と作用結合している。
【0018】
第2群の摩擦構成要素6上には、バネ12の助けを借りて、ロータ14として実施されているところの第2の被駆動構成要素13が、第2の被駆動構成要素13に配置されている摩擦層15で、圧着されている。この場合、この被駆動構成要素13は同じく1つの歯車46であって、さらに歯車47と作用結合している。
【0019】
第1の被駆動構成要素の中心軸と第2の被駆動構成要素の中心軸は一致し、これらはまた、同時に超音波アクチュエータの中心軸である、回転軸45上にある。
圧電性中空円筒3の内側周面上には基準電極17が配置されている。圧電性の中空円筒3の外側周面上には、相互に分離された構造を持つ励起電極19がある。圧電性中空円筒3を形成しているこの圧電セラミックスは、通常、電極17および電極19に分極されている。
【0020】
このアクチュエータ1はキャリア20で支承されている。ロータ10および14は、可動式に軸受け21内に配置され、ないしは支承されていて、キャリア22によって保持されている。
【0021】
これらキャリア20および22は超音波モータのハウジングの一部であり得る。
図1に示されている、それぞれの端部面ごとの3個の摩擦構成要素と並んで、この超音波アクチュエータ1は圧電性中空円筒3のそれぞれの端部面4および6上に、2個、4個、5個もしくは一般化してn(n=自然数)個の摩擦構成要素5および7を持つことができる。
【0022】
図2の表示23は、
図1の超音波アクチュエータを側面図で示し、一方、表示24は対応して下側からの図(すなわち下面)を、また表示25は対応して上側からの図(すなわち上面)を示す。超音波アクチュエータの上方端部面4上には3個の摩擦構成要素5が配置されていて、この場合隣接する2つの摩擦構成要素間の距離はそれぞれ2aである。同様に、下方端部面6上にも3個の摩擦構成要素7が配置されていて、この場合2つの、隣接する摩擦構成要素間の距離もそれぞれ2aである。
【0023】
超音波アクチュエータ1の端部面6は、仮想線aで6個の等しい部分面(一般的に偶数の同一の部分面)に分割され、この場合、隣接する線a間の角度αは同一である。同様に、超音波アクチュエータ1の端部面4は、仮想の線bで6個の等しい部分面(一般的に偶数の同一の部分面)に分割され、この場合、隣接する線bの間の角度αは同じく同一である。この場合、線aおよびbは重なり合わず、それに替わって、それぞれ隣接する線aとbとの間には角度α/2がある。
【0024】
線aは全て、摩擦構成要素7の1つに対して対称軸を形成し、一方、線bは全て、摩擦構成要素5の1つに対して対称軸を形成する。
この圧電性中空円筒4は平均周長Lと高さhを持っている。この平均周長Lは線aおよび線bによって6個の同一のセクションl(一般的に偶数の同一のセクション)に分割される。この平均周長Lは、中空円筒の外側周面と内側周面の間の中央と定義される位置での周長である。
【0025】
全てのセクションlは、線aおよび線bで2つに分割される。
比l/hが0.9と1.3の間の領域にあることが特に有利である。
2つの隣接する線aおよび線bで分離される超音波アクチュエータの全ての部分周長上に、ないしは対応する外側の部分周面上に、1つの励起電極19が配置されている。言い換えれば、全ての励起電極は、外側周面上で、ほぼα/2の角度(隣接する励起電極間に1つの間隙があり、間隙が電極を相互に分離する)に渡って伸延している。
【0026】
図3は、4個の摩擦構成要素5と4個の摩擦構成要素7を持つ、展開された超音波アクチュエータ1を使用して、電極17および19と、電気的励起装置26との電気的接続に関するブロック回路図を示している。
【0027】
この場合、この電気的励起装置26は、その周波数faがこのアクチュエータ1の作動周波数と同じである、交流電圧Uを供給する。
この周波数faは式fa=N/lで決定することができ、この場合Nは、圧電セラミックスの周波数定数であり、この周波数定数はアクチュエータ内で形成された超音波定在波のタイプ、および圧電性中空円筒3がそれで形成されているところの、圧電セラミックスによって決まる。
【0028】
電極17および19を電気的励起装置26と接続するためのこの電気回路図は、電極1
9が一対となってアクチュエータ1の電気的励起装置26と接続することを助ける、切替スイッチ27、28、29および30を含む。
【0029】
図4の表示31〜34には電極19を電気的励起装置26と接続するための、4つの可能な変形例が示されている。表示31による第1の例では、切替スイッチ27および28が閉じられている。表示32による第2の例では切替スイッチ29および30が閉じられている。表示33による第3の例では切替スイッチ27および30が閉じられていて、一方、表示34による第4の例では切替スイッチ28および29が閉じられている。電極19の電気的励起装置との接続は複数の線で示されている。
【0030】
上述の全ての例において、全ての励起電極19および基準電極17の対、ならびにそれらの間の圧電セラミックスは、超音波変形定在波のための1つの発振器を形成する。ここで示されている3層構造と並んで、超音波定在波の発振器は多層構造を持つことができ、この場合は基準電極17の層、励起電極19の層および圧電セラミックス層が交互に配置される。
【0031】
図4の表示31〜34に斜線が付けられている発振器に、周波数faで電圧Uを印加する場合、アクチュエータ1内に超音波変形定在波が形成される。
図5の表示35〜37は有限要素法計算によってこの波の形を明らかにしている。
【0032】
アクチュエータ内で形成された波の長さλはL/nまたは2lであり、すなわち圧電性中空円筒3の平均周長Lは2lnまたはλnである。2つの隣接する摩擦構成要素5および7の間の距離は、波長の4分の1、λ/4またはl/2である。各々の励起電極19の幅は、波長の4分の1、λ/4すなわちl/2である。
【0033】
超音波アクチュエータ1内で形成された波の場合、点38で振動の長軸方向要素の最大振幅と、振動の横方向要素の最大振幅が現れる。波は点39では振動の横方向の要素のみを持つ。
【0034】
圧電性中空円筒3がPIセラミック社(PI Ceramic GmbH)の圧電セラミックスPIC 181で形成されていて、超音波アクチュエータ1内に
図5に示されている波が形成される場合は、周波数特性Nは1837Hzmである。
【0035】
図4の表示31〜34により、切替スイッチ27〜30を操作した場合も、形成された定在波の形は変化しない。摩擦構成要素5および7に関連して、波の長さが変化するだけである。この波はその波長λ/2(l)の半分、またはその波長λ/4(l)の4分の1分ずれる。
【0036】
この波の長さの変化は、表面端部面4および6上に、ないしは圧電性中空円筒3の摩擦構成要素上に配置されている点の移動軌道の変化につながる。これは摩擦構成要素5および7上の点35および36がそれらの移動軌道を変えることへとつながり、
図4の表示31〜34に示されている。示されている例の全てにおいて点40および点41は2つの異なった移動軌道上、1つの傾斜した移動軌道42上および横方向移動軌道43上を移動する。
【0037】
図6は、
図4の表示31に示した例においての、摩擦構成要素5の点40の運動および摩擦構成要素7の点41の運動の拡大図である。
点40の移動軌道42の傾斜は2つの運動成分、長軸方向成分44および横方向成分45に分解することができる。この横方向成分45は、全ての摩擦構成要素5が第1の被駆動構成要素9の摩擦層11上に押し付けられることをもたらし、また長軸方向成分44は
、摩擦構成要素5が長軸方向成分44の摩擦によって第1の被駆動構成要素9の移動を呼び起こすことをもたらす。
【0038】
点41が、長軸方向成分を含まない横方向移動軌道43上を移動することから、第2の被駆動構成要素13は不動の状態にある。
移動方向の変更は、移動軌道42の傾斜の反転によって結果として生じる。
【0039】
図4には被駆動構成要素9および13の移動方向が矢印および指標Vで示されている。
図7は1つの本発明による超音波モータを示し、このモータでは第1の被駆動構成要素9の重心と第2の可動性構成要素13の重心が、それらの回転軸45と一致していない。このような超音波モータは研磨板の自動的平衡保持のため、または高速で回転する類似の器具または工具に使用される。
【0040】
図8は1つの超音波モータを示し、このモータでは、第1の被駆動構成要素9には指針48が取り付けられていて、第2の被駆動構成要素13はシャフト49を介して1つの指針50と接続されている。この超音波モータは、2つの指針ユニットの独立した摺動が必要な、車両の測定機、時計または他の測定装置に使用することができる。
【0041】
本発明による超音波モータとこのような超音波モータを駆動するための対応する方法によって、唯一の超音波アクチュエータで2つの被駆動構成要素を相互に独立して運動させることが可能となり、この際に移動方向を変更することまたは制動された状態で停止させることも可能となる。これは超音波モータないしは超音波駆動の使用範囲を明らかに拡大する。