以上の面密度となるようにモース硬度9を超える硬質粒子8を蝋付け接合してなる研削面9を有し、前記金属円盤を支えるホルダー3は、その中心部に回転駆動装置の回転軸に取付ける取付部7を有し、前記金属円盤と前記ホルダーとを結合してなることを特徴とする、静音特性に優れた回転研削工具1。
前記金属円盤の表面は、前面、斜面、側面および裏面を有し、前記金属円盤の中心側から外周側へ向かって、前面、斜面および側面がこの順に連続して存在し、裏面は側面と隣合っており前面および斜面の裏側に存在し、
前面は回転中心軸と垂直な面であり、側面は回転中心軸と平行な面である、
請求項1に記載の、静音特性に優れた回転研削工具。
前記金属円盤と前記ホルダーとの間または結合部の少なくとも一部に、有機物、無機物または金属からなる振動吸収材を挟んだことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の、静音特性に優れた回転研削工具。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について説明する。
本発明は、金属円盤の表面の少なくとも一部に、20個/cm
2以上の面密度となるようにモース硬度9を超える硬質粒子を蝋付け接合してなる研削面を有し、前記金属円盤を支えるホルダーは、その中心部に回転駆動装置の回転軸に取付ける取付部を有し、前記金属円盤と前記ホルダーとを結合してなることを特徴とする、静音特性に優れた回転研削工具である。
このような回転研削工具を、以下では「本発明の研削工具」ともいう。
【0017】
本発明の研削工具について
図1〜
図4を用いて説明する。
図1は、特定の硬質粒子8を蝋付け接合した金属円盤2の好適実施態様を示す概略斜視図である。また、
図2は、金属円盤2を支えるためにこれに結合するホルダー3の好適実施態様を示す概略斜視図である。また、
図3は、
図1に示す金属円盤2と、
図2に示すホルダー3とを結合してなる、本発明の研削工具1の好適実施態様を示す概略斜視図である。そして、
図4は、
図3に示す本発明の研削工具1の正面図および断面図である。
なお、
図1〜
図4は、本発明の研削工具における好適実施態様を示すものであり、本発明の研削工具はこのような態様に限定されるものではない。
【0018】
<金属円盤>
図1に示すように、金属円盤2は中心部に円形の穴を有するドーナツ型の円盤である。
このような金属円盤2の表面に特定の硬質粒子8を蝋付け接合する。
【0019】
ここで硬質粒子8はモース硬度が9を超えるものであり、このような硬質粒子8を20個/cm
2以上の面密度となるように金属円盤2の表面に蝋付け接合した部分は、本発明の研削工具1における研削面9となる。硬質粒子については、後に詳細に説明する。
【0020】
また、本発明の研削工具1では、金属円盤2の前面のみならず側面(外周部分)にも硬質粒子が接合されている。また、
図1に表れていないが、側面から裏面(例えば裏面の外周の幅4mm程度の領域)にかけても硬質粒子が接合されている。裏面にまで硬質粒子を付けるようにすることで、側面に十分量の硬質粒子を付けることができる。
【0021】
なお、
図1に示す金属円盤2は、ホルダー3と結合するために用いるボルト6を通すための孔4を3つ有している。
【0022】
<ホルダー>
図2に示すように、ホルダー3はその中心部に取付部7を有している。取付部7は、本発明の研削工具1を回転駆動装置の回転軸に取り付けるためのものであり、
図2においては取付孔として示されている。すなわち、本発明の研削工具1において取付部7は、取付孔そのものである。
【0023】
また、
図2に示すホルダー3は、
図1に示した金属円盤2と結合するために用いるボルトを通すための孔5を3つ有している。
【0024】
<本発明の研削工具>
図3に示す好適実施態様である本発明の研削工具1は、
図1に示した、特定の硬質粒子8を蝋付け接合した金属円盤2と、
図2に示したホルダー3とを、3つのボルト6を用いて結合したものである。
【0025】
このような本発明の研削工具は、使用する際に発生する生じる騒音が顕著に抑制されるものである。本発明者は、金属円盤とホルダーとの間に存在するわずかな隙間や、金属円盤とホルダーとの結合により前記取付部の前面に形成される一定以上の大きさの空間が、発生する騒音の抑制に寄与していると考えている。
また、金属円盤とホルダーとの間または結合部の少なくとも一部に、有機物、無機物または金属からなる振動吸収材(すなわち、有機物、無機物および金属からなる群から選ばれる少なくとも1つを主成分とする振動吸収剤)を挟むと、より騒音が抑制されるので好ましい。具体的には、金属円盤とホルダーとの間にポリウレタン等の有機物のシートを挟み結合することが該当する。また、金属円盤の前面に形成した孔に有機物、無機物または金属からなるO−リングを入れ、六角穴付き皿ボルトを用いて、金属円盤とホルダーとを結合することが該当する。
【0026】
また、本発明の研削工具は金属円盤とホルダーとを分離することができるので、使用することで金属円盤が損傷した場合、金属円盤のみを新しいものに取り換え、ホルダーを再度利用することができる。これに対して例えば特許文献1または2に記載の従来の研削工具のように金属円盤とホルダーとに分離できない態様であると、使用により研削工具が損傷した場合、ホルダーに相当する部分が健全であったとしても、研削工具の全体を交換する必要が生じる。本発明の研削工具のように金属円盤のみを取り換えればよい場合、ホルダーを再利用できる分、消耗品である本発明の研削工具を利用することによるコストを削減できるので好ましい。また、例えば金属円盤をステンレスから形成し、ホルダーをアルミニウムから形成すると、さらに加工費や素材費を抑制できるので好ましく、加えてホルダーをアルマイト処理すれば、ステンレスよりもアルマイト処理したアルミニウムの方が錆びないので、この点でも好ましい。
なお、金属円盤はステンレス鋼からなると好ましいが、ニッケル基合金、合金鋼、鋼(普通鋼等)からなるものであってもよい。同様に、ホルダーはアルミニウム合金からなると好ましいが、銅合金、マグネシウム合金、チタンおよびチタン合金からなるものであってもよい。
【0027】
また、ボルトの頭部は本発明の研削工具における研削面の一部となっていることが好ましい。すなわち、
図3に示す好適実施態様のように、ボルト6の頭部には蝋付けされていないことが好ましい。層状の錆を研削する際に、層状の錆への衝撃力を高めることができるからである。
なお、
図3に示す本発明の研削工具1の場合、ボルト6を3つ有しているが、本発明の研削工具においてはボルトを2〜4つ有していてもよい。金属円盤とホルダーとの締結作業の効率性と使用時における研削面の安定性とを両立させるためには、高速回転する本発明の研削工具のバランスを考慮し、等間隔で3つのボルトを用いて金属円盤とホルダーとを結合することが好ましい。また、研削面の一部となるボルトの頭部に蝋付けしない場合、ボルトの数が多くなるほど研削面の面積は相対的に小さくなるが、当該部位が存することで層状の錆を研削する際の層状の錆への衝撃力を高めることができるので、それらのバランスから3つ程度であると最も研削効率が高まるのである。また、ボルト用の孔は
図1に示すように等間隔で形成されていることが好ましい。研削効率が高まるからである。
【0028】
次に、
図1〜
図3に示した好適実施態様である本発明の研削工具1の形状等について、
図4を用いて説明する。本発明の研削工具の形状は特に限定されないが、
図4を用いて説明する形状であると好ましい。
図4(a)は概略正面図、すなわち、前面側から見た場合の図であり、
図4(b)は
図4(a)のA−A線断面図である。ここで、前面側から見た場合の図とは、前面側から、本発明の研削工具における回転中心軸に平行に見た場合の図を意味するものとする。
なお、
図4は、理解を容易にするため、特定の硬質粒子8およびこれを蝋付け接合するために用いる蝋は記していない。
【0029】
本発明の研削工具1において、金属円盤2の表面は、前面21、斜面22、側面23および裏面24を有する。これらは少なくとも各々の一部に硬質粒子が蝋付け接合され、研削面となる部分である。
また、
図4に示すように、金属円盤2の中心側から直径方向に外周側へ向かって、前面21、斜面22、および側面23がこの順に連続して存在する。側面23は金属円盤2における回転中心軸と平行な面であるので、
図4(a)には表れない。
図4(a)に表れるのは前面21および斜面22である。前面21は後述するように定義される部分であり、斜面22は、本発明の研削工具1を前面側から見た場合における(すなわち、
図4(a)における)前面21の外周側に存在する部分である。
また、
図4(b)に示すように、裏面24は側面23と隣合っており、金属円盤2における、前面21および斜面22の裏側に存在する面である。
【0030】
<前面>
金属円盤における前面について説明する。
前面21は、本発明の研削工具1の回転中心軸Yと垂直な面である。
ここで「回転中心軸と垂直な面」とは、金属円盤の表面における、その法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θが0〜5°である部分を意味するものとする。前面21の表面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θは0〜2°であることが好ましく、0〜1°であることがより好ましく、0〜0.5°であることがさらに好ましい。0°に近いほど、層状の錆を研削する際に、錆と研削面とが接触する面積が大きくなり、効率的に研削できるからである。
【0031】
また、金属円盤の前面21と斜面22との境界線を境界線Lとすると、金属円盤の表面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θが5°以下から5°超へ変化する線が境界線Lであるともいえる。また、前面21は境界線Lから中心側に存在する面であり、斜面22は境界線Lの外周側の面ともいえる。
【0032】
ここで、斜面22が
図4に示すような階段状の場合、斜面は「その法線Xと回転中心軸Yとのなす角度が0〜5°(
図4に示す場合は0°)である部分」を含んでいる。
このように金属円盤において「その法線Xと回転中心軸Yとのなす角度が0〜5°である部分」が複数存在する場合、最も中心側(回転中心軸Y側)に存在するものを前面とし、それ以外の面は斜面とする。
また、断面が階段状の斜面のように、斜面が複数面からなっている場合、その複数面の全てをまとめて斜面と称する。
図4に示す好適実施態様のように斜面の断面が階段状であると、硬質粒子をより強固に蝋付け接合することができるので好ましい。
【0033】
<側面>
次に、金属円盤における側面について説明する。
側面23は、本発明の研削工具1の回転中心軸Yと平行な面である。
すなわち、側面23は、その法線Xと回転中心軸Yとが90°の角度θをなす部分を意味する。
【0034】
ここで、
図4に示すような断面が階段状の斜面22は「その法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θが90°となる部分」を含んでいるが、金属円盤において「その法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θが90°となる部分」が複数存在する場合、最も外周側に存在するものを側面とする。
【0035】
<斜面>
次に、金属円盤における斜面について説明する。
斜面22は、上記のように定義した前面21と側面23との間に存在する面の全て(前面と側面とを繋ぐ面)を意味するものとする。斜面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度は特に限定されない。当該角度については後述する。
【0036】
<各面の大きさ等>
次に金属円盤の前面および斜面の大きさの関係について、
図4を用いて説明する。
図4(a)は金属円盤2を前面から回転中心軸に平行に見た場合の投影面(正投影面)とみなすことができるが、
図4(a)、(b)に示すように、前面21を前面側から見た場合の投影面の直径方向における幅をW
1とし、同様に、斜面22を前面側から見た場合の投影面の直径方向における幅をW
2とした場合、好適実施態様である本発明の研削工具1では、W
1/W
2>2.0となる。
このように本発明の研削工具は、上記のように定義されるW
1とW
2との比(W
1/W
2)が2.0超であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましい。また、W
1/W
2は、50.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましく、7.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。
【0037】
また、好適実施態様である本発明の研削工具1では、W
2は1mm以上である。
このように本発明の研削工具ではW
2は1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることがより好ましく、3.5mm以上であることがさらに好ましい。また、W
2は20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
好適実施態様である本発明の研削工具1は、W
2が1mm以上であり従来品と比較してW
2が大きいので、構造物の隅(例えば床と壁との境界部)に存する錆を効率的に研削することができる。また、W
2に対してW
1は十分大きいので、層状の錆を効率的に研削することができる。
W
2は上記のような長さ確保されており、かつ上記のようなW
1/W
2を満たすようにW
1も十分に大きいので、好適実施態様である本発明の研削工具1によれば、層状の錆と構造物の隅に存する錆との両方をより効率的に研削することができる。
【0039】
<金属円盤の斜面の角度>
次に、金属円盤の斜面の角度について説明する。
本発明の研削工具1の場合、金属円盤2の斜面は断面が階段状であるので、その斜面角度を決定することは困難である。そこで、本発明の研削工具においては、次のようにして求めた値を斜面の角度θとする。
【0040】
具体的には、金属円盤の前面と斜面との境界(すなわち境界線L)と、金属円盤の斜面と側面との境界とを直線的に繋いで仮想の平面を得て、この平面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度を、金属円盤の角度θとする。本発明の研削工具において、ここで求められた角度θは30〜80°であることが好ましく、40〜70°であることがより好ましく、40〜65°であることがより好ましく、40〜60°であることがより好ましく、44〜46°であることがさらに好ましい。このような角度であると、構造物の隅に存する錆をより効率的に研削することができるからである。
【0041】
<金属円盤の斜面の面積>
また、本発明の研削工具において、金属円盤の斜面の面積は400mm
2以上であることが好ましく、1100mm
2以上であることがより好ましく、1400mm
2以上であることがさらに好ましい。また、3000mm
2以下であることが好ましく、2300mm
2以下であることが好ましく、1900mm
2以下であることがより好ましく、1600mm
2以下であることがさらに好ましい。金属円盤の斜面の面積がこのような範囲であると、構造物の隅に存する錆をより効率的に研削することができるからである。
なお、金属円盤の斜面の面積についても、前述の角度と同様に考えるものとする。すなわち、金属円盤の前面と斜面との境界(すなわち境界線L)と、金属円盤の斜面と側面との境界とを直線的に繋いで仮想の平面を得て、この平面の面積を、上記角度θ、W
2および金属円盤の半径、金属円盤の側面の幅W
3等から算出して求めた値とする。
【0042】
<取付部の前面の空間体積>
次に本発明の研削工具における取付部の前面の空間体積について説明する。
本発明において「取付部の前面の空間」とは、本発明の研削工具における金属円盤の前面よりも中心側に存在する部分に囲まれる空間を意味するものとする。すなわち、
図4(b)において点線で囲った空間Vを意味するものとする。
本発明においては、このような取付部の前面の空間の体積は7000mm
3以上であることが好ましく、11000mm
3以上であることがより好ましく、15000mm
3以上であることがさらに好ましい。このような場合、研削時の騒音をより抑制することができるからである。
なお、取付部の前面の空間の体積は70000mm
3以下であることが好ましく、24000mm
3以下であることがより好ましく、20000mm
3以下であることがより好ましく、18000mm
3以下であることがより好ましく、16000mm
3以下であることがさらに好ましい。当該体積が大きすぎると、用いる回転駆動装置が大型化するからである。
【0043】
また、本発明の研削工具においては、
図4(a)に示すように金属円盤の前面の一部に溝が形成されていることが好ましい。
図4(a)に示す好適実施態様では、金属円盤2の前面21に溝25が3つ形成されている。このような溝が形成されていると、研削面における溝の上に形成された部分が他の部分に対して凹むので、上記のボルトを有する場合と同様の理由で、研削効率が高まるからである。溝の深さ、数、大きさ等は特に限定されないが、2〜4つが好ましく、3つであることがより好ましい。また、溝の深さは1〜5mmが好ましく、1〜4mmがより好ましく、1〜3mmがより好ましく、1〜2mmであることがさらに好ましい。また、上記ボルトを有する場合と同様に、溝は
図4(a)に示すように等間隔で形成されていることが好ましい。研削効率が高まるからである。
【0044】
本発明の研削工具では、金属円盤の質量が100〜1000gであることが好ましく、120〜700gであることがより好ましく、130〜420gであることがより好ましく、140〜180gであることがさらに好ましい。また、金属円盤とホルダーとの合計質量は特に限定されないが、165〜1065gであることが好ましく、185〜765gであることがより好ましく、195〜485gであることがより好ましく、205〜245gであることがさらに好ましい。研削時の騒音をより抑制することができるからである。また、厚い錆への衝撃力を高めることができるからである。また、本発明の研削工具の使用時における回転数は、ディスクグラインダー駆動装置の動力部の仕様で決定されるが、衝撃力は回転研削工具の質量に依存するため、質量は大きければ大きいほうが効果的となる。しかしながら、金属円盤とホルダーとの合計質量が900gを超えると、回転モーメントが高まって、作業者が回転研削工具の向きを変化させ難くなるので作業者が扱う場合は、これを上限として設定するのが良い。
【0045】
金属円盤の厚さは3.0〜6.0mmであることが好ましく、3.0〜5.5mmであることがより好ましく、3.3〜4.0mmであることがさらに好ましい。
また、ホルダーの厚さは、3〜10mmであることが好ましく、3.0〜6.5mmであることがより好ましく、3.3〜4.0mmであることがさらに好ましい。
また、金属円盤の裏面の全面積に対する前記金属円盤と前記ホルダーとの接触面積率が20〜100%であることが好ましい。また、この下限はより好ましくは25%、より好ましくは30%、より好ましくは35%、さらに好ましくは40%である。
金属円盤の厚さ、ホルダーの厚さ、金属円盤の裏面面積に対する前記金属円盤と前記ホルダーとの接触面積率が上記のような範囲であると、研削時の騒音をより抑制することができるからである。また、厚い錆への衝撃力を高めることができるからである。
【0046】
本発明の研削工具において金属円盤の直径(外径)は特に限定されないが、50mm以上であることが好ましく、90〜200mmであることがより好ましく、100〜180mmであることがより好ましく、100〜150mmであることがより好ましく、100mm程度であることがさらに好ましい。市販のディスクグラインダー駆動装置やハンドドリル駆動装置等の電動回転装置に装着して作業が行えるからである。直径が50mm未満だと市販の電動回転装置に取り付けることが難しくなると同時に、大きな面積に広がる厚い錆を効率的に除去することが難しくなる。これにより、市販の電動回転装置への装着が可能となるので、現場でハンディに塗装下地処理作業が行え、大掛かりなブラスト装置等を用いる必要がなくなる。
【0047】
次に、金属円盤の表面に蝋付け接合される硬質粒子等について説明する。
本発明の研削工具は、前記金属円盤の表面の少なくとも一部に、20個/cm
2以上の面密度となるにように、モース強度9を超える硬質粒子を蝋付け接合したものである。
このような面密度であると、作業中に硬質粒子の一部が脱落しても研削することができるので、大面積の作業であっても長い時間使用に耐えられるからである。30個/cm
2以上の面密度でモース硬度9を超える硬質粒子が蝋付け接合されることが好ましい。大面積処理の作業の効率が高まるからである。一方、60個/cm
2以上の面密度とするためにはコストアップとなり、100個/cm
2以上の面密度とするのは空間的に困難である。したがって、30個/cm
2〜60個/cm
2程度がより好ましい。
なお、この面密度は、任意の10mm×10mmの範囲内に存在する硬質粒子の数を測定することにより求めることができる。
【0048】
本発明の研削工具において、前記金属円盤の表面にモース強度9を超える硬質粒子を蝋付け接合するのは、固着錆の硬度がモース硬度9を超えているため、モース硬度9のコランダムやアルミナでは、固着錆に研削材が研磨されてしまい、固着錆を除去するのは困難であるからである。
硬質粒子は、モース硬度が9を超えるものであれば特に限定しないが、固着錆を効率的に除去する点からは、ダイヤモンドまたはキュービックボロンナイトライドが好ましい。
また、硬質粒子は平均粒子径200μm以上1000μm以下のものであることが好ましい。200μm以上であると目詰まりを起こし難く、研削性能が低下し難いからである。また、1000μm以下であると面密度を上昇させ易く、長時間の使用性能が高まるからである。また、粒子径が大きくなると工業用ダイヤモンドのコストが高くなることにも配慮した。種々試した結果、平均粒子径は300μmから950μmの範囲がさらに望ましく、650μmから900μmの間に分布する粒子径の工業用ダイヤモンドまたはキュービックボロンナイトライドを用いて工具を作成するのが製造上も効率的である。なお、キュービックボロンナイトライドは粒子の破壊が工業用ダイヤモンドより起こりやすく、後者の方が長時間の使用に耐え作業性が良い。
なお、硬質粒子の平均粒子径は、蝋付け前の硬質粒子を任意に50個採取し、その直径をノギスにより測定して得た値を単純平均して求めた値とする。
【0049】
また、硬質粒子を蝋付けするための接合材(蝋材)は、モース硬度9超の硬質粒子と金属円盤の表面との両者に対して十分な接合性を発揮できる特性を有するものであれば、特に限定するものではなく、硬質粒子および金属円盤の材質に応じて、適切な接合材(蝋材)を選定することができる。例えば、JIS Z 3265に規格のニッケルろう、JIS Z 3261に規格する各種の銀ろう、JIS Z 3262に規格する各種の銅および黄銅ろう、JIS Z 3263に規格する各種アルミニウム合金ろうおよびブレージングシート、JIS Z 3264に規格された各種りん銅ろう、JIS Z 3266に規格された金ろう、JIS Z 3267に規格された各種パラジウムろう、JIS Z 3268に規格された各種の真空用金属ろう、さらにはJIS Z 3282に規格された各種のはんだ、などからベースとなる成分系を選ぶことができる。
その中で、融点なども考慮してニッケルベースの蝋材(例えば、BNi−1,BNi−1A,BNi−2,BNi−5,BNi−7など)を好ましく用いることができる。ダイヤモンドあるいはキュービックボロンナイトライドなどの硬質粒子と接合性を向上させるために、チタン、クロムおよびジルコニウムの1種以上を0.5質量%以上添加した蝋材を用いることが好ましい。
また、蝋材にチタン、クロムおよびジルコニウムのうち1種以上を0.5質量%以上含有する蝋材を用い、金属円盤の材質にステンレス鋼を用いると、金属円盤へのモース硬度9以上の硬質粒子の接合強度が高まる。これは、硬質粒子、金属円盤および蝋材の各接合界面において冶金学的反応が起こり、中間相が形成するためである。この材料的組み合わせは、後述するモース硬度9以上の硬質粒子のシェア強度として20N/個以上を実現するのに有効に作用する。チタン、クロム、ジルコニウムの1種以上を含有するニッケル蝋材を用いてダイヤモンドまたはキュービックボロンナイトライドの硬質粒子を堅牢に接合するためには、蝋材と金属円盤との接合強度も高める必要があるがチタン、クロムおよびジルコニウムの1種以上を含有するニッケル蝋材は、ステンレス鋼との相性がよく、合金化して堅牢な接合が得られる。金属円盤の材質にSUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼を用いると、接合の堅牢性も上がり、さらに、厚い錆を除去する作業は、塩害環境におかれた鋼材上でおこなわれることが多いので、工具自体の耐食性を確保する点からも有利である。
【0050】
本発明の研削工具は、このような接合材(蝋材)を用いて前記硬質粒子を前記金属円盤の表面に蝋付けしたものを、その一部とする。具体的には後述するように、硬質粒子の平均粒径の20〜60%の厚さとなるように接合材を金属円盤の表面に塗布し、その上に硬質粒子を付与する。したがって、本発明の研削工具の研削面では、硬質粒子の一部分が露出しており、残部は接合材(蝋材)の中に埋没している。
【0051】
また、硬質粒子の平均シェア強度が20N/個以上となるように、硬質粒子と蝋材とが接合されることが好ましい。被削鋼材面に例えばモース硬度10のダイヤモンドが高速で衝突すると、ダイヤモンドが熱疲労で破壊を起こすことが多いが、従来はこの対策が十分ではなく、硬質粒子(砥粒)が根こそぎ脱離してしまうため、鋼面への作業を行うと短寿命となってしまっていた。しかしながら、硬質粒子の平均シェア強度20N/個とすれば、硬質粒子が熱疲労破壊しても接合部に硬質粒子(ダイヤモンド)が脱離せず、研削作業を継続することができる。すなわち、このシェア強度は硬質粒子と蝋材との接合強度を評価するものである。シェア強度の測定は、硬質粒子が蝋付けされた金属円盤をステージ上に保持し、ロードセルに接続された超硬のつめ状ツールを用いて硬質粒子の露出部を保持し、ステージに横方向から荷重をかけて、硬質粒子が離脱した時の荷重を求めることによって行われる。例えば、測定装置として、レスカ社製ボンディングテスタを用いればシェア強度の測定が行える。
本発明において、平均シェア強度は、10mm×10mm(1cm
2)の範囲の存在する任意の20個以上の硬質粒子について、上述の方法で各硬質粒子の硬質粒子のシェア強度を測定し、それらの平均したものとする。
【0052】
このように平均20N/個以上の高い平均シェア強度を実現するためには、前述のように、チタン、クロムまたはジルコニウムのうち1種以上を0.5質量%以上含む合金を蝋材として用いることが好ましい。例えば、70質量%Ag−28質量%Cu−2質量%Ti合金、74質量%Ni−14質量%Cr−3質量%B−4質量%Si−4.3質量%Fe−0.7質量%C合金、83質量%Ni−7質量%Cr−3質量%B−4質量%Si−3質量%Fe合金、71質量%Ni−19質量%Cr−10質量%Si合金、77質量%Ni−10質量%P−13質量%Cr合金などの蝋材(接合材)を用いることが好ましい。
【0053】
次に本発明の研削工具の製造方法について説明する。
本発明の研削工具の製造方法は特に限定されないが、モース硬度9を超える硬質粒子の平均粒子径の20〜60%の厚さとなるように金属円盤の表面(すなわち、前面、斜面、側面および裏面の少なくとも一部)に有機バインダーを混ぜた蝋粉末を塗布し、その上にモース硬度9を超える硬質粒子を20個/cm
2以上の面密度となるように付与し、10
-4Torr以下の減圧下で、1000〜1040℃の温度に10〜50分保持して研削面を有する金属円盤を得て、その後、前記金属円盤と前記ホルダーとを結合して本発明の研削工具を得る製造方法であることが好ましい。前記金属円盤と前記ホルダーとを2〜4つのボルトを用いて結合するとより好ましい。
【0054】
また、好ましい製造条件は、平均粒子径の25〜35%の厚さとなるように蝋粉末を塗布し、10
-5Torr以下で、1010〜1030℃に25〜35分保持することである。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
図1〜
図4に示した態様の回転研削工具を製造した。
初めに、
図1および
図2に示した金属円盤とホルダーとを用意した。金属円盤はSUS304製で、外径(直径)が100mmであり、内径(直径)が54.2mmのドーナツ型のものである。また、ホルダーはAl−Mg系合金であるA5052を材料とするものであって、表面をアルマイト処理したものであり、外径(直径)が80mmであり、取付孔の直径が15mmのものである。
【0056】
次に、平均粒子径が800μm(標準偏差は40μm)の工業用ダイヤモンド粒子を蝋付けするために、金属円盤の前面、階段状の斜面、側面および裏面に、蝋材粉末に有機バインダーを加えたペーストを塗布した。ここで蝋材粉末としてBNi−2を用い、有機バインダーとしてポリビニルアルコールを用いた。また、ペーストの厚さは、ダイヤモンド粒子の平均粒子径の40%の厚さとなるように塗布した。なお、工業用ダイヤモンド粒子の平均粒子径は、蝋付け前の硬質粒子を任意に50個採取し、その直径をノギスにより測定して得た値を単純平均して求めた値である。
そして、塗布したペーストの上に、工業用ダイヤモンド粒子を35個/cm
2の面密度となるように付与し、10
-5Torrの雰囲気内で、1020℃の温度で30分保持し、研削面を有する金属円盤を得た。
【0057】
次に、得られた金属円盤とホルダーとを3つの六角穴付きボルトを用いて結合した。
そして、本発明の研削工具に該当する回転研削工具を得た。ここで得られた回転研削工具を、以下では「回転研削工具1」とする。なお、以下の実施例2等においても同様であり、例えば実施例2において得られた回転研削工具を「回転研削工具2」とする。
【0058】
得られた回転研削工具1の具体的な態様は、次のとおりである。
金属円盤の前面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θ:0°
取付部の前面の空間体積(V):15420mm
3
金属円盤の厚さ:3.5mm
金属円盤の質量:160g
ホルダーの厚さ:3.5mm
金属円盤とホルダーとの接触面積率(金属円盤の裏面の全面積に対する金属円盤とホルダーとの接触面積率):40%
金属円盤の斜面の形状:階段状(
図4と同様の3段、約1mmの高さ)
W
1:19mm
W
2:3.9mm
W
1/W
2=4.87
W
3:1.0mm
金属円盤の斜面の面積:1490mm
2
【0059】
次に得られた回転研削工具1の性能を調べるため、騒音測定およびさび研削効率測定を行った。
初めに、耐候性鋼(JIS G3114 SMA490)の表面に塩水散布を行い、約1.5mmの厚さの層状錆が生成させた試験材を用意した。この層状錆は孔食が少なく緻密なものであった。
次に、回転研削工具1をディスクグラインダー駆動装置に取付け、試験材の素地露出面積率が約70%となるように錆を除去する作業を4時間行い、素地調整することができた面積を計測した。そして、さび研削効率(分/m
2)を算出した。また、作業位置から5mの地点で騒音(dB)を測定した。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具1の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例1」の欄に示す。
【0060】
<実施例2>
実施例1において階段状とした金属円盤の斜面の形状を、錐面状としたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具2を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具2の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例2」の欄に示す。
【0061】
<実施例3>
実施例1において用いた工業用ダイヤモンドの代わりに、平均粒子径が750μm(標準偏差は50μm)のキュービックボロンナイトライド(CBN)を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具3を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具3の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例3」の欄に示す。
【0062】
<実施例4>
実施例1において、35個/cm
2とした工業用ダイヤモンドの面密度を、21個/cm
2としたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具4を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具4の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例4」の欄に示す。
【0063】
<実施例5>
実施例1において用いた3.5mm厚、160gの金属円盤の代わりに、3.0mm厚、145gの金属円盤(材質等は同様)を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具5を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具5の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例5」の欄に示す。
【0064】
<実施例6>
実施例1において用いた3.5mm厚のホルダーの代わりに、9.5mm厚のホルダー(材質等は同様)を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具6を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具6の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例6」の欄に示す。
【0065】
<実施例7>
実施例1において用いた3.5mm厚のホルダーの代わりに、6.0mm厚のホルダー(材質等は同様)を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具7を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具7の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例7」の欄に示す。
【0066】
<実施例8>
実施例1において用いた3.5mm厚のホルダーの代わりに、6.0mm厚のホルダー(材質等は同様)を用い、これに伴って実施例1において15420mm
3であった取付部の前面の空間の体積が9540mm
3となったこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具8を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具8の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例8」の欄に示す。
【0067】
<実施例9>
実施例1において用いた3.5mm厚、160gの金属円盤の代わりに、5.5mm厚、200gの金属円盤(材質等は同様)を用い、これに伴って実施例1において15420mm
3であった取付部の前面の空間の体積が17420mm
3となり、実施例1において1490mm
2であった金属円盤の斜面面積が1830mm
2となったこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具9を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具9の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例9」の欄に示す。
【0068】
<実施例10>
金属円盤とホルダーとを結合する前に、金属円盤の前面の孔にO−リングを装入し、その後、六角穴付きボルトを用いてこれらを結合した。これ以外については実施例1と同様にして回転研削工具10を作成し、実施例1と同様の試験を行った。O−リングはシリコンゴム製であり、3つの結合部に各々に用いた。また、O−リングと金属円盤との接触面積の、金属円盤とホルダーとの接触面積(実施例1の態様における金属円盤とホルダーとの接触面積を意味する)に対する比率(百分率)は6%であった。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具10の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例10」の欄に示す。
【0069】
<実施例11>
金属円盤とホルダーとを結合する際に、金属円盤とホルダーとの間にポリウレタンゴムシート(厚さ1mm)を挟み、六角穴付きボルトを用いてこれらを結合した。これ以外については実施例1と同様にして回転研削工具11を作成し、実施例1と同様の試験を行った。なお、ポリウレタンゴムシートの主面の面積(大きさ)は、実施例1における金属円盤とホルダーとの接触面積と同一である。すなわち、ポリウレタンゴムシートと金属円盤との接触面積の、金属円盤とホルダーとの接触面積(実施例1の態様における金属円盤とホルダーとの接触面積を意味する)に対する比率(百分率)は100%である。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具11の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例11」の欄に示す。
【0070】
<実施例12>
実施例11において用いたポリウレタンゴムシートの代わりに、0.5mm厚の銅シートを用いたこと以外は、すべて実施例11と同様とした回転研削工具12を作成し、実施例11と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具12の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例12」の欄に示す。
【0071】
<実施例13>
実施例11において用いたポリウレタンゴムシートの代わりに、#240 SiCペーパーを用いたこと以外は、すべて実施例11と同様とした回転研削工具13を作成し、実施例11と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具13の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例13」の欄に示す。
【0072】
<実施例14>
実施例1において用いた直径100mm、160g、W
1=19mm(W
1/W
2=4.87)の金属円盤の代わりに、直径150mm、413g、W
1=33mm(W
1/W
2=8.46)の金属円盤(材質等は同様)を用い、これに伴って実施例1において15420mm
3であった取付部の前面の空間の体積が65425mm
3となり、実施例1において1490mm
2であった金属円盤の斜面面積が2235mm
2となり、実施例1において40%であった金属円盤とホルダーとの接触面積が30%となったこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具14を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具14の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例14」の欄に示す。
【0073】
<実施例15>
実施例1において用いた直径100mm、160g、W
1=19mm(W
1/W
2=4.87)の金属円盤の代わりに、直径180mm、667g、W
1=166mm(W
1/W
2=42.5)の金属円盤(材質等は同様)を用い、これに伴って実施例1において15420mm
3であった取付部の前面の空間の体積が65425mm
3となり、実施例1において1490mm
2であった金属円盤の斜面面積が2682mm
2となり、実施例1において40%であった金属円盤とホルダーとの接触面積が20%となったこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具15を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具15の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例15」の欄に示す。
【0074】
<実施例16>
実施例1ではステンレス鋼製(SUS304製)の金属円盤を用いたが、これに代えて普通鋼製の金属円盤を用いたこと以外は、すべて実施例1と同様とした回転研削工具16を作成し、実施例1と同様の試験を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具16の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「実施例16」の欄に示す。
【0075】
<比較例1>
次に、比較例として、
図5に示す態様の回転研削工具を製造した。
図5は金属円盤とホルダーとに分かれていない従来公知の回転研削工具を示しており、
図5(a)は概略正面図、
図5(b)は
図5(a)のB−B線断面図である。また、
図5では、理解を容易にするため、特定の硬質粒子およびこれを蝋付け接合するために用いる蝋は記していない。なお、
図5では、
図4で示した本発明の研削工具における各部に相当する部分については、同じ記号を用いて指し示している。
【0076】
初めに、
図5に示した金属回転盤を用意した。金属回転盤は実施例1の場合と同様にSUS304製で、外径(直径)が100mm、内径(前面21が構成するドーナツ型の部分の内径の直径)が54.2mm、取付孔の直径15mmのものである。
【0077】
次に、実施例1と同様に、工業用ダイヤモンド粒子を蝋付けした。ただし、工業用ダイヤモンド粒子の面密度は25個/cm
2となるようにした。
このようにして回転研削工具を得た。ここで得られた回転研削工具を、以下では「回転研削工具101」とする。なお、以下の比較例2、比較例3においても同様であり、比較例2および比較例3において得られた回転研削工具は「回転研削工具102」および「回転研削工具103」とする。
【0078】
得られた回転研削工具101の具体的な態様は、次のとおりである。
金属回転盤の前面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θ:5超10°以下
取付部の前面の空間体積(V):3746mm
3
金属回転盤の厚さ:3〜5mm
金属回転盤の質量:270g
金属回転盤における「斜面」に相当する部分の形状:曲面状
W
1:8mm
W
2:27mm
W
1/W
2=0.3
W
3:0mm(
図5(b)のような断面で見た場合、W
3は点として表れる)
金属回転盤における「斜面」に相当する部分の面積:6468mm
2
【0079】
次に得られた回転研削工具101の性能を調べるため、実施例1と同様の騒音測定およびさび研削効率測定を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具101の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「比較例1」の欄に示す。
【0080】
<比較例2>
比較例1と類似する態様の金属回転盤を製造した。比較例1の回転研削工具101と異なる点は、工業用ダイヤモンド粒子の面密度(5個/cm
2)、金属回転盤の前面の法線Xと回転中心軸Yとのなす角度θ(0°)、取付部の前面の空間体積(15520mm
3)、金属回転盤の厚さ(2mm)、金属回転盤の質量(150g)、金属回転盤の材質(普通鋼)、W
1(1152mm)、W
2(24mm)、W
1/W
2(48)、金属回転盤の斜面の面積(300mm
2)である。
【0081】
このような回転研削工具102の性能を調べるため、実施例1と同様の騒音測定およびさび研削効率測定を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具102の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「比較例2」の欄に示す。
【0082】
<比較例3>
比較例1と類似する態様の金属回転盤を製造した。比較例1の回転研削工具101と異なる点は、工業用ダイヤモンド粒子の面密度(5個/cm
2)、取付部の前面の空間体積(3000mm
3)、金属回転盤の厚さ(2mm)、金属回転盤の質量(145g)、金属回転盤の材質(普通鋼)、W
1(10.4mm)、W
2(26mm)、W
1/W
2(0.4)、金属回転盤の斜面の面積(6000mm
2)である。
【0083】
このような回転研削工具103の性能を調べるため、実施例1と同様の騒音測定およびさび研削効率測定を行った。
騒音測定結果およびさび研削効率測定結果を、回転研削工具103の具体的な態様を表すデータとともに第1表の「比較例3」の欄に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
第1表に示すように、本発明の研削工具に相当する実施例1〜16の回転研削工具1〜16を用いて試験材を研削した場合、いずれも騒音は低く、90dB未満となった。特に、ホルダーが厚い場合(実施例6、7)、前面空間体積が大きい場合(実施例9)、有機物等からなる振動吸収材を金属円盤とホルダーとの間に挟んだ場合(実施例10、11、13)には、騒音は特に小さく、85dB未満となった。
これに対して金属円盤とホルダーとに分離できない従来公知の態様である比較例1〜3の回転研削工具101〜103の場合、いずれも騒音は100dBを超えた。
このように実施例と比較例とでは研削時の騒音に明確な差異があることが確認できた。
このように本発明の研削工具に相当する回転研削工具1〜16を用いて試験材を研削した場合に騒音は低くなるのは、本発明の研削工具が金属円盤とホルダーとを結合してなることが大きく影響していると考えられる。
【0087】
また、第1表に示すように、本発明の研削工具に相当する実施例1〜16の回転研削工具1〜16を用いて試験材を研削した場合、いずれもさび研削効率が高く、31分/m
2以下であった。特に、金属円盤の斜面の形状が階段状の場合(実施例2以外)、さび研削効率が高く、23分/m
2以下であった。
これに対して比較例1〜3の場合、最もよい比較例1の場合でも43分/m
2のさび研削効率であった。
このように実施例と比較例とではさび研削効率に明確な差異があることが確認できた。
このような明確な差異が生じる理由は、回転研削工具の形状、特に、金属円盤の前面と回転中心軸がなす角度、W
1、W
2、W
1/W
2の値が実施例の場合、好ましい範囲内であるためと考えられる。