特開2015-10758(P2015-10758A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10758(P2015-10758A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】3重管式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20141216BHJP
   G01M 3/04 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   F28D7/10 A
   G01M3/04 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-135934(P2013-135934)
(22)【出願日】2013年6月28日
(71)【出願人】
【識別番号】596061373
【氏名又は名称】岩谷マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593084144
【氏名又は名称】株式会社西山製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】栗原 明夫
(72)【発明者】
【氏名】橘 紀伸
(72)【発明者】
【氏名】片野 伊佐雄
(72)【発明者】
【氏名】若竹 孝史
【テーマコード(参考)】
2G067
3L103
【Fターム(参考)】
2G067AA12
2G067AA34
2G067BB11
2G067BB31
2G067CC02
3L103AA44
3L103BB43
3L103CC02
3L103CC30
3L103DD10
3L103DD36
3L103DD37
(57)【要約】
【課題】内管と漏洩検知管とを周方向に山部と谷部を繰り返す多葉管に構成しながら高い熱交換性能を確保できる3重管式熱交換器を提供する。
【解決手段】3重管式熱交換器(1)は、管壁が周方向に山部(2b)と谷部(2a)が繰り返す波形形状をなす多葉管からなる内管(2)と、この内管(2)と略同形状の多葉管からなり且つ内管(2)に外嵌させて内管(2)の外周面近傍部に配置された漏洩検知管(3)と、内管(2)と漏洩検知管(3)とが内部に収納された外管(4)とを備え、内管(2)の内部(5)を流れる流体と、漏洩検知管(3)と外管(4)との間の隙間(6)に流れる流体との間で熱交換可能に構成され、谷部 (2a,3a)において内管(2)と漏洩検知管(3)との間に隙間(8)が形成されており、山部(2b,3b) の一部において内管(2)と漏洩検知管(3)との間に隙間(9)が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管壁が周方向に山部と谷部が繰り返す波形形状をなす多葉管からなる内管と、この内管と略同形状の多葉管からなり且つ内管に外嵌させて内管の外周面近傍部に配置された漏洩検知管と、前記内管と漏洩検知管が内部に収納された外管とを備え、前記内管の内部を流れる流体と、前記漏洩検知管と前記外管との間の隙間に流れる流体との間で熱交換可能に構成した3重管式熱交換器であって、
前記谷部において、前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されていることを特徴とする3重管式熱交換器。
【請求項2】
前記山部の一部において、前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の3重管式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3重管式熱交換器に関し、特に内管とこの内管に外嵌された漏洩検知管からなる2重構造の多葉管を外管の内部に収容した3重管式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼式熱源機やヒートポンプ式熱源機や燃料電池等で加熱した湯水を貯湯する貯湯給湯装置、湯水を用いる暖房装置、その他の種々の産業分野においては、高温の流体と低温の流体との間で熱交換させる為の種々の熱交換器が使用されている。
【0003】
特に、2重管式熱交換器は、熱交換性能に優れ且つ製作費の面で有利であるため広く採用されており、最近では、内管として管壁が周方向に山部と谷部を繰り返す波形形状をなす多葉管を用い、その多葉管を外管の内部に収納した2重管式熱交換器も採用されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示された2重管式熱交換器においては、山部と谷部を周方向に交互に繰り返す波形形状の多葉管からなる内管を外管の内部に収納し、6つの山部の頂部を外管の内周面に密着させ、6つの谷部は相互に離間した状態に形成されている。
【0005】
ここで、例えば貯湯給湯装置に用いる2重管式熱交換器において、例えば内管内に冷媒を流し、内管と外管との間の隙間に湯水を流すような場合に、内管に亀裂が発生すると冷媒が漏洩して湯水に混入する虞がある。
【0006】
そこで、特許文献2には、管部材の内部を流れる流体が管部材の外部へ漏出した場合に、その漏洩を検知すると共に漏洩した流体が管ぶ外側の流体に混入するのを防止するため、内周面に多数条の漏洩検知溝を形成した漏洩検知用外管を、前記管部材に密着状に外嵌させた2重構造漏洩検知管が開示されている。
【0007】
特許文献3の放熱器は、ヒートポンプ給湯機の貯湯タンク内に設置されるものであり、この放熱器は、3本の円形断面の伝熱管を離隔して配置し、これら伝熱管の外表面を被覆管で被覆した構造である。被覆管は、伝熱管の内部の冷媒が伝熱管から漏洩した場合に、その冷媒が被覆管の外側の流体に混入するのを防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−232449号公報
【特許文献2】特許第3933083号公報
【特許文献3】特開2006−250417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のような2重管式熱交換器において、多葉管からなる内管の外側に被覆管としての漏洩検知管を設け、この漏洩検知管の内面の全域に特許文献2に記載の多数条の漏洩検知溝を形成することが考えられる。
しかし、その2重管式熱交換器では、多数条の漏洩検知溝には空気層があるため、また、内管と漏洩検知管の間の伝熱面積が小さくなるため、熱交換性能を高めることが困難であるだけでなく、多数条の漏洩検知溝を形成する加工費も高価になる。
【0010】
特許文献3の放熱器を2重管式熱交換器に適用することも可能であるが、この放熱器は3本の円形断面の伝熱管を被覆管で被覆した構造であるため、伝熱管の部材数が多く、製作費が高価になる。
【0011】
本発明の目的は、内管と漏洩検知管とを周方向に山部と谷部を繰り返す多葉管に構成しながら漏洩検知機能を確保できる3重管式熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の3重管式熱交換器は、管壁が周方向に山部と谷部が繰り返す波形形状をなす多葉管からなる内管と、この内管と略同形状の多葉管からなり且つ内管に外嵌させて内管の外周面近傍部に配置された漏洩検知管と、前記内管と漏洩検知管が内部に収納された外管とを備え、前記内管の内部を流れる流体と、前記漏洩検知管と前記外管との間の隙間に流れる流体との間で熱交換可能に構成した3重管式熱交換器であって、前記谷部において、前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2の3重管式熱交換器は、請求項1の発明において、前記山部の一部において、前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、管壁が周方向に山部と谷部が繰り返す波形形状をなす多葉管からなる内管と、この内管と略同形状の多葉管からなり且つ内管に外嵌させて内管の外周面近傍部に配置された漏洩検知管と、前記内管と漏洩検知管が内部に収納された外管とを備えた3重管式熱交換器であり、前記谷部において前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されているため、内管の谷部と漏洩検知管の谷部とを活用して漏洩検知用の隙間を形成することができ、内管の谷部からの流体の漏洩を検知することが可能になる。
谷部は曲率半径も小さく大きな応力が発生して破損しやすいため、前記漏洩検知用の隙間を形成することで、漏洩を確実に検知することができる。尚、漏洩検知管の内面に多数条の漏洩検知溝を形成する必要がないから、製作費も節減できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、前記山部の一部において、前記内管と前記漏洩検知管との間に隙間が形成されているため、内管の山部からの流体の漏洩を検知することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例に係る3重管式熱交換器の内管と漏洩検知管の断面図である。
図2】内管と漏洩検知管とからなる2重多葉管の部分斜視図
図3】3重管式熱交換器の断面図である。
図4】3重管式熱交換器の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0018】
本発明に係る3重管式熱交換器1について図1図4に基づいて説明する。
この3重管式熱交換器1は、内管2と漏洩検知管3と外管4とを備えている。内管2と漏洩検知管3と外管4は、例えばリン脱酸銅製の円形断面の水道用銅管又はこれと同等品からなる所定の長さの素材管を用いて製作される。素材管の管壁の厚さは例えば0.6〜1.0mmで、3重管式熱交換器の外径は例えば16〜20mmである。但し、これらの数値は例示でありこれらに限定されるものではない。
【0019】
内管2は、管壁が周方向に山部2bと谷部2aが繰り返す波形形状をなす多葉管に構成されている。漏洩検知管3は、内管2とほぼ同形状の多葉管からなり、内管2に外嵌させて内管2の外周面近傍部に配置されている。外管4の内部に内管2と漏洩検知管3とが収納されている。
【0020】
内管2の内部には、4つの谷部2aで囲まれた流体通路5aと4つの山部2b内側の流体通路5bとからなる内側流体通路5が形成され、漏洩検知管3と外管4との間には4つのほぼ三角形断面の流体通路6aからなる外側流体通路6が形成され、内管2の内部(内側流体通路5)を流れる流体(例えばヒートポンプ用冷媒)と、漏洩検知管3と外管4との間の隙間6a(外側流体通路6)を流れる流体(例えば給湯用湯水)との間で熱交換可能に構成してある。
【0021】
内管2と漏洩検知管3を製作する際には、内管2の素材管を漏洩検知管3の素材管に挿入した2重管を加工することで2重構造の多葉管7(以下、2重多葉管という)に製作する。この2重多葉管7を外管4の素材管に挿入した状態で、少なくとも外管4を縮径加工することで3重管式熱交換器1を製作する。尚、2重多葉管7と外管4の両方を縮径加工してもよい。
この3重管式熱交換器1の製作段階においては、例えば6mの長さのストレート形状の熱交換器に製作し、その後所望の長さに切断したものを例えば複数回螺旋状に巻回したコイル形状の3重管式熱交換器にして使用に供される。
【0022】
この2重多葉管7は、図2に示すように、所定のリード角をもって螺旋状に捩じった形状に構成されている。前記所定のリード角は、軸心方向に例えば300〜500mm移行する毎に1回転するような角度である。上記の捩じりを付加してあるため、3重管式熱交換器1をコイル状に巻回した構造の熱交換器に構成する際に巻回しやすくなる上、3重管式熱交換器1内を流れる流体に対する攪拌作用が得られる。但し、上記の捩じりは必須のものではなく省略してもよい。
【0023】
内管2は、4つの谷部2aと4つの山部2bとを有し、谷部2aは円弧的な形状であり、山部2bは円弧の両端部に湾曲部を付けた形状である。4つの谷部2aは、中心部の断面略正方形の流体通路5aの回りに周方向に90°間隔に配置され、各谷部2aの先端近傍部は周方向に隣接する谷部2aと接触している。それ故、3重管式熱交換器1の中心側部分において内管2の剛性が高まり、流体から伝播する振動等によって破損しにくくなる。
【0024】
漏洩検知管3は、4つの谷部3aと4つの山部3bとを有し、谷部3aは円弧的な形状であり、山部3bは円弧の両端部に湾曲部を付けた形状である。各谷部3aは対応する内管2の谷部2aの外面の近傍部に位置し、内管2の各谷部2aとそれに対応する漏洩検知管3の谷部3aの間に三日月形の流体が流通し得る隙間8が形成されている。そのため、内管2から例えば冷媒が隙間8に漏洩した場合には、それを検知することで、内管2からの流体の漏洩の発生を確実に検知することができる。尚、谷部2aの曲率半径が小さいため、大きな応力が発生して破損しやすいため、谷部2aと谷部3aの間に隙間8を形成することで、内管2からの漏洩を検知しやすくなる。
【0025】
内管2の多葉管の軸心直交断面の断面形状は、山部2bと谷部2aとを接続する直線部2cを有し、漏洩検知管3の多葉管の軸心直交断面の断面形状は、山部3bと谷部3aとを接続する直線部3cを有し、内管2の直線部2cと、それに対向する漏洩検知管3の直線部3cとが面接触状に密着している。尚、直線部2c,3cは螺旋状に捩じられた帯板状管壁であり、このように、帯板状管壁2c,3cが密着しているため、内側流体通路5内を流れる流体と、外側流体通路6内を流れる流体との間の熱交換性能が高くなる。しかも、内管2と漏洩検知管3の一体性が高まるため、剛性を確保する上で有利である。
尚、山部2bとそれに連なる1対の直線部2cは、開角が約45°の扇形に形成されており、漏洩検知管3についても同様である。
【0026】
内管2の山部2bの大部分は漏洩検知管3の山部3bの内面に面接触状に密着すると共に、漏洩検知管3の山部3bの大部分が外管4の内面に面接触状に密着している。そのため、3重管式熱交換器1の全体の剛性を高めることができる上、内側流体通路5内を流れる流体と外側流体通路6内を流れる流体との間の熱交換性能も高くなる。
また、内管3の各山部2bの両側部において、内管2と漏洩検知管3との間に小さな厚さの三日月形の隙間9が形成されている。これは、山部2bの両側部も曲率半径が小さいため、大きな応力が発生する可能性が高いからである。
【0027】
次に、上記の3重管式熱交換器1の作用、効果については、以上の説明において詳しく説明したとおりであるので、以下に簡単に説明する。
この3重管式熱交換器1においては、内管2と漏洩検知管3とで2重多葉管7を構成し、この2重多葉管7を外管4の内部に収納したので、内側流体通路5内の流体と外側流体通路6内の流体との間で熱交換する伝熱面積を大きくすることができる。その結果、熱交換性能の高い3重管式熱交換器1となる。
【0028】
漏洩検知管3を内管2に外嵌させて内管2の外周面近傍部に配置したため、内管2の外周面の大部分が漏洩検知管3の内周面の大部分に面接触する構造になった。そのため、熱交換性能を高めることができた。しかも、仮に内管2から流体が漏洩したとしても、漏洩検知管3内に閉じ込められて、外側流体通路6へは漏洩しないため、3重管式熱交換器1の品質と信頼性を高めることができた。また、内管2が1本の素材管から構成されるため、部材数が少なくなり、製作費を節減できる。
【0029】
谷部2a,3a間に隙間8を形成するため、内管2から流体が漏洩した場合に、隙間8を介してその漏洩を検知することができる。直線部2c,3c同士を面接触状に密着させたため、熱交換性能を高めることができた。そして、内管2の谷部2aの先端近傍部が隣接する谷部2aに密着しているため、3重管式熱交換器1の中心側部分における内管2の剛性と、2重多葉管7の剛性を高めることができる。
【0030】
内管2の山部2bの大部分が漏洩検知管3の山部3bの内面に密着し、漏洩検知管3の山部3bの大部分が外管4の内面に面接触状に密着しているため、3重管式熱交換器1の全体の剛性を高めることができるうえ、熱交換性能も高めることができる。2重多葉管7が螺旋状に捩じられているため、3重管式熱交換器1をコイル状に巻回して熱交換器にする場合に、巻回しやすくなり、内側流体通路5と外側流体通路6内を流れる流体に対する攪拌作用が得られる。
【0031】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)内管2と漏洩検知管3からなる2重多葉管7における、谷部2a,3aの数と山部2b,3bの数は、4に限らず、3又は5以上でもよい。
【0032】
2)内管2と漏洩検知管3と外管4の素材管の金属材料は、リン脱酸銅に限るものではなく、その他の種々の銅材料でもよく、銅以外の金属(例えば、アルミニウムやその合金、真鍮、マグネシウム合金、チタンなど)であってもよい。内管2と漏洩検知管3と外管4を同種の金属材料の素材管から製作するとは限らず、異なる種類の金属材料の素材管から製作してもよい。また、内管2の管壁の厚さと漏洩検知管3の管壁の厚さは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0033】
3)3重管式熱交換器1の断面の外形輪郭の形状を、円形以外の形状(例えば、楕円形、長円形など)に構成することも可能である。
4)3重管式熱交換器1の外径は、前記実施例に記載のものに限定されるものではなく、種々の外径に設定することができる。
5)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
2種類の流体間の熱交換に供する3重管式熱交換器であって、種々の産業分野で利用可能な3重管式熱交換器が開示されている。
【符号の説明】
【0035】
1 3重管式熱交換器
2 内管
2a 谷部
2b 山部
2c 直線部
3 漏洩検知管
3a 谷部
3b 山部
3c 直線部
4 外管
5 内側流体通路
6 外側流体通路
7 2重多葉管
8 隙間
9 隙間
図1
図2
図3
図4