【実施例】
【0018】
本発明に係る3重管式熱交換器1について
図1〜
図4に基づいて説明する。
この3重管式熱交換器1は、内管2と漏洩検知管3と外管4とを備えている。内管2と漏洩検知管3と外管4は、例えばリン脱酸銅製の円形断面の水道用銅管又はこれと同等品からなる所定の長さの素材管を用いて製作される。素材管の管壁の厚さは例えば0.6〜1.0mmで、3重管式熱交換器の外径は例えば16〜20mmである。但し、これらの数値は例示でありこれらに限定されるものではない。
【0019】
内管2は、管壁が周方向に山部2bと谷部2aが繰り返す波形形状をなす多葉管に構成されている。漏洩検知管3は、内管2とほぼ同形状の多葉管からなり、内管2に外嵌させて内管2の外周面近傍部に配置されている。外管4の内部に内管2と漏洩検知管3とが収納されている。
【0020】
内管2の内部には、4つの谷部2aで囲まれた流体通路5aと4つの山部2b内側の流体通路5bとからなる内側流体通路5が形成され、漏洩検知管3と外管4との間には4つのほぼ三角形断面の流体通路6aからなる外側流体通路6が形成され、内管2の内部(内側流体通路5)を流れる流体(例えばヒートポンプ用冷媒)と、漏洩検知管3と外管4との間の隙間6a(外側流体通路6)を流れる流体(例えば給湯用湯水)との間で熱交換可能に構成してある。
【0021】
内管2と漏洩検知管3を製作する際には、内管2の素材管を漏洩検知管3の素材管に挿入した2重管を加工することで2重構造の多葉管7(以下、2重多葉管という)に製作する。この2重多葉管7を外管4の素材管に挿入した状態で、少なくとも外管4を縮径加工することで3重管式熱交換器1を製作する。尚、2重多葉管7と外管4の両方を縮径加工してもよい。
この3重管式熱交換器1の製作段階においては、例えば6mの長さのストレート形状の熱交換器に製作し、その後所望の長さに切断したものを例えば複数回螺旋状に巻回したコイル形状の3重管式熱交換器にして使用に供される。
【0022】
この2重多葉管7は、
図2に示すように、所定のリード角をもって螺旋状に捩じった形状に構成されている。前記所定のリード角は、軸心方向に例えば300〜500mm移行する毎に1回転するような角度である。上記の捩じりを付加してあるため、3重管式熱交換器1をコイル状に巻回した構造の熱交換器に構成する際に巻回しやすくなる上、3重管式熱交換器1内を流れる流体に対する攪拌作用が得られる。但し、上記の捩じりは必須のものではなく省略してもよい。
【0023】
内管2は、4つの谷部2aと4つの山部2bとを有し、谷部2aは円弧的な形状であり、山部2bは円弧の両端部に湾曲部を付けた形状である。4つの谷部2aは、中心部の断面略正方形の流体通路5aの回りに周方向に90°間隔に配置され、各谷部2aの先端近傍部は周方向に隣接する谷部2aと接触している。それ故、3重管式熱交換器1の中心側部分において内管2の剛性が高まり、流体から伝播する振動等によって破損しにくくなる。
【0024】
漏洩検知管3は、4つの谷部3aと4つの山部3bとを有し、谷部3aは円弧的な形状であり、山部3bは円弧の両端部に湾曲部を付けた形状である。各谷部3aは対応する内管2の谷部2aの外面の近傍部に位置し、内管2の各谷部2aとそれに対応する漏洩検知管3の谷部3aの間に三日月形の流体が流通し得る隙間8が形成されている。そのため、内管2から例えば冷媒が隙間8に漏洩した場合には、それを検知することで、内管2からの流体の漏洩の発生を確実に検知することができる。尚、谷部2aの曲率半径が小さいため、大きな応力が発生して破損しやすいため、谷部2aと谷部3aの間に隙間8を形成することで、内管2からの漏洩を検知しやすくなる。
【0025】
内管2の多葉管の軸心直交断面の断面形状は、山部2bと谷部2aとを接続する直線部2cを有し、漏洩検知管3の多葉管の軸心直交断面の断面形状は、山部3bと谷部3aとを接続する直線部3cを有し、内管2の直線部2cと、それに対向する漏洩検知管3の直線部3cとが面接触状に密着している。尚、直線部2c,3cは螺旋状に捩じられた帯板状管壁であり、このように、帯板状管壁2c,3cが密着しているため、内側流体通路5内を流れる流体と、外側流体通路6内を流れる流体との間の熱交換性能が高くなる。しかも、内管2と漏洩検知管3の一体性が高まるため、剛性を確保する上で有利である。
尚、山部2bとそれに連なる1対の直線部2cは、開角が約45°の扇形に形成されており、漏洩検知管3についても同様である。
【0026】
内管2の山部2bの大部分は漏洩検知管3の山部3bの内面に面接触状に密着すると共に、漏洩検知管3の山部3bの大部分が外管4の内面に面接触状に密着している。そのため、3重管式熱交換器1の全体の剛性を高めることができる上、内側流体通路5内を流れる流体と外側流体通路6内を流れる流体との間の熱交換性能も高くなる。
また、内管3の各山部2bの両側部において、内管2と漏洩検知管3との間に小さな厚さの三日月形の隙間9が形成されている。これは、山部2bの両側部も曲率半径が小さいため、大きな応力が発生する可能性が高いからである。
【0027】
次に、上記の3重管式熱交換器1の作用、効果については、以上の説明において詳しく説明したとおりであるので、以下に簡単に説明する。
この3重管式熱交換器1においては、内管2と漏洩検知管3とで2重多葉管7を構成し、この2重多葉管7を外管4の内部に収納したので、内側流体通路5内の流体と外側流体通路6内の流体との間で熱交換する伝熱面積を大きくすることができる。その結果、熱交換性能の高い3重管式熱交換器1となる。
【0028】
漏洩検知管3を内管2に外嵌させて内管2の外周面近傍部に配置したため、内管2の外周面の大部分が漏洩検知管3の内周面の大部分に面接触する構造になった。そのため、熱交換性能を高めることができた。しかも、仮に内管2から流体が漏洩したとしても、漏洩検知管3内に閉じ込められて、外側流体通路6へは漏洩しないため、3重管式熱交換器1の品質と信頼性を高めることができた。また、内管2が1本の素材管から構成されるため、部材数が少なくなり、製作費を節減できる。
【0029】
谷部2a,3a間に隙間8を形成するため、内管2から流体が漏洩した場合に、隙間8を介してその漏洩を検知することができる。直線部2c,3c同士を面接触状に密着させたため、熱交換性能を高めることができた。そして、内管2の谷部2aの先端近傍部が隣接する谷部2aに密着しているため、3重管式熱交換器1の中心側部分における内管2の剛性と、2重多葉管7の剛性を高めることができる。
【0030】
内管2の山部2bの大部分が漏洩検知管3の山部3bの内面に密着し、漏洩検知管3の山部3bの大部分が外管4の内面に面接触状に密着しているため、3重管式熱交換器1の全体の剛性を高めることができるうえ、熱交換性能も高めることができる。2重多葉管7が螺旋状に捩じられているため、3重管式熱交換器1をコイル状に巻回して熱交換器にする場合に、巻回しやすくなり、内側流体通路5と外側流体通路6内を流れる流体に対する攪拌作用が得られる。
【0031】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)内管2と漏洩検知管3からなる2重多葉管7における、谷部2a,3aの数と山部2b,3bの数は、4に限らず、3又は5以上でもよい。
【0032】
2)内管2と漏洩検知管3と外管4の素材管の金属材料は、リン脱酸銅に限るものではなく、その他の種々の銅材料でもよく、銅以外の金属(例えば、アルミニウムやその合金、真鍮、マグネシウム合金、チタンなど)であってもよい。内管2と漏洩検知管3と外管4を同種の金属材料の素材管から製作するとは限らず、異なる種類の金属材料の素材管から製作してもよい。また、内管2の管壁の厚さと漏洩検知管3の管壁の厚さは同じでもよく、異なっていてもよい。
【0033】
3)3重管式熱交換器1の断面の外形輪郭の形状を、円形以外の形状(例えば、楕円形、長円形など)に構成することも可能である。
4)3重管式熱交換器1の外径は、前記実施例に記載のものに限定されるものではなく、種々の外径に設定することができる。
5)その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施することができる。