【解決手段】ワイヤロープテンション治具10では、4つのスライドプレート41〜44がワイヤロープ1の周方向に均等に配置されて周方向に離間している。各スライドプレート41〜44の径内方向側の各内側縁部41b〜44bによって、ワイヤロープ1の径より僅かに大きい挿通孔10aが形成される。各スライドプレート41〜44は、上側ブラケット20及び下側ブラケット30に覆われる。対向する一対のスライドプレート(41,43)(42,44)は対称的な形状で、それぞれの外側縁部(41a,43a)(42a,44a)が第1ブラケット20の内側面20a又は第2ブラケット30の内側面30aに当接している。第1ブラケット20及び第2ブラケット30は、締付トルクを調節可能な連結ボルト70によって連結される。
【背景技術】
【0002】
アースドリル等の建設機械にはウインチドラムが搭載されていて、このウインチドラムにワイヤロープが巻回されている。ワイヤロープは、ウインチドラムの幅方向に複数列(例えば15列)並び、且つウインチドラムの径外方向に多層(例えば7層)重なるように、綺麗に整列して巻回されている。このワイヤロープは、大きな負荷が作用した状態で繰り返し巻き取り又は巻き出されるため、摩耗が進んでいく。従って、定期的に新品のワイヤロープに交換されるようになっている。
【0003】
ここで、新品のワイヤロープをウインチドラムに仕込む際には、ワイヤロープに十分なテンションを付与しながら巻き付けなければならない。仮にワイヤロープに十分なテンションが付与されていないと、ワイヤロープがウインチドラムに綺麗に整列して巻回されずに、緩んだ状態で乱巻きされるためである。そうなると、ワイヤロープが巻き出される際に、ワイヤロープが吊っている吊荷等が瞬間的に降下する。その結果、ワイヤロープに過剰な引張荷重が作用して、ワイヤロープの損傷が進むことになる。
【0004】
そこで、下記特許文献1には、ワイヤロープにテンションを付与するワイヤロープテンション治具が提案されている。下記特許文献1のワイヤロープテンション治具では、
図10に示すように、新品のワイヤロープ101をウインチドラム102に仕込む際に、ロープ挟持機120とトルク吸収機130が配置される。そして、ロープ挟持機120のブロック半割体121,122を互いに組付けて、ブロック半割体121,122の内部に収容された一対の摩擦部材123,124でワイヤロープ101を挟み込む。
【0005】
これにより、ウインチドラム102を回転駆動させて、樽巻きドラム103からワイヤロープ101を巻き出すと、ワイヤロープ101がウインチドラム102に巻き取られる。このとき、ロープ挟持機120の各梃子状レバー125,126が、各連結アーム127,128によって
図10の矢印A方向へ互いに接近するように回動し、各梃子状レバー125,126の基端部125a,126aが各摩擦部材123,124を
図10の矢印B方向へ押動する。こうして、各摩擦部材123,124は、その係合突部123a,124aがガイド穴121a,122aに沿ってガイドされて、ワイヤロープ101を径方向外側から挟持してテンションを付与するようになっている。
【0006】
また、このワイヤロープテンション治具110では、ロープ挟持機120がワイヤロープ101から
図1の矢印C方向の回転トルクを受けると、この回転トルクが各梃子状レバー125,126と各連結アーム127,128を介してトルク吸収機130のアウタ筒部131に伝達される。このとき、トルク吸収機130では、アウタ筒部131がインナ筒部132に対して相対回転して、回転トルクを吸収する。こうして、ワイヤロープ101で生じる捩り力(回転トルク)をトルク吸収機130で吸収して、ワイヤロープ101の形状が崩れる等の不具合を防止できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、アースドリル等において、ウインチドラムに巻回されているワイヤロープには、掘削作業の際に特に大きな負荷が作用し易い。このため、ワイヤロープの摩耗が激しく、作業現場で新品のワイヤロープに交換する場合があり得る。ここで、作業現場で新品のワイヤロープに交換する場合、上記特許文献1に記載されたワイヤロープテンション治具110を用いようとしても、ワイヤロープテンション治具110自体が比較的大きく且つ複雑な構造であるため、作業現場では容易に用い難いという問題点がある。
【0009】
また、上記特許文献1のワイヤロープテンション治具では、ロープ挟持機120の一対の摩擦部材123,124が二方向(図の左右両側)からワイヤロープ101を挟んでいるため、ワイヤロープ101が押し潰されて平らになるおそれがある。そして、ワイヤロープ101がロープ挟持機120を通って送られる際に、ワイヤロープ101が二方向から強く挟まれることで、撚りが解けて団子のような塊が生じる可能性がある。こうして、新品のワイヤロープにも拘わらず、ワイヤロープに型崩れが生じるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、比較的小さく且つ簡易な構造であって、ワイヤロープに型崩れを生じさせないワイヤロープテンション治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るワイヤロープテンション治具は、建設機械のウインチドラムに巻き取られるワイヤロープにテンションを付与するものであって、前記ワイヤロープの周方向に4つ以上の偶数個に均等に配置されて且つそれぞれ周方向に離間している各スライドプレートを備え、前記各スライドプレートの径内方向側の各内側縁部によって前記ワイヤロープの径より僅かに大きい挿通孔が形成されていて、前記挿通孔の一方側の半分を形成している各スライドプレートを覆う第1ブラケットと、前記挿通孔の他方側の半分を形成している各スライドプレートを覆う第2ブラケットとを備え、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットを固定物に連結する反力受け部が設けられていて、前記ワイヤロープの径方向に対向する一対のスライドプレートは、前記ワイヤロープの軸中心に対して対称的な形状で、それぞれの径外方向側の外側縁部が前記第1ブラケットの内側面又は前記第2ブラケットの内側面に当接していて、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットは、締付トルクを調整可能な連結ボルトによって連結されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るワイヤロープテンション治具によれば、ワイヤロープを挿通孔に貫通させて、第1ブラケットと第2ブラケットを連結ボルトによって規定の締付トルクで連結する。これにより、各スライドプレートの各外側縁部が、第1ブラケットの内側面及び第2ブラケットの内側面によってワイヤロープの軸中心に向けて押圧される。こうして、ワイヤロープは、各スライドプレートの各内側縁部によって、4つ以上の偶数個の部位で径内方向へ均等に押圧されて、テンションが付与される。この結果、ワイヤロープが平らに押し潰されることがなく、ワイヤロープに型崩れが生じることを防止できる。また、本発明に係るワイヤロープテンション治具は、主に各スライドプレートと、第1ブラケット及び第2ブラケットと、反力受け部と、連結ボルトとを備えたものであり、比較的小さく且つ簡易な構造である。従って、作業現場で新品のワイヤロープに交換するような場合でも、作業現場で容易に用いることができるものである。
【0013】
また、本発明に係るワイヤロープテンション治具において、前記各スライドプレートは、前記ワイヤロープの周方向に90度ずつ配置されている4個の同一形状のプレートであり、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットは、前記内側面がL字状に形成されてい
る同一形状のブラケットであることが好ましい。
この場合には、ワイヤロープを4つ以上の方向から軸中心に向けて均等に押圧する構造として、スライドプレートの個数が最も少なくなる。そして、各スライドプレートが同一形状であると共に、第1ブラケットと第2ブラケットが同一形状であるため、ワイヤロープテンション治具として最も簡易な構造である。
【0014】
また、本発明に係るワイヤロープテンション治具において、前記各スライドプレートは樹脂製であり、前記各スライドプレートの各内側縁部がそれぞれ曲面状であり、前記挿通孔が円形状になっていると良い。
この場合には、各スライドプレートが樹脂製であり且つ挿通孔が円形状であるため、ワイヤロープが各スライドプレートの各内側縁部に対してスライドする際に、ワイヤロープが傷付き難い。
【0015】
また、本発明に係るワイヤロープテンション治具において、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットと前記各スライドプレートの長手方向の長さが、前記ワイヤロープの撚り長さより、長いと良い。
この場合には、ワイヤロープがワイヤロープテンション治具によってテンションを付与される際に、撚りの長さより長い距離で押圧される。即ち、ワイヤロープの長手方向のうち比較的長い距離でテンションが付与されて、比較的短い距離でテンションが局所的に付与されない。これにより、テンションが付与される際のワイヤロープの摩耗量を減らすことができて、ワイヤロープの寿命を延ばすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のワイヤロープテンション治具によれば、比較的小さく且つ簡易な構造であって、ワイヤロープに型崩れが生じることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るワイヤロープテンション治具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のワイヤロープテンション治具10とワイヤロープ1を示した斜視図である。
図1に示すように、ワイヤロープテンション治具10は、ワイヤロープ1を貫通させた状態でワイヤロープ1にテンションを付与するものである。
【0019】
図2は、本実施形態のワイヤロープテンション治具10の使用状況を示した図である。ワイヤロープは使用するに従って摩耗が進むため、定期的に交換する必要がある。このため、
図2に示すように、新品のワイヤロープ1がアースドリル2の第1ウインチドラム2aに仕込まれる。このとき、ワイヤロープ1を第1ウインチドラム2aに綺麗に整列して巻回するために、ワイヤロープ1がワイヤロープテンション治具10によってテンションが付与された状態で、第1ウインチドラム2aに巻き取られる。
【0020】
なお、本実施形態では、吊り上げ用の昇降ロープであるワイヤロープ1を第1ウインチドラム2aに仕込む場合について説明するが、ワイヤロープとウインチドラムは適宜変更可能である。例えば、補巻ロープを第2ウインチドラム2bに仕込む場合にワイヤロープテンション治具10を用いても良く、起伏ロープを第3ウインチドラム2cに仕込む場合にワイヤロープテンション治具10を用いても良い。また、ワイヤロープテンション治具10が用いられる建設機械は、例えば杭打機であっても良く、適宜変更可能である。
【0021】
ところで、従来において、ワイヤロープを第1ウインチドラムに仕込む場合に、ワイヤロープを人力で引っ張りながらテンションを付与する方法がある。しかし、この方法では、ワイヤロープに十分なテンションを付与することができなくて、ワイヤロープが緩んだ状態で乱巻きされるおそれがあった。また、
図11に示すように、ワイヤロープ201を木の板や鉄板等の板材202,203で挟んで地面に置き、油圧ショベル3のバケット3aで板材202,203を上から押し付けて、ワイヤロープ201にテンションを付与する方法がある。しかし、この方法では、ワイヤロープ201が押し潰されて平らになると共に、ワイヤロープ201に適切なテンションを付与することが難しかった。
【0022】
また、発明が解決しようとする課題で説明したように、
図10に示すワイヤロープテンション治具110を用いても、ワイヤロープ101を二方向(
図10の左右両側)から強く挟むため、ワイヤロープに型崩れが生じるおそれがある。更に、従来のワイヤロープテンション治具は、比較的大きく且つ複雑な構造であるものが多く、アースドリル2で掘削作業を行うような作業現場では、容易に用い難いという問題点があった。
【0023】
そこで、本実施形態のワイヤロープテンション治具10は、上記した問題点を解消できるように、以下のように構成されている。
図3は
図1に示したワイヤロープテンション治具10の側面図であり、
図4はワイヤロープテンション治具10の正面図であり、
図5は
図4の中央部分の拡大図であり、
図6は、ワイヤロープテンション治具10の平面図である。
【0024】
ワイヤロープテンション治具10は、
図3〜
図6に示すように、上側ブラケット20と、下側ブラケット30と、4つのスライドプレート41,42,43,44と、前側プレート50U,50Dと、後側プレート60U,60Dと、連結ボルト70とを備えて構成されている。なお、上側ブラケット20及び下側ブラケット30が、本発明の「第1ブラケット及び第2ブラケット」に相当する。
【0025】
上側ブラケット20は、ワイヤロープテンション治具10の上側を構成するものであり、断面が略L字状で長手方向(
図3の左右方向)に延び、長手方向長さがL1になっている。ここで、上側ブラケット20及び下側ブラケット30の長手方向と、ワイヤロープ1の長手方向は同一方向であるため、以下では単に「長手方向」と呼ぶ。
図4に示すように、上側ブラケット20の上側部分が上方向に突出するL字状になっていて、その頂上部分に上方向に延びる上側ピース21が設けられている。また、上側ブラケット20の両端部分が上下方向に延びていて、それら両端部分に水平方向に延びる水平連結部22,23が設けられている。
【0026】
下側ブラケット30は、ワイヤロープテンション治具10の下側を構成するものであり、断面が略L字状で長手方向に延び、長手方向長さがL1になっている。下側ブラケット30の下側部分が下方向に突出するL字状になっていて、その底部分に下方向に延びる
下側ピース31が設けられている。また、下側ブラケット30の両端部分が上下方向に延びていて、それら両端部分に水平方向に延びる水平連結部32,33が設けられている。
【0027】
こうして、上側ブラケット20と下側ブラケット30は、上下対称に配置されていて、同一形状のブラケットである。そして、上側ブラケット20及び下側ブラケット30の内部に、各スライドプレート41,42,43,44が収容されている。上側ブラケット20と下側ブラケット30とは直接的に接していないが、水平連結部22,23と水平連結部32,33とが上下方向に離れた状態で平行になっていて、これら水平連結部22,23,32,33が4つの連結ボルト70によって連結されるようになっている。
【0028】
各スライドプレート41,42,43,44は、ワイヤロープ1の周りに配置されて、ワイヤロープ1にテンションを付与するものである。これらスライドプレート41,42,43,44は、
図4に示すように、ワイヤロープ1の周方向に90度ずつ均等に配置されていて、それぞれ周方向に離間している。また、各スライドプレート41,42,43,44は、断面が略6角形状で長手方向に延び、長手方向長さがL1になっていて、それぞれ同一形状のプレートである。
【0029】
ここで、各スライドプレート41,42,43,44を区別して説明するときには、
図5の左上に配置されているスライドプレートを「左上スライドプレート41」と呼び、
図5の右上に配置されているスライドプレートを「右上スライドプレート42」と呼び、
図5の左下に配置されているスライドプレートを「左下スライドプレート43」と呼び、
図5の右下に配置されているスライドプレートを「右下スライドプレート44」と呼ぶことにする。
【0030】
図5に示すように、左上スライドプレート41では、ワイヤロープ1の軸中心O1を基準として、径外方向側の外側縁部41aが、上側ブラケット20のうちL字状に形成されている内側面20aの一辺部分に当接している。そして、左上スライドプレート41の径内方向側の内側縁部41bが、周方向に約90度分だけ湾曲した曲面状になっている。右上スライドプレート42では、径外方向側の外側縁部42aが、上側ブラケット20の内側面20aの他辺部分に当接している。そして、右上スライドプレート42の径内方向側の内側縁部42bが、周方向に約90度分だけ湾曲した曲面状になっている。
【0031】
また、左下スライドプレート43では、径外方向側の外側縁部43aが、下側ブラケット30のうちL字状に形成されている内側面30aの一辺部分に当接している。そして、左下スライドプレート43の径内方向側の内側縁部43bが、周方向に約90度分だけ湾曲した曲面状になっている。右下スライドプレート44では、径外方向側の外側縁部44aが、下側ブラケット30の内側面30aの他辺部分に当接している。そして、右下スライドプレート44の径内方向側の内側縁部44bが、周方向に約90度分だけ湾曲した曲面状になっている。
【0032】
こうして、各スライドプレート41,42,43,44は、上下左右対称に配置されていて、各内側縁部41b,42b,43b,44bによって、各ワイヤロープ1の径より僅かに大きい円形状の挿通孔10aが形成されている。そして、ワイヤロープ1の径方向に対向する一対のスライドプレート、即ち左上スライドプレート41と右下スライドプレート44は、ワイヤロープ1の軸中心O1に対して対称的な形状で、外側縁部41a,44aが互いに平行な平面になっている。また、右上スライドプレート42と左下スライドプレート43も、ワイヤロープ1の軸中心O1に対して対称的な形状で、外側縁部42a,43aが互いに平行な平面になっている。
【0033】
これにより、後述するように、左上スライドプレート41が上側ブラケット20の内側面20aから押圧される際の押圧力と、右下スライドプレート44が下側ブラケット30の内側面30aから押圧される際の押圧力とは向きが逆向きで等しくなり(
図8参照)、右上スライドプレート42が上側ブラケット20の内側面20aから押圧される際の押圧力と、左下スライドプレート43が下側ブラケット30の内側面30aから押圧される際の押圧力とは向きが逆向きで等しくなる。こうして、ワイヤロープ1は4方向から均等に押圧されて、押圧される際の型崩れが防止できるようになっている。
【0034】
本実施形態では、ワイヤロープの径が30mmであり、挿通孔10aの径が31.5mmである。但し、これらの寸法はあくまで一例であって適宜変更可能である。また、本実施形態では、
図3に示すように、上側ブラケット20と下側ブラケット30と各スライドプレート41,42,43,44の長手方向の長さL1は約200mmであり、上側ブラケット20と下側ブラケット30の間の上下方向の隙間L2(上側のスライドプレート41,42と下側のスライドプレート43,44の間の上下方向の隙間)は約4mmに設定されている。但し、これらの寸法はあくまで一例であって適宜変更可能である。
【0035】
また、後述するように、挿通孔10aにはワイヤロープ1がスライド可能に挿通されるが、ワイヤロープ1が各スライドプレート41,42,43,44の各内側縁部41b,42b,43b,44bにスライドする際に傷付くおそれがある。そこで、本実施形態では、各スライドプレート41,42,43,44がナイロン樹脂で構成されていて、且つ挿通孔10aが円形状であることにより、ワイヤロープ1がスライドする際の抵抗が小さくてワイヤロープ1が傷付き難くなっている。
【0036】
前側プレート50U,50Dは、
図1に示すように、略三角形状のプレートであり、上側ブラケット20及び下側ブラケット30の長手方向の一端側(
図3の右側)に配置されている。前側プレート50U,50Dは、同一形状で上下対称に配置されていて、
図5に示すように、三角形状の底辺中央に半円状の切欠孔50a,50bを有している。これら切欠孔50a,50bはワイヤロープ1を貫通させるための孔であり、切欠孔50a,50bの径は上記した挿通孔10aの径より大きくなっている。そして、前側プレート50U,50Dは、
図3に示すように、各ボルト51を用いて各スライドプレート41,42,43,44の長手方向の一端側に連結している。
【0037】
同様に、後側プレート60U,60Dは、略三角形状のプレートであり、上側ブラケット20及び下側ブラケット30の長手方向の他端側(
図3の左側)に配置されている。後側プレート60U,60Dは、同一形状で上下対称に配置されていて、三角形状の底辺中央に半円状の切欠孔(図示省略)を有している。これら切欠孔はワイヤロープ1を貫通させるための孔であり、切欠孔の径は上記した挿通孔10aの径より大きくなっている。そして、後側プレート60U,60Dは、
図3に示すように、各ボルト61を用いて各スライドプレート41,42,43,44の長手方向の他端側に連結している。
【0038】
こうして、このワイヤロープテンション治具10では、ワイヤロープ1が挿通孔10aに挿通されて、上側ブラケット20の水平連結部22,23と下側ブラケット30の水平連結部32,33が各連結ボルト70及び各連結ナット71によって連結される。各連結ボルト70は締付トルクを調整可能であるため、締付トルクを調整することで上側ブラケット20と下側ブラケット30の間の上下方向の隙間L2が調整される。これにより、各スライドプレート41,42,43,44が上側ブラケット20の内側面20a及び下側ブラケット30の内側面30aによってワイヤロープ1の軸中心O1に向けて押圧されて、ワイヤロープ1にテンションを付与することができる。
【0039】
そして、このワイヤロープテンション治具10では、ワイヤロープ1を挿通孔10aから送り出す際の反力受け部として、上側ピース21及び下側ピース31が設けられている。
図4に示すように、上側ピース21には、シャックル80Uを取付けるための取付孔21aが形成されていて、下側ピース31にも、シャックル80Dを取付けるための取付孔31aが形成されている。シャックル80U,80Dは、
図1に示すように、ワイヤ4a,4bをつなぐための結合金具である。こうして、上側ピース21をシャックル80Uとワイヤ4aを介して固定物に連結すると共に、下側ピース31をシャックル80Dとワイヤ4bを介して固定物に連結することで、上側ブラケット20及び下側ブラケット30に作用する反力を受承できるようになっている。
【0040】
ここで、
図7は、ワイヤロープ1を示した側面図である。
図7に示すように、ワイヤロープ1は、素線を撚り合わせてストランド1aを形成し、例えば6本のストランド1aを心綱1bを中心に撚り合わせることによって形成されている。このワイヤロープ1の撚り長さX1は、1本のストランド1aが心綱1bに一周巻かれているときの長手方向の長さである。本実施形態のワイヤロープテンション治具10では、上側ブラケット20と下側ブラケット30と各スライドプレート41,42,43,44の長手方向の長さL1が、このワイヤロープ1のより長さX1より長くなっている。
【0041】
このため、ワイヤロープ1がワイヤロープテンション治具10によってテンションを付与される際に、撚り長さX1より長い距離で押圧されることになる。即ち、ワイヤロープ1は、長手方向のうち比較的長い距離で各スライドプレート41,42,43,44によって押圧されて、比較的短い距離で局所的に押圧されない。これにより、テンションが付与されるワイヤロープ1において、局所的に摩耗することを防止できて、ワイヤロープ1の寿命を延ばすことができる。
【0042】
本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態のワイヤロープテンション治具10によれば、
図2に示すように、先ず、上側ピース21及び下側ピース31にシャックル80U,80Dを介して取付けられたワイヤ4a,4bを、油圧ショベル3のバケット3aに連結する。そして、ワイヤロープ1の一端側を第1ウインチドラム2aに巻き付け、ワイヤロープ1の他端側をワイヤロープテンション治具10の挿通孔10aを貫通させて、水平連結部22,23,32,33を各連結ボルト70によって規定の締付トルクで連結する。なお、規定の締付トルクは、ワイヤロープ1が挿通孔10aから送り出される際にワイヤロープ1に撚り詰りが発生しないように、予め最適に設定されている。
【0043】
これにより、
図8に示すように、左上スライドプレート41の外側縁部41a及び右上スライドプレート42の外側縁部42aが、上側ブラケット20の内側面20aによって軸中心O1に向けて押圧され、左下スライドプレート43の外側縁部43a及び右下スライドプレート44の外側縁部44aが、下側ブラケット30の内側面30aによって軸中心O1に向けて押圧される。このとき、ワイヤロープ1は、各スライドプレート41,42,43,44の各内側縁部41b、42b,43b,44bによって、
図8の矢印で示すように、周方向に4つの部位で径内方向へ均等に押圧されて、テンションが付与される。その後、第1ウインチドラム2aを回転駆動させることで、ワイヤロープ1に適切にテンションが付与された状態で、ワイヤロープ1を第1ウインチドラム2aに綺麗に整列して巻き付けることができる。
【0044】
こうして、ワイヤロープ1が4つの方向から軸中心O1に向けて均等に押圧されるため、ワイヤロープ1が平らに押し潰されることがなく、ワイヤロープ1に型崩れが生じることを防止できる。そして、ワイヤロープテンション治具10は、主に各スライドプレート41,42,43,44と、上側ブラケット20及び下側ブラケット30と、上側ピース21及び下側ピース31と、前側プレート50U,50Dと、後側プレート60U,60Dと、連結ボルト70とを備えて構成されたものであり、
図10に示す従来のワイヤ
ロープテンション治具110に比べて、小さく且つ簡易な構造である。従って、
図2に示すように、アースドリル2が掘削作業を行う作業現場において、十分なスペースが無い状況でも、ワイヤロープテンション治具10を容易に用いることができる。
【0045】
また、ワイヤロープテンション治具10によれば、繰り返しの使用によって、各スライドプレート41,42,43,44の各内側縁部41b,42b,43b,44bが摩耗すると、上側ブラケット20と下側ブラケット30の間の上下方向の隙間L2が小さくなる。これにより、各スライドプレート41,42,43,44の交換時期を容易に把握することができる。そして、各スライドプレート41,42,43,44を交換する際には、各ボルト51を前側プレート50U,50Dから取り外すと共に、各ボルト61を後側プレート60U,60Dから取り外し、各スライドプレート41,42,43,44を上側ブラケット20及び下側ブラケット30から抜き取るだけである。このため、交換作業が非常に簡単である。
【0046】
更に、ワイヤロープテンション治具10によれば、異なる径を有するワイヤロープであっても、容易に適用することができる。つまり、径が30mmであるワイヤロープ1に換えて、径が16mmであるワイヤロープを用いる場合には、上述した各スライドプレート41,42,43,44(
図4参照)に換えて、
図9に示す各スライドプレート41A,42A,43A,44Aを用いれば良い。
図9に示す各スライドプレート41A,42A,43A,44Aでは、各内側縁部41b,42b,43b,44bによって形成される挿通孔10bの径が約16.3mmになっていて、径が16mmであるワイヤロープに対して適切にテンションを付与することができる。
【0047】
また、ワイヤロープテンション治具10によれば、各スライドプレート41,42,43,44はワイヤロープ1の周方向に90度ずつ配置されている同一形状のプレートであり、上側ブラケット20と下側ブラケット30も同一形状のブラケットである。こうして、
図4に示すように、上下が対称であると共に左右が対称であり、ワイヤロープ1を4つ以上の方向から軸中心O1に向けて均等に押圧する構造のうち、スライドプレートの個数が最も少なくて済む。従って、ワイヤロープテンション治具として、最も簡易な構造である。
【0048】
以上、本発明に係るワイヤロープテンション治具の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態において、ワイヤロープ1の周方向に4つのスライドプレート41,42,43,44を均等に配置したが、ワイヤロープ1の周方向に6つ以上の偶数個のスライドプレートを均等に配置しても良い。
また、本実施形態において、各スライドプレート41,42,43,44の各内側縁部41b,42b,43b,44bが曲面状になっているが、平面状であっても良い。また、各スライドプレート41,42,43,44は、ナイロン以外の樹脂製の素材で構成されていても良い。
また、本実施形態において、ワイヤロープテンション治具10に作用する反力を受承するために、ワイヤ4a,4bを油圧ショベル3のバケット3aに連結したが、ワイヤ4a,4bを地面に固定させても良い。