【解決手段】 空気の流れの流路上で電動機により回転させて空気中の油分を捕獲する円盤状のフィルタ10であって、空気の流れを通過させるスリットの形状を有する孔11を複数備え、スリットの長軸方向は、フィルタの半径方向の成分を含むフィルタ、およびそのフィルタを備える油捕集装置およびレンジフードを提供する。
前記スリットの長辺は、前記フィルタの外周側に凸の曲線であり、該曲線は、前記フィルタの外周に近づくほど円周方向の成分を多く含むことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
前記電動機が前記フィルタを回転させることにより、空気に含まれる油分を、前記フィルタの表面部に衝突させ、前記フィルタの周囲に位置する前記油分捕集部材の方へ飛散させ、前記油分捕集部材で捕集する請求項7に記載の油捕集装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献に記載されたフィルタに設けられた空気の流れを通過させる孔の形状は、円形、三角形、正方形、正多角形などの形状であり、アスペクト比が比較的1に近い形状であった。かかる形状の場合、フィルタをブラシなどの清掃用具で洗浄する時、ブラシの毛が孔に入り込み、引っ掛かりが生じて洗浄しにくいという問題があった。
【0005】
また、フィルタの圧力損失が大きく、通気抵抗が大きいと空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が必要となり、使用時の騒音が大きくなるので小さい通気抵抗が好ましい。しかし、小さい通気抵抗とするためにはフィルタの開口率を大きくする必要があるところ、開口率を大きくすると高捕集性の低下をきたし、またフィルタが回転するための強度も維持できなくなるという問題があった。
【0006】
また、フィルタの回転数を高速にすると油捕集率が向上するという傾向があるところ、回転数を上げるとフィルタ自身の所謂風切り音により騒音が増加し、静穏性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、高い油捕集率を確保すると共に、フィルタを洗浄する際には容易に洗浄できるように清掃性を向上させ、フィルタ自体が回転することから生ずる音を小さくするようにフィルタ自体の静穏性を向上させ、フィルタの開口率や通気抵抗の最適化を図りフィルタを使用する装置全体の静穏性を向上させるフィルタ、油捕集装置およびレンジフードを提供することを目的とする。また、フィルタの開口率を高くしても、フィルタが回転するための強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、空気の流れの流路上で電動機により回転させて空気中の油分を捕獲する円盤状のフィルタであって、空気の流れを通過させるスリットの形状を有する孔を複数備え、スリットの長軸方向は、フィルタの半径方向の成分を含むフィルタが提供される。
これによれば、スリット孔の長軸方向が円周方向(接線方向)だと油捕集率が低下してしまうところ、高い油捕集率を確保すると共に、ブラシなどの清掃用具で洗浄等する場合でも引っ掛かりが少なく、清掃性が向上したフィルタを提供することができる。
【0009】
さらに、スリットの長辺は、フィルタの外周側に凸の曲線であり、その曲線は、フィルタの外周に近づくほど円周方向の成分を多く含むことを特徴としてもよい。
これによれば、スリットの長辺が直線である場合に比し、開口率を高くすることができ、その結果通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、装置全体の静穏性が向上する。また、開口率を高くしても、フィルタが回転するための強度を確保することが可能となる。
【0010】
さらに、スリットの長軸方向におけるフィルタの中心側から外周側への方向は、フィルタの回転方向の成分を含むことを特徴としてもよい。
これによれば、通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上する。
【0011】
さらに、スリットの長軸方向におけるフィルタの外周側から中心側への方向は、フィルタの回転方向の成分を含むことを特徴としてもよい。
これによれば、油捕集率が高くなり、フィルタの空気の下流側での油分付着を抑えることができる。また、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上する。
【0012】
さらに、スリットの長辺は直線であり、スリットの長軸方向におけるフィルタの中心側から外周側への方向は、フィルタの回転方向の成分を含むことを特徴としてもよい。
これによれば、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分のみを含む場合即ちスリット孔が放射状に形成されている場合に比し、通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上する。
【0013】
さらに、スリットの長辺は直線であり、スリットの長軸方向におけるフィルタの外周側から中心側への方向は、フィルタの回転方向の成分を含むことを特徴としてもよい。
これによれば、油捕集率が高くなり、フィルタの空気の下流側での油分付着を抑えることができる。また、スリット孔が放射状に形成されている場合に比し、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上する。
【0014】
上記課題を解決するために、上記のフィルタと、フィルタを回転させる電動機と、フィルタの周囲に位置する油分捕集部材と、を備える油捕集装置が提供される。
これによれば、高い油捕集率を確保すると共に、フィルタを洗浄する際には容易に洗浄できるように清掃性を向上させ、フィルタ自体が回転することから生ずる音を小さくするようにフィルタ自体の静穏性を向上させ、フィルタの開口率や通気抵抗の最適化を図りフィルタを使用する装置全体の静穏性を向上させた油捕集装置を提供することができる。また、開口率を高くしても、強度が大きいフィルタを有する油捕集装置を提供することができる。
【0015】
さらに、電動機がフィルタを回転させることにより、空気に含まれる油分を、フィルタの表面部に衝突させ、フィルタの周囲に位置する油分捕集部材の方へ飛散させ、油分捕集部材で捕集することを特徴としてもよい。
これによれば、圧力損失が小さい状態で高い油捕集率を有する油捕集装置を提供できる。即ち、フィルタを回転させて、空気に含まれる油分をフィルタの表面に衝突させ、周囲に位置する油分捕集部材の方へ飛散させることで、フィルタに油分が付着し目詰まりを起こすことが少なくなる。
【0016】
さらに、電動機は、フィルタを双方向に回転可能であることを特徴としてもよい。
これによれば、スリット孔の長軸方向とフィルタの回転方向との関係に基づき、状況に応じてフィルタの回転方向を選択することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、上記の油捕集装置を備えるレンジフードを提供することができる。
これによれば、高い油捕集率を確保すると共に、フィルタを洗浄する際には容易に洗浄できるように清掃性を向上させ、フィルタ自体が回転することから生ずる音を小さくするようにフィルタ自体の静穏性を向上させ、フィルタの開口率や通気抵抗の最適化を図り静穏性を向上させたレンジフードを提供することができる。また、開口率を高くしても、強度が大きいフィルタを有するレンジフードを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、高い油捕集率を確保すると共に、フィルタを洗浄する際には容易に洗浄できるように清掃性を向上させ、フィルタ自体が回転することから生ずる音を小さくするようにフィルタ自体の静穏性を向上させ、フィルタの開口率や通気抵抗の最適化を図りフィルタを使用する装置全体の静穏性を向上させたフィルタ、油捕集装置およびレンジフードを提供することができる。また、フィルタの開口率を高くしても、強度が大きいフィルタを有する油捕集装置およびレンジフードを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1乃至
図3を参照し、本実施例にかかるレンジフード1について説明する。レンジフード1は、下方または周囲で行われる調理によって発生する湯気や油煙等を捕集するための、上方に凹状の内面パネル5を内面に有する薄型のフード部2を有する。フード部2は、上部後方に位置する連通口6付近で、排気ダクト(図示せず)に接続された送風機ボックス3と連結されている。送風機ボックス3は、内部にシロッコファンであり空気の流れD1を発生させるファン4を有する。従って、ファン4が稼働すると連通口6は負圧となり、内面パネル5の下方の空気は連通口6を通して吸入され、排気ダクトを通して外部に排出される。連通口6は、ファン4と連通し、ファン4が発生させた空気の流れD1の流路上であって、ファン4より空気の流れの上流側に位置する。
【0021】
連通口6には、内面パネル5との間に空気の流路となりうる隙間が生じないように取り付けられる取付板50と、空気の流れD1を通過させる孔を有する円盤状のフィルタ10と、フィルタ10の円盤の中心に回転軸を連結され、フィルタ10を回転させる電動機20と、電動機20を取付板50に取り付けるための電動機取付具40と、取付板50に取り付けられ、フィルタ10の外周縁を囲む油分捕集部材30と、を備える油捕集装置100が存在する。従って、レンジフード1は、ファン4が発生させる空気の流れD1の流路上であって、ファン4よりその流れの上流側に存在し、その空気の流れを図視で下から上に通過させる孔を有するフィルタ10を、回転可能に備える。
【0022】
内面パネル5の下方の空気は、調理によって発生する湯気や油煙等を含んでおり、ファン4が稼働すると、連通口6に存在する、即ちファン4が発生させた空気の流れD1の流路上であってファン4より上流側に位置するフィルタ10の孔に吸引され、その孔を通過することになる。フィルタ10は、電動機20により回転可能に設けられており、レンジフード1が稼働すると、ファン4が空気の流れD1を発生させる共に電動機20がフィルタ10を回転させる。レンジフード1は、フィルタ10を回転させることにより、空気に含まれる油分を油分捕集部材30に捕集する。捕集の仕方は後述する。
【0023】
ファン4のファンの種類は特に限定されず、空気の流れを生じさせる軸流ファンなどのその他のファンであってよい。好ましくは、本実施例に使用された、静圧の高いシロッコファンである。また、フード部2の下方には、フード部2と着脱可能であり、フード部2との間に隙間を有して吸込力を高める整流板7を備える。本実施例におけるレンジフード1は整流板7を備えるが、整流板7の存在は特に限定されず、あってもなくてもよい。整流板が存在しない場合または整流板を取り外した場合には、
図2に示すように、フード部2の内面である上方に凹状の内面パネル5と、内面パネル5に隙間が生じないように取り付けられた取付板50と、円盤状のフィルタ10と、取付板50に取り付けられフィルタ10の外周縁を囲むように設けられた油分捕集部材30とが、直接使用者から視認できる。
【0024】
図4乃至
図6を参照し、本実施例における油捕集装置100を説明する。油捕集装置100は、連通口に取り付けられる取付板50と、空気の流れを通過させる孔11を有する円盤状のフィルタ10と、フィルタ10の円盤の中心に回転軸であるシャフト21を連結され、フィルタ10を回転させる電動機20と、電動機20を取付板50に取り付けるための電動機取付具40と、取付板50に取り付けられ、フィルタ10の周囲を囲むように設けられた油分捕集部材30とを備える。
【0025】
取付板50は、中央部にフィルタ10を配置できる円形の開口部を備えたほぼ正方形の平板から形成される。取付板50と連通口の取り付けは、隙間などを有さずになされ、この取り付け部分には空気の流れは通過しない。従って、円形の開口部は、ファンが発生させた空気の流れを通過させる唯一の部分となり、この開口部はファンが発生させる空気の流れの流路となる。なお、取付板50は、内面パネル5と一体として成形されていても良い。また、取付板50は、整流板7を取り付けるための整流板取付具51を2箇所に備える。
【0026】
電動機取付具40は、取付板50の空気の流れの下流側に、開口部を跨ぐようにして設けられる。電動機取付具40は、ほぼ中央部に電動機20のシャフト21を通すための穴を有し(図示せず)、その穴が平面視で開口部の中心となるように、取付板50に取り付けられる。
【0027】
電動機20は、そのシャフト21を電動機取付具40の穴に空気の流れD1(
図3参照)の下流側から上流側に向けて貫通させて、電動機取付具40に固定される。電動機20のシャフト21は、取付板50の円形の開口部の中心となる。
【0028】
油分捕集部材30は、フィルタ10の周縁端部12の外側および下方の周囲を取り囲むように配置される。油分捕集部材30は、通気開口部35を有し、その中を流れる空気が含む油分を、フィルタ10の表面部で捕獲し、遠心力で外周に飛散した油分等を捕集する。油分捕集部材30は、周縁端部12を囲み飛散した油分等を受け止める外壁32と、油脂分がレンジフードから滴下することを防止するため、外壁32の下端部で外壁32より内側に延在し、フィルタ10の周縁端部12の下側を覆う延在部33と、通気開口部35を囲むように延在部33の周縁端部12からフィルタ10側に立ち上がる立ち上り部34を有し、フィルタ10から飛散した油を留めておく油溜まり31を備える。
【0029】
フィルタ10は、電動機20のシャフト21の先端部分に、フィルタ10の面がシャフト21に垂直になるように、着脱具15により着脱自在に取り付けられる。フィルタ10の外形は円形であり、フィルタ10は、フィルタ10の中心において、取付板50の円形の開口部の中心に位置する電動機20のシャフト21に取り付けられるので、フィルタ10の外形と開口部の外形は、同心円の円形であり、フィルタ10の直径は、開口部の直径よりわずかに小さい。
【0030】
フィルタ10は、孔11を有する円形の金属平板から形成され、フィルタ10の外周である周縁端部12の内側で円周状に屈曲する屈曲部13を有する。屈曲部13は、電動機20の側を凸として屈曲し、周縁端部12は、孔11を有するフィルタ10の表面部と比べて、電動機20とは離れる方に位置する。こうすることで、フィルタ10の表面部で捕獲した油分が周縁端部12にガイドされた時、油分の飛散する位置を調整することができる。フィルタは、もちろんこのように屈曲することなく、単純な円形平板であってもよい。また、フィルタは、屈曲より曲率が小さく湾曲する湾曲部を有していてもよい。
【0031】
フィルタ10は、孔11を有する通気領域部16と、通気領域部16の外周側周縁端部12との間に孔11を有さない部分とを有する。これにより、フィルタ10の外周部において強度を高くすることができる。通気領域部16の孔11は、フィルタの中心に近いほど半径方向に近く、外周に行くに従い徐々に円周方向に近づくようなスリットから形成されている。このスリット形状の孔11は、同心円状に6段階に分けられ、各段に属する孔は、合同であるスリット形状の複数の孔11から構成される。各段のスリットの長さは、中心ほど短く、外周に行くに従い徐々に長くなるように形成されている。なお、通気領域部16において各段を貫通するように、かつ各段に属するスリット形状の孔に適合するように、スリットが存在しない渦を巻いたような部分が形成される。もちろん、後述するように、段の有無や数、スリットの形状や長さなどはこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係るフィルタは、
図10に示すように、段を有さず、中心から同じ距離にある孔11”が異なるフィルタ10”であってよい。
【0032】
一般的なレンジフードによく使用されるスロットフィルタでは、スリットの目を細かくすることにより油捕集率を向上させる。しかし、スリットの目を細かくすると通気抵抗が高くなる傾向がある。本発明におけるフィルタにおいても、一般的にフィルタの開口率(フィルタ面の全面積に対する孔の面積の合計面積の割合)を低くすると圧力損失が大きくなり、通気抵抗が大きくなる傾向にある。逆に、開口率を高くすると通気抵抗が低くなるので、通気抵抗の観点からは開口率が高い方が好ましい。しかし、開口率を高くすると油捕集率は低下するので、油捕集率の観点からは好ましくないし、また、高速で回転するためのフィルタ自体の強度を確保できなくなる恐れがある。本発明は、高油捕集率を確保すると共に、開口率を高め、かつフィルタ自体の強度も確保することに寄与するものである。
【0033】
油捕集装置100では、
図5が示すように、使用者が、油分捕集部材30とフィルタ10を容易に着脱することができる。油分捕集部材30は、取付板50に設けられた油分捕集部材30の外形(外壁)に対応して形成された凹部に嵌り込み保持されているので、容易に上下方向に着脱できる。また、フィルタ10は、着脱具15と一体化されており、その着脱具15が電動機20のシャフト21に掛合することで保持され、使用者が着脱具15を操作することで容易に上下方向に着脱できる。これによれば、使用者は、油捕集装置100をしばらく使用して油溜まり31に溜まった油を容易に回収し、油分等で汚れた油分捕集部材30とフィルタ10を洗浄することができる。
【0034】
図7乃至
図9を参照し、フィルタの孔について説明する。
図7(A)に示すフィルタの孔はスリット形状をなす。これにより、アスペクト比が1に近い孔の場合ブラシなどの清掃用具で洗浄等する場合、ブラシの毛が孔に入り込み引っ掛かる場合があるが、かかるスリット形状の孔の場合は、そのような引っ掛かりが少なく、清掃性を向上させることができる。また、このスリット形状孔11の長軸方向は、フィルタ10の半径方向の成分を含む。即ち、フィルタ10におけるすべての孔11は、半径方向の成分を含まず円周方向(接線方向)のみを含むものは無い。いずれの孔も、フィルタ10の中心部分から周縁端部12の方へ向かうように形成されている。スリット形状の孔の長軸方向が円周方向(接線方向)だと油捕集率が低下してしまうところ、高い油捕集率を確保することができる。なお、孔の長辺が曲線である場合の長軸方向とは、長軸曲線上の全ての点における接線の方向を言う。
【0035】
また、このスリット形状孔11は、フィルタ10の外周側に凸に湾曲し、周縁端部12に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線から構成されている。即ち、本フィルタにおける孔は、中心ほど半径方向(放射方向)に近く、外周に近づくほど円周方向(接線方向)に近づくように構成されている。これによれば、スリットの長辺が直線である場合に比し、開口率を高くすることができ、その結果通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、装置全体の静穏性が向上する。また、開口率を高くしても、フィルタが回転するための強度を確保することが可能となる。開口率については、後述する。
【0036】
また、フィルタ10に回転軸が連結される電動機は、フィルタ10を双方向(TD1方向およびTD2方向)に回転可能であることが好ましい。これによれば、スリット孔の長軸方向とフィルタの回転方向との関係に基づき、状況に応じてフィルタの回転方向を選択することができる。例えば、使用する時に静穏性を重視する場合や、油捕集性を重視する場合などの使用目的、使用状況に応じて、フィルタを回転する方向を定めることができるようになる。
【0037】
即ち、図視で左回転であるTD1方向にフィルタ10を回転させ、スリット孔11の長軸方向が、スリットの外周側短辺が中心側短辺よりフィルタの回転方向(TD1)へ傾くように構成されることが好ましい。換言すれば、スリット孔11の長軸方向におけるフィルタの中心側から外周側への方向は、フィルタ10の回転方向(TD1)の成分を含むことが好ましい。このような構成にすれば、表1に示すように、通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上する。
【0038】
また、図視で右回転であるTD2方向にフィルタ10を回転させ、スリット孔11の長軸方向が、スリットの中心側短辺が外周側短辺よりフィルタの回転方向(TD2)へ傾くように構成されことが好ましい。換言すれば、スリット孔11の長軸方向におけるフィルタの外周側から中心側への方向は、フィルタ10の回転方向(TD2)の成分を含むことが好ましい。このような構成にすれば、油捕集率が高くなり、フィルタの空気の下流側での油分付着を抑えることができる。また、表2に示すように、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上する。
【0039】
図7(B)に示すフィルタ10’の孔11’は、本図(A)に示す孔11の変形例であり、異なる点は、通気領域部16において各段を貫通するように、かつ各段に属するスリット形状の孔に適合するように、スリットが存在しない渦を巻いたような部分が設けられていないことと、孔11’の長軸方向は半径方向の成分をより多く含むことである。これにより、開口率をより大きくでき、開口率を大きくしても強度に悪影響を与えないフィルタを提供することができる。
【0040】
図7(C)に示すフィルタ10Aの孔11Aは、本図(A)に示す孔11の変形例であり、異なる点は、スリット形状の孔11Aの長辺は直線であり、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分のみを含む場合即ちスリット孔が放射状に形成されていることである。これによれば、ブラシなどの清掃用具で洗浄等する場合でも引っ掛かりが少なく、清掃性が向上する。
【0041】
図7(D)に示すフィルタ10A’の孔11A’は、本図(A)に示す孔11の変形例であり、異なる点は、スリット形状の孔11A’の長辺は直線であり、スリット孔11A’の長軸方向におけるフィルタ10A’の中心側から外周側への方向または外周側から中心側への方向は、フィルタ10A’の回転方向の成分を含む。中心側から外周側への方向が回転方向の成分を含む場合、表3に示すように、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分のみを含む場合即ちスリット孔が放射状に形成されている場合に比し、通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上する。また、外周側から中心側への方向が回転方向の成分を含む場合、油捕集率が高くなり、フィルタの空気の下流側での油分付着を抑えることができる。また、表4に示すように、スリット孔が放射状に形成されている場合に比し、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上する。
【0042】
<本実施例(変形例含む)のフィルタにおいて測定した通気抵抗および騒音値>
以下の表は、以下のフィルタと回転方向に関して、通気抵抗と騒音値を測定した結果を示す。測定対象は以下のとおりである。
【0043】
・
図7(A)に示した、スリット形状の孔の長軸方向がフィルタの半径方向の成分を含み、フィルタの外周側に凸に湾曲し、周縁端部に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線から構成され、スリット孔の長軸方向におけるフィルタの中心側から外周側への方向が回転方向の成分を含む(TD1方向)フィルタ。便宜上、この測定は渦状前向き測定と称する。
【0044】
・
図7(B)に示した、スリット形状の孔の長軸方向がフィルタの半径方向の成分を含み、フィルタの外周側に凸に湾曲し、周縁端部に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線から構成され、スリット孔の長軸方向におけるフィルタの外周側から中心側への方向が回転方向の成分を含む(TD2方向)フィルタ。便宜上、この測定は渦状後向き測定と称する。
【0045】
・
図7(C)に示した、スリット形状の孔の長辺は直線であり、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分のみを含む放射状であるフィルタに対して、回転させた場合(TD1方向)。便宜上、この測定は放射状測定と称する。
【0046】
・
図7(D)に示した、スリット形状の孔の長辺は直線であり、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分と円周方向の成分の両方を含み、スリット孔の長軸方向におけるフィルタの中心側から外周側への方向が回転方向の成分を含む(TD1方向)フィルタ。便宜上、この測定は斜めスリット前向きと称する。
【0047】
・
図7(D)に示した、スリット形状の孔の長辺は直線であり、スリットの長軸方向がフィルタの半径方向の成分と円周方向の成分の両方を含み、スリット孔の長軸方向におけるフィルタの外周側から中心側への方向が回転方向の成分を含む(TD2方向)フィルタ。便宜上、この測定は斜めスリット後向きと称する。
【0048】
表1は、渦状前向と渦状後向に対して、フィルタ回転数を1000rpmと1500rpmとに変化させて通気抵抗を測定し比較したものである。これによると、渦状後向は、渦状前向に比べていずれの回転数においても通気抵抗が低く、優れていることを示している。従って、渦状後向は、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上するものとなる。
【表1】
【0049】
表2は、渦状前向と渦状後向に対して、フィルタ回転数を1000rpmと1500rpmとに変化させて騒音値を測定し比較したものである。これによると、渦状前向は、渦状後向に比べていずれの回転数においても騒音値が低く、優れていることをしめしている。従って、渦状前向は、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上するものとなる。
【表2】
【0050】
表3は、放射状と斜めスリット前向に対して、フィルタ回転数を1000rpmと1500rpmとに変化させて通気抵抗を測定し比較したものである。これによると、斜めスリット前向は、放射状に比べていずれの回転数においても通気抵抗が低く、優れていることを示している。従って、渦状後向は、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、その結果装置全体の静穏性が向上するものとなる。
【表3】
【0051】
表4は、放射状と斜めスリット後向に対して、フィルタ回転数を1000rpmと1500rpmとに変化させて騒音値を測定し比較したものである。これによると、斜めスリット後向は、放射状に比べていずれの回転数においても騒音値が低く、優れていることをしめしている。従って、斜めスリット後向は、フィルタ自体の騒音値が低くなり、静穏性が向上するものとなる。
【表4】
【0052】
なお、騒音値の測定は、無響室に置いた油捕集装置と室外に置いた送風機とをダクトで繋ぎ、油捕集装置のみの音を採取することで行った。なお、表1および表2に示す測定においては、開口率が約37%のフィルタを用いて、風量300m
3/時間で測定し、表3および表4に示す測定においては、開口率が約32%のフィルタを用いて、風量420m
3/時間で測定した。なお、スリットの幅は、すべておよそ1.5mmである。
【0053】
図8と
図9を参照し、開口率について説明する。
図8(A)は、
図7(A)に示したフィルタの中心近傍を拡大して表わしたものである。同様に、
図8(B)は
図7(B)に、
図8(C)は
図7(C)に、
図8(D)は
図7(D)に示したフィルタの中心近傍を表わしたものである。また、
図9(A1)は、
図7(A)に示したフィルタの外周近傍を拡大して表わしたものである。同様に、
図9(C1)は
図7(C)に、
図9(D1)は
図7(D)に示したフィルタの外周近傍を表わしたものである。そして、
図9(A2)は
図8(A)と
図9(A1)のフィルタの孔を、
図9(C2)は
図8(C)と
図9(C1)のフィルタの孔を、
図9(D2)は
図8(D)と
図9(D1)のフィルタの孔を模式的に描いたものである。
【0054】
図9の模式図(A2、C2、D2)を用いて、詳細に説明する。開口率は、フィルタ面の全面積に対する孔の面積の合計面積の割合を言い、孔の面積の合計面積と孔以外の余肉部分の合計面積とにより定まる。なお、スリット孔の幅(W)は、いずれの孔においても一定であり、孔と孔の配置間隔はフィルタ中心を軸として同一角度間隔で配置している。
【0055】
本図(C2)は、スリット孔11Aの長辺は直線でありかつ半径方向(放射方向)の成分のみを含むフィルタ10Aを示す。この場合、隣り合う孔の外周側の距離(TCO)は、中心側の距離(TCI)に比べ、長辺の長さに比例して長くなる。また、本図(D2)は、スリット孔11A’の長辺は直線でありかつ半径方向と円周方向の成分の両方を含むフィルタ10A’を示す。この場合、隣り合う孔の外周側の距離(TDO)は、中心側の距離(TDI)に比べ長くなるが、長辺が放射方向に傾斜しているので、長くなる割合が本図(C2)に示す場合より少ない。また、本図(A2)は、スリット孔11の長軸方向がフィルタの半径方向と円周方向の成分を両方含み、フィルタの外周側の周縁端部12の方へ凸に湾曲し、周縁端部12に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線を有するフィルタ10を示す。この場合、隣り合う孔の外周側の距離(TAO)は、中心側の距離(TAI)に比べわずかに長くなるか、ほぼ同じにすることができる。
【0056】
従って、以下のような式が成立する。
(TAO−TAI)<(TDO−TDI)<(TCO−TCI)
隣り合う孔の間は余肉部分である。余肉部分を観察すると、本図(C2)では大きく扇状に広がっており((TCO−TCI)が最も大きい)、余肉部分の面積はスリット孔の面積に比して大きくなることが分かる。また、本図(D2)での余肉部分は、(C2)ほどではないがはやり扇状に広がっており((TDO−TDI)は2番目に大きい)、余肉部分の面積はスリット孔の面積に比して少し大きくなることが分かる。一方、本図(A2)での余肉部分は、(D2)と比べても、外周側の距離(TAO)が中心側の距離(TAI)に比べて明らかに大きくなっているとは認められない((TAO−TAI)が最小)。そうすると、余肉部分の面積の割合は、対スリット孔の面積で、本図(C2)の場合が最も大きく、本図(A2)の場合が最も小さい。
【0057】
逆に言えば、本図(A2)に示す、スリット孔の長軸方向がフィルタの半径方向と円周方向の成分を両方含み、フィルタの外周側の周縁端部の方へ凸に湾曲し、周縁端部に近づくほど円周方向の成分を多く含む、所謂渦状のスリット孔では、開口率が最も高くなる。従って、スリット孔の長辺がフィルタの外周側に凸の曲線であり、その曲線がフィルタの外周に近づくほど円周方向の成分を多く含む場合、スリットの長辺が直線である場合に比し、開口率を高くすることができ、その結果通気抵抗を低く抑えることができるので、空気の流れを発生させるファンに大きな出力の電動機が不要となり、装置全体の静穏性が向上する。
【0058】
また、余肉部分をさらに観察すると、特にフィルタの中心部分を表わす
図8の(C)と(D)において、中心側の余肉部分の幅(TCIやTDI)が小さくなる傾向にあり、そうすると、回転するフィルタとしての強度を確保できない恐れがある。一方、所謂渦状のスリット孔では、かかることが生じないので、開口率を高くしても、フィルタが回転するための強度を確保することが可能となる。
【0059】
<第二実施例>
図11および
図12は、本実施例に係るレンジフード1Bに関し、レンジフード1Bにおける空気の流れに伴う油分を捕集する作用を説明するものである。レンジフード1Bは、油捕集装置100Bと、空気の流れAを発生させるファン4Bと、ファン4Bと連通する連通口6Bを有する内面パネル5Bと、を備える。油捕集装置100Bは、連通口6Bに取り付けられる取付板50Bと、空気の流れAを通過させる孔11Bを有する円盤状のフィルタ10Bと、フィルタ10Bの円盤の中心にシャフト21Bを連結され、フィルタ10Bを回転させる電動機20Bと、電動機20Bを取付板50Bに取り付けるための電動機取付具40Bと、取付板50Bに取り付けられ、フィルタ10Bの周囲に位置する油分捕集部材30Bとを備える。そして、油捕集装置100Bは、連通口6Bに位置し、空気の流れAの流路上であってファン4Bより上流側に設けられる。
【0060】
図11は、レンジフード1B全体における空気の流れの作用を示す。レンジフード1Bの下方で行われる調理によって発生する湯気や油煙等と共に、暖められた空気はレンジフード1Bの方へ立ち上る。レンジフード1Bが運転を開始しファン4Bが回転し始めると、ファン4Bは空気の流れを図視で下から上の方向へ発生させる。そうすると、整流板70B辺りに立ち上った空気は、整流板70Bと内面パネル5Bの間から吸い込まれ、その後フィルタ10Bの孔11Bを通過して、ファンケーシング内のファン4Bに吸入される。そして、その後、送風機ボックス3Bから排気ダクトDへ排出される。
【0061】
フィルタ10Bの単位時間当たりの回転数は、フィルタの孔の開口状態にもよるが、少なくとも230rpm(Rotation Per Minute)以上であればよい。孔の開口状態との関係など、詳細は後述する。フィルタ10Bがこのように比較的高速に回転すると、フィルタ10Bの表面(孔11Bのない部分である表面部14B)が、その表面に接する空気を摩擦力により引きずり、空気の粘性により付近の空気にもその動きが伝わることで、フィルタ10Bの表面付近には空気の動きが生じ、フィルタ10Bは回転運動をしているので、空気の動きは回転軸を中心とした渦状となる。
【0062】
この渦状の空気の動きは、フィルタ10Bの両面、即ちフィルタ10Bの下面と上面の両方、換言すれば、フィルタ10Bの空気の流れAの上流側の面と下流側の面の両方に発生する。本実施例においては、ファン4Bが発生させる空気の流れAが、図視で下から上へ、フィルタ10Bの孔11Bを通って流れているので、フィルタ10Bの下流側では、渦状の空気の動きはフィルタ10Bの表面から引き離されつつ、フィルタ10Bの外周縁に向かうらせん状流が発生し、ファン4Bにより吸引される。一方、フィルタ10Bの上流側では、渦状の空気の動きはフィルタ10Bの表面に押さえつけられ、フィルタ10Bの外周縁に向かう渦状流を伴う密度の高い空気層が形成される。
【0063】
図12は、油捕集装置100Bにおける空気の流れの作用を示す。調理等で発生した油分OP1は、空気の流れAと共に流されてフィルタ10Bの上流側の面(表面部14B)付近に到達する。上流側の面付近に到達した油分OP2は、一部(粒子径の小さい油分)は密度の高い空気層の外周縁に向かう渦状流により、また、他の一部(粒子径の大きい油分)はフィルタ10Bの上流側の表面(孔11Bのない部分である表面部14B)に衝突することにより、フィルタ10Bの周縁端部12Bの方向に弾き飛ばされる。その結果、円盤状のフィルタ10Bの外周端部12Bを取り囲むように備えられた油分捕集部材30Bの外壁32Bに、油分OP3として捕集され、油溜まり31に油OLとして回収される。
【0064】
孔の円周方向における径DA(m)とは、
図13(A)に示すように、フィルタの回転中心を中心とする孔を横切る同心円の中で孔の両端により挟まれた弧の長さの最大値を言う。また、孔径通過時間とは、回転中心からの距離Rx(m)における周速度をVx(m/秒)とした場合、DA/Vx(秒)として表現される。また、孔径平均通過時間tx(秒)とは、孔径通過時間をフィルタ全体に亘り平均したものであり、(1)式により表わされる。ここで、フィルタにおける孔が存在する領域の外側の半径をRmax(m)、フィルタにおける孔が存在する領域の内側の半径をRmin(m)、フィルタの秒当たりの回転数をN(/秒)、フィルタの角速度をω(ラジアン/秒)とする。なお、フィルタ上に孔のある領域は回転軸を中心に同心円状に存在し、その領域には孔は均一に分布するものとする。孔径通過時間は、DA/2πNRxであるところ、孔径平均通過時間txは以下のようになる。
【0066】
なお、孔径平均通過時間は、換言すれば、フィルタの孔の円周方向における径の一端と他端が、ある円周上の1点を通過するのに必要な時間のフィルタにおける平均値であり、便宜上、孔が存在する領域において、内側と外側での面積が同じになる半径位置に存在する孔を横切る円周方向の弧の長さ、即ち、孔の円周方向における径の長さを移動するのに必要な時間と言うこともできる。
【0067】
図13を参照して、スリット形状の孔の径について説明する。本図が示すスリット形状の孔11は、長辺がフィルタ10の外周側に凸に湾曲しフィルタの外周に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線から構成される。フィルタの回転中心(図示せず)を中心にして図視で左から右へ弧を描きながら円周方向に、V(m/秒)の速さで移動する。点αと点βは、孔11の外周上かつ回転中心の同一円周上の点であり、点γは、弧αβの中点である。従って、点αと点βは、孔11の円周方向における径の一端と他端となる。
【0068】
前述したように、孔11の円周方向における径は、孔11を横切る同心円の中で孔11の両端により挟まれた弧の長さの最大値である。従って、弧αβの長さが最大値となるのは、スリット形状の孔11の長辺がフィルタ10の外周側に凸に湾曲しフィルタの外周に近づくほど円周方向の成分を多く含む曲線から構成されているので、点αと点βを結んだ直線が孔11のフィルタの最も外周よりの部分である。この場合に、弧αγβの長さはDAとなる。孔11Aの円周方向における径の一端(点α)と他端(点β)が、ある円周上の1点(点γ)を通過するのに必要な時間とは、フィルタがTD方向に回転する場合、点βが点γを通過してから、点αが点γを通過するまでの時間である。また、フィルタにおける孔が存在する領域の外側の半径をRmax、フィルタにおける孔が存在する領域の内側の半径をRminとする場合、孔が存在する領域とは、Rminの外側かつRmaxの内側であり、巾が(Rmax−Rmin)となる領域である。また、内側と外側での面積が同じになる半径位置Rctr(図示せず)とは、次式を満たすものである。
πRmax
2−πRctr
2=πRctr
2−πRmin
2
【0069】
また、孔11の周速度Vavは、フィルタの回転中心を中心とする同一円周上に並ぶ質点の周速度の合計値をRminからRmaxまでの間で積分し、その積分値をフィルタにおける孔が存在する領域(RminからRmaxまでの領域)の面積で除することにより求めることもできる。具体的には、孔11の周速度Vavは、次式を満たすものである。
Vav=4πN(Rmax
2+RmaxRmin+Rmin
2)/3(Rmax+Rmin)
【0070】
上記のようにして求めた周速度とRctrにおける弧の長さを基に、孔の円周方向における径の一端と他端が、ある円周上の1点を通過するのに必要な時間のフィルタにおける平均値を求めることができる。
【0071】
なお、本実施例のような一フィルタの中ですべて同じ孔が均一に配置されたフィルタにおいても、一フィルタの中で形状や大きさが異なる孔が配置されたフィルタにおいても、それぞれの孔の弧の長さと、その孔の位置(回転中心からの距離)における周速度とを求め、それぞれの孔が、それぞれの孔の弧の長さ(円周方向における径の長さ)を移動するのに必要な時間を求め、その時間の平均値を求めることにより、孔の円周方向における径の一端と他端が、ある円周上の1点を通過するのに必要な時間のフィルタにおける平均値を求めることができる。
【0072】
図14は、本発明に係るレンジフードにおける孔径平均通過時間txと捕集率の関係を示すグラフである。グラフ上のプロットのそれぞれは、様々な孔径のフィルタを、様々な単位時間当たりの回転数で回転させることにより測定した時の、孔径平均通過時間と捕集率を示す。グラフ上のプロットに対してR二乗値が最大となるように回帰曲線(2次多項式回帰曲線、R
2=0.97)を引いた。これによると、従来のフィルタの中で最も良い捕集率である70%を超えるのは、孔径平均通過時間における3%程度の誤差を考慮した点線の回帰曲線によれば、孔径平均通過時間が3.2×10
-4秒であり、好ましくは実線の回帰曲線により、孔径平均通過時間が2.7×10
-4秒辺りである。従って、孔径平均通過時間が3.2×10
-4秒以下であれば、油捕集効率の高いレンジフードを提供することができる。
【0073】
孔径平均通過時間txは、(1)式より明らかなように、フィルタの秒当たり回転数Nが速くなると、又は、孔の円周方向の径DAが小さくなると、小さくなる。従って、本発明に係るレンジフードは、フィルタの回転数とフィルタの孔の径をパラメータとして、孔径平均通過時間を調整可能である。回帰曲線は右下に下降しているので、捕集率を良くするためには、孔径平均通過時間を小さくするとよい。従って、捕集率を80%程度とするために1.8×10
-4秒程度とし、好ましくは、1.5×10
-4秒程度としてもよい。また、捕集率を90%程度とするために0.98×10
-4秒程度とし、好ましくは、8.0×10
-5秒程度としてもよい。一方、スリット孔の長軸方向を円周方向(接線方向)に一致させると、孔の円周方向の径DAが大きくなり、その結果孔径平均通過時間txが長くなることで、油捕集率が低下することとなる。
【0074】
また、油分がフィルタの上流側の表面(孔のない部分の表面部)に衝突する際、油分の大部分はフィルタの外周縁方向に弾き飛ばされるが、一部はその表面に付着することがある。フィルタの回転速度が速くなると、フィルタ表面に一旦付着した油分は遠心力により外周縁方向に飛ばされる。その結果、本発明に係るレンジフードは、フィルタに油分が付着し残存することが少なくなることにより、フィルタ自体の洗浄の労力を低減することができる。
【0075】
上述したように、油捕集装置100Bは、電動機20Bがフィルタ10Bを回転させることにより、空気に含まれる油分を、フィルタ10Bの表面部に衝突させ、フィルタ10Bの周囲に位置する油分捕集部材30Bの方へ飛散させ、油分捕集部材30Bで捕集する。これによれば、圧力損失が小さい状態で高い油捕集効率を有する油捕集装置を提供できる。即ち、フィルタを回転させて、空気に含まれる油分をフィルタの表面に衝突させ、周囲に位置する油分捕集部材の方へ飛散させることで、フィルタに油分が付着し目詰まりを起こすことが少なくなる。これにより、フィルタ自体の洗浄の労力が低減し、使用するに従って圧力損失が増加することを防止でき、さらに、空気流路におけるフィルタより下流部分にほとんど油分が付着しないため、フィルタより下流部分を清掃/洗浄する手間を大幅に軽減するレンジフードを提供できる。
【0076】
図15は、本実施例と従来タイプのスロットフィルタを使用したレンジフードにおけるフィルタでの捕集率と、ファンやダクトなどの下流部品への油分付着の関係を得るための試験に使用した試験構成図である。本実施例のフィルタの孔径の違いにより捕集率が異なることを利用し、フィルタでの捕集率の違いにより下流部品への油分付着状態を確認するために、以下のように試験を行った。
【0077】
試験方法は、以下のようである。温度コントロール可能なホットプレートの上方800mmに本発明に係るフィルタ等を備えたレンジフードが設けられている。245°Cに加熱したホットプレートにステンレス筒を載せ、ポンプからそのステンレス筒に、油を2.5g/分で、水を8g/分で滴下する。試験時間は10分間である。
【0078】
本試験の結果を表5に示す。本試験によれば、従来タイプのレンジフードであるスロットフィルタを使用したレンジフードでは、フィルタにおいて50%の油分を捕集し、下流部品の送風機において23%の油分が付着する。残りの27%の油分は空気と共に外部へ排出されることになる。一方、本実施例のレンジフードでは、フィルタにおいて83%の油分を捕集し、下流部品において2%の油分が付着する。なお、この試験は、孔径が1.5mmのフィルタを用い、回転数を1500rpmとして行われた。
【0079】
この試験によれば、従来タイプのレンジフードの捕集率に比し、本実施例に係るレンジフードでは、フィルタでの捕集率が83%と明らかに高い。その結果、清掃/洗浄などに手間のかかる下流部品への油分の付着を著しく抑えることができる。従来から知られているレンジフードの捕集率が最も良くても70%であることを考慮すると、本試験に用いた本発明に係るレンジフードは、孔径の変化にもかかわらず83%の捕集率を有しており、本発明に係るレンジフードは高い捕集効率を有すると言える。従って、本発明に係るレンジフードは、空気流路におけるフィルタより下流部分にほとんど油分が付着しないため、フィルタより下流部分を清掃/洗浄する手間を大幅に軽減することができる。
【0081】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。即ち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に関し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状等の限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0082】
例えば、油捕集装置は、上記ではレンジフードの中に組み込まれて使用されているが、最も油捕集装置が有効に使用される事例として説明したのであり、これに限定されないことは言うまでも無い。油捕集装置は、例えば、レンジフードと別体として、油脂分等を含む空気の中で油脂分を捕集する装置として使用されてもよい。