エポキシ樹脂やポリベンゾオキサゾール樹脂等の樹脂原料、また医薬、農薬、染料並びに電子材料もしくはこれらの中間体や原料として有用な新規なビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物の提供。
は、水素原子、炭素原子数1〜8アルキル基、炭素原子数1〜8アルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子を表し、Aは炭素原子数5〜10のシクロアルキリデン基を表し、nは0又は1〜4の整数を示す。)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物について詳細に説明する。
本発明の、上記一般式(1)で表されるビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物において、式中、R
1、R
2で示される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基又は、炭素原子数5〜8のシクロアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。
このようなアルキル基として具体的には例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等を挙げることができる。
このようなアルキル基には、本発明の効果を妨げない範囲においてハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等が置換していてもよいが、置換していない方が好ましい。
また、式中、 炭素原子数1〜8のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のアルコキシ基であり、好ましくは炭素原子数1〜4のアルコキシ基又は、炭素原子数5〜8のシクロアルコキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基である。このようなアルコキシ基として具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。このようなアルコキシ基には、本発明の効果を妨げない範囲においてハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等が置換していてもよいが、置換していない方が好ましい。
【0009】
式中、R
1、R
2で示されるフェニル基としては、置換基がないフェニル基が好ましい。しかしながらフェニル基には本発明の効果を妨げない範囲においてメチル基等のアルキル基、メトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子等が置換していてもよい。
式中、R
1、R
2で示されるハロゲン原子としては、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0010】
上記置換基R
1、R
2において、好ましいR
1はアルキル基又はフェニル基であり、より好ましいR
1はアルキル基であり、好ましいR
2はアルキル基、フェニル基又は水素原子であり、より好ましいR
2は水素原子である。
また、ヒドロキシフェニル基の置換基R
1の置換数nは0又は1〜4の整数を示し、好ましくは0、1又は2であり、より好ましくは、0又は1であり、特に好ましくは0である。R
1の置換位置は水酸基に対してオルソ位またはパラ位が好ましく、水酸基の置換位置がベンゾオキサゾール骨格との結合位置に対してパラ位の場合には、R
1の置換位置は、水酸基に対してオルソ位が好ましい。
ヒドロキシフェニル基の水酸基の置換位置について、ベンゾオキサゾール骨格と結合した位置に対してパラ位、メタ位が好ましく、特にパラ位が好ましい。
【0011】
上記一般式(1)において、式中、Aは炭素原子数5〜10のシクロアルキリデン基を表す。
このようなシクロアルキリデン基としては、具体的には例えば、シクロペンタン−1,1−ジイル基、シクロヘキサン−1,1−ジイル基、シクロヘプタン−1,1−ジイル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基等が挙げられる。
より好ましくは、耐熱性の観点から,3,3,5−トリメチルシクロヘキサン−1,1−ジイル基である。
さらに、このようなシクロアルカン骨格には、アルキル基が置換していてもよく、好ましくはメチル基であり、好ましい置換数は1〜3である。
【0012】
このような本発明のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物としては、具体的には例えば、
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1−ビス[2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロペンタン、
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロヘプタン、
1,1−ビス[2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メチル−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロヘキサン、
1,1−ビス[2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロペンタン、
1,1−ビス[2−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]シクロヘキサン等が挙げられる。
【0013】
上記のような本発明のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物は、その製造方法については何ら制限されるものではない。例えば、以下の方法等が挙げられる。
(方法1)
目的のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物に対応する下記一般式(3)のビスアミノフェノール類とヒドロキシ安息香酸類を原料とし、有機溶媒中、加温下に縮合反応を行う方法(特開2007−262204号公報等)を挙げることができる。当該製造方法について、例えば、ビスアミノフェノール類として1,1−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ヒドロキシ安息香酸類として4−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステルを原料とした場合について述べる。その反応式は例えば下記式で表される。
反応式(1)
上記反応で用いられるヒドロキシ安息香酸類としては例えば下記一般式(2)で表されるヒドロキシ安息香酸フェニルエステル類が挙げられる。
一般式(2)
(式中、R
1及びnは一般式(1)のそれと同じである。)
【0014】
また、上記反応に際し、ビスアミノフェノール類とヒドロキシ安息香酸フェニルエステル類の原料モル比としては、通常、ビスアミノフェノール類1モルに対してヒドロキシ安息香酸フェニルエステル類を通常、2〜5モルの範囲、好ましくは2〜3モルの範囲である。反応溶媒は用いる方が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン等のN−アルキルアミド溶媒、ビフェニル等の芳香族炭化水素類又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
溶媒の使用量は通常、ビスアミノフェノール類1重量部に対して1〜20重量部の範囲である。また、反応温度は150〜250℃の範囲、反応圧力は常圧、減圧、加圧のいずれでもよいが、副生する水やフェノール類を除去しやすくするために減圧にしてもよい。
反応は、例えば、原料、反応溶媒を反応容器に一括で仕込み、不活性ガスで置換し、その後、150℃〜180℃程度の反応温度まで昇温・攪拌して、系内を減圧しつつ副生する水やフェノール類を留出させながら反応させる。その後、更に系内を200〜250℃程度まで昇温し閉環脱水反応を完結させる。反応終了後、得られた反応生成物から公知の精製方法を用いて、目的物を粗製物乃至精製物として得ることができる。
例えば、得られた反応液を冷却するか、若しくは水を加えることによって析出または再沈した固体や結晶を濾別し、これを更に水、メタノールで洗浄し、乾燥して目的物を得ることができる。
【0015】
上記方法において、ビスアミノフェノール類は下記一般式(3)で表される。
一般式(3)
(式中、R
2、Aは一般式(1)のそれと同じである)
従って、このようなビスアミノフェノール類としては、本発明のビス(ヒドロキシフェニルベンゾオキサゾール)化合物に対応して、具体的には例えば1,1−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−アミノ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン等が挙げられる。
【0016】
このようなビスアミノフェノール類は、例えば、反応式(2)で示すように、対応するビスフェノール化合物を硝酸存在下にニトロし、得られたビス(ニトロフェノール)化合物のニトロ基を、例えば、パラジウムカーボンやニッケル等の水素化触媒存在下に水素ガスと反応させる等の公知の還元反応(特開2003−12611公報、特開2003−81925公報等)に付すことで得ることができる。
反応式(2)
(式中、R
2、Aは一般式(1)のそれと同じである)
【0017】
(方法2)
本発明のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物を得る別の方法としては、目的のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物に対応する下記一般式(4)で表されるビスニトロフェノール類と下記一般式(5)で表されるメチルフェノール類を原料とし、有機溶媒中、好ましくは触媒の存在下に加温下で脱水縮合反応を行う方法が挙げられる。
【0018】
例えば、ビス(ニトロフェノール)類として、1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルフェノール類として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを原料とした場合について述べる。その反応は例えば下記反応式(3)で表される。
反応式(3)
【0019】
上記方法において、ビスニトロフェノール類は下記一般式(4)で表される。
一般式(4)
(式中、R
2、Aは一般式(1)のそれと同じである)
よって、このようなビスニトロフェノール類としては、本発明のビス(ヒドロキシフェニルベンゾオキサゾール)化合物に対応して、具体的には1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−ニトロ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン等が挙げられる。
【0020】
このようなビスニトロフェノール類は、例えば、前記一般式(4)で表されるビスニトロフェノール類に対応する下記一般式(6)で表されるビスフェノール類を、例えば、実質的に他の酸が存在しない条件下において50〜80%硝酸で5℃以下の温度においてニトロ化する等、公知の方法(WO01/81293号公報、特開平11−106365号公報等)によりニトロ化することにより得ることができる。
一般式(6)
(式中、R
2、Aは一般式(2)のそれと同じである)
【0021】
上記方法における原料のメチルフェノール類は下記一般式(5)で表される。
一般式(5)
(式中、R
1、nは一般式(1)のそれと同じである。)
従って、このようなメチルフェノール類としては、本発明のビス(ヒドロキシフェニルベンゾオキサゾール)化合物に対応して、具体的には例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール 、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−メトキシ−4−メチルフェノール等が挙げられる。
上記反応に際し、ビスニトロフェノール類とメチルフェノール類の原料モル比としては、通常、ビスニトロフェノール類1モルに対してメチルフェノール類を通常、2〜10モルの範囲、好ましくは3〜5モルの範囲である。
【0022】
触媒は用いなくてもよいが、収率向上のためは使用した方が好ましい。触媒を用いる場合、触媒としては、鉄(鉄粉)、硫黄又は硫化ナトリウム又はこれらの混合物が好ましい
触媒量は原料のビスニトロフェノール類1モルに対して通常、0.01〜3モルの範囲であり、鉄の場合は0.1〜0.3モルの範囲が好ましく、硫黄の場合は1.5〜2.5モルの範囲が好ましく、2モルが更に好ましい。
【0023】
反応溶媒は用いる方が好ましく、例えば、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族化合物、ビフェニル等の芳香族炭化水素溶媒、2,6−ジメチルナフタレン、2,6−ジイソブチルナフタレン等のアルキルナフタレン類、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のポリアルキレングリコールエーテル類又はこれらの混合物が挙げられる。
溶媒使用量はビスニトロフェノール類1重量部に対し好ましく1〜50重量部の範囲、より好ましくは10〜40重量部の範囲である。
反応温度としては、好ましくは160℃〜200℃の範囲、より好ましくは170〜190℃の範囲である。 反応圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでもよい。反応溶媒の常圧での沸点が反応温度よりも低い場合など、温度を高くするため加圧して調整してもよい。
【0024】
反応は、例えば、反応容器に所定量のビスニトロフェノール類、メチルフェノール類、触媒及び反応溶媒を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら、所定の反応温度まで昇温しその温度を保ちながら反応を行う。
反応終了後、得られた反応混合物から、常法に従って、触媒分離、低沸点分の留出分離、晶析濾過等の公知の方法を適宜に用いることにより目的物であるビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール類の粗製品を得ることができ、これを、更に必要に応じて、再度、晶析濾過、カラム分離等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることができる。
例えば、反応液をそのまま冷却もしくは貧溶媒を加えて冷却することにより、結晶が析出する場合にはその結晶を濾別することで、粗製又は高純度の目的物を得ることができる。または、反応終了後、反応溶媒等を減圧下に濃縮し、その残渣をカラムクロマトグラフィー等により精製することで高純度品を得ることもできる。
【0025】
(方法3)
本発明のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物を得る今一つの方法としては、上記一般式(1)において、nが1以上であって且つ置換基R
1の少なくとも1つが、tert−ブチル基等の3級アルキル基であるか、または/及び置換基R
2がt−ブチル基等の3級アルキル基である中間体としてのビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物を得、得られた中間体としての3級アルキル基が置換したビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾールから、酸触媒の存在下に加温下に脱ブチルするなどの公知の方法(特開平2−169530号公報、特開平8−143494号公報等)により、t−ブチル基等の3級アルキル基を脱離させ、水素原子に置換して目的のビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾールを得る方法が挙げられる。
【0026】
例えば、ビス(ニトロフェノール)類として、1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルフェノール類として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを原料とし、上記方法2の反応に従い得られた中間体としての1,1−ビス[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンからt−ブチル基を脱離して目的の1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを得る場合について述べる。
その反応は例えば下記反応式(4)で表される。
反応式(4)
【0027】
上記脱ブチル化反応に際し、酸触媒としてはp−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸無水物等の高沸点の酸が好ましく、触媒の量としては、ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物に対して好ましくは1〜50モル%の範囲、より好ましくは10〜30モル%の範囲である。反応に際し通常、溶媒が用いられるが、好ましい溶媒としてはフェノール、m−クレゾール等のフェノール類が挙げられる。溶媒の量は特に制限はないが、通常、ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物1重量部に対して10〜500重量部程度が好ましい。反応温度は、通常200〜250℃程度の範囲である。
反応は、例えば、反応容器に所定量のt−ブチル置換―ビス(ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾール化合物、触媒及び反応溶媒を仕込み、窒素雰囲気下に攪拌しながら、所定の反応温度まで昇温し、その温度を保ちながら反応を行う。
反応終了後、反応混合物から目的物を得るには、晶析、濃縮等の公知の精製方法を用いることができる。例えば、反応液に溶媒や水を添加するか、若しくは濃縮して、或いはその組合せにより晶析し、析出した目的物の結晶を濾別する。反応液に上記操作を実施する前に水と分離する溶媒を加えた後に水洗することにより水溶性の不純物を除去してもよい。また、アルカリ水溶液による中和処理や水洗等により反応液から触媒を除去したり、濃縮により低沸点物等の除去する処理をした後、カラムクロマトグラフィーにより精製することもできる。
【実施例】
【0028】
(製造例)
1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
100ml三つ口フラスコに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン9.32g(0.030mol)とジクロロメタン50mlと撹拌用マグネットを仕込んだ後冷却し、反応温度0〜5℃を保ちながら70%硝酸6.10g(0.067mol)を3時間かけて滴下した。さらに、当該温度を保ちながら3時間反応を行った。反応終了後、反応液をろ過し、濾別した結晶に1%炭酸水素ナトリウム水溶液次いで蒸留水を注いでをよく洗浄した。乾燥後、純度99.9%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン6.0gを得た。
【0029】
(実施例1)
1,1−ビス[2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
100ml試験管に1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン600.5mg(1.50mmol)と2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1322.3mg(6.00mmol)と硫黄粉末 96.2mg(3.00mmol)と鉄粉 16.8mg(0.30mmol)とo−ジクロロベンゼン 8mlを仕込んだ後、常温で試験管内をアルゴン置換した。
その後、撹拌しながら180℃に昇温し、当該温度において還流させながら48時間反応を行った。反応終了後、減圧下に低沸点物を留出させて、濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、1,1−ビス[2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン 571.5mgを得た。1,1−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに対する収率は50%だった。
【0030】
分子量(HRMS / MALDI-TOF):769.4964(M+H)
+
1H NMR同定結果(300MHz、溶媒:CDCl
3、内部標準:テトラメチルシラン)
【表1】
【0031】
(実施例2)
1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
10mlの耐圧用試験管に実施例1で合成した1,1−ビス[2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン154.2mg(0.20mmol)と、フェノール 2.91gと、p−トルエンスルホン酸無水物 8.4mg(4.9×10
−2mmol)を仕込んで密閉し、マイクロウェーブ反応装置にて撹拌しながら210℃に昇温し、当該温度にて4時間反応を行った。
さらに230℃に昇温後3時間反応を行った後、250℃に昇温後5時間反応を行った。
反応後室温まで冷却し、得られた反応終了液を水に加え、さらにアルカリ水溶液を加えてpH6程度に中和し、水層を除去した。得られた油層をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、1,1−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン 42.0mgを得た。1,1−ビス[2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾオキサゾリル]−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに対する収率は39%だった。
【0032】
融点 344℃(示差走査熱量分析法)
分子量(HRMS / MALDI-TOF):545.2461(M+H)
+
1H NMR同定結果(300MHz、溶媒:THF-d
8、内部標準:テトラメチルシラン)
【表2】
【0033】
(比較例)
実施例と同様の方法で合成した2,2’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−5,5’−ビベンゾオキサゾール(比較例化合物)と実施例2で得られた化合物をそれぞれメタノール、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)に室温で溶解させて飽和溶液を作った。飽和溶液の上澄み液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで濃度を測定した。 それぞれの測定結果を下記表に示す。なお、比較例化合物の融点は410℃(示差走査熱量分析法)であった。
【0034】
上記の結果からみて明らかなように、本発明のベンゾオキサゾール化合物は、メタノール、トルエン、MIBKの各溶媒に対する溶解性が、比較例化合物に比べて非常に優れている。