【解決手段】被験者の生物試料中の、約1071、約1099、約1176、約1208、約1320、約1329、約1371、約1466、約1617、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4153、約4167、約4348、約4411、約4978、約5080、約5351、約5919、約8705、及び約8830の分子量を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種を測定することからなる、該被験者における大腸癌の診断のための検査方法。
被験者の生物試料中の、約1071、約1099、約1176、約1208、約1320、約1329、約1371、約1466、約1617、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4153、約4167、約4348、約4411、約4978、約5080、約5351、約5919、約8705、及び約8830の分子量を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種を測定することからなる、該被験者における大腸癌の診断のための検査方法。
前記測定されるペプチドは、約3951、約2860、約1617、約4978、約1320、約4153、約1099、約1329、約2789、及び約3572の分子量を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
前記測定されるペプチドは、約3951の分子量を有するペプチドと、約2860、約1617、約4978、約1320、約4167、約1099、約1329、約2789、及び約3572の分子量を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種とを含む請求項1又は2のいずれかに記載の方法。
前記測定されるペプチドは、前記約3951、約2860、約1617、約4978、約2789の分子量を有する5種のペプチドからなる群より選択される2、3、4又は5個である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記疾患が大腸癌であり、前記測定されるペプチドは、前記約3951、約2860、約1617、約4978、約2789の分子量を有する5種のペプチドからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液およびリンパ液からなる群より選択される体液からなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
被験者の生物試料中の、大腸癌と相関する複数のペプチドのうちの少なくとも2種を測定することであって、前記ペプチドは、交差検証法による頻度の高い方から選択されたN個(Nは整数、N≧2)のペプチドのうちの少なくともM個(Mは整数、M≧2かつN≧M)であり、特異度に対して感度をプロットしたROCの曲線下面積(AUC)がある閾値を超える値となる数だけ、前記ペプチドを測定すること
からなる、該被験者における大腸癌の診断のための検査方法。
被験者の生物試料中の、ある疾患と相関する複数のペプチドのうちの少なくとも2種を測定することであって、前記ペプチドは、交差検証法による頻度の高い方から選択されたN個(Nは整数、N≧2)のペプチドのうちの少なくともM個(Mは整数、M≧2かつN≧M)であり、特異度に対して感度をプロットしたROCの曲線下面積(AUC)がある閾値を超える値となる数だけ、前記ペプチドを測定すること
からなる、該被験者における該疾患の診断のための検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、新規かつ有用な大腸癌の診断マーカーペプチド(以下、包括して「本発明のペプチド」という場合もある)を提供する。
【0011】
本発明のペプチドは、ヒト血清中に見出される、質量分析による見かけの分子量Mが、それぞれ約1071、約1099、約1176、約1208、約1320、約1329、約1371、約1466、約1617、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4153、約4167、約4348、約4411、約4978、約5080、約5351、約5919、約8705、及び約8830の31種のペプチドである(順にペプチド1、ペプチド2、・・・ペプチド31という場合がある)。これらのペプチドの発現量は大腸癌と相関する。分子量の実測値は、用いられる測定方法・測定機器に応じて若干変動し得る。したがって、これらの分子量における「約」は、質量分析計を用いる方法による場合、±0.5%、好ましくは±0.3%、より好ましくは±0.1%の誤差を含む意味で用いられる。 本発明のペプチドの配列決定をしたところ、約1208の分子量を有するペプチドはGlu Gly Asp Phe Leu Ala Glu Gly Gly Gly Val Arg (EGDFLAEGGGVR)のアミノ酸配列を有し、約1466の分子量を有するペプチドはAsp Ser Gly Glu Gly Asp Phe Leu Ala Glu Gly Gly Gly Val Arg(DSGEGDFLAEGGGVR)のアミノ酸配列を有し、約1617の分子量を有するペプチドはAla Asp Ser Gly Glu Gly Asp Phe Leu Ala Glu Gly Gly Gly Val Arg(ADS(+リン酸化)GEGDFLAEGGGVR) (3位のセリンがリン酸化)のアミノ酸配列を有し、約2741の分子量を有するペプチドはThr Val Val Gln Pro Ser Val Gly Ala Ala Ala Gly Pro Val Val Pro Pro Cys Pro Gly Arg Ile Arg His Phe Lys Val(TVVQPSVGAAAGPVVPPCPGRIRHFKV)のアミノ酸配列を有し、約2769の分子量を有するペプチドはSer Ser Ser Tyr Ser Lys Gln Phe Thr Ser Ser Thr Ser Tyr Asn Arg Gly Asp Ser Thr Phe Glu Ser Lys Ser(SSSYSKQFTSSTSYNRGDSTFESKS)のアミノ酸配列を有し、約2860の分子量を有するペプチドはThr Val Val Gln Pro Ser Val Gly Ala Ala Ala Gly Pro Val Val Pro Pro Pro Cys (+Cys) Pro Gly Arg Ile Arg His Phe Lys Val (TVVQPSVGAAAGPVVPPC(+Cys)PGRIRHFKV) (19位のシステインのシステイン化)ことが判明した。
【0012】
これらのペプチドのうち、約1177、約1208、約1320、約1466、約1617、約4153、約4978、約5351、及び約5919の分子量を有するペプチドの血清レベルは、大腸癌患者において、非大腸癌患者もしくは健常者と比較して顕著に低下している。一方、約1071、約1099、約1329、約1371、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4167、約4348、約4411、約5080、約8705、及び約8830の分子量を有するペプチドの血清レベルは、大腸癌患者において、非大腸患者もしくは健常者と比較して顕著に上昇している。
【0013】
本発明はまた、被験者の生物試料中の、上記の本発明のペプチドのうちの少なくとも1種を測定することからなる、該被験者における大腸癌の診断のための検査方法を包含する。
【0014】
ここで「診断のための検査」とは、該ペプチド量の測定および必要に応じて対照サンプルにおける測定値との比較を意味する。被験者は、大腸癌に罹患していると疑われる患者を含み、「大腸癌に罹患していると疑われる被検者」は、被検者本人が主観的に疑いを抱く者(何らかの自覚症状がある者に限らず、単に予防検診の受診を希望する者を含む)であっても、何らかの客観的な根拠に基づく者(例えば、従来公知の臨床検査(例、便潜血検査)および/または診察の結果、大腸癌への合理的な罹患可能性があると医師が判断した者)であってもよい。「ペプチドを測定する」とはペプチドの濃度、量、又はシグナル強度を測定することを指す。
【0015】
被験試料となる被検者由来の生体試料は特に限定されないが、被検者への侵襲が少ないものであることが好ましく、例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿、涙液など生体から容易に採取できるものや、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、眼房水、硝子体液、リンパ液など比較的容易に採取されるものが挙げられる。一実施形態では、生物試料が血液、血漿、血清、唾液、尿、髄液、骨髄液、胸水、腹水、関節液、涙液、眼房水、硝子体液およびリンパ液からなる群より選択される体液からなる。血清や血漿を用いる場合、常法に従って被検者から採血し、前処理を施さず直接、又は液性成分を分離することにより分析にかける被験試料を調製することができる。検出対象である本発明のペプチドは必要に応じて、抗体カラムやスピンカラムなどを用いて、予め高分子量の蛋白質画分などを分離除去しておくこともできる。
【0016】
生体試料中の、本発明のペプチドの検出は、例えば、生体試料を各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、表面プラズモン共鳴法、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、および質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計、免疫質量分析計、安定同位体ペプチドを内部標準にした質量分析計など)を組み合わせる方法等に供し、該ペプチドの分子量と一致するバンドもしくはスポット、あるいはピークを検出することにより行うことができるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明のペプチドを精製してそれらを認識する抗体を作製し、ELISA, RIA,イムノクロマト法、表面プラズモン共鳴法、ウェスタンブロッティング、免疫質量分析法や各種イムノアッセイにより該ペプチドを検出する方法もまた、好ましく用いられ得る。さらに上記方法のハイブリッド型検出法も有効である。
【0018】
本発明の検査方法における特に好ましい測定法の1つは、飛行時間型質量分析に使用するプレートの表面に被験試料を接触させ、該プレート表面に捕捉された成分の質量を飛行時間型質量分析計で測定する方法が挙げられる。飛行時間型質量分析計に適合可能なプレートは、検出対象である本発明のペプチドを効率よく吸着し得る表面構造(例:官能基付加ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO
2、SiN
4、改質シリコン、種々のゲルまたはポリマーのコーティング)を有している限り、いかなるものであってもよい。
【0019】
好ましい実施態様においては、質量分析用プレートとして用いられる支持体は、ポリビニリデンジフロリド(PVDF)、ニトロセルロースまたはシリカゲル、特に好ましくはPVDFで薄層コーティングされた基材である(WO 2004/031759を参照)。かかる基材は、質量分析用プレートにおいて使用されているものであれば、特に限定されず、例えば、絶縁体、金属、導電性ポリマー、それらの複合体などが挙げられる。かかるPVDFで薄層コーティングされた質量分析用プレートとして、好ましくは株式会社プロトセラ社のブロットチップ(BLOTCHIP,登録商標)などが挙げられる。代わりに、質量分析用プレートは、支持体表面を塗布、噴霧、蒸着、浸漬、印刷、スパッタリング等の公知の手段でコーティングすることにより、公知の方法により調製することもできる。また、質量分析用プレート上の分子を質量分析する方法自体は公知である(例えばWO 2004/031759)。WO 2004/031759に記載の方法を、必要に応じて適宜改変して使用することができる。
【0020】
被験試料の質量分析用プレート(支持体)への移行は、被験試料となる被検者由来の生体試料を未処理のままで、あるいは抗体カラムその他の方法で高分子タンパク質を除去、濃縮した後に、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動もしくは等電点電気泳動に付し、泳動後ゲルをプレートと接触させて転写(ブロッティング)することにより行われる。転写の方法自体は公知であり、好ましくは電気転写が用いられる。電気転写時に使用する緩衝液としては、pH 7〜9、低塩濃度の公知の緩衝液を用いることが好ましい(例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液など)。
【0021】
上記の方法により支持体表面上に捕捉された被験試料中の分子を質量分析することにより、分子量に関する情報から、標的分子である本発明のペプチドの存在および量を同定することができる。質量分析装置からの情報を、任意のプログラムを用いて、非大腸癌患者もしくは健常人由来の生体試料における質量分析データと比較して、示差的な(differential)情報として出力させることも可能である。そのようなプログラムは周知であり、また、当業者は、公知の情報処理技術を用いて、容易にそのようなプログラムを構築もしくは改変することができることが理解されよう。
【0022】
高精度な質量分析結果を得るためには、標的分子の安定同位体標識ペプチドを合成して、それを既知量の内部標準品として被験試料に混合し、BLOTCHIP(登録商標)システムを用いて測定することでCV値が5%以下の実測データを取得できる。もちろん株式会社プロトセラ社のBLOTCHIP(登録商標)システム以外の質量分析システムでも質量分析が実施可能であり、この方法は抗体を使用しない診断装置として臨床使用できる。
【0023】
上記の質量分析による検出において、タンデム質量分析(MS/MS)法を用いてペプチドを同定することができ、かかる同定法としては、MS/MSスペクトルを解析してアミノ酸配列を決定するde novo sequencing法と、MS/MSスペクトル中に含まれる部分的な配列情報(質量タグ)を用いてデータベース検索を行い、ペプチドを同定する方法等が挙げられる。また、MS/MS法を用いることにより、直接本発明のペプチドのアミノ酸配列を同定し、該配列情報に基づいて該ペプチドの全部もしくは一部を合成し、これを以下の抗体に対する抗原(ハプテン)として利用することもできる。
【0024】
本発明のペプチドの測定は、それに対する抗体を用いて行うこともできる。よって、本発明は、ペプチドを特異的に認識する抗体を用いた大腸癌の診断のための検査方法、かかる抗体を含む抗体を含む大腸癌診断剤、ならびにかかる抗体を含む大腸癌診断キットを含む。かかる検査方法は、最適化されたイムノアッセイ系を構築してこれをキット化すれば、上記質量分析装置のような特殊な装置を使用することなく、高感度かつ高精度に該ペプチドを検出することができる点で、特に有用である。
【0025】
本発明のペプチドに対する抗体は、例えば、本発明のペプチドを、これを発現する患者由来の生体試料から単離・精製し、該ペプチドを抗原として動物を免疫することにより調製することができる。あるいは、得られるペプチドの量が少量である場合は、RT-PCRによる該ペプチドをコードするcDNA断片の増幅等の周知の遺伝子工学的手法によりペプチドを大量に調製することができ、あるいはかかるcDNAを鋳型として、無細胞転写・翻訳系を用いて本発明のペプチドを取得することもできる。さらに有機合成法により大量に調製することも可能である。
【0026】
本発明のペプチドに対する抗体(以下、「本発明の抗体」と称する場合がある)は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製することができる。また、該抗体は完全抗体分子だけでなくそのフラグメントをも包含し、例えば、Fab、F(ab')2、ScFv、およびminibody等が挙げられる。
【0027】
例えば、ポリクローナル抗体は、本発明のペプチドを抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し、最終免疫後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、モルモット、ハムスターなど、目的の抗体を得ることができる哺乳動物が挙げられる。
【0028】
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法により作成することができる。モノクローナル抗体を調製するための技法の説明は、Stites et al, Basic and Clinical Immunology. (Lang Medical Publications Los Altos. CA. 4
th Edition) and references therein, 、in particular Koehler, G. & Milstein, C. Nature 256, 495-497 (1975).に見出され得る。例えば、本発明のペプチドを市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS-1, P3X63Ag8など)を細胞融合して該ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、このましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。
【0029】
抗体を用いる本発明の検査方法は、特に制限されるべきものではなく、被験試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法等が好適に用いられる。測定に際し、抗体または抗原は、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、または発光物質等の標識剤と結合され得る。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン-アビジン系を用いることもできる。これら個々の免疫学的測定法は、当業者の通常の技能により、本発明の定量方法に適用可能である。
【0030】
本発明のペプチドはタンパク質分解産物からなるため、未分解のタンパク質や、切断部位が共通の類似ペプチド等様々な分子が測定値に影響を与える可能性がある。そこで、第1工程において、生体試料を抗体により免疫アフィニティ精製し、抗体に結合したフラクションを、第2工程において質量分析に付し、精緻な分子量を基準に同定、定量する、いわゆる免疫質量分析法を利用することができる(例えば、Rapid Commun. Mass Spectrom. 2007, 21: 352-358を参照)。免疫質量分析法によれば、未分解のタンパク質も類似ペプチドも、質量分析計で完全に分離され、バイオマーカーの正確な分子量を基準に高い特異性と感度で定量が可能となる。
【0031】
あるいは、本発明の抗体を用いる別の本発明の検査方法として、該抗体を上記したような質量分析計に適合し得るチップの表面上に固定化し、該チップ上の該抗体に被検試料を接触させ、該抗体に捕捉された生体試料成分を質量分析にかけ、該抗体が認識するマーカーペプチドの分子量に相当するピークを検出する方法が挙げられる。
【0032】
上記のいずれかの方法により測定された被検者由来試料中の本発明のペプチドのレベルが、非大腸癌患者もしくは健常人由来の対照試料中の該ペプチドレベルに比べて有意に変動している場合、該被検者は大腸癌に罹患している可能性が高いと診断することができる。
【0033】
より具体的には、本発明のペプチドが約1177、約1208、約1320、約1466、約1617、約4153、約4978、約5351、及び約5919の分子量を有するペプチドのいずれかであり、試料中の該ペプチドのレベルが、対照試料中の該ペプチドレベルに比べて有意に下降している場合、又は本発明のペプチドが本発明のペプチドがペプチド約1071、約1099、約1329、約1371、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4167、約4348、約4411、約5080、約8705、及び約8830の分子量を有するペプチドのいずれかであり、試料中の該ペプチドのレベルが、対照試料中の該ペプチドレベルに比べて有意に上昇している場合、該被検者は大腸癌に罹患している可能性が高いと診断することができる。
【0034】
本発明のペプチドは、それぞれ単独でも大腸癌の診断マーカーとして利用することができるが、2種以上を組み合わせることにより、感度(有病正診率)および特異度(無病正診率)をより高めることができる。その場合数十種類のマーカーペプチド候補を1つのマーカーセットとして取り扱うことが出来る性能評価手法(JMP−11やサポートベクターマシンやランダムフォレスト法など)を使用した。マーカーとして用いるペプチドの数は特に限定されないが、好ましくは2〜31種、より好ましくは2〜10種、さらにより好ましくは3、5、7又は10種である。
【0035】
一実施形態において、検出又は測定されるペプチドは、約3951、約2860、約1617、約4978、約1320、約4153、約1099、約1329、約2789、及び約3572の分子量を有する10種のペプチドからなる群より選択される少なくとも1種であり、好ましくは少なくとも2種である。
【0036】
別の実施形態において、検出又は測定されるペプチドは、約3951のペプチドと、約2860、約1617、約4978、約1320、約4167、約1099、約1329、約2789、及び約3572の分子量を有するペプチドからなる群より選択される少なくとも1種とを含む。
【0037】
別の実施形態において、検出又は測定されるペプチドは、後述する交差検証法による頻度の高い方から選択された少なくとも5個のうちの少なくとも2、3、4又は5個である。
【0038】
別の実施形態において、診断マーカーとして検出又は測定されるペプチドは、前記約3951、約2860、約1617、約4978、約2789の分子量を有する5種のペプチドからなる群より選択される2、3、4又は5個である。
【0039】
別の実施形態において、検出又は測定されるペプチドは、前記約3951の分子量を有するペプチド及び約2860のペプチドを含む。また別の実施形態において、診断マーカーとして検出又は測定されるペプチドは、約3951の分子量を有するペプチド、約2860の分子量を有するペプチド、及び約1617の分子量を有するペプチドを含む。さらに別の実施形態において、診断マーカーとして検出又は測定されるペプチドは、約3951の分子量を有するペプチド、約2860の分子量を有するペプチド、約1617の分子量を有するペプチド、及び約4978の分子量を有するペプチドを含む。また別の実施形態において、診断マーカーとして検出又は測定されるペプチドは、約3951の分子量を有するペプチド、約2860の分子量を有するペプチド、約1617の分子量を有するペプチド、約4978の分子量を有するペプチド、約2789の分子量を有するペプチドを含む。
【0040】
2種以上のペプチドをマーカーとして用いる場合の診断手法としては、例えば、(1) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動する場合に大腸癌であると判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に大腸癌でないと判定する方法、(2) 測定対象であるすべてのペプチドについてレベルが有意に変動しない場合に大腸癌でないと判定し、いずれかのペプチドについてレベルが有意に変動した場合に大腸癌であると判定する方法、(3) 測定対象であるn個のペプチドのうち、例えば、2〜(n-1)個以上のペプチドについて、レベルが有意に変動する場合に大腸癌であると判定する方法、さらに各ペプチド間で重みを持たせる方法、ならびに(4) バギング法、ブースティング法、ランダムフォレスト法などの集団学習法、などが考えられるが、特には交差検定(交差検証)を用いることが好ましい。
【0041】
交差検定(交差検証)は、標本データを分割し、その一部をまず解析して、残る部分でその解析のテストを行い、解析自身の妥当性の検証・確認に当てる手法を指す。例えば、標本データをK個に分割し、そのうちの1つをバリデーションデータ(未知のデータ)とし、残りのK−1個をトレーニングデータ(既知)とし、K個に分割された標本群それぞれをK回検証を行い、判別式の構築と、バリデーションデータによる検証を繰り返し、得られたK 回の結果を平均して1つの推定を得る。
【0042】
本願では、質量分析により特定された候補ペプチドを交差検定し、頻度の高い順に表れるペプチドをマーカーとして用いたところ、ROCの曲線下面積(AUC)が高い(5つのマーカーペプチドで0.9を超える)極めて信頼性の高い大腸癌の判定又は診断が可能であることを見出した。検出又は測定されるペプチドの数が多いほど、検査の精度は向上する。例えば、約3951、約2860、約1617、約4978、及び約2789の分子量を有するペプチドは順に頻度の高い5つのペプチドである。
【0043】
よって、本発明は、被験者の生物試料中の、ある疾患、特には大腸癌と相関する複数のペプチドのうちの少なくとも2種を測定することであって、前記ペプチドは、交差検証法による頻度の高い方から選択されたN個(Nは整数、N≧2)のペプチドのうちの少なくともM個(Mは整数、M≧2かつN≧M)であり、特異度に対して感度をプロットしたROCの曲線下面積(AUC)がある閾値を超える値となる数だけ、前記ペプチドを測定することからなる、該被験者における該疾患の診断のための検査方法も包含する。
【0044】
検出又は測定されるペプチドの数は、本発明の検査方法におけるAUCが或る閾値を超える値となる数であることが好ましい。通常、閾値は0.9であり、好ましくはAUCは0.92、より好ましくは0.95、より好ましくは0.97、より好ましくは0.98、最も好ましくは0.99であり、ペプチドの数を増やすほど約1に近づけることが可能である。
【0045】
別の実施態様においては、2種以上の本発明のペプチドをマーカーとして用いる場合、相当サンプル数の既知乳癌患者および非乳癌対照由来試料中の各ペプチドの測定値を2次元もしくは3次元座標にプロットして散布図を作成することにより、大腸癌と非大腸癌とがどの領域に分布するかを可視化し、次いで、被験者由来試料中の各ペプチドの測定値を該散布図上にプロットすることにより、被験者が大腸癌に罹患しているか否かを容易に判定することもできる。散布図に基づいて各ペプチドのカットオフ値を決定し、被験者由来試料中の各ペプチドの測定値をこれと比較することによっても判定が可能である。
【0046】
本発明の検査方法は、患者から時系列で生体試料を採取し、各試料における本発明のペプチドの発現の経時変化を調べることにより行うこともできる。生体試料の採取間隔は特に限定されないが、患者のQOLを損なわない範囲でできるだけ頻繁にサンプリングすることが望ましく、例えば、血漿もしくは血清を試料として用いる場合、約1分〜約1週間の間隔で採血を行うことが好ましい。本発明のペプチドは、大腸癌が進行するに従って血清・血漿レベルが各ペプチドで低下又は上昇する傾向にある。従って、これらのマーカーのレベルが経時的に上昇又は低下した場合には、該患者における大腸癌が改善されている可能性が高いと判定することができる。
【0047】
さらに、上記時系列的なサンプリングによる大腸癌の検査方法は、前回サンプリングと当回サンプリングとの間に、被検者である患者に対して該疾患の治療措置が講じられた場合に、当該措置による治療効果を評価するのに用いることができる。即ち、治療の前後にサンプリングした試料について、治療後の状態が治療前の状態と比較して病態の改善が認められると判定された場合に、当該治療の効果があったと評価することができる。一方、治療後の状態が治療前の状態と比較して病態の改善が認められない、あるいはさらに悪化していると判定された場合には、当該治療の効果がなかったと評価することができる。
【0048】
従って、本発明のペプチドは、大腸癌を診断または検出するマーカーのみならず、大腸癌の予後を予測するマーカー、ならびに治療効果判定のエンドポイントのためのマーカーともなり得る。さらに、本発明のペプチドならびに方法は、大腸癌治療の創薬標的分子のスクリーニングに、および/または患者の選別もしくは薬の投与量の調節のために治療薬と併用されるコンパニオン診断薬に使用することができる。
【0049】
さらに本発明のペプチドは、診断以外に積極的な大腸癌の創薬ターゲットを提供することもできる。即ち、該ペプチドそれ自体が該疾患の治療(寛解)方向に生理機能を持つ(「治療ペプチド」という)場合、該ペプチドの量もしくは活性を増大させる物質を患者に投与することにより、また、該ペプチドそれ自体が該疾患の増悪方向に生理機能を持つ場合(「増悪ペプチド」という)、該ペプチドの量もしくは活性を低減させる物質を投与することにより、それぞれ該疾患を治療することができる。
【0050】
本発明はまた、本発明のペプチドが治療ペプチドとして作用する場合に、該ペプチドの量もしくは活性を増大させる、および/または、本発明のペプチドが増悪ペプチドとして作用する場合に、該ペプチドの量もしくは活性を低減させることによる、大腸癌の治療方法を提供する。該治療方法は、具体的には、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質および/または増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を低減させる物質の有効量を、大腸癌患者に投与することを含む。従って、本発明はまた、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質および/または増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を低減させる物質を含有してなる、大腸癌治療剤を提供する。
【0051】
具体的には、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの活性を増大させる物質としては、該ペプチド自体あるいはそれと同様のアゴニスト作用を有する分子が挙げられる。あるいは、治療ペプチドとしての本発明のペプチドの活性を増大させる物質として、該ペプチドの非中和抗体、好ましくはアゴニスト抗体なども挙げることができる。一方、増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの活性を低減させる物質としては、該ペプチドのアンタゴニスト作用を有する分子、あるいは該ペプチドに対する中和抗体などが挙げられる。
【0052】
治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質および増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を低減させる物質は、常套手段に従って製剤化することができる。
【0053】
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
【0054】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。注射剤、坐剤などでは、有効成分(該ペプチド)の血中濃度の延長や吸収効率の増加を目的に、既存の方法による化学修飾(糖鎖、PEGその他)体が使用される。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記化合物またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
【0055】
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記化合物が含有されていることが好ましい。
【0056】
なお前記した各組成物は、上記治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質または増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を低減させる物質との配合により、好ましくない相互作用を生じない限り、他の活性成分を含有してもよい。
【0057】
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトに対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
【0058】
治療ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を増大させる物質および増悪ペプチドとしての本発明のペプチドの量もしくは活性を低減させる物質の投与量は、その作用、投与ルート、患者の重篤度、年齢、体重、薬物受容性などにより差異はあるが、例えば、成人1日あたり活性成分量として約0.0008〜約25mg/kg、好ましくは約0.008〜約2mg/kgの範囲であり、これを1回もしくは数回に分けて投与することができる。
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【0060】
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【実施例】
【0061】
実施例1 BLOTCHIP(登録商標)を用いたプロファイリング解析
(1)検体
京都府立医科大学でサンプリングした大腸癌(UICC7分類、ステージ2から4)患者の血清72例および健常者の血清63例1.5μLを1.5μLの純水および電気泳動用サンプル処理液(NuPAGE(登録商標)LDS Sample Buffer 4x ;Invitrogen)3.0μLと混合し、70℃で10分間、加熱処理した後、4-12%グラジェントポリアクリルアミドゲル(Invitorigen)にアプライし電気泳動を行った。
【0062】
(2)BLOTCHIP(登録商標)による質量分析およびディファレンシャルプロファイリング解析
電気泳動終了後、ゲルを切り出し、BLOTCHIP(登録商標)(Protosera, Inc.)1チップあたり2枚のゲルを積層、電気転写用バッファー(BLOTBufferTM;Protosera, Inc.)中で90mA、120分間転写した。転写終了後、チップの表面を超純水でリンスし、チップ全体にマトリックス(α-Cyano-4-hydroxy cinnamic acid)を塗布後、matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight (MALDI-TOF) mass spectrometer (Bruker Daltnics社製UltraFlexII)で質量分析を行った。測定パラメータは、Detector voltage 1685V, Supression1000, Laser Intensity は28〜35のFuzzyモードで、1チップあたり58点(1ゲルあたり29点)、1点あたり500回のレーザー照射で、総計29,000回レーザー照射を行った。得られたスペクトル中の各ピーク強度をm/z毎に積算し、1個の積算スペクトルに変換した。積算スペクトルをClinProTools2.2(Bruker Daltonik GmbH) を用いて、大腸がん患者血清と健常ボランティア血清の間でディファレンシャルプロファイリング解析を行った。解析手法は以下の通りである。
【0063】
(a)CrinPro Tools 2.2(Bruker)による解析
解析ソフトClinPro Tools 2.2を使用し、2群間で比較を行い、有意差のあったピークを抽出した。ClinPro Tools 2.2にてノーマライゼーション(標準化)後、各ピークについて有意差検定を実施、p値が0.05以下の場合に有意差ありと判定した。アンダーソン・ダーリング検定を実施し、等分散と判定された場合にはスチューデントのt検定(パラメトリック検定)を実施した。アンダーソン・ダーリング検定を実施し、不等分散と判定された場合にはウィルコクソン/クラスカルウォリス検定(ノンパラメトリック検定)を実施した。
【0064】
(b)BlotMate2.0(Protosera)によるMSスペクトルの作成と目視によるノイズピークの除去
解析ソフトFlexAnalysis2.4を用いて一検体あたり4回繰り返し測定により得られた4つの積算スペクトルをさらに積算し、全平均積算スペクトルを得た。一つの全平均積算スペクトルは一つの血清検体に対応している。解析ソフトBlotMate2.0を用いて、全平均積算スペクトルのノーマライゼーションを行った後、前項目にて実施したClinProTools2.2の有意差検定により有意差ありとなったピークについて、MSスペクトルを描画した。目視によりピーク形状、ピーク強度について精査を実施し、ノイズを含むピークを除外した。
【0065】
以上のディファレンシャルプロファイリング解析の結果、ClinProTools2.2の解析では118個のピークが得られ、その後の目視による精査により31個のピークをピックアップし、下記の分子量Mを有する31種のペプチドをバイオマーカー候補(ターゲットペプチド)群とした(表1は分子量([M+H]+)で示す)。
約1071、約1099、約1176、約1208、約1320、約1329、約1371、約1466、約1617、約1664、約1921、約2740、約2769、約2789、約2860、約2959、約3396、約3516、約3572、約3881、約3951、約4153、約4167、約4348、約4411、約4978、約5080、約5351、約5919、約8705、及び約8830
【0066】
【表1】
【0067】
下記の交差検定で頻度の高さにより選択された10種のペプチドの各症例(大腸癌患者及び健常者)におけるピーク強度のプロット及びROC曲線を
図1〜10に示す。
図1(A)〜10(A)のピーク強度のプロットの箱ひげ図において、normalは健常者群(n=63)、cancerは大腸癌患者群(n=72)を示す。
図1(B)〜10(B)の横軸は特異性、縦軸は感度である。各プロットは統計解析ソフトR(R Core Team (2013). R: A language and environment for statistical computing. R Foundation for Statistical Computing, Vienna, Austria. URL http://www.R-project.org/.)を使用して作成した。特にROC曲線はRのパッケージである”Epi パッケージ“(A package for statistical analysis in epidemiology、Version 1.149、http://cran.r-project.org/web/packages/Epi/index.html)を使用して作成した。各マーカーのAUC、SN、SP、cutoff値について95%信頼区間とともに表Xに示した。95%信頼区間は、ブートストラップ抽出を用いて推定し、サンプリング回数は1,000回、復元抽出によりサンプリングを行った。
【0068】
実施例2 交差検定と変数の選択
実施例1で特定された31個のバイオマーカー候補を用いて交差検定を行った。具体的には、全マーカーを8分割し、7つのデータをトレーニングデータとし、残りの1つをバリデーションデータとして全部で8回検証を行った。検証にはJMP(登録商標)11(SAS Institute Japan株式会社)の統計ソフトウェアを用いた。検証後、判別に使用されたマーカーの頻度を集計し、頻度の多い方から5もしくは10個のマーカーを選抜し、診断/検査に用いるマルチマーカーの組み合わせを決定した(
図11)。
5個の場合:約3951、約2860、約1617、約4978約2789の分子量を有するペプチド
10個の場合:約3951、約2860、約1617、約4978、約1320、約4167、約1099、約1329、約2789、及び約3572の分子量を有するペプチド
【0069】
実施例3 判別式の係数の決定
解析ソフトJMP(登録商標)11により、実施例2で選抜した5もしくは10個のマーカーを指定し、実施例2と同様のトレーニングデータを用いて、8個の判別式の算出を行った。判別式は各マーカーのピーク強度に係数を掛けた値の一次結合として与えられる。得られた8個の判別式の各係数について8個の平均をとり、最終的な判別式の係数を得た。
【0070】
実施例4 診断性能の評価
実施例3において得られた判別式を用いて、健常者群(n=63)、大腸癌患者群(n=72)について、診断性能の評価を実施した。5マーカーの判別式を用いた場合、ROCの曲線下面積(AUC)は0.915(95%信頼区間;0.864-0.957)、10マーカーの判別式を用いた場合は0.940(95%信頼区間;0.896-0.974)であった(
図12,13、表2)。
【0071】
【表2】