【実施例1】
【0060】
図1は、本発明のタイヤ試験装置の一部を切り欠いた状態の正面図、
図2は、
図1のタイヤ試験装置のA方向の側面図、
図3は、
図1のタイヤ試験装置の上面図、
図4は、
図1のタイヤ試験装置の部分拡大図、
図5は、
図4のタイヤ試験装置の部分拡大図、
図6は、
図2のタイヤ試験装置の部分拡大図、
図7は、
図5において突設部材64がタイヤ接触位置C1にある状態を示す部分拡大図である。
【0061】
図1において、符号10は、全体で本発明のタイヤ試験装置を示している。
【0062】
本発明のタイヤ試験装置10は、例えば、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うためのものである。
【0063】
図1〜
図3に示したように、本発明のタイヤ試験装置10は、例えば、床などに設置される基台12を備えており、基台12の上面には、走行ドラム14を回転可能に支持する一対の走行ドラム支持フレーム16が立設されている。
【0064】
そして、
図1、
図3、
図4に示したように、走行ドラム支持フレーム16には、それぞれ、ベアリング18が設けられており、走行ドラム14の円管形状の軸部20の端部22、24が挿通されることによって、走行ドラム14が回転可能に支持されている。
【0065】
また、
図1、
図3に示したように、走行ドラム14の軸部20の一方の端部22は、一方の走行ドラム支持フレーム16aを通り、連結部材26、28を介して、基台12の上面に設けられたギアボックス30、駆動モータ32に接続されている。これにより、駆動モータ32の回転が、ギアボックス30を介して、走行ドラム14に伝達されるように構成されている。なお、駆動モータ32には、例えば、速度検知センサ32aが付設されている。
【0066】
さらに、
図1、
図2、
図4〜
図6に示したように、走行ドラム14の軸部20の端部22、24には、中心角度90°離間して、それぞれ4本のフランジ34が設けられており、このフランジ34によって、走行ドラム14の円管形状の表面(走行面)36が支持されている。
【0067】
また、走行ドラム14の軸部20の中央部分には、これらのフランジ34に対して、中心角度45°ずらした位置に、それぞれ2組の軸方向および半径方向に平行な合計4本のフランジ38からなる4組のフランジ枠40が設けられており、このフランジ枠40によって、走行ドラム14の円管形状の表面(走行面)36が中央部分で支持されている。
【0068】
さらに、
図1〜
図6に示したように、走行ドラム14には、突設部材移動装置42が備えられている。この突設部材移動装置42は、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに走行ドラム14の内部に配置した内部移動機構44から構成されている。
【0069】
すなわち、内部移動機構44として、
図1、
図4に示したように、走行ドラム14の軸部20の内部には、シリンダ室46が形成されており、このシリンダ室46内にピストン48が軸方向に移動可能に収納されている。
【0070】
そして、
図1、
図2、
図4〜
図6に示したように、ピストン48の一端48aは、シリンダ室46の外部まで延びており、走行ドラム14の軸部20の軸線Xに対して、垂直方向で半径方向に延びる移動板部材50に連結されている。
【0071】
この移動板部材50の一方の端部50aは、軸部20の軸線方向に形成されたスリット開口部20aを介して、平行な4つのフランジ38の間に架け渡すように設けたガイド支持フレーム52に形成されたスリット開口部52aを通り、半径方向に延びて軸方向移動部54に連結されている。
【0072】
図1〜
図6に示したように、軸方向移動部54は、矩形板形状のベース部材56を備えている。このベース部材56の下面に形成された案内機構58によって、ベース部材56が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように構成されている。
【0073】
すなわち、案内機構58は、例えば、いわゆるLMガイドから構成されており、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の両端部に形成され、走行ドラム14の軸方向に延びる2つの平行な案内レール60と、ベース部材56の下面に形成され、この案内レール60に沿って案内される案内部材62とから構成されている。
【0074】
また、
図1、
図3〜
図5に示したように、軸方向移動部54には、ベース部材56の上面に、走行ドラム14の軸方向に、突設部材64が配置される突設部66と、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68とが隣接して配置されている。
【0075】
この場合、
図4、
図5の拡大図に示したように、走行表面部68は、走行ドラム14の表面(走行面)36と略同一の円弧形状の表面68aを形成するような形状に構成されている。
【0076】
一方、突設部66の突設部材64は、走行ドラム14の表面(走行面)36から半径方向外側に突設するような形状に構成されている。すなわち、この突設部材64の形状は、特に限定されるものではなく、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じた形状とすればよく、適宜変更可能である。
【0077】
また、この実施例の突設部66の突設部材64には、その下面のベース部材56の上面との間に、圧力検知センサ70が備えられている。
【0078】
このように構成することによって、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部材64に、圧力検知センサ70が備えられているので、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部材64にタイヤTによって負荷される圧力を測定することができ、より正確にタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0079】
また、
図1、
図3、
図4に示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36には、突設部材移動装置42の軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように、矩形形状の開口部72が形成されている。
【0080】
さらに、
図1、
図2に示したように、移動板部材50の一方の端部50aと、中心角180°離間した位置にある、移動板部材50の他方の端部50bも、移動板部材50の一方の端部50aとほぼ同様な構成となっている。従って、同じ構成部材には、同じ参照番号を付して簡単に説明する。
【0081】
すなわち、移動板部材50の他方の端部50bは、軸部20の軸線方向に形成されたスリット開口部20aを介して、平行な2つのフランジ枠40の間に架け渡すように設けたガイド支持フレーム52に形成されたスリット開口部52aを通り、半径方向に延びて軸方向移動部54に連結されている。
【0082】
図1〜
図6に示したように、軸方向移動部54は、矩形板形状のベース部材56を備えている。このベース部材56の下面に形成された案内機構58によって、ベース部材56が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように構成されている。
【0083】
すなわち、案内機構58は、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の両端部に形成され、走行ドラム14の軸方向に延びる2つの平行な案内レール60と、ベース部材56の下面に形成され、この案内レール60に沿って案内される案内部材62とから構成されている。
【0084】
また、走行ドラム14の表面(走行面)36には、突設部材移動装置42の軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向に移動できるように、矩形形状の開口部72が形成されている。
【0085】
なお、
図1に示したように、移動板部材50の他方の端部50bに連結された軸方向移動部54には、突設部66の突設部材64が形成されておらず、突設部66の突設部材64の部分まで、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が延設された形状となっている。
【0086】
一方、
図1、
図4に示したように、シリンダ室46は、ピストン48のピストン部48bを境に、走行ドラム14の軸方向に2つの第1のシリンダ室46aと、第2のシリンダ室46bに区画されている。
【0087】
また、走行ドラム14の軸部20の他方の端部24の先端24aは、油圧回転継手74を介して、回転可能に支持されており、この油圧回転継手74に、例えば、四方弁からなるサーボ弁76が連結されている。
【0088】
そして、第1のシリンダ室46aは、第1の油圧経路78aを通り、油圧回転継手74を介して、サーボ弁76に接続されている。同様に、第2のシリンダ室46bは、第2の油圧経路78bを通り、油圧回転継手74を介して、サーボ弁76に接続されている。
【0089】
このように構成することによって、図示しない油圧源に接続されたサーボ弁76を切り換えることによって、
図1、
図4、
図5の状態から、第2の油圧経路78bを介して、第2のシリンダ室46b内に圧油を供給する。また、第1の油圧経路78aを介して、第1のシリンダ室46a内の圧油を抜くことによって、ピストン48が、
図1、
図4〜
図5において、走行ドラム14の軸方向の左側に移動できるようになっている。
【0090】
一方、この状態から、第2の油圧経路78bを介して、第2のシリンダ室46b内の圧油を抜くとともに、第1の油圧経路78aを介して、第1のシリンダ室46a内に圧油を供給することによって、ピストン48が、図において、走行ドラム14の軸方向に右側に移動できるようになっている。
【0091】
これによって、ピストン48の一端48aを介して、移動板部材50、軸方向移動部54、走行表面部68、突設部66の突設部材64が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の左右に移動できるようになっている。
【0092】
このように構成することによって、走行ドラム14の軸線Xに走行ドラム14の内部に内部移動機構44を配置して、突設部材移動装置42を構成することができるので、タイヤ試験装置10が大型化することなくコンパクト化を図ることができる。
【0093】
また、
図1に示したように、一方の走行ドラム支持フレーム16aには、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80が設けられている。さらに、油圧回転継手74には、ピストン48の走行ドラム14の軸部20の軸線X方向への移動量を検知するために、例えば、スリップリングからなる変位センサ82が設けられている。
【0094】
一方、
図2、
図3に示したように、基台12の上面には、上面視で略コ字形状のタイヤ支持フランジ84が立設されており、タイヤ支持フランジ84は、一対の平行に配置するように立設されたタイヤ支持フランジ部84aを備えている。そして、
図3に示したように、これらのタイヤ支持フランジ部84aの間には、2組の平行なタイヤ案内レール86が設けられている。
【0095】
さらに、2組の平行なタイヤ案内レール86の間には、タイヤ押し付け装置90が設けられており、タイヤ押し付け装置90には、これらのタイヤ案内レール86に案内される2組の案内部材88を備えている。また、タイヤ押し付け装置90には、回転装着軸90aが設けられており、この回転装着軸90aに、被試験体であるタイヤTが回転可能に脱着自在に装着されている。
【0096】
さらに、タイヤ押し付け装置90の基端部90bには、タイヤ支持フランジ84に固定された、例えば、ピストンシリンダ機構からなる押し付け駆動装置92が連結されているとともに、この押し付け駆動装置92のピストン92aには、荷重検出器94が設けられている。
【0097】
従って、このように構成することによって、タイヤ押し付け装置90により、
図2、
図3の矢印Bに示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36に対してタイヤTが離接可能に配置される。
【0098】
そして、押し付け駆動装置92を駆動させて、走行ドラム14の表面(走行面)36にタイヤTを押し付けることによって、走行ドラム14の回転に応じてタイヤTが回転するように構成されている。
【0099】
従って、上記のように構成することによって、
図1、
図3〜
図5に示したように、本発明のタイヤ試験装置10では、
(1)タイヤ押し付け装置90に保持されたタイヤTが走行ドラム14の表面(走行面)36に押し付けられるタイヤ接触位置C1と、
(2)
図7に示したように、タイヤ接触位置C1から走行ドラム14の軸方向に離間したタイヤ待機位置C2との間で、
走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64を、突設部材移動装置42を作動させることによって、走行ドラム14の軸方向に移動することができるように構成されている。
【0100】
このように構成することによって、突設部材移動装置42の作動により、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、タイヤ接触位置C1と、この位置から走行ドラムの軸方向に離間したタイヤ待機位置C2とを移動する。
【0101】
突設部材がタイヤ接触位置C1にある状態から、突設部材移動装置42の作動により、すなわちサーボ弁76を切り換えることによって、
図1、
図4、
図5の状態となるように、第1の油圧経路78aを介して第1のシリンダ室46a内に圧油を供給する。また、第2の油圧経路78bを介して第2のシリンダ室46b内の圧油を抜く。これによって、ピストン48が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0102】
これにより、ピストン48の一端48aに連結された移動板部材50が、ピストン48の一端48aを介して走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。これに伴って、移動板部材50に連結された軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0103】
この際、移動板部材50の一方の端部50aに連結された軸方向移動部54が、ベース部材56に備えられた案内機構58、すなわち、ベース部材56の案内部材62が、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の案内レール60に沿って走行ドラム14の軸方向の右側に移動する。
【0104】
図5で説明すると、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動して、タイヤ待機位置C2に移動する。そして、この状態で、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになる。
【0105】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面に存在しない状態であるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うことができる。
【0106】
次に、
図7の状態から、突設部材移動装置42の作動により、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の軸方向に移動して、タイヤ待機位置C2から、タイヤ押し付け装置90に保持されたタイヤTが走行ドラム14の表面(走行面)36に押し付けられるタイヤ接触位置C1に移動する。
【0107】
突設部材がタイヤ待機位置C2にある状態から、突設部材移動装置42の作動により、すなわちサーボ弁76を切り換えることによって、
図1、
図4、
図5の状態から、第2の油圧経路78bを介して第2のシリンダ室46b内に圧油を供給する。また、第1の油圧経路78aを介して第1のシリンダ室46a内の圧油を抜く。これによって、ピストン48が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0108】
これにより、ピストン48の一端48aに連結された移動板部材50が、ピストン48の一端48aを介して走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。これに伴って、移動板部材50に連結された軸方向移動部54が、走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0109】
この際、移動板部材50の一方の端部50aに連結された軸方向移動部54が、ベース部材56に備えられた案内機構58、すなわち、ベース部材56の案内部材62が、フランジ枠40のガイド支持フレーム52の案内レール60に沿って走行ドラム14の軸方向の左側に移動する。
【0110】
図7で説明すると、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の左側に移動して、タイヤ接触位置C1に移動する。
【0111】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面(走行面)36に存在している状態である。
従って、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0112】
これにより、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を簡単容易に行うことが可能である。
【0113】
また、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じて、これらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能である。
【0114】
この場合、
図2に示したように、突設部材移動装置42の作動のタイミングは、
(1)突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1と、
(2)突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2との間を回転する間に、
すなわち、
図2の矢印Fで示した角度範囲で、突設部材64が、タイヤ接触位置C1とタイヤ待機位置C2との間を、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動するようにすればよい。
【0115】
すなわち、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1で、突設部材移動装置42を作動させる。
【0116】
これによって、突設部材64をタイヤ待機位置C2(
図5の状態)からタイヤ接触位置C1(
図7の状態)へ、走行ドラム14の表面(走行面)36での軸方向の移動を開始する。
【0117】
この状態では、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け位置Eには位置しないので、突設部材64をタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1へ、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動できる。
【0118】
さらに、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2まで、この状態が持続して、突設部材64をタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1へ移動することができる。
【0119】
そして、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2で、突設部材64のタイヤ待機位置C2からタイヤ接触位置C1への移動が完了する。
【0120】
これにより、所定の回数、突設部材64をタイヤTが乗り越え、障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0121】
そして、所定の回数、突設部材64をタイヤが乗り越えるタイヤ試験が完了した後、再び、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dに、タイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1で、突設部材移動装置42を作動させる。
【0122】
これによって、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ、走行ドラム14の表面(走行面)36での軸方向の移動を開始する。
【0123】
この状態では、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け位置Eには位置しないので、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ、走行ドラム14の表面(走行面)36に軸方向に移動できる。
【0124】
さらに、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2まで、この状態が持続して、突設部材64をタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2へ移動することができる。
【0125】
そして、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2で、突設部材64のタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2への移動が完了する。
【0126】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラム14の表面(走行面)36に存在しない状態である。また、この状態では、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うことができる。
【0127】
従って、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験と、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じてこれらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験とを同時に行うことが可能である。
【0128】
なお、この場合、第1の角度位置θ1、第2の角度位置θ2は、特に限定されるものではなく、走行ドラム14の回転速度に応じて適宜設定することができる。
【0129】
この場合、突設部材移動装置42の内部移動機構44として、油圧サーボ式のピストンシリンダ機構を用いたが、空気圧式のピストンシリンダ機構、電気サーボ式の移動機構など適宜変更することが可能である。
【0130】
また、この実施例では、軸方向移動部54には、ベース部材56の上面に、走行ドラム14の軸方向に、1つの突設部材64が配置される突設部66と、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する1つの走行表面部68とが隣接して配置している。
【0131】
しかしながら、軸方向移動部54に、走行ドラム14の軸方向に、複数の突設部材64が配置される突設部66を備えるようにしても良い。
【0132】
例えば、
図8(A)に示したように、1つの突設部66に複数の形状の異なる突設部材64を形成して、走行ドラム14の軸方向の移動距離を制御して、これらの複数の形状の異なる突設部材64がそれぞれタイヤ接触位置C1に移動するようにしても良い。また、
図8(B)に示したように、走行表面部68の走行ドラム14の軸方向両側に、突設部66を配置して、軸方向移動部54の走行ドラム14の軸方向の移動距離を制御して、これらの複数の形状の異なる突設部材64、走行表面部68がそれぞれタイヤ接触位置C1に移動するようにしても良い。また、図示しないが、
図8(A)と
図8(B)を組み合わせた状態とすることもできる。
【0133】
このように構成することによって、走行ドラム14の軸方向に、複数の突設部材64が配置される突設部66を備えるので、これらの複数の突設部材64を走行ドラム14の軸方向に移動して、タイヤ接触位置C1に位置させることができる。
【0134】
これにより、実際の道路に対応して、各種の形状の縁石や石などに応じてこれらの障害物を乗り越える際に、障害物の形状に応じた(これらの複数の突設部材64の形状に応じた)タイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0135】
また、この実施例では、所定の回数、突設部材64をタイヤが乗り越え、障害物を乗り越える際に、障害物の形状(突設部材64の形状)に応じタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うように構成したが、
図9に示したように、突設部材64の形状を断面略三角形にして、タイヤTの側面T1が、突設部材64の当接面64aと接触するようにして、タイヤTの側面T1の側面タイヤ試験を行うようにすることも可能である。
【0136】
このように構成される本発明のタイヤ試験装置10の作動(制御)について、以下、
図10〜
図12に示したフローチャートに基づいて説明する。
【0137】
先ず、
図10に示したように、ステップS1において、本発明のタイヤ試験装置10の主電源をONの状態にする。そして、ステップS2において、駆動モータ32の回転駆動の電源をONの状態にし、続いて、ステップS3において、走行ドラム14のブレーキをONの状態とし、走行ドラム14の回転を停止した状態とする。
【0138】
そして、ステップS4において、走行ドラム14のブレーキをOFFの状態とし、ステップS5において、走行ドラム14の回転速度を設定するとともに、走行ドラム14の回転をスタートさせる。
【0139】
一方、ステップS1に続いて、ステップS6において、アクチュエータ駆動の電源をONの状態、すなわち、突設部材移動装置42のサーボ弁76、および、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92の駆動電源をONの状態にする。
【0140】
そして、ステップS7において、突設部材移動装置42のサーボ弁76を制御することによって、ピストン48を最後端位置へ移動させる。すなわち、ピストン48が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の右側に移動するようにする。
【0141】
これによって、ステップS8において、突設部材64をタイヤ待機位置C2に設置する。すなわち、
図7に示したように、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動して、タイヤ待機位置C2に移動する。そして、この状態で、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになる。
【0142】
また、ステップS1に続いて、ステップS9において、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92を制御することによって、押し付け駆動装置92のピストン92aを最後端位置へ移動させる。すなわち、
図2、
図3の矢印Bに示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36に対して離反した位置に移動させる。
【0143】
そして、この状態で、ステップS10において、タイヤ押し付け装置90の回転装着軸90aに被試験体であるタイヤTを取り付ける。次に、ステップS11において、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92を作動させて、走行ドラム14の表面(走行面)36にタイヤTを押し付ける。この際、押し付け駆動装置92のピストン92aに設けた荷重検出器94による変位制御によって、設定荷重(タイヤ押し付け荷重)を保つようにする。
【0144】
そして、ステップS11の後、上記したステップS4へ進み、走行ドラム14のブレーキをOFFの状態とする。
【0145】
次に、
図11に示したように、ステップS5において、走行ドラム14の回転速度を設定するとともに、走行ドラム14の回転をスタートさせた後、ステップS12において、走行ドラム14の回転速度が安定設定値に達するとともに、ステップS13において、タイヤ押し付け装置90によるタイヤTのタイヤ押し付け荷重が安定設定値に達した否かが判断される。
【0146】
一方、ステップS8において、突設部材64をタイヤ接触位置C1に設置した後、ステップS14に進み、突設部66の突設部材64の圧力検知センサ70の反力荷重を零にリセットする。
【0147】
そして、ステップS12、ステップS13に続いて、ステップS15において、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80によって、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dに、タイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1を通過したことが出力される。すなわち、角度センサ80によって、第1の角度θ1信号が出力される。
【0148】
このステップS15において、角度θ1信号が出力されると同時に、ステップS16において、突設部材64のタイヤ接触位置C1への移動が開始される。
【0149】
すなわち、突設部材移動装置42のサーボ弁76を制御することによって、ピストン48を最先端位置へ移動させる。すなわち、ピストン48が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の左側に移動するようにする。
【0150】
これによって、ステップS17において、突設部材64のタイヤ接触位置C1への移動が完了する。すなわち、
図7に示したように、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の左側に移動して、タイヤ接触位置C1に移動する。そして、この状態で、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ待機位置に位置することになる。
【0151】
このステップS17において、突設部材64のタイヤ接触位置C1への移動が完了するタイミングは、ステップS15において、角度センサ80によって、第1の角度θ1信号が出力された後に、ステップS18において、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80によって、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2に至ったことが出力されたタイミングである。
【0152】
すなわち、ステップS18において、角度センサ80によって、第2の角度θ2信号が出力されたタイミングである。
【0153】
このように、ステップS18において、角度センサ80によって、第2の角度θ2信号が出力されるとともに、ステップS17において、突設部材64のタイヤ接触位置C1への移動が完了した後、ステップS19において、タイヤTが突設部材64に衝突して乗り越える。
【0154】
そして、ステップS20において、突設部66の突設部材64の圧力検知センサ70によって、反力荷重(Fx、Fy、Fz)が出力される。これにより、突設部材移動装置42の軸方向移動部54の突設部材64にタイヤTによって負荷される圧力を測定することができ、より正確にタイヤTに及ぼす影響を測定するタイヤ試験を行うことができる。
【0155】
次に、所定の回数、突設部材64をタイヤTが乗り越え、タイヤ試験を行った後、ステップS21において、再び、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80によって、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eを通過した第1の角度位置θ1を通過したことが出力される。すなわち、角度センサ80によって、第1の角度θ1信号が出力される。
【0156】
このステップS21において、角度θ1信号が出力されると同時に、ステップS22において、突設部材64のタイヤ接触位置C1からタイヤ待機位置C2への移動が開始される。
【0157】
すなわち、突設部材移動装置42のサーボ弁76を制御することによって、ピストン48を最後端位置へ移動させる。すなわち、ピストン48が、
図1、
図4、
図5において、走行ドラム14の軸方向の右側に移動するようにする。
【0158】
これによって、ステップS23において、突設部材64のタイヤ待機位置C2への移動が完了する。すなわち、
図1、
図4、
図5に示したように、ベース部材56の上面の突設部66の突設部材64が、走行ドラム14の軸方向の右側に移動して、タイヤ待機位置C2に移動する。そして、この状態で、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになる。
【0159】
このステップS23において、突設部材64のタイヤ待機位置C2への移動が完了するタイミングは、ステップS21において、角度センサ80によって、第1の角度θ1信号が出力された後に、ステップS24において、走行ドラム14の回転角度を検出する角度センサ80によって、突設部材移動装置42の走行ドラム14の軸方向に移動する軸方向移動位置Gが、走行ドラム14の回転方向Dのタイヤ押し付け装置90のタイヤ押し付け位置Eに入る前の第2の角度位置θ2に至ったことが出力されたタイミングである。
【0160】
すなわち、ステップS24において、角度センサ80によって、第2の角度θ2信号が出力されたタイミングである。
【0161】
そして、
図12に示したように、ステップS24において、第2の角度θ2信号が出力された後、ステップS25において、走行ドラム14の回転を零にする信号が出力され、ステップS26において、走行ドラム14の回転が停止される。
【0162】
次に、ステップS27において、走行ドラム14のブレーキをONの状態とし、ステップS28において、駆動モータ32の回転駆動の電源をOFFの状態にする。
【0163】
一方、ステップS24において、第2の角度θ2信号が出力された後、ステップS29において、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92を制御することによって、押し付け駆動装置92のピストン92aを、再び最後端位置へ移動させる。すなわち、
図2、
図3の矢印Bに示したように、走行ドラム14の表面(走行面)36に対して離反した位置に移動させる。
【0164】
次に、ステップS30において、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92の制御をOFFの状態にする。そして、この状態で、ステップS31において、タイヤ押し付け装置90の回転装着軸90aから、被試験体であるタイヤTを取り外す。
【0165】
一方、ステップS23において、突設部材64のタイヤ待機位置C2への移動が完了した後、ステップS32において、突設部材64のタイヤ待機位置C2での位置が保持され、ステップS33において、突設部材移動装置42のサーボ弁76の制御をOFFにする。
【0166】
ステップS28において、駆動モータ32の回転駆動の電源をOFFの状態にし、ステップS30において、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92の制御をOFFの状態にするとともに、ステップS33において、突設部材移動装置42のサーボ弁76の制御をOFFにした後、ステップS34において、アクチュエータ駆動の電源をOFFの状態、すなわち、突設部材移動装置42のサーボ弁76、および、タイヤ押し付け装置90の押し付け駆動装置92の駆動電源をOFFの状態にする。
【0167】
そして、最後に、ステップS35において、本発明のタイヤ試験装置10の主電源をOFFの状態にして、タイヤ試験装置10の作動(制御)が終了する。
【0168】
なお、この実施例では、ステップS8において、予め突設部66に設けた突設部材64をタイヤ待機位置C2に移動して設置するようにしたが、ステップS8において、予め突設部66に設けられていない突設部材64を、突設部66をタイヤ待機位置C2に移動した状態で、突設部66に設置するようにしても良い。
【0169】
また、ステップS14においては、突設部66の突設部材64の圧力検知センサ70の反力荷重を零にする前に、走行ドラム14の表面(走行面)36の一部を構成する走行表面部68が、タイヤ接触位置C1に位置することになる。
【0170】
この状態では、タイヤ接触位置C1には、走行ドラム14の表面(走行面)36から突設する突設部材64が、走行ドラムの表面に存在しない状態であるので、平坦な道路状態の走行状態のタイヤ試験を行うようにしても良い。