【解決手段】棒状に先端より順次表面に電極を露出させてなる多極単頭プラグ1であって、先端のチップ電極14は導電性の接触玉170と、導電性のチップ電極本体140と、導電性のコイルスプリング190とを備え、接触玉170はチップ電極本体140に軸方向に沿って移動可能に組付くとともに、接触玉170の後面172はコイルスプリング1909が弾性反力を前方に作用させうる状態で接続し、接触玉170が取りうる最前方位置と最後方位置との間の何れの位置にあるときでも、接触玉170とチップ電極本体140とは電気的に接続状態である。
前記電極本体は、前方に開口部と、接触玉収容室と、弾性体収容室とを備え、前記弾性体収容室は、前記接触玉収容室の後方側に連通し、前記接触玉収容室は前記開口部に連通し、前記弾性体は前記弾性体収容室に収まり、前記接触玉は前記接触玉収容室に収まり、前記接触玉は、前記開口部を形成する周縁部分を加締めることで封止されるところに特徴を有する請求項1記載の多極単頭プラグ。
前記接触玉は、周面の後端側に環状に延びるフランジを備え、このフランジの前面が前記加締めによって前記周縁部分と当接するところに特徴を有する請求項2記載の多極単頭プラグ。
前記弾性体がコイルスプリングであって、前記接触玉は、後面に棒状に後方に延びる支持部を備え、この支持部で前記コイルスプリングと電気的機械的に接続し、前記弾性体収容室は、前記コイルスプリングの直径に比べて僅かに大きい直径と、前記コイルスプリングの少なくとも長さ方向の半分を収容可能な深さを有する筒状体であるところに特徴を有する請求項2又は3記載の多極単頭プラグ。
請求項1から4のうち一項記載の多極単頭プラグと、この多極単頭プラグと嵌合可能なジャックとからなる接続構造であって、前記接触玉と電気的機械的に接続するジャックのリードがプラグ挿入方向に対して直交する方向に備わるところに特徴を有する多極単頭プラグとジャックとの接続構造。
【背景技術】
【0002】
携帯用音楽プレイヤーに用いられるプラグとして、たとえば特許文献1記載のように、従来から日本工業規格(JIS)や社団法人電子情報技術産業協会規格(JEITA)等で規格化された2〜4極の多極単頭プラグが多数提供されている。これら多極単頭プラグの寸法に関する規格において、その軸方向の寸法は、何れの場合も半径方向の寸法に比べて大きく、さらに軸方向の寸法公差は、大きな値が設定されている。
【0003】
4極単頭プラグの構成は、基部側から、第1電極、第1絶縁カラー、第2電極、第2絶縁カラー、第3電極、第3絶縁カラー、及びチップ電極の順番に組み付けられる。第1電極の根元に備わる基部は、先端側端面が寸法の基準面となる。多極単頭プラグの軸方向の寸法は、この基準面からチップの最大拡径部間の寸法Aと、この最大拡径部からチップの先端間の寸法Bとが規定されていて、多極単頭プラグ全体の軸方向の寸法は、これら寸法Aと寸法Bとの和の形で規定されている。したがって多極単頭プラグの軸方向全長の公差は、寸法Aの公差と寸法Bの公差との和を考慮する必要が生じてくる。
【0004】
このように、多極単頭プラグは半径方向に比べてもともと大きな寸法が軸方向に与えられているうえに、軸方向について設定されている公差も大きく、その累積公差を考慮する必要から一層大きな公差が生じてくる。また、多極単頭プラグは軸方向に延びるので多極単頭プラグを受け入れるジャックの嵌合長も長くなり、もともとのハウジングの軸方向サイズが大きくとられている上に、JIS規格、JEITA規格等による多極単頭プラグに関する寸法が累積公差を生じることから一層ハウジングの軸方向寸法は大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、次のうち少なくとも一つを目的とする。多極単頭プラグの軸方向寸法に与えられている累積公差の相殺が可能な多極単頭プラグの提供、或いは、対応ジャックとの嵌合時、多極単頭プラグの軸方向寸法の累積公差を相殺しつつ、軸方向に短縮可能な多極単頭プラグの提供、及び多極単頭プラグ嵌合長が従来に比べて短いジャックの提供、これら多極単頭プラグとジャックとの接続構造の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る多極単頭プラグは、(1)棒状に先端より順次表面に電極を露出させてなる多極単頭プラグであって、先端の電極は導電性の接触玉と、導電性の電極本体と、導電性の弾性体とを備え、この接触玉は、前記電極本体にプラグ挿入方向に沿って移動可能に組付くとともに、前記接触玉の反プラグ挿入方向側の後面は、前記弾性体が弾性反力を挿入方向である前方に作用させうる状態で接続し、前記接触玉が取りうる最も前方寄りの位置と最も後方寄りの位置との間の何れの位置にあるときでも、前記接触玉と前記電極本体とは電気的に接続状態にあるところに特徴を有するものであ
る。
【0008】
この発明によれば、多極単頭プラグの先端の電極はこれを構成する接触玉が挿入方向に沿って弾性反力を与えつつ移動可能であって、その取りうる最前方位置から最後方位置の間で接触玉は電極本体と電気的に接続状態にある。これにより、軸方向寸法に与えられている累積公差の相殺が可能な多極単頭プラグ、或いは、対応ジャックとの嵌合時、多極単頭プラグの軸方向寸法が累積公差を相殺しつつ、軸方向に短縮可能な多極単頭プラグが得られる。
【0009】
さらに好ましくは、本発明に係る多極単頭プラグは、(2)前記電極本体は、前方に開口部と、接触玉収容室と、弾性体収容室とを備え、前記弾性体収容室は、前記接触玉収容室の後方側に連通し、前記接触玉収容室は前記開口部に連通し、前記弾性体は前記弾性体収容室に収まり、前記接触玉は前記接触玉収容室に収まり、前記接触玉は、前記開口部を形成する周縁部分を加締めることで封止されるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0010】
この発明によれば、電極本体の内部に収容空間があり、そこに弾性体、及び接触玉が収まる構造である。これにより、多極単頭プラグの半径方向の拡大を伴うことなく軸方向寸法に与えられている累積公差の相殺が可能な多極単頭プラグ、或いは、対応ジャックとの嵌合時、多極単頭プラグの軸方向寸法が累積公差を相殺しつつ、軸方向に短縮可能な多極単頭プラグが得られる。
【0011】
さらに好ましくは、本発明に係る多極単頭プラグは、(3)前記接触玉は、周面の後端側に環状に延びるフランジを備え、このフランジの前面が前記加締めによって前記周縁部分と当接するところに特徴を有する(2)記載のものである。
この発明によれば、接触玉は、その周面に備わるフランジが加締めによって生じた開口部周縁部分に当接することで、電極本体に納まる。これにより、比較的容易な加工で接触玉を電極本体に収めることができる、累積公差の相殺が可能な多極単頭プラグ、或いは、対応ジャックとの嵌合時、多極単頭プラグの軸方向寸法が累積公差を相殺しつつ、軸方向に短縮可能な多極単頭プラグが得られる。
【0012】
さらに好ましくは、本発明に係る多極単頭プラグは、(4)前記弾性体がコイルスプリングであって、前記接触玉は、後面に棒状に後方に延びる支持部を備え、この支持部で前記コイルスプリングと電気的機械的に接続し、前記弾性体収容室は、前記コイルスプリングの直径に比べて僅かに大きい直径と、前記コイルスプリングの少なくとも長さ方向の半分を収容可能な深さを有する筒状体であるところに特徴を有する(2)又は(3)記載のものである。
【0013】
この発明によれば、弾性体が導電性のコイルスプリングであって、同じく導電性の接触玉の支持部、及び導電性の電極本体の収容室に電気的機械的に接続する。これにより、コイルスプリングの伸縮範囲で接触玉は、直接フランジによる接触の他にコイルスプリングを通して電極本体に電気的に接続している。
【0014】
本発明に係る多極単頭プラグとジャックとの接続構造は、(5)上記(1)から(4)のうち一項記載の多極単頭プラグと、この多極単頭プラグと嵌合可能なジャックとからなる接続構造であって、前記接触玉と電気的機械的に接続するジャックのリードがプラグ挿入方向に対して直交する方向に備わるところに特徴を有するものである。
【0015】
この発明によれば、多極単頭プラグの接触玉と電気的機械的に接続するジャックのリードがプラグ挿入方向に対して直交する方向に備わる。これにより、多極単頭プラグ嵌合長
が従来に比べて短いジャックと多極単頭プラグとの接続構造が得られる。
【0016】
本発明に係るジャックは、(6)上記(5)記載の多極単頭プラグとジャックとの接続構造を構成するものである。
【0017】
この発明によれば、多極単頭プラグ嵌合長が従来に比べて短いジャックが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈多極単頭プラグ概観〉 多極単頭プラグ1について図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る多極単頭プラグの外観斜視図である。
図2は、
図1に示されるII−II断面図である。
図3は、
図2に示されるチップ電極の拡大斜視図である。
図4は、本発明の実施形態に係る多極単頭プラグの接触玉の可動状態を示す断面図であって、(A)は、最も先端位置にあるとき、(B)は、最も後端位置にあるときである。
【0020】
多極単頭プラグ1は、
図1に示されるように、多極単頭プラグ本体10と基部50とを備えている。多極単頭プラグ本体10は、基部50側から順に、第1電極11、第2電極12、第3電極13、及びチップ電極14の4電極を備えている。第1から第3の各電極(11〜13)は、多極単頭プラグ本体10に一体的に構成される一方、先端に備わるチップ電極14は、多極単頭プラグ本体10に対して別部材として組み付けられるとともに、軸方向に沿って出入自在に構成される。
【0021】
チップ電極14は、
図2に示されるように、後方にコイルスプリング190を備え、コイルスプリング190を軸方向に圧縮状態にして多極単頭プラグ本体10に組み付く。チップ電極14は、多極単頭プラグ本体10の先端から接触玉170の頭部を露出させている。
【0022】
チップ電極14は、
図3に示されるように、チップ電極本体140、接触玉170、及びコイルスプリング190を備えている。チップ電極本体140は、接触玉170を受け入れる筒状の接触玉収容空間141を形成する接触玉収容室142と、コイルスプリング190を伸縮方向に収容する筒状のコイル収容空間146を形成するコイル収容室147と、を備え、コイル収容室147の後端には、ここから後方に延びる電極片が備わる。接触玉収容室142は、
図3に示されるように、前方に開口部143を備えている。開口部143周縁には圧肉のフランジ144が環状に延びている。フランジ144は、前面にテーパー面を備えている。
【0023】
接触玉170は、
図3に示されるように、ジャック7のチップリード84と電気的機械的に接続するための導体である。接触玉170は弾丸型で、平坦な後面172と側面後端に環状に延びるフランジ171を備えるとともに、前方は球面で中央に突部175を備えている。フランジ171は、所定の厚みを有し周面を形成する。
【0024】
接触玉収容室142は、
図3に示されるように、内部に接触玉収容空間141を形成する。接触玉170は、接触玉収容空間141に収まる。接触玉170のフランジ171の外周面と、筒状の接触玉収容室142の内周面とは、クリアランスを有し、接触玉170は、接触玉収容空間141をその接触面を摺接させながら軸方向に沿って移動可能である。
【0025】
接触玉170は、
図3に示されるように、後面172に後方に延びる支持部173を備えている。支持部173は、その周囲を溝部174で囲み、その外方に広がる後面172に比べて一段低い位置に基端がある。コイルスプリング190は、この支持部173を中央の穴に通し端面を一段低くなった後面172に押し当て、この状態で接触玉170に連なる。この連なりによって、両者は電気的機械的に接続する。
【0026】
コイルスプリング190は、
図2、
図3に示されるように、中央部から後方がコイル収容室147に収まる。コイル収容室147は、筒状で内周面及び後方にある底面148でコイルスプリング190に接する。この接触によってコイルスプリング190は、コイル収容室147と電気的機械的に接続する。コイルスプリング190の外周面と、コイル収容室147の内周面との間にはクリアランスが設けられている。これにより、コイルスプリング190は、コイル収容室147内で軸方向に沿って伸縮自在である。
【0027】
接触玉170は、
図3に示されるように、加締めによって狭められた開口部143周縁と、フランジ171との当接によって前方移動の限界が規制される。後方移動の限界は、接触玉170の後面172と接触玉収容室142の底面145との当接によって規制される。接触玉170は、コイルスプリング190の軸方向に沿った圧縮によって接触玉収容空間141を後方に移動可能である。また接触玉170は、負荷が解除されると前方に移動可能である。もちろん、接触玉170は、最先端位置と最後方位置との間の何れかの位置に保持された状態で、突部175が外部に対して弾性的押圧をかけ得る。
【0028】
接触玉170が最先端位置にあるとき、フランジ171の前面は、
図4に示されるように、接触玉収容室142の前面の開口部143周縁にコイルスプリング190の押圧を受けた状態で当接し、その最先端位置を保持する。接触玉170は、軸方向に自在に移動可能である。最先端位置と最後端位置との間において移動自在で、何れの位置にあっても接触玉170の先端の突部175は、ジャック7のチップリード84に対して押圧をかけることができる。
【0029】
接触玉170の先端の突部175は、嵌合状態でジャック7のチップリード84と電気的機械的に接続する。このとき、接触玉170は、最先端位置と最後方位置との間の何れ
かの位置にあり、この状態で、接触玉170のフランジ171の周面は、接触玉収容室142の内周面と何れかの箇所で電気的機械的に接続している。また、コイルスプリング190は、接触玉170とその後面172に備わる支持部173で電気的機械的に接続するとともに、後方でその外周面をコイル収容室147の内周面に電気的機械的に接続している。これにより、接触玉170は、チップ電極本体140とコイルスプリング190を通しても電気的に接続する。
【0030】
〈多極単頭プラグの成形〉 多極単頭プラグ1の組み立てについて図面にしたがって説明する。
図5は、第1実施形態に係る多極単頭プラグの組み立て図であって、(A)は、縦型金型のキャビティーにチップ電極がセットされる工程、(B)は順次第3〜第1の電極がセットされる工程、(C)は、合成樹脂が射込まれて同時成形体が得られる工程、(D)は、成形体にチップ電極が組み付けられる工程、(E)は、開口部周縁が加締められる工程を示す図である。
【0031】
多極単頭プラグ1は、
図5に示されるように、縦型金型による同時成形によって多極単頭プラグ本体10、及び基部50が成形される。予め所定の形状に成形されたチップ電極本体140、第3電極13、第2電極12、そして第1電極11は、この順でキャビティ内の所定の位置に置かれる。次に合成樹脂を射込み所定の位置に第1から第3の絶縁カラー(21、22、23)を形成し、基部50、及び多極単頭プラグ本体10の成形体が得られる。次にコイルスプリング190をその支持部173に組み付けた接触玉170を先ほどの成形体に組み付ける。コイルスプリング190は、コイル収容室147に収め、接触玉170は、接触玉収容室142に収める。
【0032】
次に、
図5に示されるように、接触玉170を接触玉収容室142に収容した状態で、つまり押圧を後方にかけた状態で、開口部143の周縁部分を内向きに加締める。つまり開口部143が狭まるように開口部143を形成する前壁の周縁部分を内側に変形させる。開口部143の周縁部分が加締められることで、接触玉170は、接触玉収容室142に封止されて、多極単頭プラグ本体10と一体化する。
【0033】
〈ジャック〉 ジャック7、及び多極単頭プラグ1とジャック7との接続構造について図面にしたがって説明する。
図6は、本発明の第1実施形態に係るジャックの透視斜視図である。
図7は、同多極単頭プラグとジャックとの嵌合状態が示される透視図である。
【0034】
ジャック7は、
図6に示されるように、前面に開口部71、及びそれに連通する筒状のプラグ収容空間72を備えたハウジング70と、リード80とを備えた箱体である。プラグ収容空間72を形成する内壁には、所定の位置に、第1リード〜第3リード(81、82、83)が備わる。チップリード84は、プラグ収容空間72の突き当たりの奥壁に備わる。チップリード84は、多極単頭プラグ1の挿入方向に対して直交する姿勢で備わる。チップリード84は板状の導電体である。導電性、加工性を考慮して銅合金たとえば黄銅を使用してよく、下地にニッケルメッキ、表層に金メッキを施して耐久性を持たせてもよい。
【0035】
ジャック7は、
図6に示されるように、第1〜第3リード(81、82、83)、及びチップリード84の各プラグ接続部が、プラグ収容空間72で対応する多極単頭プラグ1の第1〜第3電極(11、12、13)、及びチップ電極14の位置に臨んでいる。また、各基板接続部は、対応する図示しない回路基板に接する面に露出している。
多極単頭プラグ1と、ジャック7との接続構造は、
図7に示されるように、ジャック7の開口部71からこれに連通するプラグ収容空間72に多極単頭プラグ1の多極単頭プラグ本体10が収容される嵌合方式である。正規嵌合位置で、第1〜第3の電極(11、12、13)、及びチップ電極14は、対応する第1〜第3のリード(81、82、83)
、及びチップリード84の各プラグ接続部に電気的機械的に接続する。
【0036】
チップ電極14の接触玉170は、
図7に示されるように、正規嵌合位置で軸方向に沿って後退した位置で対応するジャック7のチップリード84と接続する。このときの後退量は、チップリード84の嵌合方向の位置によって決まる。第1実施例では、略最後端位置で接続している。勿論最先端位置と最後端位置との間のいずれかの位置で接続してもよい。接触玉170が最後端位置まで後退することによって、多極単頭プラグ本体10の軸方向寸法は、正規嵌合状態で略チップ電極14相当分短縮されている。対応するジャック7は、相当量の軸方向寸法の小型化が可能である。
【0037】
突部175の接続は、
図7に示されるように、コイルスプリング190の付勢力を受けている。これにより、突部175は、対応するチップリード84に対して集中的な押圧をかけることができる。チップ電極14は、最先端位置と最後端位置との間で軸方向に移動可能で、この間、常に対応するチップリード84に押圧をかけた状態で接続することができる。
【0038】
〈寸法比較〉 第1実施形態に係る多極単頭プラグ1、ジャック7と、従来品の多極単頭プラグ、ジャックとの寸法比較について、図面にしたがって説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係る多極単頭プラグと従来品の多極単頭プラグとの軸方向の形態の比較図である。(A)は、同多極単頭プラグの接触玉が最後端位置にあるときの側面図、(B)は同多極単頭プラグの接触玉が最先端位置にあるときの側面図、(C)は従来品の多極単頭プラグの側面図である。
図9は、同接続構造と従来品の接続構造との比較図である。(A)は、同多極単頭プラグと多極単頭ジャックとの接続構造が示される透視側面図、(B)は従来品の多極単頭プラグとジャックとの接続構造が示される透視側面図である。
【0039】
第1実施形態に係る多極単頭プラグ1は、
図8に示されるように、従来品の多極単頭プラグ201に比べて、チップ電極14の構造および形状が相違する。第1実施形態に係る多極単頭プラグ1のチップ電極14は、最先端位置から最後端位置の間で軸方向に押圧をかけた状態で移動可能であるとともに、この間、接触玉170がどの位置にあっても、チップ電極本体140と電気的な接続状態が保持され得る。
【0040】
チップ電極14は、
図9に示されるように、対応するチップリード84に対して直交姿勢で接続する。接続により、接触玉170は、対応するチップリード84に押されて後退する。多極単頭プラグ1に規定されている軸方向の+側公差、及び−側公差を加算した軸方向寸法公差が、この後退量で相殺されるように後退量を設計することができる。このような思想で後退量が設計された多極単頭プラグ1は、対応ジャックとの嵌合時、公差を考慮に入れた最も小さい軸方向寸法と概ね同等の寸法を有する多極単頭プラグ本体10を備えることができる。
【0041】
さらに、接触玉170の軸方向の移動可能範囲がこの後退量に比べて大きいときは、寸法公差の相殺以上の後退量が期待できる。すなわち、多極単頭プラグ本体10の軸方向寸法が従来のものに比べて短縮化された多極単頭プラグ1を得ることができる。その結果、対応するジャック7も、その後退量を見込んだ小型化された軸方向の設計が可能になる。すなわち、ジャック7のハウジング70は、
図9に示されるように、接触玉170の最後端位置を基準にして軸方向寸法の設計が可能になる。これにより、従来のジャックに比べて軸方向に小型化されたジャック7が得られる。
多極単頭プラグ1の抜け止めは、
図6、
図7に示されるように、たとえば、ジャック7に備わる金属線材の曲げ加工からなるロック手段Rと、多極単頭プラグ1に備わる被ロック手段R´との係合作用によるものであってよい。
【0042】
〈効果〉・第1実施形態に係る多極単頭プラグ1は、接触玉170が軸方向に移動可能で、且つ何れの位置にあっても電気的な接続が図られる。これにより、多極単頭プラグ1自体の寸法公差、およびジャック7の寸法公差によって生じる累積された公差がその移動によって相殺される多極単頭プラグ1が得られる。
・第1実施形態に係る多極単頭プラグ1は、接触玉170が軸方向に移動可能で、何れの位置にあっても電気的な接続が図られ、且つ、接触玉170は、常に前方に向けて弾性反力が作用している。これにより、対応ジャック7との嵌合時の軸方向寸法が短縮される多極単頭プラグ1が得られる。
【0043】
・第1実施形態に係る多極単頭プラグ1は、汎用型のチップ電極14のアダプタ500が組み付け可能である。これにより、JIS、JEITA等の規格に沿った外径を備えた、汎用型のジャックにも嵌合が可能な多極単頭プラグ1が得られる。
・第1実施形態に係るジャック7は、嵌合時軸方向寸法が短縮される多極単頭プラグ1と嵌合するので、短縮された寸法相当量軸方向に小型化されたジャック7が得られる。
【0044】
・第1実施形態に係るジャック7は、多極単頭プラグ1の挿入時、想定をやや越える強い力で挿入した場合でも、多極単頭プラグ1の先頭の当たる位置に金属製のチップリード84が備わり、このチップリード84がその衝撃を受け止めるので、ジャック7のハウジング70を構成する合成樹脂が衝撃力を受け止める場合に比べて、受け止められうる衝撃力は大きくなる多極単頭プラグ1と、ジャック7とからなる接続構造が得られる。
【0045】
・第1実施形態に係る接続構造が組み込まれた携帯機器を落下させた場合、チップ電極14に組み込まれたコイルスプリング190が落下衝撃を吸収できる場合があるので、クッション効果が期待できる接続構造が得られる。
【0046】
〈第2実施形態〉 厚み方向に扁平な多極単頭プラグ100について図面にしたがって説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る多極単頭プラグの外観斜視図である。
【0047】
本発明の第2実施形態に係る扁平型多極単頭プラグ100は、
図10に示されるように、基部50と多極単頭プラグ本体110とを備える。多極単頭プラグ本体110は、基部側から導電性の金属からなる第1電極311、第2電極312、第3電極313、及びチップ電極314を備える。各電極間には、非導電性の合成樹脂からなる第1カラー321、第2カラー322、及び第3カラー323を備える。
扁平型多極単頭プラグ100は、
図10に示されるように、厚み方向に扁平状である。これにより、対応する図示しないジャックは、厚み方向の小型化が可能である。これにより、長さ方向に加えて、高さ方向も小型化が可能なジャックが得られる。このような構成をとった場合でも、概ね上記した効果が得られる。
【0048】
〈第3実施形態〉 汎用性のあるチップ電極が組み付け可能な多極単頭プラグ1について図面にしたがって説明する。
図11は、本発明の第3実施形態に係る多極単頭プラグの外観斜視図である。
【0049】
本発明の第3実施形態に係る汎用型多極単頭プラグは、
図11に示されるように、第1実施形態に係る多極単頭プラグ1の先端に汎用型チップ電極のアダプタ500を取り付けた構造である。これにより、汎用ジャックに嵌合可能である、従来規格に則した形状の多極単頭プラグが得られる。