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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-10994(P2015-10994A)
(43)【公開日】2015年1月19日
(54)【発明の名称】温度検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/02 20060101AFI20141216BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20141216BHJP
【FI】
   G01K1/02 E
   H02N11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-138273(P2013-138273)
(22)【出願日】2013年7月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 修一
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝則
(72)【発明者】
【氏名】望月 勝
(72)【発明者】
【氏名】安部 昇
(72)【発明者】
【氏名】中條 淳也
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056AE01
2F056AE05
(57)【要約】
【課題】電源確保のための配線敷設や電池交換が不要であり、熱源の温度を検出し、継続的に動作することができる温度検出装置を提供する。
【解決手段】温度検出装置101は、熱源1の温度を検出する受温素子2を備える検出部11と、検出部11から離隔して配置され、熱電変換素子3を備える発電部12と、熱源1の熱または冷熱を発電部12に伝達する第1伝熱部41と、発電部12から離隔して配置され、熱または冷熱を外部に放出する放出部13と、発電部12から熱または冷熱を受け取って放出部13に伝達する第2伝熱部42と、受温素子2から得られた測定結果を出力する出力部14とを備え、熱電変換素子3は、面3aと面3bとの間の温度差によって発電するものであり、受温素子2および出力部14が動作するために必要な電力は、熱電変換素子3によって供給される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源の温度を検出する受温素子を備える検出部と、
前記検出部から離隔して配置され、熱電変換素子を備える発電部と、
前記熱源の熱または冷熱を前記発電部に伝達する第1伝熱部と、
前記発電部から離隔して配置され、熱または冷熱を外部に放出する放出部と、
前記発電部から熱または冷熱を受け取って前記放出部に伝達する第2伝熱部と、
前記受温素子から得られた測定結果を出力する出力部とを備え、
前記熱電変換素子は、前記熱電変換素子の前記第1伝熱部側の面と、前記熱電変換素子の前記第2伝熱部側の面との間の温度差によって発電するものであり、
前記受温素子および前記出力部が動作するために必要な電力は、前記熱電変換素子によって供給される、温度検出装置。
【請求項2】
前記第1伝熱部は、ヒートパイプまたは金属棒である、請求項1に記載の温度検出装置。
【請求項3】
前記第1伝熱部の外周面が断熱材または空間で覆われている、請求項1または2に記載の温度検出装置。
【請求項4】
前記第2伝熱部は、ヒートパイプまたは金属棒である、請求項1から3のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項5】
前記第2伝熱部の外周面が断熱材または空間で覆われている、請求項1から4のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項6】
前記出力部は、無線によって信号を発する無線信号送信装置を備える、請求項1から5のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記熱源から見て前記放出部よりも遠くに位置する、請求項1から6のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項8】
前記放出部における熱または冷熱の放出を促進するためのファンを備え、前記ファンが動作するために必要な電力は、前記熱電変換素子によって供給される、請求項1から7のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項9】
前記熱源が常温より低い温度の冷熱源であり、前記放出部において冷熱を放出することによって前記熱電変換素子の前記第1伝熱部側の面と前記熱電変換素子の前記第2伝熱部側の面との間に生じる温度差を利用して、前記熱電変換素子が発電する、請求項1から8のいずれかに記載の温度検出装置。
【請求項10】
少なくとも前記第1伝熱部を収容するケースを備える、請求項1から9のいずれかに記載の温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンなどの装置から発生する排気ガスなどの流体の温度を検出して異常の発生を早期に把握するモニタリングシステムは、装置の故障や事故を防止する有効な手段として考えられている。
【0003】
排気ガス浄化装置の触媒コンバータの内部や排気管の内部といった高温環境下で被測定流体が流通する流通路内に素子を配置し、被測定流体の温度検出を行なうための温度センサの一例が、特許第3826095号公報(特許文献1)に記載されている。
【0004】
温度監視装置の一例が、特開2012−112710号公報(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3826095号公報
【特許文献2】特開2012−112710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流体の温度のモニタリングシステムを構築するためには、多数箇所に温度センサを配置し、センサネットワークを形成することが求められるが、温度センサを配置するためには、たとえば特許文献1に記載された温度センサのように、通常の温度センサは有線接続型であるので、配線が必要となる。配線を伴う温度センサを多数箇所に配置するためには、設置場所の制約、および設置に必要なコストが問題となり、現実的には十分多くの数の温度センサを配置することができなかった。
【0007】
そこで、有線接続型の温度センサに代えて、配線不要の無線温度センサの使用が考えられるが、その場合、動作電源として電池を備えることが必要となり、電池の交換コストが問題となるので、やはり十分なセンサネットワークを形成しにくかった。
【0008】
一方、特許文献2に記載された装置では、熱電変換素子を用いて監視対象物から受け取る熱エネルギーを基に発電し、熱電変換素子から出力される電圧信号から温度情報を生成し、アンテナを介して外部に温度情報を送信することとなっている。しかし、特許文献2には、用途、熱源への接触方法、冷却方法などの詳細な記述はなく、具体的な構造が不明である。
【0009】
そこで、本発明は、電源確保のための配線敷設や電池交換が不要であり、熱源の温度を検出し、継続的に動作することができる温度検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に基づく温度検出装置は、熱源の温度を検出する受温素子を備える検出部と、上記検出部から離隔して配置され、熱電変換素子を備える発電部と、上記熱源の熱または冷熱を上記発電部に伝達する第1伝熱部と、上記発電部から離隔して配置され、熱または冷熱を外部に放出する放出部と、上記発電部から熱または冷熱を受け取って上記放出部に伝達する第2伝熱部と、上記受温素子から得られた測定結果を出力する出力部とを備え、上記熱電変換素子は、上記熱電変換素子の上記第1伝熱部側の面と、上記熱電変換素子の上記第2伝熱部側の面との間の温度差によって発電するものであり、上記受温素子および上記出力部が動作するために必要な電力は、上記熱電変換素子によって供給される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱電変換素子に生じる温度差によって温度検出装置が自ら発電し、受温素子および出力部が動作するための電力をまかなうことができるので、電源確保のための配線敷設や電池交換が不要であり、熱源の温度を検出し、継続的に動作することができる温度検出装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に基づく実施の形態1における温度検出装置の概念図である。
図2】本発明に基づく実施の形態1における温度検出装置の断面図である。
図3】本発明に基づく実施の形態1における温度検出装置の部分拡大断面図である。
図4】単純な発電モジュールの一例の概念図である。
図5】本発明に基づく実施の形態2における温度検出装置の断面図である。
図6】本発明に基づく実施の形態3における温度検出装置の断面図である。
図7】実施例3で作製した発電モジュールの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、「熱源」という概念は、常温より高い温度を有する熱源に限らず、常温より低い温度のいわゆる冷熱源も含むものとする。また、「熱源」には、1ヶ所に留まっているものだけでなく、流れ続ける流体も含むものとする。
【0014】
(実施の形態1)
(構成)
図1図3を参照して、本発明に基づく実施の形態1における温度検出装置について説明する。本実施の形態における温度検出装置101を、図1に概念的に示す。
【0015】
本実施の形態における温度検出装置101は、熱源1の温度を検出する受温素子2を備える検出部11と、検出部11から離隔して配置され、熱電変換素子3を備える発電部12と、熱源1の熱または冷熱を発電部12に伝達する第1伝熱部41と、発電部12から離隔して配置され、熱または冷熱を外部に放出する放出部13と、発電部12から熱または冷熱を受け取って放出部13に伝達する第2伝熱部42と、受温素子2から得られた測定結果を出力する出力部14とを備える。熱電変換素子3は、熱電変換素子3の第1伝熱部41側の面3aと、熱電変換素子3の第2伝熱部42側の面3bとの間の温度差によって発電するものである。受温素子2および出力部14が動作するために必要な電力は、熱電変換素子3によって供給される。
【0016】
検出部11に設けられた受温素子2と出力部14との間は、配線4によって接続されている。熱電変換素子3と出力部14との間は、配線5によって接続されている。出力部14には、電子回路が配置されていてもよい。出力部14による出力の方法としては、のちに実施の形態2で説明するように無線で送信する方法も考えられるが、何らかの表示装置によって表示するという方法も考えられる。
【0017】
図1では、第1伝熱部41の先端は検出部11とは別の位置に描かれているが、検出部11の中に受温素子2と第1伝熱部41の先端とが共に配置されていてもよい。
【0018】
温度検出装置101のより具体的な構成を図2に示す。図2では、説明の便宜のため、ケース6などいくつかの部品は半分に割った状態で表示している。ここで言及する上下の概念はあくまで説明の便宜上のものであって、実際の使用時にこのような姿勢で使用されるとは限らない。
【0019】
図2に示した例では、第1伝熱部41は、筒状のケース6に収められている。ケース6の下端は閉じており、ドーム状の外形を有している。受温素子2はケース6の内部に配置されている。ケース6の下端近傍の受温素子2が収まっている部分が検出部11となる。受温素子2はケース6の内面に接している。第1伝熱部41の先端もケース6の内面に接している。図2に示した例では、第1伝熱部41の先端は、受温素子2と同じく検出部11に配置されている。
【0020】
ケース6の上端は開口しており、熱電変換素子3を収容するように広がった形状の発電部筐体6aとなっている。発電部筐体6aに熱電変換素子3を収容した状態で、さらに上側から固定部品7が取り付けられることによって、熱電変換素子3は固定されている。図2に示した例では、発電部筐体6aの内面には雌ねじが設けられ、固定部品7の下部外面には雄ねじが設けられている。固定部品7は、熱電変換素子3を下側に押しつけた状態で発電部筐体6aにねじ込まれることによって組み立てられている。熱電変換素子3の近傍を拡大したところを、図3に示す。熱電変換素子3は互いに対向するように面3aと面3bとを有する。熱電変換素子3の面3bには第1伝熱部41の端が接しており、面3aには第2伝熱部42の端が接している。
【0021】
(作用・効果)
熱電変換素子は一方の面を熱して、他方の面を冷却することで両方の面の間に温度差が形成されたときに発電する。この温度差が大きければ大きいほど発電量は大きくなる。
【0022】
本実施の形態に基づく温度検出装置101では、第1伝熱部41が熱源1の熱または冷熱を発電部12に伝達する一方、発電部12の熱または冷熱は第2伝熱部42によって放出部13に伝達されるので、発電部12における熱電変換素子3の第1伝熱部41側の面3aと、第2伝熱部42側の面3bとの間には温度差が生じ、熱電変換素子3はこの温度差から発電することができる。発電された電力は配線5を経由して出力部14に供給される。この電力によって、受温素子2および出力部14が動作するために必要な電力をまかなうことができる。受温素子2は、出力部14から配線4を介して使用される。
【0023】
本実施の形態では、発電部12は検出部11から離隔して配置されているので、熱電変換素子3の面3a,3b間の温度差は、熱源1からの熱によって損なわれにくく、効率良く大きな温度差を形成することができる。したがって、効率良く発電することができる。たとえば単純な例として、図4に示すように、熱電変換素子3を一方の面が熱源1に接して他方の面が放出部13に接するように配置した構成も考えられるが、このような構成では、熱源1からの熱によって全体の温度が上がってしまい、熱電変換素子3の2つの面の間の温度差が大きくなりにくい。しかし、本実施の形態では、図2に示すように、発電部12は検出部11から離隔して配置されているので、効率良く大きな温度差を形成することができる。
【0024】
本実施の形態における温度検出装置によれば、自ら発電し、受温素子2および出力部14が動作するための電力をまかなうことができるので、一次電池を使用することなく、ほぼメンテナンスフリーで半永久的に動作可能な無線の温度検出装置とすることができる。すなわち、本実施の形態における温度検出装置は、電源確保のための配線敷設や電池交換が不要であり、熱源の温度を検出し、継続的に動作することができる温度検出装置とすることができる。
【0025】
なお、第1伝熱部41は、ヒートパイプまたは金属棒であることが好ましい。この構成を採用することにより、第1伝熱部41は、熱電変換素子3に効率良く熱または冷熱を伝えることができるからである。
【0026】
第1伝熱部41の外周面が断熱材または空間で覆われていることが好ましい。図2に示した例では、第1伝熱部41の外周面は空間8によって覆われている。すなわち、図2に示した例では、ケース6の内側に筒状に形成された空間8を介して第1伝熱部41が設置されている。空間8は真空または空気が満たされた空間であればよい。第1伝熱部41の周囲にこのように空間8を設ける代わりに、ケース6の内側に筒状に断熱材を配置して、その断熱材の内側に第1伝熱部41が配置された構成であってもよい。
【0027】
たとえば熱源1が高温である場合、熱源1から第1伝熱部41の下端に入った熱は、第1伝熱部41、熱電変換素子3、第2伝熱部42、放出部13の順に伝熱することが想定されている。熱源1から第1伝熱部41の下端に入った熱がこれ以外のルートに漏れて伝わることはなるべく抑えることが望ましい。なぜなら、熱電変換素子3における温度差をなるべく大きくするためには、熱源1から第1伝熱部41の下端に入った熱は、なるべくそのまま熱電変換素子3の面3aに伝わることが望ましいからである。第1伝熱部41の外周面を断熱材または空間で覆うことによって、第1伝熱部41の下端に入った熱が途中で逃げないようにすることができる。
【0028】
たとえば高温の被測定流体が配管内を通っている場合、配管の中心部は高温であるのに対して、配管の外周近傍では温度がやや低くなる傾向がある。そのような状況で、配管の中心部に第1伝熱部41の先端および検出部11が達するように配置した場合、配管の中心部で第1伝熱部41が受け取った熱が、第1伝熱部41の内部を伝わっている途中で、配管の外周近傍の流体によって奪われないようにするためにも、第1伝熱部41の外周面を断熱材または空間で覆うことが有効である。
【0029】
また、他の熱が外部から温度検出装置の不所望な部分に混入することもなるべく抑えることが求められる。なぜなら、高温にする必要のない部分が外部からの熱によって高温になってしまうと、熱電変換素子3における温度差が小さくなってしまうからである。第1伝熱部41の外周面を断熱材または空間で覆うことによって、第1伝熱部41を伝わる熱が熱電変換素子3以外の不所望な部品を温めてしまうことを防止することができる。
【0030】
本実施の形態では、第1伝熱部41を包み込むようにケース6が設けられている例を示した。このように、少なくとも第1伝熱部41を収容するケース6を備えることが好ましい。ケース6は、第1伝熱部41が高温の被測定流体に直接さらされることによる第1伝熱部41の劣化を防止するためのものである。温度検出装置としては、ケース6がない構成も考えられる。第1伝熱部41を収容するケース6がない場合でも、受温素子2および第1伝熱部41は配置される。この場合、第1伝熱部41は先端のみ露出して外周面は断熱材で覆われていることが好ましい。
【0031】
本実施の形態において、第2伝熱部42は、ヒートパイプまたは金属棒であることが好ましい。この構成を採用することにより、第2伝熱部42は、放出部13に効率良く熱または冷熱を伝えることができるからである。
【0032】
第2伝熱部42の外周面が断熱材または空間で覆われていることが好ましい。図2に示した例では、第2伝熱部42の外周面は断熱材9によって覆われている。断熱材9を用いる代わりに、第2伝熱部42を取り囲む何らかのケースを配置して、第2伝熱部42の外周面が空間で覆われた構成としてもよい。この空間は、真空または空気が満たされた空間であればよい。このような構成であれば、第1伝熱部41などから熱電変換素子3を経由せずに周辺を伝わってきた熱が第2伝熱部42に入り込むことを防止することができるので、熱電変換素子3における温度差が小さくなってしまうことを防止することができる。また、この構成であれば、外部環境による輻射熱が第2伝熱部42に入り込むことも防止することができる。
【0033】
出力部14は、熱源1から見て放出部13よりも遠くに位置することが好ましい。この構成を採用することにより、出力部14に熱源1からの熱の影響が及ぶ度合いを抑えることができる。出力部14には、通常、電子回路が含まれる。一般的に、電子回路は熱に弱い。したがって、電子回路を含む出力部14の場合、出力部14の耐熱性が問題となる場合もあり、高温にさらされることは避けることが好ましい。出力部14と同様に、受温素子2から得られた測定結果を出力する動作以外のための部品、すなわち、電源マネジメント部品、通信部品、蓄電部品なども必要に応じて設けられる場合があるが、これらの部品に関しても、熱源1から見て放出部13よりも遠くに位置することが好ましい。これらの部品に対する熱の影響を抑えることにより、温度上昇による電気エネルギーの損失を抑えることができる。
【0034】
なお、発電部12は、たとえば被測定流体が流れる配管などへの温度検出装置101の固定に用いられてもよい。この場合、温度検出装置101は、配管の外壁を貫通するように取り付けられる。すなわち、図2における発電部12より下側の部分が配管の内部に突出し、図2における発電部12より上側の部分は配管の外部に突出するように、温度検出装置101は配管に対して取り付けられる。その結果、検出部11は配管の内部にある程度入り込んだ位置に配置され、放出部13は配管の外にある程度離隔した位置に配置されることとなる。
【0035】
(実施の形態2)
(構成)
図5を参照して、本発明に基づく実施の形態2における温度検出装置102について説明する。
【0036】
本実施の形態における温度検出装置102は、実施の形態1で示した温度検出装置101と基本的に同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。温度検出装置102においては、出力部14は、無線によって信号を発する無線信号送信装置14cを備える。無線信号送信装置14cは出力部14の一部であるので、無線信号送信装置14cが動作するための電力も、出力部14が動作するための電力の一部として、熱電変換素子3によって供給される。
【0037】
(作用・効果)
本実施の形態では、出力部14が無線信号送信装置14cを備えるので、信号を送信するための配線がなくとも、受温素子から得られた測定結果を離れた位置へと送り届けることができる。本実施の形態における温度検出装置は、自ら温度差によって発電することができ、外部からの電力供給のための配線が不要であるので、さらに測定結果を無線信号として送信することとすれば、完全に無線で半永久的に使用可能となり、配線の制約から完全に解放される。このことは、監視対象物に対して十分多くの数の温度検出装置を所望の箇所に設置することを容易とし、監視対象物のモニタリングのためのセンサネットワーク構築に貢献する。
【0038】
(実施の形態3)
(構成)
図6を参照して、本発明に基づく実施の形態3における温度検出装置103について説明する。
【0039】
本実施の形態における温度検出装置103は、実施の形態1で示した温度検出装置101と基本的に同様の構成を備えるが、以下の点で異なる。温度検出装置103は、放出部13における熱または冷熱の放出を促進するためのファン15を備える。ファン15が動作するために必要な電力は、熱電変換素子3によって供給される。
【0040】
(作用・効果)
本実施の形態では、放出部13における熱または冷熱の放出を促進するためのファン15を備えるので、放出部13における熱または冷熱の放出が十分に行なわれる。放出部13における熱または冷熱の放出が十分でなかった場合には、出力部14に悪影響を及ぼす場合があるが、ファン15によって、放出が促進されることにより、出力部14に悪影響が及ぶことが回避される。出力部14が電子回路を備えており、放出部13が放出するものが熱である場合には、電子回路は熱に弱いので、ファン15によって熱が効率良く放出されることは重要である。図6に示した例では、放出部13、ファン15、出力部14の順に配置されているが、これはあくまで一例であって、これら各部の配置はこのとおりとは限らない。
【0041】
なお、本発明に基づく温度検出装置は、一般的に、高温の流体に対して使用することが想定される。この場合、熱は、熱源1から第1伝熱部41に伝わり、熱電変換素子3においては、図2における下面が高温側、上面が低温側となって温度差が形成されることで発電がなされ、第1伝熱部41から熱電変換素子3を経由して第2伝熱部42に伝わった熱はさらに放出部13に伝わり、放出部13では放熱が行なわれることが想定される。しかし、本発明に基づく温度検出装置は、低温の流体に対しても使用することができる。すなわち、本発明に基づく温度検出装置においては、熱源1が常温より低い温度の冷熱源であり、放出部13において冷熱を放出することによって熱電変換素子3の第1伝熱部41側の面と熱電変換素子3の第2伝熱部42側の面との間に生じる温度差を利用して、熱電変換素子3が発電するものであってもよい。放出部13において冷熱を放出するということは、放出部13が外部から熱を受け取るということに他ならない。この場合、熱電変換素子3の図2における下面が低温側、上面が高温側となって温度差が形成される。本発明に基づく温度検出装置としては、このような構成であってもよい。
【0042】
(実施例1)
試料として図2に示した温度検出装置101を複数通り作製し、下部を加熱して発電量から温度差を導出する実験を行なった。熱電変換素子3としては、酸化物材料を用いて作成された積層型の熱電変換素子を用いた。熱電変換素子3は、7mm×6mm×3mmのサイズのものであり、400℃まで使用できるものである。ここで用いた熱電変換素子3は、機械的強度も十分に強いものである。放出部13としては、アルミニウム製の50mm×50mm×20mmのヒートシンクを用いた。熱源1と熱電変換素子3との間の第1伝熱部41、および、熱電変換素子3と放出部13との間の第2伝熱部42はいずれも直径8mmとし、試料ごとに異なるものを用いた。試料番号1〜9として、それぞれ表1に示すように、銅製の棒、アルミニウム製の棒、または銅−水型のヒートパイプを用いた。筒状のケース6の下部を設定温度にまで加熱し、発電量を測定した。測定された発電量を基に、熱電変換素子3の出力特性を考慮して、熱電変換素子3の両面間に生じたと思われる温度差を計算して導き出した。
【0043】
【表1】
【0044】
導き出された温度差を表1に示す。試料1〜9の実験結果から、伝熱部に、アルミニウム製の棒のみを用いたものに比べて、銅製の棒または銅−水ヒートパイプを用いたものの場合に、熱電変換素子3における温度差が大きくなる傾向があるといえる。
【0045】
(実施例2)
実施の形態2で説明したような温度検出装置102を用いて、今度は実際にディーゼルエンジンの排気ガスの配管に設置して発電し、その電力を利用して温度測定および結果の無線送信を行なった。熱電変換素子3と放出部13との間の第2伝熱部42としては直径8mmの銅−水型のヒートパイプ、熱源1と熱電変換素子3との間の第1伝熱部41としては直径8mmの銅製の棒を使用した。また、電圧マネジメント回路として、DC−DCコンバータ(Linear Technology社製、LTC3108)を含んだ電源回路を用い、受温素子2としてPt1000温度センサ(RS社製)を用いた。さらに、無線信号送信装置14cとして315MHz通信モジュール(EnOcean社製)を用いた。蓄電部には0.5mFのアルミニウム電解コンデンサを用いた。
【0046】
この実験を実施した際の排気ガスの温度は約290℃であった。温度検出装置102の各部位の温度を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
発電量から計算すると、熱電変換素子3において生じていると思われる温度差は46℃である。
【0049】
この実験の結果、測定された温度の信号が1秒間隔で無線送信されていることが確認できた。この送信のための電力は外部からは供給していないので、熱電変換素子3における温度差から発電された電力によって無線送信が行なわれているといえる。無線送信された信号は、ディーゼルエンジンが設置されている25m×25mの部屋の内部のどの場所でも問題ない強度で受信することができた。
【0050】
(比較例)
比較例として図4に示した構造の発電モジュールを作製した。熱電変換素子3、放出部13としては、実験例1,2で説明したのと同じものを用いた。
【0051】
この発電モジュールを、実験例2と同じく排気ガスが通る配管の表面に設置した。この発電モジュールの各部位の温度を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
図4に示した発電モジュールには検出部11と明確に区別できる部分は備わっていないが、表3でいう「検出部」は、熱電変換素子3の下面近傍を意味する。
【0054】
発電量から計算すると、熱電変換素子3において生じていると思われる温度差は11℃である。
【0055】
(実施例3)
図7に示す構造の発電モジュールを複数通り作製し、下部を加熱して発電量から温度差を導出する実験を行なった。放出部、熱電変換素子の温度差を調べた。熱電変換素子は熱伝導率が10W/mKの積層型の高温対応熱電変換素子と、1W/mKのπ型熱電変換素子との2通りをそれぞれ用いた。熱電変換素子のサイズはそれぞれ7mm×6mm×3mmのものであり、1つの試料に1個ずつ用いた。放出部はアルミニウム製の50mm×50mm×25mmのヒートシンクを用いた。熱電変換素子3と放出部13との間の伝熱部40としては、直径10mmの銅製の棒または銅−水型のヒートパイプを使用した。第2伝熱部品42の長さを違えて複数通りの試料を作製した。放出部13は室温で自然空冷によって冷却されるものとした。なお、室温は25℃である。
【0056】
以上のように、実施例3としては、熱電変換素子のタイプが2通り、第2伝熱部のタイプが2通りあるので、以下に個別の実験結果を説明する。
【0057】
(実施例3−1)
まず、熱伝導率10W/mKの熱電変換素子を用い、伝熱部40として銅製の棒を用いた試料において、熱源温度の各設定条件と伝熱部40の長さの各条件との組合せからそれぞれ生じた放出部13の温度を測定した結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示した放出部13の温度の測定結果を基に、熱電変換素子3の出力特性を考慮し、熱電変換素子3の両面間に生じたと思われる温度差を計算して導き出した。その結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
(実施例3−2)
次に、熱伝導率10W/mKの熱電変換素子を用い、伝熱部40としてヒートパイプを用いた試料において、熱源温度の各設定条件と伝熱部40の長さの各条件との組合せからそれぞれ生じた放出部13の温度を測定した結果を表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6に示した放出部13の温度の測定結果を基に、熱電変換素子3の出力特性を考慮し、熱電変換素子3の両面間に生じたと思われる温度差を計算して導き出した。その結果を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
(実施例3−3)
熱伝導率1W/mKの熱電変換素子を用い、伝熱部40として銅製の棒を用いた試料において、熱源温度の各設定条件と伝熱部40の長さの各条件との組合せからそれぞれ生じた放出部13の温度を測定した結果を表8に示す。
【0066】
【表8】
【0067】
表8に示した放出部13の温度の測定結果を基に、熱電変換素子3の出力特性を考慮し、熱電変換素子3の両面間に生じたと思われる温度差を計算して導き出した。その結果を表9に示す。
【0068】
【表9】
【0069】
(実施例3−4)
熱伝導率1W/mKの熱電変換素子を用い、伝熱部40としてヒートパイプを用いた試料において、熱源温度の各設定条件と伝熱部40の長さの各条件との組合せからそれぞれ生じた放出部13の温度を測定した結果を表10に示す。
【0070】
【表10】
【0071】
表10に示した放出部13の温度の測定結果を基に、熱電変換素子3の出力特性を考慮し、熱電変換素子3の両面間に生じたと思われる温度差を計算して導き出した。その結果を表11に示す。
【0072】
【表11】
【0073】
図4に示した比較例の構成は、図7に示した試料において伝熱部の長さを0とした構成に相当する。したがって、表4〜表11において「第2伝熱部の長さ」が0mmの列が比較例に相当する。表5、表7、表9および表11に示すように、実施例3−1〜実施例3−4のいずれの場合にも、伝熱部40の長さを長くすることで、比較例より大きな温度差が得られた。実施例3−1〜実施例3−4の全体からすると、比較例の1.25倍〜4.0倍の温度差が得られたことがわかる。一般的に、熱電変換素子の発電量は温度差の2乗に比例するので、伝熱部40の長さを長くすることで、比較例の1.5〜16倍もの発電量が得られることとなる。
【0074】
熱伝導率が低い熱電変換素子を用いた方が効果が大きい。熱伝導率の高い伝熱部を用いた方が効果が大きい。伝熱部の長さを長くすることで熱源からの放射熱などによる放出部の温度上昇を抑えることができる。しかし、伝熱部が長すぎると伝熱部において熱の損失が生じ、結果的に熱電変換素子において得られる温度差が減少する可能性もある。また、伝熱部が長くなれば伝熱部の機械的強度の問題も生じる。したがって、伝熱部としては、長すぎることも好ましくなく、最適な長さが存在する。最適な長さの条件は使用する環境によるが、比較例(長さ0mmの場合)の2倍以上の温度差が得られる50mm以上300mm未満の長さを最適とする。また放出部の温度が低い場合には放出部に電子回路を設置することもできる。
【0075】
なお、今回開示した上記実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0076】
1 熱源、2 受温素子、3 熱電変換素子、4,5 配線、6 ケース、6a 発電部筐体、7 固定部品、8 空間、9 断熱材、11 検出部、12 発電部、13 放出部、14 出力部、14c 無線信号送信装置、15 ファン、40 伝熱部、41 第1伝熱部、42 第2伝熱部、101 温度検出装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7