【解決手段】型枠構造物10Aは、取付位置34,35に設置された第1および第2型枠パネル17a〜17iと、第1型枠パネル17a〜17iに固定された第1トラス構造物21a〜21iと、第2型枠パネルに固定された第2トラス構造物と、第1トラス構造物21a〜21iに固定された第1横架設材23a〜23cと、第2トラス構造物に固定された第2横架設材と、第1横架設材23a〜23cの後方に設置された第1支持架設材25a〜25cと、第2横架設材の前方に設置された第2支持架設材とから形成されている。
前記型枠構造物では、前記第1傾斜材の上端部が前記第1縦架設材の近傍に延びる前記第1横架設材に押圧下に密着固定され、前記第1縦架設材と前記第1傾斜材と前記第1水平材とから第1三角構造物が形成され、前記第2傾斜材の上端部が前記第2縦架設材の近傍に延びる前記第2横架設材に押圧下に密着固定され、前記第2縦架設材と前記第2傾斜材と前記第2水平材とから第2三角構造物が形成されている請求項1に記載の型枠構造物。
上下方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの前記第1支持架設材が設置され、上下方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの前記第2支持架設材が設置されている請求項1または請求項2に記載の型枠構造物。
前記第1および第2傾斜材の下端部が、前記構築箇所下部に回転可能に固定され、前記第1および第2傾斜材が、その下端部を中心に前記構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、前記構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能である請求項1ないし請求項3いずれかに記載の型枠構造物。
前記第1傾斜材が、前記第1横架設材と前記構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有し、前記第2傾斜材が、前記第2横架設材と前記構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する請求項1ないし請求項4いずれかに記載の型枠構造物。
上下方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループには、少なくとも3つの前記第1縦架設材が設置され、2つの前記第1縦架設材が前記第1型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの前記第1縦架設材が前記第1型枠パネルの中央部に配置され、上下方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループには、少なくとも3つの前記第2縦架設材が設置され、2つの前記第2縦架設材が前記第2型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの前記第2縦架設材が前記第2型枠パネルの中央部に配置されている請求項1ないし請求項5いずれかに記載の型枠構造物。
横方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループには、少なくとも1つの前記第1横架設材が設置され、横方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループには、少なくとも1つの前記第2横架設材が設置されている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の型枠構造物。
上下方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置する前記第1型枠パネルに対する前記第1横架設材の設置数が上下方向上方に位置する該第1型枠パネルに対する該第1横架設材のそれよりも多く、上下方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置する前記第2型枠パネルに対する前記第2横架設材の設置数が上下方向上方に位置する該第2型枠パネルに対する該第2横架設材のそれよりも多い請求項1ないし請求項7いずれかに記載の型枠構造物。
前記横方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループでは、2つの前記第1横架設材が前記第1型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの前記第1横架設材が前記第1型枠パネルの中央部に配置され、前記横方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループでは、2つの前記第2横架設材が前記第2型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの前記第2横架設材が前記第2型枠パネルの中央部に配置されている請求項1ないし請求項8いずれかに記載の型枠構造物。
前記第1傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、前記第2傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の型枠構造物。
前記第1傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ前記第1型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、前記第2傾斜材の上端部が、上下方向へ一連に並ぶ前記第2型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載の型枠構造物。
前記第1縦架設材が、前記第1型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、前記第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、前記第1垂直材と前記第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られた第1トラス構造物であり、前記第1トラス構造物の上端部が、前記上方第1取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、前記第1トラス構造物の下端部が、前記下方第1取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、前記第1水平材の後端部が、前記第1トラス構造物の第1垂直材に強固に固定され、前記第2縦架設材が、前記第2型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、前記第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、前記第1垂直材と前記第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られた第2トラス構造物であり、前記第2トラス構造物の上端部が、前記上方第2取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、前記第2トラス構造物の下端部が、前記下方第2取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、前記第2水平材の後端部が、前記第2トラス構造物の第1垂直材に強固に固定されている請求項1ないし請求項11いずれかに記載の型枠構造物。
前記第1および第2型枠パネルが、所定面積の対向面および当接面と上下面と両側面とを有する6面体であり、前記第1および第2型枠パネルの6面には、それら型枠パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともにそれら型枠パネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている請求項1ないし請求項12いずれかに記載の型枠構造物。
前記合成樹脂が、イソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化した前記ポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層が、それら型枠パネルの6面に形成されている請求項13に記載の型枠構造物。
前記建造物が、既設のそれであり、前記型枠構造物が、既設の前記建造物に作られる鉄筋コンクリート製の補強壁の構築に使用される請求項1ないし請求項14いずれかに記載の型枠構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セパレータを使用して型枠を組み立てる場合、配筋する鉄筋に衝突しないように鉄筋の位置を配慮しつつ、ベニヤ板の単位面積当たりに相当数のセパレータを設置しなければならないのみならず、互いに対向する一方のベニヤ板に貫通孔を穿孔した後、その貫通孔に対応する他方のベニヤ板の穿孔位置を正確に位置決め(墨出し)をし、そのベニヤ板に貫通孔を穿孔しなければならない。したがって、セパレータを使用して互いに対向するそれらベニヤ板どうしの並行状態を保持するためには型枠大工の長年の経験や勘に頼らざるを得ないのが現状である。なお、型枠大工が型枠工事をする場合においても、設計どおりの型枠を組み立てるまでに相当の熟練と時間とを要するとともに、多くの手間を必要としている。
【0006】
本発明の目的は、型枠大工の経験や勘に頼ることなく、短時間に効率よく組み立てることができ、手間を要さずに廉価に組み立てることができるとともに、打設されるコンクリートの側圧に十分に耐えることができる型枠構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、建造物の所定の箇所に施設されるコンクリート構造物の構築に使用する型枠構造物である。
【0008】
前記前提における本発明の特徴は、型枠構造物が、建造物におけるコンクリート構造物の構築箇所上部の位置決めされた上方第1取付位置と構築箇所下部の位置決めされた下方第1取付位置との間に設置されて上下方向へ一連に並ぶとともに横方向へ一連に並ぶ複数の第1型枠パネルと、上方第1取付位置から前後方向前方へ所定寸法離間して構築箇所上部の位置決めされた上方第2取付位置と下方第1取付位置から前後方向前方へ所定寸法離間して構築箇所下部の位置決めされた下方第2取付位置との間に設置されて上下方向へ一連に並ぶとともに横方向へ一連に並ぶ複数の第2型枠パネルと、第1型枠パネルの前後方向後方に固定されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1縦架設材と、第2型枠パネルの前後方向前方に固定されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第2縦架設材と、第1縦架設材の前後方向後方に位置しつつそれら第1縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1横架設材と、第2縦架設材の前後方向前方に位置しつつそれら第2縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第2横架設材と、第1横架設材の前後方向後方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1支持架設材と、第2横架設材の前後方向前方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第2支持架設材とを備え、第1支持架設材が、第1横架設材から構築箇所下部に向かって下り勾配に延びる第1傾斜材と、第1型枠パネルから前後方向後方へ延びる第1水平材とから形成され、第1傾斜材が、第1横架設材に押圧下に密着固定された上端部と、第1型枠パネルから前方へ離間して構築箇所下部に固定された下端部とを有し、第1水平材が、第1型枠パネルから後方へ離間して第1傾斜材の下端部に固定された前端部と、第1型枠パネルの側に位置して第1縦架設材に固定された後端部とを有し、第2支持架設材が、第2横架設材から構築箇所下部に向かって下り勾配に延びる第2傾斜材と、第2型枠パネルから前後方向前方へ延びる第2水平材とから形成され、第2傾斜材が、第2横架設材に押圧下に密着固定された上端部と、第2型枠パネルから前方へ離間して構築箇所下部に固定された下端部とを有し、第2水平材が、第2型枠パネルから前方へ離間して第2傾斜材の下端部に固定された前端部と、第2型枠パネルの側に位置して第2縦架設材に固定された後端部とを有することにある。
【0009】
本発明の一例として、型枠構造物では、第1傾斜材の上端部が第1縦架設材の近傍に延びる第1横架設材に押圧下に密着固定され、第1縦架設材と第1傾斜材と第1水平材とから第1三角構造物が形成され、第2傾斜材の上端部が第2縦架設材の近傍に延びる第2横架設材に押圧下に密着固定され、第2縦架設材と第2傾斜材と第2水平材とから第2三角構造物が形成されている。
【0010】
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの第1支持架設材が設置され、上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルの1つのグループには、少なくとも1つの第2支持架設材が設置されている。
【0011】
本発明の他の一例としては、第1および第2傾斜材の下端部が構築箇所下部に回転可能に固定され、第1および第2傾斜材がその下端部を中心に構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能である。
【0012】
本発明の他の一例としては、第1傾斜材が第1横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有し、第2傾斜材が第2横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する。
【0013】
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループには、少なくとも3つの第1縦架設材が設置され、2つの第1縦架設材が第1型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの第1縦架設材が第1型枠パネルの中央部に配置され、上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループには、少なくとも3つの第2縦架設材が設置され、2つの第2縦架設材が第2型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの第2縦架設材が第2型枠パネルの中央部に配置されている。
【0014】
本発明の他の一例として、横方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループには、少なくとも1つの第1横架設材が設置され、横方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループには、少なくとも1つの第2横架設材が設置されている。
【0015】
本発明の他の一例として、上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置する第1型枠パネルに対する第1横架設材の設置数が上下方向上方に位置する第1型枠パネルに対する第1横架設材のそれよりも多く、上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループでは、上下方向下方に位置する第2型枠パネルに対する第2横架設材の設置数が上下方向上方に位置する第2型枠パネルに対する第2横架設材のそれよりも多い。
【0016】
本発明の他の一例として、横方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループでは、2つの第1横架設材が第1型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの第1横架設材が第1型枠パネルの中央部に配置され、横方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループでは、2つの第2横架設材が第2型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの第2横架設材が第2型枠パネルの中央部に配置されている。
【0017】
本発明の他の一例としては、第1傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、第2傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている。
【0018】
本発明の他の一例としては、第1傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、第2傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている。
【0019】
本発明の他の一例としては、第1縦架設材が、第1型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、第1垂直材と第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られた第1トラス構造物であり、第1トラス構造物の上端部が上方第1取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、第1トラス構造物の下端部が下方第1取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、第1水平材の後端部が第1トラス構造物の第1垂直材に強固に固定され、第2縦架設材が、第2型枠パネルに当接して上下方向へ直状に延びる第1垂直材と、第1垂直材から前後方向前方へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材と、第1垂直材と第2垂直材との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られた第2トラス構造物であり、第2トラス構造物の上端部が上方第2取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定され、第2トラス構造物の下端部が下方第2取付位置に所定の固定手段を介して強固に固定されているとともに、第2水平材の後端部が第2トラス構造物の第1垂直材に強固に固定されている。
【0020】
本発明の他の一例としては、第1および第2型枠パネルが所定面積の対向面および当接面と上下面と両側面とを有する6面体であり、第1および第2型枠パネルの6面には、それら型枠パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともにそれら型枠パネル全体の強度を増加させる合成樹脂が塗布されている。
【0021】
本発明の他の一例としては、合成樹脂がイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化した前記ポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層がそれら型枠パネルの6面に形成されている。
【0022】
本発明の他の一例としては、建造物が既設のそれであり、型枠構造物が既設の建造物に作られる鉄筋コンクリート製の補強壁の構築に使用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる型枠構造物によれば、第1および第2型枠パネルの前後方向前方および後方に固定されて上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1および第2縦架設材を有し、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧による第1および第2型枠パネルの前後方向前方や後方への膨隆や湾曲を第1および第2縦架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときの第1および第2型枠パネルの変形を防ぐことができる。また、第1および第2縦架設材の前後方向前方および後方に位置しつつそれら縦架設材に固定されて横方向へ延びるとともに上下方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1および第2横架設材を有し、空間に打設されたコンクリートの側圧によるそれら縦架設材の前後方向前方や後方への膨隆や湾曲、横方向への撓みをそれら横架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのそれら縦架設材の変形を防ぐことができる。さらに、第1および第2横架設材の前後方向前方および後方に設置されて横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の第1および第2支持架設材を有し、空間に打設されたコンクリートの側圧によるそれら横架設材の前後方向前方や後方への膨隆や湾曲をそれら支持架設材が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときの横架設材の変形を防ぐことができ、それらの結果として、第1および第2縦架設材や第1および第2横架設材、第1および第2支持架設材によって第1および第2型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧がそれら型枠パネルに作用したとしても互いに対向するパネルどうしの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、第1および第2縦架設材と第1および第2横架設材と第1および第2支持架設材とを利用することで、第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧にそれらパネルが十分に耐えることができ、それらパネルどうしの平行状態を維持することができるから、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たなコンクリート構造物を作ることができる。型枠構造物は、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。
【0024】
第1傾斜材の上端部が第1縦架設材の近傍に延びる第1横架設材に押圧下に密着固定され、第1縦架設材と第1傾斜材と第1水平材とから第1三角構造物が形成され、第2傾斜材の上端部が第2縦架設材の近傍に延びる第2横架設材に押圧下に密着固定され、第2縦架設材と第2傾斜材と第2水平材とから第2三角構造物が形成されている型枠構造物は、第1および第2三角構造物が優れた形態維持機能を発揮し、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるそれらパネルの前後方向前方や後方への膨隆や湾曲、第1および第2縦架設材の前後方向前方や後方への膨隆や湾曲、横方向への撓み、第1および第2横架設材の前後方向前方や後方への膨隆や湾曲を第1および第2三角構造物が押さえるから、それらパネルやそれら縦架設材、それら横架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧がそれら型枠パネルに作用したとしてもそれらパネルどうしの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、第1および第2三角構造物を利用することで、第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧にそれらパネルが十分に耐えることができ、それらパネルどうしの平行状態を維持することができるから、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たなコンクリート構造物を作ることができる。
【0025】
上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルの1つのグループに少なくとも1つの第1支持架設材が設置され、上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルの1つのグループに少なくとも1つの第2支持架設材が設置されている型枠構造物は、上下方向へ一連に並ぶ第1および第2型枠パネルのグループ毎に最低1つの支持架設材が設置されるから、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧がグループを形成する個々の型枠パネルに作用したとしても、第1および第2支持架設材によってパネルや縦架設材、横架設材の変形を防ぐことができ、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。型枠構造物は、第1および第2縦架設材と第1および第2横架設材と第1および第2支持架設材とを利用することで、第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧にそれらパネルが十分に耐えることができ、それらパネルどうしの平行状態を維持することができるから、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たなコンクリート構造物を作ることができる。
【0026】
第1および第2傾斜材の下端部が構築箇所下部に回転可能に固定され、第1および第2傾斜材がその下端部を中心に構築箇所下部に対して上下方向へ旋回可能であるとともに構築箇所下部に対する傾斜角度を変更可能である型枠構造物は、第1および第2傾斜材の構築箇所下部に対する傾斜角度を変更することで、上下方向へ並ぶ横架設材のいずれかのそれにそれら傾斜材の上端部を押圧下に密着させることができるから、上下方向へ並ぶ第1および第2型枠パネルに作用するコンクリートの側圧を押さえるのに最適な横架設材を支持架設材に支持させることができる。型枠構造物は、第1および第2傾斜材の上端部を固定する横架設材を選択することで、上下方向へ並ぶ第1および第2型枠パネルのうちのコンクリートの側圧が最も強く作用するそれに設置された横架設材を支持架設材によって支持することができるから、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、それら縦架設材やそれら横架設材、それら支持架設材によって第1および第2型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0027】
第1傾斜材が第1横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有し、第2傾斜材が第2横架設材と構築箇所下部との間で伸縮可能な伸縮機構を有する型枠構造物は、第1および第2傾斜材の下端部を構築箇所下部に固定するとともにそれら傾斜材の上端部を横架設材に当接させた後、伸縮機構を利用してそれら傾斜材を伸長させることで、第1および第2傾斜材を構築箇所下部と横架設材との間で突っ張らせることができ、それら傾斜材が横架設材をパネルに向かって押圧するから、横架設材を支持架設材によって確実に支持することができるとともに、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧による横架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0028】
少なくとも3つの第1縦架設材が上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループに設置され、2つの第1縦架設材が第1型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの第1縦架設材が第1型枠パネルの中央部に配置され、少なくとも3つの第2縦架設材が上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループに設置され、2つの第2縦架設材が第2型枠パネルの上下方向へ延びる両側部に配置され、1つの第2縦架設材が第2型枠パネルの中央部に配置されている型枠構造物は、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が個々のパネルの全体に満遍なく作用するが、1枚のパネルの一方の側部に1本の縦架設材が配置され、1枚のパネルの他方の側部に1本の縦架設材が配置されるとともに、1枚のパネルの中央部に1本の縦架設材が配置されるから、コンクリートの側圧によるパネルの膨隆や湾曲がそれら縦架設材によって十分に押さえられ、空間にコンクリートを打設したときのパネルの変形を確実に防ぐことができる。型枠構造物は、1枚のパネルの両側部と中央部とに縦架設材を設置することで、それらパネルがコンクリートの側圧に十分に耐えることができるから、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができ、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たなコンクリート構造物を作ることができる。
【0029】
横方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループに少なくとも1つの第1横架設材が設置され、横方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループに少なくとも1つの第2横架設材が設置されている型枠構造物は、パネルの1つに必ず1つの横架設材が設置され、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの膨隆や湾曲、それら縦架設材の膨隆や横方向への撓みが横架設材によって押さえられるから、横架設材によってパネルや縦架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0030】
上下方向下方に位置する型枠パネルに対する横架設材の設置本数が上下方向上方に位置するパネルに対する横架設材のそれよりも多い型枠構造物は、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、下方に位置するパネルに対する横架設材の設置本数が多いから、そのパネルの膨隆や湾曲、縦架設材の膨隆や横方向への撓みが横架設材によって押さえられ、それら横架設材によってパネルや縦架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0031】
2つの横架設材が型枠パネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの横架設材が型枠パネルの中央部に配置されている型枠構造物は、パネルの中央部に位置する横架設材によってパネルの中央部と縦架設材とが押さえられるとともに、パネルの上下端部に位置する横架設材によってパネルの上下端部と縦架設材とが押さえられるから、それら横架設材によってパネルや縦架設材の変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0032】
第1傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、第2傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループのうちの一番下に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている型枠構造物は、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、一番下に位置するパネルに対して設置された横架設材に傾斜材の上端部を押圧下に密着固定させることで、大きな側圧を受けるパネルに対して設置された横架設材を支持架設材に支持させることができ、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、第1および第2縦架設材や第1および第2横架設材、第1および第2支持架設材によってそれら型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0033】
第1傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第1型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第1型枠パネルに対して設置された第1横架設材に固定され、第2傾斜材の上端部が上下方向へ一連に並ぶ第2型枠パネルのグループのうちの下から2番目に位置する第2型枠パネルに対して設置された第2横架設材に固定されている型枠構造物は、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧が下方に位置するパネルに大きく作用するが、下から2番目に位置するパネルに対して設置された横架設材に傾斜材の上端部を押圧下に密着固定させることで、大きな側圧を受けるパネルに対して設置された横架設材を支持架設材に支持させることができ、空間にコンクリートを打設したときのその横架設材の変形を防ぐことができ、その結果として、第1および第2縦架設材や第1および第2横架設材、第1および第2支持架設材によってそれら型枠パネルの変形を防ぐことができ、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それらパネルどうしの平行状態を維持することができる。
【0034】
第1および第2縦架設材が上下方向へ直状に延びる第1および第2垂直材とそれら垂直材の間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材とから作られた第1および第2トラス構造物であり、それらトラス構造物の上端部が上方第1および第2取付位置に強固に固定され、それらトラス構造物の下端部が下方第1および第2取付位置に強固に固定されているとともに、第1水平材の後端部が第1トラス構造物の第1垂直材に強固に固定され、第2水平材の後端部が第2トラス構造物の第1垂直材に強固に固定されている型枠構造物は、互いに対向する第1および第2型枠パネルの間の空間にコンクリートを打設したときのコンクリートの側圧によるパネルの膨隆や湾曲をパネルに対向するそれらトラス構造物が押さえるから、空間にコンクリートを打設したときのパネルの変形を確実に防ぐことができる。型枠構造物は、第1および第2トラス構造物を利用することで、第1および第2型枠パネルの間の空間に打設されたコンクリートの側圧にパネルが十分に耐えることができるから、それらパネルどうしの平行状態を維持することができ、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たなコンクリート構造物を作ることができる。
【0035】
第1および第2型枠パネルが、所定面積の対向面および当接面と上下面と両側面とを有する6面体であり、第1および第2型枠パネルのコンクリートに対する摩擦抵抗を低下させるとともにそれらパネル全体の強度を増加させる合成樹脂がそれらパネルの6面に塗布されている型枠構造物は、合成樹脂を塗布することによってパネルの6面を平滑にすることができ、それによって6面のコンクリートに対する摩擦抵抗が低下するから、打設されたコンクリートを養生した後、型枠構造物を解体するときに、硬化したコンクリートからパネルを容易に取り外すことができる。型枠構造物は、それらパネルの強度が合成樹脂によって増加し、使用中におけるパネルの座屈や破損、曲がり等の変形が防止されるから、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それら型枠パネルの変形を防ぐことができる。また、パネルの6面の平滑度が合成樹脂によって維持されるとともに、パネルが部分的に変形することはないから、使用済みのパネルを繰り返して使用することができ、型枠構造物にかかるコストを押さえることができる。
【0036】
合成樹脂がイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂であり、硬化したポリウレア樹脂による所定厚みの平滑な被膜層がそれら型枠パネルの6面に形成されている型枠構造物は、硬化したポリウレア樹脂によってそれらパネルの6面に所定厚みの平滑な被膜層が形成され、それによって6面のコンクリートに対する摩擦抵抗が低下するから、打設されたコンクリートを養生した後、型枠構造物を解体するときに、硬化したコンクリートからパネルを容易に取り外すことができる。型枠構造物は、それらパネルの強度がポリウレア樹脂の被膜層によって増加し、使用中におけるパネルの座屈や破損、曲がり等の変形が防止されるから、コンクリートの側圧が第1および第2型枠パネルに作用したとしても、それら型枠パネルの変形を防ぐことができる。また、パネルの6面の平滑度がポリウレア樹脂の被膜層によって維持されるとともに、パネルが部分的に変形することはないから、使用済みのパネルを繰り返して使用することができ、型枠構造物にかかるコストを押さえることができる。
【0037】
建造物が既設のそれであり、既設の建造物に作られる鉄筋コンクリート製の補強壁の構築に使用される型枠構造物は、それを使用することで、既設の建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の補強壁を新設することができる。型枠構造物は、それを組み立てる際に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく鉄筋コンクリート製の補強壁を作ることができるとともに、鉄筋コンクリート製の補強壁を手間を要さず廉価に作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
組み立てられた型枠構造物10Aの一例を示す正面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかる型枠構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、組み立てられた型枠構造物10Aの背面図であり、
図3は、組み立てられた型枠構造物10Aの側面図である。
図4は、一例として示す第1および第2型枠パネル17a,18bの斜視図であり、
図5は、
図4の5−5線端面図である。
図6は、第1支持架設材25aの拡大斜視図であり、
図7は、第2支持架設材26aの拡大斜視図である。
【0040】
図1〜3では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(
図1,2のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(
図3のみ)で示す。
図3では、前後方向後方を矢印C1で示し、前後方向前方を矢印C2で示す。
図3の側面図では、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12にコンクリート13が打設され、コンクリート13に埋設された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
図4では、1つのパネル17a,18bのみを示す。なお、第2型枠パネル18a〜18iが第1型枠パネル17a〜17iと異なるところはパネル18fに打設口19が作られ、パネル18a,18g,18iに確認窓20が作られている点であり、その他の構成は同一である。
【0041】
型枠構造物10Aは、既設の建物(建造物)の耐震補強壁11(コンクリート構造物)の構築箇所に組み立てられ、構築箇所にコンクリート13を打設して新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作るために使用される。耐震補強壁11を作る構築箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠構造物10Aを組み立て、型枠構造物10Aの内側(第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間)の空間12にコンクリート13を打設する。打設したコンクリート13を所定期間養生した後、組み立てた型枠構造物10Aを解体(分解)することで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。
【0042】
なお、
図1,2では、建物の柱14と梁(天井梁15A、床梁15B)との間に耐震補強壁11を構築する場合を図示しているが、柱と梁との間のみならず、型枠構造物10A(後記する型枠構造物10Bを含む)を使用することで、壁梁の間や床スラブの間等のあらゆる箇所に耐震補強壁を作ることができる。型枠構造物10Aは、第1および第2アングル材16A,16Bと、複数の第1型枠パネル17a〜17iおよび複数の第2型枠パネル18a〜18iと、複数の第1トラス構造物21a〜21i(第1縦架設材)および複数の第2トラス構造物22a〜22i(第2縦架設材)と、複数の第1横架設材23a〜23cおよび複数の第2横架設材24a〜24cと、複数の第1支持架設材25a〜25cおよび複数の第2支持架設材26a〜26cとから形成されている。
【0043】
第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iは、所定の厚み寸法を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。第1型枠パネル17a〜17iは、第2型枠パネル18a〜18iに対向する所定面積の対向面27と、対向面27の反対側に位置して第1トラス構造物21a〜21i(第1垂直材)に当接する所定面積の当接面28と、上下面29,30および両側面31,32とを有する6面体である。第2型枠パネル18a〜18iは、第1型枠パネル17a〜17iに対向する所定面積の対向面27と、対向面27の反対側に位置して第2トラス構造物22a〜22i(第2垂直材)に当接する所定面積の当接面28と、上下面29,30および両側面31,32とを有する6面体である。
【0044】
なお、それら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法に特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法、厚み寸法等を考慮した構造計算によってパネル17a〜17i,18a〜18iの各寸法が決定される。また、それら寸法の異なる各種複数のパネル17a〜17i,18a〜18iを用意し、型枠構造物10Aを組み立てる際にそれらを適宜組み合わせて使用することもできる。
【0045】
型枠パネル17a〜17i,18a〜18iは、寸法が規定されたそれらがその製造工場において製造され、耐震補強壁11の構築現場に搬送された後、そのまま使用される場合の他、構築現場においてそれを所望の寸法に切断し、構築する耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせて使用することもできる。型枠構造物10Aは、耐震補強壁11の構築現場において、型枠パネル17a〜17i,18a〜18iを所望の寸法に加工(切断)し、パネル17a〜17i,18a〜18iの上下方向の寸法や横方向の寸法を自由に変えることができるから、鋼材型枠等のあらかじめ寸法が決まった型枠部材と比較し、耐震補強壁11の上下方向の寸法や横方向の寸法にあわせた型枠構造物10Aを容易に組み立てることができ、それぞれ上下方向の寸法や横方向の寸法が異なる既設の建物(建造物)の耐震改修に好適に使用することができるとともに、それを使用して構造計算どおりの耐震補強壁11を構築することができる。
【0046】
第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iは、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等から作られている。それら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iには、
図4,5に示すように、その6面27〜32にイソシアネートと特殊アミンとからなるポリウレア樹脂33(合成樹脂)が塗布(スプレー塗布)されている。それら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32には、硬化したポリウレア樹脂33による所定厚みの平滑な被膜層が形成されている。それら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32に塗布されたポリウレア樹脂17a〜17i,18a〜18iによって6面27〜32の凹凸が修正され、6面27〜32が平滑に加工されている。
【0047】
第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iは、硬化したポリウレア樹脂33によって形成された被膜層により、6面27〜32における摩擦抵抗が大幅に低下し、養生後のコンクリート13が6面27〜32に付着することなく、コンクリート13に対する離型が容易である。さらに、硬化したポリウレア樹脂33によって形成された被膜層により、パネル17a〜17i,18a〜18iの強度が大幅に増加し、パネル17a〜17i,18a〜18iを上下方向へ重ねたときのその座屈や破損が防止されるのみならず、パネル17a〜17i,18a〜18iの曲がり変形や部分的な凹み、部分的な出っ張りが防止される。
【0048】
なお、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iにポリウレア樹脂33が塗布されていなくてもよい。また、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iが強化プラスチックや透明な合成樹脂の板、木材(ベニヤ板)から作られていてもよい。この場合においても、パネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32にポリウレア樹脂33が塗布されることが好ましい。また、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iには、ポリウレア樹脂33ではなく、その6面27〜32を平滑にすることが可能であれば、他の熱可塑性合成樹脂(ポリウレタンやポリスチレン、強化プラスチック用塗料等)や熱硬化性合成樹脂を塗布することもできる。
【0049】
それら第1型枠パネル17a〜17iは、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁15Aの底面(構築箇所上部)(なお、床スラブに設置する場合は、天井の床スラブの底面)の正確に位置決め(墨出し)された上方第1取付位置34(上方第1墨出し位置)と構築箇所の床梁15Bの頂面(構築箇所下部)(なお、床スラブに設置する場合は、床の床スラブの頂面)の正確に位置決め(墨出し)された下方第1取付位置35(下方第1墨出し位置)との間に設置されている。
【0050】
第1型枠パネル17a〜17iは、下方第1取付位置35から上方第1取付位置34に向かって最下に位置する第1型枠パネル17a,17d,17g→中間に位置する第1型枠パネル17b,17e,17h→最上に位置する第1型枠パネル17c,17f,17iの順に3枚のそれらが上下方向へ並んでいる。さらに、3枚のパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iを1つのグループとしたときに、その3つのグループG1〜G3が横方向へ並んでいる。なお、上下方向へ並ぶパネルの数や横方向へ並ぶパネルのグループ数に特に限定なく、構築する耐震補強壁11の各寸法に合わせて数やグループ数を適宜決定する。
【0051】
第1型枠パネル17a〜17iのうち、パネル17c,17f,17iの上面29が天井梁15Aの底面に当接(密着)し、パネル17c,17iの側面31,32が柱14に当接(密着)するとともに、横方向へ隣接するパネル17c,17f,17iの側面31,32どうしが当接(密着)し、パネル17c,17f,17iの下面30がパネル17b,17e,17hの上面29に当接(密着)している。パネル17b,17hの側面31,32が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル17b,17e,17hの側面31,32どうしが当接(密着)するとともに、パネル17b,17e,17hの下面30がパネル17a,17d,17gの上面29に当接(密着)している。パネル17a,17gの側面31,32が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル17a,17d,17gの側面31,32どうしが当接(密着)するとともに、パネル17a,17d,17gの下面30が床梁15Bの頂面に当接(密着)している。
【0052】
第1型枠パネル17a〜17iの当接面28には、前後方向前方へ突出して横方向へ並ぶ把持可能な2つの取っ手36が取り付けられている。それら取っ手36は、コ字状の金属棒であり、その両端部がパネル17a〜17iを貫通するとともに、パネル17a〜17iの対向面27に配置された固定板に固定されている。取っ手36には、連結布紐37(連結部材)が結び付けられている。なお、連結部材には、布紐37の他に、伸縮性を有するゴムバンド、プラスチックバンド、金属線バンド等を使用することもできる。
【0053】
それら第2型枠パネル18a〜18iは、建物の内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁15Aの底面(構築箇所の上部)(なお、床スラブに設置する場合は、天井の床スラブの底面)の正確に位置決め(墨出し)された上方第2取付位置38(上方第2墨出し位置)と構築箇所の床梁15Bの頂面(構築箇所の下部)(なお、床スラブに設置する場合は、床の床スラブの頂面)の正確に位置決め(墨出し)された下方第2取付位置39(下方第2墨出し位置)との間に設置されている。上方第2取付位置38は、上方第1取付位置34から前後方向前方へ所定寸法離間し、下方第2取付位置39は、下方第1取付位置35から前後方向前方へ所定寸法離間している。なお、上方第1取付位置34と上方第2取付位置38との離間寸法は下方第1取付位置35と下方第2取付位置39とのそれと同一であり、上方第1取付位置34と下方第1取付位置35とが上下方向において略正確に一致し、上方第2取付位置38と下方第2取付位置39とが上下方向において略正確に一致している。
【0054】
第2型枠パネル18a〜18iは、下方第2取付位置39から上方第2取付位置38に向かって最下に位置する第2型枠パネル18a,18d,18g→中間に位置する第2型枠パネル18b,18e,18h→最上に位置する第2型枠パネル18c,18f,18iの順に3枚のそれらが上下方向へ並んでいる。さらに、3枚のパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iを1つのグループとしたときに、その3つのグループG1〜G3が横方向へ並んでいる。なお、上下方向へ並ぶパネルの数や横方向へ並ぶパネルのグループ数に特に限定なく、構築する耐震補強壁11の各寸法に合わせて数やグループ数を適宜決定する。
【0055】
第2型枠パネル18a〜18iのうち、パネル18c,18f,18iの上面29が天井梁15Aの底面に当接(密着)し、パネル18c,18iの側面31,32が柱14に当接(密着)するとともに、横方向へ隣接するパネル18c,18f,18iの側面31,32どうしが当接(密着)し、パネル18c,18f,18iの下面30がパネル18b,18e,18hの上面29に当接(密着)している。パネル18b,18hの側面31,32が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル18b,18e,18hの側面31,32どうしが当接(密着)するとともに、パネル18b,18e,18hの下面30がパネル18a,18d,18gの上面29に当接(密着)している。パネル18a,18gの側面31,32が柱14に当接(密着)し、横方向へ隣接するパネル18a,18d,18gの側面31,32どうしが当接(密着)するとともに、パネル18a,18d,18gの下面30が床梁15Bの頂面に当接(密着)している。
【0056】
第2型枠パネル18a〜18iの当接面28には、前後方向前方へ突出して横方向へ並ぶ把持可能な2つの取っ手36が取り付けられている。それら取っ手36は、コ字状の金属棒であり、その両端部がパネル18a〜18iを貫通するとともに、パネル18a〜18iの対向面27に配置された固定板に固定されている。取っ手36には、連結布紐37(連結部材)が結び付けられている。
【0057】
第2型枠パネル18fには、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12(スペース)にコンクリート13を打設する(流入させる)ための打設口19が作られている。打設口19では、パネル18fが四角形にくり抜かれ、そこに金属製の口筒を有する四角形の鉄板が固定されている。なお、2枚以上の第2型枠パネル18a〜18iに打設口19が作られていてもよく、第1型枠パネル17a〜17iのいずれかに打設口19が作られていてもよい。第2型枠パネル18a,18g,18iには、空間12にコンクリート13を打設するときに、空間12へのコンクリート13の打設状態を確認可能な四角形の確認窓20が作られている。確認窓20では、パネル18a,18g,18iが四角形にくり抜かれ、そこに透明な四角形の合成樹脂板が嵌め込まれている。なお、第1型枠パネル17a〜17iのいずれかに確認窓20が作られていてもよい。
【0058】
第1トラス構造物21a〜21i(第1縦架設材)は、それら第1型枠パネル17a〜17iの前後方向後方に位置して上下方向へ直状に延びているとともに、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2トラス構造物22a〜22i(第2縦架設材)は、それら第2型枠パネル18a〜18iの前後方向前方に位置して上下方向へ直状に延びているとともに、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iのグループG1〜G3の1つやパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3の1つには、3つのトラス構造物21a〜21c,21d〜21f,21g〜21iが設置されている。
【0059】
1つのトラス構造物21a,21d,21g,22a,22d,22gがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iやパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の一方の側縁部に配置され、1つのトラス構造物21c,21f,21i,22c,22f,22iがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iやパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の他方の側縁部に配置されているとともに、1つのトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iやパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の横方向中央部に配置されている。なお、パネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iやパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3の1つに対するトラス構造物の設置数について特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法や厚み寸法、求められる強度等を考慮した構造計算により、グループG1〜G3の1つに対して設置するトラス構造物の数が決定される。
【0060】
第1トラス構造物21a〜21iや第2トラス構造物22a〜22iは、パネル17a〜17i,18a〜18iの当接面28に対向して上下方向へ直状に延びる第1垂直材40と、第1垂直材40から前後方向へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材41と、第1垂直材40と第2垂直材41との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材42と、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの高さ寸法を調節可能な寸法調節材43とから作られている。
【0061】
第1垂直材40や第2垂直材41、トラス材42は、それらが溶接によって強固に固着されている。第1垂直材40や第2垂直材41、トラス材42、寸法調節材43は、鋼材や鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られている。なお、縦架設材としては、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの他に、鋼材や鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の金属柱や他の形状の金属柱を使用することもできるとともに、H型鋼や角型鋼管(コラム)、I型鋼、C型鋼、溝型鋼等の鋼材を使用することもできる。
【0062】
寸法調節材43は、第1アングル材16Aや第2アングル材16Bの後記する固定プレート47を介して天井梁15Aの底面に固定される固定端部44と、第1垂直材40の側に位置して第1垂直40に対する上下方向の固定位置を調節可能な開口部45とを有する。なお、第1垂直材40の上端部の寸法調節材43の開口部45に対する固定位置を調節(固定ボルトおよびナットによって第1垂直材40の上端部を寸法調節材43の開口部45に固定)することにより、開口部45の長さ寸法の限度でトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの上下方向の高さ寸法を調節することができる。寸法調節材43によってトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの上下方向の寸法を調節することで、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの上下方向の寸法を耐震補強壁11の構築箇所の高さ寸法に一致させることができる。
【0063】
第1トラス構造物21a〜21iは、その上端部(寸法調節材43の固定端部45)が所定の固定手段を介して天井梁15Aの底面の位置決めされた上方第1取付位置34に固定されている。さらに、その下端部46(第1垂直材40の下端部)が所定の固定手段を介して床梁15Bの頂面の位置決めされた下方第1取付位置35に固定されている。第2トラス構造物22a〜22iは、その上端部(寸法調節材43の固定端部45)が所定の固定手段を介して天井梁15Aの底面の位置決めされた上方第2取付位置38に固定されている。さらに、その下端部46(第1垂直材40の下端部)が所定の固定手段を介して床梁15Bの頂面の位置決めされた下方第2取付位置39に固定されている。
【0064】
固定手段の具体例としては、第1および第2アングル材16A,16B、アンカーボルト、アジャスターボルトを使用し、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iを天井梁15Aの底面や床梁15Bの頂面に固定する。第1アングル材16Aや第2アングル16Bは、鋼材や鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られている。アングル材16A,16Bには、上下方向へ延びるとともに横方向へ所定寸法離間して並ぶ複数の固定プレート47が溶接によって固定されている。それら固定プレート47には、第1および第2トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの上端部(寸法調節材43の固定端部45)と下端部46とが固定される。それら固定プレート47は、鋼材や鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られ、アングル材16A,16Bの変形を防止する補強リブとして機能する。
【0065】
天井梁15Aの底面の位置決めされた上方第1取付位置34(パネル17a〜17iの当接面28の直後の位置)や上方第2取付位置38(パネル18a〜18iの当接面28の直前の位置)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールが穿孔され、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置し、第1アングル材16Aや第2アングル材16Bに形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着することで、第1アングル材16Aが上方第1取付位置34に強固に固定され、第2アングル材16Bが上方第2取付位置38に強固に固定される。
【0066】
床梁15Bの頂面の位置決めされた下方第1取付位置35(パネル17a〜17iの当接面28の直後の位置)や下方第2取付位置39(パネル18a〜18iの当接面28の直前の位置)に横方向へ並ぶ複数のアンカーホールが穿孔され、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置し、第1アングル材16Aや第2アングル材16Bに形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトをアンカーホールに螺着することで、第1アングル材16Aが下方第1取付位置35に強固に固定され、第2アングル材16Bが下方第2取付位置39に強固に固定される。
【0067】
次に、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの上下方向の高さ寸法を調節しつつ、アングル材16Aの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔とトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの寸法調節材43の固定端部44に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着することで、固定端部44がアングル材16Aの固定プレート47に強固に固定される。さらに、アングル材16Bの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔とトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第1垂直材40の下端部に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着することで、第1垂直材40の下端部がアングル材16Bの固定プレート47に強固に固定される。トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第1垂直材40が型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの当接面28に当接(密着)しており、それらトラス構造物21a〜21i,22a〜22iにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向前方や後方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0068】
トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第2垂直材41には、取っ手36から延びる連結布紐37(連結部材)が結び付けら、それらパネル17a〜17i,18a〜18iの取っ手36とトラス構造物21a〜21i,22a〜22iとが連結布紐37を介して連結され、パネル17a〜17iのコンクリート打設前におけるパネル18a〜18iの側への倒れ込みが防止されるとともに、パネル18a〜18iのコンクリート打設前におけるパネル17a〜17iの側への倒れ込みが防止される。なお、連結部材としてゴムバンドを使用する場合、そのゴムバンドを取っ手36から伸長させた状態でトラス構造物21a〜21i,22a〜22iに引っ掛ける。
【0069】
第1横架設材23a〜23cは、第1トラス構造物21a〜21iの前後方向後方(トラス構造物21a〜21iの第2垂直材41の直後)に位置しつつトラス構造物21a〜21iに固定されて横方向へ直状に延びているとともに、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2横架設材24a〜24cは、第2トラス構造物22a〜22iの前後方向後方(トラス構造物22a〜22iの第2垂直材41の直前)に位置しつつトラス構造物22a〜22iに固定されて横方向へ直状に延びているとともに、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。それら横架設材23a〜23c,24a〜24cは、
図3示すように、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属筒であるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。横架設材23a〜23c,24a〜24cは、固定金具48を介してトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第2垂直材41に強固に固定されている。
【0070】
型枠構造物10Aでは、1つの第1横架設材23aが横方向へ並ぶ第1型枠パネル17a,17d,17gの後方に配置され、1つの第1横架設材23bが横方向へ並ぶパネル17b,17e,17hの後方に配置されているとともに、1つの第1横架設材23cが横方向へ並ぶパネル17c,17f,17iの後方に配置されている。また、1つの第2横架設材24aが横方向へ並ぶ第2型枠パネル18a,18d,18gの前方に配置され、1つの第2横架設材24bが横方向へ並ぶパネル18b,18e,18hの前方に配置されているとともに、1つの第2横架設材24cが横方向へ並ぶパネル18c,18f,18iの前方に配置されている。
【0071】
なお、型枠構造物10Aに3つの第1横架設材23a〜23cおよび3つの第2横架設材24a〜24cが設置されているが、型枠構造物10Aに設置する横架設材の本数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によって使用する横架設材に本数が決定される。たとえば、横方向へ一連に並ぶパネルのグループに3つの横架設材を設置する場合、2つの横架設材がパネルの横方向へ延びる上下端部に配置され、1つの横架設材がパネルの中央部に配置される。
【0072】
それら横架設材23a〜23c,24a〜24cにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれらトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの変形や横方向への撓みが防止される。その結果、コンクリート13の側圧によるそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0073】
第1支持架設材25a〜25cは、第1横架設材23a〜23cの前後方向後方(第1横架設材23a〜23cの直後)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2支持架設材26a〜26cは、第2横架設材24a〜24cの前後方向前方(第2横架設材24a〜24cの直前)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3に1つの第1支持架設材25a〜25cが設置され、上下方向へ一連に並ぶパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3に1つの第2支持架設材26a〜26cが設置されている。なお、グループG1〜G3の1つに設置する支持架設材の個数に特に限定はなく、構築する耐震補強壁11の横方向の寸法や厚み寸法等を考慮した構造計算によってグループG1〜G3の1つに設置する支持架設材に個数が決定される。
【0074】
第1支持架設材25a〜25cは、
図6に示すように、第1横架設材23bから床梁15Bの頂面に向かって下り勾配に延びる第1傾斜材49と、第1型枠パネル17a,17d,17gから前後方向後方へ延びる第1水平材50とから形成されている。第2支持架設材26a〜26cは、
図7に示すように、第2横架設材24bから床梁15Bの頂面に向かって下り勾配に延びる第2傾斜材51と、第2型枠パネル18a,18d,18gから前後方向前方へ延びる第2水平材52とから形成されている。それら傾斜材49,51やそれら水平材50,52は、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が円形の中空の金属パイプであるが、鉄やアルミ、真鍮、合金等の金属から作られた断面形状が四角形の中空の金属管を使用することもできるとともに、H型鋼やI型鋼、角型鋼材等の鋼材を使用することもできる。
【0075】
第1および第2傾斜材49,51は、トラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hの近傍に延びる横架設材23b,24bに押圧下に密着固定された上端部53と、パネル17a,17d,17g,18a,18d,18gから前後方向へ離間して床梁15Bの頂面に固定された下端部55と、上下端部53,55の間に延びる中間部54とを有する。傾斜材49,51の上端部53は、上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3のうちの下から2番目に位置するパネル17b,17e,17h,18b,18e,18hに対して設置された横架設材23b,24bに押圧下に密着している。傾斜材49,51の上端部53には、横架設材23b,24bと床梁15Bの頂面との間で伸縮可能な伸縮機構56が作られている。なお、傾斜材49,51の上端部53が上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3のうちの一番下に位置するパネル17a,17d,17g,18a,18d,18gに対して設置された横架設材23a,24aに押圧下に密着していてもよい。
【0076】
伸縮機構56は、傾斜材49,51の上端部53(金属パイプの上端部内側)に作られた雌螺子(図示せず)と、上端部53と横架設材23b,24bとの間に配置されて前後方向へ延びる雄螺子部材57とから形成されている。雄螺子部材57の露出部分には、横架設材23b,24bの固定金具48に密着する密着板58が連接されている。伸縮機構56では、雄螺子部材57が上端部53の雌螺子に螺着されている。伸縮機構56では、雄螺子部材57を時計回り方向へ回転させることで、雄螺子部材57が傾斜材49,51(金属パイプ)の内部に次第に進入し、雄螺子部材57を含む傾斜材49,51の長さが縮まり、逆に、雄螺子部材57を反時計回り方向へ回転させることで、雄螺子部材57が傾斜材49,51(金属パイプ)の内部から次第に露出し、雄螺子部材57を含む傾斜材49,51の長さが伸びる。傾斜材49,51は、伸縮機構56を利用してその長さを伸長させることで、横架設材23b,24bと床梁15Bの頂面との間で突っ張る突っ張りとして機能し、横架設材23b,24bをパネル17b,17e,17h,18b,18e,18hに向かって押圧する。
【0077】
第1および第2傾斜材49,51の下端部55は、床梁15Bの頂面に回転可能に固定されている。下端部55は、
図6,7に示すように、床梁15Bの頂面に固定された固定座金59の軸受けに軸60を介して回転可能に取り付けられている。固定座金59は、床梁15Bの頂面に作られたアンカーホール(樹脂アンカーや機械式アンカー)に螺着されたアンカーボルトによって床梁15Bの頂面に強固に固定されている。傾斜材49,51は、その下端部55が床梁15Bの頂面に回転可能に固定されているから、下端部55を中心に床梁15Bの頂面に対して上下方向へ旋回可能であるとともに、床梁15Bの頂面に対する傾斜角度を変更可能である。
【0078】
第1および第2水平材50,52は、床梁15Bの頂面から上方へわずかに離間している。それら水平材50,52は、パネル17a,17d,17g,18a,18d,18gから前後方向後方や前方へ離間して傾斜材49,51の下端部55に固定された前端部61と、パネル17a,17d,17g,18a,18d,18gの側に位置してトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hに固定された後端部63と、前後端部61,63の間に延びる中間部62とを有する。
【0079】
水平材50,52の前端部61は、固定金具64を介して傾斜材49,51の下端部55に強固に固定されている。水平材50,52の後端部63は、固定金具65を介してトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hの第1垂直材40に強固に固定されている。型枠構造物10Aでは、トラス構造物21b,21e,21hと第1支持架設材25a〜25cの第1傾斜材49および第1水平材50とから第1三角構造物(トラス構造)が形成され、第2トラス構造物22b,22e,22hと第2支持架設材26a〜26cの第2傾斜材51および第2水平材52とから第2三角構造物(トラス構造)が形成されている。
【0080】
それら支持架設材25a〜25c,26a〜26cにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧による横架設材23a〜23c,24a〜24cの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、横架設材23a〜23c,24a〜24cの変形が防止される。その結果、コンクリート13の側圧によるトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの変形や横方向への撓みが防止されるとともに、コンクリート13の側圧によるそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0081】
図8は、型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁11の施工手順の一例を示す図であり、
図9は、
図8の側面図である。
図10は、
図8から続く耐震補強壁11の施工手順を示す図であり、
図11は、
図10の側面図である。
図8,9では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(
図8のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(
図9のみ)で示す。なお、
図8,9は、アングル材設置工程が終了した状態を示し、
図10,11は、トラス構造物第1設置工程が終了した状態を示す。
図8,9では、配筋工程の図示を省略し、
図10,11では、配筋工程によって空間12に配筋された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
【0082】
鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11は、位置決め工程、配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)、横架設材設置工程、支持架設材設置工程の各工程を実施することで型枠構造物10Aを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠解体工程の各工程を実施することによって作られる。最初に位置決め工程を行う。
【0083】
位置決め工程では、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁15Aの底面(構築箇所上部)に第1アングル材16A、第1型枠パネル17a〜17i、第1トラス構造物21a〜21iを設置する上方第1取付位置34(上方第1墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床梁15Bの頂面(構築箇所下部)に第1アングル材16A、第1型枠パネル17a〜17i、第1トラス構造物21a〜21iを設置する下方第1取付位置35(下方第1墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)する。上方第1取付位置34を位置決めした後、その上方第1取付位置34に横方向へ延びる上方第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引くとともに、下方第1取付位置35を位置決めした後、その下方第1取付位置35に横方向へ延びる下方第1ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。
【0084】
さらに、建物内部の耐震補強壁11の構築箇所の天井梁15Aの底面(構築箇所上部)に第2アングル材16B、第2型枠パネル18a〜18i、第2トラス構造物22a〜22iを設置する上方第2取付位置38(上方第2墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)するとともに、床梁15Bの頂面(構築箇所下部)に第2アングル材16B、第2型枠パネル18a〜18i、第2トラス構造物22a〜22iを設置する下方第2取付位置39(下方第2墨出し位置)を正確に位置決め(墨出し)する。上方第2取付位置38は上方第1取付位置34から前後方向前方へ離間した箇所であり、その上方第2取付位置38に横方向へ延びる上方第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。下方第2取付位置39は下方第1取付位置35から前後方向前方へ離間した箇所であり、その下方第2取付位置39に横方向へ延びる下方第2ライン(墨出し線)(図示せず)を引く。上方第2取付位置38の上方第1取付位置34から前後方向前方への離間寸法および下方第2取付位置39の下方第1取付位置35から前後方向前方への離間寸法は同一である。
【0085】
天井梁15Aの底面に上方第1ラインおよび上方第2ラインを引くとともに、床梁15Bの頂面に下方第1ラインおよび下方第2ラインを引いた後、図示はしていないが、それらラインの間に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋する配筋工程を行う。なお、配筋工程では、既存の手順で鉄筋を第1ラインと第2ラインと間に据え付ける。ラインの間に鉄筋を配筋した後、アングル材設置工程を行う。なお、アングル材設置工程の後に配筋工程を行ってもよい。アングル材設置工程では、天井梁15Aの底面の上方第1取付位置34および床梁15Bの頂面の下方第1取付位置35に第1アングル材16Aを取り付けるとともに、天井梁15Aの底面の上方第2取付位置38および床梁15Bの頂面の下方第2取付位置39に第2アングル材16Bを取り付ける。
【0086】
アングル設置工程では、上方第1取付位置34の上方第1ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置するとともに、下方第1取付位置35の下方第1ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第1トラス構造物21a〜21iを上方第1ラインおよび下方第1ラインに正確に設置し得るように、第1アングル材16Aをそれらラインに配置し、第1アングル材16Aに形成されたボルト孔にアンカーボルト66を挿通するとともにそのアンカーボルト66を樹脂アンカーや機械式アンカーに螺着して第1アングル材16Aを上方第1取付位置34と下方第1取付位置35とに強固に固定する。
【0087】
上方第2取付位置38の上方第2ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置するとともに、下方第2取付位置39の下方第2ラインに沿って横方向へ並ぶ複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。次に、第2トラス構造物22a〜22iを上方第2ラインおよび下方第2ラインに正確に設置し得るように、第2アングル材16Bをそれらラインに配置し、第2アングル材16Bに形成されたボルト孔にアンカーボルト66を挿通するとともにそのアンカーボルト66を樹脂アンカーや機械式アンカーに螺着して第2アングル材16Bを上方第2取付位置38と下方第2取付位置39とに強固に固定する。
【0088】
上方第1取付位置34および下方第1取付位置35に第1アングル材16Aを取り付けるとともに、上方第2取付位置38および下方第2取付位置39に第2アングル材16Bを取り付けた後、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)を行う。トラス構造物第1設置工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねる第1型枠パネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iのグループG1〜G3に対応する位置に1つの第1トラス構造物17a,17d,17g(第1縦架設材)を取り付けるとともに、パネル設置工程において上下方向に重ねる第2型枠パネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3に対応する位置に1つの第2トラス構造物18a,18d,18g(第2縦架設材)を取り付ける。
【0089】
トラス構造物第1固定工程では、第1アングル材16Aの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔と第1トラス構造物17a,17d,17gの第1垂直材40の下端部46に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して第1垂直材40の下端部46を固定プレート47に強固に固定する。第1トラス構造物17a,17d,17gの上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材40の上端部の寸法調節材43の開口部45に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材40の上端部を寸法調節材43の開口部45に強固に固定する。第1垂直材40の上端部と寸法調節材43とは固定ボルトおよびナットを介して固定される。さらに、第1アングル材16Aの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔と寸法調節材43の固定端部44に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して寸法調節材43の固定端部44を固定プレート47に強固に固定する。第1トラス構造物17a,17d,17gを第1アングル材16Aに取り付けることで、トラス構造物17a,17d,17gが上方第1取付位置34と下方第1取付位置35との間に設置される。
【0090】
第2アングル材16Bの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔と第2トラス構造物18a,18d,18gの第1垂直材40の下端部46に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して第1垂直材40の下端部46を固定プレート47に強固に固定する。第2トラス構造物18a,18d,18gの上下方向の高さ寸法を調節するために、第1垂直材40の上端部の寸法調節材43の開口部45に対する固定位置を決める。固定位置を決めた後、その固定位置において第1垂直材40の上端部を寸法調節材43の開口部45に強固に固定する。第1垂直材40の上端部と寸法調節材43とは固定ボルトおよびナットを介して固定される。さらに、第2アングル材16Bの固定プレート47に穿孔されたボルト螺着孔と寸法調節材43の固定端部44に穿孔されたボルト螺着孔とにアジャスターボルトを螺着し、そのボルトにナットを螺着して寸法調節材43の固定端部44を固定プレート47に強固に固定する。第2トラス構造物18a,18d,18gを第2アングル材16Bに取り付けることで、トラス構造物18a,18d,18gが上方第2取付位置38と下方第2取付位置39との間に設置される。
【0091】
図12は、
図10から続く耐震補強壁11の施工手順を示す正面図であり、
図13は、
図12から続く耐震補強壁11の施工手順を示す背面図である。
図14は、
図13から続く耐震補強壁11の施工手順を示す正面図であり、
図15は、
図14から続く耐震補強壁11の施工手順を示す背面図である。
図16は、
図15の側面図である。なお、
図13は、パネル設置工程が終了した状態を示し、
図15,16は、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)が終了した状態を示す。
図16では、空間12に配筋された鉄筋の図示を省略している。
【0092】
第1および第2トラス構造物21a,21d,21g,22a,22d,22gを各取付位置34,35,38,39に設置した後、パネル設置工程を行う。パネル設置工程では、
図12に示すように、第1トラス構造物21aに対して3つの第1型枠パネル17a〜17cをパネル17a→パネル17b→パネル17cの順に設置し、第1トラス構造物21dに対して3つの第1型枠パネル17d〜17fをパネル17d→パネル17e→パネル17fの順に設置するとともに、第1トラス構造物21gに対して3つの第1型枠パネル17g〜17iをパネル17g→パネル17h→パネル17iの順に設置する。
【0093】
さらに、
図13に示すように、第2トラス構造物22aに対して3つの第2型枠パネル18a〜18cをパネル18a→パネル18b→パネル18cの順に設置し、第2トラス構造物22bに対して3つの第2型枠パネル18d〜18fをパネル18d→パネル18e→パネル18fの順に設置するとともに、第2トラス構造物22cに対して3つの第2型枠パネル18g〜18iをパネル18g→パネル18h→パネル18iの順に設置する。
【0094】
型枠パネル設置工程では、パネル17a,17d,17gの下面30が下方第1ライン(下方第1取付位置35)に位置し、パネル17c,17f,17iの上面29が上方第1ライン(上方第1取付位置34)に位置するように、トラス構造物21a,21d,21gの直後にそれらパネル17a〜17iを配置するとともに、パネル18a,18d,18gの下面30が下方第2ライン(下方第2取付位置39)に位置し、パネル18c,18f,18iの上面29が上方第2ライン(上方第2取付位置38)に位置するように、トラス構造物22a,22d,22gの直前にそれらパネル18a〜18iを配置する。型枠パネル設置工程では、天井梁15Aの底面の正確に位置決めされた上方第1取付位置34と床梁15Bの頂面の正確に位置決めされた下方第1取付位置35との間にパネル17a〜17iが設置され、天井梁15Aの底面の正確に位置決めされた上方第2取付位置38と床梁15Bの頂面の正確に位置決めされた下方第2取付位置39との間にパネル18a〜18iが設置される。
【0095】
第1トラス構造物21a,21d,21gの直後にそれらパネル17a〜17iを配置すると、パネル17a〜17iの当接面28がトラス構造物21a,21d,21gの第1垂直材40に当接する。第2トラス構造物22a,22d,22gの直前にそれらパネル18a〜18iを配置すると、パネル18a〜18iの当接面28がトラス構造物22a,22d,22gの第1垂直材40に当接する。型枠パネル17a〜17i,18a〜18iを設置した後、パネル17a〜17i,18a〜18iに取り付けられた取っ手36に連結布紐37(連結部材)を結び付けるとともに、その布紐37をトラス構造物21a,21d,21g,22a,22d,22gの第2垂直材41に結び付ける。パネル17a〜17i,18a〜18iを配置すると、トラス構造物21a,21d,21g,22a,22d,22gがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3の一方の側部に位置する。
【0096】
第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iを設置した後、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)を行う。トラス構造物第2固定工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねたパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3の直後にあらたに2つの第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iを取り付けるとともに、パネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の直前にあらたに2つの第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iを取り付ける。
【0097】
トラス構造物第2設置工程では、
図14に示すように、1つの第1トラス構造物21b,21e,21hがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの中央部に位置するようにそれらトラス構造物21b,21e,21hを上方第1取付位置34と下方第1取付位置35との間に設置するとともに、1つの第1トラス構造物21c,21f,21iがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの他方の側部に位置するようにそれらトラス構造物21c,21f,21iを上方第1取付位置34と下方第1取付位置35との間に設置する。
【0098】
また、
図15に示すように、1つの第2トラス構造物22c,22f,22iがパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの中央部に位置するようにそれらトラス構造物22c,22f,22iを上方第2取付位置38と下方第2取付位置39との間に設置するとともに、1つの第2トラス構造物22c,22f,22iがパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの他方の側部に位置するようにトラス構造物22c,22f,22iを上方第2取付位置38と下方第2取付位置39との間に設置する。
【0099】
トラス構造物第2設置工程における第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iや第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iの設置手順は、トラス構造物第1設置工程における第1トラス構造物21a,21d,21gや第2トラス構造物22a,22d,22gのそれと同一であるから、トラス構造物第1設置工程の説明を援用し、その説明は省略する。トラス構造物第2設置工程において第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iや第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iを設置すると、パネル17a〜17i,18a〜18iの当接面が第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iや第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iの第1垂直材40に当接する。
【0100】
なお、パネル17a〜17iに対するトラス構造物21a〜21iの固定位置はパネル18a〜18iに対するトラス構造物22a〜22iの固定位置と同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれらトラス構造物21a〜21i,22a〜22iが前後方向に対向する。また、第1トラス構造物21a〜21iが横方向へ略等間隔離間して並ぶとともに、第2トラス構造物22a〜22iが横方向へ略等間隔離間して並ぶ。
【0101】
2つの第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iや2つの第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iの設置した後、パネル17a〜17i,18a〜18iに取り付けられた取っ手36に連結布紐37を結び付けるとともに、その布紐37を第1トラス構造物21b,21c,21e,21f,21h,21iや第2トラス構造物22b,22c,22e,22f,22h,22iの第2垂直材41に結び付ける。
【0102】
図17は、
図15から続く耐震補強壁11の施工手順を示す正面図であり、
図18は、
図17から続く耐震補強壁11の施工手順を示す背面図である。
図19は、
図18の側面図であり、
図20は、空間12へのコンクリート13の打設を説明する図である。
図18,19は、横架設材設置工程が終了した状態を示す。
図19,20では、空間12に配筋された鉄筋の図示を省略している。
【0103】
トラス構造物第2設置工程によって第1トラス構造物21a〜21iや第2トラス構造物22a〜22iを設置した後、横架設材設置工程を行う。横架設材固定工程では、
図17〜19に示すように、横方向へ直状に延びる3つの第1横架設材23a〜23cを上下方向へ所定寸法離間させた状態で第1トラス構造物21a〜21iの直後に設置固定するとともに、横方向へ直状に延びる3つの第2横架設材24a〜24cを上下方向へ所定寸法離間させた状態で第2トラス構造物22a〜22iの直前に設置固定する。
【0104】
横架設材設置工程では、固定金具48を利用して第1横架設材23a〜23cを各第1トラス構造物21a〜21iの第2垂直材41に強固に固定する。それら第1横架設材23a〜23cを第1トラス構造物21a〜21iに固定すると、横架設材23aがパネル17a,17d,17gの前後方向後方であってパネル17a,17d,17gの中央部に位置し、横架設材23aが横方向へ一連に並ぶパネル17a,17d,17g全体を横切る。さらに、横架設材23bがパネル17b,17e,17hの前後方向後方であってパネル17b,17e,17hの中央部に位置し、横架設材23bが横方向へ一連に並ぶパネル17b,17e,17h全体を横切るとともに、横架設材23cがパネル17c,17f,17iの前後方向後方であってパネル17c,17f,17iの上下方向中央部に位置し、横架設材23cが横方向へ一連に並ぶパネル17c,17f,17i全体を横切る。
【0105】
固定金具48を利用して第2横架設材24a〜24cを各第2トラス構造物22a〜22iの第2垂直材41に強固に固定する。それら第2横架設材24aを第2トラス構造物22a〜22iに固定すると、横架設材24aがパネル18a,18d,18gの前後方向後方であってパネル18a,18d,18gの中央部に位置し、横架設材24aが横方向へ一連に並ぶパネル18a,18d,18g全体を横切る。さらに、横架設材24bがパネル18b,18e,18hの前後方向後方であってパネル18b,18e,18hの中央部に位置し、横架設材24bが横方向へ一連に並ぶパネル18b,18e,18h全体を横切るとともに、横架設材24cがパネル18c,18f,18iの前後方向後方であってパネル18c,18f,18iの上下方向中央部に位置し、横架設材24cが横方向へ一連に並ぶパネル18c,18f,18i全体を横切る。なお、パネル17a〜17iに対する第1横架設材23a〜23cの設置位置はパネル18a〜18iに対する第2横架設材24a〜24cの設置位置と略同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれら横架設材23a〜23c,24a〜24cが前後方向に対向する。
【0106】
第1および第2横架設材23a〜23c,24a〜24cを設置した後、支持架設材設置工程を行う。支持架設材設置工程では、
図1に示すように、横方向へ並ぶ複数の第1支持架設材25a〜25cを第1横架設材23bの前後方向後方(横架設材23bの直後)に設置するとともに、
図2に示すように、横方向へ並ぶ複数の第2支持架設材26a〜26cを第2横架設材24bの前後方向後方(横架設材24bの直後)に設置する。
【0107】
支持架設材設置工程では、上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3の略中央部に第1支持架設材25a〜25cを設置し、第1トラス構造物21b,21e,21h(縦架設材)と第1支持架設材25a〜25cの第1傾斜材49および第1水平材50とから側面形状が三角形の第1三角構造物を作る。さらに、上下方向へ一連に並ぶパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の略中央部に第2支持架設材26a〜26cを設置し、第2トラス構造物22b,22e,22h(縦架設材)と第2支持架設材26a〜26cの第2傾斜材51および第2水平材52とから側面形状が三角形の第2三角構造物を作る。
【0108】
それら第1支持架設材25a〜25cやそれら第2支持架設材26a〜26cを設置する手順の一例は、以下のとおりである。第1トラス構造物21b,21e,21hから前後方向後方へ離間した床梁15Bの頂面に固定座金59を固定する座金固定位置を正確に位置決め(墨だし)するとともに、第2トラス構造物22b,22e,22hから前後方向前方へ離間した床梁15Bの頂面に固定座金59を固定する座金固定位置を正確に位置決め(墨だし)した後、それら座金固定位置に複数のアンカーホールを穿孔し、それらアンカーホールに樹脂アンカーや機械式アンカーを設置する。アンカーを設置した後、座金固定59に形成されたボルト孔にアンカーボルトを挿通するとともにそのアンカーボルトを樹脂アンカーや機械式アンカーに螺着することで、床梁15Aの座金固定位置に固定座金59を強固に固定する。
【0109】
固定座金59を固定した後、第1および第2傾斜材49,51(中空の金属パイプ)の下端部55に穿孔された軸孔に軸60を挿通するとともに、固定座金59の軸受けにその軸60を取り付け、傾斜材49,51の下端部55を固定座金59に回転可能に固定する。次に、それら傾斜材49,51の下端部55を中心に傾斜材49,51を上下方向上方へ旋回させ、傾斜材49,51の上端部53を横架設材23b,24bの位置に合わせる。さらに、傾斜材49,51の伸縮機構56によって傾斜材49,51を前後方向後方および前方へ伸長させ、傾斜材49,51の上端部53(密着板58)で横架設材23b,24bを押圧し、上端部53を横架設材23b,24bに密着固定させる。
【0110】
具体的には、傾斜材49,51の上端部53に作られた雌螺子に螺着された雄螺子部材57を反時計回り方向へ回転させ、雄螺子部材57を傾斜材49,51の内部から次第に露出させることで、雄螺子部材57を含む傾斜材49,51の長さを次第に伸長させて傾斜材49,51の上端部53(密着板58)を横架設材23b,24bの周面(固定金具)に押し当てる。上端部53を横架設材23b,24bに押し当てることで、上端部53が横架設材23b,24bに密着し、傾斜材49,51を横架設材23b,24bと床梁15Bとの間で突っ張らせ、横架設材23bをパネル17a〜17iの側に押圧するとともに、横架設材24bをパネル18a〜18iの側に押圧する。傾斜材49,51の上端部53を横架設材23b,24bに押圧下に密着させると、傾斜材49,51が横架設材23b,24bから床梁15Bの頂面に向かって下り勾配に傾斜する(傾斜材49,51がその下端部55から上端部53に向かって上り勾配に傾斜する)。
【0111】
次に、固定金具65を介して第1および第2水平材50,52(中空の金属パイプ)の後端部63をトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hの第1垂直材40に強固に固定(連結)するとともに、固定金具64を介して水平材50,52の前端部61を傾斜材49,51の下端部55に強固に固定(連結)する。水平材50,52の前後端部61,63を固定すると、水平材50,52が床梁15Bの頂面から上方へわずかに離間し、水平材50,52がトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22h(アングル材16A,16B)と傾斜材49,51の下端部55との間で前後方向へ水平に延びる。
【0112】
なお、パネル17a〜17iに対する第1支持架設材25a〜25cの設置位置はパネル18a〜18iに対する第2支持架設材26a〜26cの設置位置と略同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれら支持架設材25a〜25c,26a〜26cが前後方向に対向する。位置決め工程、配筋工程、アングル設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程、横架設材設置工程、支持架設材設置工程が終了すると、型枠構造物10Aの組立が完了する。第1型枠パネル17a〜17iと第2型枠パネル18a〜18iとの間には、コンクリート13を打設する空間12が形成されている。なお、図示はしていないが、空間12にコンクリート13を打設するときの空間12に存在する空気を外部に逃がす空気孔が最上に位置するパネル17c,17f,17i,18c,18f,18iのいずれかに形成されている。
【0113】
型枠構造物10Aを組み立てた後、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程では、
図20に示すように、パネル18fに形成された打設口19から空間12にコンクリート13を打設する。空間12へのコンクリート13の打設は、コンクリートミキサー(図示せず)から延びるホースをパネル18fの打設口19に接続し、打設口19から空間12にコンクリート13を圧入する。空間12の空気は、パネル17c,17f,17i,18c,18f,18iの空気孔から外部に排気される。
【0114】
コンクリート打設工程では、確認窓20から空間12を視認しつつ、確認窓20を利用して空間12へのコンクリート13の打設状態を判断しながら、コンクリート13の打設作業が行われる。コンクリート打設工程において、パネル18a,18g,18iに作られた打設口20を利用することで、コンクリート13を空間12に容易に打設することができ、建物の内部の耐震補強壁11の構築箇所にコンクリート13を容易に打設することができる。また、空間12へのコンクリート13の打設状態を確認窓20から確認することができるから、空間12全域にコンクリート13を確実に打設することができる。
【0115】
コンクリート打設工程によってコンクリート13を空間12に打設すると、空間12に流入したコンクリート13の側圧が第1型枠パネル17a〜17i全体に作用する。コンクリート13の側圧がそれらパネル17a〜17iに作用すると、各パネル17a〜17iが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、第1トラス構造物21a〜21iによってパネル17a〜17iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるパネル17a〜17iの変形や積み重ねたパネル17a〜17iの崩落が防止される。また、コンクリート13の側圧によって各第1トラス構造物21a〜21iが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第1横架設材23a〜23cによってトラス構造物21a〜21iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるトラス構造物21a〜21iの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート13の側圧によって第1横架設材23bが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第1支持架設材25a〜25cによって横架設材23bの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧による横架設材23bの変形が防止される。
【0116】
コンクリート打設工程によってコンクリート13を空間12に打設すると、空間に流入したコンクリート13の側圧が第2型枠パネル18a〜18i全体に作用する。コンクリート13の側圧がそれらパネル18a〜18iに作用すると、各パネル18a〜18iが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2トラス構造物22a〜22iによってパネル18a〜18iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるパネル18a〜18iの変形や積み重ねたパネル18a〜18iの崩落が防止される。また、コンクリート13の側圧によって各第2トラス構造物22a〜22iが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2横架設材24a〜24cによってトラス構造物22a〜22iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるトラス構造物22a〜22iの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート13の側圧によって第2横架設材24bが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2支持架設材26a〜26cによって横架設材24bの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧による横架設材24bの変形が防止される。
【0117】
型枠構造物10Aでは、それらの結果として、それらトラス構造物21a〜21i,22a〜22i(縦架設材)やそれら横架設材23a〜23c,24a〜24c、それら支持架設材25a〜25c,26a〜26cによって第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの変形を防ぐことができ、コンクリート13の側圧が第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iに作用したとしても、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができる。
【0118】
空間12にコンクリート13を打設した後、コンクリート12を所定期間養生する。コンクリート13の養生期間が経過した後、型枠解体工程を行う。型枠解体工程では、傾斜材49,51の上端部53に作られた雌螺子に螺着された雄螺子部材57を時計回り方向へ回転させ、雄螺子部材57を傾斜材49,51の内部に次第に進入させ、雄螺子部材57を含む傾斜材49,51の長さを次第に縮め、傾斜材49,51の上端部53(密着板58)による横架設材23b,24b(固定金具48)の押圧を解除する。次に、固定金具65を外して水平材50,52の後端部63とトラス構造物21b,21e,21h,22b,22e,22hとの固定(連結)を解除するとともに、固定金具64を外して水平材50,52の前端部61と傾斜材49,51の下端部55との固定(連結)を解除する。
【0119】
トラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第2垂直材41から固定金具48を外し、トラス構造物21a〜21i,22a〜22iと横架設材23a〜23c,24a〜24cとの固定(連結)を解除してトラス構造物21a〜21i,22a〜22iから横架設材23a〜23c,24a〜24cを取り外す。横架設材23a〜23c,24a〜24cを取り外した後、連結布紐37をトラス構造物21a〜21i,22a〜22iの第2垂直材41からほどき、第1および第2アングル材16A,16Bの固定プレート47のボルト螺着孔および寸法調節材43の固定端部44のボルト螺着孔からアジャスターボルトを取り外し、寸法調節材43の固定端部44とアングル材16A,16Bとの固定を解除するとともに、アングル材16A,16Bの固定プレート47のボルト螺着孔および第1垂直材40の下端部46のボルト螺着孔からアジャスターボルトを取り外し、第1垂直材40の下端部46とアングル材16A,16Bとの固定を解除し、天井梁15Aの底面や床梁15Bの頂面からそれらトラス構造物21a〜21i,22a〜22iを取り外す。
【0120】
トラス構造物21a〜21i,22a〜22iを取り外した後、床梁15Aの頂面の下方第1取付位置35や下方第2取付位置39に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルトを抜き取り、床梁15Bとアングル材16A,16Bとの固定を解除するとともに、天井梁15Aの底面の上方第1取付位置34や上方第2取付位置38に穿孔されたアンカーホールの樹脂アンカーや機械式アンカーからアンカーボルトを抜き取り、天井梁15Aとアングル材16A,16Bとの固定を解除する。
【0121】
アングル材16A,16Bを取り外した後、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの取っ手36を手で把持しつつ、パネル17a〜17i,18a〜18iを前後方向後方や前後方向前方へ引っ張り、パネル17a〜17i,18a〜18iを取り外す。それらパネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32にはポリウレア樹脂33が塗布され、6面27〜32の摩擦抵抗が大幅に低下しているから、養生後の硬化したコンクリート13がパネル17a〜17i,18a〜18iに付着することなく、コンクリート13(耐震補強壁11)からパネル17a〜17i,18a〜18iを容易に取り外すことができる。型枠構造物10Aを形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠構造物10Aを解体することで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。
【0122】
型枠構造物10Aは、複数の第1および第2トラス構造物21a〜21i,22a〜22i(第1および第2縦架設材)や複数の第1および第2横架設材23a〜23c,24a〜24c、複数の第1および第2支持架設材25a〜25c,26a〜26cを利用することで、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12に打設されたコンクリート13の側圧に型枠構造物10Aが十分に耐えることができるとともに、コンクリート13の側圧が作用したとしてもパネル17a〜17i,18a〜18iが変形することはなく、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができる。型枠構造物10Aは、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができるから、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11(コンクリート構造物)を作ることができる。
【0123】
型枠構造物10Aは、それを組み立てる際にそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。型枠構造物10Aは、空間12にセパレータを設置する必要がないことから、空間12に自由に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作ることができる。型枠構造物10Aは、第1および第2型枠パネルそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32の強度や平滑度がポリウレア樹脂33の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネルそれらパネル17a〜17i,18a〜18iを繰り返して使用することができ、ベニヤ板を使い捨てにする型枠と比較し、型枠構造物10Aにかかるコストを大幅に低減させることができる。
【0124】
図21は、組み立てられた型枠構造物10Bの他の一例を示す正面図であり、
図22は、組み立てられた型枠構造物10Bの背面図である。
図23は、組み立てられた型枠構造物10Bの側面図である。
図21〜23では、上下方向を矢印Aで示し、横方向の矢印B(
図21,22のみ)で示すとともに、前後方向を矢印C(
図23のみ)で示す。
図23では、コンクリート13に埋設された鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)の図示を省略している。
【0125】
型枠構造物10Bは、型枠構造物10Aと同様に、既設の建物(建造物)の耐震補強壁11(コンクリート構造物)の構築箇所に組み立てられ、構築箇所にコンクリート13を打設して新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作るために使用される。耐震補強壁11を作る構築箇所に複数本の鉄筋(図示せず)を配筋するとともに型枠構造物10Bを組み立て、型枠構造物10Bの内側(第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間)の空間12にコンクリート13を打設する。打設したコンクリート13を所定期間養生した後、組み立てた型枠構造物10Bを解体(分解)することで鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。
【0126】
型枠構造物10Bが
図1のそれと異なるところは、第1および第2トラス構造物21a〜21l,22a〜22lの数や第1および第2横架設材23a〜23f,24a〜24fの数、第1および第2支持架設材25a〜25f,26a〜26fの数が
図1の型枠構造物10Aのそれよりも多い点、支持架設材25a〜25f,26a〜26fの傾斜材49,51の上端部53が上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3のうちの1番下に位置するパネル17a,17d,17g,18a,18d,18gに対して設置された横架設材23b,24bに押圧下に密着している点にある。
【0127】
なお、この型枠構造物10Bにおけるその他の構成は
図1のそれと同一であるから、
図1の型枠構造物10Aの説明を援用することで、この型枠構造物10Bにおけるその他の構成の詳細な説明は省略する。型枠構造物10Bは、複数の第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iと、複数の第1および第2トラス構造物(第1および第2縦架設材)21a〜21l,22a〜22lと、複数の第1および第2横架設材23a〜23f,24a〜24fと、複数の第1および第2支持架設材25a〜25f,26a〜26fとから形成されている。
【0128】
それら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iは、所定の厚み寸法および所定面積を有する平面形状が四角形の板状に成型されている。パネル17a〜17i,18a〜18iは、対向面27および当接面28と、上下面29,30および両側面31,32とを有する6面体であり、6面27〜32にポリウレア樹脂33が塗布されている(
図3,4援用)。なお、パネル17a〜17i,18a〜18iの材質は、
図1の型枠構造物10Aにおいて使用するそれと同一である。パネル17a〜17i,18a〜18iは、耐震補強壁11の構築箇所の天井梁15Aの底面(構築箇所上部)(または、天井の床スラブの底面)の正確に位置決めされた上方第1取付位置34と構築箇所の床梁15Bの頂面(構築箇所下部)(または、床の床スラブの頂面)の正確に位置決めされた下方第1取付位置35との間に設置されているとともに、天井梁15Aの底面の正確に位置決めされた上方第2取付位置38と床梁15Bの頂面の正確に位置決めされた下方第2取付位置39との間に設置されている。
【0129】
第1トラス構造物21a〜21l(第1縦架設材)は、第1型枠パネル17a〜17iの前後方向後方(パネル17a〜17iの直後)に位置して上下方向へ直状に延びている。第2トラス構造物22a〜22l(第2縦架設材)は、第2型枠パネル18a〜18iの前後方向前方(パネル18a〜18iの直前)に位置して上下方向へ直状に延びている。それらトラス構造物17a〜17i,18a〜18iは、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。上下方向へ並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3には、4つのトラス構造物21a〜21l,22a〜22lが設置されている。
【0130】
1つのトラス構造物21a,21e,21i,22a,22e,22iがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の一方の側縁部に配置され、1つのトラス構造物21d,21h,21l,22d,22h,22lがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の他方の側縁部に配置されているとともに、2つのトラス構造物21b,21c,21f,21g,21j,21k,22b,22c,22f,22g,22j,22kがパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の中央部に配置されている。
【0131】
トラス構造物21a〜21l,22a〜22lは、パネル17a〜17i,18a〜18iの当接面28に対向して上下方向へ直状に延びる第1垂直材40と、第1垂直材40から前後方向へ所定寸法離間して上下方向へ直状に延びる第2垂直材41と、第1垂直材40と第2垂直材41との間に位置して上下方向へジグザグに延びるトラス材42と、トラス構造物21a〜21l,22a〜22lの高さ寸法を調節可能な寸法調節材43とから作られている。
【0132】
トラス構造物21a〜21l,22a〜22lは、その上端部(寸法調節材43の固定端部44)が所定の固定手段(第1および第2アングル材16A,16B、アンカーボルト66、アジャスターボルト)を介して天井梁15Aの底面の位置決めされた上方第1取付位置34と上方第2取付位置38とに強固に固定されている。また、その下端部55(第1垂直材40の下端部55)が所定の固定手段(第1および第2アングル材16A,16B、アンカーボルト66、アジャスターボルト)を介して床梁15Bの頂面の位置決めされた下方第1取付位置35と下方第2取付位置39とに強固に固定されている。なお、パネル17a〜17iに対する第1トラス構造物21a〜21lの固定位置はパネル18a〜18iに対する第2トラス構造物22a〜22lの固定位置と略同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれらトラス構造物21a〜21l,22a〜22lが前後方向に対向する。
【0133】
それらトラス構造物21a〜21l,22a〜22lの第2垂直材41には連結布紐37が強く結び付けられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの取っ手36とトラス構造物21a〜21l,22a〜22lとが布紐37を介して連結されている。それらトラス構造物21a〜21l,22a〜22lにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧による型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0134】
第1横架設材23a〜23fは、トラス構造物21a〜21lの前後方向後方(第2垂直材41の直後)に位置しつつ、トラス構造物21a〜21lに固定されて横方向へ直状に延びているとともに、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2横架設材24a〜24fは、トラス構造物22a〜22lの前後方向前方(第2垂直材41の直前)に位置しつつ、トラス構造物22a〜22lに固定されて横方向へ直状に延びているとともに、上下方向へ所定寸法離間して並んでいる。それら横架設材23a〜23f,24a〜24fは、固定金具48を介してトラス構造物21a〜21l,22a〜22lの第2垂直材41に強固に固定されている。それら横架設材23a〜23f,24a〜24fは、全てのトラス構造物21a〜21l,22a〜22lの第2垂直材41に当接(密着)している。
【0135】
型枠構造物10Bでは、1つの第1横架設材23fが横方向へ並ぶ第1型枠パネル17c,17f,17iの後方に配置され、2つの第1横架設材23d,23eが横方向へ並ぶパネル17b,17e,17hの後方に配置されているとともに、3つの第1横架設材23a〜23cが横方向へ並ぶパネル17a,17d,17gの後方に配置されている。また、1つの第2横架設材24fが横方向へ並ぶ第2型枠パネル18c,18f,18iの前方に配置され、2つの第2横架設材24d,24eが横方向へ並ぶパネル18b,18e,18hの前方に配置されているとともに、3つの第2横架設材24a〜24cが横方向へ並ぶパネル18a,18d,18gの前方に配置されている。
【0136】
上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iのグループG1〜G3では、上下方向下方に位置するパネルに対する横架設材の設置数が上下方向上方に位置するパネルに対する横架設材のそれよりも多い。なお、パネル17a〜17iに対する第1横架設材23a〜23fの固定位置はパネル18a〜18iに対する第2横架設材24a〜24fの固定位置と略同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれら横架設材23a〜23f,24a〜24fが前後方向に対向する。
【0137】
それら横架設材23a〜23f,24a〜24fにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧によるそれらトラス構造物21a〜21l,22a〜22lの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、トラス構造物21a〜21l,22a〜22lの変形や横方向への撓みが防止される。その結果、コンクリート13の側圧によるそれら型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0138】
上下方向へ並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3には、2つの第1支持架設材25a〜25fが設置されている。第1支持架設材25a〜25fは、第1横架設材23a,23bの前後方向後方(横架設材23a,23bの直後)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。第1支持架設材25a〜25fは、横架設材21bから床梁15Bの頂面に向かって下り勾配に延びる第1傾斜材49と、パネル17a,17d,17gから前後方向後方へ延びる第1水平材50とから形成されている。
【0139】
第1傾斜材49は、トラス構造物21b,21c,21f,21g,21j,21kの近傍に延びる横架設材23bに押圧下に密着(当接)する上端部53と、パネル17a,17d,17gから前方へ離間して床梁15Bの頂面に固定された下端部55と、上下端部53,55の間に延びる中間部54とを有する。第1傾斜材49の上端部53は、上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3のうちの最下に位置するパネル17a,17d,17gに対して設置された第1横架設材23bに押圧下に密着している。型枠構造物10Bでは、第1トラス構造物21b,21c,21f,21g,21j,21kと第1支持架設材25a〜25fの第1傾斜材49および第1水平材50とで第1三角構造物が形成されている。
【0140】
上下方向へ並ぶパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3には、2つの第2支持架設材26a〜26fが設置されている。第2支持架設材26a〜26fは、第2横架設材24a,24bの前後方向前方(横架設材24a,24bの直前)に設置されて横方向へ所定寸法離間して並んでいる。第2支持架設材26a〜26fは、横架設材22bから床梁15Bの頂面に向かって下り勾配に延びる第2傾斜材51と、パネル18a,18d,18gから前後方向後方へ延びる第2水平材52とから形成されている。
【0141】
第2傾斜材51は、トラス構造物22b,22c,22f,22g,22j,22kの近傍に延びる横架設材24bに押圧下に密着(当接)する上端部53と、パネル18a,18d,18gから前方へ離間して床梁15Bの頂面に固定された下端部55と、上下端部53,55の間に延びる中間部54とを有する。第2傾斜材51の上端部53は、上下方向へ一連に並ぶパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3のうちの最下に位置するパネル18a,18d,18gに対して設置された第2横架設材24bに押圧下に密着している。型枠構造物10Bでは、第2トラス構造物22b,22c,22f,22g,22j,22kと第2支持架設材26a〜26fの第2傾斜材50および第2水平材52とで第2三角構造物が形成されている。
【0142】
なお、パネル17a〜17iに対する第1支持架設材25a〜25fの設置位置はパネル18a〜18iに対する第2支持架設材26a〜26fの設置位置と略同一であり、パネル17a〜17i,18a〜18iを挟んでそれら支持架設材25a〜25f,26a〜26fが前後方向に対向する。それら支持架設材25a〜25f,26a〜26fにより、空間12にコンクリート13を打設したときのコンクリート13の側圧による横架設材23a〜23f,24a〜24fの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、横架設材23a〜23f,24a〜24fの変形が防止される。その結果、コンクリート13の側圧によるトラス構造物21a〜21l,22a〜22lの変形や横方向への撓みが防止されるとともに、コンクリート13の側圧によるそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの前後方向後方や前方への膨隆や湾曲が押さえられ、パネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。
【0143】
図24は、型枠構造物10Bを利用した耐震補強壁11の施工手順の一例を示す正面図であり、
図25は、
図24から続く耐震補強壁11の施工手順を示す背面図である。
図26は、
図25から続く耐震補強壁11の施工手順を示す正面図であり、
図27は、
図26から続く耐震補強壁11の施工手順を示す背面図である。なお、
図24,25は、位置決め工程、配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)、型枠パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)が終了した状態を示し、
図26,27は、横架設材設置工程が終了した状態を示す。
【0144】
鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11は、位置決め工程、配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程(縦架設材第1設置工程)、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程(縦架設材第2設置工程)、横架設材設置工程、支持架設材設置工程の各工程を実施することで型枠構造物10Bを組み立てた後、コンクリート打設工程、型枠解体工程の各工程を実施することによって作られる。位置決め工程や配筋工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程は、
図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁11の施工手順のそれらと同一であるから、その説明は省略する。
【0145】
トラス構造物第2設置工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねたパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3の直後にあらたに3個の第1トラス構造物21b,21c,21d,21f,21g,21h,21j,21k,21l(第1縦架設材)(トラス構造物21aの横方向に3つのトラス構造物21b,21c,21d、トラス構造物21eの横方向に3つのトラス構造物21f,21g,21h、トラス構造物21iの横方向に3つのトラス構造物21j,21k,21l)を取り付ける。トラス構造物第1設置工程およびトラス構造物第2設置工程では、上下方向に重ねたパネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17iの1つのグループG1〜G3に4つのトラス構造物21a〜21d,21e〜21h,21i〜21lが取り付けられ、合計12のトラス構造物21a〜21lが取り付けられる。
【0146】
トラス構造物第2設置工程では、パネル設置工程において上下方向に重ねたパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3の直後にあらたに3個の第1トラス構造物22b,22c,22d,22f,22g,22h,22j,22k,22l(第2縦架設材)(トラス構造物22aの横方向に3つのトラス構造物22b,22c,22d、トラス構造物22eの横方向に3つのトラス構造物22f,22g,22h、トラス構造物22iの横方向に3つのトラス構造物22j,221k,22l)を取り付ける。トラス構造物第1設置工程およびトラス構造物第2設置工程では、上下方向に重ねたパネル18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3に4つのトラス構造物22a〜22d,22e〜22h,22i〜22lが取り付けられ、合計12のトラス構造物22a〜22lが取り付けられる。
【0147】
トラス構造物第2設置工程におけるトラス構造物21b,21c,21d,21f,21g,21h,21j,21k,21l,22b,22c,22d,22f,22g,22h,22j,22k,22lの設置手順は、
図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁11の施工手順におけるそれと同一であるから、その説明は省略する。トラス構造物21b,21c,21d,21f,21g,21h,21j,21k,21l,22b,22c,22d,22f,22g,22h,22j,22k,22lを設置した後、パネル17a〜17i,18a〜18iに取り付けられた取っ手36に連結布紐37を結び付けるとともに、その布紐37をトラス構造物21b,21c,21d,21f,21g,21h,21j,21k,21l,22b,22c,22d,22f,22g,22h,22j,22k,22lの第2垂直材41に結び付ける。
【0148】
パネル17a〜17c,17d〜17f,17g〜17i,18a〜18c,18d〜18f,18g〜18iの1つのグループG1〜G3に横方向へ並ぶ4つのトラス構造物21a〜21l,22a〜22lを設置することにより、空間12に打設したコンクリート13の側圧によるパネル17a〜17i,18a〜18iの変形や積み重ねたそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの崩落が防止される。また、取っ手36とトラス構造物21a〜21l,22a〜22lとを連結布紐37で連結することで、それらパネル17a〜17i,18a〜18iがトラス構造物21a〜21l,22a〜22lに支持され、パネル17a〜17i,18a〜18iの倒れ込みが防止される。
【0149】
横架設材設置工程では、横方向へ延びる複数の横架設材23a〜23f,24a〜24fを各トラス構造物21a〜21l,22a〜22lに設置する。横架設材設置工程では、6つの横架設材23a〜23fを上下方向へ所定寸法離間させた状態でそれらトラス構造物21a〜21lの前後方向後方に設置するとともに、6つの横架設材24a〜24fを上下方向へ所定寸法離間させた状態でそれらトラス構造物22a〜22lの前後方向前方に設置する。横架設材設置工程では、固定金具48を介してそれら横架設材23a〜23f,24a〜24fを各トラス構造物21a〜21l,22a〜22lの第2垂直材41に強固に固定する。
【0150】
横架設材23a〜23fをトラス構造物21a〜21lに固定すると、3つの横架設材23a〜23cがパネル17a,17d,17gの後方に位置し、2つの横架設材23d,23eがパネル17b,17e,17hの後方に位置するとともに、1つの横架設材23fがパネル17c,17f,17iの後方に位置する。また、横架設材24a〜24fをトラス構造物22a〜22lに固定すると、3つの横架設材24a〜24cがパネル18a,18d,18gの前方に位置し、2つの横架設材24d,24eがパネル18b,18e,18hの前方に位置するとともに、1つの横架設材24fがパネル18c,18f,18iの前方に位置する。トラス構造物21a〜21l,22a〜22lにそれら横架設材23a〜23f,24a〜24fを設置することにより、各トラス構造物21a〜21l,22a〜22lの変形や横方向への撓みが防止される。
【0151】
支持架設材設置工程では、
図23に示すように、横方向へ並ぶ複数の第1支持架設材25a〜25fを横架設材23a,23bの前後方向後方(横架設材23a,23bの直後)に設置するとともに、横方向へ並ぶ複数の第2支持架設材26a〜26fを横架設材24a,24bの前後方向前方(横架設材24a,24bの直前)に設置する。支持架設材設置工程では、上下方向へ一連に並ぶパネル17a〜17cのグループG1に2つの第1支持架設材25a,25bを設置し、上下方向へ一連に並ぶパネル17d〜17fのグループG2に2つの第1支持架設材25c,25dを設置するとともに、上下方向へ一連に並ぶパネル17g〜17iのグループG3に2つの第1支持架設材25e,25fを設置し、第1トラス構造物21b,21c,21f,21g,21j,21k(第1縦架設材)と第1支持架設材25a〜25fの第1傾斜材49および第1水平材52とから側面形状が三角形の第1三角構造物を作る。
【0152】
さらに、上下方向へ一連に並ぶパネル18a〜18cのグループG1に2つの第2支持架設材26a,26bを設置し、上下方向へ一連に並ぶパネル18d〜18fのグループG2に2つの第2支持架設材26c,26dを設置するとともに、上下方向へ一連に並ぶパネル18g〜18iのグループG3に2つの第2支持架設材26e,26fを設置し、第2トラス構造物22b,22c,22f,22g,22j,22k(第2縦架設材)と第2支持架設材26a〜26fの第2傾斜材50および第2水平材53とから側面形状が三角形の第2三角構造物を作る。なお、第1および第2支持架設材25a〜25f,26a〜26fを設置する手順は、
図1の型枠構造物10Aを使用した耐震補強壁11おける施工手順のそれと同一であるから、その説明は省略する。横架設材23a〜23f,24a〜24fにそれら支持架設材25a〜25f,26a〜26fを設置することにより、各横架設材23a〜23f,24a〜24fの変形が防止される。
【0153】
位置決め工程、アングル材設置工程、トラス構造物第1設置工程、パネル設置工程、トラス構造物第2設置工程、横架設材設置工程、支持架設材設置工程が終了すると、型枠構造物10Bの組立が完成する。なお、空間12にコンクリート13を打設するときの空間12に存在する空気を外部に逃がす空気孔がいずれかのパネル17c,17f,17i,18c,18f,18iに形成されている。型枠構造物10Bを組み立てた後(支持架設材設置工程が終了した後)、コンクリート打設工程を行う。コンクリート打設工程は、
図1の型枠構造物10Aのそれと同一であるから、その説明は省略する。
【0154】
コンクリート打設工程によってコンクリート13を空間12に打設すると、空間12に流入したコンクリート13の側圧が第1型枠パネル17a〜17i全体に作用する。コンクリート13の側圧がそれらパネル17a〜17iに作用すると、各パネル17a〜17iが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、第1トラス構造物21a〜21lによってパネル17a〜17iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるパネル17a〜17iの変形や積み重ねたパネル17a〜17iの崩落が防止される。また、コンクリート13の側圧によって各第1トラス構造物21a〜21lが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第1横架設材23a〜23fによってトラス構造物21a〜21lの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるトラス構造物21a〜21lの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート13の側圧によって第1横架設材23bが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第1支持架設材25a〜25fによって横架設材23bの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧による横架設材23bの変形が防止される。
【0155】
コンクリート打設工程によってコンクリート13を空間12に打設すると、空間に流入したコンクリート13の側圧が第2型枠パネル18a〜18i全体に作用する。コンクリート13の側圧がそれらパネル18a〜18iに作用すると、各パネル18a〜18iが前後方向前方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2トラス構造物22a〜22lによってパネル18a〜18iの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるパネル18a〜18iの変形や積み重ねたパネル18a〜18iの崩落が防止される。また、コンクリート13の側圧によって各第2トラス構造物22a〜22lが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2横架設材24a〜24fによってトラス構造物22a〜22lの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧によるトラス構造物22a〜22lの変形や撓みが防止される。さらに、コンクリート13の側圧によって第2横架設材24bが前後方向後方へ膨隆または湾曲しようとするが、それら第2支持架設材26a〜26fによって横架設材24bの膨隆や湾曲が押さえられ、コンクリート13の側圧による横架設材24bの変形が防止される。
【0156】
型枠構造物10Bでは、それらの結果として、それらトラス構造物21a〜21l,22a〜22l(縦架設材)やそれら横架設材23a〜23f,24a〜24f、それら支持架設材25a〜25f,26a〜26fによって第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの変形を防ぐことができ、コンクリート13の側圧が第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iに作用したとしても、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができる。
【0157】
空間12にコンクリート13を打設した後、コンクリート13を所定期間養生する。コンクリート13の養生期間が経過した後、型枠解体工程を行う。型枠解体工程は、
図1の型枠構造物10Aのそれと同一であるから、その説明は省略する。型枠構造物10Bを形成する全ての部材を取り外し、組み立てた型枠構造物10Bを解体することで、新設の鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11が作られる。
【0158】
型枠構造物10Bは、複数の第1および第2トラス構造物21a〜21l,22a〜22l(第1および第2縦架設材)や複数の第1および第2横架設材23a〜23f,24a〜24f、複数の第1および第2支持架設材25a〜25f,26a〜26fを利用することで、第1および第2型枠パネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12に打設されたコンクリート13の側圧に型枠構造物10Bが十分に耐えることができるとともに、コンクリート13の側圧が作用したとしてもパネル17a〜17i,18a〜18iが変形することはなく、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができる。型枠構造物10Bは、それらパネル17a〜17i,18a〜18iどうしの平行状態を維持することができるから、建造物の所定の箇所に構造計算された設計どおりの新たな鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11(コンクリート構造物)を作ることができる。
【0159】
型枠構造物10Bは、それを組み立てる際にそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの間の空間12に複数本のセパレータを設置する必要はなく、セパレータを設置する手間や時間を省くことができるのみならず、型枠大工の経験や勘に頼る必要はなく、短時間に効率よく組み立てることができるとともに、手間を要さずに廉価に組み立てることができる。型枠構造物10Bは、空間12にセパレータを設置する必要がないことから、空間12に自由に鉄筋(埋込アンカー、縦筋、横筋、柱筋、フープ筋、あばら筋、斜め補強筋等)を配筋することができ、強固な鉄筋コンクリート製の耐震補強壁11を作ることができる。型枠構造物10Bは、第1および第2型枠パネルそれらパネル17a〜17i,18a〜18iの6面27〜32の強度や平滑度がポリウレア樹脂33の被膜層によって維持されるから、使用済みのパネルそれらパネル17a〜17i,18a〜18iを繰り返して使用することができ、ベニヤ板を使い捨てにする型枠と比較し、型枠構造物10Bにかかるコストを大幅に低減させることができる。