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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-110526(P2015-110526A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】歯肉保護剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20150522BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20150522BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20150522BHJP
   A61K 36/02 20060101ALI20150522BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20150522BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150522BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20150522BHJP
   A23L 1/30 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   A61K31/122
   A61K31/215
   A61K47/14
   A61K35/80 Z
   A61K8/35
   A61Q11/00
   A61P43/00 105
   A61P1/02
   A23L1/30 B
   A23L1/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-166971(P2013-166971)
(22)【出願日】2013年8月9日
(71)【出願人】
【識別番号】390011877
【氏名又は名称】富士化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】金村 成智
(72)【発明者】
【氏名】本江 信子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 二郎
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD07
4B018MD10
4B018MD89
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF14
4C076AA11
4C076AA36
4C076BB22
4C076CC16
4C076DD46A
4C083AB032
4C083AB082
4C083AB172
4C083AB292
4C083AB472
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC432
4C083AC482
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD092
4C083AD302
4C083AD621
4C083AD622
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE31
4C083EE33
4C088AA15
4C088BA32
4C088CA10
4C088MA57
4C088NA14
4C088ZA67
4C088ZB21
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB25
4C206DB01
4C206DB56
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA67
4C206ZB21
(57)【要約】
【課題】 歯は食物の咀嚼機能だけではなく、咀嚼するによって栄養の偏り防や頭蓋筋肉の廃用抑制、脳活性などの維持など様々な機能を有している。また口腔内細菌は生成する毒素によって脳血管疾患や心疾患など様々な影響を与える。これらを防止するため、歯肉、歯ぐき、及び歯を支える組織を維持は受容であり、歯周組織の健康を維持する医薬組成物が必要である。
【解決手段】 アスタキサンチン、および/またはアスタキサンチンの脂肪酸エステルから選ばれる1種以上を有効成分とし、歯肉細胞のアポトーシスを抑制・防止することによって、歯肉の維持・改善を行う医薬用途組成物を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチン及び/又はアスタキサンチンの脂肪酸エステルを有効成分とする歯肉細胞のアポトーシス抑制剤。
【請求項2】
アスタキサンチン及び/又はアスタキサンチンの脂肪酸エステルを有効成分とする歯肉保護剤。
【請求項3】
中鎖脂肪酸トリグリセリドを含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項4】
アスタキサンチン及び/又はアスタキサンチンの脂肪酸エステルがヘマトコッカス藻を粉砕し二酸化炭素によって5%以上の濃度で抽出されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項5】
投与形態が経口投与形態ある請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項6】
投与形態が口腔用剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬品を含有する飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスタキサンチン及び又はアスタキサンチンの脂肪酸エステルを有効成分として、歯肉細胞のアポトーシスを抑制することによって歯肉組織を保護し、付着歯肉及び歯肉組織の減少を抑制する医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周組織は、歯の周囲にあって歯の機能を支持する役割をもつ組織の総称であり、歯根膜、セメント質、歯肉、歯槽骨から構成され、なかでも歯肉は歯の主要な支持構造である。日本人が歯を失う原因の約半数は、初期症状に付着歯肉の損失があり、続いて歯根膜及び歯槽骨の破壊が生じることによる。
【0003】
歯周組織を構成する主な細胞の1つに、歯肉線維芽細胞がある。その働きは、コラーゲン線維などの細胞外基質を産生すると同時に、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などのタンパク質分解酵素を産生し、細胞外基質の分解・貪食による、歯肉および歯周組織の結合組織の恒常性の維持である。近年は、歯肉線維芽細胞が骨吸収抑制物質のオステオプロテゲリンを高発現し、破骨細胞の形成を制御している可能性も指摘されている。このように、歯肉線維芽細胞は、歯肉にあって歯周組織の健康状態を良好に保つ上で中心的な役割を果たすため、歯の喪失に繋がる歯周組織の破壊を回避するには、その初期病態である歯肉および歯肉線維芽細胞の損失を防ぎ、保護することが重要である。
【0004】
口腔内に存在する様々な物質が、歯周組織の細胞に影響を与え、歯周組織の損傷の原因になり得る。例えば、タバコなどの喫煙によるニコチンの取り込みは、歯周組織の細胞の細胞増殖を妨げ、細胞外基質の新生を抑制することが知られている。更に、歯周組織はPorphyromonas gingivalisに代表される歯周病原菌によっても絶えず刺激されており、その刺激を受けた歯周組織の細胞は炎症性サイトカインを産生し、歯周組織の局所的炎症による歯周組織の破壊のみならず血液を介して全身性の慢性炎症病態の原因にもなる。ヒト線維芽細胞における炎症性サイトカインの産生に関わる細胞内シグナル伝達経路にはMAPKカスケードのp-38、ERK、JNKが知られており、これらの活性化は、歯周病原菌などの刺激からの防御機構として、細胞に細胞死(アポトーシス)を促す。
【0005】
歯周組織の細胞の障害に、活性酸素の発生も重大な因子として挙げられる。活性酸素は喫煙や上述のような炎症や感染の過程で発生し、歯周組織に損傷を与え得る。生体内で発生する活性酸素に対して、細胞は抗酸化機構を備えており、水溶性の抗酸化物質であるグルタチオンを産生し、スーパーオキシドディスムターゼやカタラーゼに代表される酸化ストレスに対応する酵素を発現している。ヒートショックプロテイン32(ヘムオキシゲナーゼ-1)は、活性酸素や炎症性サイトカインなどのストレスに応じて発現し、ヘムタンパク質の補欠分子であるヘムを分解し、ヘム分解産物が有する抗酸化作用や炎症性サイトカイン産生抑制作用などの機能を介して、ストレス負荷時の細胞保護に重要な役割を担う。
【0006】
これまで歯周組織の予防・改善の有効成分としては、βグルカン、メバロン酸、ポリフェノール、塩化マグネシウム並びにビンロウジ(檳榔子)、カンゾウ(甘草)、ニクズク(肉蒄)、マスティック(乳香)およびヤクモソウ(益母草)などの抽出エキス、エレモール、ベチベロール及びパチュリアルコールなどの抗菌成分など多数知られている。
【0007】
近い技術としては、レイシ、アカショウガ、ドクダミ、ソバ、ギムネマ、バナバ、ニーム、アーティチョーク、オリーブ、コメ、クルミ、ヘマトコッカス藻およびマタタビから選ばれる少なくとも1種の抽出物を含む歯ぐきの健康維持剤(特許文献1)が、動物における口腔の健康を促進する方法であって、口腔の健康促進量の少なくとも1つの抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、リポ酸、アスタキサンチン、ベータ−カロテン、L−カルニチン、補酵素Q10、グルタチオン、リコペン、ルテイン、N−アセチルシステイン、大豆イソフラボン、S−アデノシルメチオニン、タウリン、トコトリエノール、ほうれん草、トマト、柑橘類の果実、ぶどう、にんじん、ブロッコリ、緑茶、イチョウ、コーングルテンミール、米ぬか、藻類、クルクミン、マリン油、果実、野菜、酵母、カロテノイド、フラボノイド、ポリフェノール)を含む組成物に摂取させることを含む方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−263332
【特許文献2】特表2008−525475
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
食経験が豊富で摂取に制限や副作用がなく、摂取後の作用時間が長く天然成分からなる歯肉保護剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、アスタキサンチン及び/またはアスタキサンチンの脂肪酸エステルが歯肉細胞のアポトーシスを抑制することによって、歯肉減少の改善・予防に極めて有効であることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0011】
アスタキサンチン及び/またはアスタキサンチンの脂肪酸エステルを有効成分とする医薬品を経口投与又は口腔溶剤として使用することによって、歯肉の減少を改善・予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】表1の歯肉細胞におけるアスタキサンチンの細胞生存率の向上作用を示す。
図2】表2のアポトーシス関連因子の活性化に対するアスタキサンチンの抑制作用を示す。
図3】表3のアポトーシス抑制因子に対するアスタキサンチンの発現促進作用を示す。
図4】実施例より得られたストレス応答MAPキナーゼ経路においてHPS32が関与するアスタキサンチンの作用機序を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医薬品は経口投与又は口腔用剤の形態をとことができる。
経口摂取形態としては、錠剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、顆粒、粉末、ジェル又は液剤などの通常、医薬品で用いられる形態をとることができる。経口で摂取した場合、アスタキサンチンは消化管で吸収され、血中を通じて、歯肉細胞に到達しアポトーシスを抑制する。アスタキサンチンは血中での存在期間が24時間で半分と長いため、薬効作用の継続時間がながく、夜間など口内細菌が活発な時間でも有効に作用することができる。
【0014】
口腔用剤は、通常に用いる口腔用剤の形態を取ることでき、例えば、固体、固形物、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム等の各種形態にすることがでる。具体的には、舌禍下錠、口内塗布剤、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨類、洗口液、マウスウォッシュなどの各種剤型に調製できる。
【0015】
本発明でアスタキサンチンはフリー体のアスタキサンチンを意味する。アスタキサンチンの脂肪酸のエステル体はモノエステル体及び/又はジエステル体を意味する。特に明記されてない場合、アスタキサンチンはフリー体と脂肪酸のエステル体を意味する。
【0016】
アスタキサンチンの脂肪酸エステルとしては、低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。前記低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸の具体例としては、酢酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、へブタデカン酸、エライジン酸、リシノール酸、ベトロセリン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、プニシン酸、リカン酸、パリナリン酸、ガドール酸、5−エイコセン酸、5−ドコセン酸、セトール酸、エルシン酸、5、13−ドコサジエン酸、セラコール酸、デセン酸、ステリング酸、ドデセン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などをあげることができる。また、カロテノイドのジエステルとしては前記脂肪酸からなる群から選択される同一又は異種の脂肪酸によりエステル化されたジエステル類をあげることができる。
【0017】
アスタキサンチン/アスタキサンチン脂肪酸エステルの由来としては、天然物由来のもの又は合成により得られるものを用いることができる。天然物由来のものとしては、例えば、ヘマトコッカスなどの微細藻類、ファフィアなどの酵母類、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、イカ、タコなどの頭足類の内臓、種々の魚介類の皮やヒレ、ナツザキフクジュソウなどのAdonis属植物の花弁、Paracoccus sp. N81106、Brevundimonas sp. SD212、Erythrobacter sp. PC6などのα−プロテオバクテリア類、Gordonia sp. KANMONKAZ-1129などの放線菌、Schizochytriuym sp. KH105などのラビリンチュラ類(特にヤブレツボカビ科)やアスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体などから得られるものをあげることができる。夾雑物の除去のしやすさやアスタキサンチンの生産性から、ヘマトコッカス藻、ファフィア酵母及び細菌類のアスタキサンチン含有抽出物が好ましく、抽出方法としてはアセトン、エタノール及び超臨界(亜臨界含む)二酸化炭素などの有機溶媒が好ましい。
【0018】
ヘマトコッカス藻からのアスタキサンチン/エステルの製造方法としては二酸化炭素を用いての超臨界抽出・亜臨界抽出が好ましい。抽出方法として、初期の抽出分を除去したものは、不純物を除くことができより好ましい。これらの抽出物に炭素数8〜10の中鎖脂肪酸を添加することによって、抽出物中のグリセリンエステルや他の成分の影響を低減することができる。また、抽出物のオイルの粘度を低下させ、製剤形態への加工が容易になる。
【0019】
本発明における口腔投与形態でのアスタキサンチンの量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、成人では1日あたり体重1kg当たり、0.0001〜1mg、好ましくは0.001〜0.5mg、より好ましくは0.01〜0.2mgの摂取量が可能なように配合することができる。1日でこれらの摂取量が可能であるように、複数回に分けて摂取可能なよう分割する形態とすることができる。投与量は、投与される人の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。
【0020】
本発明における口腔投与形態でのアスタキサンチンの配合量は、組成物全体の0.01〜10%(質量%、以下、同様。)、好ましくは0.01〜5%である。
【0021】
本発明の特徴はアスタキサンチンによる歯肉細胞特有のアポトーシスを抑制することである。生体内の各臓器によってアポトーシスの原因やアポトーシスの抑制物質は異なる。歯周組織においてはPorphyromonas gingivalisなど歯周病原菌がリポサッカライドなどの毒素を産生することによって歯肉細胞のサイトに刺激を与え、歯肉細胞のアポトーシスを引き起こす。本発明の実施例1で示すようにアスタキサンチンは2つの作用点−(1)BadやBaxなどのアポトーシス誘導因子を抑制することによってCaspase3系列の作用を抑制し、(2)HSP32やHO−2などのアポトーシス抑制因子を活性化させることによってAsk系列のアポトーシス抑制すると考えられる。これまでアスタキサンチンは抗酸化作用が極めて高いことによる抗酸化作用が着目されてきたが、本発明ではアスタキサンチンの新規なアポトーシスの因子制御作用を見出した。
なお、HSP32(HO-1)は熱や酸化ストレス,炎症性サイトカインなどによって発現が誘導されるタンパク質である。HSP32は抗酸化・炎症作用など,細胞保護作用cytoprotectionと総称される様々な生理活性を有し、酸化ストレスから細胞を保護することが知られている。
【0022】
本発明の効果を補助するため、補助効果を有する物質を添加することができる。例えば、ビタミンA類;カロテノイド類(キサントフィル除く);ビタミンB類;ビタミンC類;ビタミンD類、ビタミンE類;トコトリエノール類;グルタチオン及びこれらの誘導体並びにこれらの塩;リグナン、カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、クロロゲン酸、エラグ酸、クマリン、クルクミンなどのポリフェノール類;リノール酸、α−又はγ−リノレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸及びその誘導体並びにそれらの塩;コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ケラチンから選ばれるタンパク質及びそれらの誘導体並びに加水分解物;アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、オルニチンなどのアミノ酸及びカルノシンなどのアミノ酸の誘導体及びその塩類並びにペプチド;グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩;血清除蛋白、脾臓、胎盤、鶏冠、ローヤルゼリー、酵母、乳酸菌、ビフィズス菌、霊芝、ニンジン、センブリ、ローズマリー、オウバク、ニンニク、ヒノキチオール、セファランチン、アロエ、サルビア、アルニカ、カミツレ、シラカバ、オトギリソウ、ユーカリ、ムクロジ、センプクカ、ケイケットウ、サンペンズ、ソウハクヒ、トウキ、イブキトラノオ、クララ、サンザシ、シラユリ、ホップ、ノイバラ、ヨクイニン、ドクダミ、海藻、納豆、レモングラス、ハイビスカスなどの天然物並びにそれらの抽出物;アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体;鉄、バナジウム、モリブデン、マンガン、銅、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレン、ヨウ素などのミネラル類;マンニトール、キシリトール、グルコサミンなどの単糖類;ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸、グリコーゲン、キチン、キトサンなどの多糖類;デオキシリボ核酸、リボ核酸などの核酸類;その他のグリチルリチン酸、グアニン、ムチン、ユビキノン、α−リポ酸、オクタコサノール、アリシン、アリイン、ラズベリーケトン、カプシエイト、蜂蜜、ローヤルゼリー、カプサイシンなど、並びにそれらの混合物からなる群から1種又は2種以上選択することができる。これらの成分は、医薬品全量に対して一般には0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜50重量%配合され、一種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
本発明の歯肉保護剤を含む医薬品は、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などの無機化合物などがあげられる。結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、F−MELT(商標、富士化学工業(株)製)などがあげられる。酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などがあげられる。発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。香料としては、例えばレモン油、オレンジ油、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。界面活性剤として、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどがあげられる。アスタキサンチンやトコトリエノールの吸収や製剤化を良くするためには粉末状態にすることができる。
【0024】
シロップ、ドリンク剤、懸濁液、点眼剤、注射剤などの液剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。
【0025】
本発明の医薬品は飲食物に配合し、飲食物の形態として摂取することができる。
飲食物としては、サプリメント、保健機能食、特別用途食品、健康食品、一般食品、飲料に配合することができ、摂取のしやすさや摂取量が決めやすいことから、サプリメント、保健機能食、特別用途食品が好ましく、前述医薬品と同様の形態、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投与形態、シロップ及び懸濁液のような液体投与形態で摂取することができる。上記医薬品用製剤で用いる成分のうち、食品で使用可能なものを選択でき、その他に乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、又は、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料及び色素などを配合してもよい。本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、機能性食品とは、国や公共団体が許可・指定している医薬品的な効能を有する食品であり、例えば、栄養機能食品や特定保健用食品などの保健機能食品、特別用途食品などである。なお、状況や時代により名称や規程が変化するが、本質的に同じであるものは本発明に含まれる。医薬品的な効能を表示したパッケージや容器、説明文書を含む食品も含まれる。
【0027】
一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、納豆、煮豆、炒り豆、豆腐、麻婆豆腐、ミックスナッツ、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、焼き菓子、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、又は果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料又は非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコール又はリキュール、薬用酒などのアルコール飲料、栄養ドリンク、牛乳、豆乳などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【実施例】
【0028】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例
のみに限定されない
[ヒト正常歯肉線維芽細胞試験]
発明者らは、歯周病原因菌Porphyromonas gingivalisが引き起こすヒト正常歯肉線維芽細胞の細胞死(アポトーシス)に対するアスタキサンチンの影響を調べたので以下に説明する。
【0029】
[細胞生存率の測定]
ヒトの歯周組織を構成する主要細胞であるヒト正常歯肉線維芽細胞(HGF:ScienCell Research Laboratories)を1×105cells/mlの濃度でプレートに播種し、サブコンフルエントに達した後、予め調製したアスタキサンチンのジメチルスルホキシド溶液を、アスタキサンチン濃度が10μMになるように培地に添加した。比較対照には、アスタキサンチンを含まないジメチルスルホキシド溶液のみを同量添加した。24時間の培養後、歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalis由来のリポサッカライド(以下、LPS)を100μg/mlの濃度で加えて更に24時間培養した後、細胞の生存率をMTTアッセイで測定した。結果を表1、図1に示す。
【0030】
[表1]
【0031】
[アポトーシス関連因子の検出]
上記と同様の方法でアスタキサンチンおよびLPSで処理あるいは非処理のヒト歯肉線維芽細胞をリン酸緩衝液で洗浄後、Lysis Bufferで溶解し、細胞溶解液(Lysate)を抽出した。
Lysate中のリン酸化タンパクERK, p38及びJNKの濃度をCytometric Bead Array(CBA)システム(BD)を用い、捕獲抗体がコートされた蛍光ビーズとLysateを反応後、PE標識した検出抗体を加え、フローサイトメトリーCantoII(BD)で定量した。結果を表2、図2に示す。
【0032】
[表2]
【0033】
さらに、Proteome Profiler Human Apoptosis Antibody Array Kit(R&D)で35種類のアポトーシス関連因子を同時検出した。すなわち、希釈したLysateとアポトーシス関連抗体をスポットしたメンブレンアレイをovernightで反応後、Washing Bufferで洗浄し、次にBiotin標識した検出抗体とHRP標識したストレプトアビジンを用いてアポトーシス関連分子の有無を化学発光法にて検出した。結果を表3、図3に示す。
【0034】
[表3]
【0035】
表1において、アスタキサンチンを添加せずにLPSで刺激した細胞群では、顕著に細胞増殖が抑制されるが、アスタキサンチンを添加した細胞群ではLPSの刺激による細胞増殖抑制が有意に解除され、それはLPSで刺激しない細胞群と同等の細胞活性を示した。
【0036】
アポトーシスに関連する細胞内シグナル伝達経路に対するアスタキサンチンの作用を明らかにするために、CBAシステムでアポトーシス関連因子の発現を測定した。ERK経路は細胞増殖や生存に作用し、ストレス応答MAPキナーゼ(p38及びJNK)経路は様々な環境ストレス刺激に応答して、細胞死(アポトーシス)を惹起するとされている。表2において示すようにアスタキサンチンは、Porphyromonas gingivalis由来のLPSの刺激に誘導されるp38とERKの活性化を阻害した。JNKは検出下限以下であった。
【0037】
表3に示すように、アスタキサンチンを添加した上でLPS刺激した細胞群では抗アポトーシス関連因子であるヒートショックプロテイン32(ヘムオキシゲナーゼ-1)(以下HSP32)の発現が認められたのに対し、アスタキサンチンを添加せずにLPSで刺激した細胞群や、LPS刺激をしない細胞群ではHSP32の発現を認めなかった。
このことから、アスタキサンチンは歯肉線維芽細胞において、HSP32の発現を促進することにより、Porphyromonas gingivalis由来のLPSが細胞に与える障害を軽減し、歯肉線維芽細胞のアポトーシスを阻害したと考えられる。ストレス応答MAPキナーゼ経路においてHPS32が関与するアスタキサンチンの作用を図4に示す。
以上より、アスタキサンチンが歯肉細胞において抗アポトーシス作用を有することが示された。
【0038】
[製造例1] 錠剤
常法に従って下記成分を下記組成比で均一に混合・打錠し、1粒300mgの錠剤とした。
アスタリールパウダー20F 20重量部
エフメルト F1 40重量部
粉末セルロース 15重量部
乳糖 22重量部
アスパルテーム 1重量部
二酸化ケイ素 1重量部
ショ糖脂肪酸エステル 1重量部
アスタリールパウダー20F〔富士化学工業(株)製〕はフリー体換算で2重量%のアスタキサンチンを含む粉末である。
【0039】
[製剤例2] ドリンク剤
下記成分を配合し、常法に従って、水を加えて10Lとし、ドリンク剤を調製した。
水溶性アスタキサンチン液 25g
液糖 1000g
DL−酒石酸ナトリウム 1g
クエン酸 10g
ビタミンC 10g
ビタミンE 20g
精製水 残
水溶性アスタキサンチン液〔富士化学工業(株)製〕はフリー体換算で1重量%のアスタキサンチンを含むヘマトコッカス藻抽出オイルを水溶液化したものである。
【0040】
[製剤例3] 洗口剤
下記成分を配合し、常法に従って、水を加えて1Lとし、洗口剤を調製した。
水溶性アスタキサンチン液 2.5g
フッ化ナトリウム 0.04g
硝酸カリウム 5g
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 2g
エタノール 5g
グリセリン 1g
サッカリンナトリウム 0.01g
香料 0.2g
メチルパラベン 0.3g
水酸化ナトリウム 適量(pH7.5調整量)
精製水 残
【0041】
[製剤例4] 練歯磨剤
下記成分を配合し、常法に従って、水を加えて混合し、練歯磨剤を調製した。
水溶性アスタキサンチン液 1重量部
リン酸水素カルシウム 2重量部
無水ケイ酸 8重量部
ラウリル硫酸ナトリウム 1重量部
プロピレングリコール 3重量部
アルギン酸ナトリウム 0.3重量部
ポリアクリル酸ナトリウム 0.4重量部
70重量%ソルビトール 30重量部
キシリトール 10重量部
サッカリンナトリウム 0.01重量部
香料 0.5重量部
メチルパラベン 0.15重量部
水酸化ナトリウム 適量(pH7.1調整量)
精製水 残
図1
図2
図3
図4