【実施例】
【0075】
次に、実施製造例、比較製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中、「g」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
[実施製造例](「黒色顔料−1」の製造)
(1)黒色顔料の粗粒子顔料の合成
ジアゾ成分として、式(2)で表される、2−[3−[(4−アミノフェニル)アミノ]−1H−イソインドール−1−イリデン]−2−シアノ−N−メチルアセトアミド6.34g(0.02モル)を、188gのニトロベンゼン中に分散し、常法により濃塩酸を加えて塩酸塩とし、過剰の亜硝酸ナトリウム水溶液を加えてジアゾ化し、ジアゾニウム塩溶液を調製した。これとは別に、カップリング成分として、式(3)で表される、N−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボアミド7.90g(0.02モル)を水酸化ナトリウム0.8gが溶けたメタノール250g中に溶解させたものを用意した。
【0076】
【0077】
上記で調製したジアゾニウム塩溶液を15℃以下に保ち、そこに上記のカップリング成分の溶液を徐々に添加した。酢酸ナトリウムでpHを6.5〜7.0に調整して1時間撹拌し、次いで25℃で2時間撹拌した後、更に40℃に昇温し、この状態で3時間撹拌することにより、カップリング反応を完結させて顔料を生成した。そして、生成した顔料をろ過し、メタノール洗い、水洗、乾燥して、黒色アゾ顔料の粗粒子顔料を得た。収量は12.22gであった。この黒色アゾ顔料の空気中における分解温度を測定したところ、336℃であった。なお、測定は、(株)リガク製の示差熱天秤サーモプラスEVO8120にて行った。
【0078】
上記で得られた黒色アゾ顔料の結晶形態は、
図1の、3万倍電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真に示される形状であった。また、そのX線回折の結果は、
図3に示したように、回折角(2θ)が、13°付近と、25.2°付近に強い回折ピークを示した。
【0079】
(2)微細化処理による黒色微粒子顔料の調製
上記の(1)の合成反応によって得られた黒色アゾ顔料の粗粒子顔料100部を塩化ナトリウム粉末500部およびジエチレングリコール50部と共に加圧蓋を装着したニーダーに仕込んだ。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合し、次で加圧釜を閉じて圧力6kg/cm
2で内容物を押さえ込みながら混練および摩砕を行った。内容物が92〜98℃になるように温度を管理しながら2時間混練・摩砕処理を行った。得られた摩砕物を80℃に加温した3000部の温水中で1時間の攪拌処理を行った後、ろ過および水洗をして塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除去し、微細化した黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。得られた顔料の粒子径を測定するために、顔料プレスケーキにノニオン活性剤を顔料に対して200%添加し、水で希釈し、超音波分散して顔料分散液を調製し、粒度測定機器「ModelN−4」(コールター社製)で平均粒子径を測定したところ、平均粒子径は凡そ90nmであった。プレスケーキを乾燥、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「黒色顔料−1」と称する。
【0080】
[比較製造例](「比較黒色顔料−1」の製造)
(1)比較黒色顔料の粗粒子顔料の合成
前記した特許文献1の実施例1に記載の材料を使用し、記載の方法に準じて、3−(4−アミノフェニルイミノ)−1−オキソ−4,5,6,7−テトラクロルイソインドリン7.5g(0.02モル)をジアゾ化した後、N−(2−メチル−4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−11H−ベンゾ[a]カルバゾール−3−カルボアミド7.9g(0.02モル)をカップリングさせ、以下の構造を有する黒色アゾ顔料の粗顔料を得、これを比較黒色顔料の粗粒子顔料とした。収量は14.7gであった。この黒色顔料の空気中における分解温度を測定したところ、347℃であった。
【0081】
【0082】
比較黒色顔料の粗粒子顔料の結晶形態は、
図2の3万倍FE−SEM写真に示される形状であり、また、そのX線回折の結果は、
図4に示すように、回折角(2θ)の9.8°付近と26.3°付近に強い回折ピークを示すものであった。
【0083】
(2)微細化処理による黒色微粒子顔料−1の調製
実施製造例1で得られた顔料と比較するために、特許文献1に記載の合成に追加して、顔料の粒子径がほぼ同じになるように、比較黒色顔料の粗粒子顔料に対して、実施製造例1で行ったと同様の微細化処理を行った。すなわち、上記実施製造例1の(2)に準じて、得られた比較黒色顔料の粗粒子顔料に対して微細化処理を行い、ろ過、水洗を行い、黒色アゾ顔料のプレスケーキを得た。そして、実施製造例1の(2)と同様にして顔料の粒子径を測定した。その結果、平均粒子径は凡そ80nmであった。プレスケーキを乾燥、粉砕して、黒色顔料の微細化粉末顔料を得た。以下、これを「比較黒色顔料−1」と称する。
【0084】
[実施例1](黒色顔料−1の塗膜の光学特性の評価)
(a)黒色顔料−1を用いた黒色塗布PETフィルムの作製
実施製造例1で得た黒色顔料−1の光学的特性を見るために、黒色塗布液を調製した。使用するワニスとして、カルボキシル基を有するアクリル樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液(酸価は10)とブチル化メチロールメラミン樹脂の50%キシレン−ブタノール混合溶媒溶液を、80:20の比率で配合し、ワニスを調製した(以下、単に「ワニス」と称する)。この際の希釈溶剤には、キシレン−ブタノールの混合溶媒(4:1)を使用した(以下、単に「希釈溶剤」と称する)。
黒色顔料−1を3部、ワニス24部、希釈溶剤6部および分散メディアとしてガラスビーズ48部を分散用容器に仕込み、ペイントシェイカーで3時間分散した。その後、更にワニスを36部追加して10分間分散を続けた後、取り出して黒色塗布液とした。黒色塗布液中の顔料分と樹脂固形分の比率は1:10であった。得られた黒色塗布液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーターを用いて塗布し、乾燥後、130℃で硬化させ、黒色塗布PETフィルムを得た。塗膜厚は86nmであった。
【0085】
(b)可視光領域および近赤外領域の透過率の測定
上記(a)で得られた黒色塗布PETフィルムを日立分光光度計(商品名:U−4100型、日立製作所製)にて可視部(可視光領域)および近赤外部(近赤外領域)の透過率を測定した。
図5に、測定結果を示した。
【0086】
図5に示した通り、分光透過率の測定の結果を見ると、黒色顔料−1を含む塗膜は可視光領域の長波長側の670nm付近までは、20%以下の透過率であり、780nmにおいては82%に達し、その後、なだらかに上昇し、平衡状態になる。特に、可視光領域の長波長側の580〜625nm付近では、5%以下と極めて低い透過率を示すものであることがわかった。
【0087】
(c)体積抵抗率の測定
上記(a)で得られた黒色塗布PETフィルム上の黒色塗膜を、高抵抗率計ハイレスタ−UP(Hiresta−UP、三菱化学製)を用いて、体積抵抗率を測定した。測定結果は10
14Ω・cm以上を示し、絶縁性が非常に高いことを示した。
【0088】
[比較例1](比較黒色顔料−1の塗膜の光学特性の評価)
(a)比較黒色顔料−1を用いた黒色塗布PETフィルムの作製
実施例の黒色顔料−1と光学特性を比較するために、比較製造例で得た比較黒色顔料−1を用いて作製した塗膜の光学的特性を調べた。実施例1で使用した黒色顔料−1に代えて、比較黒色顔料−1を使用して、実施例1(a)と同様にして顔料分:樹脂固形分が1:10の黒色塗布液を調製した。そして、実施例1と同様にして、調製した黒色塗布液をPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、乾燥、硬化させて比較用の黒色塗布PETフィルムを作製した。塗膜厚は88nmであった。
【0089】
(b)可視光領域および近赤外領域の透過率の測定
上記(a)で得られた比較用の黒色塗布PETフィルムの可視部(可視光領域)および近赤外部(近赤外領域)の透過率を実施例1と同様にして測定し、その結果を
図6に示した。
【0090】
図6に示した分光透過率の測定の結果を見ると、上記の比較黒色顔料−1を含む塗膜の分光透過率は、長波長側の680nm付近までは、30%以下の透過率であり、780nmにおいては78.7%に達し、その後、なだらかに上昇し、平衡状態になる。
【0091】
図5と
図6との比較から、まず、実施例の黒色顔料−1の塗膜の場合は、可視光領域の長波長側の670nm付近までの透過率が20%以下であったのに対して、比較黒色顔料−1を含む塗膜の場合は30%と高い値を示し、更に、実施例の黒色顔料−1の塗膜の場合は、可視光領域の長波長側の580〜625nm付近では、5%以下と極めて低い透過率を示したのに対し、比較黒色顔料−1を含む塗膜の場合は、最低でも15%以上の値となることが確認できた。さらに、近赤外領域の短波長側の780nmから1400nmにおける透過率の比較から、実施例の黒色顔料−1の塗膜の場合は、780nmにおいて82%に達し、1000nm付近で90%近くに達したのに対して、比較黒色顔料−1を含む塗膜の場合は、780nmにおいては78.7%で、1000nm付近でも85%程度であることが確認できた。これらのことは、従来の黒色顔料を使用した場合と比較して、本発明の実施例の黒色顔料−1で形成した塗膜は、その光学的特性において明らかに優位性を示すものであることがわかった。
【0092】
(c)体積抵抗率の測定
上記(a)で得られた比較用の黒色塗布PETフィルム上の黒色塗膜の体積抵抗率を測定した。測定結果は10
14Ω・cm以上を示し、実施例1と同じく高絶縁性であることを示した。
【0093】
[実施例2](黒色顔料−1の塗膜の光反射特性の評価)
(a)黒色顔料−1を用いた黒色PETフィルムおよび黒色展色紙の作製
黒色顔料−1の反射特性を見るために、実施例1(a)で調製した黒色塗布液を6ミルのアプリケーターを用いてPETフィルム上および白色展色紙上に塗布し、乾燥、硬化させた。黒色の塗布膜厚は、PETフィルム上では350nm、展色紙上では320nmであった。
【0094】
(b)可視領域および近赤外領域の反射率の測定
(b−1)上記(a)で得られた黒色PETフィルムの可視部および近赤外部の反射率を、黒色PETフィルムを白板の上に載置した状態で測定し、
図7に測定結果を示した。
【0095】
(b−2)上記(a)で得られた黒色展色紙の可視部および近赤外部の反射率を測定し、
図8に測定結果を示した。
【0096】
上記の結果を示した
図7と
図8から明らかなように、黒色PETフィルムおよび黒色塗布展色紙は、いずれの場合も、740nm位までは共に6%の反射率しか示していない(但し、上記の
図7および
図8で、反射率が0%でなく、6%の値になっているのは測定装置との関係である)。
また、
図7に示したように、黒色PETフィルムでは、760nm位より880nmにかけて反射率は急激に上昇し、更にそれより長波長側の近赤外領域ではほぼ90%の反射率を維持している。また、
図7と
図8から、黒色PETフィルム及び黒色塗布展色紙の近赤外領域における高い光の反射率は、それぞれの塗布塗膜を構成している顔料表面からの反射と共に、
図5で確認された近赤外領域において示された高い透過光が下地の白板もしくは白紙で反射し、それに起因する光が合算されて反射光となっているため高くなっていると考えられる。従って、上記の結果は、黒色顔料の光学的特性を、近赤外領域における光透過性を高くすると同時に、反射性の高い下地を利用することで、効率よく近赤外線を反射できる物品の提供が可能になることを示している。
【0097】
[実施例3](ポリカーボネート樹脂成型板の製造と評価)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を20部と、ポリカーボネ−ト樹脂粉末80部をヘンシェルミキサーで充分混合した後、二軸押出機で混合、混練し、黒色顔料−1を20%含有するポリカーボネート樹脂黒色マスターバッチを調製した。次いで、得られたポリカーボネート樹脂黒色マスターバッチ2部を、ポリカーボネート樹脂ペレット100部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合し、二軸押出機で混練し、黒色樹脂ペレットを得た。得られた黒色ペレットをインラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のポリカーボネート樹脂プレートを得た。この黒色プレートは、可視光領域の光を吸収し、且つ、近赤外線を十分に透過し、赤外線透過フィルターなどの用途に使用できる。
【0098】
[実施例4](アクリル樹脂成型板の製造と評価)
実施例3と同様にして、実施製造例1で得た黒色顔料−1を20部とアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート)粉末80部をヘンシェルミキサー(粉体高速混合機)で充分混合した後、二軸押出混練機で混合、混練し、黒色顔料−1を20%含有するアクリル樹脂黒色マスターバッチを調製した。次いで、得られたアクリル樹脂黒色マスターバッチ2部をアクリル樹脂ペレット100部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合し、押出し機で混練し、黒色樹脂ペレットを得た。得られた黒色ペレットをインラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のアクリル樹脂プレート(成型版)を得た。この黒色のアクリル樹脂プレートは、可視光領域の光を吸収し、且つ、近赤外線を十分に透過し、赤外線透過フィルターとして使用できる。
【0099】
[実施例5](ポリウレタンコーティング剤の調製と評価)
(1)ポリウレタンコーティング剤(液)の調製
実施製造例1で得た黒色顔料−1を40部とアジピン酸エステル系可塑剤60部とを三本ロール混練機で充分に混練し、黒色顔料の可塑剤分散ペースト(以下、「黒色顔料トーナー」と記載)を得た。同様にして、酸化チタン白色顔料60部と、アジピン酸エステル系可塑剤40部とを三本ロール混練機で充分に混練し、白色顔料の可塑剤分散ペースト(以下、「白色顔料トーナー」と記載)を得た。次いで、カルボキシル基を有するポリエーテルポリオール・ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリウレタンの乳白色のメチルエチルケトン分散液(固形分:30%)100部、ポリエーテルポリオール・ジフェニルメタンジイソシアネート系ポリウレタンのメチルエチルケトン溶液(固形分:50%)5部およびポリカルボジイミド系架橋剤(固形分:20%)2.5部を十分混合した。そこへ、上記で得た黒色顔料トーナー1.0部および白色顔料トーナー6.0部を添加し、充分混合し、グレー色のポリウレタンコーティング液を調製した。また、白色顔料トーナーのみを使用した以外は上記と同様の方法で、白色のポリウレタンコーティング液を調製した。さらに、黒色顔料トーナーのみを使用した以外は上記と同様の方法で、黒色のポリウレタンコーティング液を調製した。
【0100】
(2)評価
上記で得たグレー色のポリウレタンコーティング液を、ナイロン織布テント地の表面に凡そ200g/m
2で塗付し、乾燥して、グレー色の加工織布を作製した。得られた加工織布は直射日光の熱線を反射し、昇温を防ぐテントなどの用途に使用することができた。
また、上記で得た白色のポリウレタンコーティング液を用いて下地塗布をした後、その上に上記で得た黒色のポリウレタンコーティング液をトップコートすることにより、二重構造のポリウレタン合成皮革を得た。得られた合成皮革は熱線を反射するため、自動車の内装などの用途に好適に使用できる。
【0101】
[実施例6](原液着色紡糸の作製と評価)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を50部および顔料分散剤としてエチレンビスステアリン酸アミド粉末50部をヘンシェルミキサーで混合し、顔料分が50%の粉末着色剤(ドライカラー)を得た。次いで、得られたドライカラーを1.0部、ポリプロピレン樹脂ペレット99.0部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合し、ベント式40m/m押出機で混練し、0.5%黒色樹脂ペレットを得た。得られた黒色樹脂ペレットを熔融紡糸機にて紡糸し、繊度10デニールの顔料分散性に優れた鮮明な黒色のポリプロピレン原液着色糸を得た。この着色糸を使用して得た織布は直射日光の熱線を反射することが可能なため、昇温を避ける日傘やカーテンなどの用途に好適に使用できる。
【0102】
[実施例7](樹脂成型品の作製と評価)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を5部、酸化チタン白色顔料20部および顔料分散剤としてポリエチレン樹脂粉末75部をヘンシェルミキサーで混合し、ドライカラーを得た。次いで、得られたドライカラーを1.0部、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂ペレット100部に配合し、ヘンシェルミキサーで混合し、押出機で混練し、黒色樹脂ペレットを得た。得られた黒色樹脂ペレットをインラインスクリュー射出成型機にて成型し、顔料分散性に優れた黒色のPBT樹脂成型板を得た。得られた樹脂成型板は、直射日光の熱線を反射するため、昇温を避けたい樹脂成型品として好適に使用できる。
【0103】
[実施例8](織布用捺染糊の作製と評価)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を固形分で25部を含むプレスケーキ71部、ノニオン系顔料分散剤10部、消泡剤1部、水18部を十分予備混合した後、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機にて顔料を分散し、黒色顔料高濃度分散液(黒色カラーベース)を調製した。このようにして得た黒色カラーベース20部、反応性アクリル酸アルキルエステルラテックス(固形分40%)25部、消泡剤0.5部、分散剤1部、水中油滴型乳化用分散安定剤3部、ミネラルターペン38部、水12.5部をホモジナイザー(強力乳化分散機)にて乳化分散させ、水中油滴型黒色エマルジョンペーストを調製した。更に、そこへ、カルボジイミド系の架橋剤(固形分40%)を2部添加し、十分混合して黒色捺染糊を調製した。得られた黒色捺染糊を用いてポリエステル−綿混紡布上に全面プリントし、120℃で15分間のキュアーを行うことにより、黒色の無地捺染布を得た。得られた黒色の無地捺染布は、熱線を遮蔽することができるものになる。
【0104】
[実施例9](グラビア印刷インキの作製と評価)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を11部、イソシアネート末端ポリエステルをジアミンで鎖長延長したポリウレタン樹脂の40%メチルエチルケトン・トルエン(1:3)混合溶媒溶液30部を加え、カチオン性ポリマー分散剤2部、トリレンジイソシアネートからのポリカルボジイミド化合物の40%トルエン溶液を2.5部、メチルエチルケトン・トルエン・イソプロピルアルコール(50:30:20)混合溶媒54.5部を加えて高速撹拌機で充分混合した。そして、分散媒体としてガラスビーズを使用した横型連続媒体分散機にて顔料を分散し、黒色グラビア印刷インキを調製した。グラビア印刷機を用いてポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムおよびポリプロピレンフィルムにそれぞれ印刷を行ない、各黒色フィルムを得た。いずれの黒色フィルムも、可視光を遮蔽し、赤外線を透過することができるものであった。
【0105】
[実施例10](CFのBMの形成と評価)
(1)BM用顔料分散液の調製
(黒色顔料分散液の調製)
実施製造例1で得た黒色顔料−1を25部、ベンジルメタクリレート−メタクリル酸−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(モル比:60:20:20、重量平均分子量30,000)10部、カチオン性重合体系分散剤2.5部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMA)65部を十分予備混合した。次いで、連続式横型媒体分散機で分散させることにより、黒色顔料分散液(以下、「黒色顔料分散液−1」と称する)を得た。
【0106】
(2)感光性黒色レジストインク−1の調製
上記(1)で得られた黒色顔料分散液−1を40部、アクリル化アクリルポリオール感光性樹脂60%PGMA溶液5部、トリメチロールプロパントリアクリレート2部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3部、光重合開始剤としてエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(商品名:「イルガキュアOXE02」、BASF社製)1部およびPGMA51部を配合した。次いで、高速撹拌機で均一になるように十分撹拌した後、孔径が3μmのフィルターでろ過をして、黒色顔料−1を含む黒色レジストインク(以下、「感光性黒色レジストインク−1」と称する)を調製した。
【0107】
(3)黒色レジスト膜の評価
上記で得た感光性黒色レジストインク−1を用いて、スピンコーターにてガラス基板上に塗布し、60℃にて予備乾燥し、プリベークを行い、超高圧水銀灯を用いて400mJ/cmの光量で露光を行ない、230℃、30分のポストベークを行い、厚さ2μmの黒色塗膜を得た。
この塗膜の光学的特性は、実施例1で示したと同様に、可視光領域の長波長側の670nm付近までは、20%以下の透過率であり、780nmにおいては82%に達し、その後、なだらかに上昇し、平衡状態になり、特に、可視光領域の長波長側の580〜625nm付近では、5%以下と極めて低い透過率を示した。また、体積抵抗率も10
14Ω・cm以上を示し、高絶縁性であることを示した。
【0108】
(4)BMパターンの調製
上記で得た感光性黒色レジストインク−1を用いて、常法に従いスピンコーターにてガラス基板上に塗布し、80℃で10分間プリベークを行い、厚さ2μmの黒色塗膜を得た。この塗膜にBMパターンのネガのフォトマスクパターンを介して、超高圧水銀灯を用い、100mJ/cmの光量で露光を行ない、アルカリ現像液で現像し、水洗、乾燥してBMパターンを形成した。
BM膜は上記(3)で示したように高い電気絶縁性を有しており、TFTなどのアクティブ素子上にBMを形成する各種のCFの改良方法、例えばスペーサーに代わり液晶層の厚みを保持するBM、IPS方式、COA方式などが構築される。また、可視領域を長波長領域まで十分吸収することから、LEDバックライトを採用したLCDパネルのBMとして好適に使用できる。
【0109】
(5)赤色、緑色、青色、黄色、紫色の各顔料分散液の調製
上記(1)と同様にして、PR254(ジケトピロロピロールレッド顔料)、PR177(アンスラキノン系レッド顔料)、PG36(銅フタロシアニングリーン顔料)、PB15:6(ε型銅フタロシアニンブルー顔料)、PY185(黄色顔料)およびPV23(ジオキサジンバイオレット顔料)にそれぞれ公知のスルホン基を有する顔料誘導体を添加した顔料組成物を使用して夫々顔料分散液を調製した。
(6)各色の感光性レジストインクの調製
上記で得た各色の顔料分散液を用いて各色の感光性レジストインクを調製した。上記で得たPR254とPR177の顔料分散液を配合(8:2)し、上記(2)と同様にして感光性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤を加えて赤色レジストインキ(感光性赤色レジストインク−1)を調製した。同様に、PG36とPY185の顔料分散液を配合(6:4)し、緑色レジストインキ(感光性緑色レジストインク−1)を、PB15:6とPV23の顔料分散液を配合(8:2)し、青色レジストインキ(感光性青色レジストインク−1)をそれぞれ調製した。
【0110】
(7)CFのRGB画素の形成
BMの形成されたガラス基板をスピンコーターにセットし、上記の感光性赤色レジストインク−1をスピンコートし、80℃で10分間プリベークを行い、モザイク状のパターンを有するフォトマスクをガラス基板の塗布面に、プロキシミティー露光機を使用して超高圧水銀灯で100mJ/cm
2の光量で露光を行なった。次いで専用現像液および専用リンスで現像および洗浄、乾燥を行い、ガラス基板上赤色のモザイク状のパターンを形成させた。
引き続いて感光性緑色レジストインク−1を用いて緑色モザイク状のパターンを形成し、感光性青色レジストインク−1を用いて青色モザイク状のパターンを形成し、BMおよびRGB画素の形成されたCFを得た。得られたCFは、優れたCF特性を示すものであった。