特開2015-110727(P2015-110727A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-110727(P2015-110727A)
(43)【公開日】2015年6月18日
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20150522BHJP
   C09J 119/02 20060101ALI20150522BHJP
   C09J 123/06 20060101ALI20150522BHJP
   C09J 109/10 20060101ALI20150522BHJP
【FI】
   C09J123/00
   C09J119/02
   C09J123/06
   C09J109/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-181025(P2014-181025)
(22)【出願日】2014年9月5日
(11)【特許番号】特許第5711415号(P5711415)
(45)【特許公報発行日】2015年4月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-228308(P2013-228308)
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】森 文三
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040CA081
4J040CA082
4J040DA021
4J040DA022
4J040DA151
4J040DA152
4J040HA196
4J040KA42
4J040MA10
4J040NA10
(57)【要約】
【課題】接着剤組成物を調製する際の配合性に優れ、かつ基布に植設されたパイル糸の抜け落ちを防止する裏打ちが施されているカーペットや人工芝などの繊維製品を製造する際バッキング材として使用された際に、特に抜糸強度及び耐水性に優れる接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して、合成ゴムラテックス5〜100重量部(固形分換算)を含有し、該ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が150μm以下であることを特徴とする接着剤組成物を、繊維製品を製造する際のバッキング材として用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して、合成ゴムラテックス5〜100重量部(固形分換算)を含有し、該ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が150μm以下であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
合成ゴムラテックスが、ジエン系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物
【請求項3】
ジエン系共重合体ラテックスが、カルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン系パウダーが、JIS K6922−1の条件Dにて測定したMFR(メルトマスフローレート)が30g/10分以上のポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
カーペットや人工芝などの繊維製品を製造する際のバッキング材として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関する。詳しくは、接着剤組成物を調製する際の配合性に優れ、かつ基布に植設されたパイル糸の抜け落ちを防止する裏打ちが施されているカーペットや人工芝などの繊維製品を製造する際バッキング材として使用された際に、特に抜糸強度及び耐水性に優れる接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの繊維製品は、そのパイル糸を固着するためにバッキング材として合成ゴムラテックス系接着剤組成物が使用されている。この接着剤組成物には、合成ゴムラテックスとしてジエン系共重合体ラテックスやアクリル系共重合体エマルジョンに、炭酸カルシウムなどの無機充填材を配合した水系の接着剤組成物が用いられていることは周知である。
【0003】
近年、カーペットにおいて、よりソフト感を高める為にパイル糸の長さを長くすることがある。また、人工芝においても野球場やサッカー場などスポーツイベント用にクッション性に優れ天然芝に近い性質を付与するものとしてパイル糸の長いロングパイル人工芝が多く用いられているが、従来の接着剤組成物では通常パイル糸の長さが長くなると抜け落ちやすくなるという問題がある。また、長いパイル糸が絡み合うことでパイルが倒れ、ソフト感が低下するという問題がある。そのためパイル糸の絡み合いを抑制するためパイル糸同士の撚りを少なくすることもあり、よりパイル糸が抜け落ちやすいという問題がある。
【0004】
更に、人工芝のパイルはスプリットヤーン製のパイルが主流であるが、スポーツイベント用には耐摩耗性や耐パイル倒れ性が良好であり摩擦係数が低く、滑りこんだ際の摩擦熱が低いという理由から、無捲縮のモノフィラメントヤーン製のパイルが多く使用されるようになってきたが、モノフィラメントヤーンはスプリットヤーンのようにハニカム構造でないことから、接着剤組成物との立体的絡みが少ない上にヤーンが比較的細く接着剤組成物との接着面積が小さいため、ロングパイルと同様にパイル糸が抜け落ちやすくなるという問題がある。また、屋外で使用される場合には優れた湿潤時のパイル糸の引き抜き強度(耐水性)が求められている。
【0005】
そこで、パイル糸が抜け落ち難くするため、合成ゴム系ラテックスとオレフィン系樹脂エマルジョンとを混合した液状混合物に充填剤を加えたものをバッキング用接着剤組成物として用いる例(特許文献1参照)やエマルジョンにエポキシ樹脂を含有したもの(特許文献2参照)、エマルジョンにアクリル酸エチレン共重合物エマルジョンを含有し架橋剤としてブロックドイソシアネートを使用した人工芝カーペットバッキング材用組成物の例(特許文献3参照)があるが、いずれもパイル糸(特にモノフィラメントヤーン製)が抜け落ち難くなるために必要なパイル糸の引き抜き強度(抜糸強度)及び湿潤時のパイル糸の引き抜き強度(耐水性)が十分ではなかった。
また、自己架橋型カルボキシ変性スチレン・ブタジエン共重合体にジフェニルメタンジイソシアナートを配合した接着剤組成物を用いた人工芝の例(特許文献4参照)があるが、十分な強度を得るために必要な量のジフェニルメタンジイソシアナートを添加すると、風合い硬くなり施工性が悪くなることと、可使用時間に制限があり、コストがかかるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−150844号公報
【0007】
【特許文献2】特開2007−269836号公報
【0008】
【特許文献3】特開2008−088414号公報
【0009】
【特許文献4】特開2012−193528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は前述の諸事情に鑑み現状の問題点を解決すべく、ポリオレフィン系パウダーと合成ゴムラテックスを含有することを特徴とする水性分散体で接着性良好な接着剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特定の中心平均粒子径を持つポリオレフィン系パウダーと合成ゴムラテックスを特定の割合で含有することを特徴とする水性分散体の接着剤組成物であって、接着剤組成物調製時の配合性に優れ、かつ該組成物をバッキング材として使用して得られるカーペット製品や人工芝製品等の加工製品における抜糸強度及び耐水性のバランスに優れた接着剤組成物を提供する。
【0012】
さらには、特定の合成ゴムラテックス、または特定のポリオレフィン系パウダーを使用することで、さらに上述する効果に優れる接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着剤組成物は、接着剤組成物調製時の配合性に優れることから、着色剤を使用した場合の着色剤の展着性に優れ、かつ該組成物をバッキング材として用いてカーペット製品や人工芝製品などを加工した際に、抜糸強度及び耐水性のバランスに優れる。これらの効果は、特に人工芝製品のバッキング材として用いた際に顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリオレフィン系パウダーとしては、例えば、ポリプロピレンパウダー、ポリエチレンパウダーなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。中でも、ポリエチレンパウダーが好ましい。
ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径は150μm以下であることが必要である。150μmを超えると、塗布後の外観が低下する。また、塗布後の外観、抜糸強度及び耐水性の観点から、100μm以下であることがより好ましい。
ポリオレフィン系パウダーのJIS K6992―1に記載の方法(条件D)で測定したMFR(メルトマスフローレート)は、30g/10分以上、150g/10分以下が好ましい。更に好ましくは50g/10分以上、120g/10分以下である。MFRが低すぎるとオレフィンのパイルへの被覆状態が悪く抜糸強度及び耐水性が低下する。
【0015】
本発明における合成ゴムラテックスとしては、例えば、ブタジエン・スチレン系共重合体ラテックス、ブタジエン・アクリロニトリル系共重合体ラテックス、ブタジエン・メチルメタクリレート系共重合体ラテックス、ブタジエン・スチレン・ビニルピリジン系共重合体ラテックスなどのジエン系共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックスなどが挙げられ、これらを1種もしくは2種以上使用することができる。中でも、ジエン系共重合体ラテックスが好ましく、さらにはカルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスがより好ましい。
【0016】
上記ジエン系共重合体ラテックスを構成する単量体としては、共役ジエン系単量体、及び、共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体の使用が可能である。共重合体可能な単量体としては、芳香族ビニル系単量体、エチレン系不飽和カルボン酸エステル系単量体、シアン化ビニル系単量体など公知のものが挙げられる。これらの単量体は得られる接着剤組成物の性能を阻害するものでない限り、種類、使用量に特に制限はないが、ジエン系共重合体ラテックスを構成する単量体100重量部とした場合に、共役ジエン系単量体が20〜60重量部、より好ましくは30〜50重量部、共役ジエン系単量体と共重合可能な単量体が40〜80重量部、より好ましくは50〜70重量部の範囲にあることが、接着強度と風合いの観点から好ましい。
【0017】
カルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスを得るためには、上述したジエン系共重合体ラテックスを構成する単量体に、さらにエチレン系不飽和カルボン酸単量体を使用する。エチレン系不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。カルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスを構成する単量体100重量部とした場合に、共役ジエン系単量体が20〜60重量部、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が、0.3〜2重量部、これらと共重合可能な単量体が38〜79.7重量部の範囲であることが好ましい。さらには、共役ジエン系単量体が30〜50重量部、エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.5〜1.5重量部、これらと共重合可能な単量体が48.5〜69.5重量部の範囲であることがより好ましい。エチレン系不飽和カルボン酸単量体が0.3重量部を下回ると、接着剤組成物の配合性及び加工製品の抜糸強度が低下する傾向があり、2重量部を超えると耐水性が低下する傾向があり、好ましくない。
【0018】
これらの合成ゴムラテックスのガラス転移点は−40〜20℃の範囲であることが好ましく、さらには−30〜10℃の範囲であることがより好ましい、−40℃を下回ると加工製品の抜糸強度が劣り、20℃を超えると風合いが硬くなり施工性に劣る傾向があり、好ましくない。得られる共重合体のガラス転移点は、構成する単量体の組成あるいは単量体を重合系に加える公知の方法により適宜調整できる。
【0019】
本発明の接着剤組成物に使用する合成ゴムラテックスは、各単量体を乳化重合することによって得られる。乳化重合における各種成分の添加方法については特に制限するものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法、パワーフィード法の何れでも採用することができる。また重合方法としても、バッチ重合、セミバッチ重合、シード重合などを用いることができる。
更に、乳化重合の際には、常用の乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、炭化水素系溶剤、電解質、重合促進剤、キレート剤などを使用することができる。
【0020】
合成ゴムラテックスを乳化重合する際に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、脂肪族硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体などの非イオン性界面活性剤、ベタイン型などの両性界面活性剤を1種又は2種以上併用して使用することができる。
【0021】
合成ゴムラテックスの重合時に使用する連鎖移動剤としては、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物、ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物、α−メチルスチレンダイマー、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物、α−ベンジルオキシスチレン、α−ベンジルオキシアクリロニトリル、α−ベンジルオキシアクリルアミド等のビニルエーテル、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート等が挙げられ、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0022】
合成ゴムラテックスの重合時に使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、レドックス系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。特に水溶性重合開始剤の使用が好ましい。
【0023】
また、合成ゴムラテックスの重合時に際して、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、4−メチルシクロヘキセン、1−メチルシクロヘキセン等の不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などの炭化水素系溶剤を使用しても良い。
【0024】
本発明の接着剤組成物は、ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して合成ゴムラテックスを5〜100重量部(固形分換算)含有することが必要である。5重量部を下回ると接着剤組成物の配合時における配合性が低下し、接着剤組成物に着色顔料を添加した際の顔料の展着性が劣る。100重量部を超えるとカーペット製品や人工芝製品に加工した際の抜糸強度及び耐水性が劣る。
合成ゴムラテックスの使用比率が高いほど抜糸強度及び耐水性は低下するが、接着剤組成物の配合時における配合性が向上し、流動性が良好になることで塗布外観が良好になる傾向や着色剤を使用した際における着色剤の展着性が良好になる傾向がある。
【0025】
本発明の接着剤組成物には、他にポリオレフィン系パウダーの配合時の分散状態を調整する為、乳化剤、分散剤などを配合することも可能である。これらは種類、使用量ともに特に限定されず、接着剤の性能を阻害しない範囲で適宜適量使用することが出来る。
【0026】
また、本発明の接着剤組成物には、充填剤として、炭酸カルシウム、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、サチンホワイトなどの無機充填剤を1種または2種以上使用することができる。充填剤の使用量は、ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して300重量部以下が好ましい。300重量部を超えると抜糸強度及び耐水性が低下する傾向がある。
【0027】
本発明の接着剤組成物には、その他の添加剤として老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、防腐剤、抗菌剤、消臭剤、pH調整剤、増粘剤、浸透剤、起泡剤、消泡剤、着色顔料、香料など公知の添加剤を配合することも可能である。また、ブリスター防止の機能を有しているポリオルガノシロキサンや澱粉などを併用しても良い。これらは種類、使用量ともに特に限定されず、接着剤としての性能を阻害しない範囲で適宜適量使用することが出来る。
【0028】
本発明の接着剤組成物を塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、ロールコート法、発泡ダイレクトコート法、スプレー法などが挙げられる。塗布後の乾燥については、加熱処理して乾燥する方法が好ましいが、加熱温度は80〜160℃が好ましく、より好ましくは100〜140℃である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は特に断りのない限り重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。その評価結果は、表−1から表−3に示した。
【0030】
ガラス転移温度
合成ゴムラテックスを、ガラス板に0.5g程度塗り、70℃で4時間乾燥してフィルムを作成した。乾燥後のフィルムをDSC試験用のアルミニウムパンにセットし、再度加熱によりサンプルを均一化し、その後、測定温度を−100〜150℃まで速度10℃/分で昇温して、相変化の吸熱の開始点を読み取って合成ゴムラテックスのガラス転移温度(℃)とした。
【0031】
合成ゴムラテックスA〜Cの作製
耐圧性の重合反応機に、純水100部、過硫酸カリウム0.6部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.5部を仕込み、十分攪拌した後、表―1に示す各単量体とt−ドデシルメルカプタン0.2部、シクロヘキセン2部を加えて70℃にて重合を開始し、最終重合転化率が95%を越えた時点で重合を終了した。
次いで、得られた合成ゴムラテックスをアンモニアでpH7.5〜8.5に調整し、水蒸気蒸留により未反応単量体および他の低沸点化合物を除去し、合成ゴムラテックスA〜Cを得た。
【0032】
【表-1】
【0033】
MFR(メルトマスフローレート)
MFR(メルトマスフローレート)については、JIS K6922−1 に記載された方法(条件D)に準拠した。
【0034】
抜糸強度の評価
下記実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた人工芝製品の、パイル糸を構成する複数本のモノフィラメントの中の1本の抜糸強度について、JIS L 1021−8:2007(繊維性床敷物試験方法−第8部:パイル糸の引抜き強さ試験方法)に準拠した方法で測定した。
【0035】
耐水性の評価(耐水抜糸強度)
下記実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた人工芝製品を、25℃の水に24時間浸漬させた後に取り出し、ウエスで水分をふき取った後、抜糸強度の評価と同様に測定した。
【0036】
着色剤展着性
下記実施例1〜9及び比較例1〜5で得られた人工芝製品を、25℃の水に24時間浸漬させたとき、水の中に接着剤組成物中の着色剤が溶出した場合を×、溶出しなかった場合を○とした。
【0037】
実施例1
表−2に示した配合処方に従って、中心粒子径20μm、MFR75g/10分のポリエチレンパウダーを100重量部と、合成ゴムラテックスAを100重量部(固形分換算)、分散剤を2重量部、浸透剤を1重量部、消泡剤を0.3重量部、着色剤(カーボンブラック)1重量部とを配合し、増粘剤及び水を用いて調整することによって本発明の組成物を作製した。
この組成物を、軸心が屈折せず真直ぐになっている無捲縮のポリエチレン製モノフィラメントヤーンパイル人工芝の原反の裏面に、コーティングバーを用いて440g/m(固形分)の塗布量になるよう均一に塗布した後、塗布面を120℃×30分間熱風乾燥させて人工芝製品を得た。
【0038】
実施例2
実施例1の配合の合成ゴムラテックスAの代わりに合成ゴムラテックスBを使用した以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0039】
実施例3
実施例1の配合の合成ゴムラテックスAの代わりに合成ゴムラテックスCを使用した以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0040】
実施例4
実施例1の配合のポリエチレンパウダーのMFRを20g/10分にした以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0041】
実施例5
実施例1の配合のポリエチレンパウダーの中心粒子径を100μm、MFRを50g/10分にした以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0042】
実施例6
実施例1の配合の合成ゴムラテックスAを20重量部(固形分換算)にした以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0043】
実施例7
実施例6の配合に炭酸カルシウムを100重量部追加した以外は実施例6と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0044】
実施例8
実施例6の配合に炭酸カルシウムを400重量部追加した以外は実施例6と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0045】
実施例9
実施例7の配合の合成ゴムラテックスAを10重量部(固形分換算)にした以外は実施例7と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0046】
比較例1
実施例1の配合のポリエチレンパウダーを削除した以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0047】
比較例2
比較例1の配合に炭酸カルシウムを100重量部追加した以外は比較例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0048】
比較例3
実施例1の配合の合成ゴムラテックスAを150重量部(固形分換算)にした以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0049】
比較例4
実施例1の配合の合成ゴムラテックスAを削除した以外は実施例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0050】
比較例5
比較例1の配合の合成ゴムラテックスAの代わりに、市販のポリエチレン樹脂エマルジョンを使用した以外は比較例1と同様の操作で組成物と人工芝製品を得た。
【0051】
【表-2】
【0052】
【表-3】
【0053】
表−2に示すとおり、本願発明である実施例1〜9に示す接着剤組成物は、いずれも抜糸強度、耐水性、着色剤展着性のバランスに優れていた。
【0054】
表−3に示すとおり、比較例1、2、5はいずれもポリオレフィン系パウダーを使用しておらず、比較例3は合成ゴムラテックスの配合量が多く、本発明範囲とは異なることから抜糸強度、特に耐水性が劣っていた。また、比較例4は合成ゴムラテックスを配合しておらず、本発明範囲とは異なることから着色剤展着性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記のとおり、本発明の接着剤組成物を、カーペットや人工芝のバッキング材用バインダーとして用いることにより、抜糸強度や耐水性などに優れた加工製品を安定的に提供できる。中でも、人工芝製品のバッキング材として好適である。
【手続補正書】
【提出日】2014年12月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系パウダー100重量部に対して、合成ゴムラテックス5〜100重量部(固形分換算)を含有し、該ポリオレフィン系パウダーの中心粒子径が150μm以下であり、かつJIS K6922−1の条件Dにて測定したMFR(メルトマスフローレート)が30g/10分以上であることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
合成ゴムラテックスが、ジエン系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物
【請求項3】
ジエン系共重合体ラテックスが、カルボキシ変性されたジエン系共重合体ラテックスであることを特徴とする請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ポリオレフィン系パウダーが、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
カーペットや人工芝に代表される繊維製品を製造する際のバッキング材として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【手続補正書】
【提出日】2015年2月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
カーペットもしくは人工芝を製造する際のバッキング材として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物。